説明

無線通信システム、基地局およびデータ送信タイミング制御方法

【課題】複数の送信局から受信局宛に並列送信された信号が、受信局で同期するようにした無線通信システムおよび送信タイミング制御方法を提供する。
【解決手段】第1、第2送信局が連携して同一受信局宛にデータ信号を並列送信する無線通信システムにおいて、第2送信局が、遅延時間測定期間内に、受信局宛のデータ送信タイミングの調整量を算出し、第1送信局は、データ送信期間内の各TDMAスロットで、基準タイミングでデータ送信し、第2送信局は、各TDMAスロットで、スロット基準タイミングと調整量とで決まる送信タイミングでデータ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、更に詳しくは、複数の基地局が協調して、同一端末宛に並列的にデータ送信することによってシステムスループットを増大させた無線通信システム、基地局およびデータ送信タイミング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信速度の高速化に伴って、無線LANや移動通信システムでは、周波数利用効率を向上できるMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が採用されている。MIMOは、送信局が、複数のアンテナでデータを並列的に送信し、受信局が、送信装置から送信されたデータを複数のアンテナで受信する。
【0003】
送信局と受信局が1対1で通信する無線通信システムでは、無線伝搬路の持つ通信容量を最大限に引き出す方式として、固有モード伝送方式が知られている。固有モード伝送方式では、送受信アンテナ間の無線伝搬路特性を示すチャネル行列Hを固有分解(Singular Value Decomposition)し、送信ベクトル信号と受信ベクトル信号に、固有分解で得られた行列を重み付け計算することによって、伝送路の持つ容量を最大限に引き出している。
但し、固有モード伝送方式は、受信側で測定したチャネル情報を送信側にフィードバックする必要があるため、無線伝搬路の変動が大きい通信環境には不向きである。固有モード伝送方式は、例えば、無線LANのように、無線伝搬路の変動が少ない準静的な通信環境を前提とした無線通信システムの通信速度向上に向いている。
【0004】
1つの送信局と複数の受信局が通信する1対Nの無線通信(BC:Broadcast Channel)や、複数の送信局と1つの受信局が通信するM対1の無線通信(MAC:Multiple Access Channel)における通信容量に関しては、情報理論の観点から多くの研究がなされている。
BCの通信容量に関しては、例えば、非特許文献1に記載されたDirty Paper Codingがシステム容量の上限を与える方式であると、非特許文献2によって証明されている。但し、システム容量の上限を実現するための具体的な手段は未だ知られていない。また、Dirty Paper Codingは、送信側が、受信側で測定したチャネル情報を瞬時に把握しないと成立しないが、受信側で測定したチャネル情報をフィードバックリンクで送信側に通知する場合、チャネル変動によって性能劣化が大きくなるため、BC通信容量の上限を実現することは難しい。
【0005】
また、BC通信容量は、送信局が備えるアンテナの本数によって制限されることが知られている。非特許文献3には、複数の送信局が連携してDirty Paper Codingを行うことによって、システム全体のスループットを向上させると言う概念が開示されている。但し、この文献では、送受信タイミングが完全に同期する理想的な通信システムを前提としており、実際の応用において発生する送信局と受信局との間の信号伝播遅延を考慮に入れた実現可能な協調制御については開示していない。
【0006】
【非特許文献1】Writing on dirty paper, IEEE Trans. Inform. Theory, Vol.29, issue 3, May 1983, M. Costa著,IEEE発行、pp.440、FIG.1、“Variation of Gaussian-Shannon channel”
【非特許文献2】W. Yu and J. M. Cioffi, “Sum capacity of Gaussian vector broadcast channels”、IEEE Trans. Inform. Theory, Vol.50, No.9, pp. 1875-1892, Sept. 2004
【非特許文献3】S. Shamai and B. Zaidel, “Enhancing the cellular downlink capacity via co-processing at the transmitting end”、in Proceedings of IEEE Vehicular Tech. Conf., May 2001-Spring, pp.1745-1749.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
送信局と受信局との間の仮想的な並列伝送路を利用するMIMO方式の無線通信システムでは、送信局の複数アンテナから並列的に送信された信号の一部が、送信局と受信局との間に位置した壁などで反射して受信局に達するため、送信局から同一タイミングで送信された並列信号が、送信アンテナ毎に経路が異なって伝播遅延時間差をもつ並列信号として、受信局の複数アンテナに到達する。そこで、MIMO方式の無線通信システムでは、信号経路によって異なる伝播遅延時間のばらつき吸収するために、信号受信期間の先頭にガードインターバルと称される時間幅を定義しておき、受信局では、ガードインターバル内に到達した信号列を送信局が並列送信した信号列として扱って、MIMO受信処理を行っている。
【0008】
