説明

無線装置

【課題】無線装置の電源ON時、または基地局を介さずに無線装置同士が直接通信を行う直接通信の送信時、発信回路の発振周波数の初期値の再調整を容易にする。
【解決手段】デジタル信号処理部107は、周波数混合部104からの信号を復調する復調部108と、基地局からの受信信号の周波数と発振部の発振周波数との誤差信号電圧を出力する自動周波数制御回路120および入力信号を変調する変調部114を有し、上記発振部は、所定の基本周波数で発振する発振回路111と、上記発振回路に供給される電圧値を記憶する記憶部125と、上記自動周波数制御回路からの誤差信号電圧に基づいて上記記憶部の電圧値を書き換える制御部124および上記記憶部の電圧値と上記自動周波数制御回路からの誤差信号電圧とを加算して上記発振回路に供給する加算部121を有し、上記発振部の出力を第1の周波数混合部104と第2の周波数混合部117に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置に関し、特に、周波数変動の少ない無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、実用化されているデジタル無線システムの一つとして、標準規格ARIB STD-T79(Association of Radio Industries and Businesses-T79)(例えば、非特許文献1参照)で定められている移動通信システム、あるいは、標準規格ARIB STD-T61(Association of Radio Industries and Businesses-T61)(例えば、非特許文献2参照)で定められている狭帯域デジタル通信システム等がある。これらデジタル通信システムは、複数の基地局、中継局および多数の移動局からなるシステムが普通である。
【0003】
このデジタル通信システムは、基地局の通信エリア内にある複数の移動局と基地局間、あるいは基地局を経由した移動局間、あるいは移動局間直接通信等の通信接続サービス、あるいは、通信エリアの外の移動局と通信エリア内の移動局との通信接続サービスが行なわれるように構成されたシステムである。
【0004】
そして、上述した基地局および移動局は、それぞれ無線回線を用いて通話を行うが、使用する無線周波数(無線キャリア)は、標準規格ARIB STDで定められている。例えば、デジタル無線技術を用いた狭帯域デジタル通信システムで使用が許可されている無線キャリア(carrier)周波数割当てを図4に示す。図4において、上り方向、即ち、移動局→基地局の方向では、約400MHz〜の無線キャリアFrで、12.5KHz巾で、数十波(Fr1、Fr2、・・・)が認められている。また、下り方向、即ち、基地局→移動局の方向では、上り方向の400MHzから45MHz離れた約445MHz〜の無線キャリアFtで、12.5KHz巾で、数十波(Ft1、Ft2、・・・)が認められている。従って、デジタル無線通信システムの通信においては、上り方向Fr1、Fr2、・・・、下り方向Ft1、Ft2、・・・の各周波数が使用される。そして、各システムは、その規模に応じて1又は複数の無線キャリアを制御用キャリアとし、残りを通信用キャリアとして使用することができる。更に、移動局間直接通信用に無線キャリアWが10数波認められ、無線キャリアW1、W2、・・の内の一波の無線キャリアでプレストーク方式の通話が行われる。
【0005】
而して、上述したシステムで運用される基地局および移動局は、使用する無線キャリアの周波数および周波数許容偏差が厳格に定められており、これがシステムを運用する場合の大きな課題である。以下、これについて詳細に説明する。
【0006】
図5は、例えば、移動局として用いられる従来の無線装置、即ち、送受信装置の概略構成を示すブロック図である。図5において、まず、受信動作について説明する。101は、基地局からの信号を受信するアンテナ、102は、信号の送信、受信を切替える切替スイッチであり、プレストーク方式の無線装置では、送信と受信を手動で切替える切替スイッチであり、複信の場合には、送信、受信を高速で切替えるスイッチで構成される。103は、高周波増幅部でアンテナ101で受信された高周波信号を増幅する。104は、周波数混合部で、中間周波数に変換する。105は、中間周波増幅回路、106は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部である。107は、デジタル信号処理部であり、復調部108で、入力信号をデジタル復調した信号、例えば、音声信号が出力端子109から出力される。
【0007】
次に、送信動作について説明する。入力端子113から入力される、例えば、音声信号は、デジタル信号処理部107の変調部114でデジタル変調され、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部115に供給される。DA変換部115の出力は、中間周波増幅部116で、中間周波増幅され、周波数混合部117で、割当てられた無線周波数に変換し、電力増幅部118、切替スイッチ102を経由してアンテナ101から送信される。
【0008】
ここで周波数の自動制御方法について説明する。まず、基地局から送られてくる受信信号は、前述のようにアンテナ101で受信され、高周波増幅部103、周波数混合部104、中間周波増幅部105、AD変換部106を介してデジタル信号処理部107に供給される。デジタル信号処理部107の復調部108からは、受信周波数同調のための制御データがAFC(Automatic Frequency Controller:自動周波数制御回路)501に供給される。AFC501では、所定の周波数制御信号が加算器502、DA変換器110を介して発信回路111(VCTCXO:Voltage Controlled and Temperature Compensated Crystal Oscillator:電圧制御温度補償型水晶発振器)に供給され、ローカル回路112を介して周波数混合部104および117に供給される。なお、503は、操作部(図示せず。)からの操作信号の入力端子、504は、制御部、505は、例えば、不揮発性メモリ等の半導体メモリで構成される記憶部である。
【0009】
そして、受信時には、無線装置は、アンテナ101を介して基地局からの送信波を受信する。アンテナ101から取り込まれた受信信号は、まず、高周波増幅回路103で、次段の周波数混合回路104で必要とするレベルにまで増幅され、周波数混合回路104に入力される。周波数混合回路104では、受信信号の周波数とローカル回路112の出力であるローカル信号が混合され、中間周波数に変換される。ここで、ローカル回路112は、発信回路111からの基準周波数を入力して所定のローカル信号を出力する。
