説明

無線装置

【課題】無線信号を送信又は受信できない理由をユーザが簡単かつ正確に判別できるようにして、装置を設置又は調整する際の利便性を高める。
【解決手段】装置本体ユニットRUからアンテナユニットAUに対し、テレビジョン受信信号を伝送する信号ケーブル9を介してバスリセットパルスを送信し、このバスリセットパルスに対するプレゼンスパルスの応答を制御部8で検出し、その検出結果を表示する。また、上記バスリセットパルスの送信とプレゼンスパルスの受信を、アンテナユニットAUに設けられたチューニング高周波回路2を装置本体ユニットRUの制御部8から制御するために設けられている、1線式双方向ベースバンド通信方式を採用した既存の制御信号通信手段(第1及び第2の通信インタフェース6,7)を利用して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばテレビジョン受信装置のように、アンテナ部と装置本体部との間を同軸ケーブル等の信号ケーブルを介して接続するようにした無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にテレビジョン放送受信装置は、アンテナ部と、受信回路や画像処理回路、表示器などが内蔵された装置本体部とから構成される。そして、据置型の場合には、装置本体部は屋内に、アンテナ部は屋外にそれぞれ設置され、これらの間は同軸ケーブル等の信号ケーブルを介して接続される。また車載型の場合にも、装置本体部は車内に、アンテナ部は車外の屋根などにそれぞれ設置され、これらの間は信号ケーブルにより接続される。このように、アンテナ部を屋外又は車外に設置することで受信感度を高く保つことができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平5−161140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、アンテナ部の設置状態によっては所望の受信感度が得られず、特に地上ディジタル放送の場合にはまったく受信できなくなることがある。これは、受信装置をユーザ自ら設置する場合に特に発生しやすい。このような場合ユーザは、放送を受信できない理由が、アンテナ部の設置状態等に起因する受信不良によるものか、或いはアンテナ部と装置本体部との間の配線接続が正しく行われていないことによるものかを判別することができない。
【0004】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、無線信号を送信又は受信できない理由をユーザが簡単かつ正確に判別できるようにして、装置を設置又は調整する際の利便性を高めた無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためにこの発明の一観点は、アンテナ部と装置本体部との間を信号ケーブルを介して接続し、上記アンテナ部が送信又は受信する無線信号をアンテナ部と装置本体部との間で上記信号ケーブルを介して伝送する無線装置において、上記アンテナ部と上記装置本体部との間で上記無線信号とは異なる通信信号を上記信号ケーブルを介して伝送する通信手段と、この通信手段を利用した障害検出手段を新たに設ける。そして、この障害検出手段により、上記通信信号の伝送状態を監視してその監視結果をもとに上記アンテナ部と上記装置本体部との間の障害を検出し、その検出結果をユーザに提示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
したがってこの発明によれば、無線信号と共に同一の信号ケーブルを介して伝送される通信信号の伝送状態からアンテナ部と装置本体部との間の障害が検出され、その結果がユーザに提示される。したがって、ユーザは上記提示された情報をもとにアンテナ部と装置本体部との間の障害の有無を判断することができる。例えば、放送を受信できない場合に、通信信号が伝送されていなければアンテナ部と装置本体部との間に接続障害が発生している可能性があると判断できる。これに対し、通信信号が伝送されている場合にはアンテナ部と装置本体部との間には障害が無く、アンテナ部に障害が発生している可能性があると判断できる。