しかしながら、例えば、離れた位置にある第1、第2の送信局を連携させ、これらの送信局から1つの受信局宛にMIMO並列信号を送信した場合、第1送信局のアンテナ群と、第2送信局のアンテナ群との距離が離れているため、受信局に到達する並列信号にガードインターバルを超えた伝搬遅延時間差が発生し、受信局側でのMIMO受信処理ができなくなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、複数の送信局を協調制御することによって、同一受信局宛のデータを高スループットで並列送信可能にした無線通信システムおよび送信タイミング制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、複数の送信局から同一の受信局宛に並列送信されたデータが、受信局に許容範囲内の時間差で到達できるようにした無線通信システムおよび送信タイミング制御方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、他の基地局と連携して、受信局での信号受信タイミングのばらつき範囲をガードインターバル内に収まるように送信タイミングを制御して、1つあるいは複数の受信局宛にデータ送信する無線基地局を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のデータ送信タイミング制御方法は、それぞれが複数のアンテナを備える第1送信局と第2送信局とが連携して、一連のTDMAスロットで同一受信局宛に並列的にデータ信号を送信する無線通信システムにおいて、
上記第2送信局が、データ送信期間に先行する遅延時間測定期間内に、上記第1、第2送信局間および上記第1、第2送信局と上記受信局との間の信号伝播遅延時間を検出し、
上記第2送信局が、上記遅延時間測定期間内に検出された信号伝播遅延時間から、上記受信局宛のデータ信号の送信タイミングの調整量を算出し、
上記第1送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで上記受信局宛のデータ信号を送信し、
上記第2送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングと上記調整量とで決まる送信タイミングで上記受信局宛のデータを送信することを特徴とする。
【0011】
更に詳述すると、上記遅延時間測定期間は、第1TDMAスロットと第2TDMAスロットとからなる。
【0012】
上記第1TDMAスロットでは、上記第1送信局が、スロット基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信し、上記受信局が、上記同期制御信号を受信してから所定時間Tが経過した時点で、上記第1送信局に応答信号を送信する。上記第2送信局は、上記第1TDMAスロットで、上記第1送信局が送信した同期制御信号の受信時刻と、上記受信局が送信した応答信号の受信時刻を検出し、上記第1TDMAスロットの基準タイミングと上記同期制御信号の受信時刻との時間差を示す第1の時間情報と、上記同期制御信号と上記応答信号との受信時刻時間差を示す第2の時間情報とを記憶しておく。
【0013】
上記第2TDMAスロットでは、上記第2送信局が、スロット基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信し、上記受信局が、上記同期制御信号を受信してから所定時間Tが経過した時点で、上記第2送信局に応答信号を送信する。上記第2送信局は、上記第2TDMAスロットで、上記同期制御信号を送信してから上記受信局が送信した応答信号を受信するまでの時間差を測定し、該時間差を示す第3の時間情報と、前記第1、第2の時間情報とに基づいて、前記送信タイミングの調整量を算出する。
例えば、上記第1の時間情報が示す時間差をTab、第2の時間情報が示す時間差をT1、第3の時間情報が示す時間差をT2とした場合、上記送信タイミングの調整量は、Tab−(T2−T1)で表される。
【0014】
本発明のデータ送信タイミング制御方法は、第1送信局と第2送信局が連携して、複数の受信局に並列的にデータ信号を送信する場合にも適用できる。
この場合、上記第2送信局が、データ送信期間に先行する遅延時間測定期間内に、上記第1、第2送信局間および上記第1、第2送信局と上記各受信局との間の信号伝播遅延時間を検出し、
上記第2送信局が、上記遅延時間測定期間内に検出された信号伝播遅延時間から、上記受信局毎のデータの送信タイミングの調整量を算出し、
上記第1送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで上記各受信局宛のデータを送信し、
上記第2送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングと上記送信タイミング調整量とで決まる受信局毎に異なった送信タイミングで、上記各受信局宛のデータを送信する。
【0015】
具体的に言うと、上記遅延時間測定期間が、第1TDMAスロットと第2TDMAスロットとからなる場合、上記第1TDMAスロットでは、前記第1送信局が、スロット基準タイミングで同期制御信号を送信し、上記同期制御信号を受信した前記各受信局が、受信局毎の異なった個別の待ち時間が経過した時点で、上記第1送信局に応答信号を送信し、上記第2送信局が、上記第1送信局が送信した同期制御信号の受信時刻と、上記各受信局からの応答信号の受信時刻を検出し、上記第1TDMAスロットの基準タイミングと上記同期制御信号の受信時刻との時間差を示す第1の時間情報と、上記受信局毎に上記同期制御信号と応答信号との時間差を示す第2の時間情報を記憶しておく。
【0016】
