説明

無線測距システム、及び、無線端末

【課題】UWB通信方式を用いる場合に、距離精度を向上する無線測距システム、及び、無線端末を提供すること。
【解決手段】無線端末200において、測距動作と同期確立動作とで信号の経路が異なり、測距動作が行われる際には、コンパレータ208に対して検波結果が積分器204を経由することなく入力される。これにより、無線端末200の測距動作に積分処理が含まれないので、積分処理による遅延時間が発生せず、距離測定の精度を向上することができる。また、測距動作において、コンパレータ208で用いられる比較基準電圧には、積分器204で得られた積分結果が用いられる。これにより、検波信号からノイズ信号成分が取り除かれた積分結果を比較基準電圧として用いるので、比較基準電圧が適正化される。この結果、距離測定の精度をさらに向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス信号を用いて距離測定を行う無線測距システム、及び、無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
高速無線伝送技術の一つとして、インパルス無線方式であるUWB(Ultra Wide Band)通信方式がある。UWB通信方式では、所定の周期タイミングに同期したパルス信号で構成されるパルス信号列が通信に用いられる。従って、UWB通信方式は、超広帯域で行われる。
【0003】
例えば、搬送波は用いられずに、パルス幅が例えば1ナノ秒程度の極めて狭いパルス信号が用いられる、UWB通信が知られている。このようなUWB通信では、基地局(リーダ)が通信端末に対してパルス幅が極めて狭いパルス信号を送信することにより、マルチパス伝搬環境においても、通信端末の測位(以下、「UWB測位」と呼ぶことがある)を正確に行うことができる。
【0004】
しかし、UWB通信では、他システムへの与干渉の観点から、基地局の送信電力に関して上限が決められている。基地局から送信された信号の電力は伝搬ロスによって減衰するので、実際上、UWB通信システムにおける通信エリアの大きさには制限がある。また、UWB通信システムにおける通信端末は、通常、タグのように小型なものである。従って、通信端末が電池を搭載する場合でも、その電池は、例えばボタン電池のような電流容量の小さなものが想定される。
【0005】
このため、所望のエリアにおいてUWB測位を行う場合、通信端末に対しては、適切な感度が要求されることは当然として、省電力を実現できる構成を有することも要求される。
【0006】
従来の測位システムは、例えば、特許文献1に開示されている。図1は、特許文献1に開示されたタグの構成を示す図である。図1に示すパッシブタグにおいては、感度制御信号に基づいて、受信RF信号に対する感度を増加している。また、特許文献1に開示されるタグは、基地局からの信号をバックスキャッタ(後方反射)する方式、すなわち、アンテナの負荷インピーダンスを整合させることによりリーダからの電波を反射させない状態(すなわち、符号「0」を送信する状態)と、インピーダンスを不整合にすることにより電波を反射させる状態(すなわち、符号「1」を送信する状態)と、で切り替えている。ここで、パッシブ方式は、電源を持たないタグで採用される方式である。従って、パッシブ方式の通信エリアは、非常に小さい。例えば、UWB帯域での通信エリアは、1m以下程度となる。
【0007】
また、従来のUWB通信タグが、例えば、特許文献2に開示されている。図2は、特許文献2に開示されたUWB通信タグの構成を示す図である。図2に示すUWBタグでは、フィルタ部が受信信号からUWBパルスの成分を抽出し、検波部が包絡線検波又はピーク検波し、積分部が検波結果を所定の積分期間(例えば、タイムスロット)だけ積算する。そして、信号復調部が、積分部で得られた積算値のA/D変換値が所定の閾値以上であるか否かを判断基準として、データ値(「1」又は「0」)を判定することにより、ベースバンド信号の復調を行う。図2に示すUWBタグでは、積分部における積分期間(タイムスロット)を調整しつつ同期捕捉することにより、ノイズ耐性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−218789号公報
【特許文献2】特開2008−5133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、特許文献2のUWBタグのように受信信号を積分することによって同期処理におけるノイズ耐性は向上する。しかしながら、積分処理によって遅延時間が生じるので、電波の往復時間を測定することにより距離を測定する測距処理で積分処理を用いると、距離測定精度が劣化する問題がある。
【0010】
本発明の目的は、かかる点に鑑みてなされたものであり、UWB通信方式を用いる場合に、距離精度を向上する無線測距システム、及び、無線端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線測距システムは、無線基地局と無線端末とを具備し、パルス信号を用いて前記無線基地局と前記無線端末との離間距離を測定する無線測距システムであって、前記無線端末は、前記無線基地局から送信されたパルス信号列を受信する受信手段と、受信された前記パルス信号列を検波し検波信号を出力する検波器と、前記検波信号を受信タイミング候補ごとに積分し積分結果を出力する積分器と、前記積分結果に基づいて前記無線基地局との同期タイミングを検出する検出手段と、を含む同期確立手段と、前記積分結果を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記積分結果を基準データとして用いて、入力信号に応じた2値化信号を出力するコンパレータと、前記コンパレータから出力された2値化信号に基づいて送信パルス信号を生成するパルス生成手段と、を含む測距処理手段と、を具備し、前記無線基地局は、前記パルス信号列の送信タイミングと、当該送信タイミングで送信されたパルス信号列に基づいて前記無線端末から送信されたパルス信号列の受信タイミングとの時間差を測定し、測定された前記時間差に基づいて前記離間距離を算出する算出手段、を具備し、前記無線端末において測距動作と同期確立動作とで信号の経路が異なり、前記測距動作が行われる際には、前記コンパレータに対して前記検波信号が前記積分器を経由することなく入力される構成を採る。