【0010】
而して、発信回路111の発振周波数は、上述したように無線システムとして使用が認められた周波数で動作するように無線機を出荷する時点で厳格に調整され出荷される。即ち、予め工場出荷時に発信回路111の基準周波数、例えば、19.2MHzとなる最適な電圧値を記憶部505に書き込み、出荷される。従って、運用時には、操作者が例えば、電源をONすると、入力端子503からの起動信号が制御部504を駆動し、記憶部505に記憶されている最適な電圧値を読み出し、加算器502に供給する。この最適な電圧値は、DA変換部110を介して発信回路111に供給される。
【0011】
一方、アンテナ101からの受信信号は、周波数混合部104でローカル回路112からの基準周波数と混合され、中間周波数に変換される。そして、中間周波増幅部105で増幅され、AD変換部106でデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部107の復調部108に入力される。復調部108では、受信周波数同調のための制御データが自動周波数制御部(AFC501)に供給される。AFC501では、基地局からの受信信号の周波数と発信回路(VCTCXO)111の発振周波数との周波数誤差を計算し、周波数誤差に値する電圧値を加算器502に供給する。加算器502では、AFC501からの周波数誤差に値する電圧値と記憶部505からの基準電圧値とが加算され、DA変換器110を介して発信回路(VCTCXO)111へ入力される。これによって発信回路(VCTCXO)111の発振周波数の補正を行い、基地局からの受信信号の周波数に自局の周波数を追従させる。
【0012】
一方、送信時には、記憶部505に書き込まれている基準周波数の最適な電圧値を読み出し、加算器502、DA変換器110を介して発信回路(VCTCXO)111に供給され、発信回路(VCTCXO)111が所定の発信周波数で発信し、ローカル回路112を介して周波数混合部117に供給される。勿論、この場合の発信回路(VCTCXO)111は、受信時に基地局からの受信信号の周波数に追随した周波数で発振していることは言うまでもない。従って、入力端子113から入力される、例えば、音声信号は、デジタル信号処理部107の変調部114でデジタル変調され、送信信号が生成され、DA変換部115を介して、中間周波増幅部116にて次段の周波数混合部117で必要とするレベルにまで増幅され、周波数混合部117に入力される。周波数混合部117では、送信信号の周波数とローカル回路112の出力であるローカル信号が混合され、電力増幅部118で増幅された後、切替スイッチ102を介してアンテナ101から送信される。以上のように、発信回路(VCTCXO)111は、無線装置の送受信時において安定した周波数精度をもつ基地局の周波数との同期を図る目的で使用されている。
【0013】
図6は、基地局あるいは基地局を介して他の無線装置(または他の移動局)と通信を行う機能と、他の無線装置(または他の移動局)と直接通信を行う機能とを有する無線装置の一例の概略構成を示すブロック図である。図6において、601は、他の無線装置(図示せず。)と直接通信を行う受信用アンテナであり、例えば、図4に示す無線キャリアW1が受信される。602は、直接通信用高周波増幅部、603は、直接通信受信用周波数混合部、604は、直接通信用中間周波増幅部、605は、直接通信用AD変換部、607は、デジタル信号処理部、608は、直接通信用直接波復調部、609は、例えば、音声出力端子である。610は、DA変換部、611は、直接通信受信用発信回路(VCTCXO:Voltage Controlled and Temperature Compensated Crystal Oscillator:電圧制御温度補償型水晶発振器)、612は、直接通信受信用ローカル回路である。620は、AFC(Automatic Frequency Controller:自動周波数制御回路)、621は、加算器、622は、入力端子、623は、制御部、624は、記憶部である。なお、図5と同じものには同じ符号が付されている。
【0014】
以下、図6に示される無線装置の動作について説明する。他の無線装置(または移動局)から送信された移動局間直接通信波、例えば、無線キャリアW1をアンテナ601を介して受信する。アンテナ601で受信した受信信号は、直接通信用高周波増幅部602で増幅を行い、周波数混合部603に入力される。周波数混合部603に入力された受信信号は、ローカル回路612から出力されるローカル信号と混合され、中間周波数に変換される。そして、中間周波増幅部604で所定のレベルに増幅され、AD変換部605にてデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部607の直接波復調部608に入力される。デジタル信号復調部607の直接波復調部608では、デジタル復調され、出力端子609から、例えば、音声信号が出力される。
【0015】
一方、直接波復調部608から他の無線装置からの受信周波数同調のための制御データがAFC(Automatic Frequency Controller)620に供給される。AFC620では、受信信号の周波数と直接通信受信用発信回路(VCTCXO)611の発信周波数との周波数誤差計算を行い、誤差電圧値が加算器621に供給される。また、加算器621には、記憶部624から読み出された所定の初期値電圧が供給される。即ち、記憶部624から直接通信受信用発信回路(VCTCXO)611の基準発信周波数となる初期値電圧が、例えば、無線装置の電源をONした時、あるいは、他の無線装置と直接通信を行う時に所定のスイッチをONする場合、入力端子622にそのONスイッチに連動して信号が入力され、制御部623を起動し、記憶部624から読み出される。従って、加算器621からの加算出力がDA変換器610を介して直接通信受信用発信回路(VCTCXO)611に供給される。ローカル回路612から出力されるローカル信号は、発信回路(VCTCXO)611から出力される基準周波数を分周・逓倍することにより所定の周波数を生成する。以上のように構成することにより記憶部624に、出荷時に最適な初期値に書込まれた所定の電圧値をAFC620からの誤差値(補正値)を加えこれによって他の無線装置(または移動局)から送信されてきた周波数にローカル周波数を追従させ、最適に復調できるようにしている。