すなわちこの発明によれば、無線信号を送信又は受信できない理由をユーザが簡単かつ正確に判別できるようにして、装置を設置又は調整する際の利便性を高めた無線装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明に係わる無線装置の第1の実施形態であるテレビジョン放送受信装置の要部構成を示すブロック図である。
この実施形態のテレビジョン放送受信装置は、例えば車内に設置される装置本体ユニットRUと、車外の屋根に設置されるアンテナユニットAUとの間を、同軸ケーブルからなる信号ケーブル9を介して接続したものである。
【0008】
アンテナユニットAUは、アンテナ1と、チューナブル高周波回路2とを備えている。このうちチューナブル高周波回路2は、チューナブル整合回路、チューナブルフィルタ回路及び低雑音増幅器(LNA;Low Noise Amplifier)を集積回路化したものからなる。チューナブル整合回路及びチューナブルフィルタ回路はそれぞれ、後述する装置本体ユニットRUから送られる制御信号によりアンテナ1との間の整合インピーダンス及び受信通過帯域特性が可変制御される。チューナブル高周波回路2は、上記アンテナ1により受信された無線信号を、上記受信通過帯域特性に従い不要波成分を除去し、さらにLNAにより増幅したのち、信号ケーブル9へ送信する。
【0009】
一方、装置本体ユニットRUは、チューナ3と、復調器4と、ビデオ/オーディオデコーダ5と、マイクロコンピュータからなる制御部8とを備えている。チューナ3は、制御部8から与えられるチャネル選択用の制御信号に従い、アンテナユニットから信号ケーブル9を介して送られた無線(RF;Radio frequency)信号から受信対象チャネルに対応する信号を選択的に受信する。復調器4は、上記制御部8から与えられる復調方式に従い、上記チューナ3から出力される受信信号を復調して受信ベースバンド信号を出力する。ビデオ/オーディオデコーダ5は、上記制御部8から与えられる復号パラメータに従い、上記受信ベースバンド信号に含まれるビデオデータ及びオーディオデータを復号し、復号されたビデオ信号及びオーディオ信号をそれぞれ図示しない表示デバイス及びスピーカへ出力する。
【0010】
また、上記アンテナユニットAU及び装置本体ユニットRUには、それぞれ第1及び第2の通信インタフェース6,7が設けられている。これら第1及び第2の通信インタフェース6,7は、上記制御部8から出力される制御信号を信号ケーブル9を使用してアンテナユニットAUへ伝送するために使用するもので、通信方式としては1線式双方向ベースバンド通信方式が使用される。1線式双方向ベースバンド通信方式は、送信対象の信号を所定のフォーマットの双方向シリアル信号に変換して信号ケーブル9へ重畳する。1線式双方向ベースバンド通信方式を採用することで、アンテナユニットAUと装置本体ユニットRUとの間に新たな制御線を追加することなく、装置本体ユニットRUからアンテナユニットAUのチューナブル高周波回路2を遠隔制御することができる。
【0011】
1線式双方向ベースバンド通信方式を採用した通信インタフェースとしては、例えばダラスセミコンダクタ社の1−Wire(登録商標)インタフェースが使用される。この1−Wireインタフェースの詳細については、Maxim社のホームページwww.maxim-ic.comに述べられている。
【0012】
なお、C1,C2はブロッキングコンデンサであり、装置本体ユニットRUの通信インタフェース7から信号ケーブル9を介してアンテナユニットAUの第1の通信インタフェース6に供給される直流電圧がチューナブル高周波回路2及びチューナ3の信号ラインに供給されないようにする。また、図1では図示していないが、第1及び第2の通信インタフェース6,7と信号ケーブル9との間にはチョークコイルが介挿され、これにより第1及び第2の通信インタフェース6,7は信号ケーブル9から高周波的に分離されるようになっている。
【0013】
ところで、この実施形態の受信装置は、上記制御信号の通信手段を利用した障害検出手段を備えている。この障害検出手段は、制御部8において、上記第1及び第2の通信インタフェース6,7間で上記制御信号の伝送が正常に行われているか否かを監視することにより、アンテナユニットAUと装置値本体ユニットRUとの間の接続障害等を判定する。そして、この接続障害の判定結果を図示しない表示デバイスに表示する。
【0014】