上記第2TDMAスロットでは、上記第2送信局が、スロット基準タイミングで同期制御信号を送信し、上記同期制御信号を受信した各受信局が、上記個別の待ち時間が経過した時点で、上記第2送信局に応答信号を送信し、上記第2送信局が、上記同期制御信号を送信してから上記各受信局からの応答信号を受信するまでの時間差を測定する。上記第2送信局は、上記受信局毎に、上記同期制御信号を送信して応答信号を受信するまでの時間差を示す第3の時間情報と、前記第1、第2の時間情報とに基づいて、前述した送信タイミングの調整量を算出する。
【0017】
本発明の1実施例では、上記第1送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで、データ信号と共にパイロット信号を送信し、上記第2送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットで、スロット基準タイミングと上記パイロット信号の受信時刻との時間差を検出し、該時間差を前記Tabの最新値として、次のTDMAスロットに適用すべき送信タイミングの調整量を算出する。
【0018】
本発明は、基地局制御装置に接続され、上記基地局制御装置に接続された他の基地局と連携して、一連のTDMAスロットで受信局宛に並列的にデータ信号を送信する複数のアンテナを備えた基地局において、
上記基地局制御装置から主基地局に指定された場合、データ送信期間に先行する遅延時間測定期間内の第1TDMAスロットの基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信し、上記基地局制御装置から従基地局に指定された場合、上記遅延時間測定期間内の第2TDMAスロットの基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信するための手段と、
上記基地局制御装置から従基地局に指定された場合、上記遅延時間測定期間内の第1TDMAスロットで、上記他の基地局が送信した同期制御信号の受信時刻と、上記受信局が送信した応答信号の受信時刻を検出し、上記第1TDMAスロットの基準タイミングと上記同期制御信号の受信時刻との時間差を示す第1の時間情報と、上記同期制御信号と応答信号との受信時刻時間差を示す第2の時間情報とをメモリに記憶し、上記第2TDMAスロットで、上記同期制御信号を送信してから、上記受信局が送信した応答信号を受信するまでの時間差を検出し、該時間差を示す第3の時間情報を上記メモリに記憶するための手段と、
上記メモリに記憶された第1、第2、第3の時間情報に基づいて、上記受信局宛のデータ送信タイミングの調整量を算出し、上記メモリに記憶するための手段と、
上記基地局制御装置から主基地局に指定された場合、上記受信局へのデータ送信期間に含まれる各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで上記受信局宛のデータを送信し、上記基地局制御装置から従基地局に指定された場合、上記受信局へのデータ送信期間に含まれる各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングと上記メモリが示す調整量とで決まる送信タイミングで、上記受信局宛データを送信する送信タイミング制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の送信局(基地局)が連携して、同一の受信局に並列的にデータ送信する場合、受信局に到達する並列データ信号の受信タイミングのずれをガードインターバルで定義された許容範囲内に同期させることが可能となる。従って、本発明によれば、受信局が、受信データ信号に対して正常にMIMO信号処理を行うことが可能となる。また、複数の送信局を連携させることによって、データ送信に使用される実効的なアンテナ数を増加できるため、システム全体のスループットを改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用される無線通信システムに全体構成の1例を示している。
ここに示した無線通信システムは、ネットワークNWに接続された基地局制御装置20−1と、回線21を介して基地局制御装置20−1に接続された複数の基地局10(10A、10B、・・・)と、これらの基地局と通信する複数の端末50(50−1、50−2、・・・)とからなる。基地局10と端末50は、複数のアンテナを備えている。基地局制御装置20−1は、支配下にある複数の基地局10A、10B、・・・を管理し、幾つかの基地局を連携させて、基地局協調制御モードで端末と通信させる。
【0021】
図1は、或る時点において、基地局10Aと10Bとが連携し、端末50−1と50−3に協調制御モードでデータ送信している様子を示す。このように、複数の基地局を連携して端末にデータ送信することによって、送信アンテナの個数を増加し、システム全体のスループットを向上できる。
【0022】
各端末50のアンテナは、基地局10A、10Bから複数のアンテナで並列送信されたデータ信号を受信する。アンテナの受信信号から所望信号を分離する手法としては、例えば、連続干渉消去法(Successive Interference Cancel)が採用される。Successive Interference Cancelでは、受信状態が最もよいアンテナから出力される符号化信号を復号化して、最初のデータ信号を得る。最初のデータ信号を再符号化して、受信信号から差し引くと、最初のデータ信号以外の信号成分が残る。従って、残った信号の復号化、再符号化、受信信号からの再符号化信号の差し引きを繰り返すことによって、所望のデータ信号を分離することができる。
【0023】
基地局制御装置20−1は、ゲートウェイ(GW)22を介して、他の基地局制御装置20−2に接続されている。複数の基地局制御装置が、それぞれの配下にある基地局の状態情報を交換することによって、所属する基地局制御装置が異なる基地局間での干渉を回避できる。また、必要に応じて複数の基地局制御装置間で協調制御することにより、所属する基地局制御装置が異なる複数の基地局を連携動作させることも可能となる。
