説明

無線端末において動的に変化するモデム送信電力限度値を用いた複数のモデムの制御

【課題】複数の同時並行して動作する通信リンクにおいて、送信信号増幅器への総入力電力及び/又は出力電力を適切に制御して歪みを回避するとともに全体的な通信帯域幅を最大化する移動通信端末を提供する。
【解決手段】移動無線端末(WMT)は、複数の無線モデムを含み、該複数のモデムは、1つの総送信電力を生成するために各々の送信出力が結合されて送信信号増幅器に入力される。該移動無線端末は、1つの総送信電力限度内で動作するように制約され、該複数のモデムの各々は、該総送信電力限度値に関わる1個の個々の送信電力限度値を有している。移動無線端末コントローラは、該移動無線端末の総送信電力限度値(702)及び該複数のモデムから報告された個々の送信電力推定値(712)に基づいて該複数のモデムにおける該個々の送信電力限度値を調整し、各個々の送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力を追跡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、移動無線端末に関するものである。本発明は、より具体的には、複数のモデムを備えていてさらに該全モデムに関する総送信電力限度値の下で動作するように制約されている移動無線端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動無線端末(MWT)及び遠隔局の間において確立されたデータ呼(データコール)において、該移動無線端末は、「逆方向」通信リンクを通じて該遠隔局に対してデータを送信することができる。さらに、該移動無線端末は、「順方向」通信リンクを通じて該遠隔局からデータを受信することができる。現在は、順方向リンク及び逆方向リンクの両方において利用可能な送信帯域幅及び受信帯域幅を拡大する(即ちデータ速度を速くする)必要性がこれまでになく切実になっている。
【0003】
一般的には、移動無線端末は、無線周波(RF)入力信号を電力増幅するための送信電力増幅器を含んでいる。該電力増幅器は、入力信号の入力電力に対応する出力電力を有する増幅されたRF出力信号を生成する。入力電力が過度に高いと該電力増幅器がオーバードライブ状態になり、出力電力が該電力増幅器の許容可能な動作送信電力限度値を超えてしまうおそれがある。その結果、RF出力信号に望ましくない歪みを発生させてしまうおそれがある(例えば、許容不能なバンド外RF放出等)。
【0004】
従って、電力増幅器のオーバードライブを回避するために移動無線端末における送信電力増幅器の入力電力及び/又は出力電力を慎重に制御する必要がある。さらに関連して、順方向リンク及び逆方向リンクの帯域幅が狭くなること(即ちデータ速度の低下)を最小限に抑えつつ前述のように出力電力を制御する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの特長は、複数の同時並行して動作する通信リンクを用いて逆方向リンク方向及び順方向リンク方向の両方において全体的な通信帯域幅を最大化する移動通信端末を提供することであり、各々の該通信リンクが該移動無線端末の複数の変調器−復調器(モデム)の各々に関係している。
【0006】
本発明のもう1つの特長は、1つの送信電力増幅器を用いることができるようにするために複数の変調器−復調器(モデム)送信信号を結合させて1個の集合送信信号(即ち集合逆方向リンク信号)にする移動無線端末を提供することである。本特長は、要求される消費電力量を低減させること、コストを引き下げること、及びスペースを小さくすることが可能であり、複数の電力増幅器を用いた既知のシステムと比較して有利である。
【0007】
本発明のもう1つの特長は、送信電力増幅器の総入力電力及び/又は出力電力を慎重に制御してそれによって電力増幅器出力部における信号の歪みを回避することである。1つの関連する特長は、逆方向リンク方向及び順方向リンク方向の両方において帯域幅(即ちデータスループット)を最大化するような形で総入力電力及び/又は出力電力を制御することである。
【0008】
上記の特長は次のいくつかの方法で達成される。第1に、移動無線端末の該複数のモデムの各々において、各々の個々のモデム送信電力を制限するための個々の送信電力限度値を設定する。各々の個々の送信電力限度値は、部分的には、該全モデムに関する1個の総送信電力限度値から導き出す。該個々の送信電力限度値は、全体で、全モデムの総送信電力を制限する。
【0009】
第2に、本発明は、総送信電力限度値及び移動無線端末のモデムから報告された各々の送信電力推定値に基づいて該モデム内の個々の送信電力限度値を調整し、各々の個々のモデム送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力を追跡するようにする。本発明は、該機能を果たすため、移動無線端末の以前の送信期間又は送信サイクルに該当するモデム送信統計値を収集及び/又は決定する。該モデム送信統計値には、個々のモデム送信データ速度、個々のモデム送信電力、全モデムの総送信データ速度、及び結合させた全モデムに関する総送信電力を含めることができる。
【0010】
本発明は、さらに、該モデムのうちのオーバーリミットモデム(即ち、限度値を超えた個々のモデム)も検出する。オーバーリミットモデムは、実際の送信電力又は要求された送信電力が該モデム内で設定されている個々の送信電力限度値を超えているモデムである。本発明は、オーバーリミットモデムを検出した場合には、収集した統計値を用いて全モデムにおける新たな個々のモデム送信電力限度値を決定し、該新たな送信電力限度値によって全デムを更新する。該新たな送信電力限度値を求める目的は、モデム内におけるオーバーリミット状態を回避するためである。該新たなモデム限度値は、移動無線端末の次の送信サイクルにおいて用いる。本発明は、該プロセスを定期的に繰り返し、時間の経過に伴って個々の送信限度値を更新する。
【0011】
本発明においては、逆方向リンク方向にデータを送信するスケジュールが設定されるのはアクティブなモデムだけである。「非アクティブな」モデムは、データ送信スケジュールが設定されないモデムである。しかしながら、本発明においては、非アクティブモデムは順方向リンク方向においてデータを受信することができ、それによって、逆方向リンク方向において非アクティブな状態時にも移動無線端末内で高い順方向リンクスループットを維持することができる。
【0012】
本発明は、N個の無線モデムを備えているデータ端末において送信電力を制御し、各々の送信出力を結合させて1つの総送信出力を生成する方法に関する発明であり、該N個のモデムの各々において個々の送信電力限度値を設定することと、該N個のモデムのうちの複数個のモデムの各々が各々のデータを送信するスケジュールを設定することと、該N個のモデムの各々から報告された各々の送信電力推定値を受け取ることと、該総送信電力限度値及び該N個のモデムから報告された該各々の送信電力推定値に基づいて該N個のモデムのうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力限度値を調整すること、とを具備している。該特長によって、各々の個々の送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力を追跡することになる。
【0013】
本発明は、さらに、1つの総送信電力限度内で動作するように制約されておりかつ複数(N)個の無線モデムの各々の送信出力を結合させて1つの総送信出力を生成することを含む移動無線端末に関する発明でもある。該N個のモデムは、同時並行して逆方向リンク方向においてデータを送信すること及び順方向リンク方向においてデータを受信することができる。本発明の1つの側面は、N個のモデムの各々において1つの個々の送信電力限度値を設定するための手段と、該N個のモデムのうちの複数個のモデムの各々が各々のデータを送信するスケジュールを設定するための手段と、該N個のモデムの各々から報告された各々の送信電力推定値を受け取るための手段と、該総送信電力限度値及び該N個のモデムから報告された各々の送信電力推定値に基づいて該N個のモデムのうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力限度値を調整するための手段と、とを具備する装置である。
【0014】
さらなる側面において、1つの総送信電力限度内で動作するように制約された無線端末においてモデム送信限度値を導き出すための方法及び装置を備えており、該無線端末は、各々の送信出力を結合させて1つの総送信出力を生成するN個の無線モデムを含んでおり、該モデムは各々の送信電力を制限するための個々の送信電力限度値を有しており、該モデムは各々の送信電力推定値を報告する。該装置は、該N個の全モデムに関する1つの総送信電力を決定するための手段と、該総送信電力及び該総送信電力限度値の差に基づいて1つの総送信電力余裕を導き出すための手段と、該総送信電力余裕を該N個のモデムの間で分割し、該N個のモデムの各々に関する対応する送信電力推定値よりも大きい個々の送信電力限度値を各々のモデムに関して生成するための手段と、とを具備している。
【0015】
以下において本発明の本側面及びさらなる側面について説明する。
【0016】
本発明の特長、性質、及び利点は、下記の詳細な説明と図面を併用することでさらに明確になる。同一のものについては図面全体に渡って同一の参照符号を付けることとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1つの無線通信システム例を示した図である。
【図2】1つの移動無線端末例を示したブロック図である。
【図3】図 2の移動無線端末の個々のモデムを代表する1個のモデム例を示したブロック図である。
【図4】図 2及び図 3に示したモデムのうちのいずれか1個によって送信又は受信することができる1つのデータフレーム例を示した図である。
【図5】図 2及び図 3のモデムからの1つの状態報告例を示した図である。
【図6】図 2及び図 3のモデムの各々が実行する1つの方法例を示した流れ図である。
【図7】移動無線端末が実行する1つの方法例を示した流れ図である。
【図8】図 7の方法に基づいて拡大した流れ図である。
【図9】図 7の方法に基づいて拡大した流れ図である。
【図10】移動無線端末が実行する別の方法例を示した流れ図である。
【図11】図 2のモデムの各々を識別した電力対モデム指数(i)の1つの作図例であり、同一のモデム送信電力限度値を示した図である。さらに、図 11は、図 2の移動無線端末の1つの送信シナリオ例を示した図でもある。
【図12】図 11に類似したもう1つの送信シナリオ例を示した図である。
【図13】モデム送信電力限度値に関する1つの代替の漸減構成を示した図である。
【図14】図 2の移動無線端末における1つのモデム校正方法例を示した流れ図である。
【図15】動的に更新する個々のモデム送信電力限度値を用いた1つの移動無線端末制御方法例を示した流れ図である。
【図16】図 15の方法に基づいて拡大した1つの方法例を示した流れ図である。
【図17】モデムの送信ビット当たりの平均エネルギーを用いてアクティブモデムの最大数を決定する1つの方法例を示した流れ図である。
【図18】全モデムの各々に関する送信ビット当たりの個々のエネルギーを用いてアクティブモデムの最大数を決定する1つの方法例を示した流れ図である。
【図19】異なったモデム送信電力限度値構成を図形で表した図である。
【図20】動的に変化する個々のモデム送信電力限度値を用いて移動無線端末を制御することによって該モデム送信限度がモデム送信電力を追跡するようにする1つの方法例を示した流れ図である。
【図21】図 20の方法に基づいて拡大した1つの方法例を示した流れ図である。
【図22】図 21の方法に基づいて拡大した1つの方法例を示した流れ図である。
【図23A】図 2の移動無線端末の複数の異なった送信シナリオ例に関して、図 20の方法に従って制御されているモデムを識別する電力対モデム指数の作図例を示した図(その1)である。
【図23B】図 2の移動無線端末の複数の異なった送信シナリオ例に関して、図 20の方法に従って制御されているモデムを識別する電力対モデム指数の作図例を示した図(その2)である。
【図23C】図 2の移動無線端末の複数の異なった送信シナリオ例に関して、図 20の方法に従って制御されているモデムを識別する電力対モデム指数の作図例を示した図(その3)である。
【図23D】図 2の移動無線端末の複数の異なった送信シナリオ例に関して、図 20の方法に従って制御されているモデムを識別する電力対モデム指数の作図例を示した図(その4)である。
【図24】本発明の方法を実行するために用いられる、図 2の移動無線端末のコントローラ例を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
非常に多数のシステムユーザー間における情報の移送を目的とした様々な多元接続通信システム及び技術がこれまでに開発されている。しかしながら、特に非常に多数の通信システムユーザーのためにサービスを提供時には、拡散スペクトル変調技術(例えば符号分割多元接続(CDMA)通信システム等)がその他の変調方式よりも重要な利点を有している。該技術は、本出願の譲受人に対して譲渡されさらに本出願明細書において参照することによって本出願明細書に含められている、"Spread Spectrum Multiple Access Commucation System Using Satellite or Terrestrial Repeaters"(衛星中継器又は地上中継器を用いたスペクトル拡散多元接続通信システム)という題名の米国特許No. 4,901,307(1990年2月13日発行)の教示及び"Method and Apparatus for Using Full Spectrum Transmitted Power in a Spread Spectrum Communication System for Tracking Indivisual Recipient Phase Time and Energy"(拡散スペクトル通信システムにおいて個々の受信位相時間及びエネルギーを追跡するために全スペクトル送信電力を用いる方法及び装置)という題名の米国特許No. 5,691,174(1997年11月25日発行)の教示において開示されている。
【0019】
CDMA移動通信を提供するための方法は、米国の電気通信産業協会によって、"Mobile Station-Base Station Compatibility Standard For Dual-Mode Wideband Spread Spectrum Cellular System"(デュアルモード広帯域拡散スペクトルセルラーシステムに関する移動局−基地局互換性規格)(以下本出願明細書ではIS−95とする)において標準化されている。さらに、その他の通信システムについては、いわゆる広帯域CDMA (WCDMA)、cdma2000(例えばcdma20001x規格又は3x規格等)又はTD−SCDMAを対象とする規格であるその他の規格(例えば国際移動体通信システム 2000/ユニバーサル移動体通信システム等)において説明されている。