次に、以上のように構成されたテレビジョン放送受信装置の動作を説明する。図2は制御部8による障害検出処理の手順と内容を示すフローチャートである。
装置の電源を投入してテレビジョン放送の受信動作を開始する際に、制御部8からアンテナユニットAUのチューナブル高周波回路2に向け制御信号が送信されるが、このとき制御部8は先ずステップS21により第2の通信インタフェース7に対しバスリセットパルスの発生を指示する。この結果、装置本体ユニットRUの第2の通信インタフェース7からは図3(a)に示すようにバスリセットパルスが発生され、このバスリセットパルスは信号ケーブル9を介してアンテナユニットAUの第1の通信インタフェース6へ転送される。
【0015】
第1の通信インタフェース6は、上記バスリセットパルスを正常に受信すると、図3(a)に示すようにプレゼンスパルスを返送する。このプレゼンスパルスは通信ケーブル9を介して第2の通信インタフェース7に転送される。第2の通信インタフェース7は、上記プレゼンスパルスを受信するとその旨を制御部8に通知する。
【0016】
制御部8は、ステップS22において上記プレゼンスパルスの応答の有無を監視する。そして、プレゼンスパルスの応答を検出すると、アンテナユニットAUと装置本体ユニットRUとの間は正常に接続されていると判断し、ステップS23に移行してその旨のメッセージ、例えば「アンテナ−装置本体間接続OK」を生成して、このOKメッセージを表示デバイスに表示させる。したがってユーザは、上記OKメッセージにより、アンテナユニットAUと装置本体ユニットRUとの間が正常に接続されていることを確認できる。
【0017】
またこのとき、上記OKメッセージが表示されたにもかかわらず、一定時間が経過してもテレビジョン映像が表示デバイスに表示されなかったとする。そうすると制御部8は、アンテナユニットAUに受信障害があると判断し、その旨のメッセージを表示デバイスに表示させる。したがって、この場合ユーザは、テレビジョン映像が表示されない理由が、アンテナユニットAUの設置が正しくなされていないか、又は放送電波を受信できない場所にいるからであると認識することができ、これによりアンテナユニットAUを設置し直すか又は電波を受信可能な場所に移動すると云った対策を、迅速かつ適切に講じることができる。
【0018】
一方、上記ステップS22による判定において、例えば図3(b)に示すようにバスリセットパルスの送信後一定時間以内にプレゼンスパルスの応答を検出できなかったとする。この場合制御部8は、アンテナユニットAUと装置本体ユニットRUとの間に接続障害があると判断し、ステップS24に移行してその旨のメッセージ、例えば「アンテナ−装置本体間接続NG」を生成して、このNGメッセージを表示デバイスに表示させる。したがってユーザは、上記NGメッセージにより、アンテナユニットAUと装置本体ユニットRUとの間が正常に接続されていないと認識し、これにより接続ケーブル9の再接続を行うといった適切な対応を即時講じることができる。
【0019】
以上述べたように第1の実施形態では、装置本体ユニットRUからアンテナユニットAUに対し、テレビジョン受信信号を伝送する信号ケーブル9を介してバスリセットパルスを送信し、このバスリセットパルスに対するプレゼンスパルスの応答を制御部8で検出して、その検出結果を表示デバイスに表示するようにしている。このためユーザは、アンテナユニットAUと装置本体ユニットRUとの間が正常に接続されているか否かを明確に知ることが可能となる。
【0020】
しかも、上記バスリセットパルスの送信とプレゼンスパルスの受信を、アンテナユニットAUに設けられたチューニング高周波回路2を装置本体ユニットRUの制御部8から制御するために設けられている、1線式双方向ベースバンド通信方式を採用した既存の制御信号通信手段(第1及び第2の通信インタフェース6,7)を利用して行っている。このため、上記接続障害の検出のために専用の通信手段を新たに設ける必要がなく、これにより本発明を簡易かつ安価に実現できる利点がある。
【0021】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、複数のアンテナユニット(アンテナブランチ)を備え、これらのアンテナユニットによる放送受信信号を切替又は合成することにより受信品質を高める受信ダイバーシチ方式を採用したテレビジョン放送受信装置において、各アンテナユニットと装置本体ユニットとの間の接続障害をそれぞれ検出して表示すると共に、接続障害が検出されたアンテナブランチを切り離すように制御するようにしたものである。
