説明

無線機

【課題】複信通話における音声送信中の不快な「ブツブツ音」の対策を行う無線機及び無線機の音声制御方式を提供する。
【解決手段】VOX56は、音声コーデック70aの受信音声出力部71から出力される音声信号の有無を検出する機器である。また、レシーバAMP52aは、常にレシーバ51に対してミュート信号を出力する機器である。VOX56が音声信号を検出すると、VOX56はレシーバAMP52aにミュート解除信号を出力する。ヘッドセット50のレシーバAMP52aは、VOX56からのミュート解除信号を入力すると、レシーバ51対する音声出力のミュートを解除する。VOX56が音声信号を検出しないときは、VOX56はレシーバAMP52aにミュート解除信号を出力しない。ヘッドセット50のレシーバAMP52aは、VOX56からのミュート解除信号を入力しないときには、レシーバ51に対する音声出力のミュート信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの通信周波数を複数のチャネルで時間的に分割して使用する方式である時分割多元接続方式(以下、TDMA方式という)の無線機に係り、特に相手と交互に通話を行う無線機及び無線機の音声制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
通信相手と交互に通話を行う無線機においては、音声を送信する時間帯(以下、音声送信時間帯という)と音声を受信する時間帯(以下、音声受信時間帯)に分けられている。また、1つの通信周波数を送信と受信で使用するTDMA方式の無線機は、音声送信時間帯に連続して電波を送信する従来のアナログ無線機と異なり、図5に示すフレーム構成のように音声送信時間帯であっても、時分割で送信と受信または受信待ちとの切り替えを行っているので断続的に電波が送信される。
【0003】
1つの通信周波数を送信と受信で使用する場合におけるTDMA方式のフレーム構成について説明する。図5に示すフレーム構成は、1つの通信周波数を4つのチャネルで時間的に分割して使用する例であり、チャネル1からチャネル4までが一つの基本フレームとなる。このようなフレーム構成において、基本フレームの長さを4チャネル(40ms)として、送信時間と受信または受信待ちする時間(以下、受信/待受時間という)とを1:3の比率で繰り返すとき、送信が1チャネル(10ms)、受信/待受は2〜3チャネル(30ms)となる。つまり1つの通信周波数において、送信の送信時間10msが経過すると受信/待受に切り替えられ、また受信/待受時間30msが経過すると送信に切り替えられる。
【0004】
このように音声送信時間帯に送信と受信/待受とを繰り返すことにより、電波が断続的に送信されるタイミング(以下、送信タイミングという)で、音声信号を入力するレシーバやスピーカのライン(+、−)に電流が誘導され、レシーバやスピーカの音声信号に直流変動が発生する。送信タイミングと、この送信タイミングに同期して発生する直流変動との関係を図6に示す。レシーバやスピーカの音声信号に発生するこの直流変動は、使用者に不快な「ブツブツ音」となって聞こえる。「ブツブツ音」は、レシーバを耳に当てているヘッドセットの使用者にとっては、特に耐え難いものとなる。従って、ヘッドセットから使用者の音声を入力して送信しているときには、レシーバからの音声出力のミュート(停止)を行うようにしていた。
【0005】
従来の実施例に係る1つの通信周波数を送信と受信で使用する場合におけるTDMA方式の無線機について説明する。
【0006】
まず、図7を参照して従来の実施例に係るTDMA方式の無線機100の構成について説明する。無線機100は、相手と交互に通話が行われる無線機であるので、図7に示すように、通常は2台の無線機100で構成される。また、無線機100は、無線機本体10、アンテナ20、スピーカ30、ハンドセット40、及びヘッドセット50から構成されている。ハンドセット40とヘッドセット50には、音声を入力するマイクと音声を出力するレシーバが取り付けられている。また、スピーカ30、ハンドセット40、及びヘッドセット50については、これら全てを無線機本体10に取り付ける必要はなく、この中の一つまたは二つの装置を取り付けるだけでもよい。無線機本体10は、アンテナ20を経由して他の無線機本体10から受信した音声信号をスピーカ30、ハンドセット40、及びヘッドセット50に出力する装置である。