【0016】
次に、移動局間直接通信の場合の送信動作について説明する。移動局間直接通信の場合の送信は、基地局あるいは基地局を介して他の無線装置(または他の移動局)と通信を行う送信装置と同じ送信装置を使用する。即ち、図4で示すように無線装置から基地局への上り方向は、無線キャリアFrを用いている。また、移動局間直接通信に用いる無線キャリアWは、上り方向の無線キャリアFrに隣接する下側の無線キャリアWが使用されている。従って、移動局間直接通信の場合の送信装置は、基地局あるいは基地局を介して他の無線装置(または他の移動局)と通信を行う送信装置と兼用することができる。
【0017】
この送信装置について簡単に説明する。送信時には、図5で説明したように、例えば、基地局との通信時に基地局から送信される受信周波数同調のための制御データが基地波復調部108からAFC501に供給される。AFC501では、発信回路(VCTCXO)111の発信周波数との周波数誤差計算を行い、誤差電圧値が加算器502に供給される。加算器502では、記憶部624に記憶されている所定の初期値電圧と加算され、補正された電圧値がDA変換部110でDA変換され、発信回路(VCTCXO)111へ入力して基準周波数を生成し、ローカル回路112にて、基準周波数を分周・逓倍し、周波数混合部117に供給し、ここで、直接通信用の無線キャリアW、例えば、所定の周波数W1を生成する。
【0018】
一方、入力端子113からの音声信号は、デジタル信号処理部607の変調部114にてデジタル送信信号を生成し、DA変換部115を介して、中間周波数増幅部116にて周波数混合部117で必要とする所定入力レベルに増幅し、周波数混合部117で送信周波数(所定の周波数W1)を生成する。生成された所定の周波数W1は、電力増幅部118にて所定の送信レベルに増幅され、切替スイッチ102を介して、アンテナ101から移動局間直接通信の相手側無線装置に送信される。
【0019】
なお、基地局あるいは基地局を介して他の無線装置(または他の移動局)と通信を行う無線装置の動作については、図5で説明したものと同じであるので、ここでの説明は省略する。但し、図6に示す入力端子622、制御部623および記憶部624の動作は、図5に示す入力端子503、制御部504および記憶部505の動作にそれぞれほぼ対応する。
【0020】
以上詳述したように、発信回路(VCTCXO)111および611は、無線装置の送受信時において安定した周波数精度をもつ基地局の周波数あるいは移動局間直接通信の場合の相手側無線装置との同期を図る目的で使用されている。しかしながら、無線装置(または移動局)の電源ON時、または基地局を介さずに無線装置(または移動局)同士が直接通信を行う直接通信の送信時には、基地局あるいは無線装置(移動局)間直接通信の場合の無線装置からの受信周波数同調のための制御データがないため、発信回路(VCTCXO)111および611の発振周波数は、記憶部505あるいは624に書き込まれている初期値に戻ってしまうので、無線装置(または移動局)の電源ON時、または基地局を介さない無線装置(または移動局)同士の直接通信等の度にAFCによる水晶発振器の発振周波数の自動制御が必要となってしまう。特に、発信回路(VCTCXO)は、機械的なストレスや環境の変化等で生じる経年変化が無視できない場合等では、記憶部505あるいは624に記憶している初期値の再調整が必要となり、保守点検が大きな問題となっている。
【0021】
【特許文献1】特開2001−237906号公報
【特許文献2】特開2001−16126号公報
【非特許文献1】標準規格ARIB STD-T79:市町村デジタル移動通信システム 社団法人 電波産業会
【非特許文献2】標準規格ARIB STD-T61:狭帯域デジタル通信方法 社団法人 電波産業会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以上詳述したように、発信回路(VCTCXO)は、無線装置の送受信時において安定した周波数精度をもつ目的で使用されているが、無線装置の電源ON時、または基地局を介さずに無線装置同士が直接通信を行う直接通信の送信時には、受信周波数同調のための制御データがないため、発信回路(VCTCXO)の発振周波数は、記憶部に書き込まれている初期値に戻ってしまうので、無線装置の電源ON時、または基地局を介さない無線装置同士の直接通信等の度にAFCによる水晶発振器の発振周波数の自動制御が必要となってしまう。特に、発信回路(VCTCXO)の経年変化が無視できない場合等では、記憶部に記憶している初期値の再調整が必要となり、保守点検が大きな問題となっている。
【0023】
本発明の目的は、発信周波数の再調整を容易にする無線装置を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、発信周波数を定めている記憶部の初期値を書換え可能な無線装置を提供することである。
【0025】
本発明の更に他の目的は、発信周波数を定めている記憶部の初期値の書換え回数を低減し、製品の長寿命化を図る無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、第1の受信部、送信部、デジタル信号処理部および第1の発振部を有する無線装置であって、上記第1の受信部は、少なくとも基地局からの受信信号を中間周波信号に変換する第1の周波数混合部を有し、上記送信部は、所定の無線周波数を生成する第2の周波数混合部を有し、上記デジタル信号処理部は、上記第1の周波数混合部からの信号を復調する第1の復調部と、上記基地局からの受信信号の周波数と上記発振部の発振周波数との誤差信号電圧を出力する第1の自動周波数制御回路および入力信号を変調する変調部を有し、上記第1の発振部は、所定の基本周波数で発振する第1の発振回路と、上記第1の発振回路に供給される電圧値を記憶する記憶部と、上記自動周波数制御回路からの誤差信号電圧に基づいて上記記憶部の電圧値を書き換える制御部および上記記憶部の電圧値と上記第1の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧とを加算して上記第1の発振回路に供給する加算部を有し、上記第1の発振部の出力を上記第1と第2の周波数混合部に供給するように構成される。
【0027】