【0012】
本発明の無線端末は、パルス信号列を受信する受信手段と、受信された前記パルス信号列を検波し検波信号を出力する検波器と、前記検波信号を受信タイミング候補ごとに積分し積分結果を出力する積分器と、前記積分結果に基づいて前記無線基地局との同期タイミングを検出する検出手段と、を含む同期確立手段と、前記積分結果を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記積分結果を基準データとして用いて、入力信号に応じた2値化信号を出力するコンパレータと、前記コンパレータから出力された2値化信号に基づいて送信パルス信号を生成するパルス生成手段と、を含む測距処理手段と、を具備し、測距動作と同期確立動作とで信号の経路が異なり、前記測距動作が行われる際には、前記コンパレータに対して前記検波信号が前記積分器を経由することなく入力される構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、UWB通信方式を用いる場合に、距離精度を向上する無線測距システム、及び、無線端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のタグの構成を示す図
【図2】従来のUWB通信タグの構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態1に係る無線測距システムの基地局の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1に係る無線測距システムの無線端末の構成を示すブロック図
【図5】基地局から送信されるパルス信号列を示す図
【図6】タイミング制御部が生成するクロック信号を示す図
【図7】同期確立処理の説明に供する図
【図8】測距動作の説明に供する図
【図9】検波器の出力波形と、この検波器の出力波形が入力された場合の積分器の出力波形を示す図
【図10】本発明の実施の形態2に係る無線端末の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0016】
(実施の形態1)
[基地局の構成]
図3は、本発明の実施の形態1に係る無線測距システムの基地局100の構成を示すブロック図である。基地局100は、例えば、UWB通信を行う読み取り装置(リーダ)である。
【0017】
図3において、基地局100は、タイミング信号出力部101と、送信パルス発生部102と、送信アンテナ103と、受信アンテナ104と、パルス検出部105と、積分部106と、距離算出部107とを有する。
【0018】
タイミング信号出力部101は、等時間間隔でクロック信号を生成する。タイミング信号出力部101で生成されるクロック信号には、長周期クロック信号と、短周期クロック信号の2種類がある。長周期クロックは、測定範囲に応じて決定される。例えば、測定距離の最大値を15mとすれば、電波の往復伝搬距離は30mとなりこのとき、最大遅延波は100ナノ秒となる。また、短周期クロックは測距分解能に相当し、通常はUWBパルス幅と同等の値に設定する。1ナノ秒は距離分解能30cmに相当する。ここでは、短周期クロック信号として、1ナノ秒を1周期とするクロック信号が生成され、長周期クロック信号として、短周期クロック信号を100分周した100ナノ秒を1周期とするクロック信号が生成される。すなわち、長周期クロック信号と短周期クロック信号とは、長周期クロック信号の周期で同期している。生成されたクロック信号は、送信パルス発生部102、積分部106、及び距離算出部107に出力される。以下、長周期クロック信号の周期を、単に「長周期」と呼び、短周期クロック信号の周期を、単に「短周期」と呼ぶ。
【0019】
送信パルス発生部102は、タイミング信号出力部101から受け取る長周期クロック信号に基づいて、パルス信号を発生する。送信パルス発生部102は、長周期クロック信号に基づいて励振増幅する増幅回路と、バンドパスフィルタとを含む。増幅回路には、例えば、ステップリカバリダイオードが用いられ、この場合、送信パルス発生部102では、ステップリカバリダイオードが、長周期クロック信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジの一方において励振(つまり、エッジショック励振)することにより電流増幅し、得られた信号をバンドパスフィルタが帯域制限する。これにより、1ナノ秒程度のパルス幅(つまり、短周期程度のパルス幅)を持つパルス信号が生成される。このようにパルス信号は長周期と同じ周期で生成され、パルス信号列として送信アンテナ103を介して送信される。
【0020】
パルス検出部105は、後述する無線端末200から送信されたパルス信号を受信アンテナ104を介して受信する。パルス検出部105は、受信パルス信号を検波し、得られた検波結果信号を積分部106に出力する。
【0021】
積分部106は、パルス検出部105から受け取る検波結果信号を、短周期クロック信号に同期してサンプリングする。サンプル信号は、各長周期において、何番目の短周期クロック信号に基づいてサンプリングされたかによって分類される。すなわち、サンプル信号は、短周期クロック番号別に分類される。ここでは、1長周期の間に100個の短周期クロック信号が生成されるので、短周期クロック番号は1〜100まで用意される。
