説明

無線通信を備える携帯型EEGモニタ・システム

低血糖発作を発症し得る人物のEEG信号の遠隔監視システムは,上記人物からの一または複数のEEG信号を計測する電極(5)を備えるEEGセンサ部(2)を備え,EEG信号を解析するEEG信号処理手段(13)を有する上記人物の耳に取外し可能に配置される処理ユニット(4)を備え,上記信号処理手段がEEG信号に基づいて人物における低血糖発作を識別しまたは予測するように構成されている。処理部(4)は解析されたEEG信号に基づいて警告または情報を提供すべき時を決定する決定手段を備えている。上記システムはEEGセンサ部(2)と処理ユニット(4)の間の第1接続を備え,埋込可能EEGセンサから処理ユニットにEEG信号を送信する。上記システムは処理部からの警告を無線で受信する外部パート(3)を備え,外部パートは警告を介助者に送る。上記システムは処理ユニットと外部パートの間の無線の第2の接続(20)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,人の脳波記録信号(electroencephalography)(EEG)の監視に基づいて人の切迫発作(imminent seizure)の警告(アラーム)を提供するシステムに関する。より詳細にはこの発明は,低血糖発作し得る人物のEEG信号の遠隔監視のためのシステムに関し,上記人物からの一または複数のEEG信号を計測する電極(複数)を有するEEGセンサを備えるシステムに関する。上記システムはさらに上記EEG信号を解析するEEG信号処理手段を有する処理ユニットを備え,上記信号処理手段が上記EEG信号に基づいて上記人物における低血糖発作を識別(特定)しまたは予測するように構成されており,上記処理部が上記解析されたEEG信号に基づいて警告または情報を提供しなければならないときを決定する決定手段を備えている。
【背景技術】
【0002】
糖尿病を患う者にとって血糖濃度(blood sugar concentration)の正確な制御は重要である。上記レベルは糖尿病の長期的影響のリスクを抑えるためには高すぎるべきではない。血糖値レベルはまた低すぎるべきでなく,それは人が意識喪失または意識不明に陥ることがある低血糖症につながりかねないからである。低血糖発作は致命的となることさえある。糖尿病を患う者の中には,血糖濃度が低血糖発作の生じるレベルにまで低下する前に何らの兆候(any warning)を感じないという問題を持つ者がいる。この現象は無自覚性低血糖症(hypoglycemic unawareness)として知られている。このため発作のリスクは当該人物の可能な活動をしばしば制限し,さらに生活の質を低下させる。発作は簡単なやり方,たとえば血糖値が危機的に低下したときに適切な食べ物を摂取することで防ぐことができる。上述のリスク・グループにある人数は約1000万人を数える。
【0003】
国際特許公開WO−A1−2006066577は,埋込ユニットのみが低消費電力のインターフェースとして動作する,低血糖発作を予測しかつ警告する装置を開示しており,上記装置は一または複数の電極からのEEG信号を集めて皮膚を通して外部ユニットに無線で送信する。上記外部ユニットは信号処理ユニットおよび警告信号装置を含む,より多くの電力を必要とする構成要素を備えている。この場合上記警告は音響信号とすることができる。
【0004】
国際特許公開WO−A1−2006066577はさらに,埋込ユニットが,信号処理装置,警告装置,外部ユニットによって皮膚を通して無線で充電される充電可能な電池,および埋込ユニットから外部ユニットまたは一または複数の代用外部装置に向けてデータを転送することができる無線通信回路の双方を含む,低血糖発作を予測および警告する装置を開示している。
【0005】
国際特許公開WO−A2−2007047667は生体電位計測システム,遠隔モニタリングシステムおよび携帯機器を含む装置を開示する。上記生体電位計測システムは,脳波および筋電の計測値(the EEG and EMG readings)に関連付けられた生体信号パターンを計測するために医学的監視下にある患者に関して用いられる。上記遠隔モニタリングシステムおよび上記携帯機器は,上記生体電位計測システムからの生体電位関連データの送信を受信するように構成されている。緊急特性が検出された場合,上記遠隔モニタリングシステムは,適切なデータおよび/または所定の通知警告またはメッセージを医学的に利用可能な携帯機器に向けて送信することができる。
【0006】