【0022】
図4は、この発明に係わる無線装置の第2の実施形態であるダイバーシチ式テレビジョン放送受信装置の構成を示すブロック図である。
この実施形態のテレビジョン放送受信装置は、車両の屋根に第1及び第2のアンテナユニットAAU,ABUを一定の距離を隔てて配設すると共に、車内に装置本体ユニットRDUを設置する。そして、上記各アンテナユニットAAU,ABUと装置本体ユニットRDUとの間をそれぞれ、個別に同軸ケーブル等の信号ケーブル9A,9Bを介して接続したものである。
【0023】
第1のアンテナユニットAAUは、アンテナ1Aと、チューナ3Aとを備え、同様に第2のアンテナユニットABUは、アンテナ1Bと、チューナ3Bとを備えている。このうちチューナ3A,3Bは、集積回路化されたいわゆるシリコンチューナからなり、後述する装置本体ユニットRDUの制御部80から与えられる制御信号に従い受信対象チャネルの無線信号を選択的に受信して、中間周波数(IF;Intermediate Frequency)からなる受信信号を信号ケーブル9A,9Bへ出力する。
【0024】
装置本体ユニットRDUは、復調器40と、ビデオ/オーディオデコーダ50と、マイクロコンピュータからなる制御部80とを備える。復調器40は、上記制御部80から与えられる復調方式に従い、上記各アンテナユニットAAU,ABUのチューナ3A,3Bから信号ケーブル9A,9Bを介して送られる中間周波数の放送受信信号をそれぞれ復調し、さらにこの各復調信号を制御部80からの指示に従い切替又は合成して、受信ベースバンド信号を出力する。ビデオ/オーディオデコーダ5は、上記制御部8から与えられる復号パラメータに従い、上記受信ベースバンド信号に含まれるビデオデータ及びオーディオデータを復号し、この復号により再生されたビデオ信号及びオーディオ信号をそれぞれ図示しない表示デバイス及びスピーカへ出力する。
【0025】
また、上記各アンテナユニットAAU,ABUにはそれぞれ第1の通信インタフェース6A,6Bが設けられ、かつ装置本体ユニットRDUには第2の通信インタフェース70が設けられている。これら第1の通信インタフェース6A,6B及び第2の通信インタフェース70は、上記制御部80から出力される制御信号を信号ケーブル9A,9Bを介してアンテナユニットAAU,ABUへそれぞれ伝送するために使用するもので、通信方式としては前記第1の実施形態と同様に1−Wireインタフェースからなる1線式双方向ベースバンド通信方式が使用される。
【0026】
図5は、信号ケーブル9A,9Bに対する上記第1の通信インタフェース6A,6B及び第2の通信インタフェース70の接続構成の一例を示すものである。なお、同図では通信インタフェース6A,6Bのうち一方6Aの接続構成のみを示し、他方6Bについては図示の簡単のため省略している。
【0027】
第1の通信インタフェース6AはI2CバスブリッジIC(Integrated Circuit)により構成される。このI2CバスブリッジICのI2Cバス信号端子及びクロック端子はチューナ3Aに接続され、これによりI2CバスブリッジICからチューナ3Aに対し制御信号(データ信号)及びクロック信号が供給される。また、I2CバスブリッジICの1−Wire信号端子はチョークコイルLA1を介して信号ケーブル9Aに接続され、これにより信号ケーブル9Aとの間で1−Wire信号の送受信を行う。チョークコイルLA1は、通信インタフェース6A,6Bと信号ケーブル9A,9Bとを高周波的に分離することで信号ケーブルの高周波特性を悪化させないようにするためのものである。
【0028】
