説明

無線装置、無線システムおよび通信方法

【課題】同一周波数帯を利用する互いに異なる規格の無線装置のうち通信レートの速い方の無線装置のスループットの低下を抑制することが可能な無線装置、無線システムおよび通信方法を提供する。
【解決手段】高速通信局と異なる規格の低速通信局の通信レートよりも速い高速通信レートで通信データを、データフレームを用いて無線LAN基地局へ送信する高速通信局は、通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超える場合には、低速通信局の送信禁止期間として、所定のduration期間よりも長いduration拡張期間を示すCTSフレームを送信する処理部と、duration拡張期間を示すCTSフレームが送信された場合には複数のデータフレームを用いて通信データをデータフレームごとに連続的に送信する送信部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置、無線システムおよび通信方法に関し、特には、IEEE802.11bの無線装置が存在する無線システムに共存するIEEE802.11gの無線装置、無線システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.4GHz帯を使用する無線システムの規格として、IEEE802.11bと、IEEE802.11gとがある。
【0003】
図4は、IEEE802.11gに準拠した端末とIEEE802.11bに準拠した端末とのそれぞれと通信を行う基地局を有する無線システムに用いられる通信手法の一例を示す図である。IEEE802.11gの端末は、基地局を介して行われる通信用の通信データをデータフレームごとにIEEE802.11bの端末よりも高速な通信レートで送信する。
【0004】
IEEE802.11gの端末は、基地局と通信を行う場合、IEEE802.11bの端末が受信可能な伝送レートで、duration期間を示すCTS(Clear To Send)フレーム811を周辺の基地局とIEEE802.11bの端末とに送信し、その後データフレーム812を基地局へ送信する。なお、CTSフレーム811にはduration期間として、CTSフレーム811が受信されてからデータフレーム812のAck831が基地局から返されるまでの期間が指定されている。
【0005】
IEEE802.11bの端末は、CTSフレーム811を受信するとCTSフレーム811に示されたduration期間だけ通信データの送信を抑制する。そしてIEEE802.11bの端末は、duration期間の経過後にデータフレーム822を用いて通信データを基地局宛に送信する。なお、IEEE802.11bの端末が通信データの送信を抑制した期間が、送信禁止期間(NAV:Network Allocation Vector)821として示されている。
【0006】
よって、IEEE802.11bの端末とIEEE802.11gの端末とは、それぞれの端末から送信される通信データの衝突を回避することが可能となる。なお、IEEE802.11bの端末とIEEE802.11gの端末とが混在する無線システムにおいて、基地局の負荷が高い状況では無線システムのスループットが低下してしまう。
【0007】
特許文献1には、無線システムのスループットを向上させることが可能な基地局が記載されている。
【0008】
特許文献1に記載の基地局は、基地局自身の負荷を抑制するために、IEEE802.11gの端末と通信を行う場合、基地局自身宛のCTSフレームを送信し、その後にIEEE802.11gの端末へデータフレームを送信する。IEEE802.11bの端末は、基地局から送信されたCTSフレームを受信すると、データフレームの送信を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−273055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の基地局では、基地局自身のスループットの低下を抑制することは可能であるが、IEEE802.11bの端末とIEEE802.11gの端末とのそれぞれから送信されるデータフレームの送信順番の制御は行われていない。
【0011】
よって、データフレームごとに異なる規格の各端末の無線装置から交互に基地局へデータフレームが送信される可能性がある。このような状況では、通信レートの速い方のIEEE802.11gの無線装置のスループットが低下してしまうという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、同一周波数帯を利用する互いに異なる規格の無線装置のうち通信レートの速い方の無線装置のスループットの低下を抑制することが可能な無線装置、無線システムおよび通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無線装置は、特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて基地局へ送信することが可能な所定規格の無線装置であって、前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として前記第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信手段と、前記第1送信手段が前記第1期間を示す期間指定フレームを送信した場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第1送信手段が前記第2期間を示す期間指定フレームを送信した場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信手段と、を含む。
【0014】
