説明

無線移動ネットワークにおいてスケーラブルビデオ符号化ストリームをスケジューリングする方法

【課題】無線移動ネットワークにおいて1つ又は複数のユーザへのスケーラブルビデオ符号化(SVC)ストリームをスケジューリングする方法を提供する。
【解決手段】ユーザに送信される層の重要性と、ユーザとノード又は基地局との間のチャネルの可能な送信レートとに基づいて動作するファジー論理推論に基づいて、全ての利用可能な物理リソースブロック(PRB)及びユーザの中で、最も高い効用を有するPRB/ユーザ対が求められ(310、312、314)、対のユーザにその対のPRBが配分される(316)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線移動ネットワークの分野に関し、より詳細には、無線移動ネットワーク内の1つ又は複数のユーザへのスケーラブルビデオ符号化(SVC)ストリームをスケジューリングする方法に関する。実施の形態は、スケーラブルビデオ符号化(SVC)が用いられる無線移動ネットワークにおいて複数のユーザへのビデオストリームをスケジューリングする問題に対処し、スケーラブルビデオの無線送信のための、ファジー論理コントローラに基づくコンテンツアウェア/チャネルアウェアスケジューラを提供する。
【背景技術】
【0002】
無線ネットワークにわたってマルチメディアアプリケーション及びマルチメディアサービスをサポートすることは、限られた帯域幅、限られたバッテリ電力、時間とともに変動するランダムなチャネル条件、及びサービス品質(QoS)要件等の制約及び不均一性に起因して困難である。
【0003】
チャネルアウェアでないスケジューラは、チャネル状態条件を利用しない。これらのスケジューラは基本的に、遅延制約及びスループット制約を満たすことに焦点をおき、ラウンドロビンアルゴリズム、重み付け公平キューイング(WFQ)アルゴリズム、及び優先度に基づくアルゴリズムを含む。そのようなアルゴリズムは、完全なチャネル条件、無損失、及び無制限の電源を仮定する。しかしながら、無線媒体及びユーザ移動性の特性に起因して、これらの仮定は完全には有効でない。BS(基地局)ダウンリンクスケジューラは、移動受信機から報告を返される、搬送波対干渉雑音比(CINR)を含むチャネル情報、例えばCSI(チャネル状態情報)を用いることができる。チャネルアウェアアルゴリズムのほとんどは、チャネル条件がフレーム期間内で変化しないと仮定する。チャネル情報が送信機及び受信機の双方において知られていることも仮定される。通常、スケジューラは、より良好なチャネル品質を有するユーザを優先して、マルチユーザダイバーシティ及びチャネルフェージングを利用する。しかしながら、公平性要件を満たすために、スケジューラは、他のユーザの要件も検討する必要があり、幾つかの補償メカニズムを導入する必要がある。
【0004】
コンテンツアウェアでない戦略(例えば、非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3を参照されたい)では、受信ビデオのサービス品質は、パケット遅延、パケット損失率、又はデータレートの包括的観点から測定される。一般に、これらの方法は、経時的な、ユーザにわたる無線チャネルの変動性を利用し、複数のユーザにわたる公平性を維持しながら、利用可能なリソースの大部分を、高データレートをサポートすることができる良好なチャネル品質を有するユーザに配分する。これに関して、これらの戦略は、効用関数を最大にすることを試み、この効用関数は、各ユーザの現在の平均スループットの関数、又は各ユーザのヘッドオブラインパケットのキュー長若しくは遅延の関数として定義される。
【0005】
しかしながら、ビデオ品質は、データレート、遅延、又はデータ損失の単純な関数ではなく、ビデオストリームの様々なセグメントにおける損失及び誤りの影響によって様々な形で影響を受ける(非特許文献3を参照されたい)。これは、1つの基本層及び複数の向上層を含むSVCビデオストリームにおいて明らかである。基本層が受信されている限り、受信機はビデオストリームを復号することができる。より多くの向上層が受信されると、復号されるビデオ品質は改善される。マルチユーザビデオ送信では、これによって、コンテンツアウェアスケジューリングポリシがネットワークリソースの利用を最適化する際に利用することができる或るタイプのマルチユーザコンテンツダイバーシティが導入される。コンテンツアウェア方法の例は、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、及び非特許文献8において見出すことができる。
【0006】
非特許文献5は、サブフローの概念を導入している。この概念では、ビデオフロー(ビットストリーム)が、サブフローの遅延制約、及び復号されたビデオの全体歪みの観点での相対的優先度に基づいて、幾つかのサブフローに分割される。この概念は、802.11e WLAN MACの優先順位付けスケジューリング機能と組み合わされる。この手法の1つの欠点は、この手法が、限られた数の優先度クラスしか可能にしない802.11e MACに限定されることである。この結果、ビデオストリームのサブフロー差別化が限られることになり、このため、マルチユーザコンテンツダイバーシティからの利得が限られることになる。さらに、マルチユーザチャネルダイバーシティが利用されない。
【0007】
非特許文献7は、ユーザごとの、コンテンツアウェアのパケット再順序付け、及びマルチユーザコンテンツアウェア優先度に基づくスケジューリングを提案している。ユーザ優先度は、各タイムスロットにおいて、多次元効用関数を最大にすることに基づいて求められる。多次元効用関数は、ユーザの歪みを最小にし、かつ(誤りのない)ユーザごとのデータレートを最大にすることを目的とする。コンテンツに基づく長期公平性も効用関数に含まれる。しかしながら、最適なマルチユーザ送信プロファイルは扱いにくく、スケジューラによって近似準最適解が用いられる。さらに、全てのタイムスロットにおいて多次元最適化を行うことが本質にあり、それによって、ユーザ及び利用可能なチャネルの数とともに計算複雑度が増大する。
【0008】
非特許文献9は、勾配に基づくスケジューリング及びリソース配分アルゴリズムを提案している。このアルゴリズムは、コンテンツ、期限要件、及び過去の配分履歴に応じて、様々なユーザの送信を優先順位付けする。シミュレーション結果は、提案されているアルゴリズムが、コンテンツを意識しない(content-blind)アルゴリズム及び期限を意識しない(deadline-blind)アルゴリズムよりも性能が優れており、輻輳したネットワークにおける平均PSNRの観点で6dBもの利得を有することを示している。この方式は、その配分プロセスにおいてチャネル条件を明示的に検討しない。無線環境では、これによって、非常に不良なチャネル条件を有する幾つかのユーザが、それらのユーザのビデオ品質要件を満たすために、利用可能なチャネルリソースのほとんど全てを用い、全体性能が不良となる。これを回避するために、所定のしきい値未満のチャネル品質を有するユーザへのアクセスを拒否することが提案されているが、これによって無線カバレッジが制限される。
【0009】
上記の方式によって共有される共通の手法は、スケジューリングの優先度を求めるのに、品質又は歪みの精密な数値又は「クリスプ」値に依拠することである。しかしながら、ビデオ品質は主観的なものであり、ビデオストリームの様々なセグメント間の重要度を、ビデオ品質に対するそれらのセグメントの相対的影響に基づいて区別することは比較的簡単である一方、これらの差を定量化することは困難である。上記の提案はいずれも、コンテンツアウェアスケジューリングとチャネルアウェアスケジューリングとの間の本質的矛盾、及びこのトレードオフを管理することによる無線カバレッジ向上の可能性を検討していない。
【0010】
ファジーコントローラを用いて無線システムにおけるビデオデータのストリーミングを制御する問題を扱う複数の刊行物が存在する。例えば、M. Flurry他による刊行物の非特許文献10は、無線ネットワークにおいてビデオストリーミングの制御にファジー制御論理を適用する基本的な可能性を記載している。SVCデータのためにファジー論理コントローラを用いることは、非特許文献11によって記載されている。ファジー論理制御を用いてビデオストリーミングを制御する可能性が記載されているが、ファジー論理への入力変数は、ビデオストリーミングの詳細を検討せず、特にスケーラブルビデオ符号化(SVC)ストリームの詳細を一切検討していない。
【0011】
このため、従来技術による手法では、従来から、リソース配分のために二分決定が用いられてきた。例えば、ユーザは特定のレートでサービス提供されるべきであるか、又はドロップされるべきであるかのいずれかである。このため、より低い品質でより多くのユーザにサービス提供するか、又はより高い品質でより少ないユーザにサービス提供するかに関する論点が常に存在していた。無線リソースが限られていることに起因して、セルエッジ容量と全体システム容量との平衡をとることが、従来技術の手法において常に問題であったが、従来のシステムは、他のセルからのハンドオーバー、予期しないトラフィック上昇等を許容するために、意図的に全負荷で動作しない(負荷マージン)。これによって、非効率的なリソース利用となる。
【0012】
従来技術による手法の上述した制限は、チャネルアウェアのみの手法又はコンテンツアウェアのみの手法に基づいてユーザにサービス提供する既知の手法を示す図1に関して、以下でより詳細に説明する。
【0013】
図1(a)において、セル100内のユーザにサービス提供する基地局BSを有する無線ネットワークの1つのセルの概略図が示されている。セルはエッジ領域102を含み、図1(a)に示す例では、2つのユーザUE及びUEが基地局BSによってサービス提供されている。ユーザUEはセル100の中心領域104内にあるのに対し、ユーザUEはセルエッジ102にある。チャネルアウェアのみの手法を適用する場合、良好なチャネル条件を有するユーザがサービス提供される一方、不良なチャネル条件を有するユーザは無視される。図1(a)に示す場合では、セル100の中心領域104内のユーザは一般に、良好なチャネル条件、より詳細には、セルエッジ102におけるユーザUEのチャネル条件よりも良好なチャネル条件を有し、それによって、チャネルアウェアのみの手法を適用する場合、ユーザUEがサービス提供される一方、ユーザUEは無視されることになる。
【0014】
図1(b)は、ユーザUE及びUEを有する図1(a)のセルを示し、コンテンツアウェアのみの手法を適用するときの状況を示している。そのような手法を適用する場合、システムは全ての需要にサービス提供することを試みるが、不良なチャネル条件を有するセルエッジ102におけるユーザUEのようなユーザがより多くのリソースを割り当てられ、それによって、最終的に、システムはリソースが不足し、これによってセル100の中心領域におけるユーザUEにサービス提供することができない。このため、従来技術による手法は、ネットワーク全体に対する良好なビデオ配信の提供を可能にしない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】P. Falconio及びP. Dini、「Design and performance evaluation of packet scheduler algorithms for video traffic in the high speed downlink packet access」、Proc. IEEE PIMRC, Barcelona, Spain, Sep. 2004, pp. 2202-2206
【非特許文献2】D. Tse及びP. Viswanath、Fundamentals of Wireless Communication、Cambridge-University-Press, 2005
【非特許文献3】H. Wang、L. Kondi、A. Luthra、及びS. Ci、4G Wireless Video Communications、John-Wiley-and-Sons, 2009
【非特許文献4】G. Liebl、H. Jenkac、T. Stockhammer、及びC. Buchner、「Radio link buffer management and scheduling for wireless video streaming」、Telecommunication Systems, Springer Science & Business Media B.V., vol. 30/1-3, pp. 255-277, Nov. 2009
【非特許文献5】M. van der Schaar、Y. Andreopoulos、及びZ. Hu、「Optimized scalable video streaming over IEEE 802.11a/e HCCA wireless networks under delay constraints」、IEEE Trans. on Mobile Computing, vol. 5, no. 6, pp. 755-768, 2006
【非特許文献6】L. Choi、W. Kellerer、及びE. Steinbach、「On cross-layer design for streaming video delivery in multiuser wireless environments」、Eurasip Journal on Wireless Communication and Networking, vol. 2006, pp. 1-10, 2006
【非特許文献7】P. V. Pahalawatta、R. Berry、T. N. Pappas、及びA. K. Katsaggelos、「Content-aware resource allocation and packet scheduling for video transmission over wireless networks」、IEEE Journal on Sel. Areas on Commun., vol. 25, no. 4, pp. 749-759, 2007
【非特許文献8】J. Huang、Z. Li、M. Chiang、及びA. K. Katsaggelos、「Joint source adaptation and resource allocation for multi-user wireless video streaming」、IEEE Trans. on Circuits and Systems for Video Technology, vol. 18, no. 5, pp. 582-595, 2008
【非特許文献9】X. Ji、J. Huang、M. Chiang、G. Lafruit、及びF. Catthoor、「Scheduling and resource allocation for SVC streaming over OFDM downlink systems」、IEEE Trans. on Circuits and Systems, vol. 19, no. 10, pp. 1549-1555, 2009
【非特許文献10】M. Flurry他、「Resource-Aware Fuzzy Logic Control of Video Streaming over IP and Wireless Networks」
【非特許文献11】X. Wang、「Using Fuzzy Logic Controller to Implement Scalable Quality Adaptation for Stored Video in DiffServ Networks」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、ファジー論理を用いて、無線移動ネットワーク内の1つ又は複数のユーザへのスケーラブルビデオ符号化(SVC)ストリームをスケジューリングする改善された手法を提供することである。
【0017】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項13に記載のコンピュータプログラム製品、請求項14に記載の無線移動ネットワーク、及び請求項15に記載の無線移動ネットワークのノードによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の実施の形態は、無線移動ネットワークにおいて1つ又は複数のユーザへのスケーラブルビデオ符号化(SVC)ストリームをスケジューリングする方法であって、
(a)利用可能な物理リソースブロック(PRB)及びユーザの中で、最も高い効用を有するPRB/ユーザ対を求めるステップと、
(b)前記対の前記ユーザに前記対の前記PRBを配分するステップと、
を含み、前記効用は、ファジー論理推論を用いて求められ、該ファジー推論の前記入力は、前記ユーザにスケジューリングされる前記SVCストリームの層の重要性と、前記PRBにわたる前記ユーザの送信レートとを含む、無線移動ネットワークにおいて1つ又は複数のユーザへのスケーラブルビデオ符号化ストリームをスケジューリングする方法を提供する。
【0019】
実施の形態によれば、各PRBは、前記無線移動ネットワークのノードと前記ユーザとの間の、ユーザ依存の、時間とともに変動する対応するチャネル品質を含み、該チャネル品質は、前記PRBにわたる前記ユーザの最大可能送信レートによって表され、前記SVCストリームは複数の層を含み、先行層は該層の従属層のいずれよりも高いか又は低い層インデックスを有し、前記先行層は、該層の従属層のいずれよりも前に前記ユーザに送信され、前記重要性は、前記ユーザに送信されるSVC層の重要度を、該SVC層の前記層インデックスに基づいて示す。
【0020】
前記ファジー論理推論の前記ファジールールは、
(1)重要性が高い場合、効用は高い、
(2)重要性が低い場合、効用は低い、
(3)レートが高い場合、効用は高い、
(4)レートが低い場合、効用は低い、
を含むことができる。
【0021】
実施の形態によれば、前記ファジー論理推論はゼロ次菅野ファジー推論であり、該ゼロ次菅野ファジー推論に基づいて、前記効用は以下のように表され、
【数1】

