無線装置及び浸水検知システム
【課題】マンホール内等に設置して浸水の有無を検出する際に利用するものとして、従来よりもより適した無線装置を提供する。
【解決手段】本発明の無線装置(無線タグ1)は、各部に電力を供給する電池11と、浸水を検知する浸水センサ12と、マンホール外から与えられた振動を検知する振動センサ13と、浸水センサ12の検知出力に応じて、振動センサ13によって検知された振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する振動パターン判定回路14と、判定回路14が所定のパターンに一致すると判定した場合に電池11から電力を供給されて所定の信号を送信する送信回路15とを備えている。
【解決手段】本発明の無線装置(無線タグ1)は、各部に電力を供給する電池11と、浸水を検知する浸水センサ12と、マンホール外から与えられた振動を検知する振動センサ13と、浸水センサ12の検知出力に応じて、振動センサ13によって検知された振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する振動パターン判定回路14と、判定回路14が所定のパターンに一致すると判定した場合に電池11から電力を供給されて所定の信号を送信する送信回路15とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内の浸水確認等に用いて好適な無線装置及び浸水検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、特許文献1に記載されている技術について図14を参照して説明する。この特許文献1には、外部から振動を与えられ、この振動を受けたことをきっかけとして無線信号を送信する無線タグ(またはRFID(Radio Frequency Identification)タグ、IC(Integrated Circuit)タグとも呼ばれる)を用いた技術が記載されている。特許文献1の無線装置を用いたシステムでは、図14に示したように、振動によって起動する振動起動無線装置7(無線タグに相当する)をコンクリート構造物8の内部に数多く設置する。これらの無線装置7に振動を与えて、起動した無線装置7が発信する無線信号を構造物検査装置9(受信機に相当する)によって受信する。この受信した無線信号によって構造物8の欠陥を検出する。この構成によれば、コンクリート構造物8の異常の検出が容易に行える。
【0003】
上述した無線装置7は、振動を受けて無線信号を送信する。そのため、無線装置7は、構造物検査装置9が発生する振動のエネルギーを、各回路を動作させるための電力へと変換する機能を備えている。従ってこの無線装置7は、一般的なアクティブ型の無線タグが内蔵する電池とする電源に代えて、外部から与えられる振動を効果的に受け取り、電力へ変換する機能へと単純に置き換えた構成を用いている。つまり、無線タグを駆動するための電力供給に係る部分のみを改良した構成で実現されている。このため、既存のアクティブ型の無線タグから少し改良するだけで良く、無線タグが送信する無線信号も変わらない。従って、その無線タグの既存のリーダ(受信機)の受信機能がそのまま使用できるという利点もある。
【特許文献1】特開2006−162391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池を搭載してID(識別子)ほかの情報を送信するアクティブ型の無線タグでは、送信動作を所定の時間間隔で間欠的に行うようにしたものがある。間欠的に送信動作するアクティブ型無線タグを用いる場合、無線タグから送信された無線信号の受信範囲に受信機がないことの多い事例においては、無線タグからの送信タイミングによっては送信された無線信号を受信機で読取れないことが多くなってしまうことになる。またアクティブ型無線タグが自らの動作として間欠的な繰り返し送信をするのみでは、受信機が近くにないときも意味のない送信をし続けていて無駄が多いので、この無線タグの電池の消耗を間欠的な動作以上には大幅に抑制することはできず、この無線タグ自体の寿命もそれ以上に延ばすことはできない。
【0005】
一方で、図14に示されている無線タグに相当する振動起動無線装置7を用いる場合には、この無線装置7に対して振動を与える構造物検査装置9の振動発生部を対象物(その無線装置7が取り付けられた構造物8)に接触させ、また無線装置7も構造物8の内部に埋め込むなど強固に取り付ける必要がある。このようにすることで、構造物検査装置9から、無線装置7に対して、それを動作させられるだけのある程度の(超音波による)振動エネルギーを与えることができる。ただし、無線装置7の内部構造は一般的なアクティブ型の無線タグで電力供給の部分を変えたものであり、構造物8の状態は、複数の無線装置7からの複数の送信信号の有無を用いて確認されるようになっている。つまりこのような内部構造をしている無線タグではある程度の数を対象とする構造物に対して取り付ける必要がある。そして、この構造物が新設された時点でそれら多数の無線タグからの無線信号を測定したデータを予め取得しておく。その後、構造物の経過劣化を判断するために、予め測定したデータと比較するような対応が必要である。
【0006】
さて、上記の背景技術を踏まえ、通信線などを埋設するための管路に設けられたマンホール内等の浸水の有無を、無線タグを用いて検出することを考えた場合、浸水の有無を検出する検出手段と各部の電源となる電池とを搭載したアクティブ型無線タグを利用することが考えられる。この場合に一つの課題となるものは、マンホール内等に設置する無線タグの電池寿命である。これに対しては、上述したように、無線信号の送信動作を間欠的に行うことである程度の電池の長寿命化(電池交換なしでの稼働可能時間の延長)は可能である。しかしながら、さらなる電池の長寿命化を図ることができれば、システムの維持コストをより削減することが可能となる。
【0007】
一方、特許文献1に記載されているような振動エネルギーを電源に用いる無線タグは、電池寿命の問題はないものの、取り付けに関する制約や、必要となる無線タグが多数であることなどから、マンホール内等の浸水の有無を確認するものとしては適しているとは言えない。
【0008】
本発明は、上記のような事情を考慮してなされたものであり、マンホール内等の対象物内に設置して浸水の有無を検出する際に利用するのに従来よりもより適した無線装置及び浸水検知システムを提供することを目的とする。より具体的には、稼働可能時間が長く、マンホール内等の対象物に設置容易で、一つの対象物に設置が必要となる個数がより少ない無線装置及びその無線装置を用いた浸水検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、各手段に電力を供給する電源と、浸水を検知する浸水検知手段と、マンホール外から与えられた弾性振動を検知する弾性振動検知手段と、前記浸水検知手段の検知出力に応じて、前記弾性振動検知手段によって検知された弾性振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が所定のパターンに一致すると判定した場合に、前記電源から電力を供給され、所定の信号を送信する送信手段とを備えることを特徴とする無線装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、前記電源が電池であり、前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、前記電源が、マンホール外から与えられた弾性振動を電力に変換する手段と、その変換された電力を蓄電する手段とからなり、前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、他の無線装置から送信された所定の信号を受信する受信手段をさらに備え、前記送信手段が、前記受信手段によって所定の信号が受信された時刻から所定時間経過後に、前記所定の信号を送信するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記弾性振動及び前記無線信号が音波であり、前記弾性振動検知手段が音響マイクであり、前記送信手段が音響スピーカであることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、マンホール内に設置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線装置と、前記無線装置に対してマンホール外から所定パターンの弾性振動を与えるとともに、該無線装置から送信された送信信号を受信する制御装置とを備えることを特徴とする浸水検知システムである。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記無線装置が、複数であり、1つのマンホールに対して、高さの異なる2箇所以上の複数の位置に設置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記制御装置が、複数種類の所定パターンの弾性振動を与えるものであり、前記無線装置が、複数であり、複数の前記無線装置における各前記判定手段として異なる種類の所定パターンとの一致を判定するものが混在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、判定手段によって、浸水検知手段の検知出力に応じて、弾性振動検知手段によって検知された弾性振動が所定のパターンに一致すると判定された場合に、送信手段に電源から電力が供給され、所定の信号が送信される。すなわち、本発明によれば、マンホール内に設置した無線装置から情報を読み取る際に、外部から所定パターンの弾性振動を与えて無線装置から信号を送信するようにしている。したがって、無線装置からの送信を必要な時にのみ行うようにすることができ、無線装置の送信信号が外部の受信機などでより確実に読み取れて、かつ不要な無線送信などを抑制して無線装置の消費電力を抑え、電池などの電源の寿命を延ばすなど無線装置の稼働可能時間を容易に長くすることができる。
【0018】
また、判定手段が、浸水検知手段の検知出力に応じて所定パターンとの一致を判定するようにしたので、所定パターンと判定条件を複数種類設定して、例えば、浸水時にあるパターンで信号を送信し、通常時に他のパターンで信号を送信するなどすれば、通常時と浸水時などの異なる状況を把握することができる。また、振動を電力に変換し蓄積しておいて無線装置の無線送信の電力に使用したり、隣のマンホールの無線装置の送信を知る受信手段を装備し、より確実な読み取りタイミングで信号を送信させたりすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態の浸水検知システムは、無線タグ1(無線装置)と、無線タグ1に対して所定の振動パターンを有する振動を与えるとともに、無線タグ1から送信された無線信号(電波、音波等)を受信する制御装置2を搭載した測定作業車3とから構成されている。マンホール4は、地下に埋設された管路5内に敷設された通信線、電力線等の点検、保守等のために用いられる地表面下に設けられた地中箱であり、人が出入りできるような蓋付の開口部を有する立ち上がり部41と躯体42とから構成されている。このマンホール4は、地上の道路6等に沿って適宜な間隔を隔てて複数設けられている(ただし図1では1つのマンホール4のみ示している)。
【0020】
マンホール4上の地上(道路6)で、測定作業車3が走行する。この測定作業車3には、走行しながら測定作業を実施したり、または徐行もしくは停止して測定作業を実施したりすることを可能とするため、走行時及び停止時に無線タグ1に対して所定の振動パターンを有する振動を与えることができるような構造が設けられている。この測定作業車3には、例えばタイヤ31を介して振動を地上(道路6)へと伝えるための図2(d)に示すような振動発生部32を設けることができる。
【0021】
図2は、図1の測定作業車3に設ける振動発生部32の構造を説明するための模式図であり、図2(a)〜(c)はその原理を説明するための参考図であり、図2(d)は構造の一例を示す模式図である。なお、図2(a)は、愛知工科大学自動車短期大学の情報「SUSPENSION(basic)」(URL:http://www.aut.ac.jp/auto/suspension_basic.htm)から一部を引用したものであり、スプリングの働きを示すための図であり、図2(b)及び(c)は、特許庁・標準技術集・16年度「自動車・二輪車のブレーキ・サスペンション」、11-4-4-2 低周波アクティブ油圧サスペンション(URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/brakesuspension/11-4-4.pdf)から一部を修正して引用したものであり、(b)が低周波アクティブ油圧サスペンションの構成を示す図、(c)が(b)の低周波アクティブ油圧サスペンションで用いられるアクチュエータを示す図である。
【0022】
図1の測定作業車3に設ける振動発生部32としては、図2(a)〜(c)に示すような自動車のサスペンションを活用したものを用いることができる。一般に、自動車は走行中に路面からタイヤを介した車体の振動を吸収して抑制するためサスペンションがある(図2(a)参照)。通常、このサスペンションにかかる力をスプリングで受止めたり、エネルギーを吸収したりするだけの方式をパッシブ方式と呼ぶ。このパッシブ方式に対しパワー源を持ちサスペンションに別の力をかけて動きを制御する方式をアクティブ方式と呼ぶ(図2(b)参照)。このアクティブ・サスペンションでは油圧−電子制御などを用いてサスペンションにあたるアクチュエータの制御を行う(図2(c)参照)。このように、サスペンションについて制御型のアクティブ・サスペンション機構を持つ車もある。
【0023】
この機構を走行中に発生する自動車の振動を吸収するのではなく、ここでは逆に制御することによって、タイヤからの路面への振動発生・伝搬する装置として機能させる。すなわち測定作業車3に設ける振動発生部32としてはそのような制御型/アクティブ・サスペンション機構を活用することができるのである。図2(d)は測定作業車3の振動発生部32としての振動発生・伝達構造の構成例を示している。制御装置2からの指示によってこの振動発生部32が動作する。この振動発生部32は、アクティブ・サスペンションの圧力制御ユニット321と、オイルポンプ322と、サスペンションを上下するための複数のアクチュエータ323とを有して構成されている。この圧力制御ユニット321の出力信号とオイルポンプ322で発生される圧力によって、アクティブ・サスペンションのアクチュエータ323が動作してこの測定作業車3のサスペンションを上下させタイヤ31から路面へ振動が伝えられる。
【0024】
次に、図3を参照して、図1に示す無線タグ1と制御装置2の構成例について説明する。図3に示す無線タグ1は、各部に電力を供給する電源となる電池11と、浸水の有無を検知する浸水検知手段としての浸水センサ12と、マンホール4外から与えられた振動を検知する弾性振動検知手段としての振動センサ13と、浸水センサ12の検知出力に応じて、振動センサ13によって検知された振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する判定手段としての振動パターン判定回路14と、振動パターン判定回路14が所定のパターンに一致すると判定した場合に電池11から電力を供給され所定の無線信号を送信する送信手段としての送信回路15と、無線タグ固有のID(識別子)を記憶する識別子記憶手段としてのメモリ16と、送信回路15からメモリ16に記憶されているIDを表す情報を含む信号を送信させるための制御等を行う制御回路17と、送信回路15に接続されたアンテナ18とから構成されている。他方、制御装置2は、上述したように無線タグ1に対してマンホール4外から所定パターンの振動を与えるとともに、無線タグ1から送信された送信信号を受信する機能を有するものであり、複数の操作子を有して作業者によって指示内容を設定するための指示設定操作部21、各部を制御する制御部22、マンホール4内の浸水の有無、無線タグ1のIDの情報等を作業者が確認するための画像を表示する表示部23、無線タグ1の送信回路15によって送信された無線信号を受信するためのアンテナ24及び受信部25から構成されている。この制御部22は、図2(d)を参照して一例を説明した振動発生部32を制御する回路でもあり、また受信部25としては汎用のRFIDリーダなどを用いることができる。
【0025】
なお、弾性振動とは、弦、膜、棒、板、ばねなどの弾性体のひずみに伴う応力が復元力となっておこる振動であり、地震波、音波などが弾性振動の一例である。本実施の形態では、振動発生部32で所定パターンの弾性振動、具体的には予め設定された複数段階に周波数が変化する振動パターンを発生させ、無線タグ1の振動センサ13がこれを検知したときに、浸水センサ12の出力に応じて、送信回路15が起動されるという制御が行われる。なお、以下では弾性振動を単に振動とも表す。
【0026】
すなわち、本実施の形態の無線タグ1は、振動パターンに対応して信号を送信するアクティブ無線タグであって、振動センサ13を搭載して、必要に応じて特定の振動パターンに対応してIDなどを表す所定の信号を送信するように動作する。従って、この無線タグ1へ与える振動を発生させたり無線信号を受けたりする制御装置2も重要になる。
【0027】
なお、制御装置2及び振動発生部32としては、図2(d)を参照して説明したように測定作業車3に搭載する構造を有するものであってもよいし、あるいは測定作業車3に搭載せず、例えば蓋が閉じた状況のままでのマンホール4上、つまり地上(道路6)から直に振動発生部32に設けられた振動体を接地させ、地面やマンホール4の蓋に振動を与え、測定を行う形態で使用できるような構造を有するものとすることもできる。
【0028】
図3の上側に示した制御装置2では、まず指示設定操作部21が振動センサ付きの無線タグ1へどのような振動を与えるのか作業者が操作して入力された指示設定を表示部23と制御部22へ伝える。制御部22は指示設定を受け、この指示設定に基づき予め決められている振動パターンの情報を振動発生部32へ送る。この制御部22における処理は図3の左上側に示すように3段階となる。つまり、最初の段階(ステップST11)は指示設定操作部21から指示設定を受取る。この指示設定には無線タグ1へ与える振動パターンを決めるための情報が含まれている。次の段階(ステップST12)で、この指示設定に従って制御部22内のDB(データベース;情報記憶部)に記憶している全ての振動パターンを発生させるために必要な情報から必要な情報が選択して取得される。最後の段階(ステップST13)では制御部22がここで選択した振動パターンの発生情報を振動発生部32へ伝達する。そして振動発生部32では、その制御部22から送られた振動パターンの情報を受けて、その振動パターンの振動を実際に発生する。この振動発生部32で発生させた振動が振動センサ付き無線タグ1へ伝わる。
【0029】
一方、制御装置2のアンテナ24は、振動センサ付き無線タグ1からの無線信号を受け、受信部25へ伝える。受信部25は、アンテナ24から伝えられた無線信号の受信処理をして、受信処理した結果を表示部23へ送る。表示部23は、受信部25から送られてきた受信結果と、最初に述べていた指示設定操作部21から伝えられている指示設定をそれぞれ表示して、作業者へ伝える。