本発明の無線システムは、 特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて送信することが可能な所定規格の所定無線装置と前記特定無線装置とのそれぞれと、通信を行う基地局を有する無線システムであって、前記所定無線装置は、前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信手段と、前記第1送信手段が前記第1期間を示す期間指定フレームを送信した場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第1送信手段が前記第2期間を示す期間指定フレームを送信した場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信手段と、を含み、前記特定無線装置は、前記所定無線装置から前記期間指定フレームを受信すると、該期間指定フレームに示された、送信禁止期間または送信禁止拡張期間だけ前記通信用のデータの送信を抑制する。
【0015】
本発明の通信方法は、特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて基地局へ送信することが可能な所定規格の無線装置の通信方法であって、前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として前記第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信ステップと、前記第1期間を示す期間指定フレームが送信された場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第2期間を示す期間指定フレームが送信された場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信ステップと、を含む。
【0016】
本発明の通信方法は、特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて送信することが可能な所定規格の所定無線装置と前記特定無線装置とのそれぞれと、通信を行う基地局を有する無線システムの通信方法であって、前記所定無線装置が、前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として前記第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信ステップと、前記特定無線装置が、前記所定無線装置から前記期間指定フレームを受信すると、該期間指定フレームに示された送信禁止期間だけ前記通信用のデータの送信を抑制する抑制ステップと、前記所定無線装置が、前記第1期間を示す期間指定フレームを送信した場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第2期間を示す期間指定フレームを送信した場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同一周波数帯を利用する互いに異なる規格の無線装置のうち通信レートの速い方の無線装置のスループットの低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における無線装置の構成を示すブロック図である。
【図2】無線装置を有する無線システムの通信例を示す図である。
【図3】無線装置の通信方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【図4】無線システムに用いられる一般的な通信手法の一例を示す図である。I
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本実施形態における無線装置の構成例を示すブロック図である。
【0021】
無線装置10は、所定規格としてIEEE802.11gに準拠する所定無線装置である。無線装置10は、不図示の無線LAN(Local Area Network)基地局と通信を行う。無線LAN基地局は、特定規格としてIEEE802.11bに準拠する特定無線装置とも通信を行う。なお、無線LAN基地局は単に基地局と呼ぶことができる。本実施形態では、無線装置10を高速通信局と称し、特定無線装置を低速通信局と称する。
【0022】
高速通信局10は、低速通信局の通信レートよりも速い通信レートで、通信用の通信データを、データフレームを用いて無線LAN基地局へ送信する。高速通信局10の通信レートは、高速通信レートと呼ぶこともある。
【0023】
高速通信局10は、無線LAN部11を備える。無線LAN部11は、無線LAN基地局を介して行われる通信用の通信データをデータフレームごとに送信する。無線LAN部11は、処理部12と送信部13とを備える。
【0024】
処理部12は、一般的に第1送信手段と呼ぶことができる。
【0025】
処理部12は、高速通信局10内の上位レイヤ部(不図示)から送信要求を受け付けると、通信データをデータフレームごとに受け付ける。処理部12は、その受け付けたデータフレームが2個以上(複数)あるか否かを判断する。つまり、処理部12は、通信データの大きさがデータ量閾値を超えるか否かを判断する。
【0026】
処理部12は、1個のデータフレームを受け付けた場合には、低速通信局からの送信を禁止する送信禁止期間としてIEEE802.11gに開示されている所定のduration期間を示すCTSフレームを周囲の無線LAN基地局と低速通信局とに送信する。なお、所定のduration期間は、1個のデータフレームの送信中に低速通信局からの送信を禁止する第1期間とも呼ばれる。また、CTSフレームは、指定期間フレームと呼ぶこともできる。
【0027】
一方、処理部12は、2個以上のデータフレームを受け付けた場合には、送信禁止期間として、所定のduration期間よりも長いduration延長期間を示すCTSフレームを送信する。なお、duration延長期間は、第2期間とも呼ばれる。
【0028】