【0020】
I. 通信環境例
図 1は、1カ所の基地局112、2個の衛星116a及び116b、及び2つの関係するゲートウエイ(本出願明細書ではハブとも呼んでいる) 120a及び120bを含む1つの典型的な無線通信システム(WCS)を示した図である。これらの要素は、ユーザー端末124a、124b、及び124cとの無線通信に従事する。一般的には、基地局及び衛星/ゲートウエイは、個別の地上の通信システム及び衛星をベースにした通信システムの構成要素である。しかしながら、これらの個別のシステムは、1つの総合的な通信インフラとして相互運用することができる。
【0021】
図 1は、1カ所の基地局112、2個の衛星116、及び2つのゲートウエイ120を示しているが、希望する通信能力及び地理的な範囲を達成させるためにこれらの要素をあらゆる数だけ採用することができる。例えば、WCS100の1つの典型的な実施形態は、低高度地球周回軌道(LEO)上の8つの異なった軌道面を飛行して非常に多数のユーザー端末 124に対応している48個以上の衛星を含んでいる。
【0022】
基地局及びゲートウエイという用語は互換可能な形で用いられることが時々あり、各々が固定された中央通信局である。当業においては、ゲートウエイ(例えばゲートウエイ120)は、衛星の中継器を通じて通信を指示する高度に専門化された基地局であると認識されており、他方、例えば基地局 112等の基地局(セルサイトと呼ばれることもある)は、地上アンテナを用いて周囲の地理的地域内における通信を指示する。
【0023】
ユーザー端末124は、各々が、1個のセルラー電話、無線送受話器、データトランシーバー、又はページング受信機(若しくは所在位置決定受信機)等の(但しこれらの機器に限定するものではない)装置又は無線通信機器を備えているか又は含んでいる。さらに、ユーザー端末124各々は、希望に応じて、携帯すること、車両(乗用車、トラック、ボート、列車、及び飛行機等)に搭載して持ち運ぶこと、又は固定することができる。例えば、図 1は、固定電話又はデータトランシーバーとしてのユーザー端末124a、携帯式機器としてのユーザー端末124b、及び持ち運び可能な車両搭載機器としてのユーザー端末124cを示した図である。無線通信機器又は端末124は、いくつかの通信システムにおいては、好みに応じて、移動無線端末、ユーザー端末、移動無線通信機器、加入者装置、モバイル装置、移動局、又は移動無線と呼ばれるか、又は、単純に「ユーザー」、「モバイル」、「端末」又は「加入者」と呼ばれることもある。
【0024】
ユーザー端末124は、CDMA通信システムを通じてWCS100内のその他の要素との通信に従事する。しかしながら、本発明は、その他の通信技術、例えば、時分割多元接続(TDMA)、及び周波数分割多元接続(FDMA)等、又は、その他の波形又は上記の技術(WCDMA、CDMA2000等)を採用しているシステムにおいて採用することができる。
【0025】
一般的には、基地局112又は衛星116等のビーム放出源から放出されるビームは、予め定められたパターンで異なった地理的地域を網羅する。周波数が異なったビーム(CDMAチャネル、周波数分割多重化(FDM)チャネル、又は「サブビーム」とも呼ばれている)は、同じ領域を重複するように指向させることができる。さらに、当業者は、複数の衛星の場合におけるビームカバレッジエリア又はサービスエリア、又は複数の基地局の場合におけるアンテナパターンは、通信システムの設計及び提供するサービスの種類に応じて、及び空間ダイバーシティが達成されているかどうかに応じて、ある1カ所の所定の領域内において完全に又は部分的に重複するように設計可能であることを容易に理解している。
【0026】
図 1は、いくつかの典型的な信号経路を示した図である。例えば、通信リンク130a乃至cは、基地局112及びユーザー端末124の間における信号交換用リンクである。同様に、通信リンク138a乃至dは、衛星116及びユーザー端末124の間における信号交換用リンクである。衛星116及びケートウエイ120の間における通信は、通信リンク146a乃至dによって容易に行うことができる。
【0027】
ユーザー端末124は、基地局112及び/又は衛星116との双方向通信に従事することができる。このため、通信リンク130及び138は、各々が、1つの順方向リンク及び逆方向リンクを含んでいる。順方向リンクは、ユーザー端末124に情報信号を伝達するリンクである。WCS100の観点における地上をベースにした通信の場合は、順方向リンクは、リンク130を通じて基地局112からユーザー端末124に情報信号を伝達する。WCD100の観点における衛星をベースにした順方向リンクは、リンク149を通じてゲートウエイ120から衛星116に情報を伝達し、リンク138を通じて衛星116からユーザー端末124に情報を伝達する。従って、地上をベースにした順方向リンクは、一般的には、ユーザー端末及び基地局の間における1つの無線信号経路を含み、衛星をベースにした順方向リンクは、一般的には、少なくとも1個の衛星を通じてのユーザー端末/ゲートウエイ間における2つ以上の無線信号経路を含んでいる(マルチパスを無視した場合)。
【0028】
WCS100の観点においては、逆方向リンクは、ユーザー端末124から基地局 112又はゲートウエイ120に情報信号を伝達する。逆方向リンクは、WCS100における順方向リンクと同様に、一般的には、地上をベースにした通信の場合は1つの無線信号経路、衛星をベースにした通信の場合は2つの無線信号経路が必要である。WCS100は、該順方向リンクを通じて様々な通信サービス(例えば、低データ速度(LDR)サービス及び高データ速度(HDR)サービス等)を提供できるのが特長である。1つの典型的なLDRサービスでは、1秒当たり3キロビット(kbps)乃至9.6kbpsのデータ速度を有する順方向リンクを提供する。他方、1つの典型的なHDRサービスは、604kbps以上という典型的な高速データ速度をサポートする。
【0029】
上述したように、WCS100は、CDMA技術に従って無線通信を実行する。このため、リンク 130、138、及び146の順方向リンク及び逆方向リンクを通じて送信される信号は、CDMA送信規格に準拠して符号化、拡散、及びチャネル化された信号を伝達する。さらに、これらの順方向リンク及び逆方向リンクに関してはブロックインターリービングを採用することができる。これらのブロックは、予め決められた持続時間(例えば20ミリ秒等)を有するフレームで送信される。
【0030】
基地局112、衛星116、及びゲートウエイ120は、WCS100の順方向リンクを通じて送信する信号の電力を調整することができる。同電力(本発明明細書では順方向リンク送信電力と呼んでいる)は、ユーザー端末 124に従って及び時間の経過に従って変化する。この経時で変化する特長は、1つのフレームごとに採用することができる。該電力調整は、順方向リンクビット誤り率(BER)を特定の要求値内に維持すること、干渉を低減させること、及び送信電力を保存することを目的として行う。
【0031】
ユーザー端末124は、ゲートウエイ120又は基地局112の制御下において、WCS100の逆方向リンクを通じて送信する信号の電力を調整することができる。同電力(本発明明細書では逆方向リンク送信電力と呼んでいる)は、ユーザー端末124に従って及び時間の経過に従って変化する。この経時で変化する特長は、1つのフレームごとに採用することができる。該電力調整は、逆方向リンクビット誤り率(BER)を特定の要求値内に維持すること、干渉を低減させること、及び送信電力を保存することを目的として行う。
【0032】
該通信システムにおける電力制御技法については、本出願明細書において参照することによって本出願明細書に組み入れられている、"Fast Forward Link Power Control In A Code Division Multiple Access System"(符号分割多元接続システムにおける高速順方向リンク電力制御)という題名の米国特許No. 5,383,219、"Method And System For The Dynamic Modification Of Control Parameters In A Transmitter Power Control System"(送信機電力制御システムにおける制御パラメータの動的変更に関する方法及びシステム)という題名の米国特許No. 5,396,516、及び"Method and Apparatus For Controlling Transmission Power In A CDMA Cellular Mobile Telephone System"(CDMAセルラーモバイル電話システムにおける送信電力制御に関する方法及び装置)いう題名の米国特許 No. 5,056,109においていくつかの例が示されている。
【0033】
II. 移動無線端末
図 2は、本発明の原理に従って製造及び操作される1つの移動無線端末(MWT)例206を示したブロック図である。移動無線端末206は、図 2に示されていない基地局又はゲートウエイ(以下遠隔局と呼ぶ)と無線通信をする。さらに、移動無線端末206は、ユーザー端末と通信することもできる。移動無線端末206は、通信リンク210(例えばイーサネット(登録商標)リンク)を通じて外部のデータ源/シンク(例えばデータネットワーク、データ端末等)からデータを受信する。さらに、移動無線端末206は、通信リンク210を通じて該外部データ源/シンクに対してデータを送信する。
【0034】
移動無線端末206は、遠隔局との信号送受信用アンテナ208を含む。さらに、移動無線端末206は、通信リンク210に結合されたコントローラ(即ち1つ以上のコントローラ)214を含む。コントローラ214は、メモリ/記憶装置215とデータを交換し、タイマー217とインタフェースする。コントローラ214は、コントローラ214及びモデム216の間の複数の対応する双方向データリンク 218a乃至218nを通じて複数の無線モデム 216a乃至216nに対して、送信すべきデータを提供し、さらに、該複数の無線モデムからデータを受信する。データ接続218は、直列データ接続にすることができる。使用可能なモデム数 Nは、複雑さ、コスト等の既知の設計上の課題に応じて、数個の値のうちの希望する1個の値にすることができる。1つの実施例においては、N = 16である。
【0035】
無線モデム216a乃至216nは、該モデム及びパワーコンバイナ/スプリッタアセンブリ220の間の複数の双方向RF接続/ケーブルを通じて、該パワーコンバイナ/スプリッタアセンブリ220に対してRF信号 22a乃至222nを提供し、該パワーコンバイナ/スプリッタアセンブリ 220からRF信号222a乃至222nを受信する。送信(即ち逆方向リンク)方向においては、アセンブリ220に含まれているパワーコンバイナは、モデム216の全モデムから受信したRF信号をひとつに結合し、1個の結合した(即ち、総)RF送信信号226を送信電力増幅器228に提供する。送信電力増幅器228は、1個の増幅した総RF送信信号230をデュプレクサ232に提供する。デュプレクサ232は、該増幅された総RF送信信号をアンテナ208に送る。移動無線端末206においては、多重化は、デュプレクサ232以外の手段、例えば、別個の送受信信号を用いて達成させることができる。さらに、電力増幅器228の出力部に結合させた電力モニタ234は、増幅した総送信信号230の電力レベルをモニタリングする。さらに、電力モニタ234は、増幅した総送信信号230の電力レベルを示す信号230をコントローラ214に送る。移動無線端末206の1つの代替構成においては、電力モニタ234は、送信電力増幅器228の入力部における総信号226の電力レベルを測定する。この代替構成においては、移動無線端末206の総送信電力限度値は、送信電力増幅器228の出力部ではなく入力部における指定値であり、後述する本発明の方法はこの点を考慮している。
【0036】
受信(即ち順方向リンク)方向においては、アンテナ208は、受信信号をデュプレクサ232に提供する。デュプレクサ232は、該受信信号を受信増幅器240に送る。受信増幅器240は、増幅した受信信号をアセンブリ220に提供する。アセンブリ220に含まれているパワースプリッタは、該増幅された受信信号を複数の別個の受信信号に分割し、各別個の信号をモデム216の各々のモデムに提供する。
【0037】
移動無線端末206は、移動無線端末206及び遠隔局の間において確立されている複数の無線CDMA通信リンク250a乃至250nを通じて遠隔局と通信する。該通信リンク250の各々は、モデム216の各々と関係している。無線通信リンク250a乃至250nは、互いに同時並行して動作することができる。無線通信リンク250の各々は、順方向リンク及び逆方向リンクの両方向において、移動無線端末206及び遠隔局の間でデータを運ぶための無線トラフィックチャネルをサポートする。尚、該複数の無線通信チャネル250は、移動無線端末206及び遠隔局の間におけるエアインタフェース252の一部を構成している。
【0038】
本実施形態においては、移動無線端末206は、送信増幅器 228の出力部における総送信電力限度値(APL)未満で動作するように制約されている。換言すると、移動無線端末206は、信号230の送信電力を、(好ましいことであるが)総送信電力限度値よりも低いレベルに制限することを要求されている。送信時には、モデム216の全モデムが総送信電力限度値に関わってくる。従って、本発明は、モデム216の送信電力を制御する技術及びそれによって(送信信号230において示された)モデム216の総送信電力が総送信電力限度値以下にとどまるようにするための技術を含んでいる。
【0039】
送信増幅器228がオーバードライブになると、信号230の電力レベルが総送信電力限度値を超える。このため、本発明は、モデム216の各々に関する個々の送信電力限度値(送信限度値とも呼んでいる)を設定する。該個々の送信電力限度値は、モデム216が全体で送信増幅器228をオーバードライブすることがないような形で総送信電力限度値と関連している。移動無線端末206の動作中において、本発明は、モデム216のうちのオーバーリミットモデムを検出する。コントローラ214は、該オーバーリミットモデムが検出されたことに対応して、総送信電力限度値及びモデム216から送信された各々の送信電力推定値に基づいて、モデム216のうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力限度値を調整し、各個々のモデム送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力を追跡するようにする。この場合における1つの目標は、個々の送信電力限度値を調整することによって所定の総送信電力限度値に関する帯域幅(即ち送信データ速度)を最大化することである。以下では本発明のさらなる側面について説明する。