【0022】
積分部106は、複数の長周期において、サンプル信号を短周期クロック番号別に積分する。
【0023】
距離算出部107は、タイミング信号出力部101により生成された、送信パルスに対応した基準となる短周期クロック番号と、積分値の最も大きい短周期クロック番号とに基づいて、基地局100と後述する無線端末200との間を電波が往復するのに要する時間を計算する。その後に、無線端末200の後述する内部回路におけるあらかじめ測定されている内部遅延時間を減算することにより、空間の伝搬遅延時間を計算する。この伝搬遅延時間を用いて電波の進行速度を乗算することにより、基地局100と無線端末200との間の距離を算出する。
【0024】
[無線端末の構成]
図4は、本発明の実施の形態1に係る無線測距システムの無線端末200の構成を示すブロック図である。無線端末200は、例えば、UWB通信を行うタグである。
【0025】
図4において、無線端末200は、受信アンテナ201と、増幅器202と、検波器203と、積分器204と、レベル検出部205と、タイミング制御部206と、データ保持部207と、コンパレータ208と、UWBパルス発生部209と、送信アンテナ210とを有する。また、無線端末200には、電源が備えられている。後述するようにUWBパルス発生部209では、この電源から供給される電力を用いて送信パルス信号が発生される。すなわち、無線端末200には、セミパッシブ方式が適用されている。
【0026】
増幅器202は、タイミング制御部206から出力されるオンオフ制御信号に基づいてオンオフする。オン期間中には、増幅器202は、受信アンテナ201を介して受信した受信信号を増幅し、増幅後の受信信号を積分器204及びコンパレータ208に出力する。一方、オフ期間中には、増幅器202は動作を停止する。従って、オフ期間中の増幅器202の出力は、無信号となる。
【0027】
検波器203は、増幅器202の出力信号を検波する。検波器203は、例えば、ダイオードで構成され、増幅器202の出力信号を包絡線検波する。例えば、受信信号がインパルス方式UWBのOOK(ON OFF Keying)変調信号の場合、検波器203で得られる検波結果は、1〜2ナノ秒程度のベースバンド信号となる。検波器203で得られた検波結果は、積分器204及びコンパレータ208に出力される。
【0028】
積分器204は、検波器203から受け取る検波結果を一定の時間長を有する積分期間に渡って積分する。積分期間の長さは、タイミング制御部206からの積分期間制御信号によって制御される。積分器204は、例えば、アナログローパスフィルタによって構成される。又は、積分器204は、アナログディジタル変換部、及び、アナログディジタル変換部で得られたディジタル信号を加算する加算器又はデジタルローパスフィルタを含んで構成されても良い。
【0029】
積分器204にアナログローパスフィルタが用いられる場合には、1積分期間だけ検波結果が積分された後、タイミング制御部206からの制御信号によって、コンデンサーに蓄積された電荷がディスチャージされることにより積分値が初期化される。また、積分器204が加算器又はデジタルローパスフィルタを含んで構成される場合には、タイミング制御部206からの制御信号によって積分値がリセットされることにより初期化される。
【0030】
ここで上記積分期間は、J個(Jは、2以上の自然数)の積分繰り返し単位期間で構成される。Jは、信号の電力を増大させることにより所望の信号対雑音比が得られる値である。また、1つの積分繰り返し単位期間は、K個(Kは、2以上の自然数)の単位積分期間で構成される。Kは、所望距離分解能性能より得られる値である。すなわち、各積分繰り返し単位期間は、期間識別番号が1〜Kまでの単位積分期間を有している。そして、積分器204は、積分期間に渡って期間識別番号ごとに検波結果を積分する。積分繰り返し単位期間は、タイミング制御部206からの繰り返し単位期間制御信号によって制御され、単位積分期間は、単位積分期間制御信号によって制御される。こうして得られた期間識別番号ごとの積分値がレベル検出部205に出力される。
【0031】
レベル検出部205は、積分器204からK個の積分値を受け取り、最大の積分値を有する積分期間の期間識別番号を特定する。期間識別番号は、タイミング制御部206に出力される。
【0032】
タイミング制御部206は、制御信号を出力することによって、増幅器202、積分器204、及びデータ保持部207の動作を制御する。タイミング制御部206は、オンオフ制御信号を増幅器202に出力し、増幅器202のオンオフタイミングを制御する。また、タイミング制御部206は、レベル検出部205で特定された期間識別番号に基づいて積分期間制御信号、単位積分期間制御信号、及び単位積分期間制御信号を生成し、これらを積分器204に出力し、積分器204の積分処理を制御する。また、タイミング制御部206は、レベル検出部205で特定された期間識別番号に基づいて信号レベル保持制御信号をデータ保持部207に出力し、データ保持部207の信号レベル保持動作及び保持信号出力動作を制御する。
【0033】
無線端末200には、後述するように「同期確立動作」及び「測距動作」の2つの動作があり、実行動作に応じて、タイミング制御部206は、上記各機能部の動作を制御する。
【0034】
データ保持部207は、信号レベル保持制御信号に応じた単位積分期間に対応する積分値を保持するとともに、保持した積分値に応じた電圧印加信号をコンパレータ208の一方の入力端に出力する。
【0035】
コンパレータ208は、検波器203の検波結果を第1の入力端の入力とし、データ保持部207から出力される電圧印加信号を第2の入力端の入力とする。この電圧印加信号に応じた電圧は、比較基準電圧として用いられる。