また、無線機本体10は、ハンドセット40またはヘッドセット50のマイクから入力した音声信号をアンテナ20を経由して他の無線機本体10に出力する装置である。スピーカ30は、無線機本体10から入力した音声信号を音声に変換し、周囲に聞こえる音量で出力する機器である。ハンドセット40は、使用者が手に持って使用するもので、マイクから入力した音声を音声信号に変換して無線機本体10に出力し、また無線機本体10から入力した音声信号を音声に変換してレシーバに出力する機器である。ヘッドセット50は、頭に装着して使用するもので、マイクから入力した音声を音声信号に変換して無線機本体10に出力し、また無線機本体10から入力した音声信号を音声に変換してレシーバに出力する機器である。
【0007】
次に、従来の実施例に係る無線機100における音声の入出力処理を行う音声入出力部200の機能構成について説明する。図8に音声入出力部200の機能構成を示す。音声入出力部200は、スピーカ部30、ハンドセット部40、ヘッドセット部50、及び音声コーデック70から構成される。スピーカ部30は、図7に示すスピーカ30に対応し、スピーカ31とスピーカAMP32を備えている。ハンドセット部40は、図7に示すハンドセット40に対応し、レシーバ41、レシーバAMP42、PTT(Push To Talk)スイッチ43、マイク44、及びマイクAMP45を備えている。ヘッドセット部50は、図7に示すハンドセット50に対応し、レシーバ51、レシーバAMP52、マイク53、マイクAMP54、及びPTTスイッチ55を備えている。スピーカAMP32、レシーバAMP42、マイクアンプ45、レシーバAMP52、及びマイクアンプ54は、音声信号を増幅する増幅器である。PTTスイッチ43は、使用者によってマイク44から音声を入力するときに「オン」され、音声の入力を終了するときに「オフ」されるスイッチである。同様にPTTスイッチ55も、使用者によってマイク53から音声を入力するときに「オン」され、音声の入力を終了するときに「オフ」されるスイッチである。音声コーデック70は、無線機本体10が受信した音声信号をデジタル変換方式により符号化(以下、エンコードという)または復号(以下、デコードという)を行い、相手側の無線機100と送受信を行う装置である。音声コーデック70には、受信音声出力部71、ハンドセットPTT入力部72、ハンドセットマイク入力部73、ヘッドセットマイク入力部74、及びヘッドセットPTT入力部75の部位が設けられている。
【0008】
このような音声入出力部200において、無線機本体10が受信した音声信号は、音声コーデック70によりデコードが行われると受信音声出力部71から、スピーカAMP32を介してスピーカ31と、レシーバAMP42を介してレシーバ41と、レシーバAMP52を介してレシーバ51とに出力される。ハンドセット40のPTTスイッチ43が「オン」されてハンドセットPTT信号が音声コーデック70のハンドセットPTT入力部72に入力されると、マイクAMP45から出力される音声信号は、ハンドセットマイク入力部73から音声コーデック70に入力されエンコードが行われ、相手側の無線機100に送信される。このハンドセットPTT信号を相手側の無線機100が受信することで、相手側は音声の入力を停止する。このようにしてハンドセット40は、交互の通話が可能となる。ハンドセット40のマイク44から入力される音声は、マイク44で音声信号に変換されマイクAMP45を介してハンドセットマイク入力部73に出力される。
【0009】
ヘッドセット50のマイク53から入力される音声は、マイク53で音声信号に変換されマイクAMP54を介してヘッドセットマイク入力部74に出力される。ヘッドセット50のPTTスイッチ55が「オン」のときにPTTスイッチ55から出力されるヘッドセットPTT信号は、音声コーデック70のヘッドセットPTT入力部75とレシーバAMP52に出力される。この状態において、ヘッドセットAMP54から出力される音声信号は、ヘッドセットマイク入力部74から音声コーデック70に入力されエンコードが行われ、相手側の無線機100に送信される。送信された音声信号を相手側の無線機100が受信することで、相手側は音声をレシーバ51から出力する。このようにしてハンドセット40は、交互の通話が可能となる。また、ヘッドセット50のレシーバAMP52は、ミュート端子を備え、ヘッドセットPTT信号(以下、ミュート信号という)をミュート端子から入力すると、レシーバ51に対する音声信号出力のミュートを行う。尚、ハンドセット40のPTTスイッチ43が「オン」のときにPTTスイッチ43から出力されるハンドセットPTT信号については、ヘッドセットPTT信号のようにレシーバAMP42には出力しない。この理由については、後述する図9において説明する。