【0030】
他方で、図3の下側に示す振動センサ付き無線タグ1は、まずは最初に、振動センサ13で、制御装置2の制御によって振動発生部32から送られてくる振動を検知して振動パターン判定回路14へ伝える。振動パターン判定回路14では、その振動センサ13から伝えられた振動の情報と浸水センサ12からの浸水の有無の情報を受け、この振動のパターンが無線タグ1を動作させるものと一致するか否かを判定する。ここで、振動パターン判定回路14では、この振動のパターンと無線タグ1の状況に対応する予め定めた所定のパターンとが一致しないと他の動作を行わないが、振動パターンが所定のパターンと一致するものであれば電池11から制御回路17と送信回路15へ電力を供給させる(図3の右下で、破線の矢印で示した箇所の動作)と共に、制御回路17へ判定結果を伝える。このような振動パターン判定回路14での処理においては、図3の左下に示す3段階がある。
【0031】
第1段階(ステップST21)では、制御装置2の制御によって振動発生部32から無線タグ1へ与えられた振動の情報を振動センサ13から振動パターン判定回路14が受取り、また浸水センサ12からマンホール4内に設置された無線タグ1が浸水によって水を検知したか否かを示す浸水の有無についての検知出力も受取る。第2段階(ステップST22)では、この振動パターン判定回路14が受取った振動の情報を、浸水センサ12からの検知出力に応じて、振動パターン判定回路14内のDB(所定のメモリ)に記憶されているパターンの情報と比較する。
【0032】
この振動パターン判定回路14による比較処理としては、例えば次の2つの例が考えられる。一つ目として、振動パターン判定回路14内のDBに所定の1つの振動パターンを記憶しておき、振動センサ13で検知された振動のパターンがこの記憶されている振動パターンと一致し、かつ浸水センサ12の検知結果が浸水有り(または無し)となった場合に、比較結果が一致したとすることが考えられる。また二つ目として、振動パターン判定回路14内のDBに所定の2つの振動パターンを記憶しておき、振動センサ13で検知された振動のパターンがこの記憶されている1つの振動パターンと一致し、かつ浸水センサ12の検知結果が浸水有りとなった場合に比較結果が一致したとすることに加え、振動センサ13で検知された振動のパターンが他の1つの振動パターンと一致し、かつ浸水センサ12の検知結果が浸水無しとなった場合に比較結果が一致したとする、2種類の比較一致条件を設定することが考えられる。なお、比較条件の設定の仕方はこれらのものに限られず、他の具体例については、図4、図5等を参照して後述する。
【0033】
いずれにしろ、ステップST22では、所定の判定条件に基づいて、振動パターン判定回路14が、浸水センサ12の検知出力に応じて、振動センサ13によって検知された振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する処理が行われる。
【0034】
最後の第3段階(ステップST23)は、振動パターンを比較確認した結果、つまり一致した振動パターンに対して、無線タグ1の状況(具体的には、これも後述する図4に示すマンホール4に無線タグ1が設置した状況)が合致したときに、その旨を制御回路17へ伝達する。制御回路17では、振動パターン判定回路14からの総合的な判定の結果を受けて、送信回路15へ無線信号を送信するよう指示を出す。この指示で制御回路17はメモリ16に格納されたIDを送信する無線信号に用いる。
【0035】
そして送信回路15では、制御回路17からの指示を受け送信する信号を発生させてアンテナ18へ送る。アンテナ18は送信回路15から受けた無線信号を制御装置2へ送信する。なお、電池11は、振動パターン判定回路14(あるいはさらに浸水センサ12及び振動センサ13)へ電力を供給する役目を担うが、先ほど述べたように、この振動パターン判定回路14での判定によって、比較結果が一致すると判定された時に、図3の右下において破線の矢印で示すように制御回路17と送信回路15へも電力を供給するよう動作する。
【0036】
次に、図4及び図5を参照して、マンホール4内に無線タグ1が設置される状況及び制御装置2から無線タグ1に与えられる振動パターンの具体例について説明する。図5に示した振動パターンに対して送信をする無線タグ1が、この実施形態が対象とするマンホール4内でどのような状況で設置されているかをこの図4では描いている。後の図5で挙げる振動パターンによって無線タグ1が送信する6つの具体的な状況、(a)浸水がない(通常時)、(b)浸水時、(c)どんなときも、(d)高い位置、(e)低い位置、(f)どんな位置でも、に対応する設置状況を描いている。
【0037】
まず大別して、図4の上半分は、マンホール4内での浸水の有無/浸水を関知しないケースを扱っている。1番目の図4の左上は、(a)浸水がない(通常時)状況を示している。この状況では、浸水がないマンホール4内で無線タグ1が設置されている。2番目に挙げる図4の中央上は、(b)浸水時の状況を示す。この状況では、マンホール4内が浸水していて設置された無線タグ1がその浸水した水中にある。3番目の図4の右上には、(c)どんなときでも、という状況を示している。この状況では、浸水があるマンホール4内に2つの無線タグ1a、1b(無線タグ1と同一構成の無線タグ)が設置されており、片方の無線タグ1bについては浸水の水位より高い位置に、他方の無線タグ1aは浸水の水面より下の位置で設置されていて浸水した状態である。
【0038】
そして先ほどと同じく大別した残りの図4の下半分では、マンホール4内に設置した無線タグ1に関する位置についてのそれぞれのケースを扱う。続き番号順の4番目として図4の左下は、(d)高い位置の状況を示している。つまり、マンホール4内で無線タグ1が高い位置、マンホール4の出入口付近に設置されている。そして5番目となる図4の中央下は、(e)低い位置の状況を示している。この状況では、マンホール4内で無線タグ1が低い位置、マンホール4の底に近い場所に設置されている。最後の6番目で図4の右下は、(f)どんな位置でも、という状況を示している。この状況は、マンホール4内で2つ無線タグ1a、1bが設置されており、片方の無線タグ1bは高い位置、他方の無線タグ1aは低い位置となっている。
【0039】
これら6つの状況の中で、特徴的な点としては、大別された2つの(マンホール4の浸水と無線タグ1の位置に関わる)ケースについて、それぞれのケースを関知しないという状況、つまり(c)どんなときでも、および(f)どんな位置でも、があることである。
【0040】
また、これら2つのケースに分かれている状況を組み合わせることもできる。例えば、マンホール4内に浸水がなくて低い位置に無線タグ1を設置する状況としては(a)と(e)の組み合わせになるし、また例えば、マンホール4内が浸水していて無線タグ1を設置する位置を関知しない状況としては(b)と(f)の組み合わせになる。
【0041】
図5には、無線タグ1に与える複数種類の振動パターンを例示する。先に説明したように無線タグ1の状況に合う振動パターンを与えることでその無線タグ1はIDなどの所定の信号を送信するので、それらの無線タグ1の状況に応じた振動パターンを図5では挙げている。
【0042】
具体的にこの図5で挙げた6つの振動パターンは、(a)浸水がない(通常時)、(b)浸水時、(c)どんなときも、(d)高い位置、(e)低い位置、(f)どんな位置でも、とそれぞれの状況で無線タグ1から信号を送信させる場合の例である。それぞれの場合の振動パターンのグラフ表示は横軸が時間方向を示し、縦軸が周波数と振動を示す。
【0043】
図5の左上に(a)浸水がない(通常時の)場合での振動パターンSP−1を示す。振動は時間順にvb、va、vc、vdと変化している。ここで、振動数ではva<vb<vc<vdという関係があり、この図5では簡単な関係として、vb=2×va、vc=3×va、vd=4×vaとした。例えば、vaを0.2secの時間で4回の振動と想定するなら、同じ時間でvbは8回、vcは12回、vdは16回である。また周波数では時間順にfb、fa、fc、fdであり、ここでもfa<fb<fb<fdの関係がある。また同じ図5ではfb=2×fa、fc=3×fa、fd=4×faである。上述した「vaが0.2secの時間で4回の振動との想定」を当てはめてみると、fa=20[Hz](=4÷0.2[sec])、fb=40[Hz](=2×fa)、fc=60[Hz](=3×fa)、fd=80[Hz](=4×fa)である。
【0044】
次に、図5の中央上に示した(b)浸水時の振動パターンSP−2は、時間順に振動がvb、va、vd、vcで、周波数がfb、fa、fd、fcである。ここでの振動数や周波数の相互の関係や各値は先の通常時の振動パターンのそれらと同じである。その次の3番目の振動パターンSP−3は、図5の右上に示した(c)どんなときでも、を対象にした振動パターンである。この振動パターンについては、時間順に振動がvb、vd、va、vcで、周波数がfb、fd、fa、fcである。4番目に当たる図5の左下側に示す(d)高い位置に無線タグが設置されたときに与える振動パターンSP−4は、時間順に振動がvb、vc、vd、vaであり、周波数がfb、fc、fd、faである。5番目が図5の中央下に示す(e)低い位置に無線タグが設置されたときに与える振動パターンSP−5で、時間順に振動がvb、vc、va、vdで、周波数がfb、fc、fa、fdである。最後の振動パターンが、図5の右下に示した(f)低い位置に無線タグを設置したときに与える振動パターンSP−6で、時間順に振動がvb、vd、vc、vaで、周波数がfb、fd、fc、faである。
【0045】
改めて図5に示したそれぞれの状況に応じた場合での振動パターンを確認すると、何れも最初に振動vb、周波数fbが設定されていて、振動パターンの先頭を意味している。その次の順番に、振動がvaで周波数がfaなら浸水の有無を指している。一方、次の順番に振動がvcで周波数がfcなら無線タグの位置を指している。また、次の順番に振動がvdで周波数がfdなら浸水の有無ないし無線タグの位置には無関係な状況を指している。このように各振動や周波数にカテゴリを示す意味を持たせ系統的振動パターンが決められた規則に基づいて作られていると、運用時の間違いを防ぐことができる。また、この例では全ての振動パターンを4つの振動周波数の組み合わせとして、各振動パターンで等しい長さ(等しい時間)として同じ振動・周波数が2回以上は含まれないようにしている。これらによってより確実で明確かつ簡単にどの振動パターンかを判断できるようにしている。
【0046】
また、図6には、図3の制御装置2の受信部25で受信される信号と受信部25が出力する受信結果の一例を示す。まず、図6(a)は、比較のため、本発明の背景技術である汎用の無線タグから送信された信号を受信機(リーダ)が受取った場合の受信結果の一例を示している。この図6(a)での無線信号a−1が、無線タグから送信される信号である。この信号には時刻t−aで開始されたプリアンブル(Preamble)、ID、EOF(End of Frame)が含まれている。プリアンブルは無線タグから送信される信号の開始位置を示し、IDは無線タグを識別する信号で今回のIDは“ID−a”であり、最後のEOFは無線タグが送信した信号の終了を示し前方の信号(ID)に誤りがないかを確認する情報も含まれている。この無線信号a−1を受信機(リーダ)が受信すると、受信機(リーダ)の出力R1は例えば“t−a ID−a、…”となる。
【0047】
一方、図6(b)は本実施形態においてマンホール4内に設置した無線タグ1から送信された信号を受信部25(受信機に対応)が受取った受信結果を示す。この図6(b)での無線信号b−1は、無線タグ1から送信される信号である。この信号はプリアンブル、ID、EOFがあり、プリアンブル、ID、EOFはそれぞれ図6(a)での無線信号a−1と同じ意味をもつ情報である。なおマンホール4内には複数の無線タグ1が設置されることがある。従って浸水の状況など場合によって、複数の無線タグ1の情報が受信部25から送られることもある。この図6(b)の例では1つ目の無線タグ1から送信された無線信号b−1が開始時刻t−b1でIDが“ID−b1”であり、別の無線タグ1からの無線信号b−2が開始時刻t−b2でIDが“ID−b2”である。これら無線信号b−1、b−2を受信部25が受信すると、受信部25の出力251は例えば“t−b1 ID−b1、t−b2、ID−b2、…”となる。
【0048】
以上のように比較して分かるように、図6(a)に示す通常の無線タグから受信機(ないしはリーダ)が受取る情報と、図6(b)の今回の受信結果は変わりがない。
【0049】
次に、図1、図3及び図5を参照して、図1及び図3に示す構成の動作例について説明する。道路6を走行する測定作業車3がマンホール4に近づくと、走行あるいは徐行する状態で測定作業車3に搭載した制御装置2の制御によって振動発生部32で発生された振動がタイヤ31へ伝わる。さらに振動はタイヤ31から地面(道路6)、そしてマンホール4へ伝わり、無線タグ1へも同じパターンの振動が到達する。この振動を無線タグ1に搭載した振動センサ13が検知すると、この無線タグ1の浸水検知センサ12にて検知された情報を基に、予め記憶した振動パターンと検知した振動パターンを比較するなどして、受信した振動パターンが予め当該無線タグ1に対して設定されている条件を満たすか否かが判定される。判定の結果、条件が満たされ、信号の送信を要求される無線タグ1と決まると、制御回路17と送信回路15が動作し、無線信号を送信する。
【0050】
この場合、無線タグ1に搭載された振動センサ13によって検知された振動パターンが、無線タグ1毎に複数の異なる種類から予め選択的に決められた振動パターンのいずれかに一致するか否かを比較するように、振動パターン判定回路14のDBの内容などを設定しておくことができる。すなわち、振動パターンと浸水の有無の組み合わせによる複数の判定条件のうちのいずれかの判定条件を選択的に各無線タグ1に設定しておき、当該無線タグ1に対して設定されている特定の種類の振動パターンが検知され、またそれとの浸水の有無との組み合わせによる特定の判定条件が満たされたときに、無線タグ1が動作するように設定しておくことができる。この場合には例えば、複数の無線タグ1における各振動パターン判定回路14として異なる種類の所定パターンとの一致を判定するものを混在させておき、複数の無線タグ1を用いて、例えば1つのマンホール4に対して、高さの異なる2箇所以上の複数の位置に設定条件の種類別に無線タグ1を設置することで、浸水状況や設置位置などによって無線タグ1の動作が複数種類となるようにシステムを構成することができる。
【0051】
このように、予め決めた振動パターンや判定条件を幾つか準備しておくと、次のようにより具体的な情報も確認することができる。すなわち、例えば振動パターンSP−1(図5(a)参照)の場合に、無線タグ1に搭載した浸水センサ12によって浸水を検知していない(浸水がない通常時の)ときに無線タグ1が動作し送信するように設定することができる。このように設定された無線タグ1を用いた場合、例えば図4(a)〜(c)の設置状況では、振動パターンSP−1が与えられたとき、図4(a)の無線タグ1と図4(c)の無線タグ1bにおいて、振動センサ13で振動パターンSP−1が検知されるとともに、浸水センサ12で浸水無しが検知されて、判定条件が満たされるので、それらの無線タグ1及び1bから無線信号が送信されることになる。
【0052】
また別の振動パターンSP−2(図5(b)参照)のときには、浸水が検知された(浸水時の)場合に無線タグ1が送信するようにすると、図4(a)〜(c)の設置状況では、図4(b)の無線タグ1と図4(c)の無線タグ1aから無線信号が送信されることになる。つまりこの場合は、マンホール内が浸水していると判断できる。
【0053】
さらに別の振動パターンSP−3(図5(c)参照)では、浸水の有無に係らず、無線タグ1から送信されるようにすることもできる。この場合、図4(a)〜(c)の設置状況では、すべての無線タグ1または1aもしくは1bから無線信号が送信されることになる。
【0054】
また或いは、同じマンホール4内に複数の無線タグ1を設置している状況を想定する。複数の無線タグ1を準備する理由は、マンホール4内の浸水した程度を把握するために、設置する位置、主に深さ(高さ)を異なるようにすることである。
【0055】
例えば、振動パターンSP−4(図5(d)参照)に応答して信号を送信するように設定された無線タグ1と、振動パターンSP−5(図5(e)参照)に応答して信号を送信するように設定された無線タグ1と、さらに振動パターンSP−6(図5(f)参照)に応答して信号を送信するように設定された無線タグ1との3種類の設定条件が異なる無線タグ1を用意する。無線タグ1の設定条件の違いは、実際に所定の振動パターンを与えたり、浸水させてみたりすることで把握することは可能であるが、文字、数字、記号、形状、色などで、設定条件の違いを外見で区別できるようにしておくことが望ましい。
【0056】
そして、振動パターンSP−4に応答する無線タグ1を図4(d)に示すようにマンホール4内の高い位置に設置し、振動パターンSP−5に応答する無線タグ1を図4(e)に示すようにマンホール4内の低い位置に設置し、振動パターンSP−6に応答する無線タグ1(無線タグ1a、1b)を図4(f)に示すようにマンホール4内の高い位置と低い位置など位置に関わらずに設置しておく。
【0057】
このように無線タグ1を設置することで、高い位置に設置した無線タグ1から信号を送信させたい場合には振動パターンSP−4を与え、低い位置に設置した無線タグ1から信号を送信させたい場合には振動パターンSP−5を与え、高さに関わらず全ての無線タグ1から信号を送信させたい場合には振動パターンSP−6を与えるようにする。
【0058】
また、このように設置位置の選択と、浸水センサ12の検知出力の判定条件の違いとを組み合わせることで、浸水状況の把握や、設置位置の確認などを、詳細に行うことが可能となる。
【0059】
複数の無線タグを用いない場合には現実的には無線タグの設置した高さ(マンホール内の深さ)を無線で判断することは難しい。しかしながら、複数の無線タグ1を用い、送信を行わせる振動パターンを高さによって異ならせることで、無線タグ1の位置を容易に把握できるようになる。なお、各無線タグ1の設置位置とIDとの対応関係を別途データベース化しておき、そのデータベースを参照することで、無線信号の受信の際に、設置位置の再確認を自動的に行うようにすることもできる。また、例えば、無線タグ1のIDの値が奇数なら高い位置にその無線タグ1を設置して、IDの値が偶数なら低い位置にこの無線タグ1を設置するというようにしてIDに対応した分類などを行うようにしても構わない。この場合、データベースを用意しなくとも、作業者は表示部23に表示されたIDの情報を確認することで、設置位置の確認を容易に行うことができる。
【0060】
またさらに、上述した2つの要件(浸水の有無、設置する位置の高さ)を組み合わせて、低い位置に設置されている無線タグ1が、浸水を検知したときに送信をさせる振動パターンを“SP−2”及び“SP−5”というように連続させた組み合わせの振動パターンとすることもできる。同様に、組み合わせの振動パターン“SP−1”及び“SP−4”は、高い位置に設置された無線タグ1を浸水していない通常時に送信させるというようにすることもできる。このように、より具体的な条件や状況を把握する目的で複数の振動パターンを使用して無線タグ1に送信をさせることも可能となる。