国際特許公開WO−A2−2008092133は,対象者およびその者の発作についての罹患性(susceptibility)をモニタリングするシステムを開示する。上記システムは埋込アセンブリおよび外部アセンブリを含む。上記外部アセンブリは警告指示を提供するために用いることができる。上記外部アセンブリからの出力は,視覚的なもの,聴覚的なもの,触覚的なもの(たとえば振動),またはこれらの組合せとすることができる。開示されているシステムは,埋込アセンブリと外部センブリの間の通信エラーの存在を示すように構成されるアラートを含むこともできる。上記アラートは視覚的アラート,聴覚的アラート,触覚的アラート,またはこれらの組合せとすることができる。上記外部アセンブリの構成要素は,MP3プレーヤまたは携帯電話のような典型的な消費者電子機器の筐体中に統合することができる。上記埋込アセンブリと上記外部アセンブリの間でデータを送信するために用いられる無線周波数は,典型的には13.56MHzから10GHzの間の周波数である。
【0007】
国際特許公開WO−A2−2007150003は,患者からの生体信号の携帯型長期モニタリング(ambulatory, long term monitoring)のためのシステムを開示する。上記システムの少なくとも一部を患者の体内に埋込むことができる。外部給電のリードレスの埋込装置を用いて患者から脳活動信号がサンプリングされ,さらなる処理のためにハンドヘルドの患者用通信装置に送信される。上記外部装置は典型的にはユーザ・インターフェースを含む。上記ユーザ・インターフェースを,上記埋込装置が通信範囲外となったときに警告信号を提供するために用いることができる。
【0008】
糖尿病を患う者の多くは高齢者であり,その中には切迫した低血糖発作の警告に応じて必要な行動をとることを常には期待できない者もいる。糖尿病を持つ子供についてもこれは当てはまる。切迫した低血糖発作を防ぐために補助(助け)を必要とする者については,同じ部屋にいるとは限らないヘルパーたとえば介助者(care giver)に向けて警告を送信することもできるシステムとする必要がある。子供の場合上記ヘルパーは通常は親であろう。過失を避けるためには,このようなシステムの取扱い(操作)(handling)ができるだけ簡単で,かつシステムの制御が簡単であることが不可欠である。簡単な取扱いは電池の充電または再充電の間隔をできる限り長くする必要があることを含む。システムの簡単な制御は,身体の表皮上に配置される部分の正確な位置決めをチェックすることが簡単である必要があることを含む。簡単な取扱いおよび簡単な制御は,一人のヘルパーまたは介助者が様々な人に関連する複数の警告システムに注意を向ける必要があり,それと同時に様々な複数の業務を行う必要がある老人ホームにおいて,特に重要である。
【0009】
切迫した低血糖発作の警告のための既知のシステムは,容易に取扱われかつ制御されるシステムを用いて無線でヘルパーを警告することができるシステムを得るという要求を,適切に満たすものではない。
【発明の開示】
【0010】
この問題点は,低血糖発作を発症し得る人物(a person susceptible of having a hypoglycemic seizure)のEEG信号の遠隔監視システムによって解決することができ,上記システムは上記人物からの一または複数のEEG信号を計測する電極(複数)(electrodes)を有するEEGセンサを備えている。上記システムはさらに上記EEG信号を解析するEEG信号処理手段を有する,上記人物の耳に取外し可能に配置される処理ユニットを備え,上記信号処理手段が,上記EEG信号に基づいて,上記人物における低血糖発作を識別(特定)しまたは予測するように構成されており,上記処理部(processing part)が上記解析されたEEG信号に基づいて,警告(アラーム)または情報を提供しなければならないとき(when an alarm or information must be provided)を決定する決定手段を備えている。上記システムはまた,上記人物に警告を提供する警告手段を備えている。上記システムはさらに上記EEGセンサ部から上記処理ユニットへEEG信号を送信するように構成された上記EEGセンサ部と上記処理ユニットとの間の第1の接続を備えている。上記システムはさらに上記処理部からの警告を無線で受信するように構成された外部パート(external part)を備え,上記外部パートは警告をヘルパーに送るように構成されており,上記システムは上記処理ユニットと上記外部パートとの間に第2の無線接続を備えている。
【0011】
このソリューション(解決手段)の利点は,上記制御ユニットのハウジングが耳に配置される場合に,上記処理ユニットの正しい位置決めを制御することが容易になることである。正しく位置決めされているかどうかは直接に視認することができる。さらに,上記人物の頭部に配置される上記システムの部分を比較的小さくかつ軽く作ることができる。
【0012】
上記信号処理が上記処理ユニットにおいて直接に実行されることも利点である。したがって,上述のEEG信号を外部パートに送信する必要はない。警告または他の特定の情報のみが送信されればよい。送信のための電力がセーブされる。
【0013】