【0024】
次に、図2を参照して、基地局10Aと10Bとが連携して、端末50−1に対して並列的にデータ送信した場合の問題点について説明する。ここでは、端末50−1に対して、基地局10Aがデータ信号Sa1を送信し、基地局10Bがデータ信号Sb1を送信した時、基地局10Aと10Bとの間に同期誤差Teがあった場合を想定している。
【0025】
基地局10Aから送信されたデータ信号Sa1は、直接波と反射波のように、異なる経路(マルチパス)を辿って端末50−1に到達する。図2では、データ信号Sa1が、時間差をもつデータ信号Sa1(1)、Sa1(2)となって、端末50−1に到達している。Taは、データ信号Sa1の伝播遅延時間を示す。
【0026】
マルチパスに起因する誤りの耐性を向上できる無線通信方式として、直交周波数分割多重OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が知られている。OFDMの復調処理では、信号の復調単位であるシンボル間での干渉を回避するために、送信シンボル間に無信号期間GI(ガードインターバル)が設定されている。ガードインターバルは、基地局と端末との間の距離や、基地局周囲に存在する反射物などによる信号伝搬経路の時間差などを考慮して設計されているため、経路の違いによるデータ信号Sa1(1)とSa1(2)の伝搬遅延差は、ガードインターバルGIで定義された許容時間幅内に収まると仮定できる。
基地局10Bが端末50−1に送信したデータ信号Sb1も、異なる経路を経て、信号Sb1(3)、Sb1(4)となって、端末50−1に到達する。Tbは、データ信号Sb1の伝播遅延時間を示している。
【0027】
然るに、基地局10Aと10Bの間に同期誤差Teがあった場合、伝搬遅延時間Ta、Tbの時間差まで考慮すると、データ信号Sa1とSb1の時間差Tdが、ガードインターバルGIを超える可能性が高くなる。特に、無線LANシステムのように、基地局10A、10Bが非同期で運用される無線通信システムでは、基地局間の同期誤差Teが大きいため、基地局10Aと10Bが、同一端末50−1宛のデータを論理的に同時送信しても、端末50−1でのデータ信号Sa1、Sb1の受信タイミングが大幅にずれる可能性がある。この場合、データ信号Sa1とSb1が互いに干渉成分として働くため、端末50−1が、Successive Interference Cancelのような方法で、受信信号から所望の信号を分離することができなくなる。
【0028】
図3は、本発明による複数基地局の協調制御に必要な遅延時間測定について説明するための図である。
ここでは、基地局10Aが主基地局、基地局10Bが従基地局となって互いに連携し、基地局10Aからの送信信号と、基地局10Bからの送信信号が端末50−1に同時に到達するように、従基地局10Bが、端末50−1宛の信号送信タイミングを調整する(同期制御)。但し、ここで説明する同期制御は、複数端末を対象としたデータの送信タイミング制御、例えば、図1に示した端末50−1と50−3の双方において、基地局10Aからの送信信号と基地局10Bからの送信信号の受信タイミングとを一致させるための送信タイミング制御にも拡張できる。
【0029】
本実施例では、各基地局10は、固定周期のTDMAスロットで端末と通信する。この場合、各基地局は、例えば、NTP(Network Time Protocol)などのプロトコルに従って基地局タイマを同期させ、基地局タイマに従って夫々のTDMAスロットを生成しており、TDMAスロットの区切りには、ガードインターバルのような高精度な同期を必要としていない。
【0030】
以下、本発明の1実施例として、図4に示すように、TDAMスロット1とTDAMスロット2を遅延時間測定期間、TDAMスロット3とTDAMスロット4を基地局協調送信期間として使用した同期制御について説明する。ここでは、簡単化のために、基地局協調送信期間が2つのTDAMスロットで示されているが、実際の応用では、基地局協調送信期間は、任意個数の一連のTDAMスロットからなる。
【0031】
従基地局10Bは、遅延時間測定期間内に、主基地局10Aとの協調制御の対象となる1つ、あるいは複数の端末について、同期制御に必要な遅延時間を測定する。遅延時間測定期間には、従基地局10Bのみならず、主基地局10Aも、同期制御に必要な遅延時間を測定することができる。
遅延時間測定期間には、例えば、TDMAスロット1で、主基地局10Aから端末50−1にSYNCパイロット信号を送信し(ステップ1)、これを受信した端末50−1が、予め決められた待ち時間Tが経過した時点で、SYNC応答信号を返送する(ステップ2)。
【0032】
従基地局10Bは、TDMAスロット1において、主基地局10Aが送信したSYNCパイロット信号と、端末50−1が送信したSYNC応答信号とを監視し、SYNCパイロット信号の受信時刻t(Rx1)と、SYNC応答信号の受信時刻t(Rx2)との時間差T1を測定しておく。
【0033】
TDMAスロット2では、従基地局10Bから端末50−1にSYNCパイロット信号を送信し(ステップ3)、これを受信した端末50−1が、待ち時間Tが経過した時、SYNC応答信号を返送する(ステップ4)。従基地局10Bは、SYNCパイロット信号の送信時刻t(Tx3)と、SYNC応答信号の受信時刻t(Rx4)との時間差T2を測定する。
従基地局10Bは、遅延時間測定期間に測定されたT2とT1の時間差ΔT(=T2−T1)を利用して、基地局協調送信期間に端末50−1宛の信号の送信タイミングを調整することにより、端末50−1が基地局10A、10Bからの送信信号を同時受信可能な同期制御を実現する。
【0034】
具体的に言うと、従基地局10Bは、図5に示すように、TDMAスロット3における主基地局10Aからのパイロット信号Paの受信タイミングt2を基準として、それよりもΔTだけ前のタイミングt0で、端末50−1宛の信号S1bを送信する。主基地局10Aは、TDMAタイムスロット3の開始を示す基準タイミングt1で、端末50−1宛のデータ信号Sa1を送信する。このデータ信号Sa1は、伝播遅延時間Ta後に端末50−1で受信される。