=効用、
μ=クリスプ値を有する重要性のメンバシップの度合い又はメンバシップ関数、
μ=クリスプ値を有するレートのメンバシップの度合い又はメンバシップ関数、
(t,k,φ)=タイムスロットtにおいてPRBφの副搬送波kを用いてユーザに送信される、最も高い重要性を有するSVCストリーム層の重要性、
(t,k,φ)=タイムスロットtにおいてPRBφの副搬送波kを用いてPRBφにおいて達成可能なユーザのビットレート、
HIGH=高重要性集合、
HIGH=高レート集合、
(VHIGH)=α、
(RHIGH)=1−α、及び
α=SVCストリームのスケジューリング時に、コンテンツアウェアネスとチャネルアウェアネスとの間のトレードオフを決定する効用係数、
である。
【0022】
実施の形態によれば、前記無線移動ネットワークは1つ又は複数のノードを備え、ノードは複数のユーザにサービス提供し、前記SVCストリームのピクチャ群(GOP)は複数のタイムスロットの間に送信され、各タイムスロットは複数のPRBを含み、各PRBは複数の副搬送波を含み、前記方法はタイムスロットごとに、かつタイムスロットにおける副搬送波ごとにステップ(a)及び(b)を繰り返す。それぞれの前記ユーザに送信されるSVCストリームデータをバッファリングすることができ、前記方法は、
(i)現在のタイムスロットについて、SVCストリームデータがバッファリングされる、前記ノードによってサービス提供されるアクティブなユーザが存在するか否かを判断するステップと、
(ii)アクティブなユーザが存在する場合、前記現在のタイムスロットにおいて利用可能な配分されていないPRBが存在するか否かを判断するステップと、
(iii)利用可能な配分されていないPRBが存在しない場合、前記次のタイムスロットに進むステップと、
(iv)利用可能な配分されていないPRBが存在する場合、前記バッファリングされたSVCストリームデータによって表されるSVCストリーム層の前記重要性を求め、アクティブなユーザごとに、前記現在のタイムスロットにおける全ての配分されていないPRBの前記品質を求めるステップと、
(v)ユーザごとに、前記層重要性及び前記PRB品質のファジー論理関数として全ての配分されていないPRBの前記効用を求めるステップと、
(vi)前記効用を最大にする前記ユーザ−PRB対を選択するステップと、
を含むことができる。
【0023】
さらに、前記方法は、
(vii)前記現在のタイムスロットにおける配分されていないPRBのリストから前記選択されたPRBを除去するステップと、
(viii)前記選択されたユーザのバッファを更新するステップと、
(ix)ステップ(i)〜(viii)を繰り返すステップと、
を含むことができる。
【0024】
ステップ(iii)において、前記次のタイムスロットは前記現在のタイムスロットとなる場合があり、前記方法はステップ(ii)に戻る。
【0025】
実施の形態によれば、前記SVCストリームの層の前記重要性は以下のように求められ、
【数2】

=前記ユーザの単一のGOP内の層の総数
である。
【0026】
実施の形態によれば、時点tにおける前記PRBφにわたる前記ユーザiの前記送信レートは以下のように求められ、
(t,φ)=GmuxBlog(1+ε(φ)γ(t,φ))
γ(t,φ)=推定受信信号対雑音比(SNR)、
mux=MIMO空間多重化利得、及び
ε(φ)=γ(t,φ)の場合の許容推定誤差、
である。
【0027】
実施の形態によれば、平均品質、及び重要性が正規化されたスループットに基づいて前記ユーザの前記スケジューリングの前記性能が評価される。前記ノードから距離dにあるユーザiについて、前記平均品質、及び前記重要性が正規化されたスループットは以下のように求められ、
【数3】

=前記ユーザiのGOP内の層の総数、
ρ=層lの前記先行層のうちのいずれかが欠落している場合にゼロであり、そうでない場合に1、
i,l(d)=前記遅延期限の前に送信されるユーザiの層lのビット数、
bits(l,i)=ユーザiの層lのビット数、
E{Nbits(l,i)}=Nbits(l,i)の統計平均、
=全てのl+1個の層が誤りなく受信された場合に平均PSNRであり、l<1の場合にゼロ、
であり、前記ノードに最も近い前記p%のユーザの中の一ユーザについて、前記平均品質、及び前記重要性が正規化されたスループットは以下のように求められ、
【数4】