EEG信号の遠隔監視システムの好ましい実施態様では,上記システムは上記人物に警告(アラーム)を提供する警告手段を備えており,このシステムでは低血糖監視下にある上記人物に直接に警告を与えることができる。上記警告手段はスピーカ(a loudspeaker)または機械的な振動器(mechanical vibrator)とすることができ,上記処理ユニット中に設けることができる。上記人物に直接に警告を与え,かつヘルパーに無線で警告を送信することの両方を行うことは,上記人物が自分自身で警告に対処するための学習のためのトレーニング期間にあるときに一つの利点となる。このような期間中に上記人物は上記システムに慣れることができ,ヘルパーまたは介助者への警告は低血糖発作を回避するための追加安全策(extra safety precaution)となる。
【0014】
ヘルパーに無線警告を与えることができるとともに,低血糖リスクを持つ上記人物に直接に警告を与えることができるシステムの他の利点は,直接警告およびヘルパーへの無線警告のニーズが変わるときに,上記システムを変更する必要が必ずしもないことである。このような変化には,子供が自分自身で上記警告に対処することを学習し,親からのバックアップをもはや必要としなくなることがある。高齢者も一時的には警告に対処することができようが,定期的にヘルパーにも警告(アラーム)を与えて安全性を確保する必要があろう。論理的には,2つの別々のシステムではなく,両方を行うことができる1つのシステムを製造しかつ供給することで,より簡単かつしたがって低価格になる。
【0015】
さらなる利点は,上記人物への直接警告と介助者への無線警告の両方が可能であることは,同一バージョンまたはモデルのEEGセンサおよび処理ユニットを,上記人物への警告だけが必要なとき,および上記介助者への警告だけが必要なときの両方に用いることができることを意味することである。したがって,製造が必要とされる異なるバージョンまたはモデルの必要数を減らすことができる。
【0016】
EEG信号の遠隔監視システムの好ましい実施態様では,上記EEGセンサ部は頭部に埋込まれるように構成される。この埋込は皮下ないし頭蓋内(subcutaneous or intra cranial)に行うことができる。電極(複数)と組織(tissue)との良好な接触(a better contact)を得ることができる利点がある。皮下的EEGセンサは比較的容易に埋込むことも可能である。これに代えて,上記EEGセンサ部を外耳道内に配置して,外耳道内において電極(複数)を組織と接触させることもできる。これによってあらゆる手術が回避されることになるが,電極(複数)と組織との接触はやや安定性に欠ける(less stable)。
【0017】
埋込みEEGセンサ部を備えるシステムのさらなる実施態様において,上記第1の接続が無線であり,上記EEGセンサ部が第1のコイルを備え,かつ上記処理ユニットが第2のコイルを備える。上記第1の無線接続は上記第1および第2のコイル間の誘導結合に基づき,上記第1の無線接続は上記処理ユニットから上記埋込可能EEGセンサ部へ電力を転送するように構成される。上記処理ユニットから給電されるので,これによって上記埋込みEEGセンサ部を電池無しで駆動させることができるようになる。
【0018】
上記システムの好ましい実施態様では,上述した外部パートが遠隔パート(remote part)に警告または情報を送信するように構成される。これは,ヘルパーと低血糖発作のリスクを持つ人物との間の距離をより大きくとることができるという利点を持つ。
【0019】
上記システムのさらなる実施態様では,上記遠隔パートが携帯電話であり,上記警告または情報が標準携帯電話ネットワークを通じて送信される。これは,介助者が追加の装置(extra equipment)を持運ぶ必要を無くし,同一の携帯電話の使用によって複数の人物を簡単に調査することができる利点を持つ。
【0020】
上記システムのさらなる実施態様では,上記遠隔パートが上記外部パートまたは上記処理ユニットに向けて指示(instructions)を送信するように設定される。これによって上記外部パートまたは処理ユニットの一方ないし両方を紛失したときに,音を発生させるようにそれらをトリガすることによって,簡単に発見することができるようになる。特定の情報をリターンするためにそれらの一方または両方をトリガすることもできる。
【0021】