【0010】
以上のような音声入出力部200において、スピーカ部30、ハンドセット部40、及びヘッドセット部50は、通信形態に基づいて音声信号の送受信をおこなう。通信形態には、双方向通信において時間を区切って片方から通信を行う半二重の音声通信(以下、単信通話という)形態と、同時に双方から通信を行う全二重の音声通信(以下、複信通話という)形態がある。以下、無線機100の単信通話と複信通話における音声通信の流れについて説明する。
【0011】
図9を参照して単信通話におけるヘッドセット50の音声通信について説明する。単信通話では、図9の(1)と(2)に示すように送信する音声信号(送信音声)と受信する音声信号(受信音声)が一つの通信回線で交互に通信される。このような(1)の「送信音声」のときに、(4)に示すようにPTTスイッチ55は「オン」され、(2)の「受信音声」のときに、(4)に示すようにPTTスイッチ55は「オフ」される。従って、(4)のPTTスイッチ55が「オン」のときには、PTTスイッチ55からレシーバAMP52にミュート信号が出力されるので、(5)のレシーバ51の音声出力は「オフ」となる。また、(4)のPTTスイッチ55が「オフ」のときには、PTTスイッチ55からレシーバAMP52にミュート信号が出力されないので、(5)のレシーバ51の音声出力は「オン」となる。このように、(1)の「送信音声」の時間帯(音声送信時間帯)に(3)の送信タイミングが発生していても、(5)のレシーバ51の音声出力を「オフ」とすることで、送信タイミングで発生する直流変動による「ブツブツ音」の対策を行っている。
【0012】
図10を参照して複信通話におけるハンドセット40の音声通信について説明する。複信通話では、図10の(1)と(2)に示すように送信する音声信号(送信音声)と受信する音声信号(受信音声)が別々の通信回線であっても、交互に通信される。しかし、(1)の送信音声と(2)の受信音声は、別の通信回線となるので、(1)の送信音声は、常に音声送信時間帯である。このため(3)に示すように常に送信タイミングが発生する。従って、(1)の「送信音声」のときに、ハンドセット40のPTTスイッチ43からレシーバAMP42にミュート信号を出力しても、(3)に示すように常に送信タイミングが発生しているので、PTTスイッチ43からレシーバAMP42にミュート信号の出力は行われない。従って、レシーバ41は、PTTスイッチ43からミュート信号を入力しないのでの、(4)に示すように音声出力は「オン」のままとなる。このように、複信通話におけるハンドセット40では、送信タイミングで発生する直流変動による「ブツブツ音」の対策を行うことはできない。
【0013】
以上で説明したように、従来の実施例に係るTDMA方式の無線機100において、単信通話では、直流変動による「ブツブツ音」の対策を行うことができるが、複信通話では対策を行うことができない。
【0014】
単信と複信に関する通信技術として下記特許文献1がある。特許文献1では、ローコストな音声コーデックである半二重通信用の音声通常コーデックを2個備えることで全二重通信を確立し、さらに、半二重用音声コーデック1個を備えて切換え手段を設けることで全二重通信を確立することで、複信方式の通信が可能なデジタル移動無線システムを提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−347923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1の複信方式による通信方法であっても、半二重用音声コーデックを利用して全二重通信を確立することができるが、複信通話における直流変動による「ブツブツ音」の対策を行うことができない。以上説明した従来技術では、PTTスイッチを用いた単信通話では、送信状態においてレシーバやスピーカなどから音声の出力を行わないようにすることで、直流変動による「ブツブツ音」の対策を行っている。しかし、複信通話では有効な対策が取られておらず、直流変動による「ブツブツ音」の対策を行うには通信形態を単信通話に限定せざるを得ないという問題があった。