【0040】
移動無線端末206は移動と呼ばれているが、該移動無線端末206は移動プラットフォーム又はポータブルプラットフォームに限定されているわけではないことを理解すべきである。例えば、移動無線端末206は、固定された基地局又はゲートウエイ内に常駐することができる。さらに、移動無線端末206は、固定されたユーザー端末124aに常駐することもできる。
【0041】
III.モデム
図 3は、モデム 216の各々を代表する1つのモデム例300を示したブロック図である。モデム300は、CDMA原理に従って動作する。モデム300は、データインタフェース302、コントローラ304、メモリ306、モデム信号プロセッ又はモジュール308(例えば、1つ以上のデジタル信号プロセッサDPS又はASIC)、中間周波IF/RFサブシステム310、及び、オプションの電力モニタ312を含んでおり、これらはすべてデータバス314を通じて互いに結合されている。いくつかのシステムにおけるモデムは、より伝統的なモデム構造の場合におけるように対になった状態で結合された送受信プロセッサを具備していないが、ユーザー通信及び1個以上の信号を処理するために希望に応じて相互に接続されているか又はユーザー間でタイムシェアリングされている送信機と受信機又は変調器と復調器を用いることができる。
【0042】
送信方向において、コントローラ304は、データ接続218i(ここで、i = モデム216a乃至216nのうちのいずれか1個のモデム)及びインタフェース302を通じて、送信すべきデータをコントローラ214から受信する。コントローラ304は、該送信すべきデータをモデムプロセッサ 308に提供する。モデムプロセッサ308の送信(Tx)プロセッサ312は、該送信すべきデータを符号化及び変調し、該データをパッケージングして送信すべきデータフレームにする。送信プロセッサ312は、該データフレームを含んでいる信号をIF/RFサブシステム310に提供する。サブシステム310は、信号314を周波数アップコンバート及び増幅し、周波数アップコンバート及び増幅した信号222iをパワーコンバイナ/スプリッタアセンブリ220に提供する。オプションの電力計312は、信号 222iの電力レベル(即ち、モデム300が上記のデータフレームを送信時の実際の送信電力)をモニタリングする。代替として、モデム300は、IF/RFサブシステム310の利得/減衰器設定値及びモデム300が該データフレームを送信時のデータ速度に基づいてモデム送信電力を決定することができる。
【0043】
受信方向においては、IF/RFサブシステム310は、パワーコンバイナ/スプリッタアセンブリ220から受信信号 222iを受信し、該信号 222iを周波数ダウンコンバートし、その結果周波数ダウンコンバートされかつ受信データフレームを含んだ信号316をモデムプロセッサ308の受信(Rx)プロセッサ318に提供する。受信プロセッサ318は、該データフレームからデータを抽出し、次に、コントローラ304は、インタフェース302及びデータ接続 218iを用いて該抽出データをコントローラ214に提供する。
【0044】
モデム216は、各々が、上記及び下記の方法でデータフレームを送受信する。図 4は、モデム216のうちのいずれか1つのモデムによって送信又は受信することができるデータフレーム例400を示した図である。データフレーム400は、1つの制御フィールド又はオーバーヘッドフィールド 402及び1つのペイロードフィールド404を含む。フィールド402及び404は、制御情報(402)又はペイロードデータ(404)のいずれかを伝送するために用いるデータビットを含む。さらに、制御フィールド402は、モデム216の各々1個のモデム及び遠隔局の間で確立されている通信リンクを管理する際に用いる制御情報及びヘッダ情報を含んでいる。他方、ペイロードフィールド404は、ペイロードデータ(ビット406)、例えば、データ呼中に(即ち、モデム及び遠隔局の間で確立されている通信リンクを通じて)コントローラ214及び遠隔局の間で送信すべきデータを含んでいる。例えば、データリンク 218iを通じてコントローラ214から受信したデータをパッケージングしてペイロードフィールド404内に入れる。
【0045】
データフレーム400は持続時間 T(例えば20ミリ秒)を有している。ペイロードフィールド404内のペイロードデータは、最高データ速度すなわち全データ速度(例えば9600ビット/秒(bps))、1/2のデータ速度(例えば4800bps)、1/4のデータ速度(例えば2400bps)、又は1/8のデータ速度(例えば1200bps)を含む複数のデータ速度のうちの1つのデータ速度で搬送される。モデム216の各々は、全データ速度(即ち、最高データ速度)でのデータ送信を試みる。しかしながら、後述するように、オーバーリミット状態のモデムはデータ速度を制限し、それによって、該モデムは、送信データ速度を最高データ速度からそれよりも低速のデータ速度に下げる。さらに、モデム216の各々は、ペイロードデータなしでデータフレーム(例えばデータフレーム400)を送信することもできる。このデータフレームは、ゼロ速度データフレームと呼ばれている。
【0046】
1つのモデム構成において、フレーム内のデータビット406の各々は、送信データ速度にかかわらず一定量のエネルギーを搬送する。即ち、1つのフレーム内において、ビット当たりのエネルギーEは、すべての異なったデータ速度に関して一定である。このモデム構成においては、各データフレームは、該データフレームを送信時のデータ速度に比例する瞬間モデム送信電力に対応している。このため、データ速度が低速であるほどモデム送信電力も小さくなる。低速のデータ速度でデータを伝送する時には、一般的に、各ビットのエネルギーは時間の経過に従って拡散する。すなわち、1/2データ速度の場合は時間の長さの2倍、1/4のデータ速度の場合は時間の長さの4倍にわたってビットエネルギーが拡散することになり、以下同様である。このような形で1つのデータフレーム全体にわたって送信エネルギーを広げることによって、該フレームのうちで許容限度値を超える部分のときにエネルギーの急激な変化が発生しない。
【0047】
さらに、低速のデータ速度でデータを伝送する時には、一般的に、各ビットのエネルギーは時間の経過にしたがって拡散する。すなわち、1/2データ速度の場合は時間の長さの2倍、1/4のデータ速度の場合は時間の長さの4倍にわたってビットエネルギーが拡散することになり、以下同様である。このような形で1つのデータフレーム全体にわたって送信エネルギーを拡散させることによって、該フレームのうちで許容限度値を超える部分の中にエネルギーの急激な変化が発生しない。
【0048】
モデム216の各々は、各々のデータ接続218を通じて状態報告をコントローラ214に対して行う。図 5は、1つの状態報告例500を示した図である。状態報告500は、モデムデータ速度フィールド502、モデム送信電力フィールド504、及び任意のオーバーリミット指標フィールド(データ速度制限指標フィールドとも呼ばれている)506を含む。各モデムは、最後に送信されたデータフレームのデータ速度をフィールド502において報告し、最後に送信されたデータフレームの送信電力をフィールド 504において報告する。さらに、各モデムは、データ速度制限状態になっているかどうかをフィールド506において任意で報告することができる。
【0049】
別の代替モデム構成においては、モデムは、該モデムのオーバーリミット/データ速度制限状態、送信電力、及び送信データ速度を示した状態信号を提供することができる。
【0050】
IV.方法例
図 6は、モデム300(このためモデム216の各々のモデム)の1つの動作を代表する1つの方法例又はプロセス例600を示した流れ図である。方法600は、モデム(例えばモデム216a)及び遠隔局の間でデータ呼が確立されていると想定している。すなわち、順方向リンク及び逆方向リンクを含む通信リンクが該モデム及び遠隔局の間で確立されている。
【0051】
第1のステップ602において、モデム(例えばモデム216a)において送信電力限度値PLを設定する。
【0052】
次のステップ604において、該モデムは、該モデムが逆方向リンク方向にデータフレームを送信時における要求送信電力PRを示した電力制御指令を、順方向リンクを通じて遠隔局から受け取る。同指令は、電力漸増指令又は電力漸減指令の形になる。
【0053】
決定ステップ606において、該モデムは、いずれかのペイロードデータをコントローラ214から受け取っているかどうか、すなわち、遠隔局に送信すべきペイロードデータが存在しているかどうかを決定する。ペイロードデータを受け取っていない場合は、次のステップ608に処理が進む。ステップ608において、該モデムは、ゼロ速度で、すなわちペイロードデータなしでデータフレームを送信する。該ゼロ速度データフレームは、例えば通信リンク/データ呼を維持するために用いられる制御/オーバーヘッド情報を含むことができる。さらに、ゼロ速度データフレームは、該モデムの最小送信電力に相当する。
【0054】
他方、送信すべきペイロードデータが存在する場合は、ステップ606から次のステップ610に処理(制御)が進む。ステップ610において、該モデムは、オーバーリミット状態でないかどうか、すなわちアンダーリミットであるかどうかどうかを決定する。1つのモデム構成においては、モデムがアンダーリミットであるであるかどうかを決定することは、要求された送信電力PRが送信電力限度値PLよりも小さいかどうかを決定することを含んでいる。このモデム構成においては、要求された送信電力PRがPLよりも大きいか又はPに等しいときにオーバーリミットであるとみなされる。1つの代替構成においては、モデムがアンダーリミット状態であるかどうかを決定することは、該モデムの実際の送信電力 PTが送信電力限度値PLよりも小さいかどうかを決定することを含んでいる。このモデム構成においては、PTがPLよりも大きいか又はPに等しいときにオーバーリミットであるとみなされる。モデムは、自己の送信電力PT、例えば信号 222iTの送信電力が送信電力限度値PLよりも小さいかどうかを決定する際にはモニタ3
モデムは、オーバーリミット状態でない場合は、ペイロードデータ及び制御情報を含んだデータフレームを、最高データ速度(例えば全データ速度)で及び要求送信電力PRに従った送信電力レベルPTで送信する。換言すると、モデム送信電力PTは、要求送信電力PRを追跡する。
【0055】
T又はPRがPLに等しいか又はPLよりも大きいときには、該モデムはオーバーリミット状態であり、このため、データ速度の制限を行って現行のデータ速度(例えば全データ速度)からより低速の送信データ速度(例えば、1/2のデータ速度、1/4のデータ速度、1/8のデータ速度さらにはゼロ速度)に引き下げ、それによって、送信電力PTを、該モデムが全データ速度で送信時の大きさの送信電力よりも引き下げる。このため、上記のいずれかのオーバーリミット状態に対応したデータ速度制限は、モデム自体による電力制限の1つの形態であり、それによってモデムは自己の送信電力Pを送信電力限度値PL未満に維持する。さらに、状態報告500において報告されたオーバーリミット/データ速度制限状態は、要求送信電力PR又は代替構成における実際の送信電力PTが送信電力限度値PLよりも大きいか又は送信電力限度値PLに等しいことをコントローラ214に対して示している。モデムは、データ速度を制限中であるため(例えばステップ610)又は送信すべきペイロードデータがないため(ステップ 608)送信(即ち逆方向リンク)方向においてゼロデータ速度で動作している一方で、受信(即ち順方向リンク)方向において全データ速度のデータフレームを受信できるという点を高く評価すべきである。
【0056】
モデムがオーバーリミット状態に対応して自己でデータ速度を制限したほうが有利であるが、代替モデム構成ではこのような形でのデータ速度制限は行わない。代わりに、モデムがオーバーリミット状態をコントローラ214に報告し、コントローラ214がデータ速度制限調整を行うまで待機する。好ましいモデム構成は両方の手法を用いることである。すなわち、モデムがオーバーリミット状態に対応して自己でデータ速度を制限し、モデムがオーバーリミット状態をコントローラ214に報告し、それに対応してコントローラ214がモデムに関するデータ速度制限調整を行う。
【0057】
モデムは、ステップ608及びステップ610の両方を完了後に、ステップ 6121において状態報告書(例えば状態報告500)を作成し、データリンク218の各々を通じて該報告書をコントローラ214に提出する。
【0058】
V.送信電力限度値を固定した場合における実施形態
図 7は、移動無線端末206が本実施形態に従って実行する1つの方法例を示した流れ図である。方法700は、初期設定ステップ702を含む。ステップ702は、さらなるステップ704、706、及び708を含む。ステップ704において、コントローラ214は、モデム216の各々における個々の送信電力限度値PLを設定する。方法700においては、該送信電力限度値は時間の経過にかかわらず固定されている。
【0059】
ステップ706において、コントローラ214は、モデム216の各々に関するデータ呼を確立させる。換言すると、順方向リンク及び逆方向リンクの両方を含む通信リンクがモデム216の各々及び遠隔局の間で確立される。該通信リンクは、互いに同時並行して動作する。本発明の1つの典型的な構成においては、該通信リンクはCDMAを基本にした通信リンクである。
【0060】
実施形態においては、モデムは、アクティブモデム又は非アクティブモデムとして指定する。コントローラ214は、アクティブモデムがペイロードデータを送信するスケジュールを設定することができ、非アクティブモデムがペイロードデータを送信するスケジュールを設定することはできない。コントローラ214は、現在アクティブなモデムを識別したリストを維持する。ステップ 708において、コントローラ214は、最初に、例えば各々のモデムを該アクティブリストに加えることによって全モデムをアクティブモデムとして指定する。
【0061】
次のステップ710において、コントローラ214は、遠隔局に対して送信する必要があるデータを受信していると想定して、アクティブモデムの各々に関するペイロードデータ送信スケジュールを設定する。ステップ710を最初に経た時点では、モデム216の全モデムがアクティブ状態になっている(ステップ708)。しかしながら、その後にステップ 710を経る際には、後述にするように、モデム216のうちのいくつかのモデムは非アクティブ状態になる。
【0062】
コントローラ214は、アクティブモデムの各々に関する送信対象データ列を維持し、リンク 210を通じて外部データ源から受け取ったデータを各データ列に加える。コントローラ214は、各データ列から取り出したデータをアクティブモデムに提供する。コントローラ214は、送信すべきデータが各アクティブモデムに同時並行して提供されるようにするため、データローディングアルゴリズムを実行して各々のデータ列が一般的に相対的に均一にローディングされることを確認する。コントローラ214が各モデムに対してデータを提供後、各モデムは、図 6に関連させて説明したように、全データ速度で及び各々の要求送信電力PRに従ってデータフレームでデータを送信することを試みる。