上記システムのさらなる実施態様では,上記外部パートは,リモート・コントロール(remote control),データ・ロガー(data logger),上記処理ユニットへのデータのストリーミング(streaming of data to the processing unit),警告の対処についての情報入力のための端末(terminal for entering information about the handling of an alarm)から選択される,少なくとも一つの追加機能(at least one further function)を備える。上記人物が一または複数のこれらの目的のために上記外部パートを用いることができる場合,上記システムの機能性が向上することになる。上記リモート・コントロールは,たとえば,寝ている,起きている,または運動している,といった上記人物の身体状況に依存して特定プログラムを選択するために用いることができる。データ・ロガーは大容量のデータのロギングに用いることができ,たとえばそれがEEG信号をログする期間(a period)に関連する場合に,上記処理ユニットのより制限されたスペースよりも多くのデータロギング量を提供することができる上記外部パートに向けて信号がストリーミングされるように,上記処理ユニットを設定することができるようになることが促進される。上記外部パートは,上記処理ユニットに向けた音楽またはラジオといったデータ・ストリーミングのために用いることができ,上記警告手段を形成するスピーカを通じて上記人物に向けてそれを再生することができる。上記外部パートは,上記人物の精神状態を確認するために,上記システム用のキーボードのような端末として用いることができる。警告が与えられると,上記システムは,低血糖症が発症することを避けるために,食べることまたは飲むことのような必要なステップの応答を上記人物に求めることができる。さらに,上記人物が低血糖症の兆候にある場合をチェックするために上記システムを設定することもできる。これは,上記外部パートにおいてコードまたは簡単な計算結果を入力することを上記人物に求めることによって,行うことができる。
【0022】
上記システムのさらなる実施態様において,上記処理ユニットと上記外部パートの間の上記第2の無線通信は,誘導リンク(an inductive link)に基づく。これ用のアンテナは従来の無線通信用アンテナに比べて小さくすることができる。
【0023】
第2の観点において,この発明は人物における切迫した低血糖発作の警告を検出しかつ供給するEEG監視方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】システムの処理ユニットが耳の後ろに配置されるように用意され,EEGセンサ部が耳の後ろの範囲に皮下的に配置されるように用意される実施例を示す。
【図2】埋込みEEGセンサ部に基づくEEG信号の遠隔監視システムを概略的に示す。
【図3】EEG信号の監視方法のためのフローチャートを示す。
【実施例】
【0025】
以下,図面を参照してこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0026】
図1はEEG信号の遠隔監視システム1を備える人物の頭部6を示している。上記人物は埋込可能EEGセンサ2および処理ユニット4を着用することでモニタされる。上記2つのユニット2,4は人の皮膚を通して無線通信するように構成されている。埋込EEGセンサ2は電極(複数)5を備えている。上記センサは少なくとも2つの電極を有し,電極は図1に示すように,同じワイヤ5に沿う離間電極(separate electrodes)として設けることができる。各導体(each conductors)に関連づけられたすべての電極を1本のワイヤが備えることで,埋込処理の容易化を図ることができる。上記EEGセンサは電子回路モジュール7を備えている。
【0027】
上記処理ユニット4は上記EEG信号をモニタすべき人物の耳に配置される。好ましくは,上記処理ユニット4は耳掛け型補聴器として耳の後ろのハウジング中に配置される。これによって皮膚を通した無線通信と電源伝達のために重要な上記埋込部にできるだけ近づけることも容易になる。上記ハウジングを耳の後ろにある状態に固定するための手段も必要である。この目的のために,補聴器から外耳道内に音を伝えるためにも用いられるワイヤまたは音チューブの部分を用いることができる。これは,このワイヤまたは音チューブが比較的硬いものでなければならないこと,すなわち使用中に元の形状を維持するようなものでなければならないことを意味する。さらにこの目的のために,上記ワイヤまたは音チューブを上記ユーザに向けて音警告またはメッセージを提供するために用いることもできる。ワイヤであればスピーカまたはレシーバを外耳道内またはその近くに配置することができる。音チューブであればスピーカまたはレシーバを上記処理ユニットの上記ハウジング中に配置することができる。
【0028】
図1はさらに外部パート(外部要素)(an external part)3および遠隔パート(遠隔要素)(remote part)30を示している。
【0029】
図2はEEG信号の監視システムの一実施態様の主要構成要素を示している。
【0030】