【0061】
次に、図7及び図8を参照して、図1〜図6を参照して説明した実施形態の変形例について説明する。なお、各図において、同一の構成には同一の符号を用いている。
【0062】
図7には、振動をエネルギー変換・蓄積し活用する無線タグを示す。この図7では2つの無線タグを挙げている。図7の上側には、(a)振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−1である。振動エネルギーを変換・蓄積し活用する素子が振動センサを兼ねて共用されている。図7の下側、(b)振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−2は、振動エネルギーを変換・蓄積し活用する素子と振動センサが分離されて別々の役割を担っている。
【0063】
最初に、(a)振動センサ電力変換共用型の無線タグ1−1について、構成(図7(a))と動作(図8(a))を説明する。この無線タグ1−1は、振動センサ(圧電素子)13−1、振動パターン判定回路14、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ(あるいは電気2重層コンデンサとも呼ばれる)11−1、制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18にて構成される。振動センサ(圧電素子)13−1は、2つの役目を兼ねている。一方は、この無線タグ1−1に与えられた振動(特に予め決められた振動パターン)を検知して振動パターン判定回路14へ伝える。他方は、同じくこの無線タグ1−1に与えられた振動(特に予め決められていない振動パターン)を電力に変換して電界2重層キャパシタ11−1へ蓄積する。この無線タグ1−1では、各部に電力を供給する電源(図3の電池11に対応するもの)が、マンホール4外から与えられた振動を電力に変換する手段としての振動センサ(圧電素子)13−1と、その変換された電力を蓄電する手段としての電界2重層キャパシタ11−1とから構成されている。
【0064】
実際に圧電素子を用いて振動で発電する例として、首都高速道路の五色桜大橋およびJR東京駅の自動改札で実証している例がある。高速道路の橋を昼間通過する自動車の『振動』で発電、バッテリーに蓄電し夜間照明に活用する。また、通勤客が通過する駅の自動改札の床に圧電素子を内蔵するゴムマット設置し、電車に乗降する客が歩行するときの床面の振動により電力を発生させる。発生した電力で自動改札や電光表示板など駅設備の一部をまかなっている(参照:「エネルギー源は「振動」というエコ発電 - ECO JAPAN〈エコジャパン〉- nikkei BPnet 環境ポータル」、URL:http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/column/funase/080627_shindou、2008年6月27日)。
【0065】
振動パターン判定回路14は、振動センサ(圧電素子)13−1から伝えられた振動の情報について、予め決められた振動パターンか否かを判定し、かつこの浸水センサ12の検知出力に応じて無線タグ1−1を動作させる振動パターンと一致しているかを判断し、その判断結果を制御回路17へ伝える。同時に、振動パターン判定回路14は、無線タグ1−1を動作させる振動パターンであれば、電界2重層キャパシタ11−1に蓄積された電力を制御回路17と送信回路15へ供給するようにする(図7(a)内で破線の矢印で示す箇所)。浸水センサ12は、無線タグ1−1が浸水しているかを検知して振動パターン判定回路14へ知らせる。振動パターン判定回路14は、浸水の有無と振動パターンが一致するかに基づいて状況判断を行う。電界2重層キャパシタ11−1は、先に振動センサ(圧電素子)13−1によって振動から発電した電力を蓄積し、この無線タグ1−1を駆動する際の電力に用いる。
【0066】
ここで、電界2重層キャパシタ11−1は、普通の電池が化学反応を使うのではなく、物理的に電荷を蓄積するという動作原理である。この動作原理から、充放電のサイクル寿命が長く急速な充放電に対応できる特徴がある(“電気二重層キャパシタについて”および“電気二重層キャパシタの原理”アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ(株)ホームページ参照)。従って、長い期間の繰り返し使用に耐えて、利用時に瞬間的な短時間(数十[msec])の送信を行う無線タグの電源として電界2重層キャパシタが適していると考えられる。
【0067】
この無線タグ1−1を構成し残された制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18の4つは、図3を参照して説明した上記の実施形態の無線タグ1で説明したものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0068】
この共用型の無線タグ1−1の動作は、与えられる振動によって電界2重層キャパシタ11−1の充電、振動パターン判定、無線送信に分かれる(図8(a))。予め決められた振動パターンでないランダムな振動が与えられるときは、この振動を振動センサ(圧電素子)13−1が電力に変換する。この変換した電力は電界2重層キャパシタ11−1へ渡され充電される(図8(a)で“キャパシタ充電(圧電素子の発電)”の箇所)。振動パターン判定の期間では、予め決められた振動パターンが無線タグ1−1へ与えられる。この振動パターンを振動センサ(圧電素子)13−1が検知し、この情報が振動パターン判定回路14へ伝わる。振動パターン判定回路14でこの振動パターンと無線タグ1−1の状況(浸水の有無や無線タグの設置位置に応じた判定条件)と一致するとの判定がされると、次に送信回路15が起動(して無線送信)するよう制御回路17などへ指示される(図8(a)では“振動パターンSP−1”の振動が与えられた“振動パターン判定”の箇所、この時は電界2重層キャパシタ11−1に充電された電力が徐々に消費される)。続いて無線送信の区間では、先の振動パターン判定回路14での指示が制御回路17へと伝わり、送信回路15とアンテナ18を介してこの無線タグ1−1から送信がなされる。この無線送信では電界2重層キャパシタ11−1に充電された電力が多量に使用される。
【0069】
次に、図7(b)の振動センサ電力変換分離型の無線タグ1−2の構成と動作(図8(b))を述べる。この無線タグ1−2は、振動センサ13−2、圧電素子13−3、振動パターン判定回路14、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18にて構成される。この分離型の無線タグ1−2の構成が、図7(a)共用型の無線タグ1−1と異なる点は、振動センサ13−2、圧電素子13−3が分離しているので、振動パターン判定回路14でのパターン照合と無線タグ状況との一致判定および電界2重層キャパシタ11−1の電力蓄積が同時平行で動作可能という点である。これ以外の制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18については、先に示した図7(a)の共用型の無線タグ1−1および図3の振動センサ付き無線タグ1と同じため、説明を省略する。
【0070】
そこで振動センサ13−2、圧電素子13−3、振動パターン判定回路14、電界2重層キャパシタ11−1について順に説明する。この分離型の無線タグ1−2に搭載される振動センサ13−2は、発電機能は不要で、振動を検知する機能が備わっていればよい。揺れに反応するメカニカルなスイッチ、円筒の中に挿入した玉が振動で円筒の両端に接するタイプや振動の周波数に合わせ振り子を複数装備するものでも構わない。これらの何れかの振動センサ13−2を使用して無線タグ1−2に与えられた振動が検知され、この検知された振動情報は振動パターン判定回路14へ伝えられる。振動パターン判定では、伝えられた振動情報に従い、予め決められた振動パターンと照合しどのような状況で動作させるパターンなのを確認する。さらに振動パターン判定において、その確認したパターンとこの無線タグ1−2の状況が一致するかが判定される。これら振動センサ13−2および振動パターン判定回路14の動作は、次に述べる振動による発電とその充電の動作と同時並行して実施できる。
【0071】
なお、本実施の形態の無線タグ1−2に対しても、図5に示すような振動パターンを用いることができる。この場合、全ての振動パターンにはこれらパターンの最初に決まった振動(vb、周波数fb)が用いられているという特徴がある。従って、必要に応じて振動パターン判定回路14の一部、つまりその決まった最初の振動を検知する機構のみを動作させることで、消費電力をより低く抑えられる。
【0072】
また、このような工夫をすることで通常(特定の振動パターンが与えられていない)時、振動パターン判定回路14で消費される電力をより低く抑えて、電界2重層キャパシタ11−1へ充電が可能なようにしている。
【0073】
さて、その振動による発電とその充電については、圧電素子13−3と電界2重層キャパシタ11−1にて別になされる。圧電素子13−3は、先に図7(a)の共用型の無線タグ1−1の箇所で、その構成となる振動センサ(圧電素子)13−1として説明したものと同じである。この圧電素子13−3は、分離型の無線タグ1−2内に前述した振動センサ13−2とは別に搭載されて、電界2重層キャパシタ11−1へのみ接続されている。このため、この分離型の無線タグ1−2へ与えられる振動が予め決められたパターンに関わらず、どのような振動も発電し、電界2重層キャパシタ11−1を充電できる(図8(b)で“振動パターン判定”の区間参照)。無線送信については、分離型の無綿タグ1−2も、図8(a)の共用型の無線タグ1−1と同じである。
【0074】
以上のように、図7に示す無線タグ1−1、1−2は、振動によって発電して、電界2重層キャパシタ11−1に充電した電力を用いて送信するため、パッシブ無線タグの電力供給やアクティブ無線タグの電池寿命を気にせずに利用することができる。
【0075】
次に、図9〜図11を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。図9は、隣接する2つのマンホール4a、4bにおいて、隣のマンホール4aに設置された無線タグ1aの信号送信からマンホール4bに設置された無線タグ1bの発信タイミング制御についてのイメージを示す説明図である。
【0076】
一般に、地中に埋設されている電力または通信ケーブル用のマンホール4(図9ではマンホール4a、4b)においては、その電力や通信ケーブルを通す管路5によってマンホール間が繋がっている。また、道路6に沿って通常はマンホール4および管路5を作る工事が行われるので、結果的にあるマンホール4aと管路5で繋がる隣のマンホール4bの上は道路6である。今回の発明ではマンホール4内に設置する無線タグ1(図9では無線タグ1a、1b)が送信する無線信号を受信する制御装置2は測定作業車3に搭載される。当然、この測定作業車3は、道路6に沿って走行する。従ってあるマンホール4a内に設置した無線タグ1aが送信した無線信号を測定作業車3に搭載した制御装置2で受信できたタイミングについて、隣のマンホール4bに設置した無線タグ1bにも知らせられるとすれば、無駄な送信動作をせずに、より的確なタイミングで送信が可能になると考えられる。
【0077】
マンホール4が隣接する間隔(通常は50m〜250m)が近い場合や車道の反対車線側に位置するマンホール4には、不要にもかかわらず、走行している測定作業車3からの振動パターンが伝わる可能性がある。道路6を測定作業車3が走行する方向、ルートによって振動パターンを受けた無線タグ1から送信される信号を再び同じ測定作業車3に搭載された受信部25で受けられないことをここでは無駄な送信動作としている。つまり、測定作業車3の走行方向やルートに従うように次のマンホール4内の無線タグ1のみが送信するなら効果的になると考えることができる。さらに振動パターンが伝わらなくても測定作業車3が走行する方向やルートに当たるマンホール4内の無線タグ1が送信するようにすることも考えられる。
【0078】
このような考えを基に、この実施の形態では、図9に示すように隣のマンホール4a内の無線タグ1aから送信された無線信号を次のマンホール4bに設置した無線タグ1bが受け、無線タグ1bが送信動作をするタイミングを決めるようにしている。図9の左下側に示すマンホール4a内の無線タグ1aが、図1を参照し説明された振動を検知し測定作業車3が接近したタイミングで無線信号を送信したとする。この無線信号を次のマンホール4b内に設置された無線タグ1bが受信し、予め無線タグ1b内に記録されているマンホール間の距離での測定作業車3が走行する時間(マンホール4aとマンホール4bの間の距離を測定作業車3の走行速度で割ったおよその所要時間)が経過した後に、マンホール4b内に設置された無線タグ1bから送信するようにする。
【0079】
ここで、次のマンホール4bは、先のマンホール4aと管路5で繋がっている。このためマンホール4a内の無線タグ1aから送信された無線信号が、この管路5を通じマンホール4b内へと伝わることもある。すなわち、無線タグ1aから送信された無線信号がマンホール4a外の地上へ一旦出て、隣のマンホール4b内へ入る経路よりも、マンホール4a、4b間を繋ぐ管路5における無線伝搬の導波管効果で、より確実に伝わることが考えられる。
【0080】
先に述べた隣のマンホール内にある無線タグの送信から予め決められた時間後に送信する動作を無線タグが行うためには、図3に示した振動センサ付き無線タグ1の内部構造において、無線の受信機能(受信回路)が必須となる。この受信回路にて受信した無線信号の情報は、振動パターン判定回路14へ伝えられて、振動センサ13からの振動の情報と浸水センサ12からの浸水有無の情報と合わせて、無線タグ1が動作して無線信号を送信するか判断する情報になる。なお、隣のマンホール4として管路5で繋がるマンホール4の数は通常は2つ以上ある。従って、地上で道路6の車線の走行方向から通常は測定作業車3が逆走となる隣のマンホール4内の無線タグ1からの送信は排除されなければならない。このように道路6を逆走する方向となる無線タグ1からの送信を排除するため、その無線タグ1の識別子(ID)による区別が有効である。従って予め道路6上を測定作業車3が車線走行する方向で隣のマンホールとなる無線タグ1のIDのみの無線信号に対して次の送信タイミングとするようにすることが望ましい。
【0081】
ここで、図10に隣のマンホールの無線タグ送信から所定のタイミングで発信する本実施の形態の無線タグの構造を示す。ここでは、図7に示した振動をエネルギー変換・蓄積し活用する無線タグ1−1、1−2と同じように、図10(a)振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−3と、図10(b)振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−4とを示した。
【0082】
まず、図10(a)の振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−3では次に挙げる構成を持つ。振動センサ(圧電素子)13−1、受信情報・振動パターン判定回路14−1、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、受信回路101、送信回路15、制御回路17−1、IDを格納するメモリ16、アンテナ18、サーキュレータ102である。この内の振動センサ(圧電素子)13−1、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1とIDを格納するメモリ16は、先の図7に示した振動エネルギー変換・蓄積し活用するもので図7(a)の振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−1と同じである。
【0083】
受信情報・振動パターン判定回路14−1は、振動センサ13−1から検知された振動の情報が送られ、浸水センサ12から浸水の情報が送られ、受信回路101から受信された情報が送られてくる。これらの情報に対して予め設定された条件に合致するかを判定する。この条件とは、例えば、振動パターンは浸水がある場合に応答するとか、または隣のマンホールに設置された無線タグ1からの送信を受信した場合に応答するとかという条件である。このような条件に合う状況(浸水または隣のマンホール内に設置された無線タグの送信がある場合)を判断すると、受信情報・振動パターン判定回路14−1は電界2重層キャパシタ11−1から制御回路17−1と送信回路15へ電力を供給させる(図10(a)で電界2重層キャパシタ11−1から制御回路17−1および送信回路15の破線の矢印で示した箇所)と共に制御回路17−1へ判断結果を伝える。すなわち、本実施の形態の無線タグ1−3は、他の無線タグ1から送信された所定の信号を受信する受信手段としての受信回路101を備え、送信手段としての送信回路15が受信回路101によって所定の信号が受信された時刻から所定時間経過後にIDなどを表す所定の信号を送信するものとなっている。ここで、無線タグ1−3が受信対象とするものは受信手段を備える無線タグ1−3あるいはそれと同様の無線タグであってもよいし、受信手段を備えない図3の無線タグ1や図7の無線タグ1−1、1−2等の無線タグであってもよい。また、例えば複数のマンホールが接近して配置されている場合などでは、隣接するものに限らず、より離れたマンホールに設置されている無線タグを受信対象とすることもできる。また、同一のマンホールに複数の無線タグを設置する場合には、それらのいずれかを受信対象とする無線タグに設定することなどもできる。
【0084】
なお、隣のマンホール内に設置された無線タグ1からの送信の判断はその無線タグ1のIDが予め設定されているものかということで判断される。受信回路101は、上述したように別の無線タグ1からの送信信号を受信する処理を行うために設けられる。受信信号はアンテナ18からサーキュレータ102を介して受信回路101へ伝えられ、この受信回路101で処理された受信結果は上記の受信情報・振動パターン判定回路14−1および制御回路17−1へと伝える。またこの受信回路101は常に電界2重層キャパシタ11−1から電力を供給されて、受信可能な状態にある。
【0085】
一方、送信回路15は、受信情報・振動パターン判定回路14−1の判断結果に応じて必要な時にのみ電界2重層キャパシタ11−1から電力を供給される。そして制御回路17−1からの指示によって送信回路15は送信信号を生成し、この送信信号はサーキュレータ102を介してアンテナ18から送信される。制御回路17−1は、送信回路15と同様に、受信情報・振動パターン判定回路14−1の判断結果に応じて必要な時にのみ電界2重層キャパシタ11−1から電力を供給されて動作する。この制御回路17−1は、振動センサ13−1と浸水センサ12の2つの情報で動作した図7(a)に示した無線タグ1−1の制御回路17と同じ動作に加えて、受信回路101からの(隣のマンホールに設置された無線タグ1の送信を受信した)情報の場合は、測定作業車3が隣のマンホール4から自身のマンホール4まで走行するのに要する時間後に自らは送信するようタイミングを遅らせることも行う。アンテナ18は、図7(a)のアンテナ18と同様に無線タグ1−3の送信信号を送信することに加え、他の無線タグ1の送信信号を受信することにも行う。このアンテナ18の送信受信の各信号はサーキュレータ102により送信回路15からの送信信号と受信回路101への受信信号に方向を区別され取り扱われる。