【0063】
ステップ710において、コントローラ214は、さらに、送信すべきデータを非アクティブモデムからアクティブモデムに分岐させることによって、非アクティブモデムのスケジュール設定を取り消す。しかしながら、上述したように、ステップ 708を最初に経た後は全モデムがアクティブ状態になっているため、最初にステップ710を経る際には非アクティブモデムは存在していない。
【0064】
次のステップ712において、コントローラ214は、すべての非アクティブモデム及びアクティブモデムからのモデム状態報告をモニタリングする。
【0065】
次のステップ714において、コントローラ214は、モデム状態報告に基づき、モデム216のうちのいずれかのモデムがオーバーリミット状態でありそのためデータ速度を制限中であるかどうかを決定する。モデム216のうちの1個以上の(すなわち少なくとも1個の)モデムがオーバーリミット状態であるとコントローラ214が決定した場合は、コントローラ214は、ステップ716において、これらのオーバーリミットモデムのみを非アクティブ状態にする。例えば、コントローラ214は、オーバーリミットモデムをアクティブリストから取り除くことによって該オーバーリミットモデムを非アクティブにすることができる。
【0066】
ステップ 714において、いずれのモデムもオーバーリミット状態でないことが決定された場合は、本方法又は処理はステップ718に進む。処理は、ステップ716においてオーバーリミットモデムを非アクティブにした後にもステップ718に進む。ステップ718において、コントローラ214は、以前にステップ716において非アクティブにしたモデムのうちのいずれかのモデムをアクティブにする(即ち再度アクティブにする)必要があるかどうかを決定する。以下では、モデムをアクティブにすべきであるかどうかを決定するためのいくつかの技術について説明する。ステップ718において答えがYESである(いずれかのモデムをアクティブにする必要がある)場合は、ステップ720に処理が進み、コントローラ214は、以前に非アクティブにしたモデムのうちのでアクティブにする必要があるモデムを例えばアクティブリストに再度加えることによって、これらのモデムをアクティブにする。
【0067】
以前に非アクティブしたモデムのうちのいずれのモデムもアクティブにする必要がない場合、処理は、ステップ718からステップ710に戻る。さらに、処理は、ステップ720からステップ710に戻る。時間の経過とともにステップ710乃至720を繰り返し、それによって、モデム216のうちのオーバーリミットモデムを、適宜、ステップ716において非アクティブにしかつステップ718において再度アクティブにする。さらに、それに対応して、ステップ710においてスケジュール設定を取り消しかつスケジュールを再設定する。
【0068】
オーバーリミットモデムがステップ716において非アクティブにされ(すなわち、非アクティブ状態になり)、ステップ718を経た後も非アクティブ状態のままであるときには、該モデムは、次にステップ710を経る際にスケジュール設定が取り消される。換言すると、コントローラ214は、該非アクティブモデムに対してはそれ以上データを提供しない。代わりに、コントローラ214は、アクティブモデムにデータを分岐させる。非アクティブにしたモデムに関わるデータ呼が依然として無効化(すなわち終了)されていないと想定した場合は、ステップ710において該モデムのスケジュール設定を取り消すと該モデムは送信すべきペイロードデータを持たなくなり、このため、逆方向リンクにおいてゼロ速度で及び対応する最低の送信電力レベルで動作することになる(図 6に関連させて説明したステップ606及び608を参照すること)。その結果、非アクティブ状態した/スケジュール設定を取り消したモデムにおいてデータ呼が生きた状態(すなわちアクティブ状態)に維持されることになり、このため、該モデムは、順方向リンクにおいて全データ速度データフレームを受け取ることが依然としてできることになる。モデムに関わるデータ呼が無効化すなわち終了された場合は、該モデムは、データの送受信を完全に停止させる。
【0069】
ステップ716においてオーバーリミットモデムを非アクティブにすると、究極的には、該モデムは、逆方向リンク方向における送信データ速度及び対応する送信電力を引き下げる。コントローラ214はこの方法でモデム送信電力限度値(さらにはモデム送信電力)を個々に制御し、その結果として、信号230の総送信電力を移動無線端末206の総送信電力限度値よりも低いレベルに維持することができる。
【0070】
方法700は代替構成が可能である。上述したように、ステップ716においてモデムを非アクティブにすることは、例えばオーバーリミットモデムをアクティブリストから取り除くことによって該モデムを非アクティブモデムとして指定することで該モデムを非アクティブにすることを含んでいる。逆に、ステップ720においてモデムをアクティブにすることは、非アクティブにしたモデムをアクティブリストに再び加えることを含む。方法 700の1つの代替構成においては、ステップ 716においてモデムを非アクティブにすることは、オーバーリミットモデムに関わるデータ呼(即ち、通信リンク)を無効化する(即ち、終了させる)ことをさらに含んでいる。さらに、同代替構成において、ステップ 720においてモデムをアクティブすることは、以前に非アクティブにしたモデムが遠隔局とのデータの送受信を開始できるようにするために、該モデムに関する別のデータ呼を確立させることを含んでいる。
【0071】
方法700のもう1つの代替構成において、ステップ 716においてモデムを非アクティブにすることは、ステップ714においてオーバーリミットモデムのうちの1個を検出時には、オーバーリミットであるか又はオーバーリミットでないかにかかわらず全モデムを非アクティブにすることをさらに含んでいる。この構成においては、全モデムを非アクティブにすることは、全モデムを非アクティブモデムとして指定することを含み、さらに、該モデムに関わるすべてのデータ呼を無効化することを含む。
【0072】
図 8は、方法700の送信電力限度値設定ステップ704に基づいて拡大した流れ図である。第1のステップ802において、コントローラ214は、モデム216の各々に関する送信電力限度値を導き出す。例えば、コントローラ214は、送信電力限度値を算出するか又はメモリ参照表に保存されている予め決められた送信電力限度値に単にアクセスすることができる。次のステップ804において、コントローラ214は、送信電力限度値の各々をモデム216の各々に提供する。それに対応して、該モデムは、各々の送信電力限度値を各々のメモリ内に保存する。
【0073】
図 9は、方法700の決定ステップ718に基づいて拡大した流れ図である。コントローラ214は、ゼロ速度で送信中の非アクティブにした/非アクティブなモデムの各々の報告送信電力を例えばステップ 712において)モニタリングする。ステップ902おいて、コントローラ214は、該報告モデム送信電力から、モデムが最高の送信データ速度で送信時における各々の外挿モデム送信電力を導き出す。
【0074】
次のステップ94において、コントローラ214は、各外挿送信電力が各々のモデム送信電力限度値PLよりも小さいかどうかを決定する。各外挿送信電力が各々のモデム送信電力限度値PLよりも小さい場合は、該モデムが該送信電力限度値を超える可能性はないため、ステップ720に処理が進んで各々のモデムをアクティブにする。各外挿送信電力が各々のモデム送信電力限度値PLよりも小さくない場合は、該モデムは引き続き非アクティブ状態であり、方法700の流れがステップ710に戻る。
【0075】
図 10は、移動無線端末206が実施するもう1つの方法例1000を示した流れ図である。方法1000は、図 7に関連させて前述したステップのうちの数多くのステップを含んでおり、該ステップについては再説明しない。しかしながら、方法1000は、ステップ716に後続する新たなステップ1004、及び対応する決定ステップ1006を含んでいる。ステップ1004において、コントローラ214は、ステップ716において非アクティブ化された各モデムに対応するアクティブ化タイムアウト時間を(例えばタイマー217を用いて)開始させる。代替として、コントローラ214は、ステップ716において非アクティブにした各モデムに対応する将来のアクティブ化時間/イベントに関するスケジュールを設定することができる。
【0076】
決定ステップ1006において、コントローラ214は、以前に非アクティブにしたモデムのうちのいずれかのモデムをアクティブにするときであるかどうかを決定する。例えば、コントローラ214は、アクティブ化タイムアウト時間のうちのいずれかが経過しているかどうかを決定し、それによって、対応する非アクティブ化モデムをアクティブにするときであることを示す。代替として、コントローラ214は、ステップ1004においてスケジュールを設定したアクティブ化時間/イベントに達しているかどうかを決定する。
【0077】
方法700に関して説明した代替構成に類似した方法1000の代替構成についても構想している。
【0078】
VI. 送信電力限度値を固定した場合における構成
1. 均一の送信電力限度値
送信電力限度値を固定した場合における1つの構成において、モデム216の全モデムに関して一組の均一な固定送信電力限度値を設定する。すなわち、各モデムは、その他のモデムの各々と同じ送信電力限度値を有している。図 11は、モデム216の各々の1個のモデムを識別した電力対モデム指数(i)の1つの作図例であり、均一なモデム送信電力限度値PLiを示してある。図 11において示したように、モデム(1)は、送信電力限度値PL1に対応しており、モデム(2)は送信電力限度値PL2に対応しており、以下同様である。
【0079】
送信電力限度値が均一である1つの構成において、各送信電力限度値PLは、(総送信電力限度値 APL) ÷ (モデム216の総数 N)に等しい。この均一送信電力限度値構成において、モデム 216のすべてのモデムが各々の送信電力限度値に等しい各々の送信電力を有しているときには、モデム216のすべてのモデムに関する総送信電力はAPLに一致することになり、APLを超えることはない。本発明におけるAPL例は、約10又は11デシベル−ワット(dBW)である。
【0080】
図 11は、移動無線端末206に関する1つの送信シナリオ例も示している。図 11には、モデム(1)及びモデム(2)に対応する代表的な要求モデム送信電力PR1及びPR2を示してある。図 11に示した該送信シナリオ例は、要求されたモデム送信電力のうちのすべてのモデム送信電力が各々の均一送信電力限度値よりも小さいシナリオに関する例である。この状況においては、これらのモデムのうちのいずれのモデムもオーバーリミット状態ではなく、このためデータ速度の制限中ではない。
【0081】
図 12は、図 11に示した送信シナリオ例と類似したもう1つの送信シナリオ例であり、モデム(2)が有している要求電力PR2が各々の送信電力限度値PL2を超えている点が異なっている。従って、モデム(2)はオーバーリミット状態であり、このためデータ速度を制限中である。モデム(2)はオーバーリミット状態であるため、コントローラ214は、方法700又は方法1000に従ってモデム(2)を非アクティブにし、それによって、モデム(2)はゼロデータ速度でかつ対応して引き下げられた送信電力レベル1202で送信を行うことになる。
【0082】
2. 漸減送信電力限度値
図 13は、固定したモデム送信電力限度値に代わる漸減構成を示した図である。図示したように、該漸減構成は、N個のモデムのうちの各々後続するモデムにおいて送信電力限度値PLiが徐々に小さくなることを含んでおり、ここで i = 1…Nである。例えば、モデム(1)に関する送信電力限度値PL1はモデム(2)に関する送信電力限度値PL2よりも小さく、モデム(2)に関する送信電力限度値PL2はモデム(3)に関する送信電力限度値PL3よりも小さく、以下同様である。
【0083】
送信電力限度値が漸減する1つの構成において、送信電力限度値PLiの各々は、APL ÷ (PLiよりも大きいか又はPLiに等しい送信電力限度値を有するモデムの総数)に等しい。例えば、送信電力限度値PL5は、APL ÷ 5(PL5よりも大きいか又はPL5に等しい送信電力限度値を有するモデム数)に等しい。別の漸減構成においては、各送信電力限度値PLiは、上記の送信電力限度値(即ち、 APL ÷ (PLiよりも大きいか又はPLiに等しい送信電力限度値を有するモデムの総数))から予め決められた量(例えば1 dB、2 dB、さらには3 dB)を減じた値に等しい。このような漸減構成は、モデムを非アクティブにする前に該モデムが各々の送信電力限度値よりもわずかに高い送信電力レベルで実際に送信する傾向が生じた場合に安全余裕を確保することことを可能にする。
【0084】
全モデムがほぼ同じ電力で送信し、さらにこれらの全送信電力が時間の経過とともに増大する送信シナリオを想定すると次のようになる。即ち、漸減構成においては、最初にモデム(N)がデータ速度を制限し、次にモデム(N−1)がデータ速度を制限し、3番目にモデム(N−2)がデータ速度を制限することになり、以下同様である。さらに、コントローラ214は、これらのデータ速度制限に対応して、最初にモデム(N)、2番目にモデム(N−1)、3番目にモデム(N−2)を非アクティブにし/スケジュール設定を取り消し、以下同様である。
【0085】
VII.モデム校正−利得係数g(i)の決定
図 2に関連させて上述したように、各モデム216iは、各々の送信電力レベルを有する送信信号222iTを生成する。さらに、各モデム216iは、該各々の送信電力レベルのモデム送信電力推定値PRep(i)を含んだ状態報告書を生成する。各モデム送信信号222iTは、モデム222iから送信増幅器228の出力部までの各々の送信経路を移動する。該各々の送信経路は、RF接続部(ケーブル及びコネクタ等)、パワーコンバイナ/スプリッタアセンブリ220、及び送信増幅器228を含む。このため、送信信号 222iTは、該各々の送信経路を通過中に各々の正味電力利得又は正味電力損g(i)が生じる。上記の送信経路に関する1つの利得例は、約29 dBである。
【0086】
従って、各々の送信経路の電力利得又は電力損g(i)に起因して、モデム 222iの出力部における各々の送信信号222iTの電力レベルが送信増幅器228の出力部における送信電力レベルと異なることがある。このため、各々のモデム送信電力推定値PRep(i)は、送信増幅器228の出力部における各々の送信電力を正確に表していないことがある。(モデム222iに起因する)送信増幅器228の出力部における送信電力に関するより正確な推定値PO(i)は、報告された電力PRep(i)を対応する利得/損失量g(i)によって調整した値である。このため、g(i)は、モデム222iに関するモデム依存利得補正係数g(i)又はモデム利得係数g(i)と呼ばれている。