上記埋込可能EEGセンサ2と上記処理ユニット4の間の無線接続12は,上記センサ中のコイル10と上記処理ユニット中のコイル11との間の誘導結合(inductive coupling)に基づく。この無線接続12は,上記処理ユニット4から上記埋込可能EEGセンサ2への電力の転送に用いられる。これによって上記EEGセンサを電池無しで動作させることができる。2つのコイル10,11は,高効率の電力転送を達成するために,皮膚バリアの各側において(on each side of the skin barrier)密接に配置されなければならない。一方のコイルの中心軸は好ましくは他方のコイルの中心軸に連続させるべきであり,または2つの中央軸は互いに近接して配置させるべきである。この近接配置(close arrangement)は上記処理ユニットを配置するときに確立される。上記EEGセンサは,2つのコイルの配列が簡単になるように埋込中に(during implantation)配置されなければならず,すなわち上記EEGセンサは,上記コイル10が上記処理ユニットのコイルと一直線上に容易に配置される位置となるように配置される必要がある。
【0031】
満足する電力およびデータ送信を得るための2つのコイル10の間の配列が不十分である場合,これを上記処理ユニットによって検出することができ,上記外部装置に向けて通知を送信することができる。
【0032】
誘導結合に基づく上記無線接続は,上記埋込EEGセンサ2から上記処理ユニット4へのEEG信号の送信にも用いられる。これは,上記EEGセンサにおける上記コイル10上の負荷(the load)を変化させることで行うことができる。上記EEGセンサにおける負荷の変化は,上記処理ユニットにおける上記コイル11上の電力負荷に影響する。このようにして,上記EEGセンサから上記処理ユニットへ向けてEEG信号を送信することができる。
【0033】
上記誘導結合は広帯域の周波数に基づくことができる。約125KHzの周波数とすることができ,これはRFIDシステムでも用いられている。より高い周波数を用いることもできる。0.5−2 MHzの範囲の周波数とすることができる。なお,約10MHzの範囲の周波数も用いることができる。より高い周波数の利点はアンテナを小さくすることができる点にある。残念ながらより高い周波数は消費電力の増加にもつながる。この傾向は誘導結合のみならず従来の無線通信にも当てはまる。電力を転送すべき誘導結合において十分な電力転送を得るためには上記コイル(複数)は互いに近接場内(in the near field)に無ければならない。実際上は,このことは上記コイル(複数)をどの程度小さくすることができるかについての制限を規定する。
【0034】
誘導結合に基づく1MHzの無線通信用アンテナのサイズの一例として,上記埋込EEGセンサ用コイル10は,その外径については10−18mmの範囲で,好ましくは12−16mmの範囲で,より好ましくは約14mmで作ることができ,円形コイルの外周を規定する平面に垂直な方向の高さについては0.5−1.5mm,好ましくは約1mmで作ることができる。頭骨と頭皮の間の皮下に配置される埋込物についての約1mmの高さまたは厚さは,ほとんどの人にとって許容されるべきものである。上記処理ユニット内の対応するコイル11は,4−10mmの範囲,好ましくは6−8mmの範囲の外径を持つことができ,4−8mm,好ましくは約6mmの高さを持つことができる。このような寸法は,小さい補聴器のサイズに等価な処理ユニット用ハウジング中にフィットするのに適切であろう。このようなコイル・サイズは,上記処理ユニットから上記埋込EEGセンサへの電力転送,および上記EEGセンサから上記処理ユニットへ転送される信号に十分である。
【0035】
上記処理ユニット4は,上記2つのコイル10,11を通じて上記誘導結合を介して電力を転送する手段,および上記EEGセンサ2によって得られた上記EEG信号を受信する手段を備えている。上記処理ユニット4は,上記処理ユニットの構成要素に電源を供給するとともに,上記EEGセンサに転送すべき電源を供給するための電池(図示略)を備えている。
【0036】
上記処理ユニット4はまた,所定のアルゴリズムにしたがって上記EEG信号を解析して,切迫発作を識別する(特定する)EEG信号処理装置13を備えている。
【0037】
上記処理ユニット4は,EEG信号をログするため,特定のイベントまたは警告のためのメモリ,たとえばEEPROM16を備えている。
【0038】
上記処理ユニット4は警告装置(アラーム装置)をたとえばスピーカ17の形態で備えている。上記警告装置は,たとえば増幅器を通して上記EEG信号処理装置13に接続することができる。上記警告装置がスピーカである場合,上記メモリ中に記憶されている会話メッセージを再生するために用いることができる。このようなメッセージによって,モニタされている人物に,発作を避けるために特定の行為をとることを求めることができる。上記警告装置は振動器(バイブレータ)であってもよく,この場合には警告は,たとえば上記人物を気づかせるための皮膚に対する振動となる。上記振動器は,埋込みEEGセンサに関連させてまたはその一部として,皮下的に配置することもできる。上記人物はそれでも何らかの振動を感じることができよう。