sec(p)=前記p%のユーザによって占有されている前記ノードを中心とした前記セクタの半径、及び
(p)=dsec(p)によって定義された前記セクタ内の単一のユーザの前記距離dのpdf、
である。
【0028】
本発明の実施の形態は、無線移動ネットワークであって、複数の基地局と、複数の移動ユーザであって、基地局は1つ又は複数の移動ユーザにサービス提供する、複数の移動ユーザと、を備え、前記基地局のうちの1つ又は複数は、本発明の方法に従って、前記基地局によってサービス提供される1つ又は複数のユーザにSVCストリームをスケジューリングするためのスケジューラを備える、無線移動ネットワークを提供する。
【0029】
本発明の実施の形態は、無線移動ネットワークのノードであって、本発明の方法に従って、該ノードによってサービス提供される1つ又は複数のユーザにSVCストリームをスケジューリングするためのスケジューラを備える、無線移動ネットワークのノードを提供する。
【0030】
このため、本発明は、セル中心ユーザ又はセルエッジユーザのみでなく、ネットワーク全体への良好なビデオ配信のための手法を提供する。本発明による手法によれば、ファジー論理理論を用いて、ビデオコンテンツの質的(言語的/意味論的)値と、チャネル品質の量的値とを組み合わせて、数値的な効用値を得る。これによって、コンテンツアウェアネスとチャネルアウェアネスとの間の平衡を提供することによって、ネットワーク全体にわたってビデオ配信を改善することが可能になる。この平衡は、コンテンツアウェアとチャネルアウェアとのトレードオフが利用されるように、システム要件に基づいて調整することができる。さらに、スケーラブルビデオのダウンリンク無線カバレッジが向上し、機能停止が最小にされる。トレードオフによって、カバレッジエリア全体を通じてユーザ体験全体が向上する。サポートされるユーザ数は、中断のない再生の場合、40%も向上させることができる。さらに、短く知覚不可能な中断が許容される場合、80%の向上が可能である。
【0031】
本発明の実施の形態は、無線移動ネットワークにおいて複数のユーザへのビデオストリームをスケジューリングするための新たな手法、より詳細には、無線移動ネットワークにおいてユーザへのSVCストリームをスケジューリングする手法を提供する。本発明による手法によれば、スケジューリングは、いわゆる「効用」に基づいて有効にされる。「効用」は、本発明の実施の形態によれば、ユーザに送信される層の重要性と、ユーザとノード又は基地局との間のチャネルの可能な送信レートとに基づいて動作するファジー論理推論に基づいて求められる。実施の形態によれば、全ての利用可能なPRBの中で最も高いユーザ効用を有するPRB−ユーザ対が求められ、ユーザへのSVCデータの送信を達成するために、その対のそれぞれのPRBがユーザに配分される。
【0032】
本発明の実施の形態によれば、マルチユーザコンテンツアウェア/チャネルアウェアに基づくスケジューリングアルゴリズムが教示され、このアルゴリズムでは、菅野ファジー論理推論法に基づいてユーザチャネルアクセス優先度が選択される。ファジー論理システム手法の利点は、この手法が、数値変数及び言語(質的)変数の双方を組み込んでいることである。この手法は、複数の判断基準を同時に検討し、小型の言語ルールベースを用いて人間の体験をモデル化する機能を有する。この研究との関連で、ファジー論理理論は、コンテンツ重要度が言語変数として表され、チャネル品質の数値と組み合わされ、スケジューリング優先度が求められることを可能にする。ファジー推論法を用いて、チャネルのユーザごとの品質推定値と、ユーザに送信される次のビデオデータの、コンテンツに依拠する重要度との多項式関数として、チャネル単位でユーザごとの動的効用を定義する。詳細には、多項式関数によって、ビデオ品質の向上のためのコンテンツアウェアネスと、より高いチャネルスループットのためのチャネルアウェアネスとの間のトレードオフが決まる。
【0033】
本発明による手法は、短い時間スケールにわたる多次元最適化と関連付けられた計算複雑度を回避し、スケジューラの動的最適化及びスケーラビリティを可能にする。この手法は、スケジューリング優先度を求めるのに、品質又は歪みの精密な数値に依拠しない。しかしながら、ビデオ品質は主観的なものであり、ビデオストリームの異なるセグメント間の重要度を、それらのセグメントのビデオ品質に対する相対的な影響に基づいて区別するのは比較的簡単である一方、これらの差異を定量化するのは困難である。このため、本発明による手法は、コンテンツアウェアスケジューリングとチャネルアウェアスケジューリングとの間の本質的な対立を管理し、それらの間のトレードオフを管理することによって無線カバレッジを向上させる。
【0034】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ユーザにサービス提供する既知の手法を示す図であり、図1(a)はチャネルアウェアのみの手法に基づいて動作する1つのセルの概略図であり、図1(b)はコンテンツアウェアのみの手法に基づいて動作する1つのセルの概略図である。
【図2】SVC符号化ビデオストリームのGOP構造を示す図である。
【図3】配分プロセスを実施する本発明によるスケジューラの一実施形態を示す概略図である。
【図4】図3のスケジューラのスケジューリング方法を示す流れ図である。
【図5】全ての利用可能なPRBの効用(PRB効用)を求める本発明によるプロセスを更に詳細に示すブロック図である。
【図6(a)】本発明による配分プロセスの一例であり、図6(a)は第1のタイムスロットの配分プロセスを示す図であり、図6(b)は第2のタイムスロットの配分プロセスを示す図である。
【図6(b)】本発明による配分プロセスの一例であり、図6(a)は第1のタイムスロットの配分プロセスを示す図であり、図6(b)は第2のタイムスロットの配分プロセスを示す図である。
【図6(c)】本発明による配分プロセスの一例であり、図6(a)は第1のタイムスロットの配分プロセスを示す図であり、図6(b)は第2のタイムスロットの配分プロセスを示す図である。
【図7】1つの配分期間にわたるPRBの時間/周波数分布を示す図である。
【図8(a)】本明細書において用いられるシンボルの表である。
【図8(b)】本明細書において用いられるシンボルの表である。
【図9】様々なクラスのユーザ及びα=0について、PSNR対ユーザ数のプロットを示す図である。
【図10】様々なクラスのユーザ及びα=0について、重要性が正規化されたスループット(normalized significance throughput)対ユーザ数を示す図である。
【図11】様々なクラスのユーザ及びα=0.25について、重要性が正規化されたスループット対ユーザ数を示す図である。
【図12】様々なクラスのユーザ及びα=0.5について、重要性が正規化されたスループット対ユーザ数を示す図である。
【図13】様々な最大遅延制約、ユーザの100%、及びα=0について、重要性が正規化されたスループット対ユーザ数を示す図である。
【図14】様々な最大遅延制約、ユーザの20%、及びα=0.25について、重要性が正規化されたスループット対ユーザ数を示す図である。
【図15】様々な最大遅延制約、ユーザの100%、及びα=0.25について、重要性が正規化されたスループット対ユーザ数を示す図である。
【図16】様々な効用係数αについて、様々な数のセルエッジユーザ及びセル中心ユーザのスループットを示すグラフである。
【図17】中断が許容される場合の、様々な効用係数αについて、様々な数のセルエッジユーザ及びセル中心ユーザのスループットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態を、OFDMA無線インタフェースを用いたセルラダウンリンクについて説明する。3セクタからなる六角形セルラダウンリンク直交周波数分割多元接続(OFDMA)ネットワークの単一の120度のセクタが検討される。ここで、各セル(例えば図1を参照されたい)は、基地局(BS)によって3つの同一ロケーションにある指向性アンテナを用いてサービス提供され、各指向性アンテナはそのそれぞれのセクタにサービス提供する。タグ付けされたセクタは、そのセクタのエリアにわたって一様分布したN個のアクティブな無線ユーザにサービス提供する。各配分持続時間のシステム帯域幅はM個の物理リソースブロック(PRB)に分割され、PRBは、帯域幅Bを有する固定数のOFDMA副搬送波及び固定数のシンボル持続時間にわたる多次元リソースユニットである。
【0037】
同じBSの全てのセクタは同じPRBを同時に用いることができる。近傍セルからの隣接するセクタがクラスタを形成する。近傍クラスタからの干渉は、セクタ化されたアーキテクチャ並びに伝搬パス損失及びフェージングによって実質的に軽減される。同じクラスタの近傍セクタが同じPRBを決して同時に用いないことを確実にすることによって、全てのユーザについて同じクラスタのセクタ間の干渉を回避する単純なセル間協調アルゴリズムが仮定される。全てのユーザについてゼロのセル間干渉(ICI)を確実にすることによって、各ユーザによって必要とされるPRB数が最小にされ、これによって、より多くのPRBがセクタ内及びクラスタ内の他のユーザに利用可能にされる。
【0038】
セクタに配分されるPRBの数m≦Mは、同じクラスタ内の他のセクタに対するセクタの平均予測トラフィック負荷(ビット/秒単位)要件の関数である。Lclusterがクラスタ内の全てのセクタの総予測負荷を表し、Lsectorがタグ付けされたセクタの負荷を表すものとし、m≒Lsector/Lclusterとする。基地局は、各配分時に、一組のN個のユーザにm個のPRBを配分することができる。各配分時に、複数のPRBを単一のユーザに割り当てることができるが、各PRBは最大で1つのユーザにしか割り当てることができない。
【0039】
チャネル条件が様々なPRB及び様々なユーザにわたって変動することが仮定される。チャネル条件は、時間、周波数(例えば周波数選択性マルチパスフェージング)、及びユーザロケーションとともに変動する。したがって、各PRBは、そのPRBにわたるそのユーザの最大可能送信レートによって表される、ユーザ依存の、時間とともに変動する対応するチャネル品質を有する。r(t,φ)が、時点tにおけるPRBφにわたるユーザiの最大可能送信レート(ビット/秒)を表すものとする。このとき、
(t,φ)=GmuxBlog(1+ε(φ)γ(t,φ)) (1)
である。ここで、γ(t,φ)は、ダイバーシティ合成(MIMOアンテナダイバーシティ及びシャドーフェージングを含む)後の推定受信信号対雑音比(SNR)であり、GmuxはMIMO空間多重化利得であり、ε(φ)はγ(t,φ)の許容推定誤差である。γ(t,φ)及びε(φ)で構成される、ユーザからBSへのチャネル品質フィードバックは、チャネルのコヒーレンス時間内にスケジューラに提供されると仮定される。チャネル推定誤差の限界を考慮に入れることによって、送信中の誤差のリスクが最小にされる。
【0040】
スケーラブルビデオ符号化
以下において、スケーラブルビデオ符号化(SVC)方式が説明される。SVCストリームは基本層及び幾つかの向上層を有する。基本層が受信される限り、受信機はビデオストリームを復号することができる。より多くの向上層が受信されると、復号されるビデオ品質は改善される。SVCのスケーラビリティは、時間スケーラビリティ、空間スケーラビリティ、及び品質スケーラビリティを含む。時間スケーラビリティは、同じビデオを様々なフレームレートで表すことを指す。時間スケーラブルビットストリームは、図2に示すような階層予測構造を用いて生成される。図2は、SVC符号化ビットストリームのGOP(ピクチャ群)構造を示している。空間スケーラビリティは、ビデオを様々な空間分解能又はサイズで表すことを指す。通常、空間層のピクチャは、より低い時間層及び空間層の双方からの予測に基づく。品質(又はSNR)スケーラビリティは、同じビデオストリームを様々なSNR又は品質レベルで表すことを指す。
【0041】
SVCビデオストリームはユニットで構成され、ユニットのそれぞれはピクチャ群(GOP)と呼ばれる。本明細書との関連で、GOPは主要ピクチャに続く第1のフレームで開始し、次の主要ピクチャで終了する。2つのタイプの主要ピクチャ、すなわちイントラ符号化(I)フレーム及び予測(P)フレームが存在する。連続する主要ピクチャ間に、GOPを含む1つ又は複数の双方向予測(B)フレームが存在するようにすることができる。主要ピクチャ間のBフレームの数は
【数5】