【0035】
主基地局10Aと端末50−1との間の距離をD1、光速をcとすると、TaはD1/cとなる。これと同様に、従基地局10Bと端末50−1との距離をD2とすると、従基地局10Bがタイミングt0で送信したデータ信号Sb1は、伝播遅延時間Tb=D2/c後に端末50−1で受信される。主基地局10Aと従基地局10Bとの距離をD12とすると、主基地局10Aのパイロット信号Paが従基地局10Bに到達するまでの所要時間TabはD12/cとなる。
【0036】
従って、TDMAスロット3の開始時刻t1で主基地局10Aから送信されたパイロット信号Paが従基地局10Bで受信される時刻t2を基準にして、従基地局10Bが、
ΔT=Tb−Ta+Tab =(D2/c)−(D1/c)+D12/c
だけずれたタイミングt0で、データ信号Sb1を送信すれば、図2で説明した伝搬遅延時間差と同期誤差を吸収して、端末50−1におけるデータ信号Sa1とSb1の受信タイミングを揃えることが可能となる。Tabの値は、遅延時間測定期間に測定できる。ΔTが、遅延時間測定期間に測定されたT2とT1との時間差に一致することは、以下の説明で明らかになる。
【0037】
図6は、遅延時間測定期間に実行される通信シーケンスの1実施例を示す。
TDMAスロット1では、主基地局10Aが、スロット基準タイミングで、端末50−1に同期制御信号(SYNCパイロット)を送信する(SQ01)。端末50−1は、SYNCパイロットを受信すると(S51)、一定時間Tが経過した時、主基地局10AにSYNC応答を送信する(SQ02、S52)。従基地局10Bは、主基地局10Aと端末50−1との間の送受信信号を傍受し、SYNCパイロットの受信時刻とSYNC応答の受信時刻を記憶し(S11、S12)、時間差T1(B)を算出して、その値を記憶する(S13)。一方、主基地局10Aも、SYNCパイロットを送信してからSYNC応答が受信されるまでの時間差T2(A)を算出して、その値を記憶する。ここで、括弧内のA、Bは、時間差T1、T2を測定した基地局を区別するために付されている。
【0038】
T1(B)とT2(A)の値は、次式(1)と(2)で表すことができる。
T1(B)=(D1/c)+T+(D2/c)−(D12/c) ・・・・式(1)
T2(A)=(D1/c)×2+T ・・・・式(2)
TDMAスロット2では、従基地局10Bから端末50−1に同期制御信号(SYNCパイロット)を送信し(SQ03)、SYNCパイロットの送信時刻を記憶する(S14)。端末50−1は、SYNCパイロットを受信すると(S53)、一定時間Tが経過した時、従基地局10BにSYNC応答を送信する(SQ04、S54)。従基地局10Bは、SYNC応答を受信すると、その受信時刻を記憶し(S15)、SYNCパイロットを送信してからSYNC応答が受信されるまでの時間差T2(B)と、ΔT=T2−T1の値を算出する(S16)。
【0039】
主基地局10Aは、従基地局10Bが送信したSYNCパイロットの受信時刻と、端末50−1が送信したSYNC応答の受信時刻との差をT1(A)として記憶する。
T2(B)とT1(A)の値は、次式(3)と(4)で表すことができる。
【0040】
T2(B)=(D2/c)×2+T ・・・・式(3)
T1(A)=(D2/c)+T+(D1/c)−(D12/c)
=T1(B) ・・・・式(4)
式(3)と式(1)より、次式(5)が得られる。
【0041】
T2(B)−T1(B)=(D2/c)−(D1/c)+(D12/c)
=Tb−Ta+Tab(=ΔT) ・・・・式(5)
すなわち、従基地局10Bからのデータ信号Sb1の送信タイミングt0は、主基地局10Aからのパイロット信号Paの受信時刻t2を基準にして、ΔT=T2−T1だけずらせばよいことが分かる。尚、データ信号の送信タイミングt0は、Tabの値と、TbとTaとの大小関係によって、TDMAスロット3の基準タイミングt1よりも前になる場合もあれば、後になる場合もある。
【0042】
従基地局10Bが、データ信号Sb1をパイロット信号Paの受信時刻t2よりも前に送信するためには、TDMAスロット3にけるパイロット信号受信時刻t2を事前に予測しておく必要がある。本実施例では、各基地局10が、固定スロット長をもつTDMAタイムスロットを生成しているため、従前のタイムスロットで受信したパイロット信号の受信タイミングを利用して、次スロットにおけるパイロット信号の受信タイミングを予測できる。
【0043】
例えば、従基地局10Bが、遅延時間測定期間のTDMAスロット1における基地局10AからのSYNCパイロットの受信時刻と、TDMAスロット1の基準タイミング(開始時刻)との時間差Tabを記憶しておき、TDMAスロット3の基準タイミングにTabを加算することによって、TDMAスロット3におけるパイロット受信タイミングt2を予測できる。本発明では、2つの基地局10A、10Bから並列送信されたデータ信号が、端末50−1におけるガードインターバルの時間幅内で同期できればよいため、基地局協調送信期間の各TDMAタイムスロットに、遅延時間測定期間に検出した時間差Tabを適用しても十分な効果が得られる。
【0044】
これと同様に、主基地局10A側でも、TDMAスロット2の基準タイミングから、従基地局10Bが送信したSYNCパイロットの受信時刻までの経過時間をTbaとして記憶できる。図5では、基地局10Aを同期制御における主基地局とし、基地局10Bを従基地局として、基地局協調送信期間では、主基地局10Aが、TDMAスロットの基準タイミングt1でデータ信号を送信し、従基地局10Bが、ΔTで調整されたタイミングt0でデータ送信しているが、主基地局10A側でも、ΔT=T2(A)−T1(A)を算出できるため、ΔTとTbaの値を利用して、データ送信タイミングを調整可能となっている。従って、基地局協調送信期間の途中で、主基地局と従基地局を入れ替えて、基地局10Bに基準タイミングでデータ送信させ、基地局10Aに、ΔTで調整されたタイミングでデータ送信させことも可能である。