また、本発明の無線装置において、上記第1の発振部の制御部は、第1の閾値設定部を有し、上記第1の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧が上記第1の閾値設定部で設定された誤差範囲を超える場合、上記制御部は、上記記憶部に記憶されている電圧値を書き換えるように構成される。
【0028】
また、本発明の無線装置において、更に、第2の受信部および第2の発振部を有し、上記第2の受信部は、少なくとも他の無線装置からの受信信号を中間周波信号に変換する第3の周波数混合部を有し、上記デジタル信号処理部は、更に、上記第3の周波数混合部からの信号を復調する第2の復調部と、上記他の無線装置からの受信信号の周波数と上記第2の発振部の発振周波数との誤差信号電圧を出力する第2の自動周波数制御回路を有し、上記第2の発振部は、所定の基本周波数で発振する第2の発振回路と、上記第2の発振回路に供給される電圧値を記憶する記憶部と、上記第2の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧に基づいて上記記憶部の電圧値を書き換える制御部および上記記憶部の電圧値と上記第2の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧とを加算して上記第2の発振回路に供給する加算部を有し、上記第2の発振部の出力を上記第3の周波数混合部に供給するように構成される。
【0029】
また、本発明の無線装置において、上記第2の発振部の制御部は、第2の閾値設定部を有し、上記第2の自動周波数制御回路からの誤差信号が上記第2の閾値設定部で設定された誤差範囲を超える場合、上記制御部は、上記記憶部に記憶されている電圧値を書き換えるように構成される。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、発信周波数の再調整を容易にする無線装置を実現できる。また、工場出荷時に調整された発振周波数の変動を自動的に修正できるので、保守点検が容易になる。また、自動修正の回数を少なくすることにより無線装置の長寿命化が図れる等の効果がある。更に、基地局との通信の場合に基地局の基準信号に追従させたり、あるいは自局から送信される直接通信波に直接通信受信側の基準信号を追従させることにより、基地局信号を受信する無線装置側あるいは直接通信受信側の基準信号発振周波数の誤差を小さくすることを可能とし、定期保守にて確認や再調整のための頻度を少なくできる等の特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例の概略構成を示すブロック図である。図1において、120は、AFC(Automatic Frequency Controller:自動周波数制御回路)、121は、加算器、122は、減算器(または差分器ともいう。)、123は、入力端子、124は、制御部、125は、記憶部、126は、閾値設定部である。なお、図5と同じものには同じ符号が付されている。また、閾値設定部については、別の実施例で説明する。なお、高周波増幅部103、周波数混合部104、中間周波増幅部105、AD変換部106等で構成される部分を第1の受信部と称し、DA変換部115、中間周波増幅部116、周波数混合部117、電力増幅部118等で構成される部分を送信部と称する。また、加算器121、減算器(または差分器ともいう。)122、入力端子123、制御部124、記憶部125、閾値設定部126、DA変換部110、発振回路111、ローカル回路112等で構成される部分を第1の発振部と称する。
【0032】
図1に示す本発明の無線装置の動作を説明する前に本発明の基本的な技術内容について説明する。先に説明したように標準規格ARIB STD-T79(例えば、非特許文献1参照)で定められている移動通信システム、あるいは、標準規格ARIB STD-T61(例えば、非特許文献2参照)で定められている狭帯域デジタル通信システム等の通信システムでは、使用が許可されるための周波数許容偏差が厳しく定められていることを説明した。例えば、標準規格ARIB STD-T61、狭帯域デジタル通信システムでは、表1に示すように周波数許容偏差が定められている。
【0033】
【表1】

表1は、周波数400MHz帯での基地局および移動局(無線装置)の送信装置の周波数許容偏差FDを示すもので、基地局では、FD=±0.9ppmである。ここに、ppmは、0.0001%を表わす。移動局では、送信装置の出力1W以上では、FD=±0.9ppm、また、1W以下では、FD=±1.5ppmと定められている。
【0034】
さて、表1に示されるように基地局および移動局(無線装置)の送信装置の周波数許容偏差FDが定められており、無線システムを構築する場合には、この周波数許容偏差FDの範囲内に入るように基地局および移動局(無線装置)の送信装置を構成することが要求されている。そして、基地局は、一般的に精度の高い部品で構成されるため、例えば、送受信装置を構成する基準発振器も温度変動に強く、経年変化の少ない発振器が使用され、基地局の送信装置の周波数許容偏差FDは、±0.9ppmの範囲内になるように構成されている。このような基地局で用いられる発振器は、高価であり、基地局の発振器としては使用できる。しかしながら、数十台あるいは数百台もの多数の移動局(無線装置)の送信装置にこのような高価な発振器を使用することは、移動局のコスト低減のためには難しい。従って、多数の移動局(無線装置)の送受信装置に使用される発振器としては、市販されている比較的安価な水晶発振器を使用せざるを得ないのが実情である。このような市販されている水晶発振器では、仕様値が、例えば、経年変化:±1.0ppm/年である。従って、このような市販されている水晶発振器を使用した場合、1年が経過すると、表1に示す移動局の出力1W以上の場合、送信装置の周波数許容偏差FD=±0.9ppmを超えることなり、無線システムとしては問題となる。従って、本発明は、このような市販されている比較的安価な水晶発振器を用い、しかも、標準規格ARIB STDで定められている周波数許容偏差FD以内の無線装置を実現するものである。
【0035】
以下、本発明の発信回路(VCTCXO)の発振周波数の補正方法の一実施例について説明する。図1において、まず、基地局からの信号を受信する場合について説明する。アンテナ101から取り込まれた受信信号は、高周波増幅部103にて次段の周波数混合部104で必要とするレベルにまで増幅され、周波数混合部104に入力される。周波数混合部104では、受信信号の周波数とローカル回路112の出力であるローカル信号が混合され、中間周波数に変換される。ローカル回路112は、発信回路(VCTCXO)111からの基準周波数を分周・逓倍し、所定のローカル信号を出力する。中間周波数に変換された受信信号は、中間周波増幅部105で増幅され、AD変換部106を介してデジタル信号処理部107の復調部108に入力され、デジタル復調された後、出力端子109から、例えば、音声信号が出力される。