によって与えられ、ここで、nTLは正の非ゼロの整数であり、時間スケーラビリティの時間レベル数を表す。
【0042】
GOPは複数の層を備える。各層は、その層の時間、品質、及び空間レベルによって定義され、同じ時間、品質、及び空間レベルを有するGOP内の全てのビットを含む。Iフレームの基本層を除いて、全ての層が他の層に従属する。本明細書では、従属層を有する層はこれらの従属層に対する先行部といわれる。この依存性は、所与の層の先行層のうちのいずれかが誤差又は損失に起因して復号することができない場合、この所与の層を受信機において正しく復号することができないことを意味する。単一のユーザに関して、先行層は、その層の従属層のうちのいずれの層よりも重要であり、所与のユーザについて最初にスケジューリングされるべきである。
【0043】
がユーザの単一のGOP内の層の総数を表すものとする。lがGOP内の層のインデックスを表すものとする。ここで、l=0,1,...,N−1であり、先行層は、その層の従属層のうちのいずれの層よりも低いインデックスを有する。本質的に、lは所与のユーザについて、GOPのスケジューリング層における優先度を表す。マルチユーザスケジューリングの場合、層の相対重要度vは以下のように定義される。
【数6】

【0044】
全てのユーザが同じ数Nの符号化層を用いる場合、重要度の上記の定義による符号化層の優先順位付けされたスケジューリングは、全てのユーザが、そのユーザの同じ数の最も重要な層を送信することを確実にすることを目指す。異なるユーザが異なる数Nの符号化層を有する場合、重要度の上記の定義による符号化層の優先順位付けされたスケジューリングは、全てのユーザが、そのユーザの同じ比率の最も重要な層を送信することを確実にすることを目指す。したがって、この手法は、複数のユーザのビデオ層の質的重要度に基づいて、それらの複数のユーザに対し公平性を実現することを目指す。
【0045】
この手法は、本明細書において定義されているように、GOP単位での重要度に焦点をあてているので、主要ピクチャが以前の主要ピクチャに従属する場合があるにもかかわらず、主要ピクチャ間の重要度を区別しない。これは、スケーラブルビデオ符号化にとって、全ての主要ピクチャが受信されることが極めて重要であるという議論によって正当化される。したがって、スケジューリングにおいて主要ピクチャ同士を区別する必要はない。
【0046】
本明細書における説明のために、時間スケーラビリティを有するSVCが検討されるが、本発明による手法は他のスケーラビリティモデルにも同様に適用可能である。例えば、以下のような階層BフレームGOP構造{K...}を検討する。ここで、KはI主要ピクチャ又はP主要ピクチャである(図2を参照されたい)。符号化層の数は、N=3である。各層は1つ又は複数のフレームで構成される。重要度順の層は、インデックスl=0を有する主要ピクチャ{K0}、インデックスl=1を有する{B1}、及びインデックスl=2を有する{B2,B2}である。重要性値はそれぞれ、v=1、v=2/3、及びv=1/3である。
【0047】
ファジー干渉
コントローラ設計の分野において、ファジー論理推論は最も一般的な手法のうちの1つである。さらに、通信ネットワークのためにファジー制御が提案されている(例えば、S. Setti、V. Kumar、N. Prasad、及びN. Raju、「Implementation of fuzzy priority scheduler for MANET and performance analysis with reactive protocols」、International Journal of Engineering Science and Technology, vol. 2, no. 8, pp. 3635-3640, Jan 2010、C. L. Chen、J. W. Lee、S. Y. Chen、及びY. H. Kuo、「Hierarchical cross-layer fuzzy control for compromise of multiple objectives in wireless mobile networks」、Proc. International Conference on Mobile Technology, Applications, and Systems (Mobility 08), vol. 6, Yilan, Taiwan, Sep. 2008, pp. 1-7を参照されたい)。通常、ファジー論理推論システムは、スカラー出力への入力データベクトルの非線形マッピングであり、ファジー論理コントローラにおいて広く用いられている(例えば、J. M. Mendel、「Fuzzy logic systems for engineering: A tutorial」、Proceedings of the IEEE, vol. 83, no. 3, pp. 345-377, Mar. 1995を参照されたい)。ファジー集合論は、非線形マッピングの詳細を確立している。ファジー推論システムは、ファジー化インタフェース、ファジールールベース、メンバシップ関数データベース、ルール評価プロセス、及び非ファジー化インタフェースで構成される。
【0048】
ファジー化インタフェースは、ファジー集合を定義し、適切なファジー集合においてクリスプ(実数値)入力のメンバシップの度合いを求める。ファジールールベースは、複数のファジーな(言語による)if−thenルールを含み、このif−thenルールはファジー推論システムの決定行動を定義する。メンバシップ関数データベースは、各入力言語変数及び出力言語変数と関連付けられたファジー集合のメンバシップ関数を定義し、ファジールールにおいて用いられる。
【0049】
各言語ルールは、「IF条件THEN帰結」の形態を有する。ルールのIF「条件」部が、ルール先行部又は前提である一方「THEN帰結」部は、ルール帰結部である。ルール先行部は、単一の入力言語変数がどの程度言語値に等しいか、すなわち言語値と関連付けられたファジー集合における、その入力言語変数のメンバシップの度合いを求める。このとき、ルールの帰結部は、同じ度合いまで真である。次に、この数(真値)はルール帰結部の出力言語集合のメンバシップ関数に適用される。結果としての値が、言語出力変数に割り当てられ、そのルールの評価結果となる。所与のファジールールが複数の先行部又は帰結部を有する場合、ファジー演算子(AND又はOR)を用いて、先行評価結果又は帰結評価結果をそれぞれ表す単一の数を得る。
【0050】
2つの主なタイプのファジールール、すなわちマンダニ(Mamdani)ファジールール及び高木−菅野(Takagi-Sugeno)(M. Sugeno「Fuzzy control」(North-Holland, 1988)、略して菅野)ファジールールが存在する。2つの入力言語変数及び1つの出力言語変数を含むファジー推論システムのためのマンダニファジールールは、以下のように記載することができる。
IF x1がX1 FL_OPERATOR x2がX2 THEN y1がY1; (3)
ここで、x及びxは入力変数であり、yは出力変数である。X、X、及びYはファジー集合であり、FL_OPERATORはファジー論理AND演算子又はファジー論理OR演算子のいずれかである。
【0051】
マンダニファジールールとは異なり、菅野ファジールールは、入力変数の関数をルール帰結部として用いる。上記のマンダニルールに対応する菅野ファジールールは
IF x1がX1 FL_OPERATOR x2がX2 THEN y1=f1(x1, x2); (4)
である。ここで、f()は任意のタイプの実関数である。ゼロ次菅野推論の場合、関数f()は定値である。
【0052】
最終的に、非ファジー化インタフェースは、全てのファジールールの組み合わされた出力をクリスプ出力に変換する。
【0053】
マルチユーザコンテンツアウェア及びチャネルアウェア共同の優先順位付けされたスケジューラ
次に、本発明の実施形態によるスケジューリングアルゴリズムを説明する。スケジューリングアルゴリズムは、任意の時点で、PRBをユーザに反復的に配分する。ΦARB(t,k)が、タイムスロットtの反復kによって配分されたPRBの集合を表し、ΦURB(t,k)が、タイムスロットtの反復kによって配分されていないPRBの集合を表すものとする。Φ(t,k)が、タイムスロットtの反復kによってユーザiに配分されたPRBの集合を表すものとすると、r(t,Φ)がPRBφ∈ΦURB(t,k)におけるユーザの達成可能なビットレートである。したがって、各PRBは、そのPRBにわたるそのユーザの最大可能送信レートによって表される、ユーザ依存の、時間とともに変動する対応するチャネル品質を有する。r(t,φ)の式は上記の式(1)において与えられる。
【0054】
ユーザiごとに、先行層がその層の後続層のうちのいずれの層よりも前に送信される。v(t,k)が、タイムスロットtの反復kによってユーザiに送信される最も高い重要性を有する層の重要性を表すものとする。PRBφ∈ΦURB(t,k)におけるタイムスロットtの反復kによるユーザiの効用は、
u1(t,k,φ)=Ffuzzy[vi(t,k),ri(t,φ)], (5)
である。ここで、関数Ffuzzy[v(t,k),r(t,φ)]はゼロ次菅野ファジー推論によって求められる。
【0055】
ファジー論理を用いたユーザ効用の計算
ユーザ効用を定義する関数u(t,k,φ)=Ffuzzy[v(t,k),r(t,φ)]は、以下のファジールールベースを適用することによって導出される。
1)ルール1:重要性v(t,k)が高い場合、ユーザの効用(user_utility)は高い
2)ルール2:重要性v(t,k)が低い場合、ユーザの効用(user_utility)は低い
3)ルール3:レートr(t,φ)が高い場合、ユーザの効用(user_utility)は高い
4)ルール4:レートr(t,φ)が低い場合、ユーザの効用(user_utility)は低い
【0056】
タイムスロットtの反復kごとに、全てのユーザi/PRBφ対にファジー推論が適用される。ここで、PRBφ∈ΦURB(t,k)である。
【0057】
highが、高重要性集合を表す、重要性の論議領域にわたるファジー重要性集合を表し、Vlowが、低重要性集合を表す、重要性の論議領域にわたるファジー重要性集合を表すものとする。U(V)が、重要性の関数であり、user_utilityの論議領域にわたって規定される、結果としてのファジーシングルトンを表すものとする。U(Vhigh)が、ルール1の高い結果を表し、U(Vlow)が、ルール2の低い結果を表す。μ(v(t,k),V)が、ファジー集合V∈{Vhigh,Vlow}内のクリスプ値v(t,k)を有する重要性のメンバシップの度合い又はメンバシップ関数を表すものとする。
【0058】
highが、高レート集合を表す重要性の論議領域にわたるファジーレート集合を表し、Rlowが、低レート集合を表す重要性の論議領域にわたるファジーレート集合を表すものとする。U(R)が、レートの関数であり、user_utilityの論議領域にわたって規定される、結果としてのファジーシングルトンを表すものとする。U(Rhigh)が、ルール3の高い結果を表し、U(Rlow)が、ルール4の低い結果を表す。μ(r(t,φ),R)が、ファジー集合R∈{Rhigh,Rlow}内のクリスプ値r(t,φ)を有するレートのメンバシップの度合い又はメンバシップ関数を表すものとする。
【0059】
ゼロ次菅野ファジー推論を適用した結果、user_utility uのクリスプ値が以下のように表される。
【数7】