【0087】
報告されたモデム送信電力推定値PRep(i)及びモデム利得補正係数 g(i)の両方が電力項(例えばデシベル又はワット)を表している場合、補正送信電力推定値PO(i)は次式によって与えられる。
【数1】

【0088】
代替として、報告されたモデム送信電力推定値PRep(i)及びモデム利得補正係数g(i)が例えばワットで表されている場合は、補正送信電力推定値PO(i)は次式によって与えられる。
【数2】

【0089】
N個の全モデムに関する利得補正係数g(i)を決定する上では、移動無線端末206を動的に校正できるようにするのが便利である。決定した利得補正係数g(i)は、モデム送信電力報告に基づいてより正確な個々のモデム送信電力推定値及び総モデム送信電力推定値を求めるために用いることができる。
【0090】
図 14は、移動無線端末206におけるモデム216の校正法の1例を示した流れ図である。第1のステップ1405において、コントローラ214は、N個の全モデム216が同時並行してデータを送信するようにするために、これらの全モデムのデータ送信スケジュールを設定する。
【0091】
次のステップ1410において、コントローラ214は、報告された各々の送信電力PRep(i)を含んだ状態報告を収集する(ここで、iはモデムiであり、i = 1…Nである)。
次のステップ1420において、コントローラ214は、例えば送信電力モニタ234によって決定されたN個の全モデムに関する総送信電力測定値PAggを受け取る。
【0092】
次のステップ1425において、コントローラ214は、該総送信電力を表している1個の方程式を、報告送信電力PRep(i)及び対応する未知のモデム依存利得補正係数g(i)の累積関数として生成する。例えば、総送信電力PAggは次式によって表される。
【数3】

【0093】
次のステップ1430において、それ以前のステップ 1405、1410、1420及び1425をN回繰り返し、報告送信電力PRep(i)及び未知の利得補正係数g(i)の累積関数としてのN個の同時方程式を生成する。
【0094】
次のステップ1435において、コントローラ214は、ステップ 1430において生成したN個の方程式を解くことによってN個の利得補正係数g(i)を決定する。決定した利得補正係数 g(i)は、移動無線端末206のメモリ215に保存し、後述するように、本発明の諸方法においてモデム送信電力推定値PRep(i)を調整/補正するために必要に応じて使用する。尚、方法1400は、時間の経過とともに利得補正係数g(i)を更新するために定期的に繰り返すようにスケジュールを設定することができる。
【0095】
VIII.動的に更新される送信限度値を用いる方法
1. ビット当たりのエネルギーの決定を用いる方法
図 15は、動的に更新される個々のモデム送信電力限度値を用いて移動無線端末206を操作する方法の1例1500を示した流れ図である。方法 1500においては、コントローラ214は、上述したように、モデム 216を初期設定し(ステップ702)、モデム216のうちのアクティブモデム及び非アクティブモデムに関するスケジュール設定及びスケジュール設定の取り消しを行い(ステップ710)、さらに、該モデムからの状態報告をモニタリングする(ステップ712)。次のステップ1502において、コントローラ214は、移動無線端末206の総送信電力限度値を超えない形で総逆方向リンクデータ速度(即ち、総送信データ速度)を最高速にするために、移動無線端末206のアクティブモデム数を修正すべきか(例えば、増減すべきか)又は維持すべきかを決定する。
【0096】
次のステップ1504において、コントローラ214は、ステップ1502に従って、アクティブモデムの数を必要に応じて増減するか又は維持する。コントローラ214は、アクティブモデム数を増やすために、それまでに非アクティブであった1個以上のモデムをアクティブリストに加える。逆に、コントローラ214は、アクティブモデム数を減らすために、それまでにアクティブであった1個以上のモデムをアクティブリストから削除する。
【0097】
次のステップ1506において、コントローラ214は、モデム216のうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力限度値を必要に応じて更新/調整する。個々の送信電力限度値を調整するための技術についてさらに詳しく説明する。即ち、ステップ1506において、すべての個々の送信電力限度値を結合させて1個の送信電力限度値にしたときに該結合させた送信電力限度値が移動無線端末206の総送信電力限度値を超えることがないように、個々の送信電力限度値をモデム216全体にわたって調整する。尚、方法1500とともに用いることができる典型的な送信電力限度値構成を表 1及び図 19と関連させて後述してある。方法1500においてモデム送信電力限度値を変化させる1つの理由は、モデムにおけるデータ速度制限状態を回避するためである。さらに、モデムを非アクティブにする(即ちアクティブモデムの数を減らす)理由は、総送信電力限度値未満で動作中に逆方向リンクにおいて総送信データ速度を上げるためにデータ速度制限状態を回避することも含む。
【0098】
一見すると、モデムを非アクティブにすると送信データ速度を上げるのではなく下げることになるように思われる。しかしながら、いくつかのモデム(例えば16個のモデム)をデータ速度が制限されたデータ速度(例えば4800bps)で動作させると、総送信電力は同じであるにもかかわらず、それよりも少ない数のモデム(例えば8個のモデム)を全データ速度(例えば9600bps)で動作させたときよりも有効データ速度は遅くなる。この理由は、(例えばデータ呼を管理するために用いる)オーバーヘッド情報と(例えばエンドユーザーが用いる)実際の/有用なデータの比が、データ速度を制限中でないモデムよりもデータ速度を制限中であるモデムのほうが不都合に大きくなるためである。
【0099】
図 16は、方法 1500に基づいて拡大した1つの方法例 1600を示した流れ図である。方法 1600は、方法 1500のステップ 1502に基づいて拡大したステップ1602を含む。ステップ1602は、さらなるステップ1064及び1606を含む。ステップ1064において、コントローラ214は、移動無線端末206の総送信電力限度値を超えない状態で各々の最高データ速度(例えば9600bps)で同時並行して送信することができるアクティブモデムの最大数NMaxを決定する。尚、NMaxは、モデム216の総数Nよりも少ないか又は該Nに等しいと想定している。
【0100】
次のステップ 1606において、コントローラ214は、最大数 NMaxを、それ以前にアクティブであったモデムの数M(即ち、上述したように、前回にステップ 710を経る際に用いられたアクティブモデムの数)と比較する。
【0101】
次のステップ1610(方法 1500のステップ 1504に該当する)は、さらなるステップ 1612、1614及び1616を含む。ステップ1604からのアクティブモデムの最大数NMaxが、それ以前にアクティブであったモデム数Mよりも大きい場合は、方法の流れは、ステップ1606から次のステップ1612に進む。ステップ1612において、コントローラ214は、アクティブモデムの数Mをアクティブモデムの最大数NMaxに増加させる。コントローラ214は、この増加を行うために、アクティブにすべき非アクティブモデムをN個のモデムの中から選択する。
【0102】
代替として、モデムの最大数 NMaxがMよりも小さい場合は、ステップ 1606からステップ1614に処理が進む。ステップ1614において、コントローラ214は、アクティブモデムの数を減らす。コントローラ214は、アクティブモデムの数を減らすために、非アクティブにすべきアクティブモデムを選択する。ステップ1612及びステップ1614は、両方一組で、 次回にステップ 710、712、等を経るのに備えてそれ以前のアクティブモデムの数Mの修正を行う調整ステップ(修正ステップとも呼ばれている)を表している。
【0103】
代替として、最大数 NMaxがMに等しい場合は、処理は、ステップ1606からステップ1616に進む。ステップ1616において、コントローラ214は、次回にステップ710、712、等を経るのに備えて、アクティブモデム数をM個に維持する。
【0104】
処理は、両方の修正ステップ1612及び1614から次の制限調整ステップ1620に進む。ステップ1620において、コントローラ214は、ステップ1612においてアクティブにした1個以上のモデムにおける個々の送信電力限度値を大きくする。逆に、コントローラ214は、ステップ1614において非アクティブにした1個以上のモデムにおける個々の送信電力制限値を小さくする。
【0105】
本方法は、ステップ1610及び1620からスケジュール設定/スケジュール設定取り消しステップ710に戻り、上記のプロセスを繰り返す。
【0106】
図 17は、N個のモデムの送信ビット当たりの平均エネルギーを用いてアクティブモデムの最大数 NMaxを決定する1つの方法例1700を示した流れ図である。方法1700は、方法1600のステップ1604に基づいて拡大する。第1のステップ1702において、コントローラ214は、N個のモデムによって報告された各々の送信データ速度に基づいて総送信データ速度を決定する。例えば、コントローラ214は、各々の状態報告500においてN個のモデムによって報告されたすべての送信データ速度を加算する。
【0107】
次のステップ1704において、コントローラ214は、送信増幅器228の出力部における送信信号230の総電力レベルを決定する。例えば、コントローラ214は、送信電力モニタ234から送信電力測定値(信号236)を受け取ることができる。代替として、コントローラ214は、各々の状態報告500において個々のモデムから受け取った個々のモデム送信電力推定値PRep(i)(電力利得係数 g(i)を用いて補正した値)を総計することができる。
【0108】
次のステップ1706において、コントローラ214は、総データ速度及び総送信電力に基づいて、N個のモデム216全体における送信ビット当たりの平均エネルギーを決定する。実施形態の1つの構成においては、コントローラ214は、以下の関係式に従って該送信ビット当たりの平均エネルギーを決定する。
【数4】

【0109】
ここで、
Δt = 予め決定した測定時間間隔(例えば1つの送信フレームの持続時間であり、例えば20ms)
B = 時間間隔Δt中における総データ速度
b_avg = 時間間隔Δt中における送信ビット当たりの平均エネルギー
P(t) = 時間間隔Δt中における総送信電力
= 時間間隔Δt中に送信された全ビットの総エネルギー
次のステップ1708において、コントローラ214は、送信ビット当たりの平均エネルギー及び総送信電力限度値に基づいて最大数NMaxを決定する。1つの構成においては、コントローラ214は、以下の関係式に従って最大数NMaxを決定する。
【数5】

【0110】
ここで、
APL = 移動無線端末206の総送信電力限度値(例えば、10又は11デシベル−ワット(dBW))
Max = N個のモデムの最高データ速度(例えば、9600bps)
min = N個のモデムの最低データ速度(例えば、2400bps)
b_avg = 時間間隔Δt中における送信ビット当たりの平均エネルギー
N = モデム216の総数
Max = 決定すべきアクティブモデム総数
図 18は、モデム216の各々に関する送信ビット当たりの個々のエネルギーを用いてアクティブモデム総数NMaxを決定する1つの方法例1800を示した流れ図である。方法1800は、方法1600のステップ 1604に基づいて拡大する。第1のステップ1802において、コントローラ214は、モデム報告500を用いて、各モデムに関する送信ビット当たりの個々のエネルギーE(i)を決定する。該実施形態の1つの構成においては、コントローラ214は、以下の関係式に従って送信ビット当たりの各エネルギーE(i)を決定する。
【数6】

【0111】
ここで、
Δt = 予め決定した測定時間間隔
(i) = 時間間隔 Δtにおけるモデムiに関する送信ビット当たりの個々のエネルギー(ここで、i = 1…N)
Rep(i) = 報告されたモデム送信電力(即ち、モデムiに関する送信電力推定値)
g(i) = モデム依存利得補正係数(利得補正係数とも呼ばれる)( 図 14に関連させて上述)
Bi = モデムiの送信データ速度
ステップ1804において、コントローラ214は、送信ビット当たりの各々のエネルギーE(i)に従ってモデムを分類する。
【0112】
次のステップ 1805において、コントローラ214は、繰り返しプロセスを用いて、個々のモデムの送信ビット当たりのエネルギーに基づいてアクティブモデムの最大数NMaxを決定する。1つの実施形態においては、ステップ 1805の繰り返しプロセスは、次式を用いて、サポートすることができるアクティブモデムの最大数 NMaxを決定する。
【数7】

【0113】
ここで、
APL = 総送信電力限度値
Max = 各モデムに関する最高データ速度
min = 各モデムに関する最低データ速度
(i) = モデムiに関する送信ビット当たりの個々のエネルギー
ここでは、ステップ1805についてさらに詳細に説明する。ステップ 1805内のステップ1806は、繰り返しプロセスにおける初期設定ステップであり、該ステップにおいて、モデム214は、1に等しい試験的なアクティブモデム数NActを設定する。試験数 NActは、アクティブモデムの試験的な最大数を表す。次のステップ1808において、モデム214は、試験的モデム数 NActを用いて予想送信電力PExpを決定する。ステップ1808においては、N個のモデムの中で送信ビット当たりの個々のエネルギーが最低である試験的モデム数NActは各々が最高データ速度(例えば9600bps)で送信すると想定している。上記の実施形態において、ステップ1808は、次式に従って該予想送信電力を決定する。
【数8】

【0114】
次のステップ1809において、コントローラ214は、該予想送信電力PExpをAPLと比較する。PExpがAPLよりも小さい場合は、より多くのアクティブモデムをサポートすることができる。従って、試験的アクティブモデム数NActを増加させ(ステップ1810)、本方法はステップ1808に戻る。
【0115】
代替として、PExpがAPLに等しい場合は、アクティブモデムの最大数NMaxを現在の試験数NActに設定する(ステップ1812)。
【0116】
代替として、PExpがAPLよりも大きい場合は、最大数NMaxを前回の試験的アクティブモデム数、即ち、NAct − 1に設定する(ステップ1814)。
【0117】
ExpがAPLに等しくもなくかつAPLよりも大きくない場合は、プロセスは、ステップ1810及びステップ1809に戻る。ある時点において、最大モデム数に達するか又は最大モデム数を超える場合があり、ステップ1812又は1814のいずれかに各々到達する。APLを再計算して現在のN(使用中のアクセス端末数)を確認するか又はAPLと比較してPExpを確認するプロセスは、電力増幅器のオーバードライブを防止するための繰り返し手順の一部として非常に頻繁に又は定期的に繰り返すことができる。