【0045】
尚、主基地局10Aが、基地局協調送信期間内の各TDMAスロットで、基準タイミングt1で送信するデータ信号Sa1と同期してパイロット信号Paを送信し、従基地局10Bが、上記パイロット信号Paの受信時刻とスロットの基準タイミングとから新たな時間差Tabを算出し、これを次のTDMAスロットで利用するようにしてもよい。このように、時間差Tabとして最新の値を適用することによって、主基地局10Aと従基地局10Bにおけるスロット周期の揺らぎに追従した同期制御が可能となる。
【0046】
基地局協調送信期間では、主基地局10Aが、パイロット信号Paを各TDMAスロットの基準タイミングt1で送信する代わりに、データ信号Sa1の先頭(スロット基準タイミングt1)から固定のオフセット時間だけ遅らせて、パイロット信号Paを送信するようにしてもよい。パイロット信号Paの送信時刻が、TDMAスロットの先頭からのオフセットを含む場合、従基地局10Bは、上記パイロット信号の受信時刻からオフセット値を差し引くことによって、正しい伝搬遅延時間Tabを計算できる。
【0047】
基地局協調送信期間に送信するパイロット信号Paは、遅延期間測定期間に送信したSYNCパイロットと同じ信号であってもよいし、SYNCパイロットとは異なるフォーマットの信号であってもよい。また、パイロット信号Paの送信オフセットの値は、基地局毎に異なっていてもよい。この場合、パイロット信号Paの送信元となる主基地局が、周期的に送信するビーコン信号などによって、自局で適用するオフセットの値を従基地局に報知しておく。オフセット値を定期的なビーコン信号で報知する代わり、基地局が、基地局協調すべき他の基地局にオフセット値を問い合わせるようにしてもよい。
【0048】
図7は、本発明の第2実施例として、基地局10A、10Bからの送信信号を2つの端末50−1、50−2で同期させる場合に遅延時間測定期間で実行される通信シーケンスを示す。ここでは、基地局10Bが、端末50−iの受信信号を同期させるために必要とする時間差T1、T1を、T1(iB)、T2(iB)と標記する。
【0049】
基地局10A、10Bからの送信信号を端末50−1で同期させるために基地局10Bが必要とする時間差T1(1B)、T2(2B)は、従基地局10Bが、SQ01〜SQ04で、図5で説明したステップS11〜S16を実行することによって得られる。また、基地局10A、10Bからの送信信号を端末50−2で同期させるために必要な時間差T1(2B)、T2(2B)も、T1(1B)、T2(1B)と同様の方法で得ることができる。
【0050】
すなわち、主基地局10Aから送信されたSYNCパイロット信号に対して、端末50−2が、所定時間後にSYNC応答を返信し(SQ12)、従基地局10Bから送信されたSYNCパイロット信号に対しても、端末50−2が、所定時間後にSYNC応答を返信(SQ14)すればよい。この場合、端末50−1が返信したSYNC応答と、端末50−2が返信したSYNC応答とが衝突するのを回避するために、端末50−2には、端末50−1の待ち時間Tとは異なる待ち時間で、SYNC応答を返送させる。
【0051】
図7では、端末50−1の待ち時間をT、端末50−2の待ち時間を2Tに設定している。各端末の待ち時間は、例えば、端末をアソシエーションメッセージによって基地局に接続する時、基地局制御装置から明示的に割り当てればよい。各端末が、端末IDの値と対応付けられた固有の待ち時間を利用するようにしてもよい。
【0052】
複数端末から送信された応答パケットの衝突回避に必要なミニスロット時間をT、端末における応答パケットの送信待ち時間をkTとし、kTの最大値がTDMAスロットに収まる範囲内で、kを一様乱数によって決定するようにしてもよい。但し、各端末は、遅延時間差測定期間内では、kの値を一定値に保持しなければならない。
【0053】
遅延時間測定期間には、従基地局10Bと同様に、主基地局10Aも、端末50−1用の遅延時間情報T1(1A)、T1(2A)と、端末50−2用の遅延時間情報T1(2A)、T2(2A)を取得できるため、複数端末にデータ送信する場合も、基地局協調送信期間内に主基地局と従基地局を切り換えることができる。
本実施例では、基地局10B(10A)は、SYNC応答の受信時に、受信したSYNC応答に含まれる端末IDを識別して、遅延時間情報T1(i)、T2(i)を端末50−iのIDと対応付けて記憶しておく。
【0054】
図8は、第2実施例の基地局協調制御期間における端末50−1、50−2へのデータ送信を示す。
主基地局10Aは、TDMAスロット3の基準タイミングt1で、端末50−1宛のデータ信号Sa1と、端末50−2宛のデータ信号Sa2を送信する。データ信号Sa1は、伝播遅延時間Ta1後に、端末50−1で受信され、データ信号Sa2は、伝播遅延時間Ta2後に、端末50−2で受信される。
【0055】
従基地局10Bは、図4で説明した第1実施例と同様、主基地局10Aからのパイロット信号Paの受信時刻t2を基準にして、端末50−1宛のデータ信号Sb1は、ΔT(1)=T2(1B)−T1(1B)だけずれたタイミングt01で送信し、端末50−2宛のデータ信号Sb2は、ΔT(2)=T2(2B)−T1(2B)だけずれたタイミングt02で送信する。
【0056】