【0060】
式(6)の分子における第1の総和は、ルール1及びルール2のファジールール評価の組み合わされた出力である一方、第2の総和は、ルール3及びルール4のルール評価の組み合わされた出力である。
【0061】
上記の式は、Σμ(v(t,k,φ),V)=1かつΣμ(r(t,k,φ),R)=1となるようにメンバシップ関数を選択することによって単純化される。この場合、
【数8】

である。
【0062】
通常、ファジーシングルトンU(Vlow)及びU(Rlow)は、それぞれU(Vlow)<U(Vhigh)及びU(Rlow)<U(Rhigh)の制約下で0と1との間の範囲内の任意の実数値を有することができる。性能最適化問題を単純化するために、結果のファジーシングルトンの可能な値が更に制約される。まず、U(Vlow)=U(Rlow)=0である。このとき、効用の式は以下のように更に単純化することができる。
【数9】

【0063】
さらに、U(Vhigh)及びU(Rhigh)の可能な値は、U(Vhigh)=αかつU(Rhigh)=1−αとなるように制約される。ここで、αは効用係数と呼ばれ、コンテンツアウェアネスとチャネルアウェアネスとの間のトレードオフを決定する。
【0064】
線形メンバシップ関数が用いられる。メンバシップ関数は、V=Vhighの場合にμ(v)=vであり、R=Rhighの場合にμ(r)=r/rmaxである。ここで、rmaxは、符号化オーバヘッド(r(t,φ)≦rmax)を有しない最も高次の変調を用いるときに、任意の単一のPRBにわたってサポートすることができる、ビット/秒単位の最大レートである。重要性の論議領域は、v(t,k,φ)の可能な値の範囲であり、これらの可能な値は全て0と1との間の実数である。レートの論議領域は、r(t,k,φ)の可能な値の範囲であり、これらの可能な値は全て0とrmaxとの間の実数である。
【0065】
スケジューリングアルゴリズム
スケジューラについて初期バッファ遅延又は最大遅延制約Tが定義される。各ユーザは、この持続時間中に、そのユーザのGOPレートに応じて1つ又は複数のGOPを受信しなくてはならない。ユーザがこの時間期間に複数のg個のGOPを受信する必要がある場合、同じインデックスlを有する全部でg個の層が存在する。スケジューラは、これらの層を、インデックスlを有する単一の層として扱い、これらの層が、同じインデックスl+1を有する全部でg個の層のうちのいずれの層よりも前に送信されることを確実にする。受信機において、層は再順序付けされ、層の再生順序に従ってフレームに再構成される。
【0066】
反復アルゴリズムは、時点tの任意の反復kにおいて以下のように動作する。
1)|ΦURB(t,k)|>0について、全ての利用可能なPRB及びユーザの中で最も高いユーザ効用を有するPRB−ユーザ対を見つける。
【数10】