【0118】
IX. 送信電力限度値例
以下の表 1は、本発明において用いることができる典型的な送信電力限度値を含んでいる。
【表1】

【0119】
表1に示した送信電力限度値は、移動無線端末206のメモリ1に保存することができる。表1では、移動無線端末206は総数N=16個のモデムを含むと想定している。表1の各行は、該N個のモデムのうちでいずれかの所定の時点においてアクティブであるモデム数(例えば、行の下方に向かって1、2、3、等)を示している。列Aの各行は、ある所定のアクティブモデム数を識別している。表1のいずれかの所定の行に対応する非アクティブモデム数は、総モデム数(16)及び該所定の行において示されているアクティブモデム数の差である。
【0120】
列B、C及びDは、全体で、本発明の3種類の個々の送信電力限度値構成を表している。列Bの送信電力限度値構成は、移動無線端末206におけるAPLが10 dBWであると想定している。さらに、列Bの構成は、いずれかの所定の行において、アクティブモデムは1個の共通する最大送信電力限度値を受け取り、全非アクティブモデムはゼロに等しい1個の共通する最小送信電力限度値を受け取ると想定している。例えば列Bにおいて、アクティブモデム数が6であるときには、1個の共通する最大送信電力限度値である3.2デシベル−ミリワット(dBm)がアクティブモデムの各々において設定され、1個の共通する最小送信電力限度値であるゼロが10個の非アクティブモデムの各々において設定される。尚、いずれかの所定の行に該当する全アクティブモデムにおける最大送信電力限度値の和は、該APLに等しい。
【0121】
列Cの送信電力限度値構成は、移動無線端末206におけるAPLが11dBWであると想定している。さらに、列Cの該構成は、いずれかの所定の数のアクティブモデム(即ち、表1における各行に関するアクティブモデム)に関して、該アクティブモデムのすべてが1個の共通する最大送信電力限度値を受け取り、非アクティブモデムのすべてが(該最大送信電力限度値) − 6 dBに等しい1個の共通する最小送信電力限度値を受け取る。例えば列Cにおいて、アクティブモデム数が6であるときには、1個の共通する最大送信電力限度値である2.7 dBmが該6個のアクティブモデムの各々において設定され、1個の共通する最小送信電力限度値である(2.7−6) dBmが10個の非アクティブモデムの各々において設定される。尚、いずれかの所定の行に該当する全アクティブモデムにおける最大送信電力限度値の和は、全非アクティブモデムにおける最小送信電力限度値の和と合わせて、該APLに等しい。非アクティブモデムの各々における送信電力限度値はゼロよりも大きいため、該非アクティブモデムは、各々のデータリンクをアクティブに維持するために、各々の最低データ速度で、又は少なくともゼロデータ速度で送信することができる。
【0122】
列Dの送信電力限度値構成は、列Cの送信電力限度値構成と同様であるが、列Dの構成ではより小さいAPLである10 dBWを想定している。列Dの構成は、いずれかの所定の数のアクティブモデム(即ち、表1における各行に関するアクティブモデム)に関して、該アクティブモデムのすべてが1個の共通する最大送信電力限度値を受け取り、非アクティブモデムのすべてが、(該最大送信電力限度値) − 6 dBに等しい1個の共通する最小送信電力限度値を受け取る。例えば列Dから、アクティブモデム数が6であるときには、1個の最大送信電力限度値である1.7 dBmが該アクティブモデムの各々において設定され、1個の共通する最小送信電力限度値である(1.7−6) dBmが10個の非アクティブモデムの各々において設定される。
【0123】
コントローラ214は、表1に示した送信電力限度値を用いることによって、図15及び16に関連させて上述した方法1500及び1600におけるモデム216の個々の送信電力限度値を設定及び調整することができる。例えば、表1、列Dの送信電力限度値構成を方法1600とともに用いていると想定する。さらに、前回にステップ710を経たときのアクティブモデム数が7であると想定する。該前回にステップ710を経たときには、送信電力限度値1.3dBmが該7個のアクティブモデムの各々において設定され、送信電力限度値(1.3−6)dBmが9個の非アクティブモデムにおいて設定される(列Dにおいて7個のアクティブモデムに該当する記入項目を参照すること)。さらに、次にステップ1602及び1614を経る際にアクティブモデム数が7から6に減らされると想定する。従って、送信電力限度値調整ステップ1620においては、新たな送信電力限度値1.7dBが該6個のアクティブモデムの各々において設定され、送信電力限度値(1.7−6)dBが残りの10個の非アクティブモデムの各々において設定される。
【0124】
図19は、表1に示した情報をグラフで表した図である。図19は、表1の列B、C及びDに示した送信電力限度値構成の各々に関する送信限度電力(dBm)及びアクティブモデム数(Nで表してある)を作図した図である。図19において、列Bの送信電力限度値構成は、曲線COL Bによって表されており、列Cの送信限度値構成は曲線COL Cによって表されており、列Dの送信限度値構成は曲線COL Dによって表されている。
【0125】
X. モデム送信電力を追跡するためにモデム送信電力限度値を調整する方法
図 20は、動的に変化する個々のモデム送信電力限度値を用いて移動無線端末206を操作する1つの方法例2000を示した流れ図である。方法2000は、各々の個々のモデム送信電力限度値が該送信電力限度値に関わるモデムの送信電力を追跡するようにする方法である。方法2000は、前述したように、ステップ702、710、及び712を含む。ステップ710及び712は、コントローラ214がモデムによって行われた状態報告500に基づいてステップ2002においてオーバーリミット(OL)モデムを検出するまで繰り返される。コントローラ214がステップ2002においてオーバーリミットモデムを検出すると、コントローラ214は、ステップ2004において現在のアクティブモデム数を調整すべきか維持すべきかを決定する。このような形で、方法2000は、移動無線端末206のモデム内におけるオーバーリミット状態に対応する。この処理は、チャネルが良好でさらなるスループットが要求されるときにモデム数を増やすことを可能にする。
【0126】
ステップ2004は、図 15に関連させて上述した方法1500のステップ1502に対応している。ステップ2004は、ステップ2006、2008、及び2010を含む。ステップ2006において、コントローラ214は、N個のモデム216の総送信電力を決定する。例えば、コントローラ214は、送信電力モニタ234から送信電力測定値を受け取る。この代替として、コントローラ214は、N個のモデムから報告された送信電力推定値PRep(i)を受け取り、利得補正係数g(i)を用いて補正した電力推定値Po(i)を該報告推定値から導き出し、次に、該補正電力推定値を結合させ、N個のモデムの総送信電力を表している1個の総送信電力推定値を得る。尚、利得補正係数g(i)及び補正推定値Po(i)については図14と関連させて上述してある。
【0127】
次のステップ2008において、コントローラ214は、移動無線端末206の総送信電力余裕(ATM)がオーバーリミットモデムの送信電力限度値を大きくできるような十分なものであるかどうかを決定する。該ATMは、総送信電力及び総送信電力限度値の間に存在している総送信電力余裕量を表している。1つの構成においては、該ATMは、N個のモデムの総送信電力及び総送信電力限度値の差であると定義される。
【0128】
ステップ2008は、総送信電力がオーバーリミットモデムにおける個々の送信電力限度値を大きくする上で必要な予決定量分だけAPLよりも少なくなっているかどうかを決定するための単純な比較を行うことを含めることができる。オーバーリミットモデムにおいて送信電力限度値を大きくする上では、総送信電力余裕ATMが1dB乃至6dBである場合に十分な余裕であるとみなすことができる。
【0129】
総送信電力余裕ATMが不十分であるためオーバーリミットモデムの送信電力限度値を大きくすることができない場合は、コントローラ214は、さらなる措置を講じて、オーバーリミットモデムにおける送信電力限度値を大きくすることができるようにするためにより大きな総送信電力余裕を解放するか又は生成することを試み、方法の処理は次のステップ2014に進む。ステップ2014は、アクティブモデム数を減らすためのステップ2016及び2018を含む。ステップ2016において、コントローラ214は、各々の送信電力に従ってモデム216を分類する。例えば、コントローラ214は、各々の報告された送信電力推定値PRep(i)を各々の利得係数g(i)によって補正して得られた推定値に基づいてモデムを分類する。
【0130】
次のステップ2018において、コントローラ214は、アクティブモデムの中で最も大きい送信電力を有しているモデムを非アクティブにする。ステップ2018においてモデムを非アクティブにすることによって生じる結果として、N個のモデムの総送信電力が小さくなり、それに応じて総送信電力余裕ATMが大きくなる。次に、処理は送信電力限度値調整ステップ2020に進む。
【0131】
ステップ2008に再び戻り、総送信電力余裕ATMがオーバーリミットモデムにおける送信電力限度値を大きくする上で十分な余裕である場合は、処理はステップ2010に進む。ステップ2010において、コントローラ214は、総送信電力余裕がオーバーリミットモデム及び別の非アクティブモデムの両方における送信電力限度値を大きくする上で十分な大きさであるかどうかを決定する。換言すると、ステップ2010は、アクティブモデム数を増やすことが可能な十分な送信電力余裕(例えば、少なくとも3 dBの送信電力余裕)が存在するかどうかを決定する。十分な送信電力余裕が存在していない場合(即ち、アクティブモデム数を増やす上での総送信電力余裕が不十分である場合)は、処理はステップ2022に進み、アクティブモデム数を維持する。本方法は、ステップ2022から送信電力限度値調整ステップ2020に進む。
【0132】
他方、総送信電力余裕ATMが、アクティブモデム数を増やす上で又はオーバーリミットモデムにおける送信電力限度値を大きくする上で十分である場合は、処理は、ステップ2010から次のステップ2024に進み、ステップ2024において、アクティブモデム数を増やすか又は1個のアクティブモデムへの電力を増大させる。即ち、十分な送信電力余裕が存在する場合は、モデムがオーバーリミット状態であるかどうかにかかわらず、該余分の電力を希望するいずれかのモデムに充当することを自由に選択することができる。処理は、ステップ2024から送信電力限度値調整ステップ2020に進む。尚、方法2000のステップ2014、2022及び2024は、方法1500の調整ステップ1504に対応しており、ステップ2020は、方法1500のステップ1506に対応している。
【0133】
送信電力限度値調整ステップ2020において、コントローラ214は、総送信電力限度値、総送信電力余裕ATM、及びN個のモデムから報告された各々の電力推定値に基づき、N個のモデムのうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力限度値を調整し、それによって、各個々の送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力を追跡するようにする。流れは、ステップ2020からステップ710に戻る。
【0134】
図 21は、方法2000の送信電力限度値調整ステップ2020に基づいて拡大した1つの方法例2100を示した流れ図である。処理は、モデム2000のモデム非アクティブ化ステップ2018から(図 20から)方法2100のステップ2105に進む。ステップ2105において、コントローラ214は、ステップ2018において非アクティブにしたモデムにおける個々の送信電力限度値を大きくする。コントローラ214は、個々の送信電力限度値を例えば6 dBだけ小さくすることができる。個々の送信電力限度値を小さくすることは、それに対応して、N個のすべてのモデムの送信電力限度値を結合させた送信電力限度値を変えることなしに、(方法2000のステップ2002において決定した)オーバーリミットモデムの送信電力限度値を大きくすることを可能にする。N個のすべてのモデムの該結合させた送信電力限度値は、N個の個々の送信電力限度値の和である。該結合させた送信電力限度値は、総送信電力限度値を超えるべきではない。
【0135】
本方法は、方法2000のモデムアクティブ化ステップ2024から(図20から)方法2100のステップ2110に進む。ステップ2110において、コントローラ214は、ステップ2024においてアクティブにしたモデムにおける個々の送信電力限度値を大きくする。コントローラ214は、(送信電力余裕)−(オーバーリミットモデムにおける送信電力限度値を大きくするために必要な少なくとも数dB)によって得られた値に等しい量だけ、該アクティブにしたモデムにおける個々の送信電力限度値を大きくすることができる。
【0136】
処理は、ステップ2105及びステップ2110から方法2100のステップ2115に進み、さらに、方法2000の維持ステップ2022から(図20から)方法2100のステップ2115に進む。ステップ2115において、コントローラ214は、総送信電力限度値及びN個のモデムから報告された各々の送信電力推定値に基づき、N個のモデムのうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力限度値を調整し、それによって、各個々の送信電力限度値が対応するモデム送信電力を追跡するようにする。送信電力限度値は、個々の送信電力限度値をすべて結合させて1個の送信電力限度値にしたときに該結合させた送信電力限度値が総送信電力限度値以下になるように調整する。さらに、モデム内におけるオーバーリミット状態を回避するために、各個々の送信電力限度値は、対応する個々のモデム送信電力よりも大きいことが好ましい。上記の結果を達成させるために、コントローラ214は、総送信電力余裕ATMをN個のモデム全体にわたって必要に応じて配分し、オーバーリミットモデムにおける送信電力限度値を大きくする。
【0137】
図 22は、ステップ2115に基づいて拡大した1つの方法例2200を示した流れ図である。第1のステップ2205において、コントローラ214は、総送信電力余裕ATMを決定する。総送信電力余裕ATMはそれ以前にステップ2006において決定することもできるため、このステップは任意にすることができる。
【0138】