【0017】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる無線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の無線機は、一つの周波数により複信通話を行うTDMA方式の無線機であって、音声信号を入力する音声信号入力手段と、前記音声信号入力手段が入力する前記音声信号の有無を検出する音声有無検出手段と、音声の出力を停止する音声出力停止手段と、前記音声の出力の停止を解除する音声出力停止解除手段とを備え、前記音声有無検出手段が前記音声信号を検出しないとき前記音声出力停止手段により前記音声の出力を停止し、前記音声有無検出手段が前記音声信号を検出したとき前記音声出力停止解除手段により前記音声を出力することで、送信タイミングが発生する音声送信時間帯に前記音声の出力を停止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複信通話における音声送信中の不快な「ブツブツ音」の対策を行うことができ、また無線機100の通信品質を向上させる無線機及び無線機の音声制御方式を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係わる無線機の音声入出力部の機能構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係わる無線機の複信通話における音声通信の流れを示す図である。
【図3】本発明の実施形態2に係わる無線機の音声入出力部の機能構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2に係わる無線機の複信通話における音声通信の流れを示す図である。
【図5】従来の実施例に係わる無線機のフレーム構成を示す図である。
【図6】従来の実施例に係わる無線機の送信タイミングと直流変動の関係を示す図である。
【図7】従来及び本発明の実施例に係わる無線機の構成を示す図である。
【図8】従来の実施例に係わる無線機の音声入出力部の機能構成を示す図である。
【図9】従来の実施例に係わる無線機の単信通話における音声通信の流れを示す図である。
【図10】従来の実施例に係わる無線機の複信通話における音声通信の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施するための実施形態1を、図面を参照して説明する。実施形態1は、従来技術におけるヘッドセット50のPTTスイッチ55によるミュート信号の出力を、PTTスイッチ55でなく受信音声を検出するVOX(Voice Operation Transmission)により行う複信通話の形態である。このように、実施形態1は複信通話であり、PTTスイッチを用いずに相手と通話を行うものである。
【0022】
本発明の実施形態1に係る無線機100aの構成は、図7に示す従来の実施例に係る無線機100の構成において、ヘッドセット50をヘッドセット50aに変更する以外は、同じである。また、本発明の実施形態1に係るフレーム構成は、図5に示す従来の実施例に係る無線機100におけるフレーム構成に同じである。
【0023】
次に、実施形態1に係る無線機100aにおける音声の入出力処理を行う音声入出力部200aの機能構成について説明する。図1に音声入出力部200aの機能構成を示す。音声入出力部200aは、スピーカ部30、ハンドセット部40、ヘッドセット部50a、及び音声コーデック70aから構成されている。スピーカ部30とハンドセット部40は、従来の実施例に同じである。ヘッドセット部50aは、レシーバ51、レシーバAMP52a、マイク53、マイクAMP54、及びVOX56を備えている。レシーバ51、マイク53、及びマイクAMP54は、従来の実施例に同じである。音声コーデック70aは、ヘッドセット部50aがPTTスイッチ55を備えていないため、ヘッドセットPTT入力部75の部位は設けられていないが、それ以外は従来の実施例の音声コーデック70に同じである。
【0024】