3)PRBφをユーザiに配分する。
【数11】

4)このPRBを利用可能なPRBの集合から削除する。
ΦURB(t,k+1)=ΦURB(t,k)−{φ
5)全てのPRBが配分されるまで、すなわち|ΦURB(t,k)|=0となるまで上記のステップを繰り返す。
6)新たなタイムスロットt=t+TPRBについて上記のステップを繰り返す。ここで、TPRBは単一のPRBの持続時間である。
【0067】
換言すれば、実施形態によれば、タイムスロットごとの反復配分プロセスが提供される。ここで、反復ごとに、全ての利用可能なPRB−ユーザ対の中で最も高い効用を有するPRB−ユーザ対が選択される。PRBはユーザに配分され、利用可能なPRBの集合から削除される。上述したステップは、現在のタイムスロットにおいて全てのPRBが配分されるまで繰り返され、次に、ステップは次のタイムスロットについて繰り返される。本方法の一実施形態を、図3〜図6に基づいて以下で更に詳細に説明する。
【0068】
図3は、例えば、無線ネットワークの基地局において実行されるような配分プロセスを実施する本発明によるスケジューラの一実施形態を示す概略図である。図3において、複数のユーザ1,...,iが仮定され、各ユーザは、スケーラブルビデオストリームのデータを表すデータブロックを受信するためのバッファ200〜200に関連付けられている。より詳細には、バッファ200〜200において、それぞれのデータブロックはスケーラブルビデオストリームのそれぞれの層と関連付けられ、それらのデータブロックの重要度に従ってバッファ内に配列される。コンテンツアウェア及びチャネルアウェア共同スケジューラ202が設けられ、このスケジューラ202は、それぞれのバッファ200〜200からデータブロックを受信し、このデータブロックを、本発明によるスケジューリングプロセスに従って、スケジューラを組み込んだ基地局によってサービス提供されているそれぞれのユーザに転送する。図3において、利用可能な物理リソースブロック(PRB)が204に示され、これらの利用可能なブロックに基づいて、ユーザごと/PRBごとのチャネル品質が求められ、入力206としてスケジューラに返送される。スケジューラ202は、ユーザごとでPRBごとにパケットを出力バッファ208に出力し、出力バッファ208において、それぞれのユーザのためのそれぞれのデータブロックが、それらのデータブロックの優先度に従って記憶される。
【0069】
図4は、スケジューラ202(図3を参照されたい)のスケジューリング方法を示す流れ図である。本方法は、ステップ300において開始し、ステップ302において、空でないバッファ200〜200を有するアクティブユーザが存在するか否かが判断される。そのようなアクティブユーザが存在しない場合、本方法はステップ304において終了する。空でないバッファを有するアクティブユーザが存在する場合、本方法はステップ306に進み、ステップ306において、現在のタイムスロットにおいて利用可能なPRBがまだ存在するか否かが判断される。存在しない場合、本方法はステップ308に進み、現在の反復を抜けて新たな反復に入る。すなわち、本方法は、現在のタイムスロットがここで次のタイムスロットとなるように、次のタイムスロットへ進む。次に、本方法はステップ306に戻る。ステップ306において、PRBが現在のタイムスロットにおいて利用可能であると判断される場合、ステップ310において、各アクティブユーザのバッファ内のヘッドオブライン(HOL)層の重要性が、上記で詳細に説明したような方法で求められる。また、ステップ312において、ユーザごとに、現在のタイムスロットにおける全ての利用可能なPRBの品質が測定される。ステップ310に関して、重要性値は、通常、HOL層が完全に送信された場合のみ変化することに留意されたい。ステップ312において、最大でも、ユーザごとでタイムスロットごとに各PRBについて1つの測定値が必要とされる。このため、スケジューラ202は、それぞれのバッファ200〜200から受信した情報に基づいて、ステップ310の重要性を求め、ユーザごとに、ステップ312において測定された品質206を受信する。ステップ310及び312の出力はステップ314への入力であり、ステップ314において、ユーザごとに、上記で詳細に説明したように、HOL層重要性及びPRB品質のファジー論理関数として、全ての利用可能なPRBのユーティティが求められる。
【0070】
効用が求められると、ステップ316において、この効用を最大にするユーザ−PRB対が選択される。次に、ステップ318において、選択されたPRBは、現在のタイムスロットにおける利用可能なPRBのリストから削除され、ステップ320において、選択されたユーザのバッファが更新される。次に、本方法はステップ302に戻る。
【0071】
図5は、一実施形態による、全ての利用可能なPRBの効用(PRB効用)を求めるための本発明によるプロセスを更に詳細に説明するブロック図を示している。図5において、上述したステップ310及び312が示され、これらのステップは、PRB効用を求めるためにそれぞれの入力をステップ314に提供する。ステップ310及び312の出力は、ファジールール評価ステップ314aにおいて受け取られ、このステップ314aは、上述した原理に従ってそれぞれのルール出力を生成し、これらのルール出力は集計関数ステップ314bに入力される。集計関数ステップ314bは、ステップ314c及び314dによって求められた集合関数パラメータを更に受け取る。ステップ314cは、アプリケーションアウェアQoS(サービス品質)測定値を提供し、ステップ314dはアプリケーションアウェアQoS要件を提供する。ルール出力及び集合関数パラメータに基づいて、上述したように、PRB効用が求められ、図4のステップ316に出力される。
【0072】
以下において、本発明による配分プロセスの例を図6に関して説明する。図6(a)は、第1のタイムスロットの配分プロセスを示している。2つのユーザのみが存在していると仮定され、送信されるデータブロックのユーザごとの重要性は以下のとおりである。
データブロック1− 重要性値=1
データブロック2− 重要性値=0.7
データブロック3− 重要性値=0.3
【0073】
このため、図6(a)に示す重要性の値は、スケーラブルビデオストリームの第1の層、第2の層、及び第3の層の重要性を示し、この重要性は、双方のユーザについて、1、0.7、0.3である。これらの値は、本方法のステップ310において、上述したように求められる。
【0074】
ステップ312によって、PRB1及びPRB2のPRB品質が得られる。これらは、現在のタイムスロット(タイムスロット1)における利用可能なPRBとみなされる。ユーザ1のPRB品質は以下のとおりである。
PRB1=1
PRB2=0.5
【0075】
ユーザ2のPRB品質は以下のとおりである。
PRB1=0.2
PRB2=0.4
【0076】
このため、ユーザ1はセル中心により近いユーザであるのに対し、ユーザ2はセルエッジにより近いユーザであると仮定することができる。重要性及びPRB品質は、検討されるタイムスロット1について一定であり、反復中に変化しないと仮定される。図4及び図5に関して説明されるステップ314では、ユーザの効用又はPRB効用が求められ、第1の反復において、ファジー論理に従って、PRB1はユーザ1の第1の層に配分される。
【0077】
このため、反復1の終了時に、ユーザ1の第1の層がPRB1に配分されており、それによって、第2の反復、すなわち配分2について、ユーザ1の第1の層はもはや検討される必要がない。さらに、第1の反復において、PRB1はユーザ1に配分されているので、ステップ318において、図6(a)の反復2に示すように、PRB1は利用可能なPRBのリストから除去される。ファジー論理による残りの重要性値及びPRB品質に基づいて、ユーザ2がより高い効用を有すると判断され、したがって、PRB2がユーザ2の第1の層に配分される。ここでもまた、配分されたPRBは現在のタイムスロットにおける利用可能なPRBから除去され、それによって、説明される例では、反復3に示すように、現在のタイムスロットにおいて全てのPRBが配分されており、反復3では、利用可能なPRBがないので、配分がもはや行われない。このため、図4のステップ306において、現在のタイムスロットにおいて利用可能なPRBがないと判断され、それによって本方法は次のタイムスロット、すなわちタイムスロット2に移る(図6(b)を参照されたい)。本方法のステップ302では、依然として空でないバッファが存在すると判断され、より詳細には、ユーザ1及び2について、バッファにおいて、0.7及び0.3の残りの重要性値を有する更なる層が依然として利用可能であると判断される。新たなタイムスロットについて、新たなPRB品質測定が実行され、ユーザ1のPRB品質は、PRB1の場合に1が得られ、PRB2の場合に0.1が得られ、ユーザ2のPRB品質は、PRB1の場合に0.5が得られ、PRB2の場合に0.8が得られる。
【0078】
上述したように、この情報はファジー手法によって組み合わされて効用が求められ、得られた効用値が図6(b)に示される。これらの効用値は、ユーザ1について、PRB1の場合に0.7であり、PRB2の場合に0.07である。ユーザ2について、効用値は、PRB1の場合に0.35であり、PRB2の場合に0.56である。この結果、PRB1がユーザ1の第2の層に配分される。次に、本方法は次の反復、すなわち反復2へ進む。反復2において、効用値に基づいて、PRB2が第2のユーザ、すなわちユーザ2の第2の層に配分される。次に、反復3において、全てのPRBが現在のタイムスロットに配分されていると判断され、それによって本方法は次のタイムスロットへ進む。後続のタイムスロットについて、上述したステップが繰り返される。
【0079】
図6(c)は、セルエッジユーザ及びセル中心ユーザを含むセル内の複数のユーザにわたる重要性が正規化されたスループットを示している。図6(c)は、図4〜図6に示す実施形態に従って上記で説明した本発明による反復的配分プロセスによって達成可能な利点を説明する。見てとることができるように、チャネルアウェアのみの手法(α=0)の場合、全てのユーザについて、不良な性能しか達成されず、これはマルチユーザダイバーシティが利用されないことによって深刻化する。より詳細には、そのような手法では、多数のセル中心ユーザにサービス提供することができるが、サービス提供することができるセルエッジユーザ数は、ユーザ数とともに劇的に減少する。他方で、コンテンツアウェアのみの手法を適用するとき、十分に(所望の性能パラメータを満たして)サービス提供することができるユーザ数も、ユーザの増加とともに劇的に降下する。例えば、効用係数α=0.5を適用することによって、本発明によるコンテンツアウェア及びチャネルアウェア手法を適用するとき、サービス提供することができる可能なユーザ数が大幅に増大することを見てとることができる。
【0080】
性能メトリック及びパラメータ
マルチユーザコンテンツアウェア及びチャネルアウェア共同スケジューリングのための2つの主要なシステムパラメータ、すなわち効用係数α及びユーザ数Nが存在する。詳細には、観測のために、N−1個の競合ユーザについて、単一のタグ付けされたユーザが検討される。タグ付けされたユーザは、セクタの限られたエリア内の全てのユーザを代表する。効用係数αは、チャネル品質又はコンテンツ重要度に従ってスケジューラがどの程度優先順位付けをするかを決める。
【0081】
次に、コンテンツアウェアスケジューリングの性能を評価するための新規の主要性能メトリックを説明する。このメトリックは、重要性が正規化されたスループットZsig(p)である。用いられる他のメトリックは、それぞれ、ビット/秒単位のビットスループットZbit(p)及び平均PSNR Q(p)である。メトリックは、BSからランダムな距離dにあるタグ付けされたユーザについて計算される。ここで、d≦dsec(p)である。タグ付けされたユーザによって占有される、BSを中心とする120度セクタ形状領域の面積は、πdsec(p)/3であり、セクタの総面積のp%に等しいと定義される。ユーザの一様分布を仮定すると、このエリアはユーザの総数のp%を含む。
【0082】
解析モデル
タイムスロットあたりm個のPRBが存在し、ここで、タイムスロットはスケジューラの配分期間である。NTS個のタイムスロットの期間にわたる配分が検討され、ここでタイムスロットの持続時間はTPRB秒である。
【0083】
時間TPRBTSは、ユーザの1つ又は複数のGOPに属する全ての層の受信の最大遅延制約Tであると仮定される。フレームレートRframeは、Rframe=gNframe/Tとしての遅延制約に関する。ここで、NframeはGOPあたりのフレーム数であり、gはTにおいて送信されるGOPの数である。GOPレートはg/Tであり、ビデオがどのように符号化されたかによって決定される。持続時間Tにわたるスケジューリングアルゴリズムの動作期間が検討される。図7は、単一の配分期間にわたるPRBの時間及び周波数分布を示している。
【0084】
N−1個の他のユーザの層と競合するタグ付けされたユーザiの所与の層lを検討する。この期間の最後のスロットの最後の反復後に、MPRB=mNTS個のPRBのプールからのPRBの集合が各層と関連付けられる。各層と関連付けられたPRBの集合は、T時間期間内にユーザに層を送信することが実現可能な場合、その送信に必要とされる任意のグループ分けしたPRBの最小数を表し、実現可能でない場合、PRBの総数を表す。この集合からの各PRBは2つのカテゴリに分かれる。PRBは、ユーザに配分され、層のビットを送信するのに用いられたか、又は競合に起因して配分されなかったかのいずれかである。BSからのユーザの距離d及び長期シャドーフェージングの関数であるPRBあたりの平均レートR(d)がPRBの集合と関連付けられる。PRBの集合にわたる短期周波数選択性は、PRBごとの周波数領域等化、インターリーブ/符号化、及び分散副搬送波配分等のダイバーシティを用いて効果的に軽減されることが仮定される。これは、全てのt及び全てのφについてr(t,φ)=R(d)であることを意味する。この仮定は解析を単純にし、これによって物理層の複雑度が増大するが、これらの提案されるダイバーシティ方式は、LTE等の進化型OFDMA標準規格の特徴である。Gmux=1となるように、MIMOはアンテナダイバーシティモードにおいて用いられ、空間多重化モードでは用いられないと仮定される。
(d)=Blog(1+efadeγ(d)) (9)
ここで、γ(d)は平均SNRであり、efadeはpdf ffade(e)を有するシャドーフェージング確率変数である。R(d)のpdf、すなわちf(r,d)は、ffade(e)の変換として得られる。
【0085】
ユーザは、セクタにおいて一様分布すると仮定される。ここで、セクタの半径はdradであり、その面積はAsec=πdrad/3である。BSを中心とし、ユーザのp%によって専用される120度セクタの面積は、0.01pAsecであり、半径dsec(p)=(0.03pAsec/π)0.5を有する。半径dsec(p)によって画定されるセクタ内の単一のユーザの距離dは、pdf f(d,p)を有する一様なユーザ分布によって決まる確率変数であり、ここで、d≦dsec(p)≦drad及びdsec(100%)=dradである。
【0086】
bits(l,i)が、確率質量関数PLB(κ,l,i)を有する、ユーザiの層lのビット数を表すものとする。NPRB(l,i,d)が、ユーザiの層lを送信するのに必要とされるPRB数を表すとすると、
【数12】

である。
【0087】
PRB(k,l,i,d)が、PLB(k,l,i)及びf(r,d)から導出される、NPRB(l,i,d)の確率質量関数を表すものとする。
【0088】
i,lがユーザiの層lの重要性を表すものとし、ui,l(d)が、層lのビットを送信するときのユーザiの効用を表すものとする。
i,l(d)=Ffuzzy[vi,l,R(d)], (11)
【0089】
(l,i,d)が、f(r,d)から導出されたui,l(d)のpdfを表すものとする。Si,l(d)が、遅延制約の前に送信されるユーザiの層lのビット数を表すものとする。iが競合ユーザのインデックスを表すものとし、lがこのユーザの層のインデックスを表すものとする。SPRB(l,i,d)が、タグ付けされたユーザよりも高い効用を有する競合ユーザの層、及びタグ付けされたユーザの層l未満までの層を送信するのに必要とされるPRBの和を表すものとする。l>0について、
【数13】

である。ここで、関数I(条件)は、条件が偽である場合、0に等しく、そうでない場合、1に等しい。l=0について、
【数14】

である。
【0090】
差MPRB−SPRB(l,i,d)によって、タグ付けされたユーザの層lを送信するのに利用可能なPRB数が決まる。この差がゼロ又は負である場合、層のビットは送信されない。この差が非ゼロであり、正であり、かつNPRB(l,i,d)未満である場合、層の全てのビットではなく一部のビットが送信される。この差が非ゼロであり、正であり、かつNPRB(l,i,d)以上である場合、層の全てのビットが送信される。したがって、遅延期限の前に送信されるユーザiの層lのビット数は
【数15】

である。ここで、E{x}はxの統計平均を表す。
【0091】
ユーザのBSから距離dにあるそのユーザの重要性が正規化されたスループットSsig(d)は、
【数16】

であり、ここで、ρは、層lの先行層のうちのいずれかが欠落している場合、ゼロであり、そうでない場合、1である。
【0092】
ユーザのBSから距離dにあるそのユーザの平均PSNR Q(d)は、
【数17】

であり、ここで、qは、全てのl+1個の層が誤りなく受信された場合の平均PSNRであり、l<0についてゼロに等しい。
【0093】
BSに最も近いp%のユーザの中の一ユーザの重要性が正規化されたスループットZsig(p)は、
【数18】