次のステップ2210において、コントローラ214は、N個のモデムのうちの少なくとも一部のモデムの間で総送信電力余裕を分割して個々の送信電力限度値を導き出す。1つの構成においては、総送信電力余裕はN個のモデムの間で均等に分割する。例えば、総送信電力余裕をNの数の等しい部分に分割する(ここで、各部分はX dBに等しい)と想定すると、各モデム222iに関する個々の送信電力限度値は、該モデムの推定送信電力PRep(i)にX dBを加えることによって導き出すことができる。本プロセスは、該推定送信電力よりもX dBだけ大きい送信電力限度値をモデム222iにおいて生成し、それによって該モデム内におけるオーバーリミット状態を回避することが可能になる。さらに、本プロセスは時間の経過に伴って繰り返されるため、各々の個々の送信電力限度値は、対応するモデムの送信電力を追跡する。すなわち、各送信電力限度値は、対応するモデム送信電力に応じて増減することになる。
【0139】
図 23Aは、方法2000に従って制御中であるモデム216の各々のモデムを識別する電力対モデム指数(i)の作図例を示した図である。図 23Aは、第1の時間tに移動無線端末206内において発生する送信シナリオ例を示した図である。モデム(1)は、各々のモデム送信電力P及び各々の送信電力限度値PL1を有しており、モデム(2)は、各々のモデム送信電力P及び各々の送信電力限度値PL2を有しており、以下同様である。図示した送信電力Pは、実際のモデム送信電力、報告されたモデム送信電力PRep(i)、又は調整したモデム送信電力Po(i)を表すことができる。図示したように、各々のモデム送信電力限度値は、各々のモデム送信電力に応じて各モデムごとに異なる。さらに、各モデム送信電力限度値PLiは、対応する送信電力Pよりも多少大きい。
【0140】
図 23Bは、第1の時間tよりも少し後の第2の時間t2に移動無線端末206において発生する送信シナリオ例を示した図である。図 23Bにおいて示した各々のモデム送信電力は、図 23Aと比較して変化している。しかしながら、各々の送信電力限度値も送信電力に対応して変化している。送信電力限度値はこれらの変化を追跡する。
【0141】
図 23Cは、移動無線端末206においてモデム(2)の送信電力Pが送信電力限度値を超える送信シナリオを示した図である。この送信シナリオは、モデム(2)において発生する可能性があるオーバーリミット状態に関するシナリオである。該送信シナリオに対応して、方法2000は、該オーバーリミット状態を回避するためにモデム(2)における送信電力限度値を大きくし、残りの総送信電力余裕をその他のモデム間で再配分する。
【0142】
図 23Dは、方法2000が図 23Cのオーバーリミットシナリオに対応後の移動無線端末206における1つの送信シナリオ例を示した図である。図 23Dにおいては、モデム(2)の送信電力限度値PL2は、モデム(2)の送信電力Pを上回るようにするために方法2000によって調整されている。さらに、モデム送信電力Pが小さくなることで、それに対応して総送信電力余裕ATMが大きくなる。該大きくなったATMは、全モデム間で割り当てられる。
【0143】
XI. 移動無線端末コンピュータコントローラ
図 24は、コントローラ214を表した1個のコントローラ例(複数のコントローラも可能である)2400を示した機能ブロック図である。コントローラ2400は、上記の実施形態の様々な方法ステップを実行するための一連のコントローラモジュールを含む。
【0144】
スケジューラ/デスケジューラ2402は、アクティブモデムがペイロードデータを送信するスケジュールを設定し及び非アクティブモデムのスケジュール設定を取り消し、コールマネージャ2404は、該複数のモデム216におけるデータ呼を設定し及びデータ呼を取り消す。
【0145】
状態モニタ2406は、例えばモデム216のうちの様々なモデムがオーバーリミット状態になるときを決定するために該モデム216からの状態報告をモニタリングし、さらに、モデム送信データ速度及び送信電力を収集する。状態モニタ2406は、該モデム報告に基づいて総データ速度及び総送信電力を決定することもできる。
【0146】
非アクティブ化/アクティブ化モジュール2408は、全モデムのうちで(本発明の送信電力限度値が固定された構成における)オーバーリミットモデムを(例えばアクティブリストから取り除くことによって)非アクティブにする働きをし、さらに、全モデムのうちの非アクティブにしたモデムをアクティブリストに戻すことによって該モデムをアクティブにする働きをする。さらに、モジュール2408は、方法1500、1600、及び2000のステップ1504、1612、1614、2014、及び2024に従って全モデムのうちの選択したモデムをアクティブ/非アクティブにする。
【0147】
送信電力限度値計算器2410は、モデム216の各々に関する送信電力限度値を計算する/導き出す。さらに、送信電力限度値計算器は、例えばメモリ215内に保存されている予決定送信電力限度値にもアクセスする。送信電力限度値計算器2410は、ステップ1506、1620、及び2020に従って送信電力限度値を計算する。
【0148】
イニシャライザ2412は、システムの初期設定、例えば、各モデムにおける初期送信電力限度値の設定、各モデムにおけるコール設定、移動無線端末206における様々なリスト及び行列の初期設定、等、を監視/管理するために用いられる。モデムインタフェース2414は、モデム216からデータを受け取りさらにモデム216にデータを送信する。ネットワークインタフェース2416は、インタフェース210を通じてのデータの送受信を行う働きをする。
【0149】
モジュール2420は、方法1500、1600及び2400のステップ1502、1602、及び2004に従ってアクティブモデム数を調整すべきかどうかを決定するために用いられる。モデム2420は、送信ビット当たりの平均エネルギー又は個々のモデムの送信ビット当たりのエネルギーのいずれかに基づいてサポートすることができるアクティブモデムの最大数を決定するためのサブモジュール2422を含む。サブモジュール2422は、方法1600の比較ステップ1606に従って動作するように構成された比較ロジック(例えばコンパレータ等)を含む。さらに、モジュール2420は、該送信ビット当たりの平均エネルギー及び該個々のモデムの送信ビット当たりのエネルギーをそれぞれ決定するためのサブモジュール2424及び2426も含んでいる。サブモジュール2424及び2426、又はその代替としての状態モニタ2406は、モデム報告に基づいて総データ速度及び総送信電力も決定する。さらに、モジュール2420は、総送信電力余裕ATMが十分であるかどうかを方法2000のステップ2008及び2010に従って決定するためのサブモジュール2428も含む。
【0150】
校正モジュール2440は、例えば方法1400に従って移動無線端末206における校正を制御する。該制御モジュールは、同時方程式を生成するための方程式ジェネレータ及び該方程式を解いてモデム補正係数g(i)を決定するための方程式ソルバーを含む。該校正モジュールは、移動無線端末206の校正を実施するために必要に応じてその他のモジュールを呼び出すこと/組み入れることも可能である。
【0151】
ソフトウエアインタフェース2450は、上記のすべてのモジュールを互いに接続するために用いられる。
【0152】
本発明の特長は、プログラミング可能であるか又はソフトウエアによって制御可能な要素を実際上において具備するプロセッサ/コントローラ214、デバイス、又はコンピュータシステムによって実行及び/又は制御することができる。該コンピュータシステムは、例えば、1本の通信バスに接続された1個以上のプロセッサを含む。本発明は電気通信専用のハードウエアを用いて実行することができるが、完全な説明にするために以下において汎用コンピュータシステムについて説明する。
【0153】
コンピュータシステムは、主メモリ(ランダムアクセスメモリ(RAM)が好ましい)を含むことができ、さらに、二次メモリ及び/又はその他のメモリを含むこともできる。該二次メモリは、例えば、ハードディスクドライブ及び/又は取り外し可能なストレージドライブを含むことができる。該取り外し可能ストレージドライブは、非常に良く知られた方法で取り外し可能記憶装置からの読み出し及び/又は取り外し可能記憶装置への書き込みを行う。該取り外し可能記憶装置は、該取り外し可能ストレージドライブによる読み出し及び該取り外し可能ストレージドライブへの書き込みが行われるフロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光学ディスク、等、である。さらに、該取り外し可能記憶装置は、コンピュータソフトウエア及び/又はデータを保存していてコンピュータが使用可能な記憶媒体を含む。
【0154】
該二次メモリは、コンピュータプログラム又はその他の命令をコンピュータシステムにローディングすることを可能にするその他の同様の手段を含むことができる。該手段は、例えば、取り外し可能な記憶装置及びインタフェースを含むことができる。該取り外し可能な記憶装置及びインタフェースの例としては、プログラムカートリッジ及びカートリッジインタフェース(例えば、ビデオゲーム機において用いられているもの)、取り外し可能なメモリチップ(EPROM又はPROM等)及び関連ソケット、及び、ソフトウエア及びデータを取り外し可能記憶装置からコンピュータシステムに移動させることを可能にするその他の取り外し可能記憶装置及びインタフェース、等を挙げることができる。
【0155】
コンピュータシステムは、さらに、通信インタフェースを含むこともできる。該通信インタフェースは、コンピュータシステム及び外部機器の間におけるソフトウエア及びデータの移動を可能にする。該通信インタフェースを通じて移動されるソフトウエア及びデータは信号の形態をしており、該信号は、該通信インタフェースによって受信可能な電子信号、電磁気信号、光学信号又はその他の信号にすることができる。図 2において示したように、プロセッサ214は、情報保存のための通信をメモリ215と行っている。プロセッサ214は、図 2と関連させて説明した移動無線端末206のその他の構成要素とともに、本発明の方法を実行する。
【0156】
本出願明細書において、「コンピュータプログラム媒体」及び「コンピュータが使用可能な媒体」という表現は、一般的には、取り外し可能な記憶装置、移動無線端末206内の取り外し可能なメモリチップ(例えば、ERPOM又はPROM等)、及び信号、等の媒体を示すために用いている。さらに、コンピュータプログラム製品は、ソフトウエアをコンピュータシステムに提供するための手段である。
【0157】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックとも呼ばれている)は、主メモリ及び/又は二次メモリ内に格納されている。コンピュータプログラムは、通信インタフェースを通じて受け取ることも可能である。該コンピュータプログラムは、実行されると、本出願明細書において説明した本発明のいくつかの特長をコンピュータシステムが実行することを可能にする。例えば、図 7乃至10、14乃至18、及び20乃至22において示した流れ図の特長は、該コンピュータシステムに実装することができる。特に、該コンピュータプログラムは、実行されると、プロセッサ214が本発明の特長を実行すること及び/又は実行させることを可能にする。従って、該コンピュータプログラムは、移動無線端206のコンピュータシステムのコントローラを表しており、そしてこのため移動無線端末206のコントローラを表している。
【0158】
ソフトウエアを用いて実施形態を実行する場合は、該ソフトウエアは、コンピュータプログラム製品に保存し、取り外し可能ストレージドライブ、メモリチップ又は通信インタフェースを用いてコンピュータシステム内にローディングすることができる。制御ロジック(ソフトウエア)は、プロセッサ214によって実行されると、本出願明細書において説明した本発明のいくつかの機能をプロセッサ214に実行させる。
【0159】
本発明の特長は、同じく又はその代替として、主に、本出願明細書において説明した機能を果たすようにプログラミングされたソフトウエア制御プロセッサ又はコントローラを用いたハードウエア、様々なプログラミング可能な電子装置又はコンピュータ、マイクロプロセッサ、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、専用機能回路モジュール、及び、ハードウエア構成品(例えば、特定用途向け集積回路(ASICC)又はプログラマブルゲートアレイ(PGA)等)に実装することができる。尚、本出願明細書において説明した機能を実行するためにハードウエアステートマシンを実装することは、当業者にとって明らかなことである。
【0160】
好ましい実施形態に関する上記の説明は、当業者が本発明を製造又は使用できるようにすることを目的とするものである。さらに、本発明は本発明の実施形態を参照して特別に例示及び説明されているが、当業者は、本発明の精神及び適用範囲を逸脱することなしに形態及び詳細の様々な修正及び変更を行うことが可能であるということを理解することになる。
【0161】
XII.結論
本発明は、明記した機能及びその関係の実行を例示した機能ブロック図を用いて説明した。これらの機能ブロックの境界は、本出願明細書における説明の都合上任意に定めたものである。このため、明記した機能及びその関係が適切に実行されるかぎりにおいて代替の境界を定めることが可能である。従って、いずれの該代替境界も、請求する本発明の適用範囲及び精神の中に含まれるものである。当業者であれば、これらの機能ブロックは、個別の構成要素、特定用途向け集積回路、該当するソフトウエアを実行するプロセッサ、等、によって、又はこれらの品目の数多くの組合せによって実行することができることを認識することになる。従って、本発明の適用範囲は、本出願明細書において示されているいずれの実施形態によっても限定されるべきではなく、請求項及びその同等のみに従って定めるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの総送信電力限度内で動作するように制約されたデータ端末において送信電力を制御する方法であって、前記データ端末は、1つの総送信出力を生成するために各々の送信出力が結合されるN個の無線モデムを含み、
(a) 前記N個のモデムの各々において個々の送信電力限度値を設定することと、
(b) 前記N個のモデムのうちの複数のモデムの各々が各々のデータを送信するスケジュールを設定することと、
(c) 前記N個のモデムの各々から報告された各々の送信電力推定値を受け取ることと、
(d) 各個々の送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力を追跡するようにするために、前記総送信電力限度値及び前記N個のモデムから報告された各々の送信電力推定値に基づいて前記N個のモデムのうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力を調整すること、とを具備する方法。
【請求項2】