従来の実施例に係る無線機100と異なる部位であるVOX56とレシーバAMP52aについて説明する。VOX56は、音声コーデック70aの受信音声出力部71から出力される音声信号の有無を検出する機器である。また、レシーバAMP52aは、レシーバ51に対して受信した音声信号を出力する機器である。VOX56が音声信号を検出すると、VOX56はレシーバAMP52aにミュート解除信号を出力する。そして、ヘッドセット50aのレシーバAMP52aは、VOX56からのミュート解除信号を入力すると、レシーバ51対する音声出力のミュートを解除する。また、VOX56が音声信号を検出しないときは、VOX56はレシーバAMP52aにミュート解除信号を出力しない。そして、ヘッドセット50aのレシーバAMP52aは、VOX56からのミュート解除信号を入力しないときには、レシーバ51に対する音声出力をミュートする。
【0025】
次に、図2を参照して実施形態1の複信通話におけるヘッドセット50aの音声通信について説明する。複信通話では、図2の(1)と(2)に示すように送信する音声信号(送信音声)と受信する音声信号(受信音声)が別々の通信回線で通信される。しかし、(1)の送信音声と(2)の受信音声は、別の通信回線となるので、(1)の送信音声は、常に音声送信時間帯である。このため(3)に示すように常に送信タイミングが発生する。VOX56は、音声コーデック70aの受信音声出力部71から出力される音声信号を検出したときにはレシーバAMP52aにミュート解除信号を出力するので、(4)のレシーバ51の音声出力は「オン」となる。また、VOX56は、音声コーデック70aの受信音声出力部71から出力される音声信号を検出しないときには、レシーバAMP52aにミュート解除信号を出力しないので、(4)のレシーバ51の音声出力は「オフ」となる。このように、(2)の「受信音声」の時間帯のみに(4)のレシーバ51の音声出力を「オン」とするが、(1)の「送信音声」の時間帯ではレシーバ51の音声出力は「オフ」となるので、送信タイミングで発生する直流変動による「ブツブツ音」の対策を行うことができる。
【0026】
以上の実施形態1において、VOX56が音声信号を検出してレシーバ51の音声出力を「オフ」するまでに若干の遅れが生じることがある。この若干の遅れについては、通話を開始する前に、お互いに予め決めておいた文言などで確認を行ってから本論に入るようにすることで、解消することができる。
【0027】
以上のような実施形態1によれば、レシーバ51の音声出力は通常は「オフ」で、使用者の耳には何も聞こえないが、相手側から音声を受信したときに、その音声信号をVOX56が検出することで、レシーバ51の音声出力を「オン」とすることができる。このように、複信通話における音声送信中の不快な「ブツブツ音」の対策を行うことができるので、復信通話でのヘッドセットの使用が可能となる。また、無線機100aの通信品質を向上させることができる。
【0028】
(第2の実施形態)
以下、本発明を実施するための実施形態2を、図面を参照して説明する。実施形態2は、従来技術におけるヘッドセット50のPTTスイッチ55によるミュート信号の出力を、送信タイミングの変化点でミュート信号を出力させる複信通話の形態である。このように、実施形態2は複信通話であり、PTTスイッチを用いずに相手と通話を行うものである。
【0029】
本発明の実施形態2に係る無線機100bの構成は、図7に示す従来の実施例に係る無線機100の構成において、ヘッドセット50をヘッドセット50bに変更する以外は、同じである。また、本発明の実施形態2に係るフレーム構成は、図5に示す従来の実施例に係る無線機100におけるフレーム構成に同じである。
【0030】
次に、実施形態2に係る無線機100bにおける音声の入出力処理を行う音声入出力部200bの機能構成について説明する。図3に音声入出力部200bの機能構成を示す。音声入出力部200bは、スピーカ部30、ハンドセット部40、ヘッドセット部50b、及び音声コーデック70aから構成されている。スピーカ部30とハンドセット部40は、従来の実施例に同じである。ヘッドセット部50bは、レシーバ51、レシーバAMP52、マイク53、マイクAMP54、及びミュートタイミング発生部58を備えている。ミュートタイミング発生部58には、無線部57が接続される。レシーバ51、レシーバAMP52、マイク53、及びマイクAMP54は、従来の実施例に同じである。音声コーデック70aは、実施形態1の音声コーデック70aに同じであり、ヘッドセット部50bがPTTスイッチ55を備えていないため、ヘッドセットPTT入力部75の部位は設けられていないが、それ以外は従来の実施例の音声コーデック70に同じである。
【0031】