一方、第2の通信インタフェース70もI2CバスブリッジICからなる。このI2CバスブリッジICのI2Cバス信号端子及びクロック端子は制御部80に接続され、これにより制御部80との間で制御信号及びクロック信号の送受信が行われる。また、I2CバスブリッジICの1−Wire信号端子は、チョークコイルLA2を介して信号ケーブル9Aに接続される。これにより通信インタフェース70と信号ケーブル9Aとを高周波的に分離して信号ケーブルの高周波特性を劣化させないようにしている。これは、通信インタフェース70と信号ケーブル9Bとの間についても同様である。また1−Wire信号端子はプルアップ抵抗RP3によりプルアップされている。このプルアップ抵抗RP3は1−Wire信号の直流信号レベルを規定する。なお、信号ケーブル9Aとチューナ3A及び復調器40との間にはブロッキングコンデンサCA1,CA2が介挿されているので、チューナ3A及び復調器40は上記プルアップ抵抗RP3により規定された直流電圧の影響を受けない。
【0029】
なお、装置本体ユニットRDUでは、上記ブロッキングコンデンサCA2と復調器40との間にバイアス回路10が接続されている。バイアス回路10は復調器40に対し最適な直流電圧レベルを与えるもので、例えば図6に示すように電源電圧をバイアス抵抗R11,R12により1/2に分圧してバイアス電圧を生成し、このバイアス電圧をチョークコイルL10を介して復調器40に供給する。なお、C10はデカップリングコンデンサである。
【0030】
次に、以上のように構成されたテレビジョン放送受信装置の動作を説明する。図7は制御部80による障害検出処理の手順と内容を示すフローチャートである。
装置の電源を投入してテレビジョン放送の受信動作を開始する際に、制御部80からアンテナユニットAAU,ABUのチューナ3A,3Bに向けチャネル制御信号が送信されるが、このとき制御部80は先ずステップS71により第2の通信インタフェース70に対しバスリセットパルスの発生を指示する。この結果、装置本体ユニットRDUの第2の通信インタフェース70からは、図3(a)に示したようにバスリセットパルスが発生され、このバスリセットパルスは信号ケーブル9A,9Bを介してアンテナユニットAAU,ABUの第1の通信インタフェース6A,6Bへそれぞれ転送される。
【0031】
第1の通信インタフェース6A,6Bはそれぞれ、上記バスリセットパルスを正常に受信すると、図3(a)に示すようにプレゼンスパルスを返送する。このプレゼンスパルスは通信ケーブル9A,9Bを介して第2の通信インタフェース70に転送される。第2の通信インタフェース70は、上記プレゼンスパルスを受信するとその旨を制御部80に通知する。
【0032】
制御部80は、ステップS72においてアンテナユニットAAU,ABUごとに上記プレゼンスパルスの応答の有無を監視する。そして、プレゼンスパルスの応答を検出すると、アンテナユニットAAU,ABUと装置本体ユニットRDUとの間はそれぞれ正常に接続されていると判断し、ステップS73に移行してその旨のメッセージ、例えば「アンテナ−装置本体間接続OK」を生成して、このOKメッセージを表示デバイスに表示させる。したがってユーザは、上記OKメッセージにより、アンテナユニットAAU,ABUと装置本体ユニットRDUとの間がそれぞれ正常に接続されていることを確認できる。
【0033】
またこのとき、上記OKメッセージが表示されたにもかかわらず、一定時間が経過してもテレビジョン映像が表示デバイスにまったく表示されなかったとする。この場合制御部80は、アンテナユニットAAU,ABUの両方に受信障害があると判断し、その旨のメッセージを表示デバイスに表示させる。したがって、ユーザは、テレビジョン映像が表示されない理由が、アンテナユニットAAU,ABUの設置が正しくなされていないか、又は放送電波を受信できない場所にいるからであると認識することができ、これによりアンテナユニットAAU,ABUを設置し直すか又は電波を受信可能な場所に移動すると云った対策を、迅速かつ適切に講じることができる。
【0034】
一方、上記ステップS72による判定において、信号ケーブル9A,9Bの一方で、例えば図3(b)に示したようにバスリセットパルスの送信後一定時間以内にプレゼンスパルスの応答を検出できなかったとする。この場合制御部80は、アンテナユニットAAUと装置本体ユニットRDUとの間、又はアンテナユニットABUと装置本体ユニットRDUとの間に接続障害があると判断し、ステップS74に移行してその旨のメッセージ、例えば「アンテナ−装置本体間接続NG」を生成して、このNGメッセージを表示デバイスに表示させる。したがってユーザは、上記NGメッセージにより、アンテナユニットAAU又はABUと装置本体ユニットRUとの間が正常に接続されていないと認識し、これにより接続ケーブル9A又は9Bの再接続を行うといった適切な対応を即時講じることができる。