【0036】
コンパレータ208は、比較基準電圧と検波結果との大小比較結果に応じた信号をUWBパルス発生部209に出力する。具体的には、入力検波結果が比較基準電圧より大きい場合には、コンパレータ208は、ハイレベル信号を出力する。一方、入力検波結果が比較基準電圧より小さい場合には、ローレベル信号を出力する。
【0037】
UWBパルス発生部209は、コンパレータ208の出力信号に応じた信号を発生する。UWBパルス発生部209は、コンパレータ208の出力信号に基づいて励振増幅する増幅回路と、バンドパスフィルタとを含む。増幅回路には、例えば、ステップリカバリダイオードが用いられ、この場合、UWBパルス発生部209では、ステップリカバリダイオードが、長周期クロック信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジの一方において励振(つまり、エッジショック励振)することにより電流増幅し、得られた信号をバンドパスフィルタが帯域制限する。これにより、1ナノ秒程度のパルス幅(つまり、短周期程度のパルス幅)を持つパルス信号が生成される。こうして生成されたパルス信号は、送信アンテナ210を介して送信される。
【0038】
[無線測距システムの動作]
以上の構成を有する無線測距システムの動作について説明する。なお、ここでは、長周期を100ナノ秒、短周期を1ナノ秒として説明する。
【0039】
(基地局100のパルス信号列送信動作)
基地局100は、パルス信号列を生成し、無線端末200に送信する。パルス信号列は、同期確立動作時及び測距動作時の両方で送信される。
【0040】
図5は、基地局100から送信されるパルス信号列を示す図である。図5において、縦線1本は、1つのパルス信号を表している。隣接パルス信号間の時間間隔は、長周期に対応し、100ナノ秒である。すなわち、基地局100からは、100ナノ秒間隔で1ナノ秒程度のUWBパルス信号が送信される。
【0041】
(無線端末200の動作)
無線端末200の動作としては、上記したように同期確立動作と測距動作の2つがある。以下で説明するように、同期確立動作と測距動作とでは、信号の流れが異なっている。
【0042】
〈無線端末200の同期確立動作〉
無線端末200は、初期状態ではスリープモードであり、受信信号の有無を検出している。受信信号が有る場合には、アウェイクモードに移り、同期確立動作を開始する。
【0043】
ここで、先ず、タイミング制御部206の動作について説明する。図6は、タイミング制御部206が生成するクロック信号を示す図である。
【0044】
図6において、タイミング制御部206は、16相のクロック信号(Φ1〜Φ16)を生成している。各相のクロック信号は、長周期と対応する100ナノ秒周期で現れるパルス信号で構成されている。1つのパルス信号は、100ナノ秒/16=約6.3ナノ秒のパルス幅を有している。16相のクロック信号は、構成パルス信号が重ならないように、パルス信号の現れるタイミングが互いにずれている。タイミング制御部206は、例えば、160MHzクロック信号から遅延線6.3ナノ秒を用いて、16相のクロック信号を生成する。
【0045】
図7は、同期確立処理の説明に供する図である。図7において、最上段には、基地局100から送信されるパルス信号列が示され、2段目には、16相のクロック信号のうちn番目のクロック信号Φnが示されている。図7の3段目には、基地局100から送信された100ナノ秒間隔のパルス信号を有するパルス信号列の受信タイミングが示されている。
【0046】
この受信パルス信号列は、増幅器202に入力される。同期確立動作時には、タイミング制御部206から増幅器202に、16相のクロック信号のすべてが順次、オンオフ制御信号として出力される。
【0047】
このオンオフ制御信号は、図7の4段目に示されている。図7の4段目に示されるように各クロック信号が出力される期間は、互いにずれている。ここでは一例として、長周期の128倍の期間(つまり、128個分のパルス信号が送信される期間)だけ、第1のクロック信号が出力され、その期間が終わると、第2のクロック信号が同じく長周期の128倍の期間(ここでは、長周期が100ナノ秒なので、12800ナノ秒)だけ出力される。そして、16相のクロック信号が、出力期間をずらして順次出力される。従って、16相のクロック信号の出力が一巡するためには、128(パルス)×100(ナノ秒/パルス)×16(相)=204800(ナノ秒)だけの時間が必要となる。ここで、挙げた128という値は、信号電力を積分により増大させることにより信号対雑音比を増大させる度合いにより設定される値であり、パルス数が128の場合には信号対雑音比が21dB増大する。
【0048】
そして、このオンオフ制御信号によって、増幅器202のオン状態は、16相のオン期間に分けられる。従って、増幅器202からは、各相のオン期間での受信信号が検波器203を介して積分器204に入力される。
【0049】
積分器204では、上記16相のオン期間のそれぞれで得られた受信信号について、積分期間に渡って検波結果の積分が行われる。ここで、積分期間は、各クロック信号の出力期間に対応するので、12800ナノ秒である。積分期間は、複数の積分繰り返し単位期間で構成されており、この積分繰り返し単位期間の時間長は、長周期、つまりパルス信号の送信間隔(ここでは、100ナノ秒)に対応する。すなわち、ここでは、Jの値は、128である。各積分繰り返し単位期間は、K個の単位積分期間で構成され、単位積分期間は、単位積分期間制御信号によって設定される。各単位積分期間は、増幅器202の各オン期間に対応する。すなわち、ここでは、Kの値は16である。
【0050】