である。
【0094】
BSに最も近いp%のユーザの中の一ユーザの平均品質Q(p)は、
【数19】

である。
【0095】
図8は、本明細書において用いられるシンボルの表を示している。
【0096】
数値結果
全てのユーザは、同一のトラフィック統計及び品質統計を用いてビデオシーケンスをストリーミングすると仮定される。具体的には、東京オリンピックビデオの最初の1時間の統計(G. V. der Auwera、P. T. David、M. Reisslein、及びL. J. Karam、「Traffic and quality characterization of the H.264/AVC scalable video extension」、Eurasip Journal on Advances in Multimedia, vol. 25, no. 2, 2008を参照されたい)が用いられる。このビデオシーケンスのトラフィック統計、品質統計、及びトレースは、http://trace.eas.asu.edu/、「H.264/AVC and SVC video trace library」において公表されている。ビデオシーケンスは、30フレーム/秒の共通中間フォーマット(CIF、352×288ピクセル)である。時間層は、量子化パラメータQ=48で、H.264SVCを用いて符号化されたビデオストリーム内に埋め込まれる。用いられるコーデックは、JSVM(バージョン5.9)という名称のSVC参照ソフトウェアである。GOP構造は{K..}であり、ここでK0はI主要ピクチャ又はP主要ピクチャである。このため、N=3、及びl∈{0,1,2}である。層lの確率分布PLB(k,l,i)、及び平均品質値qの集合は、http://trace.eas.asu.edu/、「H.264/AVC and SVC video trace library」から得られる。http://trace.eas.asu.edu/、「H.264/AVC and SVC video trace library」では、Iフレーム、Pフレーム、及びBフレームの平均品質値が層ごとに提供される。
【0097】
仮定が行われると、時間基本層(l=0)のフレームパターンは{K000K...}であり、ここでゼロが時間向上層1及び2のフレームに置き換わっていることに留意されたい。30フレーム/秒(fps)のフレームレートにおけるCIFシーケンスの場合、時間基本層は、7.5fpsのフレームレートを有するストリームを表すのに対し、基本層及び第1の向上層の組合せはフレームレートを15fpsまで増大させ、第2の向上層の受信は結果として30fpsのフレームレートとなる。幾つかの時間層のみを受信することに関連付けられたビデオ品質の計算の場合、基本層フレームのPSNR値の単純な平均化は行われない。なぜなら、対応する値は、人間の観測者が知覚する主観的品質と比較して実現不可能なほど高くなるためである。PSNRを通じた客観的品質測定における知覚的品質劣化を検討するために、復号器が、次のフレームが受信され復号されるまで、受信した基本層フレームを複製することが仮定される。次に、30fpsのフレームレートのシーケンスが比較される。同じ手順が、基本層及び第1の向上層を有するシーケンスの品質を、30fpsでの元のシーケンスと比較するのに採用される。
【0098】
本明細書において、G. V. der Auwera、P. T. David、M. Reisslein、及びL. J. Karam「Traffic and quality characterization of the H.264/AVC scalable video extension」(Eurasip Journal on Advances in Multimedia, vol. 25, no. 2, 2008)に従って、検討されるシーケンスのために値q=26.94dB、q=28.43dB、及びq=29.32dBが用いられ、ここで後者の値は単一層にエンコードされたときのシーケンスの品質と一致する。
【0099】
無線システムの場合、パラメータ値は、主に3GPP TR 25.814 V7.1.0、「Physical layer aspects for evolved universal terrestrial radio access (utra) (release 7)」、Sep. 2006、及び3GPP TS 36.211 V8.2.0、「Eutra physical channels and modulation (release 8)」、Mar. 2008から取られる。OFDM変調、並びに時間領域及び周波数領域におけるダイバーシティの効果的な利用に起因して、チャネルは時間及び周波数において平坦であると仮定される。pdf ffade(e)及び8dBの標準偏差を有する独立した対数正規シャドーフェージングが仮定されている。BSアンテナ利得、UEアンテナ利得、UE雑音指数、及び総セクタTX電力の値はそれぞれ、14dBi、0dBi、7dB、及び46dBmである。タイムスロット持続時間TPRBは0.5msである。セクタのカバレッジは250mの半径を有する。セクタmあたりのPRBの最大数はスロットあたり34個であり、各PRBが180kHzの帯域幅を有する。さらに、MIMO空間多重化を用いない64QAM変調の場合、各PRBにおける6ビット/秒/Hzの最大スペクトル効率が仮定される。したがって、PRBあたりの最大ビットレートrmaxは1080kビット/秒である。6dBの2×2のMIMOアンテナダイバーシティが仮定される。距離に依拠するパス利得は、G(d)[dB]=−128.1−37.6log10(d)によって与えられる。
【0100】
解析モデルにおいて用いられる全ての統計分布の中で、分布PLB(k,l,i)及びffade(e)は全て与えられる。分布PLB(κ,l,i)はhttp://trace.eas.asu.edu/、「H.264/AVC and SVC video trace library」から経験的に得られる一方、ffade(e)は対数正規であると推定される。f(d,p)のpdfは、dが範囲(0,dsec(p)]にわたって一様分布することを所与として変換から導出される。上述した他方の分布は、これらの3つの分布のうちの1つ又は複数から導出され、モンテカルロシミュレーションから数値的に得られる。
【0101】
図9は、ユーザの様々なクラス、及びα=0について、PSNR対ユーザ数のプロットを示している。ここで、ユーザは、セクタにおいてそれらのユーザが占有している領域に従って分類される。パラメータαは効用係数であり、コンテンツアウェアネスとチャネルアウェアネスとの間のトレードオフを決める。したがって、このシナリオはチャネルアウェアのみのスケジューリングに対応する。結果は、最も近い20%のユーザが、観測範囲全体にわたって最大PSNR性能を達成することを示している。更なるユーザの範囲が検討されると、PSNRは高速で悪化する。
【0102】
図10は、ユーザの様々なクラス、及びα=0について、重要性が正規化されたスループットメトリックを用いた対応するプロットを示している。結果は、最も近い20%のユーザが、観測範囲全体にわたって、重要性が正規化された最大スループット1を達成し、このため最大PSNR性能を達成することを示している。30fpsのフレームレートが検討され、このフレームレートは、0.1333秒の最大遅延制約でGOPの4つのフレームを含む全ての層に配信を行うことに対応する。重要性が正規化されたスループットは、PSNRと同じ傾向に従い、更なるユーザの範囲が検討されると、PSNRは高速で悪化する。図11及び図12は、それぞれα=0.25及びα=0.5について、重要性が正規化されたスループットを用いた対応するプロットを示している。これらのプロットは、チャネルアウェアネスの程度を比例的に低減しながら、コンテンツアウェアネスを導入する影響を示している。結果は、αがゼロから0.5に増大すると、最も近い20%のユーザの性能が高速に降下する一方、より大きな距離範囲にわたって測定されるユーザの性能はより低速で向上することを示している。α=0.5の場合、全ての距離範囲にわたる性能は大幅に収束している。
【0103】
コンテンツアウェアネスを導入する目的は、包括的には、スケジューリングアルゴリズムの公平性を改善することであり、詳細には、BSに近いユーザに対し最小のペナルティで、離れたユーザの性能を向上させることである。説明のために、最も近い20%のユーザについて、重要性が正規化された最小スループット目標は2/3とみなされ、これは3つの層の中から最も重要な2つを受信することに対応する。最も近い100%のユーザ、すなわち全てのユーザについて、最小重要性は1/3とみなされ、これは3つの層の中から最も重要な1つを受信することに対応する。これらの制約を用いると、サポートすることができる最大ユーザ数は、αが0から0.25に増大すると78から90に増大する(15%の向上)。この最大ユーザ数は、αが0.25から0.5に増大すると72に降下する。
【0104】
図13〜図15は、僅かに低減したフレームレートに対応して、様々な最大遅延制約について、重要性が正規化されたスループット対ユーザ数のプロットを示している。再生レートは30fpsで一定であるので、スケジューラにおいてフレームレートを低減することは、ビデオシーケンスが短い中断を受けることを意味する。中断が短いほど、それらの中断はユーザが知覚しにくいものとなる。図13及び図15は、αがそれぞれゼロ及び0.25に等しい、100%のユーザの場合を示しているのに対し、図14は、20%のユーザ及びα=0.25の場合を示している。
【0105】
図16及び図17は、重要性が正規化されたスループットの更なる例のブロックを示している。図16では、様々な効用係数αについて、様々な数のセルエッジユーザ及びセル中心ユーザのスループットが示されている。見てとることができるように、セルエッジユーザについて0.6、及びセル中心ユーザについて0.95の目標最小性能の場合、性能は、α=0.01について、25ユーザから35ユーザに向上する。チャネルアウェアのみの手法(α=0)と比較すると、これは、サービス提供することができるユーザの40%の増大を意味する。図17では、4フレームごとに0.133秒の中断が許容される手法が説明される。そのような状況では、セルエッジユーザについて0.6、及びセル中心ユーザについて0.95の目標最小性能の場合、性能は、α=0.01について、25ユーザから45ユーザに向上する。チャネルアウェアのみの手法(α=0)と比較すると、これは、サービス提供することができるユーザの80%の増大を意味する。
【0106】
結果は、遅延制約を増大させることによって、全ての場合に重要性が正規化されたスループットが増大し、このためPSNRが増大することを示している。結果は、僅かな遅延の増大、又は等価的にはフレームレートの僅かな低減で、大幅な性能改善が可能であることを示している。スケジューラにおける、30fpsから25.27fpsへのフレームレートの低減に対応する、0.1333秒から0.1583秒への遅延制約の増大を仮定すると、上述した最も近い20%のユーザ及び100%のユーザの重要性が正規化された最小スループットに対する制約を所与として、αが0から0.25に増大すると、満足のいく品質でサポートすることができる最大ユーザ数が、91から109に増大する(19.8%の向上)。
【0107】
このため、本発明の実施形態は、ビデオストリーミングのための新たなファジー論理に基づくコンテンツアウェア/チャネルアウェア共同マルチユーザダウンリンク(DL)スケジューリングアルゴリズムを提供する。新規のコンテンツアウェアで標準的な性能メトリックを用いて、スケジューリングアルゴリズムの性能は、新たな解析モデルを用いて評価される。ファジー論理コントローラは単一の効用パラメータが定義されることを可能にし、コンテンツアウェアネスとチャネルアウェアネスとの間のトレードオフを可能にし、カバレッジエリア全体を通じてユーザ体験全体を向上させる。結果は、サポートされるユーザ数を、中断のない再生の場合に15%も向上させることができ、短い知覚不可能な中断が許容可能である場合に19%も向上させることができることを示している。以前の研究(S. van Kester snd T. Xiao、R. E. Kooij、K. Brunnstrm、及びO. K. Ahmed、「Estimating the impact of single and multiple freezes on video quality」、Proc. SPIE Conf. on Human Vision and Electronic Imaging XVI, vol. 7865, San Francisco Airport, California, USA、を参照されたい)は、0.36秒もの中断持続時間が許容可能とみなされることを示している。
【0108】
重要なことに、結果は、チャネルアウェアのみの方式及びコンテンツアウェアのみの方式が、セルラ環境においてビデオサービスをサポートするのに不適切であることを実証している。チャネルアウェアのみの方式は、BSに近いユーザに良好な品質を偏って送達する一方、セクタエッジのユーザは最小品質要件を満たすことができない。コンテンツアウェアのみの方式は、良好なチャネルを有するユーザに大きくペナルティを与える一方、エッジユーザの性能改善は最小のままである。本発明によるアルゴリズムは、セクタカバレッジ全体にわたるユーザの中で、リソースのより公平な配分を可能にし、BSにより近いユーザに対する劣化を最小にしながら、セルのエッジにおけるビデオ品質の向上を可能にする。
【0109】
幾つかの態様が装置との関連で説明されたが、これらの態様は対応する方法の説明も表し、方法においては、ブロック又はデバイスは方法ステップ又は方法ステップの特徴に対応することが明らかである。それに類似して、方法ステップとの関連で説明された態様も、対応する装置の対応するブロック又はアイテム又は特徴の記述を表す。
【0110】
或る実施態様要件に依拠して、本発明の実施形態はハードウェア又はソフトウェアで実施することができる。実施態様は、電子的に読取り可能な制御信号が格納されたデジタルストレージ媒体、例えばフロッピーディスク、DVD、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、又はフラッシュメモリを用いて実行することができ、それらは、それぞれの方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと連携する(又は連携可能である)。本発明による幾つかの実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つが実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと連携することができる電子的に読取り可能な制御信号を有する非一時的なデータ担体を含む。
【0111】
概して、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実装することができる。プログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されると、方法のうちの1つを実行するように動作可能である。プログラムコードは、例えば機械可読担体上に格納することができる。他の実施形態は、機械可読担体上に格納された、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムを含む。したがって、換言すれば、本発明の方法の一実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0112】
したがって、本発明の方法の更なる実施形態は、データ担体(又はデジタルストレージ媒体若しくはコンピュータ可読媒体)であって、そのデータ担体上に記録された、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムを含む、データ担体である。したがって、本発明の方法の更なる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムを表すデータストリーム又は信号シーケンスである。データストリーム又は信号シーケンスは、例えば、データ通信接続を介して、例えばインターネットを介して転送されるように構成することができる。更なる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するように構成又は適合された処理手段、例えばコンピュータ又はプログラム可能な論理デバイスを含む。更なる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータを含む。
【0113】
幾つかの実施形態では、プログラム可能な論理デバイス(例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて、本明細書に記載された方法の機能のうちの幾つか又は全てを実行することができる。幾つかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するためにマイクロプロセッサと連携することができる。概して、本方法は任意のハードウェア装置によって実行されることが好ましい。
【0114】
上述した実施形態は、単に本発明の原理を例示するものである。本明細書に記載された構成及び詳細の変更及び変形は当業者には明らかであることが理解される。したがって、次の特許請求の範囲の範囲によってのみ制限され、本明細書における実施形態の記述及び説明のために提示された特定の詳細によって制限されるものではないことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線移動ネットワークにおいて1つ又は複数のユーザ(UE、UE)へのスケーラブルビデオ符号化(SVC)ストリームをスケジューリングする方法であって、
(a)利用可能な物理リソースブロック(PRB)及びユーザの中で、最も高い効用を有するPRB/ユーザ対を求めるステップ(310、312、314)と、
(b)前記対の前記ユーザに前記対の前記PRBを配分するステップ(316)と、
を含み、前記効用は、ファジー論理推論を用いて求められ、該ファジー推論の前記入力は、前記ユーザにスケジューリングされる前記SVCストリームの層の重要性と、前記PRBにわたる前記ユーザの送信レートとを含む、無線移動ネットワークにおいて1つ又は複数のユーザへのスケーラブルビデオ符号化ストリームをスケジューリングする方法。
【請求項2】
各PRBは、前記無線移動ネットワークのノードと前記ユーザとの間の、ユーザ依存の、時間とともに変動する対応するチャネル品質を含み、該チャネル品質は、前記PRBにわたる前記ユーザの最大可能送信レートによって表され、
前記SVCストリームは複数の層を含み、先行層は該層の従属層のいずれよりも高いか又は低い層インデックスを有し、前記先行層は、該層の従属層のいずれよりも前に前記ユーザに送信され、前記重要性は、前記ユーザに送信されるSVC層の重要度を、該SVC層の前記層インデックスに基づいて示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ファジー論理推論の前記ファジールールは、
(1)重要性が高い場合、効用は高い、
(2)重要性が低い場合、効用は低い、
(3)レートが高い場合、効用は高い、
(4)レートが低い場合、効用は低い、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ファジー論理推論はゼロ次菅野ファジー推論であり、該ゼロ次菅野ファジー推論に基づいて、前記効用は以下のように表され、
【数1】