【0035】
また、上記制御部80は、上記ステップS72により信号ケーブル9A,9Bの一方でプレゼンスパルスの応答を検出できなかったとすると、ステップS75に移行して、プレゼンスパルスの応答を検出できなかった側のアンテナブランチを受信対象から切り離す制御を行う。例えば、いま信号ケーブル9Aにおいてプレゼンスパルスの応答が検出されなかったとすると、制御部80はアンテナユニットAAUの系列を切り離すための指示を復調器40に与える。この結果、復調器40ではアンテナユニットAAUからの受信信号を除外し、アンテナユニットABUからの受信信号のみを復調してその復調信号をビデオ/オーディオデコーダ50へ出力する。したがって、故障した系列のノイズ等が受信映像及び受信音声に悪影響を及ぼす不具合は防止される。
【0036】
以上述べたように第2の実施形態では、装置本体ユニットRDUから各アンテナユニットAAU,ABUに対しそれぞれ、テレビジョン受信信号を伝送する信号ケーブル9A,9Bを介してバスリセットパルスを送信し、このバスリセットパルスに対するプレゼンスパルスの応答を制御部80で検出し、その検出結果を表示デバイスに表示するようにしている。このためユーザは、アンテナユニットAAU,ABUと装置本体ユニットRDUとの間が正常に接続されているか否かを明確に知ることが可能となる。
【0037】
また、上記バスリセットパルスの送信とプレゼンスパルスの受信を、アンテナユニットAAU,ABUに設けられたチューナ3A,3Bを装置本体ユニットRDUの制御部80から制御するために設けられている、1線式双方向ベースバンド通信方式を採用した既存の制御信号通信手段(第1及び第2の通信インタフェース6A,6B及び70)を利用して行っている。このため、上記接続障害の検出のために専用の通信手段を新たに設ける必要がなく、これにより簡易かつ安価に実現できる利点がある。
【0038】
さらに、信号ケーブル9A,9Bの一方でプレゼンスパルスの応答を検出できなかった場合に、このプレゼンスパルスの応答を検出できなかった側のアンテナブランチを受信対象から切り離すようにしている。このため、故障した系列のノイズ等が受信映像及び受信音声に悪影響を及ぼす不具合を防止することができる。
【0039】
(その他の実施形態)
前記第1及び第2の実施形態では、アンテナユニットと装置本体ユニットとの間で制御信号を伝送するための通信インタフェースとして1−Wireインタフェースを使用した場合を例にとって説明したが、テキサスインスルメンツ社のHDQインタフェース等、その他の通信インタフェースも使用可能である。
【0040】
前記第1及び第2の実施形態では、テレビジョン放送受信装置を例にとって説明した。しかし、それに限らず、防災無線受信装置や、タクシー無線等の業務用無線装置にもこの発明は適用可能である。すなわち、受信専用の無線装置に限らず、送信専用の無線装置や、送信機能及び受信機能を備えた無線装置にも適用可能である。
【0041】
その他、制御信号を利用した障害検出手段の構成や、障害検出処理の手順及び内容、障害検出に使用する信号の種類や構成、障害検出結果を表すメッセージの内容、当該メッセージをユーザに提示する提示手段の構成(表示のみに限らず音声メッセージにより提示してもよい)、信号ケーブル種類とその接続構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0042】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる各実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明に係わる無線装置の第1の実施形態であるテレビジョン放送受信装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】図1に示したテレビジョン放送受信装置における故障検出処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【図3】図2に示した故障検出処理に使用される制御信号の一例を示すもので、(a)はアンテナ−装置本体間の接続が正常な場合を示し、(b)はアンテナ−装置本体間の接続が異常な場合を示す。