データ信号Sb1は、伝播遅延時間Tb1後に、端末50−1で受信され、図5で説明した原理によって、端末50−1でデータ信号Sa1と同期する。同様に、データ信号Sb2は、伝播遅延時間Tb2後に、端末50−2で受信され、端末50−2でデータ信号Sa2と同期する。端末50−1(50−2)では、基地局10A、10Bから別々に送信されたデータ信号の受信タイミングがガードインターバルの時間幅内で揃っているため、Successive Interference Cancelによって干渉成分を除去して、所望の信号Sa1、Sb1(Sa2、Sb2)を復号することが可能となる。
【0057】
図9は、本発明による同期制御機能を備えた基地局10(10A、10B、・・・)の1実施例を示す。
基地局10は、無線信号を送受信するための複数のアンテナ110(110a〜110d)を備えた無線部11と、無線部11に接続されたモデム部12と、モデム部12に接続された制御部18および局間インタフェース19とからなっている。
【0058】
無線部11は、アンテナ110(110a〜110d)に接続された送受信切替え機能をもつ共用器111(111a〜111d)と、共用器111(111a〜111d)に接続された受信器112(112a〜112d)および送信器113(113a〜113d)からなる。受信器112i(i=a〜d)は、アンテナ110iからの受信信号をフィルタリング処理し、ベースバンド帯域のアナログ信号に変換した後、ディジタル信号に変換(A/D変換)して、モデム部12に出力する。一方、送信器113i(i=a〜d)は、モデム部12から出力されたディジタル信号をアナログ信号に変換(D/A変換)し、周波数帯域の変換と電力増幅を行った後、共用器111iに出力する。
【0059】
モデム部12は、無線部11の複数の受信器112a〜112dから並列的に受信信号が入力される受信部13と、無線部11の複数の送信器113a〜113dに接続された送信タイミング制御部14と、送信タイミング制御部14に接続された多重化回路15と、多重化回路15に接続されたパイロット生成部16および送信部17とからなる。
【0060】
受信部13は、MIMO復調器131と、パラレル/シリアル(P/S)変換器132と、誤り訂正復号器133とを含む。また、送信部17は、複数の誤り訂正復号器171(171a〜171c)と、誤り訂正復号器171a〜171cの出力を多重化する多重化回路172と、多重化回路172から出力されるシリアル信号をパラレル信号に変換するS/P変換器173と、S/P変換器173に接続されたMIMO変調器174を含んでいる。
【0061】
無線部の受信器112a〜112dから出力された受信信号は、モデム部12の受信部13に並列的に入力され、MIMO復調器131によって、複数のアンテナに分配された複数端末からの送信信号が復元される。復元された複数アンテナ数分の信号は、P/S変換器132によって復号可能なデータに変換され、誤り訂正復号器133によって誤り訂正復号処理を施した後、受信データとして制御部18に出力される。
【0062】
制御部18では、信号分離回路181によって、受信部13から出力された受信信号から制御信号と、ユーザデータと、SYNCパイロットおよびSYNC応答信号とを分離する。制御信号は、主制御部184に入力され、制御信号に応じたプロトコル処理が行われる。ユーザデータは、局間インタフェース19に入力され、多重化回路192で、主制御部184から出力された制御信号と多重化した後、基地局制御装置20に送信される。SYNCパイロットとSYNC応答信号は、パイロット信号処理部182に入力される。
【0063】
制御部18は、SYNCパイロットとSYNC応答信号の受信時刻を記憶するための遅延制御情報ファイル183を備えている。遅延制御情報ファイルには、同期制御に必要な時刻情報と、時間差情報(ΔT)と、基地局が協調制御モードで動作中か否かを示す制御モード情報も記憶される。主制御部184は、基地局制御装置20からの制御信号によって制御モード情報を受信すると、これを遅延制御情報ファイル183に記憶する。上記制御モード情報を参照することによって、基地局10が、協調制御における主基地局10Aとして動作すべきか、従基地局10Bとして動作すべきか判る。
【0064】
基地局制御装置20から受信したデータは、局間インタフェース19の信号分離回路191によって、端末別の複数のデータストリームに分離される。端末毎に分離されたデータストリームは、送信部17の誤り訂正符号器171b、171cに入力され、各誤り訂正符号器で、誤り訂正用の冗長コードを付加した符号化データに変換される。図では、データストリーム数が2の場合を示しているが、データストリーム数が3以上の場合は、誤り訂正符号器の個数を増加すればよい。
【0065】
主制御部184で生成された端末宛の制御信号は、誤り訂正符号器171aで、誤り訂正用の冗長コードを付加した符号化データに変換される。誤り訂正符号器171a〜171cの出力は、多重化回路172で多重化した後、S/P変換器173に入力される。S/P変換器173は、送信信号を複数アンテナ110a〜110dに分配できるように、多重化回路172の出力信号を複数列の信号にS/P変換する。S/P変換器173から出力されたパラレル信号は、MIMO変調器174に入力され、各端末でMIMO復調できるように変調される。MIMO変調器174には、例えば、リニアプロセシングやTomlinson-Harashima Precodingなど、公知の変調方法を適用できる。
【0066】
パイロット生成部16は、制御信号処理部184から指示されたタイミングでSYNCパイロット信号を生成する。パイロット生成部16で生成されたSYNCパイロット信号と、送信部17のMOMO変調器174から出力されたデータ信号は、多重化回路15で多重化した後、送信タイミング制御部14に出力される。
【0067】
送信タイミング制御部14は、TDMAスロット(TDMAフレーム)の生成機能を備えており、遅延制御情報ファイル183に記憶された制御モード情報を参照して、基地局が基地局協調モードで動作中は、TDMAスロットの開始タイミング(基準タイミング)で、スロット番号と時刻t1を制御部18の主制御部184に通知する(信号C1)。主制御部184は、基地局間の遅延期間Tabを算出するため、送信タイミング制御部14から通知されたTDMAスロットの開始時刻t1を遅延制御情報ファイル183に記憶する。