【0086】
他方、図10(b)の振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−4には、次に挙げる構成を持つ。振動センサ13−2、圧電素子13−3、受信情報・振動パターン判定回路14−1、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、受信回路101、送信回路15、IDを格納するメモリ16、制御回路17−1、アンテナ18、サーキュレータ102である。これらの構成の中で、振動センサ13−2、圧電素子13−3、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、IDを格納するメモリ16は先の図7(b)に示した振動エネルギー変換・蓄積し活用するもので振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−2と同じである。また図10(b)の残りの構成である、受信情報・振動パターン判定回路14−1、受信回路101、送信回路15、制御回路17−1、アンテナ18、サーキュレータ102は図10(a)の無線タグ1−3の構成と同じである。
【0087】
図11は、図10の無線タグ1−3または1−4において隣の送信に応じて無線タグが送信を実行する処理手順を示すフローチャートである。最初に、“振動受信動作中”で外部から与えられる振動を受信する動作中になっている(ステップST31)。この動作中に“振動受信があるか?”が確認される(ステップST32)。ここで、振動を受信すれば(ステップST32で“Yes”なら)、次の“振動パターンはタグ状況にあるか?”が判定される(ステップST33)。例えば浸水していない状況で応答を返すような振動パターンでマンホール4に設置された無線タグ1−3(あるいは1−4)の状況も浸水がなければ(ステップST33で“Yes”なら)、“無線タグ送信”がなされる(ステップST38)。
【0088】
他方、先の“振動受信があるか?”(ステップST32)と“振動パターンはタグ状況にあるか?”(ステップST33)で何れかが違うならば(ステップST32またはステップST33で“No”ならば)、続く“無線受信動作中”へ移る(ステップST34)。ここで順番に“受信無線信号ありか?”、“隣のマンホールに設置されたタグか?”が判断される(ステップST35、ステップST36)。受信無線信号がなければ(ステップST35で“No”ならば)、また、隣のマンホール4に設置された無線タグ1でなければ(ステップST36が“No”ならば)、最初の“振動受信動作中”(ステップST31)へ戻る。ここで、隣のマンホール4内に設置された無線タグ1かどうかの判断は無線信号のタグIDの確認によってなされる。もし受信無線信号があり、かつ隣のマンホール内に設置されたタグであれば(ステップST35とステップST36の何れも“Yes”ならば)、次の“一定時間経過”(ステップST37)の後に“無線タグ送信”をする(ステップST38)。この“一定時間経過”は測定作業車3が隣のマンホール4から走行して来るタイミングに合わせて予め設定しておくのである。
【0089】
この図11に示したフローチャートでは振動パターンの受信と隣のマンホール4内に設置された無線タグ1の送信を受信した場合はそれぞれの場合に無線タグ1−3あるいは1−4自身が送信する例である。しかし、別の例として隣のマンホール4内に設置された無線タグ1の送信を受信したことと、その後の一定時間内に振動パターンの受信があったことを合わせて、はじめて無線タグ自身が送信するようにしても良い。このようにした場合には、無駄な送信を極力少なくして無線タグの電力消費を削減することができる。
【0090】
次に、図12及び図13を参照して、さらに他の本発明の実施の形態について説明する。図12及び図13に示す実施形態では、弾性振動として特に音響(音波)に限定して関係する機能を用いている。なお、図12には、本実施形態を利用する場合の外観イメージPを示している。先の図1から図11まではマンホール4の蓋が閉じられたままのマンホール4内の無線タグ1へ送信を指示する手段として振動による方法を述べてきたが、この図12及び図13に示す実施形態においては特に音響を扱う機能と方法に限定したものであって、他の実施形態と比べてさらに振動伝達が確実かつ単純な例となっている。この実施形態では、マンホール4内に設置する機器は大別して2つの部分に別れている。1つはこれまでの例では無線タグ1本体に組み込まれていた浸水センサ12が、浸水検知センサ12−1として無線装置1−5本体から離れてケーブル12−2で繋がる構成になっている。
【0091】
浸水検知センサ12−1はそもそもマンホール4内への浸水を確認し易い位置、つまりマンホール4の底に近い(低い/深い)位置に設置されてその効果を発揮できる。他方の他の実施形態における振動センサ13やアンテナ18は、この実施形態では図12及び図13に示すように音響マイク103と音響スピーカ104に代わるが、マンホール4外部との通信をするために、マンホール4の出入口に近い(高い/浅い)位置にあることが望ましい。従って、図12に示す浸水検知センサ12−1がマンホール4内の無線装置1本体から分離されてケーブル12−2にて接続される。この形態は、ちょうどお風呂の給水において満水を報知する水位検知機と同じである。
【0092】
次にマンホール4内の送信装置1−5については、先の図3に示す振動センサ付き無線タグ1から異なる構成部分について説明をする。異なる構成部分としては3つある。この内の1つは先ほどから述べている浸水センサ12の部分が無線装置1−5本体から分離しケーブル12−2で繋がる浸水検知センサ12−1に代わったことである。2つ目は、振動センサ13に代わり音響マイク103が備わっている。これを用い、振動パターン(図5に示す6つのパターン)と同じような音響パターンを使用する。また、振動パターン判定回路14に代わる音響パターン判定回路14−2を備え、マンホール4内の無線装置1−5の送信回路15−1等を動作させるかを決定する。その際、音響パターン判定回路14−2によって、振動パターンに代えて、音響マイク103で検知された音響パターンに基づき、浸水検知センサ12−1での浸水検知の有無とこの浸水検知センサ12−1が設置された位置(高さ)に対応して、検知された音響パターンと所定の音響パターンとの比較判定を行う。ここでの音響パターンは、後述するマンホール4外に準備された制御装置2−1の音響スピーカ201から発生し、鉄製の蓋43を通じて マンホール4内へ伝わったものである。
【0093】
残る1つは、図3に示した振動センサ付き無線タグ1のアンテナ18(と送信回路15)に代わり、図12のマンホール4内の無線装置1−5に備わる音響スピーカ104である。この音響スピーカ104は、制御回路17−1からの音響信号を送信させる指示に従い、音響を発生させる。このマンホール4内で発生する音響の信号は鉄製の蓋43を通じてマンホール4外に準備された制御装置2−1に伝わる。
【0094】
なお、この図12に示すマンホール4内の無線装置1−5を構成するそのほかの電池11やメモリ16は図3の振動センサ付き無線タグ1内のものと同じである。
【0095】
さらに、上述した図12及び図13に示すマンホール4内の無線装置1−5が、図3の無線タグ1から上記のように代わったことに合わせて、マンホール4外の制御装置2−1も図3の制御装置2から図12に示す制御装置2−1と音響スピーカ201と音響マイク202とからなるもののように代わる。この図12及び図13の制御装置2−1では、前の図3の制御装置2での指示設定操作部21と制御部22と表示部23(および受信部(リーダ)25)を兼ね備えた機能を担う。図12及び図13に示すマンホール4外に準備された制御装置2−1側での音響スピーカ201は、図3の制御装置2にある振動発生部32の代わりである。このマンホール4外の制御装置2−1側の音響スピーカ201からマンホール4内の無線装置1−5の指示を音響で行う。またこの音響での指示は、先の図5に示されたような振動パターンに対応する音響パターンが用意されている。最後に、図12及び図13に示すマンホール4外に準備された制御装置2−1での音響マイク202は図3に示す制御装置2のアンテナ24(と受信部(リーダ)25の一部)に代わるものである。このマンホール4外に準備された制御装置2−1の音響マイク202は、マンホール4内から鉄製の蓋43を通じて伝わる音響信号を受けて、制御装置2−1へ伝える。
【0096】
図13は、本実施形態の無線装置1−5と制御装置2−1と構造を示している。図13に示す無線装置1−5と制御装置2−1の構造は、先に図3の振動パターンに対応して送信するアクティブ無線タグを用いる実施形態として示した無線タグ1と制御装置2の構造と類以して、構成されたものである。
【0097】
まず一方の制御装置2−1には、次のような構成がある。指示設定操作部21、制御部22−1、超音波発生部(あるいは音響スピーカ)201、超音波受信部(あるいは音響マイク)202、受信処理部25−1、表示部23がある。この図13に示す指示設定操作部21、制御部22−1、受信処理部25−1や表示部23については、図3の振動パターンに対応して送信するアクティブ無線タグに対応する制御装置2での指示設定操作部21、制御部22、受信部25、表示部24と同じあるいはほぼ同じである。ただ図3は振動を用いるのに対して、図14では音波(特に超音波)を用いるので、制御部22−1では次のような処理をする。
【0098】
ます指示設定を受取る(ステップST41)。その指示設定に従って、DBからパターンの選択取得をする(ステップST42)。そして、DBから選択取得した超音波パターンの発生情報の超音波発生部201への伝達をする(ステップST43)。このようにして、制御部22−1から超音波パターンの発生情報が超音波発生部(スピーカ)201へ伝達される。この情報に従い超音波発生部(スピーカ)201が超音波を発生する。
【0099】
他方、超音波受信部(マイク)202はマンホール4内の無線装置1−5で発生された超音波を受信して、受信処理部25−1へ出力する。これら構成の内で、指示設定操作部21はパソコン(パーソナルコンピュータ)のキーボード、制御部22−1および受信処理部25−1はパソコンの演算処理装置(CPU)、表示部23はパソコンの表示画面とすれば、これらをノート型パソコンでも実装できる。残りの超音波発生部(スピーカ)201と超音波受信部(マイク)202をノート型パソコンにケーブルで接続することで比較的簡単に持ち運び可能な機器として実現できる。
【0100】
他方の図13に示す浸水検知センサ付きマンホール内装置としての無線装置1−5は次のような構成である。すなわち、無線装置1−5は、超音波受信部(音響マイク)103、受信パターン判定回路14−2、電池11、制御回路17−1、IDを格納するメモリ16、送信回路15−1、超音波発生部(音響スピーカ)104から構成されている。また、受信パターン判定回路14−2には、無線装置1−5外部の浸水検知センサ12−1が接続されている。この図13に示した受信パターン判定回路14−2、浸水検知センサ12−1、電池11、制御回路17−1、IDを格納するメモリ16、送信回路15−1は、図3に示す振動パターンに対応し送信するアクティブ無線タグ1における振動パターン判定回路14、浸水センサ12、電池11、制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15に対応する構成であり、同様の機能を実現するものである。ここで、超音波受信部(マイク)103は制御装置2−1からの超音波を受け、受信パターン判定回路14−2へ伝える。
【0101】
受信パターン判定回路14−2では、超音波受信部(マイク)103からの受信情報および浸水検知センサ12−1から浸水の有無の情報を基にして、次のような処理をする。まず、超音波による受信情報と浸水有無を受取る(ステップST51)。受取り超音波情報と受信パターン判定回路14−2内のDBのパターンを比較して一致確認をする(ステップST52)。超音波パターンの比較結果と(マンホール内の浸水の有無)状況が合致したとの伝達をする(ステップST53)。ここで浸水検知センサ12−1は例えばお風呂の給水で満水になった時に知らせる給水検知と同じように、フロート、接点などを利用したセンサを用いることができる。受信パターン判定回路14−2で予め決められた条件に合う受信とマンホール4の状況が合致すると送信回路15−1へ電池11から電力が供給される。制御回路17−1は送信回路15−1へ指示し超音波発生部(スピーカ)104からIDなどの情報を無線送信するための超音波を発生させる。
【0102】
以上のように図12および図13に示す無線装置1−5及び制御装置2−1の形態および構成や内部構造を取ることで、音響を使いより確実かつ簡単にマンホール4内の状況(浸水の有無やその程度)を確認することができる。
【0103】
本発明では、マンホールに設置した振動検知機能付きの無線タグに対して地上から振動を与え、無線タグから送信された無線信号を受信して、マンホール内の浸水の状況を確認して、その後この確認結果をマンホール作業に活用できる。また、その構成においては、無線装置と制御装置との間で伝達あるいは送受信される弾性振動及び無線信号として音波を用い、振動検知手段として音響マイクを用い、振動の発生手段あるいは無線信号の送信手段として音響スピーカを用いるようにすることも可能である。
【0104】
なお、本発明の実施の形態は、上記に限定されず、マンホール4内に設置する無線タグ(無線装置)の個数をさらに増加させたり、図3、図7、図10に示すような無線タグ(無線装置)内の構成ブロックを集積化して統合したり、あるいは各ブロックの機能を分割することで各ブロックの構成を分割したりする変更が適宜可能である。また、各実施の形態が特徴とする構成・機能を他の実施の形態の構成・機能と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明による浸水検知システムの実施の形態の一構成例(振動検知時に送信するアクティブ無線タグを用いる例)を示す模式図である。
【図2】図1の測定作業車3に搭載する振動発生部32の構成の一例を説明するための模式図である。
【図3】図1の無線タグ1(振動パターンに対応して送信するアクティブ無線タグ)と制御装置2の構成及び処理の一例を説明するためのブロック図である。
【図4】図1及び図3に示す無線タグ1の設置例(マンホール4内に無線タグ1が設置された状況)を説明するための模式図である。
【図5】図1及び図3に示す制御装置2によって発生する振動パターン(無線タグ1に与える振動パターン)の例を説明するための模式図である。
【図6】図1及び図3に示す制御装置2で受信される無線信号の例(受信部25から送られてきた受信結果)を説明するための模式図である。
【図7】本発明による無線タグの他の実施の形態(振動をエネルギー変換・蓄積し活用する無線タグ)の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7に示す無線タグ1−1及び1−2の動作を説明するための動作状態(動作波形)の時間変化を示す模式図である。
【図9】本発明による浸水検知システムの他の実施の形態の一構成例(隣のマンホールのタグ送信から発信タイミングを制御する構成例)を示す模式図である。
【図10】図9の無線タグ1a、1bとしての無線タグ1−3及び1−4(隣のマンホールのタグ送信から発信するタイミングを制御可能な無線タグ)の構成例を説明するためのブロック図である
【図11】図10の無線タグ1−3及び1−4の動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明による浸水検知システムのさらに他の実施の形態(超音波を振動及び無線信号に代えて用いる形態)の一構成例を示す模式図である。
【図13】図12の無線装置1−5と制御装置2−1の構成及び処理の一例を説明するためのブロック図である。
【図14】本発明の背景技術におけるシステム構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0106】
1、1−1、1−2、1−3、1−4 無線タグ(無線装置)
1−5 無線装置
2、2−1 制御装置
3 測定作業車
4 マンホール
11 電池(電源)
11−1 電界2重層キャパシタ(電源の一部)
12、12−1 浸水センサ(浸水検知手段)
13、13−2 振動センサ(弾性振動検知手段)
13−1 振動センサ(弾性振動検知手段・電源の一部)
13−3 圧電素子(電源の一部)
14 振動パターン判定回路(判定手段)
14−1 受信情報・振動パターン判定回路(判定手段)
14−2 受信パターン判定回路(判定手段)
15 送信回路(送信手段の一部)
16 メモリ(識別子記憶手段)
17、17−1 制御回路(送信手段の一部)
18 アンテナ
32 振動発生部
101 受信回路(受信手段)
104、201 超音波発生部(音響スピーカ)
103、202 超音波受信部(音響マイク)
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内の浸水確認等に用いて好適な無線装置及び浸水検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、特許文献1に記載されている技術について図14を参照して説明する。この特許文献1には、外部から振動を与えられ、この振動を受けたことをきっかけとして無線信号を送信する無線タグ(またはRFID(Radio Frequency Identification)タグ、IC(Integrated Circuit)タグとも呼ばれる)を用いた技術が記載されている。特許文献1の無線装置を用いたシステムでは、図14に示したように、振動によって起動する振動起動無線装置7(無線タグに相当する)をコンクリート構造物8の内部に数多く設置する。これらの無線装置7に振動を与えて、起動した無線装置7が発信する無線信号を構造物検査装置9(受信機に相当する)によって受信する。この受信した無線信号によって構造物8の欠陥を検出する。この構成によれば、コンクリート構造物8の異常の検出が容易に行える。
【0003】
上述した無線装置7は、振動を受けて無線信号を送信する。そのため、無線装置7は、構造物検査装置9が発生する振動のエネルギーを、各回路を動作させるための電力へと変換する機能を備えている。従ってこの無線装置7は、一般的なアクティブ型の無線タグが内蔵する電池とする電源に代えて、外部から与えられる振動を効果的に受け取り、電力へ変換する機能へと単純に置き換えた構成を用いている。つまり、無線タグを駆動するための電力供給に係る部分のみを改良した構成で実現されている。このため、既存のアクティブ型の無線タグから少し改良するだけで良く、無線タグが送信する無線信号も変わらない。従って、その無線タグの既存のリーダ(受信機)の受信機能がそのまま使用できるという利点もある。