こうして積分器204では、各積分期間で用いられるクロック信号が異なる、つまり、各積分期間で積分に用いられる積分単位期間が異なるので、期間識別番号1〜16のそれぞれに対応する積分値が得られる。この積分値が、図7の最下段に示されている。ここで、受信パルス信号は100ナノ秒周期で現れるので、期間識別番号1〜16の積分値のうちの1つにピークが現れる。すなわち、ここでは、期間識別番号1〜16の単位積分期間のそれぞれがパルス信号の受信タイミング候補として用いられており、積分器204では、16個の受信タイミング候補のそれぞれに対する積分値が得られる。
【0051】
そして、レベル検出部205では、16個の積分値のうちで最大の積分値を持つ期間識別番号が特定される(図7の最下段における最も大きいピークに対応する)。この特定された期間識別番号に対応するタイミングが、同期タイミングである。
【0052】
ここで、増幅器202の各オン期間は受信窓として用いられ、各オン期間の時間長は、クロック信号を構成するパルス信号のパルス幅(約6.3ナノ秒)に対応する。すなわち、受信窓幅が基地局100から送信されるパルス幅に比べて大分広くなっている。従って、ここで行われている同期確立処理では、粗い同期がとられている。
【0053】
そして、タイミング制御部206は、同期処理で特定された同期タイミングに基づいて、測距動作の基準タイミング、つまり、増幅器202をオンするタイミングを決定する。ここで、増幅器202の出力信号は、積分処理が完了するまでの処理に掛かる時間だけ遅延する。そのため、最大の積分値に対応する、積分器204への入力クロック信号と、その最大の積分値に対応する受信信号が増幅される際に増幅器202へ入力されたクロック信号には、この処理遅延に対応する時間だけずれが生じている。従って、タイミング制御部206は、最大積分値が得られたクロック信号の識別番号よりも処理遅延に対応する順番だけ前のクロック信号を、測距動作の基準タイミング信号とする。すなわち、処理遅延に1クロック信号分の時間が見込まれるときに、最大積分値がクロック信号Φn+1で得られた場合には、タイミング制御部206は、クロック信号Φnを測距動作の基準タイミング信号とする。
【0054】
また、タイミング制御部206は、同期処理で特定された同期タイミングに基づいて信号レベルデータ保持信号を形成し、データ保持部207に出力する。これにより、最大積分値が得られる単位積分区間における積分器204の出力レベルが保持される。
【0055】
〈無線端末200の測距動作〉
図8は、測距動作の説明に供する図である。
【0056】
図8において、最上段には、タイミング制御部206から出力された測距動作の基準タイミング信号に基づいて増幅器202で増幅された受信パルス信号が示されている。
【0057】
この増幅後の受信パルス信号は、検波器203で検波処理され、検波結果がコンパレータ208に出力される。この検波結果の波形は、図8の2段目に示されている。同図に示されているように、検波器203での回路遅延A(ナノ秒)が存在する。
【0058】
検波器203から出力された検波結果は、積分器204を介すことなく、コンパレータ208の一方の入力端に入力される。そして、データ保持部207に保持されている比較基準電圧と、入力検波結果との大小比較結果に応じた信号が、コンパレータ208から出力される。このコンパレータ208の出力信号は、図8の3段目に示されるように、矩形波形となる。同図に示されているように、コンパレータ208での回路遅延B(ナノ秒)が存在する。
【0059】
コンパレータ208の出力信号は、UWBパルス発生部209に入力される。UWBパルス発生部209は、コンパレータ208の出力信号に応じた信号を発生する。これにより、受信パルス信号に同期して送信パルス信号を発生し、無線端末200は、パルス信号を基地局100に対して再放射することができる。UWBパルス発生部209で発生されたパルス信号は、図8の4段目に示されている。同図に示されているように、UWBパルス発生部209での回路遅延C(ナノ秒)が存在する。
【0060】
ここで、コンパレータ208の比較基準電圧には、積分器204の出力信号が用いられる。図9は、検波器203の出力波形(図9A参照)と、この検波器203の出力波形が入力された場合の積分器204の出力波形(図9B参照)が示されている。図9A及び図9Bの両方に周期的に現れている大きなピーク部分は、受信パルス信号に対応し、それ以外の部分は、ノイズ信号成分に対応する。
【0061】
図9Aを見て明らかなように、検波器203の出力信号には、信号レベルの大きいノイズ信号成分が多く含まれる。従って、検波器203の出力信号において、ピーク部分とノイズ信号成分とを明確に分離することは困難である。この検波器203の出力信号をコンパレータ208の比較基準電圧に用いる場合には、ノイズ信号成分の影響によって比較基準電圧の精度が低下し、この結果、無線端末200の送信パルス信号列には、受信パルス信号列に含まれるパルス信号と対応しない雑音パルス信号が含まれてしまう可能性がある。
【0062】
一方、図9Bを見て明らかなように、積分器204で入力信号が積分処理されることにより、ノイズ信号成分の多くが取り除かれる。これは、ノイズ信号成分のランダム性によるものである。従って、積分器204の出力信号においては、ピーク部分とノイズ信号成分とを精度良く容易に分離することができる。
【0063】
このように積分器204でノイズ成分が除去された信号のレベルを用いることにより、コンパレータ208の比較基準電圧が好適化されるため、無線端末200によって受信されるパルス信号列と送信されるパルス信号列とが一致する確率を高めることができる。
【0064】