ステップ(d)は、N個の個々の送信電力限度値を結合して1個の結合送信電力限度値を生成したときに該結合送信電力限度値が前記総送信電力限度値よりも小さいか又は前記総送信電力限度値に等しくなるように、及び、各個々の送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力よりも大きくなるように、前記個々の送信電力限度値を調整することを具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(f) 前記個々の送信電力限度値が時間の経過に伴って発生する前記対応するモデム送信電力の変化を追跡するようにするためにステップ(b)、(c)及び(d)を定期的に繰り返すことをさらに具備する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)の前に、前記N個のモデムの各々及び遠隔局の間で個々の無線通信リンクを確立することをさらに具備し、各通信リンクは順方向リンク及び逆方向リンクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各無線通信リンクは符号分割多元接続(CDMA)通信リンクである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(d)は、
(d)(i) 前記N個のモデムに関する新たな個々の送信電力限度値を導き出すことと、
(d)(ii) 前記N個のモデムのうちの前記少なくとも一部のモデムを、前記新たな個々の送信電力限度値のうちの対応する送信電力限度値によって更新すること、とを具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(d)は、
(d)(i) 前記N個の全モデムに関する総送信電力を決定することと、
(d)(ii) 前記総送信電力及び前記総送信電力限度値の差に基づいて総送信電力余裕を決定することと、
(d)(iii) 対応するモデム送信電力よりも大きい個々の送信電力限度値を前記N個のモデムの各々に関して生成するために前記総送信電力余裕を前記N個のモデムの間で分割すること、とを具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(d)は、対応する予め決められたモデム利得補正係数を用いて、補正された送信電力推定値を各送信電力推定値から生成することをさらに具備し、ステップ(d)(i)は、前記補正された送信電力推定値を用いて総送信電力を決定することを具備し、ステップ(d)(iii)は、前記補正された送信電力推定値を用いて前記対応するモデム送信電力を表すことを具備する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)の前に、前記N個のモデムのうちのオーバーリミットモデムを決定することをさらに具備し、ステップ(d)は、前記オーバーリミットモデムの送信電力限度値を大きくすることを具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)は、前記N個のモデムのうちのアクティブモデムが各々のデータを送信するスケジュールを設定することを具備し、ステップ(d)は、前記N個の全モデムの総送信電力が総送信電力限度値よりも予め決められた量だけ小さいときに前記オーバーリミットモデム及び前記N個のモデムのうちの非アクティブモデムの両方における送信電力限度値を大きくすることを具備する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(e) 前記非アクティブモデムがアクティブになるように前記非アクティブモデムをアクティブにすることと、
(f) ステップ(b)、(c)及び(c)を繰り返すこと、とをさらに具備する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)は、前記N個のモデムのうちのアクティブモデムが各々のデータを送信するスケジュールを設定し、前記方法は、ステップ(d)において前記オーバーリミットモデムの送信電力限度値を大きくする前に、
前記N個の全モデムに関する総送信電力を決定することであって、前記総送信電力及び前記総送信電力限度値の差は前記データ端末の総送信電力余裕を表していることと、
前記総送信電力余裕が不十分であるため前記オーバーリミットモデムの送信電力限度値、及び対応する送信電力を大きくすることができないときに前記総送信電力余裕を大きくすること、とをさらに具備する、請求項 9に記載の方法。
【請求項13】
前記総送信電力余裕を大きくする前記ステップは、前記総送信電力が前記総送信電力限度値よりも大きいか又は前記総送信電力限度値に等しいときに前記総送信電力余裕を大きくすることを具備する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記総送信電力余裕を大きくする前記ステップは、
前記N個のモデムのうちで、前記N個のモデムの中で最大の送信電力を有するアクティブモデムを非アクティブにすることと、
ステップ(e)(i)において前記非アクティブにしたモデムにおける送信電力限度値を小さくすること、とを具備する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)の結果、前記全送信電力限度値は、結合させたときに、前記総送信電力限度値よりも小さいか又は前記総送信電力限度値に等しく、各個々の送信電力限度値は、対応する個々のモデム送信電力よりも大きい、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つの総送信電力限度内で動作するように制約されたデータ端末において、前記データ端末は、1つの総送信出力を生成するために各々の送信出力が結合されるN個の無線モデムを含み、前記モデムは、各々の送信電力を制限するための個々の送信電力限度値を有しており、前記モデムは各々の送信電力推定値を報告し、前記個々の送信電力限度値を導き出す方法であって、
(a) 前記N個の全モデムに関する1つの総送信電力を決定することと、
(b) 前記総送信電力及び前記総送信電力限度値の差に基づいて1つの総送信電力余裕を導き出すことと、
(c) 前記N個の各モデムに関する対応する送信電力推定値よりも大きい個々の送信電力限度値を前記N個のモデムの各々に関して生成するために前記総送信電力余裕を前記N個のモデムの間で分割すること、とを具備する方法。
【請求項17】
ステップ(c)は、前記総送信電力を前記N個のモデムの間で均等に分割することを具備する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(a)の前に、
対応する予め決められたモデム利得補正係数を用いて、補正された送信電力推定値を各送信電力推定値から生成することと、
前記補正された送信電力推定値を用いてステップ(a)及び(c)を実行すること、とをさらに具備する、請求項 16に記載の方法。
【請求項19】
1つの総送信電力限度内で動作するように制約された無線端末を制御する装置であって、前記無線端末は、1つの総送信出力を生成するために各々の送信出力が結合されるN個の無線モデムを含む装置であって、
前記N個のモデムの各々において個々の送信電力限度値を設定するための手段と、
前記N個のモデムのうちの複数のモデムの各々が各々のデータを送信するスケジュールを設定するための手段と、
前記N個のモデムの各々から報告された各々の送信電力推定値を受け取るための手段と、
各個々の送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力を追跡するようにするために、前記総送信電力限度値及び前記N個のモデムから報告された各々の送信電力推定値に基づいて前記N個のモデムのうちの少なくとも一部のモデムにおける個々の送信電力限度値を調整するための手段と、とを具備する装置。
【請求項20】
前記調整するための手段は、N個の個々の送信電力限度値を結合して1個の結合送信電力限度値を生成したときに該結合送信電力限度値が前記総送信電力限度値よりも小さいか又は前記総送信電力限度値に等しくなるように、及び、各個々の送信電力限度値が対応する個々のモデム送信電力よりも大きくなるように、前記個々の送信電力限度値を調整するための手段を具備する、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記スケジュールを設定するための手段、前記受け取るための手段、及び前記調整するための手段は、前記個々の送信電力限度値が時間の経過に伴って発生する対応するモデム送信電力の変化を追跡するようにするために、各々の機能を周期的に実行する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記N個のモデムの各々及び遠隔局の間で個々の無線通信リンクを確立するための手段をさらに具備し、各通信リンクは順方向リンク及び逆方向リンクを含む、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
各無線通信リンクは符号分割多元接続(CDMA)通信リンクである、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記調整するための手段は、
前記N個のモデムに関する新たな個々の送信電力限度値を導き出すための手段と、
前記N個のモデムのうちの前記少なくとも一部のモデムを前記新たな個々の送信電力限度値のうちの対応する送信電力限度値によって更新するための手段と、とを具備する、請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記調整するための手段は、
前記N個の全モデムに関する総送信電力を決定するための手段と、
前記総送信電力及び前記総送信電力限度値の差に基づいて総送信電力余裕を決定するための手段と、
対応するモデム送信電力よりも大きい個々の送信電力限度値を前記N個のモデムの各々に関して生成するために前記総送信電力余裕を前記N個のモデムの間で分割するための手段と、とを具備する、請求項19に記載の装置。
【請求項26】
前記調整するための手段は、対応する予め決められたモデム利得補正係数を用いて、補正された送信電力推定値を各送信電力推定値から生成する手段をさらに具備し、総送信電力を決定するための手段は、前記補正された送信電力推定値を用いて総送信電力を決定するための手段を具備する、請求項 25に記載の装置。
【請求項27】
前記N個のモデムのうちのオーバーリミットモデムを決定するための手段をさらに具備し、前記調整するための手段は前記オーバーリミットモデムの送信電力限度値を大きくするための手段を具備する、請求項19に記載の装置。
【請求項28】
前記スケジュールを設定するための手段は、前記N個のモデムのうちのアクティブモデムが各々のデータを送信するスケジュールを設定するための手段を具備し、前記調整するための手段は、前記N個の全モデムの総送信電力が前記総送信電力限度値よりも予め決められた量だけ小さいときに前記オーバーリミットモデム及び前記N個のモデムのうちの非アクティブモデムの両方における送信電力限度値を大きくするための手段を具備する、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記非アクティブモデムをアクティブにし、それによって前記非アクティブモデムがアクティブになるための手段をさらに具備し、前記スケジュールを設定するための手段、受け取るための手段、及び調整するための手段は時間の経過に伴って各々の機能を繰り返す、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記スケジュールを設定するための手段は、前記N個のモデムのうちのアクティブモデムが各々のデータを送信するスケジュールを設定するための手段を具備し、
前記N個の全モデムに関する総送信電力を決定する手段であって、前記総送信電力及び前記総送信電力限度値の差は前記無線端末の総送信電力余裕を表している手段と、
前記総送信電力余裕が不十分であるため前記オーバーリミットモデムの送信電力限度値、及び対応する送信電力を大きくすることができないときに前記総送信電力余裕を大きくするための手段と、を具備する、請求項27に記載の装置。
【請求項31】
前記総送信電力余裕を大きくするための手段は、前記総送信電力が前記総送信電力限度値よりも大きいか又は前記総送信電力限度値に等しいときに前記総送信電力余裕を大きくするための手段を具備する、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記総送信電力余裕を大きくするための手段は、
前記N個のモデムの中で最大の送信電力を有するアクティブモデムを非アクティブにするための手段と、
前記非アクティブにしたモデムにおける送信電力限度値を小さくするための手段と、を具備する請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記調整するための手段が前送信電力限度値を調整した結果、
前記全送信電力限度値は、結合させたときに、前記総送信電力限度値よりも小さいか又は前記総送信電力限度値に等しく、各個々の送信電力限度値は、対応する個々のモデム送信電力よりも大きい、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
1つの総送信電力限度内で動作するように制約されたデータ端末においてモデム送信電力限度値を導き出すための装置であって、前記データ端末は、1つの総送信出力を生成するために各々の送信出力が結合されるN個の無線モデムを含み、前記モデムは、各々の送信電力を制限するための個々の送信電力限度値を有しており、前記モデムは各々の送信電力推定値を報告し、
前記N個の全モデムに関する1つの総送信電力を決定するための手段と、
前記総送信電力及び前記総送信電力限度値の差に基づいて1つの総送信電力余裕を導き出すための手段と、
前記N個の各モデムに関する対応する送信電力推定値よりも大きい個々の送信電力限度値を前記N個のモデムの各々に関して生成するために前記総送信電力余裕を前記N個のモデムの間で分割するための手段と、とを具備する装置。
【請求項35】
前記分割するための手段は、前記総送信電力を前記N個のモデムの間で均等に分割することを具備する、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
対応する予め決められたモデム利得補正係数を用いて、補正された送信電力推定値を各送信電力推定値から生成するための手段をさらに具備し、前記決定するための手段は、前記補正された送信電力推定値を用いて総送信電力を決定する、請求項34に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−97596(P2011−97596A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−250029(P2010−250029)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2004−548604(P2004−548604)の分割
【原出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】