【特許文献1】特開2006−162391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池を搭載してID(識別子)ほかの情報を送信するアクティブ型の無線タグでは、送信動作を所定の時間間隔で間欠的に行うようにしたものがある。間欠的に送信動作するアクティブ型無線タグを用いる場合、無線タグから送信された無線信号の受信範囲に受信機がないことの多い事例においては、無線タグからの送信タイミングによっては送信された無線信号を受信機で読取れないことが多くなってしまうことになる。またアクティブ型無線タグが自らの動作として間欠的な繰り返し送信をするのみでは、受信機が近くにないときも意味のない送信をし続けていて無駄が多いので、この無線タグの電池の消耗を間欠的な動作以上には大幅に抑制することはできず、この無線タグ自体の寿命もそれ以上に延ばすことはできない。
【0005】
一方で、図14に示されている無線タグに相当する振動起動無線装置7を用いる場合には、この無線装置7に対して振動を与える構造物検査装置9の振動発生部を対象物(その無線装置7が取り付けられた構造物8)に接触させ、また無線装置7も構造物8の内部に埋め込むなど強固に取り付ける必要がある。このようにすることで、構造物検査装置9から、無線装置7に対して、それを動作させられるだけのある程度の(超音波による)振動エネルギーを与えることができる。ただし、無線装置7の内部構造は一般的なアクティブ型の無線タグで電力供給の部分を変えたものであり、構造物8の状態は、複数の無線装置7からの複数の送信信号の有無を用いて確認されるようになっている。つまりこのような内部構造をしている無線タグではある程度の数を対象とする構造物に対して取り付ける必要がある。そして、この構造物が新設された時点でそれら多数の無線タグからの無線信号を測定したデータを予め取得しておく。その後、構造物の経過劣化を判断するために、予め測定したデータと比較するような対応が必要である。
【0006】
さて、上記の背景技術を踏まえ、通信線などを埋設するための管路に設けられたマンホール内等の浸水の有無を、無線タグを用いて検出することを考えた場合、浸水の有無を検出する検出手段と各部の電源となる電池とを搭載したアクティブ型無線タグを利用することが考えられる。この場合に一つの課題となるものは、マンホール内等に設置する無線タグの電池寿命である。これに対しては、上述したように、無線信号の送信動作を間欠的に行うことである程度の電池の長寿命化(電池交換なしでの稼働可能時間の延長)は可能である。しかしながら、さらなる電池の長寿命化を図ることができれば、システムの維持コストをより削減することが可能となる。
【0007】
一方、特許文献1に記載されているような振動エネルギーを電源に用いる無線タグは、電池寿命の問題はないものの、取り付けに関する制約や、必要となる無線タグが多数であることなどから、マンホール内等の浸水の有無を確認するものとしては適しているとは言えない。
【0008】
本発明は、上記のような事情を考慮してなされたものであり、マンホール内等の対象物内に設置して浸水の有無を検出する際に利用するのに従来よりもより適した無線装置及び浸水検知システムを提供することを目的とする。より具体的には、稼働可能時間が長く、マンホール内等の対象物に設置容易で、一つの対象物に設置が必要となる個数がより少ない無線装置及びその無線装置を用いた浸水検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、各手段に電力を供給する電源と、浸水を検知する浸水検知手段と、マンホール外から与えられた弾性振動を検知する弾性振動検知手段と、前記浸水検知手段の検知出力に応じて、前記弾性振動検知手段によって検知された弾性振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が所定のパターンに一致すると判定した場合に、前記電源から電力を供給され、所定の信号を送信する送信手段とを備えることを特徴とする無線装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、前記電源が電池であり、前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、前記電源が、マンホール外から与えられた弾性振動を電力に変換する手段と、その変換された電力を蓄電する手段とからなり、前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、他の無線装置から送信された所定の信号を受信する受信手段をさらに備え、前記送信手段が、前記受信手段によって所定の信号が受信された時刻から所定時間経過後に、前記所定の信号を送信するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記弾性振動及び前記無線信号が音波であり、前記弾性振動検知手段が音響マイクであり、前記送信手段が音響スピーカであることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、マンホール内に設置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線装置と、前記無線装置に対してマンホール外から所定パターンの弾性振動を与えるとともに、該無線装置から送信された送信信号を受信する制御装置とを備えることを特徴とする浸水検知システムである。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記無線装置が、複数であり、1つのマンホールに対して、高さの異なる2箇所以上の複数の位置に設置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記制御装置が、複数種類の所定パターンの弾性振動を与えるものであり、前記無線装置が、複数であり、複数の前記無線装置における各前記判定手段として異なる種類の所定パターンとの一致を判定するものが混在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、判定手段によって、浸水検知手段の検知出力に応じて、弾性振動検知手段によって検知された弾性振動が所定のパターンに一致すると判定された場合に、送信手段に電源から電力が供給され、所定の信号が送信される。すなわち、本発明によれば、マンホール内に設置した無線装置から情報を読み取る際に、外部から所定パターンの弾性振動を与えて無線装置から信号を送信するようにしている。したがって、無線装置からの送信を必要な時にのみ行うようにすることができ、無線装置の送信信号が外部の受信機などでより確実に読み取れて、かつ不要な無線送信などを抑制して無線装置の消費電力を抑え、電池などの電源の寿命を延ばすなど無線装置の稼働可能時間を容易に長くすることができる。
【0018】
また、判定手段が、浸水検知手段の検知出力に応じて所定パターンとの一致を判定するようにしたので、所定パターンと判定条件を複数種類設定して、例えば、浸水時にあるパターンで信号を送信し、通常時に他のパターンで信号を送信するなどすれば、通常時と浸水時などの異なる状況を把握することができる。また、振動を電力に変換し蓄積しておいて無線装置の無線送信の電力に使用したり、隣のマンホールの無線装置の送信を知る受信手段を装備し、より確実な読み取りタイミングで信号を送信させたりすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施の形態の浸水検知システムは、無線タグ1(無線装置)と、無線タグ1に対して所定の振動パターンを有する振動を与えるとともに、無線タグ1から送信された無線信号(電波、音波等)を受信する制御装置2を搭載した測定作業車3とから構成されている。マンホール4は、地下に埋設された管路5内に敷設された通信線、電力線等の点検、保守等のために用いられる地表面下に設けられた地中箱であり、人が出入りできるような蓋付の開口部を有する立ち上がり部41と躯体42とから構成されている。このマンホール4は、地上の道路6等に沿って適宜な間隔を隔てて複数設けられている(ただし図1では1つのマンホール4のみ示している)。
【0020】
マンホール4上の地上(道路6)で、測定作業車3が走行する。この測定作業車3には、走行しながら測定作業を実施したり、または徐行もしくは停止して測定作業を実施したりすることを可能とするため、走行時及び停止時に無線タグ1に対して所定の振動パターンを有する振動を与えることができるような構造が設けられている。この測定作業車3には、例えばタイヤ31を介して振動を地上(道路6)へと伝えるための図2(d)に示すような振動発生部32を設けることができる。
【0021】
図2は、図1の測定作業車3に設ける振動発生部32の構造を説明するための模式図であり、図2(a)〜(c)はその原理を説明するための参考図であり、図2(d)は構造の一例を示す模式図である。なお、図2(a)は、愛知工科大学自動車短期大学の情報「SUSPENSION(basic)」(URL:http://www.aut.ac.jp/auto/suspension_basic.htm)から一部を引用したものであり、スプリングの働きを示すための図であり、図2(b)及び(c)は、特許庁・標準技術集・16年度「自動車・二輪車のブレーキ・サスペンション」、11-4-4-2 低周波アクティブ油圧サスペンション(URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/brakesuspension/11-4-4.pdf)から一部を修正して引用したものであり、(b)が低周波アクティブ油圧サスペンションの構成を示す図、(c)が(b)の低周波アクティブ油圧サスペンションで用いられるアクチュエータを示す図である。
【0022】
図1の測定作業車3に設ける振動発生部32としては、図2(a)〜(c)に示すような自動車のサスペンションを活用したものを用いることができる。一般に、自動車は走行中に路面からタイヤを介した車体の振動を吸収して抑制するためサスペンションがある(図2(a)参照)。通常、このサスペンションにかかる力をスプリングで受止めたり、エネルギーを吸収したりするだけの方式をパッシブ方式と呼ぶ。このパッシブ方式に対しパワー源を持ちサスペンションに別の力をかけて動きを制御する方式をアクティブ方式と呼ぶ(図2(b)参照)。このアクティブ・サスペンションでは油圧−電子制御などを用いてサスペンションにあたるアクチュエータの制御を行う(図2(c)参照)。このように、サスペンションについて制御型のアクティブ・サスペンション機構を持つ車もある。
【0023】
この機構を走行中に発生する自動車の振動を吸収するのではなく、ここでは逆に制御することによって、タイヤからの路面への振動発生・伝搬する装置として機能させる。すなわち測定作業車3に設ける振動発生部32としてはそのような制御型/アクティブ・サスペンション機構を活用することができるのである。図2(d)は測定作業車3の振動発生部32としての振動発生・伝達構造の構成例を示している。制御装置2からの指示によってこの振動発生部32が動作する。この振動発生部32は、アクティブ・サスペンションの圧力制御ユニット321と、オイルポンプ322と、サスペンションを上下するための複数のアクチュエータ323とを有して構成されている。この圧力制御ユニット321の出力信号とオイルポンプ322で発生される圧力によって、アクティブ・サスペンションのアクチュエータ323が動作してこの測定作業車3のサスペンションを上下させタイヤ31から路面へ振動が伝えられる。
【0024】
次に、図3を参照して、図1に示す無線タグ1と制御装置2の構成例について説明する。図3に示す無線タグ1は、各部に電力を供給する電源となる電池11と、浸水の有無を検知する浸水検知手段としての浸水センサ12と、マンホール4外から与えられた振動を検知する弾性振動検知手段としての振動センサ13と、浸水センサ12の検知出力に応じて、振動センサ13によって検知された振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する判定手段としての振動パターン判定回路14と、振動パターン判定回路14が所定のパターンに一致すると判定した場合に電池11から電力を供給され所定の無線信号を送信する送信手段としての送信回路15と、無線タグ固有のID(識別子)を記憶する識別子記憶手段としてのメモリ16と、送信回路15からメモリ16に記憶されているIDを表す情報を含む信号を送信させるための制御等を行う制御回路17と、送信回路15に接続されたアンテナ18とから構成されている。他方、制御装置2は、上述したように無線タグ1に対してマンホール4外から所定パターンの振動を与えるとともに、無線タグ1から送信された送信信号を受信する機能を有するものであり、複数の操作子を有して作業者によって指示内容を設定するための指示設定操作部21、各部を制御する制御部22、マンホール4内の浸水の有無、無線タグ1のIDの情報等を作業者が確認するための画像を表示する表示部23、無線タグ1の送信回路15によって送信された無線信号を受信するためのアンテナ24及び受信部25から構成されている。この制御部22は、図2(d)を参照して一例を説明した振動発生部32を制御する回路でもあり、また受信部25としては汎用のRFIDリーダなどを用いることができる。
【0025】
なお、弾性振動とは、弦、膜、棒、板、ばねなどの弾性体のひずみに伴う応力が復元力となっておこる振動であり、地震波、音波などが弾性振動の一例である。本実施の形態では、振動発生部32で所定パターンの弾性振動、具体的には予め設定された複数段階に周波数が変化する振動パターンを発生させ、無線タグ1の振動センサ13がこれを検知したときに、浸水センサ12の出力に応じて、送信回路15が起動されるという制御が行われる。なお、以下では弾性振動を単に振動とも表す。
【0026】
すなわち、本実施の形態の無線タグ1は、振動パターンに対応して信号を送信するアクティブ無線タグであって、振動センサ13を搭載して、必要に応じて特定の振動パターンに対応してIDなどを表す所定の信号を送信するように動作する。従って、この無線タグ1へ与える振動を発生させたり無線信号を受けたりする制御装置2も重要になる。
【0027】
なお、制御装置2及び振動発生部32としては、図2(d)を参照して説明したように測定作業車3に搭載する構造を有するものであってもよいし、あるいは測定作業車3に搭載せず、例えば蓋が閉じた状況のままでのマンホール4上、つまり地上(道路6)から直に振動発生部32に設けられた振動体を接地させ、地面やマンホール4の蓋に振動を与え、測定を行う形態で使用できるような構造を有するものとすることもできる。
【0028】
図3の上側に示した制御装置2では、まず指示設定操作部21が振動センサ付きの無線タグ1へどのような振動を与えるのか作業者が操作して入力された指示設定を表示部23と制御部22へ伝える。制御部22は指示設定を受け、この指示設定に基づき予め決められている振動パターンの情報を振動発生部32へ送る。この制御部22における処理は図3の左上側に示すように3段階となる。つまり、最初の段階(ステップST11)は指示設定操作部21から指示設定を受取る。この指示設定には無線タグ1へ与える振動パターンを決めるための情報が含まれている。次の段階(ステップST12)で、この指示設定に従って制御部22内のDB(データベース;情報記憶部)に記憶している全ての振動パターンを発生させるために必要な情報から必要な情報が選択して取得される。最後の段階(ステップST13)では制御部22がここで選択した振動パターンの発生情報を振動発生部32へ伝達する。そして振動発生部32では、その制御部22から送られた振動パターンの情報を受けて、その振動パターンの振動を実際に発生する。この振動発生部32で発生させた振動が振動センサ付き無線タグ1へ伝わる。
【0029】
一方、制御装置2のアンテナ24は、振動センサ付き無線タグ1からの無線信号を受け、受信部25へ伝える。受信部25は、アンテナ24から伝えられた無線信号の受信処理をして、受信処理した結果を表示部23へ送る。表示部23は、受信部25から送られてきた受信結果と、最初に述べていた指示設定操作部21から伝えられている指示設定をそれぞれ表示して、作業者へ伝える。
【0030】
他方で、図3の下側に示す振動センサ付き無線タグ1は、まずは最初に、振動センサ13で、制御装置2の制御によって振動発生部32から送られてくる振動を検知して振動パターン判定回路14へ伝える。振動パターン判定回路14では、その振動センサ13から伝えられた振動の情報と浸水センサ12からの浸水の有無の情報を受け、この振動のパターンが無線タグ1を動作させるものと一致するか否かを判定する。ここで、振動パターン判定回路14では、この振動のパターンと無線タグ1の状況に対応する予め定めた所定のパターンとが一致しないと他の動作を行わないが、振動パターンが所定のパターンと一致するものであれば電池11から制御回路17と送信回路15へ電力を供給させる(図3の右下で、破線の矢印で示した箇所の動作)と共に、制御回路17へ判定結果を伝える。このような振動パターン判定回路14での処理においては、図3の左下に示す3段階がある。
【0031】
第1段階(ステップST21)では、制御装置2の制御によって振動発生部32から無線タグ1へ与えられた振動の情報を振動センサ13から振動パターン判定回路14が受取り、また浸水センサ12からマンホール4内に設置された無線タグ1が浸水によって水を検知したか否かを示す浸水の有無についての検知出力も受取る。第2段階(ステップST22)では、この振動パターン判定回路14が受取った振動の情報を、浸水センサ12からの検知出力に応じて、振動パターン判定回路14内のDB(所定のメモリ)に記憶されているパターンの情報と比較する。
【0032】
この振動パターン判定回路14による比較処理としては、例えば次の2つの例が考えられる。一つ目として、振動パターン判定回路14内のDBに所定の1つの振動パターンを記憶しておき、振動センサ13で検知された振動のパターンがこの記憶されている振動パターンと一致し、かつ浸水センサ12の検知結果が浸水有り(または無し)となった場合に、比較結果が一致したとすることが考えられる。また二つ目として、振動パターン判定回路14内のDBに所定の2つの振動パターンを記憶しておき、振動センサ13で検知された振動のパターンがこの記憶されている1つの振動パターンと一致し、かつ浸水センサ12の検知結果が浸水有りとなった場合に比較結果が一致したとすることに加え、振動センサ13で検知された振動のパターンが他の1つの振動パターンと一致し、かつ浸水センサ12の検知結果が浸水無しとなった場合に比較結果が一致したとする、2種類の比較一致条件を設定することが考えられる。なお、比較条件の設定の仕方はこれらのものに限られず、他の具体例については、図4、図5等を参照して後述する。
【0033】
いずれにしろ、ステップST22では、所定の判定条件に基づいて、振動パターン判定回路14が、浸水センサ12の検知出力に応じて、振動センサ13によって検知された振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する処理が行われる。
【0034】
最後の第3段階(ステップST23)は、振動パターンを比較確認した結果、つまり一致した振動パターンに対して、無線タグ1の状況(具体的には、これも後述する図4に示すマンホール4に無線タグ1が設置した状況)が合致したときに、その旨を制御回路17へ伝達する。制御回路17では、振動パターン判定回路14からの総合的な判定の結果を受けて、送信回路15へ無線信号を送信するよう指示を出す。この指示で制御回路17はメモリ16に格納されたIDを送信する無線信号に用いる。
【0035】