【0036】
また、復調部108からは、受信周波数同調のための制御データがAFC(Automatic Frequency Controller:自動周波数制御回路)120に供給される。AFC120では、受信信号の周波数と発信回路(VCTCXO)111の発振周波数との周波数誤差を計算し、周波数誤差に対応する電圧値ΔVを加算器121に供給する。加算器121では、記憶部125に記憶されている発信回路(VCTCXO)111の基準周波数、例えば、19.2MHzに対応する初期電圧値Vが記憶されており、この電圧が読み出され、加算器121に供給されるので、AFC120からの周波数誤差に対応する電圧値と加算される。即ち、DA変換部110に供給される発信回路(VCTCXO)111の制御電圧Vcは、次式で表わされる。
【0037】
Vc=V+ΔV・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ここで、Vc:発信回路(VCTCXO)111の制御電圧、V:記憶部125の初期電圧値、ΔV:AFC120から出力される周波数誤差に対応する電圧値を表わす。
【0038】
従って、(1)式で示す制御電圧VcがDA変換部110を介して発信回路(VCTCXO)111に供給される。これによって発信回路(VCTCXO)111は、受信信号の周波数に自動調整される。更に、加算器121の出力Vcは、減算器122に供給され、記憶部125に記憶されている初期電圧値Vと比較され、差分電圧ΔVが制御部124に供給される。
【0039】
而して、記憶部125は、無線装置の出荷時に、発信回路(VCTCXO)111の最適な基準発振周波数となる電圧値を記憶させていることを説明した。従って、出荷当初においては、発信回路(VCTCXO)111は、温度変動や経年変化は、殆ど無く、基準発振周波数も、例えば、19.2MHzに維持されているので、減算器122の出力は、ほぼ、零である。しかしながら前述したように経年変化により発信回路(VCTCXO)111の発振周波数fが変化すると、AFC120からの周波数誤差に対応する電圧値ΔVが出力される。その結果、減算器122の出力として記憶部125の記憶されている初期電圧値Vとの差分電圧値ΔVが制御部124に出力される。従って、制御部124は、この差分電圧値ΔVに基づいて記憶部125に記憶されている初期電圧値Vを電圧値Vに書換え、経年変化により発信回路(VCTCXO)111の発振周波数が変化した分だけ補正し、基の基準発振周波数19.2MHzとなるようにする。なお、上記の説明でのこれらの処理は、実際の装置では、デジタル的に行われることは言うまでもない。
【0040】
次に、無線装置から信号を送信する場合について説明する。入力端子113から音声信号が入力されると、デジタル信号処理部607の変調部114にてデジタル送信信号を生成し、DA変換部115を介して、中間周波数増幅部116にて周波数混合部117で必要とする所定入力レベルに増幅し、周波数混合部117に供給される。一方、無線装置では、送信操作を行うことによって、例えば、プレストークスイッチをONすると、これに連動して入力端子123にトリガー信号が印加され、制御部124を駆動し、記憶部125から書き換えられた電圧値Vが読み出され、加算器121、DA変換部110を介して発信回路(VCTCXO)111に供給される。従って、経年変化等で変化した発振周波数が電圧値Vを印加されることによって基準の周波数、例えば、19.2MHzを発振し、ローカル回路112で分周・逓倍され、周波数混合部117に供給され、周波数混合部117で所定の送信周波数に変換され、電力増幅部118、切替スイッチ102を介してアンテナ101から基地局に送信される。
【0041】
以上、説明したように受信時には、基地局からの送信周波数に追随して発信回路(VCTCXO)111の発振周波数が制御され、同時に記憶部125の記憶している電圧値が書き換えられる。従って、送信時には、記憶部125に記憶されている電圧値Vで発信回路(VCTCXO)111の発振周波数が制御されるので、発信回路(VCTCXO)111の経年変化等による周波数変動を軽減あるいは無くすことが可能となる。換言すれば、図5で示す従来の無線装置では、送受信が動作している場合は、受信時に基地局からの送信周波数にAFCにより追随して発信回路(VCTCXO)111の発振周波数が制御され、送信時は、この追随した発信回路(VCTCXO)111の発振周波数で所定の送信周波数を生成するので、正しい発振周波数で動作する。
【0042】
しかしながら一旦無線装置の動作を止め、電源をOFFすると、図5に示す装置では、発信回路(VCTCXO)111の発振周波数は、基地局からの送信周波数に追随しなくなる。また、記憶部505には、初期電圧値Vが記憶されているのみであるので、無線装置の送信操作を行なう場合には、記憶部505に記憶されている初期電圧値Vで発信回路(VCTCXO)111の発振周波数が決まるので、発信回路(VCTCXO)111が経年変化等で周波数許容偏差が±0.9ppmの範囲を超える場合には問題となるが、本発明のように記憶部125の初期電圧値Vを電圧値Vに書き換えることで、このような問題が改善される。
【0043】
次に、本発明の他の一実施例について図1を用いて説明する。図1の説明では、減算器122の出力が制御部124に供給され、差分電圧ΔVが発生すると、この差分電圧ΔVに応じて記憶部125の電圧値を書き換えることとなる。このような場合、例えば、AFC120からの差分電圧ΔVが発生する度に記憶部125の内容を書き換えることとなる。このように構成すると、極端な場合、無線装置を1日当り100回使用すると、記憶装置125の内容を1日当り100回、書き換えることとなる。そして、記憶装置125を、例えば、不揮発性メモリで構成している場合、不揮発性メモリの書き換えは、約10万回が補償されているが、上記のような使用状態では、3年で10万回を超えてしまうため、無線装置としての寿命は、約3年となり、短か過ぎると言う問題がある。従って、本実施例では、制御部124に閾値設定部126を設け、所定レベルL以上の電圧変動変動がある場合に記憶装置125の内容を書き換えるようにして1日当りの書き換え回数を低減したものである。例えば、表1に示す移動局の出力1W以上の周波数偏差FDが±0.9ppm以内と定められているので、多少余裕を持って、例えば、周波数偏差FDが±0.7ppmを超える場合、即ち、制御部124の閾値設定部126に周波数偏差FDが±0.7ppmを超える場合の所定のレベルLを設定しておき、この所定のレベルLを超える場合、不揮発性メモリの内容を書き換える。実験によれば、このように設定することにより不揮発性メモリの内容の書き換え頻度は、約1/3程度となり、不揮発性メモリの寿命が10年程度にすることが可能になった。