【0039】
上記処理ユニット4の他の構成要素はデータ・バス15を通して接続することができる。
【0040】
上記処理ユニット4はさらにアンテナ18を備える無線機14を含んでいる。これは,第2の無線接続20を通して外部パート3と通信するためである。この無線機およびアンテナは最小電力消費用にセットアップされる。したがって,上記無線機は上記外部パート3への短距離通信に適する。上記処理ユニットの上記ハウジングにフィットさせるために,上記アンテナも比較的小さくなければならない。両方の目的は,誘導アンテナ,すなわちコイルの適用によって達成することができる。この誘導アンテナの周波数は約10MHzとすることができる。誘導アンテナの利点は受信および送信回路における電力消費が低いことである。欠点は信号を送信することができる範囲が狭いことであり,これは信号強度が,3の累乗で距離によって低下するからである。
【0041】
上記処理ユニット4と外部パート3の間の誘導結合に基づく10MHzの無線接続のためのアンテナ・サイズの一例としては,上記処理ユニット用のコイル・アンテナ18については,その外径を1−2mmの範囲,好ましくは約1.5mmで作ることができ,円形コイルの外周が規定する面に垂直な方向における高さについては4−8mm,好ましくは約6mmで作ることができる。このような寸法によって,上記コイルは上記処理ユニット用のハウジング中に適切に配置される。上記外部パート内の対応するコイル・アンテナ21は3−8mmの範囲の外径,好ましくは5−6mmの範囲の外径を持つことができ,かつ20−50mmの範囲,好ましくは30−40mmの範囲の高さを持つことができる。
【0042】
したがって,上記処理ユニット4からの送信を受ける上記外部パート3は,上記EEGセンサ2および上記処理ユニット4を備える人物の比較的近い範囲に配置する必要がある。これは,上記外部パートが同じ部屋内にあること,またはたとえば上記人物のポケット内にあること,たとえば好ましくは4mの範囲内,より好ましくは3mの範囲内,さらに好ましくは2mの範囲内とする必要があることを意味する。
【0043】
上記処理ユニットと上記外部パートとの間の上記第2の無線接続20における通信は,標準無線(a standard radio)によって実行することもできる。上記埋込みEEGセンサと上記処理ユニットの間の上記第1の無線接続における通信はほぼ連続的(more or less continuous)であるのに対して,上記処理ユニットと上記外部パートの間の上記第2の無線接続における通信はよりまばらである(more sparse)。これは,上記EEG信号の信号処理が上記処理ユニットにおいて実行され,かつ上記処理ユニットは,特定事象のときに(at specific occasions),たとえば検出された切迫発作の場合に,電池不足といった特定メンテナンス関連情報の場合に,または上記システムが適切に機能していることの簡単な確認メッセージのときに,上記外部パートに向けて送信をするだけであるからである。このことは,転送されるデータの量が比較的小さいので,狭い(小さな)帯域のみが第2の無線接続に必要とされることを意味する。これによって,この接続は周囲からのノイズに対して影響を受けにくくなる(less sensitive)。
【0044】
上記外部パート3は,アンテナ21を通して上記処理ユニット4と通信する短距離無線機(a short range radio)22を備えている。上記外部パート3はさらに遠隔パート30と通信する長距離無線機(a longer range radio)25を備えている。上記外部パート3は上記処理ユニット4からのデータが転送されるメモリ24を備えている。上記外部パート3のメモリ容量は,上記処理ユニットのメモリ容量よりもかなり大きくすることができる。上記外部パートはさらに,上記処理ユニット4との通信および上記遠隔パート30との通信を処理するマイクロコントローラ23を備えている。上記外部パート3は身体上で直接に持運ぶ必要はないので,上記処理ユニット4よりも重くかつ大きくすることができ,したがって上記処理ユニット4の電池よりもかなり大きな容量を持つ電池(図示略)を備えることができる。したがって,上記遠隔ユニットとの間の無線通信は,より大きな電力を必要とするタイプとすることがき,したがってより遠距離の通信が提供される。
【0045】
上記処理ユニットのハウジングは,モニタされる人物の実際の状態(コンディション)についての他の計測のためのトランスデューサ(複数)を備えることができる。これは温度(体温),皮膚湿度(skin humidity),脈などとすることができる。
【0046】