さらに、積分器204における上記16相のオン時間においては、無線端末200の受信信号が非常に弱い場合(つまり、信号対雑音比が0デシベル程度の場合)にも、基地局100と無線端末200との連携により、測距感度を改善することができる。すなわち、無線端末200の受信信号レベルが小さい場合には、コンパレータ208の閾値(つまり、比較基準電圧)が雑音をコンパレートするレベルとなってしまうので、無線端末200は、雑音に対してもパルスを送出するようになってしまう。すなわち、雑音パルス信号が送出されてしまう。一方、基地局100では積算処理が行われることにより処理利得が得られる。これにより、無線端末200によって誤って放出された雑音パルス信号の影響が除去される。
【0065】
ここで、無線端末200は、コンパレータ208によって2値化された比較結果に基づいたパルス信号を送出する。このため、雑音と所望信号とのレベル比が、雑音パルス信号が送出される確率と一致する。従って、無線端末200の内部で雑音のみが検出される場合には、コンパレータ208がコンパレート動作しないことが望ましい。具体的には、本実施の形態では同期処理が行われるので、コンパレータ208がパルスと雑音とをコンパレートする部分を、パルス信号及び当該パルス信号の±8ナノ秒程度の部分のみに限定することできる。こうすることで、その他の部分では、コンパレート動作自体が行われずパルスが送信されることがないので、信号対雑音値が向上したと見なすことができる。本実施の形態ではフレーム周期が100ナノ秒で粗同期周期が6.3ナノ秒としているので、粗同期を行うことにより、信号対雑音比は、1/(6.3/100)=15.9倍(つまり、12デシベル)だけ改善される。
【0066】
このように、無線端末200において受信信号の積分処理による感度改善が行われなくても、基地局100が受信パルス信号を積分処理することにより、基地局100と無線端末200による測距処理全体の感度の改善が見込まれる。
【0067】
以上で説明した無線端末200の測距動作において、タイミング制御部206は、クロック信号を出力し、増幅器202、検波器203、コンパレータ208、及びUWBパルス発生部209の動作タイミングを制御する。
【0068】
ここで、上記した検波器203、コンパレータ208、及びUWBパルス発生部209の回路遅延A、B、Cがそれぞれ6〜7ナノ秒だとする。この場合には、タイミング制御部206は、増幅器202に入力される基準タイミング信号がクロック信号Φnなので、検波器203、コンパレータ208、及びUWBパルス発生部209には、それぞれクロック信号Φn+1、Φn+2、Φn+3が出力される。
【0069】
また、ここでは、検波器203、コンパレータ208、及びUWBパルス発生部209の電源は常時オンされており、検波器203、コンパレータ208、及びUWBパルス発生部209の作動タイミングは制御されていない。しかしながら、省電力化を実現するために、タイミング制御部206から受け取るクロック信号に基づいて、検波器203、コンパレータ208、及びUWBパルス発生部209をオン/オフしても良い。
【0070】
〈基地局100の測距動作〉
無線端末200から放出されたパルス信号列は、基地局100で受信される。
【0071】
基地局100のパルス検出部105では、受信パルス信号を検波され、得られた検波結果信号が積分部106に出力される。
【0072】
積分部106は、パルス検出部105から受け取る検波結果信号を、短周期クロック信号に同期してサンプリングする。上記したように短周期は1ナノ秒程度なので、積分部106では、高速なサンプリング処理が行われる。
【0073】
そして、積分部106は、複数の長周期において、サンプル信号を短周期クロック番号別に積分する。
【0074】
距離算出部107は、積分値の最も大きい短周期クロック番号に基づいて、基地局100と後述する無線端末200との間の距離を算出する。
【0075】
以上のように本実施の形態によれば、無線端末200において、測距動作と同期確立動作とで信号の経路が異なり、測距動作が行われる際には、コンパレータ208に対して検波結果が積分器204を経由することなく入力される。
【0076】
これにより、無線端末200の測距動作に積分処理が含まれないので、積分処理による遅延時間が発生せず、基地局100と無線端末200とによって行われる距離測定の精度を向上することができる。
【0077】
また、測距動作において、コンパレータ208で用いられる比較基準電圧には、積分器204で得られた積分結果が用いられる。特に、基準データには、同期確立動作で確立された同期タイミングについて得られた積分結果が用いられる。
【0078】
これにより、検波信号からノイズ信号成分が取り除かれた積分結果を比較基準電圧として用いるので、比較基準電圧が適正化される。この結果、基地局100と無線端末200とによって行われる距離測定の精度をさらに向上することができる。
【0079】
また、無線端末200において、タイミング制御部206は、測距動作が行われる測距期間において、同期タイミングでは増幅器202をオンさせ、同期タイミング以外のタイミングでは増幅器202をオフさせる。
【0080】
これにより、無線端末200における省電力が図られる。さらに、同期タイミング以外のタイミングで受信するノイズ信号成分が増幅器202の後段に出力されないので、測距処理におけるノイズ信号成分による悪影響を軽減することができる。さらに、特定のタイミング以外では、無線端末の増幅器の電源がオフされている。従って、無線端末において受信した基地局からの送信信号が再び、無線端末の受信アンテナに回り込むことを防止でき、発振動作等の誤動作を起こすことを防ぐことができる。
【0081】
また、無線端末200において、タイミング制御部206は、同期確立動作が行われる同期確立期間では、積分器204をオンさせ、測距期間では、積分器204をオフさせる。
【0082】
これにより、測距期間において無線端末200の消費電力を削減することができる。
【0083】