【0044】
なお、上記実施例では、標準規格ARIB STDを例にして400MHz帯の場合について説明したが、これらに限定されるものではなく、また、周波数許容偏差や不揮発性メモリの書き換え寿命等、記憶部の書き換え頻度等の閾値については、システム構成、使用目的に応じて適宜実験的に設定、変更等が可能であることは言うまでもない。
【0045】
次に、本発明の他の一実施例について図2を用いて説明する。図2は、基地局あるいは基地局を介して他の無線装置(または他の移動局)と通信を行う機能と、他の無線装置(または他の移動局)と直接通信を行う機能とを有する無線装置の一実施例の概略構成を示すブロック図である。201は、減算器(または差分器)、202は、入力端子、203は、制御部、204は、記憶部、例えば、不揮発性メモリ等の半導体メモリ、205は、閾値設定部、206は、アンテナスイッチ、207は、終端抵抗である。なお、図1および図6と同じものには同じ符号が付されている。
【0046】
図2において、まず、基地局あるいは基地局を介して他の無線装置(または他の移動局)と通信を行う受信機能について説明する。なお、この受信機能は、図1に示すものと同じであるので、簡単に説明する。基地局から送信された送信波は、アンテナ101を介して受信する。アンテナ101で受信した受信信号は、切替スイッチ102を介して、基地局通信用高周波増幅部103で増幅を行い、周波数混合部104に入力される。周波数混合部104に入力された受信信号は、ローカル回路112から出力される受信ローカル信号と混合され、中間周波数に変換される。ローカル回路112から出力される受信ローカル信号は、発振回路(VCTCXO)111から出力される基準周波数を分周・逓倍することにより所定の周波数を生成する。また、発振回路(VCTCXO)111から出力される基準周波数は、無線装置が出荷される時に最適な周波数になるように記憶部204に所定の電圧が書き込まれ、運用時には、記憶部204からこの値を読み出し、DA変換部110でDA変換し、発振回路(VCTCXO)111にこの電圧を入力することにより所定の基準周波数、例えば、19.2MHzが出力される。周波数混合部104で中間周波数に変換された信号は、中間周波増幅部105で所定のレベルに増幅され、AD変換部106にてデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部607の基地波復調部108に入力され、デジタル復調され、出力端子109から音声信号が出力される。
【0047】
また、基地波復調部108から受信周波数同調のための制御データがAFC(Automatic Frequency Controller:自動周波数制御回路)120に供給される。AFC120では、上記実施例と同様に受信信号の周波数と発振回路(VCTCXO)111の発信周波数との周波数誤差を計算し、加算器121に出力する。加算器121には、記憶部204に記憶されている電圧値が供給され、その出力として(1)式で示される制御電圧VcがDA変換部110を介して発振回路(VCTCXO)111に供給され、基地局から送信されてきた周波数にローカル周波数を追従させ最適に復調できるように構成されている。また、加算器121の出力は、減算器122に供給され、記憶部204から読み出される電圧値と比較され、差分電圧ΔVが制御部203に供給される。そして、差分電圧ΔVに対応する電圧値に記憶部204の電圧値を書き換える。このような動作についても図1に示す実施例と同様であるので、詳細な説明は省略する。また、閾値設定部205は、上記実施例と同様に記憶部204の書き換え頻度を低減するために、所定の閾値レベルLを設定し、差分電圧ΔVが所定値を超えた場合に書き換えるようにするものであり、これについても上記実施例と同様である。
【0048】
次に、基地局あるいは基地局を介して他の無線装置(または他の移動局)と通信を行う送信機能について説明する。入力端子113に入力される音声信号は、デジタル信号処理部607の変調部114でデジタル変調され、DA変換部115、中間周波増幅部116を介して周波混合部117に供給される。そして、既に、説明したように発振回路(VCTCXO)111は、受信信号の周波数に追従した基準周波数に制御されているので、この発振回路(VCTCXO)111の出力がローカル回路112で分周・逓倍された信号が周波混合部117に供給される。従って、周波混合部117で所定の基地局通信用の周波数に変換され、電力増幅部118、切替スイッチ102を介してアンテナ101から基地局に送信される。
【0049】
次に、移動局間直接通信の動作について説明する。図6でも説明したように移動局間直接通信で用いられる無線キャリアは、図4に示すように基地局との上り無線キャリアFrの下側近傍の無線キャリアWが使用されているので、移動局間直接通信の場合の送信動作は、ローカル回路112での分周・逓倍の量を変更し、周波数混合部117で、例えば、無線キャリアW1を生成し、電力増幅部118、切替スイッチ102を介してアンテナ101から相手側無線装置に送信される。従って、この場合の発振回路(VCTCXO)111の出力周波数は、基地局からの受信信号の周波数に追従した基準周波数に制御されているので、発振回路(VCTCXO)111の出力周波数は、周波数許容偏差以内に保たれている。
【0050】
次に、移動局間直接通信の場合の受信装置について図2を用いて説明する。直接通信用のアンテナ601にて他の無線装置からの直接通信波を受信する。アンテナスイッチ206は、終端抵抗207との切替のためのスイッチであり、入力高周波電力が非常に大きい場合に終端抵抗207側に接続することにより、直接通信用高周波増幅部602に大きな電力が入り、直接通通信用高周波増幅部602が破壊されないよう保護するものである。このように入力高周波電力が非常に大きい場合、直接通信高周波受信増幅部602にアンテナ601が接続されてなくとも、漏れ電力により、アンテナ601に入力される入力高周波電力レベルから一定レベル低下した電力レベルで直接通信送信波を直接通信高周波増幅部602に入力することができる。なお、入力高周波電力がそれほど大きくない場合には、アンテナ601と直接通信高周波増幅部602とをアンテナスイッチ206で接続することは言うまでもない。