上記外部パート3は,上記処理ユニット4と遠隔パート30の間のリレー装置としての機能に加えて,他の特徴を備えることもできる。このような他の特徴としては,リモート・コントロール(リモコン)が必要な場合にリモート・コントロールとして機能することが挙げられる。これは,異なるプログラムが可能なバージョンにおいて,または警告に応答する人物のためのバージョンにおいて利用することができる。別の特徴は追加の警告装置であってもよく,好ましくは,EEG監視されている人物の近くにいる人物を警告する音響タイプの警告装置とすることができる。
【0047】
上記遠隔パート30は,長距離にわたって上記外部パートと通信する,少なくともビル内の別の部屋まで通信するものでなければならない。これは,上記遠隔パート30の上記無線機32およびアンテナ31と,上記外部パートの上記無線機25および上記アンテナ26との間の通信リンク27が,誘導タイプではなく,標準無線接続(a standard radio connection)を通じたものとする必要があることを意味する。たとえば10メートルまたはそれ以上の範囲のためのあらゆる無線通信を,原理的にはこの目的のために用いることができる。
【0048】
一つの可能性は,上記通信リンク27のために携帯電話ネットワークを用いることである。そうすることによって,上記遠隔パート30を,たとえば,所定の形態で警告を発するためのソフトウエアが与えられた標準の携帯電話とすることができる。好ましくは,上記遠隔パート30は,警告にどのように対処するかについての情報を提供するソフトウエアおよび/またはマイクロコントローラ33を有する。図2において図示する遠隔パート30は,警告手段をスピーカ34の形態で備えている。
【0049】
警告以外のデータを上記遠隔パートに送信することもできる。これは,警告がもう少しのところでトリガされるところであったが阻まれた事象についてのデータまたは情報とすることができる。警告の防止(取りやめ)は,上記警告がトリガされる直前に,EEG監視下にある人物が飲食しこれによって血中濃度が増加した場合に行うことができる。
【0050】
上記EEGセンサ,処理ユニットまたは外部パートの動作状況の情報を介助者に送信することも適切でもあろう。これは電池不足(low battery)とすることができる。また,上記処理ユニットおよび上記EEGセンサの間の接触不良についての情報も,上記遠隔パートに送信することが重要である。このような接触不良は,上記処理ユニットを取外したことに起因して,または上記コイル(複数)がもはや連携しなくなるように上記処理ユニットの位置が変えられてしまったことに起因して,生じる。上記人物の身体状況を示すデータ,たとえば,睡眠または目覚めを示すデータも転送することができる。明白であるが,転送されるすべてのタイプのデータは,上記人物の同意のもとでのみ生じさせる必要がある。
【0051】
図3は,切迫した低血糖発作に関する警告を検出しかつ供給する無線監視方法におけるステップのフローチャートである。この方法は,埋込みEEGセンサを備える実施例に好ましくは基づくものである。上記方法の第1ステップにおいて低血糖発作し得る人物のEEG信号が連続して計測される。上記EEG信号は上記EEGセンサ2によって計測され,上記EEGセンサ2は好ましくは上記人物の頭部,好ましくは耳の後ろに皮下的に埋込まれる。上記EEGセンサは一または複数のEEG信号を計測する電極(複数)5を備え,かつ無線通信のためのコイルを備える。計測されたEEG信号は,上記EEGセンサの第1のコイル10および上記処理ユニット4の第2のコイル11の間の誘導結合に基づいて,無線接続を通じて上記EEGセンサから上記処理ユニットに送信される。さらに,同じ誘導結合を通じて上記処理ユニットから上記埋込可能EEGセンサに電力が転送される。次のステップでは,上記EEG信号が,EEG信号を解析するEEG信号処理手段を有する上記処理ユニットにおいて処理される。切迫した低血糖発作の識別または予測が,上記EEG信号に基づいて上記信号処理手段において実行される。この識別または予測に基づいて,警告(アラーム)または他の情報を,ヘルパーまたはモニタされている人物に提供しなければならないかどうかの決定が行われる。さらなるステップにおいて,上記処理ユニットは,警告を,上記処理ユニットと上記外部パートとの間に確立された第2の無線接続を通じて上記外部パートに送信する。上記外部パートは,警告を,介助者に向けて提供することができる。好ましい実施例では,上記外部パートは上記警告を遠隔パートに送信し,遠隔パートが上記警告を上記介助者に提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低血糖発作を発症し得る人物のEEG信号の遠隔監視システムであって,
上記人物からの一または複数のEEG信号を計測する電極(複数)を有するEEGセンサ部,
上記人物の耳に取外し可能に配置され,上記EEG信号を解析するEEG信号処理手段を有しており,上記信号処理手段が上記EEG信号に基づいて上記人物における低血糖発作を識別しまたは予測するように構成されており,上記処理部が上記解析されたEEG信号に基づいて,警告または情報を提供しなければならないときを決定する決定手段を備えている,処理ユニット,