また、基地局100において、積分部106は、パルス検出部105から受け取る検波結果信号を、短周期クロック信号に同期してサンプリングし、サンプリングされた信号を短周期クロック番号別に積分する。
【0084】
これにより、受信タイミング候補を細かく設定することが可能となり、受信タイミングの検出精度を向上することができる。また、細かく設定された受信タイミング候補ごとにサンプリングされた信号を積分しているので、サンプリングされた信号に含まれるノイズ信号成分を除去することができる。すなわち、無線端末200の測距動作では改善されない信号対雑音比(S/N)を改善することができる。このため、受信タイミングの検出精度がさらに向上する。従って、精度良く検出された受信タイミングを用いた離間距離算出が可能となり、距離測定の精度を向上することができる。
【0085】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る無線端末300の構成を示すブロック図である。図10において、図4と同じ符号を有するブロックは、実施の形態1で説明した動作と同じ動作を行う。図10において、無線端末300は、タイミング制御部301を有する。タイミング制御部301は、タイミング処理部302と、タイミング処理部303と、発振器304とを有する。図4の無線端末200も明示しない発振器を有しているが、図10では、特に、タイミング処理部302及びタイミング処理部303に接続されている発振器304が明示されている。
【0086】
タイミング処理部302は、実施の形態1で説明した無線端末200のタイミング制御部206と同様の処理を行う。すなわち、タイミング処理部302は、第1の同期確立期間において確立された第1の同期タイミングに基づいて、増幅器202、積分器204、及びデータ保持部207の動作を制御する。
【0087】
タイミング処理部303は、測距期間と重なる第2の同期確立期間において確立された第2の同期タイミングに基づいて、増幅器202、積分器204、及びデータ保持部207の動作を制御する。
【0088】
発振器304は、タイミング処理部302及びタイミング処理部303において単位積分期間制御信号を生成するために用いられる基準信号を発振する。発振器304は、例えば、水晶発振器である。通常、民生分野に於いて実用的な水晶発振器の精度は、数十ppmから数ppm程度である。
【0089】
ここで、発振器304の精度と単位積分期間との関係について説明する。ここでは、無線測距システムにおいて用いられるUWBパルスのパルス幅は、1ナノ秒から2ナノ秒程度であり、単位積分期間は、実施の形態1と同様に6.3ナノ秒とする。また、水晶発振器の精度が、10ppmであるとする。
【0090】
基地局100の周波数基準の精度が10ppmに比べて十分良いと仮定した場合、無線端末300の発振器304の精度が10ppmとすると、基地局100と無線端末300との間で同一周期(例えば長周期)とみなされていた信号が6.3ナノ秒(16相のオン期間の内の1相のオン期間に相当)のずれが生じるまでに、630000ナノ秒だけ掛かる。一方、単位積分期間を設定するまでには、実施の形態1で説明したように、16相のクロック信号の出力が一巡する必要があり、128(パルス)×100(ナノ秒/パルス)×16(相)=204800(ナノ秒)の時間が必要となる。従って、同期確立動作が確立するまでに16相クロックがずれるズレ量は、許容範囲に収まる。
【0091】
しかしながら、実施の形態1で説明した同期確立動作が完了した後の測距動作の連続処理時間が630000ナノ秒より長くなる場合には、一度確立した同期がはずれてしまう。これに対応するために、単純にクロック相の数を16から少なくすることも考えられる。しかしながら、感度又は消費電力に関する劣化が生じてしまう。そこで、本実施の形態においては、タイミング制御部301が次のように動作する。
【0092】
タイミング制御部301のタイミング処理部303が、測距期間内に含まれる第2の同期確立期間において確立された第2の同期タイミングに基づいて、増幅器202、積分器204、及びデータ保持部207の動作を制御する。
【0093】
すなわち、タイミング処理部302が第1の同期タイミングに固定して測距動作に移行した後も、タイミング処理部303が、第2の同期確立期間においてレベル検出部205で特定された期間識別番号に基づいて、増幅器202、積分器204、及びデータ保持部207の動作を制御する。
【0094】
基地局100の発振器と無線端末300の発振器の精度が異なるため、前回の同期確立時から630000ナノ秒だけ経過すると、レベル検出部205で特定された期間識別番号が1つだけずれる、つまり、積分値が最大となる位相が16相の中で隣の相へ移行する。従って、タイミング処理部303は、測距動作中における同期クロックの位相の変化量をタイミング処理部302へ通知することにより、タイミング処理部302に、第2の同期タイミングに基づいて、増幅器202、積分器204、及びデータ保持部207の動作を制御させる。
【0095】
以上のように本実施の形態によれば、タイミング処理部302が第1の同期タイミングに固定して測距動作に移行した後も、タイミング処理部303が、第2の同期確立期間においてレベル検出部205で特定された期間識別番号に基づいて、増幅器202、積分器204、及びデータ保持部207の動作を制御する。
【0096】
こうすることで、測距期間において同期がはずれてしまうことを防止できるので、信号対雑音比の劣化を防止でき、正確な測距を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の無線測距システム、及び、無線端末は、UWB通信方式を用いる場合に、距離精度を向上するものとして有用である。
【符号の説明】
【0098】
100 基地局
101 タイミング信号出力部
102 送信パルス発生部