【0051】
入力された直接通信波は、高周波増幅部602で増幅され、周波数混合部603に入力される。周波数混合部603に入力された受信信号は、ローカル回路612から出力されるローカル信号と混合され、中間周波数に変換される。ローカル回路612から出力されるローカル信号は、発振回路(VCTCXO)611から出力される基準周波数を分周・逓倍することにより所定の周波数を生成する。周波数混合部603で中間周波数に変換された信号は、中間周波増幅部604で所定のレベルに増幅され、AD変換部605にてデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部607の直接波復調部608でデジタル復調され、出力端子609から音声信号が出力される。また、直接波復調部608からは、他の無線装置から送信される受信周波数同調のための制御データがAFC(Automatic Frequency Controller:自動周波数制御回路)620に供給される。AFC620では、受信信号の周波数と発振回路(VCTCXO)611の発信周波数との周波数誤差を計算し、誤差電圧を加算器621に出力する。加算器621には、記憶部204に記憶されている電圧値が読み出され、AFC620からの誤差電圧とを加算し、DA変換部610を介して発振回路(VCTCXO)611に制御電圧を供給する。これによって他の無線装置から送信されてきた周波数にローカル周波数を追従させ最適に復調できるように構成されている。
【0052】
また、加算器621の出力は、減算器201で記憶部204から読み出される電圧値と比較され、差分電圧が制御部203に供給される。そして、この多分電圧に対応する電圧で記憶部204が書き換えられる。これによって前記実施例で説明したと同様に発振回路(VCTCXO)611の経年変化による基準周波数の変化分を修正することが可能である。また、減算器201からの差分電圧が発生する度に、記憶部204を書き換えると、記憶部204が、例えば、不揮発性メモリで構成されている場合には、前述のように書き換え回数に制限があるので、閾値設定部205で、所定の閾値を設定し、書き換え回数の頻度を低減することもできる。
【0053】
なお、図2に示す実施例では、制御部203、記憶部204および閾値設定部205を基地局との通信用受信装置と、他の無線装置との直接波受信用の受信装置と共用する実施例について説明したが、発振回路(VCTCXO)111および611は、それぞれ異なり、周波数変動分も異なるので、それぞれの制御は、当然異なっている。従って、無線装置としては一体に示してあるが、制御部203、記憶部204および閾値設定部205をそれぞれ別々に設けるのが望ましい。
【0054】
また、高周波増幅部602、周波数混合部603、中間周波増幅部604、AD変換部605等で構成される部分を受信部と称し、加算器621、減算器(または差分器ともいう。)201、入力端子202、制御部203、記憶部304、閾値設定部205、DA変換部610、発振回路611、ローカル回路612等で構成される部分を発振部と称する。
【0055】
図3は、本発明の更に他の一実施例の概略構成を示すブロック図である。なお、上記各実施例では、デジタル無線装置で説明したが、本実施例は、アナログ無線装置で説明するが、基本的な動作は、アナログであっても、デジタルであっても同様である。図3において、アンテナ301から入力される受信信号は、切替スイッチ302を介してバンドパスフィルタ(BPF)303に供給される。切替スイッチ302は、送信、受信を切替えるためスイッチであり、単信通信の場合は、プレストークスイッチで構成される場合と、複信通信の場合は、送受信を高速に切替えるスイッチで構成する場合がある。BPF303では、帯域外信号が除去され、高周波増幅部304に入力され増幅される。次に、バンドパスフィルタ(BPF)305で再度帯域外信号が除去され、周波数混合部306に入力される。周波数混合部306には、PLL(Phase Locked Loop)周波数シンセサイザ315からの搬送波信号が供給され、高周波増幅部304からの高周波信号を中間周波数帯域の信号に変換し、バンドパスフィルタ(BPF)307でイメージ成分、搬送波成分が除去され、信号処理部309に供給される。なお、PLL周波数シンセサイザ315は、位相比較器、ローパスフィルタ、電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)で構成される、所謂、通常のPLL周波数シンセサイザが使用されているので、詳細な説明は省略する。信号処理部309の復調部310では、入力信号が所定の復調信号処理され、出力端子311から音声信号が出力される。
【0056】
ここで、周波数自動制御について説明する。314は、切替スイッチであり、基地局との通信においては、端子a側に接続されている。313は、水晶発振器等の発振回路であり、所定の基準発振周波数、例えば、19.2MHzの発振周波数を切替スイッチ314を介して周波数シンセサイザ315に供給している。この状態で復調部310から基地局からの受信周波数成分と発振回路313からの周波数成分とがAFC(Automatic Frequency Controller:自動周波数制御回路)312に供給される。AFC312では、基地局からの受信周波数成分と発振回路313からの周波数成分とを比較し、発振回路313の周波数偏差分を検出し、この周波数偏差分を発振回路313に供給し、発信周波数を自動調整する。従って、発振回路313の経年変化等による周波数変動も基地局からの送信周波数にAFC312により追随して制御され、補正されるように構成されている。
【0057】
一方、送信時には、入力端子317から入力された音声信号は、信号処理部309の変調部318で送信に必要な所定の変調を行い中間周波増幅部319に供給する。中間周波増幅部319では、所定レベルに信号増幅し、周波数混合部320に供給する。周波数混合部320では、PLL周波数シンセサイザ315からの搬送波信号と混合され、所定の送信周波数に変換され、電力増幅器321、バンドパスフィルタ(BPF)322、切替スイッチ302を介してアンテナ301から基地局に送信される。この送信時の搬送波周波数は、発振回路313の基準周波数で決定されるが、上述したように発振回路313の基準周波数は、基地局からの受信周波数に追随して制御されているので、送信周波数も変動の無いものとなっている。