本実施形態では、処理部12内には、高速通信局10の通信レートVと低速通信局の通信レートUとが予め保持されている。高速通信局10の通信レートVは、所定通信レートとも呼ばれる。
【0029】
処理部12は、メモリ(送信キュー)121とカウンタ122とを備える。カウンタ122は、上位レイヤ部から受け付けたデータフレームの数(以下、「送信フレーム数」と称する。)をカウントするために用いられる。
【0030】
処理部12は、複数のデータフレームをデータフレームごとに受け付けると、データフレームを受け付けるたびに、そのデータフレームをメモリ121にキューイング(格納)するとともに、カウンタ122のカウント値を「1」だけカウントアップする。
【0031】
また、処理部12は、データフレームの送信が可能であるか否かを判断する。データフレームの送信が可能でない場合には処理部12は、データフレームを受け付けるたびに、データフレームをメモリ121にキューイングするとともに、カウンタ122のカウント値を「1」だけカウントアップする。
【0032】
一方、処理部12は、データフレームの送信が可能である場合には高速通信局の通信レートVから低速通信局の通信レートUを除算してレート比を求め、そのレート比の少数点以下を切り捨てた整数値を、最大フレーム数として求める。そして処理部12は、式1に示すように、送信フレーム数であるカウント値nが、最大フレーム数を超えているか否かを判断する。
【0033】
【数1】

【0034】
処理部12は、送信フレーム数nが最大フレーム数を超えると、式2を用いてduration期間を計算して、送信禁止期間として所定のduration期間よりも長いduration拡張期間を算出する。
【0035】
【数2】

【0036】
ここで、第1項は、n個のデータフレームの送信時間の総和を示し、データフレームのフレーム長Lnと通信データの通信レートVとにより規定される。第2項は、フレームの送信間隔SIFSと無線LAN基地局からのデータフレームに対するAckの送信時間との総和である。
【0037】
処理部12は、最大フレーム数nのデータフレームのduration拡張期間を算出すると、そのduration拡張期間をCTSフレーム内のdurationフィールドに格納し、duration拡張期間を示すCTSフレームを周囲の無線LAN基地局と低速通信局とに送信する。
【0038】
送信部13は、一般的に第2送信手段と呼ぶことができる。
【0039】
送信部13は、処理部12がduration拡張期間を示すCTSフレームを送信した場合には、最大フレーム数n(所定数)のデータフレームを用いて通信データをデータフレームごとに連続的に送信する。また、送信部13は、処理部12が所定のduration期間を示すCTSフレームを送信した場合には1個のデータフレームを用いて通信データを送信する。
【0040】
本実施形態では、処理部12がCTSフレームを送信した場合には送信部13は、CTSフレームを送信した後、データフレームがメモリ121に格納された順番にメモリ121内のデータフレームをデータフレームごとに通信レートVで送信する。
【0041】
また、処理部12は、送信フレーム数nが最大フレーム数を超えない場合には送信フレーム数nのデータフレームのduration期間を示すCTSフレームを送信し、その後に送信部13が、メモリ121内のn個のデータフレームをデータフレームごとに送信する。
【0042】
図2は、高速通信局10を有する無線システムの動作を説明するための図である。
【0043】
無線システムは、高速通信局10と低速通信局20と無線LAN基地局30とを備える。無線LAN基地局30は、高速通信局10と低速通信局20とのそれぞれと通信を行う。
【0044】
高速通信局10は、送信フレーム数「5」のデータフレームのduration拡張期間を示すCTSフレーム101を周辺の無線LAN基地局30と低速通信局20とに送信する。低速通信局20は、CTSフレーム101を受信するとCTSフレーム101内のdurationフィールドに示されたduration拡張期間だけデータフレーム202の送信を抑制する。
【0045】
高速通信局10は、CTSフレーム101を送信した後、5個のデータフレーム102〜106を用いて通信データをデータフレームごとに連続的に送信する。
【0046】
例えば、高速通信局10は、無線LAN基地局30宛のデータフレーム102を送信する。無線LAN基地局30は、データフレーム102を受信すると、データフレーム102に対するAck301を高速通信局10宛てに送信する。高速通信局10は、Ack301を受信するとデータフレーム103を無線LAN基地局30宛に送信し、無線LAN基地局30からAckを受け付けると次のデータフレーム104を送信する。
【0047】
低速通信局20は、CTSフレーム101を受信してから、無線LAN基地局30から送信された5番目のAck302を受信するまでの送信禁止期間(NAV)201の経過後に、データフレーム202を用いて通信データを無線LAN基地局30宛に送信する。
【0048】
よって、高速通信局10は、duration拡張期間を示すCTSフレーム101を送信することにより、低速通信局20から送信されるデータフレーム202と衝突することなく、5個のデータフレーム102〜106を1個ずつ連続して送信することができる。
【0049】
次に高速通信局10の動作について説明する。
【0050】
図3は、高速通信局10の通信方法を示すフローチャートである。
【0051】
まず、処理部12は、データフレームの送信フレーム数をカウントするためにカウンタ122のカウント値nを初期値「0」に設定する(ステップS901)。
【0052】
処理部12は、上位レイヤ部からデータフレームを受け付け、そのデータフレームをメモリ121にキューイングし(ステップS902)、送信フレーム数であるカウント値nを「1」だけカウントアップする(ステップS903)。
【0053】