従来の実施例に係る無線機100と異なる部位である無線部57とミュートタイミング発生部58について説明する。無線部57は、無線機100bにおける図6に示す送信タイミングの変化点を検出し、ミュートタイミング発生部58に出力する機器である。ミュートタイミング発生部58は、無線部57から送信タイミングの変化点を入力すると、レシーバAMP52にミュート信号を出力する。また、ミュートタイミング発生部58は、無線部57から送信タイミングの変化点が出力されないときには、レシーバAMP52にミュート信号を出力しない。
【0032】
次に、図4を参照して実施形態2の複信通話におけるヘッドセット50bの音声通信について説明する。(3)の送信タイミングの拡大図を(3)'に、(4)のレシーバ51の音声出力の拡大図を(4)'に示す。複信通話では、図4の(1)と(2)に示すように送信する音声信号(送信音声)と受信する音声信号(受信音声)が別々の通信回線で通信される。しかし、(1)の送信音声と(2)の受信音声は、別の通信回線となるので、(1)の送信音声は、常に音声送信時間帯である。このため(3)に示すように常に送信タイミングが発生する。ヘッドセット50bのミュートタイミング発生部58は、(3)の送信タイミングの変化点でレシーバAMP52にミュート信号を出力するので、(4)のレシーバ51の音声出力は、送信タイミングの変化点で「オフ」となる。また、ヘッドセット50bのミュートタイミング発生部58は、(3)の送信タイミングの変化点以外ではレシーバAMP52にミュート信号を出力しないので、(4)のレシーバ51の音声出力は、送信タイミングの変化点以外では「オン」となる。このように、(1)の「送信音声」の時間帯に(3)の送信タイミングが発生していても、(3)の送信タイミングの変化点で(4)のレシーバ51の音声出力を「オフ」とすることで、送信タイミングの変化で発生する直流変動による「ブツブツ音」の対策を行うことができる。
【0033】
以上のような実施形態2によれば、無線部57から出力する送信タイミング信号から送信から受信/待受、受信/待受から送信への変化点で、ミュートタイミング発生部58がレシーバ51の音声出力を短時間「オフ」することができる。このように、複信通話における音声送信中の不快な「ブツブツ音」の対策を行うことができるので、復信通話でのヘッドセットの使用が可能となる。また、無線機100bの通信品質を向上させることができる。
【0034】
実施形態1と実施形態2においては、レシーバを耳に当てるため「ブツブツ音」の影響を受けやすいヘッドセットについて説明したが、スピーカやハンドセットについても適用できる。また、実施形態1と実施形態2では、ヘッドセットが1台の場合について適用する実施例について説明したが、ヘッドセット、スピーカ、及びハンドセットなどが複数台存在する場合であってもよい。
【0035】
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、上記実施の形態は本発明の例示であり、この実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0036】
以上をまとめると、本発明は次のような特徴を有する。
(1) 本発明の無線機は、一つの周波数により複信通話を行うTDMA方式の無線機であって、音声信号を入力する音声信号入力手段と、前記音声信号入力手段が入力する前記音声信号の有無を検出する音声有無検出手段と、音声の出力を停止する音声出力停止手段と、前記音声の出力の停止を解除する音声出力停止解除手段とを備え、前記音声有無検出手段が前記音声信号を検出しないとき前記音声出力停止手段により前記音声の出力を停止し、前記音声有無検出手段が前記音声信号を検出したとき前記音声出力停止解除手段により前記音声を出力することで、送信タイミングが発生する音声送信時間帯に前記音声の出力を停止することを特徴としている。
(2)(1)の前記音声有無検出手段は、VOXであることを特徴としている。
(3)(1)または(2)の前記音声停止手段と前記音声停止解除手段は、レシーバAMPの出力をミュート又はミュート解除する手段であることを特徴としている。
(4)本発明の無線機は、一つの周波数により複信通話を行うTDMA方式の無線機であって、送信タイミングを入力する送信タイミング入力手段と、前記送信タイミング入力手段で入力した前記送信タイミングから変化点を検出する変化点検出手段と、前記音声の出力を停止する音声出力停止手段とを備え、前記変化点検出手段が前記送信タイミングの前記変化点を検出したときに、前記音声出力停止手段により前記音声の出力を停止することを特徴としている。