【0058】
次に、切替スイッチ314を端子b側に接続した場合について説明する。上記説明では基地局と送受信する場合、発振回路313は、基地局からの受信周波数に追随して制御されているので、発振回路313の基準発振周波数も安定に制御されているが、無線装置がOFされている状態では、発振回路313の基準発振周波数は、基地局からの受信周波数に追随して制御されないため、発振回路313の基準発振周波数は変動し、問題となる。従って、本実施例で使用される発振器316は、高精度水晶発信器等の高安定な発振器を使用する。このような高安定な発振回路は、温度変動、機械的なストレス、環境変化等にも殆ど影響されないで、例えば、周波数許容偏差FDは、±0.9ppmの範囲内にあるように構成された発振回路である。そして、無線装置から送信を開始する場合には、電源スイッチをONすると、切替スイッチ314が端子b側に接続され、発振回路316から、例えば、基準発振周波数19.2MHzの高安定な発振周波数の信号がPLL周波数シンセサイザ315を介して周波数混合部320に供給され、周波数混合部320で所定の送信搬送波信号が生成される。
【0059】
このように基地局からの信号が受信できる場合は、基地局からの信号に追従し、基地局からの信号が受信できない場合は、発振回路を切替えて高精度水晶発振回路を接続し、基地局からの信号を受信しなくとも高安定の周波数で送信可能とすることができる。更に、このように構成することで基地局からの信号を受信できない場所でも送受信が可能となる。
【0060】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線装置の実施例に限定されるものではなく、上記以外の無線装置に広く適応することが出来ることは、言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の更に他の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明で使用される無線キャリアを説明するための図である。
【図5】従来の無線装置の一例を示すブロック図である。
【図6】従来の無線装置の他の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
101、301、601:アンテナ、102、206、302、314:切替スイッチ、103、304、602:高周波増幅部、104、117、306、320、603:周波数混合部、105、116、308、319、604:中間周波増幅部、106、605:AD変換部、107、607:デジタル信号処理部、108、310:復調部、109、311、609:出力端子、110、115、610:DA変換部、111、313、316、611:発振回路、112、612:ローカル回路、113、123、202、317、503、622:入力端子、114、318:変調部、118、321:電力増幅部、120、312、501、620:AFC、121、502、621:加算部、122、201:減算部、124、203、504、623:制御部、125、204、505、624:記憶部、126、205:閾値設定部、206:アンテナスイッチ、207:終端抵抗、303、305、307、322:BPF、309:信号処理部、315:周波数シンセサイザ、608:直接波復調部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の受信部、送信部、デジタル信号処理部および第1の発振部を有する無線装置であって、上記第1の受信部は、少なくとも基地局からの受信信号を中間周波信号に変換する第1の周波数混合部を有し、上記送信部は、所定の無線周波数を生成する第2の周波数混合部を有し、上記デジタル信号処理部は、上記第1の周波数混合部からの信号を復調する第1の復調部と、上記基地局からの受信信号の周波数と上記発振部の発振周波数との誤差信号電圧を出力する第1の自動周波数制御回路および入力信号を変調する変調部を有し、上記第1の発振部は、所定の基本周波数で発振する第1の発振回路と、上記第1の発振回路に供給される電圧値を記憶する記憶部と、上記自動周波数制御回路からの誤差信号に基づいて上記記憶部の電圧値を書き換える制御部および上記記憶部の電圧値と上記第1の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧とを加算して上記第1の発振回路に供給する加算部を有し、上記第1の発振部の出力を上記第1と第2の周波数混合部に供給することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線装置において、上記第1の発振部の制御部は、第1の閾値設定部を有し、上記第1の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧が上記第1の閾値設定部で設定された誤差範囲を超える場合、上記制御部は、上記記憶部に記憶されている電圧値を書き換えることを特徴とする無線装置。
【請求項3】
請求項1記載の無線装置において、更に、第2の受信部および第2の発振部を有し、上記第2の受信部は、少なくとも他の無線装置からの受信信号を中間周波信号に変換する第3の周波数混合部を有し、上記デジタル信号処理部は、更に、上記第3の周波数混合部からの信号を復調する第2の復調部と、上記他の無線装置からの受信信号の周波数と上記第2の発振部の発振周波数との誤差信号電圧を出力する第2の自動周波数制御回路を有し、上記第2の発振部は、所定の基本周波数で発振する第2の発振回路と、上記第2の発振回路に供給される電圧値を記憶する記憶部と、上記第2の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧に基づいて上記記憶部の電圧値を書き換える制御部および上記記憶部の電圧値と上記第2の自動周波数制御回路からの誤差信号電圧とを加算して上記第2の発振回路に供給する加算部を有し、上記第2の発振部の出力を上記第3の周波数混合部に供給することを特徴とする無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−134922(P2007−134922A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325606(P2005−325606)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】