【図4】この発明に係わる無線装置の第2の実施形態であるテレビジョン放送受信装置の要部構成を示すブロック図。
【図5】図4に示したテレビジョン放送受信装置における制御信号通信手段の構成を示す図。
【図6】図4に示したテレビジョン放送受信装置に設けられるバイアス回路の構成の一例を示す回路図。
【図7】図4に示したテレビジョン放送受信装置における故障検出処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
AU,AAU,ABU…アンテナユニット、RU,RDU…装置本体ユニット、1,1A,1B…アンテナ、2…チューナブル高周波回路、3,3A,3B…チューナ、4,40…復調器、5,50…ビデオ/オーディオデコーダ、6,6A,6B…第1の通信インタフェース、7,70…第2の通信インタフェース、8,80…制御部、9,9A,9B…信号ケーブル、10…バイアス回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ部と装置本体部との間を信号ケーブルを介して接続し、前記アンテナ部が送信又は受信する無線信号を前記アンテナ部と装置本体部との間で前記信号ケーブルを介して伝送する無線装置において、
前記アンテナ部と前記装置本体部との間で、前記無線信号とは異なる通信信号を前記信号ケーブルを介して伝送するための通信手段と、
前記通信手段による前記通信信号の伝送状態を監視し、その監視結果に基づいて前記アンテナ部と前記装置本体部との間の障害を検出する障害検出手段と、
前記障害検出手段による検出結果をユーザに提示する提示手段と
を具備することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記アンテナ部が動作状態を制御可能なチューナブル高周波回路を備え、前記装置本体部が前記チューナブル高周波回路の動作状態を制御する制御信号を発生する第1の制御回路を備える場合に、
前記通信手段は、前記第1の制御回路により発生された第1の制御信号を前記通信信号として前記信号ケーブルを介して前記チューナブル高周波回路へ伝送し、
前記障害判定手段は、前記制御信号の伝送状態を監視し、その監視結果に基づいて前記アンテナ部と前記装置本体部との間の障害を検出することを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
前記アンテナ部が複数のアンテナユニットを備え、これらのアンテナユニットがそれぞれ異なる信号ケーブルを介して前記装置本体部に接続されている場合に、
前記通信手段は、前記複数のアンテナユニットと前記装置本体部との間で、前記通信信号を前記異なる信号ケーブルを介してそれぞれ伝送し、
前記障害検出手段は、前記通信手段により前記異なる信号ケーブルを介して伝送される前記通信信号の伝送状態をそれぞれ監視し、その監視結果に基づいて前記複数のアンテナユニットと前記装置本体部との間の障害を個別に検出することを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項4】
前記障害検出手段により、前記複数のアンテナユニットのうちの一部のユニットと前記装置本体部との間の障害が検出された場合に、当該障害が検出されたアンテナユニットを前記無線信号の送信又受信対象から切り離す手段とを、さらに具備することを特徴とする請求項3記載の無線装置。
【請求項5】
前記通信手段は、前記アンテナ部及び装置本体部にそれぞれ設けられる第1及び第2の1線式通信インタフェース回路を備え、
前記第1及び第2の1線式通信インタフェース回路は、
前記通信信号を前記無線信号に対し分離可能な信号形態に変換したのち前記信号ケーブルへ送出する手段と、
前記信号ケーブルを介して伝送された通信信号を前記無線信号から分離して受信する手段と
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−267075(P2007−267075A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89859(P2006−89859)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】