(5)(4)の前記音声停止手段は、レシーバAMPにより前記音声の出力を停止することを特徴としている。
(6)本発明の無線機の音声制御方式は、一つの周波数により複信通話を行うTDMA方式の無線機であって、音声信号を入力する音声信号入力工程と、前記音声信号入力工程が入力する前記音声信号の有無を検出する音声有無検出工程と、音声の出力を停止する音声出力停止工程と、前記音声の出力の停止を解除する音声出力停止解除工程とを備え、前記音声有無検出工程が前記音声信号を検出しないとき前記音声出力停止工程により前記音声の出力を停止し、前記音声有無検出工程が前記音声信号を検出したとき前記音声出力停止解除工程により前記音声を出力することで、送信タイミングが発生する音声送信時間帯に前記音声の出力を停止することを特徴としている。
(7)本発明の無線機の音声制御方式は、一つの周波数により複信通話を行うTDMA方式の無線機の音声制御方式であって、送信タイミングを入力する送信タイミング入力工程と、前記送信タイミング入力工程で入力した前記送信タイミングから変化点を検出する変化点検出工程と、音声の出力を停止する音声出力停止工程とを備え、前記変化点検出工程が前記送信タイミングの前記変化点を検出したときに、前記音声出力停止工程により前記音声の出力を停止することを特徴としている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、無線機に好適であるが、無線機に限られるものではなく、電波を断続的に送信することによる電波被りの影響を受けるシステム一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10・・・・・・・・無線機本体
20・・・・・・・・アンテナ
30・・・・・・・・スピーカ
31・・・・・・・・スピーカ
32・・・・・・・・スピーカAMP
40・・・・・・・・ハンドセット
41・・・・・・・・レシーバ
42・・・・・・・・レシーバAMP
43・・・・・・・・PTTスイッチ
44・・・・・・・・マイク
45・・・・・・・・マイクAMP
50・・・・・・・・ヘッドセット
50a・・・・・・・ヘッドセット
50b・・・・・・・ヘッドセット
51・・・・・・・・レシーバ
52・・・・・・・・レシーバAMP
53・・・・・・・・マイク
54・・・・・・・・マイクAMP
55・・・・・・・・PTTスイッチ
56・・・・・・・・VOX
57・・・・・・・・無線部
58・・・・・・・・ミュートタイミング発生部
70・・・・・・・・音声コーデック
70a・・・・・・・音声コーデック
71・・・・・・・・受信音声出力部
72・・・・・・・・ハンドセットPTT入力部
73・・・・・・・・ハンドセットマイク入力部
74・・・・・・・・ヘッドセットマイク入力部
75・・・・・・・・ヘッドセットPTT入力部
100・・・・・・・・無線機
100a・・・・・・・無線機
100b・・・・・・・無線機
200・・・・・・・・音声入出力部
200a・・・・・・・音声入出力部
200b・・・・・・・音声入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの周波数により複信通話を行うTDMA方式の無線機であって、
音声信号を入力する音声信号入力手段と、
前記音声信号入力手段が入力する前記音声信号の有無を検出する音声有無検出手段と、
音声の出力を停止する音声出力停止手段と、
前記音声の出力の停止を解除する音声出力停止解除手段とを備え、
前記音声有無検出手段が前記音声信号を検出しないとき前記音声出力停止手段により前記音声の出力を停止し、前記音声有無検出手段が前記音声信号を検出したとき前記音声出力停止解除手段により前記音声を出力することで、送信タイミングが発生する音声送信時間帯に前記音声の出力を停止することを特徴とする無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−223207(P2011−223207A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88871(P2010−88871)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】