=効用、
μ=クリスプ値を有する重要性のメンバシップの度合い又はメンバシップ関数、
μ=クリスプ値を有するレートのメンバシップの度合い又はメンバシップ関数、
(t,k,φ)=タイムスロットtにおいてPRBφの副搬送波kを用いてユーザに送信される、最も高い重要性を有するSVCストリーム層の重要性、
(t,k,φ)=タイムスロットtにおいてPRBφの副搬送波kを用いてPRBφにおいて達成可能なユーザのビットレート、
HIGH=高重要性集合、
HIGH=高レート集合、
(VHIGH)=α、
(RHIGH)=1−α、及び
α=SVCストリームのスケジューリング時に、コンテンツアウェアネスとチャネルアウェアネスとの間のトレードオフを決定する効用係数、
である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記無線移動ネットワークは1つ又は複数のノード(100)を備え、1つのノード(100)は複数のユーザ(UE、UE)にサービス提供し、前記SVCストリームのピクチャ群(GOP)は複数のタイムスロットの間に送信され、各タイムスロットは複数のPRBを含み、各PRBは複数の副搬送波を含み、前記方法はタイムスロットごとに、かつタイムスロットにおける副搬送波ごとにステップ(a)及び(b)を繰り返す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
それぞれの前記ユーザ(UE、UE)に送信されるSVCストリームデータがバッファリングされ、前記方法は、
(i)現在のタイムスロットについて、SVCストリームデータがバッファリングされる前記ノードによってサービス提供されるアクティブなユーザが存在するか否かを判断するステップ(302)と、
(ii)アクティブなユーザが存在する場合、前記現在のタイムスロットにおいて利用可能な配分されていないPRBが存在するか否かを判断するステップ(304)と、
(iii)利用可能な配分されていないPRBが存在しない場合、前記次のタイムスロットに進むステップ(308)と、
(iv)利用可能な配分されていないPRBが存在する場合、前記バッファリングされたSVCストリームデータによって表されるSVCストリーム層の前記重要性を求め(310)、アクティブなユーザごとに、前記現在のタイムスロットにおける全ての配分されていないPRBの前記品質を求める(312)ステップと、
(v)ユーザごとに、前記層重要性及び前記PRB品質のファジー論理関数として全ての配分されていないPRBの前記効用を求めるステップ(314、314a〜314d)と、
(vi)前記効用を最大にする前記ユーザ−PRB対を選択するステップ(316)と、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(vii)前記現在のタイムスロットにおける配分されていないPRBのリストから前記選択されたPRBを除去するステップ(318)と、
(viii)前記選択されたユーザのバッファ(200〜200)を更新するステップ(320)と、
(ix)ステップ(i)〜(viii)を繰り返すステップと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(iii)において、前記次のタイムスロットは前記現在のタイムスロットになり、前記方法はステップ(ii)に戻る、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記SVCストリームの層の前記重要性は、
v(l)=1−(1/N
のように求められ、
=前記ユーザの単一のGOP内の層の総数
である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
時点tにおける前記PRBφにわたる前記ユーザiの前記送信レートは、
(t,φ)=GmuxBlog(1+ε(φ)γ(t,φ))
のように求められ、
γ(t,φ)=推定受信信号対雑音比(SNR)、
mux=MIMO空間多重化利得、及び
ε(φ)=γ(t,φ)の場合の許容推定誤差、
である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
平均品質、及び重要性が正規化されたスループットに基づいて前記ユーザの前記スケジューリングの前記性能を評価するステップ
を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ノードから距離dにあるユーザiについて、前記平均品質、及び前記重要性が正規化されたスループットは以下のように求められ、
【数2】

=前記ユーザiのGOP内の層の総数、
ρ=層lの前記先行層のうちのいずれかが欠落している場合にゼロであり、そうでない場合に1、
i,l(d)=前記遅延期限の前に送信されるユーザiの層lのビット数、
bits(l,i)=ユーザiの層lのビット数、
E{Nbits(l,i)}=Nbits(l,i)の統計平均、
=全てのl+1個の層が誤りなく受信された場合に平均PSNRであり、l<1の場合にゼロ、
であり、前記ノードに最も近い前記p%のユーザの中の一ユーザについて、前記平均品質、及び前記重要性が正規化されたスループットは以下のように求められ、
【数3】

sec(p)=p%の前記ユーザによって占有されている前記ノードを中心とした前記セクタの半径、及び
(p)=dsec(p)によって定義された前記セクタ内の単一のユーザの前記距離dのpdf、
である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ上で実行されると、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法を実行させるためのプログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
無線移動ネットワークであって、
複数の基地局(100)と、
複数の移動ユーザ(UE、UE)であって、1つの基地局(100)は1つ又は複数の移動ユーザ(UE、UE)にサービス提供する、複数の移動ユーザと、
を備え、前記基地局(100)のうちの1つ又は複数は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法に従って、前記基地局(100)によってサービス提供される1つ又は複数のユーザ(UE、UE)にSVCストリームをスケジューリングするためのスケジューラ(202)を備える、無線移動ネットワーク。
【請求項15】
無線移動ネットワークのノード(100)であって、
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法に従って、該ノードによってサービス提供される1つ又は複数のユーザにSVCストリームをスケジューリングするためのスケジューラ(202)、
を備える、無線移動ネットワークのノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−98993(P2013−98993A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−242665(P2012−242665)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】