処理部12は、データフレームの送信が可能であるか否かを判断し(ステップS904)、データフレームの送信が可能でないと判断した場合には、ステップS901に戻り、上位レイヤ部から新たなデータフレームをキューイングし、送信フレーム数nを「1」だけカウントアップする。なお、処理部12は、前回の通信データの送信が完了していない場合、または、電波の使用状態を検出するキャリアセンスにより自装置が送信停止中の場合に、データフレームの送信が可能でないと判断する。
【0054】
一方、メモリ121内にn個のデータフレームが保持されている状況で、データフレームの送信が可能であると判断した場合に処理部12は、n個のデータフレームをデータフレームごとに連続して送信する最大送信フレーム数を決定する。
【0055】
処理部12は、高度通信局10の通信レートVから従来局20の通信レートUを除算したレート比(U/V)の整数値を最大フレーム数として求め、式1に示すように、送信フレーム数nと最大送信フレーム数とを比較する(ステップS905)。処理部12は、送信フレーム数nが最大送信フレーム数以下である場合には、初期値n0を「0」に設定する(ステップS906)。
【0056】
一方、処理部12は、送信フレーム数nが最大フレーム数よりも大きい場合には、送信フレーム数と最大フレーム数との差を初期値n0とする(ステップS907)。また、処理部12は、送信フレーム数のカウント値nを最大フレーム数に設定する(ステップS908)。
【0057】
処理部12は、式2を用いて送信禁止期間を指定するduration期間を計算する(ステップS909)。処理部12は、データフレームの送信フレーム数nが2個以上である場合には、duration期間として、2個以上のデータフレームのduration拡張期間を示すCTSを生成する。また、処理部12は、データフレームの送信フレーム数nが1個である場合には、IEEE802.11gに開示されている所定のduration期間を示すCTSを生成する。処理部12は、そのduration期間を示すCTSフレームを送信する(ステップS110)。
【0058】
その後、送信部13は、CTSフレームに示されたduration期間内に、メモリ121内のn個のデータフレームを送信する(ステップS911)。処理部12が所定のduration期間を示すCTSフレームを送信した場合には送信部13は、1個のデータフレームを用いて通信データを送信する。また、処理部12がduration拡張期間を示すCTSフレームを送信した場合には送信部13は、複数のデータフレームを用いて通信データをデータフレームごとに連続的に送信する。
【0059】
次に処理部12は、初期値n0の値を、送信フレーム数nに設定する(ステップS912)。処理部12は、送信フレーム数nが「0」でない場合、つまり、メモリ121内に未送信のデータフレームが残っている場合には、そのデータフレームを再度、メモリ121にキューイングする(ステップS913)。
【0060】
一方、処理部12は、送信フレーム数nが「0」である場合、つまり、メモリ121内に未送信のデータフレームが無い場合には、データフレームの送信要求があるかどうかを上位レイヤ部に確認する(ステップS914)。そして、処理部12は、データフレームの送信要求があった場合にはステップS902に戻り、データフレームのキューイングを開始し、送信要求が無い場合には高度通信局10の通信方法を終了する。
【0061】
本実施形態によれば、特定規格のIEEE802.11bの低速通信局20の通信レートよりも速い高速通信レートで、データフレームを用いて通信データを無線LAN基地局30へ送信する所定規格のIEEE802.11gの高速通信局10では処理部12は、通信データの大きさとして用いられるデータフレームの送信フレーム数が、2個以上あるか判断する。処理部12は、データフレームの送信フレーム数が2個以上ある場合には、低速通信局20からの送信を禁止する送信禁止期間として、IEEE802.11gで開示されている所定のduration期間よりも長いduration拡張期間を示すCTSフレームを送信する。その後に送信部13は、duration拡張期間内に2個以上のデータフレームを用いて通信データをデータフレームごとに送信する。
【0062】
このため、高速通信局10は、複数のデータフレームを用いて基地局と通信を行う場合、通信データをデータフレームごとに連続的に送信することが可能となる。よって、データフレームごとに高速通信局10と低速通信局20とが交互に通信データを無線LAN基地局へ送信するような状況を回避することができ、高速通信局10のスループットの低下を抑制することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、処理部12は、自装置の通信レートVから低速通信局20の通信レートUを除算して通信レートのレート比を求める。そして送信部13は、複数のデータフレームとしてレート比の整数値の数のデータフレームを用いて通信データを通信レートVで送信する。
【0064】
このため、高速通信局10は、連続的に送信可能なデータフレームの数を通信レートのレート比の整数値を用いることにより、低速通信局20のスループットが著しく低下することを抑制することができる。よって、高速通信局10と低速通信局20とには、それぞれの通信性能に応じたデータフレームの送信機会が与えられることになり、高速通信局10はスループットの低下を抑制しつつ低速通信局20との共存が可能となる。
【0065】
以上説明した実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
10 無線装置(高速通信局)
11 無線LAN部
12 処理部
121 メモリ
122 カウンタ
13 送信部
20 低速通信局
30 無線LAN基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて基地局へ送信することが可能な所定規格の無線装置であって、