103,210 送信アンテナ
104,201 受信アンテナ
105 パルス検出部
106 積分部
107 距離算出部
200,300 無線端末
202 増幅器
203 検波器
204 積分器
205 レベル検出部
206,301 タイミング制御部
207 データ保持部
208 コンパレータ
209 UWBパルス発生部
302,303 タイミング処理部
304 発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局と無線端末とを具備し、パルス信号を用いて前記無線基地局と前記無線端末との離間距離を測定する無線測距システムであって、
前記無線端末は、前記無線基地局から送信されたパルス信号列を受信する受信手段と、
受信された前記パルス信号列を検波し検波信号を出力する検波器と、
前記検波信号を受信タイミング候補ごとに積分し積分結果を出力する積分器と、前記積分結果に基づいて前記無線基地局との同期タイミングを検出する検出手段と、を含む同期確立手段と、
前記積分結果を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記積分結果を基準データとして用いて、入力信号に応じた2値化信号を出力するコンパレータと、前記コンパレータから出力された2値化信号に基づいて送信パルス信号を生成するパルス生成手段と、を含む測距処理手段と、を具備し、
前記無線基地局は、前記パルス信号列の送信タイミングと、当該送信タイミングで送信されたパルス信号列に基づいて前記無線端末から送信されたパルス信号列の受信タイミングとの時間差を測定し、測定された前記時間差に基づいて前記離間距離を算出する算出手段、を具備し、
前記無線端末において測距動作と同期確立動作とで信号の経路が異なり、前記測距動作が行われる際には、前記コンパレータに対して前記検波信号が前記積分器を経由することなく入力される、
無線測距システム。
【請求項2】
前記無線端末は、前記検波器に入力されるパルス信号列を増幅する増幅器と、
前記測距動作が行われる測距期間において、前記同期タイミングでは前記増幅器をオンさせ、前記同期タイミング以外のタイミングでは前記増幅器をオフさせるタイミング制御手段と、をさらに具備する、
請求項1に記載の無線測距システム。
【請求項3】
前記タイミング制御手段は、前記同期確立動作が行われる同期確立期間では、前記積分器をオンさせ、前記測距期間では、前記積分器をオフさせる、
請求項2に記載の無線測距システム。
【請求項4】
前記保持手段は、前記同期確立動作が行われる同期確立期間において、前記同期タイミングについて得られた積分結果を保持し、
前記コンパレータは、前記測距動作が行われる測距期間において、前記同期確立期間で保持された前記積分結果を前記基準データとして用いる、
請求項1に記載の無線測距システム。
【請求項5】
前記無線基地局は、前記無線端末から送信される前記送信パルス信号を受信する受信手段と、
前記パルス信号列を構成するパルス信号が送信される周期よりも短い周期で、前記無線端末から送信された送信パルス信号をサンプリングし、サンプリングされた信号を積分する手段と、
前記サンプリングされた信号に基づいて、前記受信タイミングを検出する検出手段と、をさらに具備する、
請求項1に記載の無線測距システム。
【請求項6】
パルス信号列を受信する受信手段と、
受信された前記パルス信号列を検波し検波信号を出力する検波器と、
前記検波信号を受信タイミング候補ごとに積分し積分結果を出力する積分器と、前記積分結果に基づいて前記無線基地局との同期タイミングを検出する検出手段と、を含む同期確立手段と、
前記積分結果を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記積分結果を基準データとして用いて、入力信号に応じた2値化信号を出力するコンパレータと、前記コンパレータから出力された2値化信号に基づいて送信パルス信号を生成するパルス生成手段と、を含む測距処理手段と、
を具備し、
測距動作と同期確立動作とで信号の経路が異なり、前記測距動作が行われる際には、前記コンパレータに対して前記検波信号が前記積分器を経由することなく入力される、
無線端末。
【請求項7】
前記検波器に入力されるパルス信号列を増幅する増幅器と、
前記測距動作が行われる測距期間において、前記同期タイミングでは前記増幅器をオンさせ、前記同期タイミング以外のタイミングでは前記増幅器をオフさせるタイミング制御手段と、
をさらに具備する請求項6に記載の無線端末。
【請求項8】
前記タイミング制御手段は、前記同期確立動作が行われる同期確立期間では、前記積分器をオンさせ、前記測距期間では、前記積分器をオフさせる、
請求項7に記載の無線端末。
【請求項9】
前記保持手段は、前記同期確立動作が行われる同期確立期間において、前記同期タイミングについて得られた積分結果を保持し、
前記コンパレータは、前記測距動作が行われる測距期間において、前記同期確立期間で保持された前記積分結果を前記基準データとして用いる、
請求項6に記載の無線端末。
【請求項10】
前記タイミング制御手段は、前記測距期間内に含まれる第2の同期確立期間において、前記同期確立手段で検出された第2の同期タイミングでは、前記積分器をオンさせ、前記第2の同期タイミング以外のタイミングでは、前記積分器をオフさせる、
請求項2に記載の無線測距システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−164555(P2010−164555A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277532(P2009−277532)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】