そして送信回路15では、制御回路17からの指示を受け送信する信号を発生させてアンテナ18へ送る。アンテナ18は送信回路15から受けた無線信号を制御装置2へ送信する。なお、電池11は、振動パターン判定回路14(あるいはさらに浸水センサ12及び振動センサ13)へ電力を供給する役目を担うが、先ほど述べたように、この振動パターン判定回路14での判定によって、比較結果が一致すると判定された時に、図3の右下において破線の矢印で示すように制御回路17と送信回路15へも電力を供給するよう動作する。
【0036】
次に、図4及び図5を参照して、マンホール4内に無線タグ1が設置される状況及び制御装置2から無線タグ1に与えられる振動パターンの具体例について説明する。図5に示した振動パターンに対して送信をする無線タグ1が、この実施形態が対象とするマンホール4内でどのような状況で設置されているかをこの図4では描いている。後の図5で挙げる振動パターンによって無線タグ1が送信する6つの具体的な状況、(a)浸水がない(通常時)、(b)浸水時、(c)どんなときも、(d)高い位置、(e)低い位置、(f)どんな位置でも、に対応する設置状況を描いている。
【0037】
まず大別して、図4の上半分は、マンホール4内での浸水の有無/浸水を関知しないケースを扱っている。1番目の図4の左上は、(a)浸水がない(通常時)状況を示している。この状況では、浸水がないマンホール4内で無線タグ1が設置されている。2番目に挙げる図4の中央上は、(b)浸水時の状況を示す。この状況では、マンホール4内が浸水していて設置された無線タグ1がその浸水した水中にある。3番目の図4の右上には、(c)どんなときでも、という状況を示している。この状況では、浸水があるマンホール4内に2つの無線タグ1a、1b(無線タグ1と同一構成の無線タグ)が設置されており、片方の無線タグ1bについては浸水の水位より高い位置に、他方の無線タグ1aは浸水の水面より下の位置で設置されていて浸水した状態である。
【0038】
そして先ほどと同じく大別した残りの図4の下半分では、マンホール4内に設置した無線タグ1に関する位置についてのそれぞれのケースを扱う。続き番号順の4番目として図4の左下は、(d)高い位置の状況を示している。つまり、マンホール4内で無線タグ1が高い位置、マンホール4の出入口付近に設置されている。そして5番目となる図4の中央下は、(e)低い位置の状況を示している。この状況では、マンホール4内で無線タグ1が低い位置、マンホール4の底に近い場所に設置されている。最後の6番目で図4の右下は、(f)どんな位置でも、という状況を示している。この状況は、マンホール4内で2つ無線タグ1a、1bが設置されており、片方の無線タグ1bは高い位置、他方の無線タグ1aは低い位置となっている。
【0039】
これら6つの状況の中で、特徴的な点としては、大別された2つの(マンホール4の浸水と無線タグ1の位置に関わる)ケースについて、それぞれのケースを関知しないという状況、つまり(c)どんなときでも、および(f)どんな位置でも、があることである。
【0040】
また、これら2つのケースに分かれている状況を組み合わせることもできる。例えば、マンホール4内に浸水がなくて低い位置に無線タグ1を設置する状況としては(a)と(e)の組み合わせになるし、また例えば、マンホール4内が浸水していて無線タグ1を設置する位置を関知しない状況としては(b)と(f)の組み合わせになる。
【0041】
図5には、無線タグ1に与える複数種類の振動パターンを例示する。先に説明したように無線タグ1の状況に合う振動パターンを与えることでその無線タグ1はIDなどの所定の信号を送信するので、それらの無線タグ1の状況に応じた振動パターンを図5では挙げている。
【0042】
具体的にこの図5で挙げた6つの振動パターンは、(a)浸水がない(通常時)、(b)浸水時、(c)どんなときも、(d)高い位置、(e)低い位置、(f)どんな位置でも、とそれぞれの状況で無線タグ1から信号を送信させる場合の例である。それぞれの場合の振動パターンのグラフ表示は横軸が時間方向を示し、縦軸が周波数と振動を示す。
【0043】
図5の左上に(a)浸水がない(通常時の)場合での振動パターンSP−1を示す。振動は時間順にvb、va、vc、vdと変化している。ここで、振動数ではva<vb<vc<vdという関係があり、この図5では簡単な関係として、vb=2×va、vc=3×va、vd=4×vaとした。例えば、vaを0.2secの時間で4回の振動と想定するなら、同じ時間でvbは8回、vcは12回、vdは16回である。また周波数では時間順にfb、fa、fc、fdであり、ここでもfa<fb<fb<fdの関係がある。また同じ図5ではfb=2×fa、fc=3×fa、fd=4×faである。上述した「vaが0.2secの時間で4回の振動との想定」を当てはめてみると、fa=20[Hz](=4÷0.2[sec])、fb=40[Hz](=2×fa)、fc=60[Hz](=3×fa)、fd=80[Hz](=4×fa)である。
【0044】
次に、図5の中央上に示した(b)浸水時の振動パターンSP−2は、時間順に振動がvb、va、vd、vcで、周波数がfb、fa、fd、fcである。ここでの振動数や周波数の相互の関係や各値は先の通常時の振動パターンのそれらと同じである。その次の3番目の振動パターンSP−3は、図5の右上に示した(c)どんなときでも、を対象にした振動パターンである。この振動パターンについては、時間順に振動がvb、vd、va、vcで、周波数がfb、fd、fa、fcである。4番目に当たる図5の左下側に示す(d)高い位置に無線タグが設置されたときに与える振動パターンSP−4は、時間順に振動がvb、vc、vd、vaであり、周波数がfb、fc、fd、faである。5番目が図5の中央下に示す(e)低い位置に無線タグが設置されたときに与える振動パターンSP−5で、時間順に振動がvb、vc、va、vdで、周波数がfb、fc、fa、fdである。最後の振動パターンが、図5の右下に示した(f)低い位置に無線タグを設置したときに与える振動パターンSP−6で、時間順に振動がvb、vd、vc、vaで、周波数がfb、fd、fc、faである。
【0045】
改めて図5に示したそれぞれの状況に応じた場合での振動パターンを確認すると、何れも最初に振動vb、周波数fbが設定されていて、振動パターンの先頭を意味している。その次の順番に、振動がvaで周波数がfaなら浸水の有無を指している。一方、次の順番に振動がvcで周波数がfcなら無線タグの位置を指している。また、次の順番に振動がvdで周波数がfdなら浸水の有無ないし無線タグの位置には無関係な状況を指している。このように各振動や周波数にカテゴリを示す意味を持たせ系統的振動パターンが決められた規則に基づいて作られていると、運用時の間違いを防ぐことができる。また、この例では全ての振動パターンを4つの振動周波数の組み合わせとして、各振動パターンで等しい長さ(等しい時間)として同じ振動・周波数が2回以上は含まれないようにしている。これらによってより確実で明確かつ簡単にどの振動パターンかを判断できるようにしている。
【0046】
また、図6には、図3の制御装置2の受信部25で受信される信号と受信部25が出力する受信結果の一例を示す。まず、図6(a)は、比較のため、本発明の背景技術である汎用の無線タグから送信された信号を受信機(リーダ)が受取った場合の受信結果の一例を示している。この図6(a)での無線信号a−1が、無線タグから送信される信号である。この信号には時刻t−aで開始されたプリアンブル(Preamble)、ID、EOF(End of Frame)が含まれている。プリアンブルは無線タグから送信される信号の開始位置を示し、IDは無線タグを識別する信号で今回のIDは“ID−a”であり、最後のEOFは無線タグが送信した信号の終了を示し前方の信号(ID)に誤りがないかを確認する情報も含まれている。この無線信号a−1を受信機(リーダ)が受信すると、受信機(リーダ)の出力R1は例えば“t−a ID−a、…”となる。
【0047】
一方、図6(b)は本実施形態においてマンホール4内に設置した無線タグ1から送信された信号を受信部25(受信機に対応)が受取った受信結果を示す。この図6(b)での無線信号b−1は、無線タグ1から送信される信号である。この信号はプリアンブル、ID、EOFがあり、プリアンブル、ID、EOFはそれぞれ図6(a)での無線信号a−1と同じ意味をもつ情報である。なおマンホール4内には複数の無線タグ1が設置されることがある。従って浸水の状況など場合によって、複数の無線タグ1の情報が受信部25から送られることもある。この図6(b)の例では1つ目の無線タグ1から送信された無線信号b−1が開始時刻t−b1でIDが“ID−b1”であり、別の無線タグ1からの無線信号b−2が開始時刻t−b2でIDが“ID−b2”である。これら無線信号b−1、b−2を受信部25が受信すると、受信部25の出力251は例えば“t−b1 ID−b1、t−b2、ID−b2、…”となる。
【0048】
以上のように比較して分かるように、図6(a)に示す通常の無線タグから受信機(ないしはリーダ)が受取る情報と、図6(b)の今回の受信結果は変わりがない。
【0049】
次に、図1、図3及び図5を参照して、図1及び図3に示す構成の動作例について説明する。道路6を走行する測定作業車3がマンホール4に近づくと、走行あるいは徐行する状態で測定作業車3に搭載した制御装置2の制御によって振動発生部32で発生された振動がタイヤ31へ伝わる。さらに振動はタイヤ31から地面(道路6)、そしてマンホール4へ伝わり、無線タグ1へも同じパターンの振動が到達する。この振動を無線タグ1に搭載した振動センサ13が検知すると、この無線タグ1の浸水検知センサ12にて検知された情報を基に、予め記憶した振動パターンと検知した振動パターンを比較するなどして、受信した振動パターンが予め当該無線タグ1に対して設定されている条件を満たすか否かが判定される。判定の結果、条件が満たされ、信号の送信を要求される無線タグ1と決まると、制御回路17と送信回路15が動作し、無線信号を送信する。
【0050】
この場合、無線タグ1に搭載された振動センサ13によって検知された振動パターンが、無線タグ1毎に複数の異なる種類から予め選択的に決められた振動パターンのいずれかに一致するか否かを比較するように、振動パターン判定回路14のDBの内容などを設定しておくことができる。すなわち、振動パターンと浸水の有無の組み合わせによる複数の判定条件のうちのいずれかの判定条件を選択的に各無線タグ1に設定しておき、当該無線タグ1に対して設定されている特定の種類の振動パターンが検知され、またそれとの浸水の有無との組み合わせによる特定の判定条件が満たされたときに、無線タグ1が動作するように設定しておくことができる。この場合には例えば、複数の無線タグ1における各振動パターン判定回路14として異なる種類の所定パターンとの一致を判定するものを混在させておき、複数の無線タグ1を用いて、例えば1つのマンホール4に対して、高さの異なる2箇所以上の複数の位置に設定条件の種類別に無線タグ1を設置することで、浸水状況や設置位置などによって無線タグ1の動作が複数種類となるようにシステムを構成することができる。
【0051】
このように、予め決めた振動パターンや判定条件を幾つか準備しておくと、次のようにより具体的な情報も確認することができる。すなわち、例えば振動パターンSP−1(図5(a)参照)の場合に、無線タグ1に搭載した浸水センサ12によって浸水を検知していない(浸水がない通常時の)ときに無線タグ1が動作し送信するように設定することができる。このように設定された無線タグ1を用いた場合、例えば図4(a)〜(c)の設置状況では、振動パターンSP−1が与えられたとき、図4(a)の無線タグ1と図4(c)の無線タグ1bにおいて、振動センサ13で振動パターンSP−1が検知されるとともに、浸水センサ12で浸水無しが検知されて、判定条件が満たされるので、それらの無線タグ1及び1bから無線信号が送信されることになる。
【0052】
また別の振動パターンSP−2(図5(b)参照)のときには、浸水が検知された(浸水時の)場合に無線タグ1が送信するようにすると、図4(a)〜(c)の設置状況では、図4(b)の無線タグ1と図4(c)の無線タグ1aから無線信号が送信されることになる。つまりこの場合は、マンホール内が浸水していると判断できる。
【0053】
さらに別の振動パターンSP−3(図5(c)参照)では、浸水の有無に係らず、無線タグ1から送信されるようにすることもできる。この場合、図4(a)〜(c)の設置状況では、すべての無線タグ1または1aもしくは1bから無線信号が送信されることになる。
【0054】
また或いは、同じマンホール4内に複数の無線タグ1を設置している状況を想定する。複数の無線タグ1を準備する理由は、マンホール4内の浸水した程度を把握するために、設置する位置、主に深さ(高さ)を異なるようにすることである。
【0055】
例えば、振動パターンSP−4(図5(d)参照)に応答して信号を送信するように設定された無線タグ1と、振動パターンSP−5(図5(e)参照)に応答して信号を送信するように設定された無線タグ1と、さらに振動パターンSP−6(図5(f)参照)に応答して信号を送信するように設定された無線タグ1との3種類の設定条件が異なる無線タグ1を用意する。無線タグ1の設定条件の違いは、実際に所定の振動パターンを与えたり、浸水させてみたりすることで把握することは可能であるが、文字、数字、記号、形状、色などで、設定条件の違いを外見で区別できるようにしておくことが望ましい。
【0056】
そして、振動パターンSP−4に応答する無線タグ1を図4(d)に示すようにマンホール4内の高い位置に設置し、振動パターンSP−5に応答する無線タグ1を図4(e)に示すようにマンホール4内の低い位置に設置し、振動パターンSP−6に応答する無線タグ1(無線タグ1a、1b)を図4(f)に示すようにマンホール4内の高い位置と低い位置など位置に関わらずに設置しておく。
【0057】
このように無線タグ1を設置することで、高い位置に設置した無線タグ1から信号を送信させたい場合には振動パターンSP−4を与え、低い位置に設置した無線タグ1から信号を送信させたい場合には振動パターンSP−5を与え、高さに関わらず全ての無線タグ1から信号を送信させたい場合には振動パターンSP−6を与えるようにする。
【0058】
また、このように設置位置の選択と、浸水センサ12の検知出力の判定条件の違いとを組み合わせることで、浸水状況の把握や、設置位置の確認などを、詳細に行うことが可能となる。
【0059】
複数の無線タグを用いない場合には現実的には無線タグの設置した高さ(マンホール内の深さ)を無線で判断することは難しい。しかしながら、複数の無線タグ1を用い、送信を行わせる振動パターンを高さによって異ならせることで、無線タグ1の位置を容易に把握できるようになる。なお、各無線タグ1の設置位置とIDとの対応関係を別途データベース化しておき、そのデータベースを参照することで、無線信号の受信の際に、設置位置の再確認を自動的に行うようにすることもできる。また、例えば、無線タグ1のIDの値が奇数なら高い位置にその無線タグ1を設置して、IDの値が偶数なら低い位置にこの無線タグ1を設置するというようにしてIDに対応した分類などを行うようにしても構わない。この場合、データベースを用意しなくとも、作業者は表示部23に表示されたIDの情報を確認することで、設置位置の確認を容易に行うことができる。
【0060】
またさらに、上述した2つの要件(浸水の有無、設置する位置の高さ)を組み合わせて、低い位置に設置されている無線タグ1が、浸水を検知したときに送信をさせる振動パターンを“SP−2”及び“SP−5”というように連続させた組み合わせの振動パターンとすることもできる。同様に、組み合わせの振動パターン“SP−1”及び“SP−4”は、高い位置に設置された無線タグ1を浸水していない通常時に送信させるというようにすることもできる。このように、より具体的な条件や状況を把握する目的で複数の振動パターンを使用して無線タグ1に送信をさせることも可能となる。
【0061】
次に、図7及び図8を参照して、図1〜図6を参照して説明した実施形態の変形例について説明する。なお、各図において、同一の構成には同一の符号を用いている。
【0062】
図7には、振動をエネルギー変換・蓄積し活用する無線タグを示す。この図7では2つの無線タグを挙げている。図7の上側には、(a)振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−1である。振動エネルギーを変換・蓄積し活用する素子が振動センサを兼ねて共用されている。図7の下側、(b)振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−2は、振動エネルギーを変換・蓄積し活用する素子と振動センサが分離されて別々の役割を担っている。
【0063】
最初に、(a)振動センサ電力変換共用型の無線タグ1−1について、構成(図7(a))と動作(図8(a))を説明する。この無線タグ1−1は、振動センサ(圧電素子)13−1、振動パターン判定回路14、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ(あるいは電気2重層コンデンサとも呼ばれる)11−1、制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18にて構成される。振動センサ(圧電素子)13−1は、2つの役目を兼ねている。一方は、この無線タグ1−1に与えられた振動(特に予め決められた振動パターン)を検知して振動パターン判定回路14へ伝える。他方は、同じくこの無線タグ1−1に与えられた振動(特に予め決められていない振動パターン)を電力に変換して電界2重層キャパシタ11−1へ蓄積する。この無線タグ1−1では、各部に電力を供給する電源(図3の電池11に対応するもの)が、マンホール4外から与えられた振動を電力に変換する手段としての振動センサ(圧電素子)13−1と、その変換された電力を蓄電する手段としての電界2重層キャパシタ11−1とから構成されている。
【0064】
実際に圧電素子を用いて振動で発電する例として、首都高速道路の五色桜大橋およびJR東京駅の自動改札で実証している例がある。高速道路の橋を昼間通過する自動車の『振動』で発電、バッテリーに蓄電し夜間照明に活用する。また、通勤客が通過する駅の自動改札の床に圧電素子を内蔵するゴムマット設置し、電車に乗降する客が歩行するときの床面の振動により電力を発生させる。発生した電力で自動改札や電光表示板など駅設備の一部をまかなっている(参照:「エネルギー源は「振動」というエコ発電 - ECO JAPAN〈エコジャパン〉- nikkei BPnet 環境ポータル」、URL:http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/column/funase/080627_shindou、2008年6月27日)。
【0065】
振動パターン判定回路14は、振動センサ(圧電素子)13−1から伝えられた振動の情報について、予め決められた振動パターンか否かを判定し、かつこの浸水センサ12の検知出力に応じて無線タグ1−1を動作させる振動パターンと一致しているかを判断し、その判断結果を制御回路17へ伝える。同時に、振動パターン判定回路14は、無線タグ1−1を動作させる振動パターンであれば、電界2重層キャパシタ11−1に蓄積された電力を制御回路17と送信回路15へ供給するようにする(図7(a)内で破線の矢印で示す箇所)。浸水センサ12は、無線タグ1−1が浸水しているかを検知して振動パターン判定回路14へ知らせる。振動パターン判定回路14は、浸水の有無と振動パターンが一致するかに基づいて状況判断を行う。電界2重層キャパシタ11−1は、先に振動センサ(圧電素子)13−1によって振動から発電した電力を蓄積し、この無線タグ1−1を駆動する際の電力に用いる。