前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として前記第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信手段と、
前記第1送信手段が前記第1期間を示す期間指定フレームを送信した場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第1送信手段が前記第2期間を示す期間指定フレームを送信した場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信手段と、を含む無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線装置において、
前記第1送信手段は、前記高速通信レートから前記特定無線装置の通信レートを除算して通信レートの比を求め、
前記第2送信手段は、前記所定数のデータフレームとして前記通信レートの比の整数値の数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する、無線装置。
【請求項3】
特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて送信することが可能な所定規格の所定無線装置と前記特定無線装置とのそれぞれと、通信を行う基地局を有する無線システムであって、
前記所定無線装置は、
前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信手段と、
前記第1送信手段が前記第1期間を示す期間指定フレームを送信した場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第1送信手段が前記第2期間を示す期間指定フレームを送信した場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信手段と、を含み、
前記特定無線装置は、前記所定無線装置から前記期間指定フレームを受信すると、該期間指定フレームに示された、送信禁止期間または送信禁止拡張期間だけ前記通信用のデータの送信を抑制する、無線システム。
【請求項4】
請求項3に記載の無線システムにおいて、
前記第1送信手段は、前記高速通信レートから前記特定無線装置の通信レートを除算して通信レートの比を求め、
前記第2送信手段は、前記所定数のデータフレームとして前記通信レートの比の整数値の数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する、無線システム。
【請求項5】
特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて基地局へ送信することが可能な所定規格の無線装置の通信方法であって、
前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として前記第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信ステップと、
前記第1期間を示す期間指定フレームが送信された場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第2期間を示す期間指定フレームが送信された場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信ステップと、を含む通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の通信方法において、
前記第1送信ステップでは、前記高速通信レートから前記特定無線装置の通信レートを除算して通信レートの比を求め、
前記第2送信ステップでは、前記所定数のデータフレームとして前記通信レートの比の整数値の数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する、通信方法。
【請求項7】
特定規格の特定無線装置の通信レートよりも速い高速通信レートで、通信用のデータをデータフレームを用いて送信することが可能な所定規格の所定無線装置と前記特定無線装置とのそれぞれと、通信を行う基地局を有する無線システムの通信方法であって、
前記所定無線装置が、前記通信用のデータの大きさがデータ量閾値を超えない場合には、前記特定無線装置からの送信を禁止する送信禁止期間として第1期間を示す期間指定フレームを送信し、前記通信用のデータの大きさが前記データ量閾値を超える場合には、前記送信禁止期間として前記第1期間よりも長い第2期間を示す期間指定フレームを送信する第1送信ステップと、
前記特定無線装置が、前記所定無線装置から前記期間指定フレームを受信すると、該期間指定フレームに示された送信禁止期間だけ前記通信用のデータの送信を抑制する抑制ステップと、
前記所定無線装置が、前記第1期間を示す期間指定フレームを送信した場合には前記データフレームを用いて前記通信用のデータを送信し、前記第2期間を示す期間指定フレームを送信した場合には所定数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する第2送信ステップと、を含む通信方法。
【請求項8】
請求項7に記載の通信方法において、
前記第1送信ステップでは、前記所定無線装置が、前記高速通信レートから前記特定無線装置の通信レートを除算して通信レートの比を求め、
前記第2送信ステップでは、前記所定無線装置が、前記所定数のデータフレームとして前記通信レートの比の整数値の数のデータフレームを用いて前記通信用のデータを送信する、通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−186629(P2012−186629A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47947(P2011−47947)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】