上記EEGセンサ部から上記処理ユニットに向けてEEG信号を送信するための上記EEGセンサ部および上記処理ユニットの間の第1の接続,
上記処理部からの警告を無線で受信するように構成され,かつ介助者に向けて警告を送るように構成される外部パート,ならびに
上記処理ユニットおよび上記外部パートの間の第2の接続であって,無線の第2の接続を備えている,
システム。
【請求項2】
上記人物に警告を提供する警告手段を備えている,請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記EEGセンサ部は,頭部内の埋込み,好ましくは皮下埋込に適合するものである,請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
上記第1の接続が無線であり,上記EEGセンサ部が第1のコイルを備え,上記処理ユニットが第2のコイルを備えており,上記第1の無線接続が上記第1および第2のコイルの間の誘導結合に基づくものであり,かつ上記処理ユニットから上記埋込可能EEGセンサ部へ電力を転送するように構成されている,請求項1,2または3に記載のシステム。
【請求項5】
上記外部パートが警告または情報を遠隔パートに送信するように構成されている,請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
上記遠隔パートが携帯電話であり,上記警告または情報が標準携帯電話ネットワークを通して送信される,請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
上記遠隔パートが,上記外部パートまたは上記処理ユニットに指示を送信するように設定されている,請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
上記外部パートが,リモート・コントロール,データ・ロガー,上記処理ユニットへのデータのストリーミング,警告の対処に関する情報を入力するための端末の中から選択される,少なくとも一つのさらなる機能を備えている,請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
上記処理ユニットと上記外部パートとの間の上記第2の無線接続が誘導リンクに基づくものである,請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
人物における切迫した低血糖症のリスクの発生について警告を提供する,EEG監視方法であって,
一または複数のEEG信号を計測する電極(複数)を有するEEGセンサ部によって上記人物のEEG信号を計測し,
上記EEGセンサ部と処理ユニットの間の第1の接続を通じて上記EEGセンサから処理ユニットに向けて上記計測されたEEG信号を送信し,
上記EEG信号を解析するEEG信号処理手段を有する上記処理ユニットにおいて上記EEG信号を処理し,上記信号処理手段は,上記EEG信号に基づいて,上記人物における低血糖発作を識別しまたは予測するように構成されており,上記処理ユニットは,上記解析されたEEG信号に基づいて,上記警告を提供しなければならないときを決定する決定手段を備えており,
上記処理ユニットから外部パートに向けて,上記処理ユニットと上記外部パートとの間に無線によって構築される第2の接続を通じて,警告を送信する,
方法。
【請求項11】
上記第1の接続は無線であり,上記EEGセンサ部は上記人物の頭部に皮下的に埋め込まれている,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記第1の接続は無線であり,上記EEGセンサ部は第1のコイルを備え,上記処理ユニットは第2のコイルを備えており,上記第1の無線接続は上記第1および第2のコイルの間の誘導結合に基づくものであり,かつ上記処理ユニットから上記埋込可能EEGセンサ部に向けて電力を転送するものである,請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
上記外部パートが警告を遠隔パートに送信するステップをさらに含む,請求項10,11または12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−517856(P2013−517856A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550332(P2012−550332)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051150
【国際公開番号】WO2011/091856
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(500011045)ヴェーデクス・アクティーセルスカプ (99)
【Fターム(参考)】