【0066】
ここで、電界2重層キャパシタ11−1は、普通の電池が化学反応を使うのではなく、物理的に電荷を蓄積するという動作原理である。この動作原理から、充放電のサイクル寿命が長く急速な充放電に対応できる特徴がある(“電気二重層キャパシタについて”および“電気二重層キャパシタの原理”アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ(株)ホームページ参照)。従って、長い期間の繰り返し使用に耐えて、利用時に瞬間的な短時間(数十[msec])の送信を行う無線タグの電源として電界2重層キャパシタが適していると考えられる。
【0067】
この無線タグ1−1を構成し残された制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18の4つは、図3を参照して説明した上記の実施形態の無線タグ1で説明したものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0068】
この共用型の無線タグ1−1の動作は、与えられる振動によって電界2重層キャパシタ11−1の充電、振動パターン判定、無線送信に分かれる(図8(a))。予め決められた振動パターンでないランダムな振動が与えられるときは、この振動を振動センサ(圧電素子)13−1が電力に変換する。この変換した電力は電界2重層キャパシタ11−1へ渡され充電される(図8(a)で“キャパシタ充電(圧電素子の発電)”の箇所)。振動パターン判定の期間では、予め決められた振動パターンが無線タグ1−1へ与えられる。この振動パターンを振動センサ(圧電素子)13−1が検知し、この情報が振動パターン判定回路14へ伝わる。振動パターン判定回路14でこの振動パターンと無線タグ1−1の状況(浸水の有無や無線タグの設置位置に応じた判定条件)と一致するとの判定がされると、次に送信回路15が起動(して無線送信)するよう制御回路17などへ指示される(図8(a)では“振動パターンSP−1”の振動が与えられた“振動パターン判定”の箇所、この時は電界2重層キャパシタ11−1に充電された電力が徐々に消費される)。続いて無線送信の区間では、先の振動パターン判定回路14での指示が制御回路17へと伝わり、送信回路15とアンテナ18を介してこの無線タグ1−1から送信がなされる。この無線送信では電界2重層キャパシタ11−1に充電された電力が多量に使用される。
【0069】
次に、図7(b)の振動センサ電力変換分離型の無線タグ1−2の構成と動作(図8(b))を述べる。この無線タグ1−2は、振動センサ13−2、圧電素子13−3、振動パターン判定回路14、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18にて構成される。この分離型の無線タグ1−2の構成が、図7(a)共用型の無線タグ1−1と異なる点は、振動センサ13−2、圧電素子13−3が分離しているので、振動パターン判定回路14でのパターン照合と無線タグ状況との一致判定および電界2重層キャパシタ11−1の電力蓄積が同時平行で動作可能という点である。これ以外の制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15、アンテナ18については、先に示した図7(a)の共用型の無線タグ1−1および図3の振動センサ付き無線タグ1と同じため、説明を省略する。
【0070】
そこで振動センサ13−2、圧電素子13−3、振動パターン判定回路14、電界2重層キャパシタ11−1について順に説明する。この分離型の無線タグ1−2に搭載される振動センサ13−2は、発電機能は不要で、振動を検知する機能が備わっていればよい。揺れに反応するメカニカルなスイッチ、円筒の中に挿入した玉が振動で円筒の両端に接するタイプや振動の周波数に合わせ振り子を複数装備するものでも構わない。これらの何れかの振動センサ13−2を使用して無線タグ1−2に与えられた振動が検知され、この検知された振動情報は振動パターン判定回路14へ伝えられる。振動パターン判定では、伝えられた振動情報に従い、予め決められた振動パターンと照合しどのような状況で動作させるパターンなのを確認する。さらに振動パターン判定において、その確認したパターンとこの無線タグ1−2の状況が一致するかが判定される。これら振動センサ13−2および振動パターン判定回路14の動作は、次に述べる振動による発電とその充電の動作と同時並行して実施できる。
【0071】
なお、本実施の形態の無線タグ1−2に対しても、図5に示すような振動パターンを用いることができる。この場合、全ての振動パターンにはこれらパターンの最初に決まった振動(vb、周波数fb)が用いられているという特徴がある。従って、必要に応じて振動パターン判定回路14の一部、つまりその決まった最初の振動を検知する機構のみを動作させることで、消費電力をより低く抑えられる。
【0072】
また、このような工夫をすることで通常(特定の振動パターンが与えられていない)時、振動パターン判定回路14で消費される電力をより低く抑えて、電界2重層キャパシタ11−1へ充電が可能なようにしている。
【0073】
さて、その振動による発電とその充電については、圧電素子13−3と電界2重層キャパシタ11−1にて別になされる。圧電素子13−3は、先に図7(a)の共用型の無線タグ1−1の箇所で、その構成となる振動センサ(圧電素子)13−1として説明したものと同じである。この圧電素子13−3は、分離型の無線タグ1−2内に前述した振動センサ13−2とは別に搭載されて、電界2重層キャパシタ11−1へのみ接続されている。このため、この分離型の無線タグ1−2へ与えられる振動が予め決められたパターンに関わらず、どのような振動も発電し、電界2重層キャパシタ11−1を充電できる(図8(b)で“振動パターン判定”の区間参照)。無線送信については、分離型の無綿タグ1−2も、図8(a)の共用型の無線タグ1−1と同じである。
【0074】
以上のように、図7に示す無線タグ1−1、1−2は、振動によって発電して、電界2重層キャパシタ11−1に充電した電力を用いて送信するため、パッシブ無線タグの電力供給やアクティブ無線タグの電池寿命を気にせずに利用することができる。
【0075】
次に、図9〜図11を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。図9は、隣接する2つのマンホール4a、4bにおいて、隣のマンホール4aに設置された無線タグ1aの信号送信からマンホール4bに設置された無線タグ1bの発信タイミング制御についてのイメージを示す説明図である。
【0076】
一般に、地中に埋設されている電力または通信ケーブル用のマンホール4(図9ではマンホール4a、4b)においては、その電力や通信ケーブルを通す管路5によってマンホール間が繋がっている。また、道路6に沿って通常はマンホール4および管路5を作る工事が行われるので、結果的にあるマンホール4aと管路5で繋がる隣のマンホール4bの上は道路6である。今回の発明ではマンホール4内に設置する無線タグ1(図9では無線タグ1a、1b)が送信する無線信号を受信する制御装置2は測定作業車3に搭載される。当然、この測定作業車3は、道路6に沿って走行する。従ってあるマンホール4a内に設置した無線タグ1aが送信した無線信号を測定作業車3に搭載した制御装置2で受信できたタイミングについて、隣のマンホール4bに設置した無線タグ1bにも知らせられるとすれば、無駄な送信動作をせずに、より的確なタイミングで送信が可能になると考えられる。
【0077】
マンホール4が隣接する間隔(通常は50m〜250m)が近い場合や車道の反対車線側に位置するマンホール4には、不要にもかかわらず、走行している測定作業車3からの振動パターンが伝わる可能性がある。道路6を測定作業車3が走行する方向、ルートによって振動パターンを受けた無線タグ1から送信される信号を再び同じ測定作業車3に搭載された受信部25で受けられないことをここでは無駄な送信動作としている。つまり、測定作業車3の走行方向やルートに従うように次のマンホール4内の無線タグ1のみが送信するなら効果的になると考えることができる。さらに振動パターンが伝わらなくても測定作業車3が走行する方向やルートに当たるマンホール4内の無線タグ1が送信するようにすることも考えられる。
【0078】
このような考えを基に、この実施の形態では、図9に示すように隣のマンホール4a内の無線タグ1aから送信された無線信号を次のマンホール4bに設置した無線タグ1bが受け、無線タグ1bが送信動作をするタイミングを決めるようにしている。図9の左下側に示すマンホール4a内の無線タグ1aが、図1を参照し説明された振動を検知し測定作業車3が接近したタイミングで無線信号を送信したとする。この無線信号を次のマンホール4b内に設置された無線タグ1bが受信し、予め無線タグ1b内に記録されているマンホール間の距離での測定作業車3が走行する時間(マンホール4aとマンホール4bの間の距離を測定作業車3の走行速度で割ったおよその所要時間)が経過した後に、マンホール4b内に設置された無線タグ1bから送信するようにする。
【0079】
ここで、次のマンホール4bは、先のマンホール4aと管路5で繋がっている。このためマンホール4a内の無線タグ1aから送信された無線信号が、この管路5を通じマンホール4b内へと伝わることもある。すなわち、無線タグ1aから送信された無線信号がマンホール4a外の地上へ一旦出て、隣のマンホール4b内へ入る経路よりも、マンホール4a、4b間を繋ぐ管路5における無線伝搬の導波管効果で、より確実に伝わることが考えられる。
【0080】
先に述べた隣のマンホール内にある無線タグの送信から予め決められた時間後に送信する動作を無線タグが行うためには、図3に示した振動センサ付き無線タグ1の内部構造において、無線の受信機能(受信回路)が必須となる。この受信回路にて受信した無線信号の情報は、振動パターン判定回路14へ伝えられて、振動センサ13からの振動の情報と浸水センサ12からの浸水有無の情報と合わせて、無線タグ1が動作して無線信号を送信するか判断する情報になる。なお、隣のマンホール4として管路5で繋がるマンホール4の数は通常は2つ以上ある。従って、地上で道路6の車線の走行方向から通常は測定作業車3が逆走となる隣のマンホール4内の無線タグ1からの送信は排除されなければならない。このように道路6を逆走する方向となる無線タグ1からの送信を排除するため、その無線タグ1の識別子(ID)による区別が有効である。従って予め道路6上を測定作業車3が車線走行する方向で隣のマンホールとなる無線タグ1のIDのみの無線信号に対して次の送信タイミングとするようにすることが望ましい。
【0081】
ここで、図10に隣のマンホールの無線タグ送信から所定のタイミングで発信する本実施の形態の無線タグの構造を示す。ここでは、図7に示した振動をエネルギー変換・蓄積し活用する無線タグ1−1、1−2と同じように、図10(a)振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−3と、図10(b)振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−4とを示した。
【0082】
まず、図10(a)の振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−3では次に挙げる構成を持つ。振動センサ(圧電素子)13−1、受信情報・振動パターン判定回路14−1、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、受信回路101、送信回路15、制御回路17−1、IDを格納するメモリ16、アンテナ18、サーキュレータ102である。この内の振動センサ(圧電素子)13−1、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1とIDを格納するメモリ16は、先の図7に示した振動エネルギー変換・蓄積し活用するもので図7(a)の振動センサ電力変換素子共用型の無線タグ1−1と同じである。
【0083】
受信情報・振動パターン判定回路14−1は、振動センサ13−1から検知された振動の情報が送られ、浸水センサ12から浸水の情報が送られ、受信回路101から受信された情報が送られてくる。これらの情報に対して予め設定された条件に合致するかを判定する。この条件とは、例えば、振動パターンは浸水がある場合に応答するとか、または隣のマンホールに設置された無線タグ1からの送信を受信した場合に応答するとかという条件である。このような条件に合う状況(浸水または隣のマンホール内に設置された無線タグの送信がある場合)を判断すると、受信情報・振動パターン判定回路14−1は電界2重層キャパシタ11−1から制御回路17−1と送信回路15へ電力を供給させる(図10(a)で電界2重層キャパシタ11−1から制御回路17−1および送信回路15の破線の矢印で示した箇所)と共に制御回路17−1へ判断結果を伝える。すなわち、本実施の形態の無線タグ1−3は、他の無線タグ1から送信された所定の信号を受信する受信手段としての受信回路101を備え、送信手段としての送信回路15が受信回路101によって所定の信号が受信された時刻から所定時間経過後にIDなどを表す所定の信号を送信するものとなっている。ここで、無線タグ1−3が受信対象とするものは受信手段を備える無線タグ1−3あるいはそれと同様の無線タグであってもよいし、受信手段を備えない図3の無線タグ1や図7の無線タグ1−1、1−2等の無線タグであってもよい。また、例えば複数のマンホールが接近して配置されている場合などでは、隣接するものに限らず、より離れたマンホールに設置されている無線タグを受信対象とすることもできる。また、同一のマンホールに複数の無線タグを設置する場合には、それらのいずれかを受信対象とする無線タグに設定することなどもできる。
【0084】
なお、隣のマンホール内に設置された無線タグ1からの送信の判断はその無線タグ1のIDが予め設定されているものかということで判断される。受信回路101は、上述したように別の無線タグ1からの送信信号を受信する処理を行うために設けられる。受信信号はアンテナ18からサーキュレータ102を介して受信回路101へ伝えられ、この受信回路101で処理された受信結果は上記の受信情報・振動パターン判定回路14−1および制御回路17−1へと伝える。またこの受信回路101は常に電界2重層キャパシタ11−1から電力を供給されて、受信可能な状態にある。
【0085】
一方、送信回路15は、受信情報・振動パターン判定回路14−1の判断結果に応じて必要な時にのみ電界2重層キャパシタ11−1から電力を供給される。そして制御回路17−1からの指示によって送信回路15は送信信号を生成し、この送信信号はサーキュレータ102を介してアンテナ18から送信される。制御回路17−1は、送信回路15と同様に、受信情報・振動パターン判定回路14−1の判断結果に応じて必要な時にのみ電界2重層キャパシタ11−1から電力を供給されて動作する。この制御回路17−1は、振動センサ13−1と浸水センサ12の2つの情報で動作した図7(a)に示した無線タグ1−1の制御回路17と同じ動作に加えて、受信回路101からの(隣のマンホールに設置された無線タグ1の送信を受信した)情報の場合は、測定作業車3が隣のマンホール4から自身のマンホール4まで走行するのに要する時間後に自らは送信するようタイミングを遅らせることも行う。アンテナ18は、図7(a)のアンテナ18と同様に無線タグ1−3の送信信号を送信することに加え、他の無線タグ1の送信信号を受信することにも行う。このアンテナ18の送信受信の各信号はサーキュレータ102により送信回路15からの送信信号と受信回路101への受信信号に方向を区別され取り扱われる。
【0086】
他方、図10(b)の振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−4には、次に挙げる構成を持つ。振動センサ13−2、圧電素子13−3、受信情報・振動パターン判定回路14−1、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、受信回路101、送信回路15、IDを格納するメモリ16、制御回路17−1、アンテナ18、サーキュレータ102である。これらの構成の中で、振動センサ13−2、圧電素子13−3、浸水センサ12、電界2重層キャパシタ11−1、IDを格納するメモリ16は先の図7(b)に示した振動エネルギー変換・蓄積し活用するもので振動センサ電力変換素子分離型の無線タグ1−2と同じである。また図10(b)の残りの構成である、受信情報・振動パターン判定回路14−1、受信回路101、送信回路15、制御回路17−1、アンテナ18、サーキュレータ102は図10(a)の無線タグ1−3の構成と同じである。
【0087】
図11は、図10の無線タグ1−3または1−4において隣の送信に応じて無線タグが送信を実行する処理手順を示すフローチャートである。最初に、“振動受信動作中”で外部から与えられる振動を受信する動作中になっている(ステップST31)。この動作中に“振動受信があるか?”が確認される(ステップST32)。ここで、振動を受信すれば(ステップST32で“Yes”なら)、次の“振動パターンはタグ状況にあるか?”が判定される(ステップST33)。例えば浸水していない状況で応答を返すような振動パターンでマンホール4に設置された無線タグ1−3(あるいは1−4)の状況も浸水がなければ(ステップST33で“Yes”なら)、“無線タグ送信”がなされる(ステップST38)。
【0088】
他方、先の“振動受信があるか?”(ステップST32)と“振動パターンはタグ状況にあるか?”(ステップST33)で何れかが違うならば(ステップST32またはステップST33で“No”ならば)、続く“無線受信動作中”へ移る(ステップST34)。ここで順番に“受信無線信号ありか?”、“隣のマンホールに設置されたタグか?”が判断される(ステップST35、ステップST36)。受信無線信号がなければ(ステップST35で“No”ならば)、また、隣のマンホール4に設置された無線タグ1でなければ(ステップST36が“No”ならば)、最初の“振動受信動作中”(ステップST31)へ戻る。ここで、隣のマンホール4内に設置された無線タグ1かどうかの判断は無線信号のタグIDの確認によってなされる。もし受信無線信号があり、かつ隣のマンホール内に設置されたタグであれば(ステップST35とステップST36の何れも“Yes”ならば)、次の“一定時間経過”(ステップST37)の後に“無線タグ送信”をする(ステップST38)。この“一定時間経過”は測定作業車3が隣のマンホール4から走行して来るタイミングに合わせて予め設定しておくのである。
【0089】
この図11に示したフローチャートでは振動パターンの受信と隣のマンホール4内に設置された無線タグ1の送信を受信した場合はそれぞれの場合に無線タグ1−3あるいは1−4自身が送信する例である。しかし、別の例として隣のマンホール4内に設置された無線タグ1の送信を受信したことと、その後の一定時間内に振動パターンの受信があったことを合わせて、はじめて無線タグ自身が送信するようにしても良い。このようにした場合には、無駄な送信を極力少なくして無線タグの電力消費を削減することができる。
【0090】
次に、図12及び図13を参照して、さらに他の本発明の実施の形態について説明する。図12及び図13に示す実施形態では、弾性振動として特に音響(音波)に限定して関係する機能を用いている。なお、図12には、本実施形態を利用する場合の外観イメージPを示している。先の図1から図11まではマンホール4の蓋が閉じられたままのマンホール4内の無線タグ1へ送信を指示する手段として振動による方法を述べてきたが、この図12及び図13に示す実施形態においては特に音響を扱う機能と方法に限定したものであって、他の実施形態と比べてさらに振動伝達が確実かつ単純な例となっている。この実施形態では、マンホール4内に設置する機器は大別して2つの部分に別れている。1つはこれまでの例では無線タグ1本体に組み込まれていた浸水センサ12が、浸水検知センサ12−1として無線装置1−5本体から離れてケーブル12−2で繋がる構成になっている。
【0091】
浸水検知センサ12−1はそもそもマンホール4内への浸水を確認し易い位置、つまりマンホール4の底に近い(低い/深い)位置に設置されてその効果を発揮できる。他方の他の実施形態における振動センサ13やアンテナ18は、この実施形態では図12及び図13に示すように音響マイク103と音響スピーカ104に代わるが、マンホール4外部との通信をするために、マンホール4の出入口に近い(高い/浅い)位置にあることが望ましい。従って、図12に示す浸水検知センサ12−1がマンホール4内の無線装置1本体から分離されてケーブル12−2にて接続される。この形態は、ちょうどお風呂の給水において満水を報知する水位検知機と同じである。
【0092】
次にマンホール4内の送信装置1−5については、先の図3に示す振動センサ付き無線タグ1から異なる構成部分について説明をする。異なる構成部分としては3つある。この内の1つは先ほどから述べている浸水センサ12の部分が無線装置1−5本体から分離しケーブル12−2で繋がる浸水検知センサ12−1に代わったことである。2つ目は、振動センサ13に代わり音響マイク103が備わっている。これを用い、振動パターン(図5に示す6つのパターン)と同じような音響パターンを使用する。また、振動パターン判定回路14に代わる音響パターン判定回路14−2を備え、マンホール4内の無線装置1−5の送信回路15−1等を動作させるかを決定する。その際、音響パターン判定回路14−2によって、振動パターンに代えて、音響マイク103で検知された音響パターンに基づき、浸水検知センサ12−1での浸水検知の有無とこの浸水検知センサ12−1が設置された位置(高さ)に対応して、検知された音響パターンと所定の音響パターンとの比較判定を行う。ここでの音響パターンは、後述するマンホール4外に準備された制御装置2−1の音響スピーカ201から発生し、鉄製の蓋43を通じて マンホール4内へ伝わったものである。
【0093】
残る1つは、図3に示した振動センサ付き無線タグ1のアンテナ18(と送信回路15)に代わり、図12のマンホール4内の無線装置1−5に備わる音響スピーカ104である。この音響スピーカ104は、制御回路17−1からの音響信号を送信させる指示に従い、音響を発生させる。このマンホール4内で発生する音響の信号は鉄製の蓋43を通じてマンホール4外に準備された制御装置2−1に伝わる。
【0094】
なお、この図12に示すマンホール4内の無線装置1−5を構成するそのほかの電池11やメモリ16は図3の振動センサ付き無線タグ1内のものと同じである。
【0095】
さらに、上述した図12及び図13に示すマンホール4内の無線装置1−5が、図3の無線タグ1から上記のように代わったことに合わせて、マンホール4外の制御装置2−1も図3の制御装置2から図12に示す制御装置2−1と音響スピーカ201と音響マイク202とからなるもののように代わる。この図12及び図13の制御装置2−1では、前の図3の制御装置2での指示設定操作部21と制御部22と表示部23(および受信部(リーダ)25)を兼ね備えた機能を担う。図12及び図13に示すマンホール4外に準備された制御装置2−1側での音響スピーカ201は、図3の制御装置2にある振動発生部32の代わりである。このマンホール4外の制御装置2−1側の音響スピーカ201からマンホール4内の無線装置1−5の指示を音響で行う。またこの音響での指示は、先の図5に示されたような振動パターンに対応する音響パターンが用意されている。最後に、図12及び図13に示すマンホール4外に準備された制御装置2−1での音響マイク202は図3に示す制御装置2のアンテナ24(と受信部(リーダ)25の一部)に代わるものである。このマンホール4外に準備された制御装置2−1の音響マイク202は、マンホール4内から鉄製の蓋43を通じて伝わる音響信号を受けて、制御装置2−1へ伝える。
【0096】
図13は、本実施形態の無線装置1−5と制御装置2−1と構造を示している。図13に示す無線装置1−5と制御装置2−1の構造は、先に図3の振動パターンに対応して送信するアクティブ無線タグを用いる実施形態として示した無線タグ1と制御装置2の構造と類以して、構成されたものである。
【0097】
まず一方の制御装置2−1には、次のような構成がある。指示設定操作部21、制御部22−1、超音波発生部(あるいは音響スピーカ)201、超音波受信部(あるいは音響マイク)202、受信処理部25−1、表示部23がある。この図13に示す指示設定操作部21、制御部22−1、受信処理部25−1や表示部23については、図3の振動パターンに対応して送信するアクティブ無線タグに対応する制御装置2での指示設定操作部21、制御部22、受信部25、表示部24と同じあるいはほぼ同じである。ただ図3は振動を用いるのに対して、図14では音波(特に超音波)を用いるので、制御部22−1では次のような処理をする。
【0098】
ます指示設定を受取る(ステップST41)。その指示設定に従って、DBからパターンの選択取得をする(ステップST42)。そして、DBから選択取得した超音波パターンの発生情報の超音波発生部201への伝達をする(ステップST43)。このようにして、制御部22−1から超音波パターンの発生情報が超音波発生部(スピーカ)201へ伝達される。この情報に従い超音波発生部(スピーカ)201が超音波を発生する。
【0099】
他方、超音波受信部(マイク)202はマンホール4内の無線装置1−5で発生された超音波を受信して、受信処理部25−1へ出力する。これら構成の内で、指示設定操作部21はパソコン(パーソナルコンピュータ)のキーボード、制御部22−1および受信処理部25−1はパソコンの演算処理装置(CPU)、表示部23はパソコンの表示画面とすれば、これらをノート型パソコンでも実装できる。残りの超音波発生部(スピーカ)201と超音波受信部(マイク)202をノート型パソコンにケーブルで接続することで比較的簡単に持ち運び可能な機器として実現できる。
【0100】
他方の図13に示す浸水検知センサ付きマンホール内装置としての無線装置1−5は次のような構成である。すなわち、無線装置1−5は、超音波受信部(音響マイク)103、受信パターン判定回路14−2、電池11、制御回路17−1、IDを格納するメモリ16、送信回路15−1、超音波発生部(音響スピーカ)104から構成されている。また、受信パターン判定回路14−2には、無線装置1−5外部の浸水検知センサ12−1が接続されている。この図13に示した受信パターン判定回路14−2、浸水検知センサ12−1、電池11、制御回路17−1、IDを格納するメモリ16、送信回路15−1は、図3に示す振動パターンに対応し送信するアクティブ無線タグ1における振動パターン判定回路14、浸水センサ12、電池11、制御回路17、IDを格納するメモリ16、送信回路15に対応する構成であり、同様の機能を実現するものである。ここで、超音波受信部(マイク)103は制御装置2−1からの超音波を受け、受信パターン判定回路14−2へ伝える。
【0101】
受信パターン判定回路14−2では、超音波受信部(マイク)103からの受信情報および浸水検知センサ12−1から浸水の有無の情報を基にして、次のような処理をする。まず、超音波による受信情報と浸水有無を受取る(ステップST51)。受取り超音波情報と受信パターン判定回路14−2内のDBのパターンを比較して一致確認をする(ステップST52)。超音波パターンの比較結果と(マンホール内の浸水の有無)状況が合致したとの伝達をする(ステップST53)。ここで浸水検知センサ12−1は例えばお風呂の給水で満水になった時に知らせる給水検知と同じように、フロート、接点などを利用したセンサを用いることができる。受信パターン判定回路14−2で予め決められた条件に合う受信とマンホール4の状況が合致すると送信回路15−1へ電池11から電力が供給される。制御回路17−1は送信回路15−1へ指示し超音波発生部(スピーカ)104からIDなどの情報を無線送信するための超音波を発生させる。
【0102】
以上のように図12および図13に示す無線装置1−5及び制御装置2−1の形態および構成や内部構造を取ることで、音響を使いより確実かつ簡単にマンホール4内の状況(浸水の有無やその程度)を確認することができる。
【0103】
本発明では、マンホールに設置した振動検知機能付きの無線タグに対して地上から振動を与え、無線タグから送信された無線信号を受信して、マンホール内の浸水の状況を確認して、その後この確認結果をマンホール作業に活用できる。また、その構成においては、無線装置と制御装置との間で伝達あるいは送受信される弾性振動及び無線信号として音波を用い、振動検知手段として音響マイクを用い、振動の発生手段あるいは無線信号の送信手段として音響スピーカを用いるようにすることも可能である。
【0104】
なお、本発明の実施の形態は、上記に限定されず、マンホール4内に設置する無線タグ(無線装置)の個数をさらに増加させたり、図3、図7、図10に示すような無線タグ(無線装置)内の構成ブロックを集積化して統合したり、あるいは各ブロックの機能を分割することで各ブロックの構成を分割したりする変更が適宜可能である。また、各実施の形態が特徴とする構成・機能を他の実施の形態の構成・機能と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明による浸水検知システムの実施の形態の一構成例(振動検知時に送信するアクティブ無線タグを用いる例)を示す模式図である。
【図2】図1の測定作業車3に搭載する振動発生部32の構成の一例を説明するための模式図である。
【図3】図1の無線タグ1(振動パターンに対応して送信するアクティブ無線タグ)と制御装置2の構成及び処理の一例を説明するためのブロック図である。
【図4】図1及び図3に示す無線タグ1の設置例(マンホール4内に無線タグ1が設置された状況)を説明するための模式図である。
【図5】図1及び図3に示す制御装置2によって発生する振動パターン(無線タグ1に与える振動パターン)の例を説明するための模式図である。
【図6】図1及び図3に示す制御装置2で受信される無線信号の例(受信部25から送られてきた受信結果)を説明するための模式図である。
【図7】本発明による無線タグの他の実施の形態(振動をエネルギー変換・蓄積し活用する無線タグ)の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7に示す無線タグ1−1及び1−2の動作を説明するための動作状態(動作波形)の時間変化を示す模式図である。
【図9】本発明による浸水検知システムの他の実施の形態の一構成例(隣のマンホールのタグ送信から発信タイミングを制御する構成例)を示す模式図である。
【図10】図9の無線タグ1a、1bとしての無線タグ1−3及び1−4(隣のマンホールのタグ送信から発信するタイミングを制御可能な無線タグ)の構成例を説明するためのブロック図である
【図11】図10の無線タグ1−3及び1−4の動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明による浸水検知システムのさらに他の実施の形態(超音波を振動及び無線信号に代えて用いる形態)の一構成例を示す模式図である。
【図13】図12の無線装置1−5と制御装置2−1の構成及び処理の一例を説明するためのブロック図である。
【図14】本発明の背景技術におけるシステム構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0106】
1、1−1、1−2、1−3、1−4 無線タグ(無線装置)
1−5 無線装置
2、2−1 制御装置
3 測定作業車
4 マンホール
11 電池(電源)
11−1 電界2重層キャパシタ(電源の一部)
12、12−1 浸水センサ(浸水検知手段)
13、13−2 振動センサ(弾性振動検知手段)
13−1 振動センサ(弾性振動検知手段・電源の一部)
13−3 圧電素子(電源の一部)
14 振動パターン判定回路(判定手段)
14−1 受信情報・振動パターン判定回路(判定手段)
14−2 受信パターン判定回路(判定手段)
15 送信回路(送信手段の一部)
16 メモリ(識別子記憶手段)
17、17−1 制御回路(送信手段の一部)
18 アンテナ
32 振動発生部
101 受信回路(受信手段)
104、201 超音波発生部(音響スピーカ)
103、202 超音波受信部(音響マイク)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各手段に電力を供給する電源と、
浸水を検知する浸水検知手段と、
マンホール外から与えられた弾性振動を検知する弾性振動検知手段と、
前記浸水検知手段の検知出力に応じて、前記弾性振動検知手段によって検知された弾性振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が所定のパターンに一致すると判定した場合に、前記電源から電力を供給され、所定の信号を送信する送信手段と
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、
前記電源が電池であり、
前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、
前記電源が、マンホール外から与えられた弾性振動を電力に変換する手段と、その変換された電力を蓄電する手段とからなり、
前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項4】
他の無線装置から送信された所定の信号を受信する受信手段をさらに備え、
前記送信手段が、前記受信手段によって所定の信号が受信された時刻から所定時間経過後に、前記所定の信号を送信するものである
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記弾性振動及び前記無線信号が音波であり、
前記弾性振動検知手段が音響マイクであり、
前記送信手段が音響スピーカである
ことを特徴とする請求項1〜4に記載の無線装置。
【請求項6】
マンホール内に設置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線装置と、
前記無線装置に対してマンホール外から所定パターンの弾性振動を与えるとともに、該無線装置から送信された送信信号を受信する制御装置と
を備えることを特徴とする浸水検知システム。
【請求項7】
前記無線装置が、複数であり、1つのマンホールに対して、高さの異なる2箇所以上の複数の位置に設置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の浸水検知システム。
【請求項8】
前記制御装置が、複数種類の所定パターンの弾性振動を与えるものであり、
前記無線装置が、複数であり、
複数の前記無線装置における各前記判定手段として異なる種類の所定パターンとの一致を判定するものが混在している
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の浸水検知システム。
【請求項1】
各手段に電力を供給する電源と、
浸水を検知する浸水検知手段と、
マンホール外から与えられた弾性振動を検知する弾性振動検知手段と、
前記浸水検知手段の検知出力に応じて、前記弾性振動検知手段によって検知された弾性振動が所定のパターンに一致するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が所定のパターンに一致すると判定した場合に、前記電源から電力を供給され、所定の信号を送信する送信手段と
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、
前記電源が電池であり、
前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
無線装置固有の識別子を記憶する識別子記憶手段をさらに備え、
前記電源が、マンホール外から与えられた弾性振動を電力に変換する手段と、その変換された電力を蓄電する手段とからなり、
前記送信手段が前記所定の信号として前記識別子記憶手段に記憶されている識別子を表す情報を含むものを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項4】
他の無線装置から送信された所定の信号を受信する受信手段をさらに備え、
前記送信手段が、前記受信手段によって所定の信号が受信された時刻から所定時間経過後に、前記所定の信号を送信するものである
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記弾性振動及び前記無線信号が音波であり、
前記弾性振動検知手段が音響マイクであり、
前記送信手段が音響スピーカである
ことを特徴とする請求項1〜4に記載の無線装置。
【請求項6】
マンホール内に設置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線装置と、
前記無線装置に対してマンホール外から所定パターンの弾性振動を与えるとともに、該無線装置から送信された送信信号を受信する制御装置と
を備えることを特徴とする浸水検知システム。
【請求項7】
前記無線装置が、複数であり、1つのマンホールに対して、高さの異なる2箇所以上の複数の位置に設置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の浸水検知システム。
【請求項8】
前記制御装置が、複数種類の所定パターンの弾性振動を与えるものであり、
前記無線装置が、複数であり、
複数の前記無線装置における各前記判定手段として異なる種類の所定パターンとの一致を判定するものが混在している
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の浸水検知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−140441(P2010−140441A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318903(P2008−318903)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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