【0068】
制御部18のパイロット信号処理部182は、信号分離回路181からSYNCパイロットを受信すると、SYNCパイロットの受信時刻を送信元基地局のIDと対応付けて遅延制御情報ファイル183に格納する。また、SYNC応答信号を受信すると、送信元端末のIDと受信時刻を上記SYNCパイロットの送信元基地局のIDと対応付けて、遅延制御情報ファイル183に格納し、主制御部184にSYNC応答の受信を通知する。
【0069】
SYNC応答の受信を通知された主制御部184は、遅延制御情報ファイル183を参照して、SYNCパイロットの受信時刻とSYNC応答信号の受信時刻の時間差を算出し、自局の制御モードを判定する。
【0070】
制御モードが主基地局となっていた場合、主制御部184は、SYNCパイロット受信時刻とSYNC応答信号の受信時刻の時間差をT1またはT2として遅延制御情報ファイル183に記憶し、TDMAスロット2の開始時刻と、TDMAスロット2で受信したSYNCパイロットの受信時刻とから、Tbaの値を算出して、これを遅延制御情報ファイル183に記憶する。また、T1の値が特定された時、時間差ΔT(=T2−T1)を計算して、遅延制御情報ファイル183に記憶する。
【0071】
制御モードが従基地局となっていた場合、主制御部184は、SYNCパイロットの受信時刻とSYNC応答信号の受信時刻の時間差をT1またはT2として遅延制御情報ファイル183に記憶し、TDMAスロット1の開始時刻と、TDMAスロット1で受信したSYNCパイロットの受信時刻とから、Tabの値を算出して、これを遅延制御情報ファイル183に記憶する。また、T2の値が特定された時点で、時間差ΔT(=T2−T1)を計算して、遅延制御情報ファイル183に記憶する。
【0072】
送信タイミング制御部14は、遅延制御情報ファイル183に記憶された制御モード情報を参照し、自局が協調制御における主基地局となっていた場合は、基地局協調送信期間の各TDMAタイムスロットにおいて、図5に示した基地局10Aの送信タイミングt1で、多重化回路15の出力データを無線部11に出力し、自局が従基地局となっていた場合は、時間調整された送信タイミングt0で、多重化回路15の出力を無線部11に出力する。
【0073】
図7で説明したように、複数の端末を同期制御の対象とする場合、例えば、送信部17の多重化回路172で、図8に示したΔT(1)とΔT(2)との時間差に応じて、各端末宛のデータ信号を時間調整すればよい。
例えば、図8に示したように、端末50−1宛のデータ信号Sb1の調整時間ΔT(1)=T2(1)−T1(1)が、端末50−2宛のデータ信号Sb2の調整時間ΔT(2)=T2(2)−T1(2)よりも大きい場合、Δt=ΔT(1)−ΔT(2)に相当する期間、データ信号Sb2の前にダミーデータを挿入する。
【0074】
具体的には、例えば、誤り訂正符号器171bにデータ信号Sb1が供給され、誤り訂正符号器171cにデータ信号Sb2が供給されていた場合、データ信号Sb1の最初のΔt期間は、多重化回路172に、誤り訂正符号器171cの出力の代わりに0信号列をデータ信号Sb1と多重化させ、Δt期間が経過したら、誤り訂正符号器171cから出力されるデータ信号Sb2をデータ信号Sb1と多重化させる。この場合、送信タイミング制御部14は、多重化回路15の出力信号をΔT(1)の値に応じて調整したタイミングt0で、無線部11に出力すればよい。
【0075】
誤り訂正符号器171b、171cの出力を制御する代わりに、誤り訂正符号器171b、171cの前段にバッファメモリを配置しておき、バッファメモリから誤り訂正符号器171b、171cへのデータ供給をΔt=ΔT(1)−ΔT(2)に応じて制御するようにしてもよい。
【0076】
前者のように、データストリーム間の位相を送信部17の多重化回路172で調整する場合は、多重化回路172を送信タイミング制御部14で制御し、後者のように、データ信号間の位相を誤り訂正符号器171b、171cの前段で調整する場合は、バッファメモリからのデータの読み出しを主制御部184で制御すればよい。
【0077】
図10は、端末50の1実施例を示す。
各端末50は、無線部51と、無線部51に接続されたモデム部52と、モデム部52に接続された制御部58およびコーデック(CODEC)59とからなる。
無線部51のアンテナ本数は、基地局に比より少数でよく、本実施例では、無線部51が2本のアンテナ510a、510bを備えている。アンテナ510a(510b)には、共用器511a(511b)を介して、受信器512a(512b)と送信器513a(513b)とが接続されている。
【0078】
モデム部52は、基地局と同様、無線部51の受信器512a、512bから並列的に受信信号が入力される受信部53と、無線部51の送信器513a、513bに接続された送信タイミング制御部54と、送信タイミング制御部54に接続された多重化回路55と、多重化回路55に接続されたパイロット生成部56および送信部57とからなる。
【0079】
受信部53は、MIMO復調器531と、P/S変換器532と、誤り訂正復号器533とを含み、送信部57は、誤り訂正復号器571a、571bと、これらの誤り訂正復号器の出力を多重化する多重化回路572と、多重化回路572に接続されたS/P変換器573と、S/P変換器573に接続されたMIMO変調器574を含んでいる。
コーデック(CODEC)59は、図示しない音声通話機能部に接続され、携帯電話で規定の音声符号化/復号化処理を行う。音声通話機能部から出力された音声信号は、コーデック59で符号化した後、誤り訂正復号器571bに入力される。
【0080】
制御部58は、受信部53に接続された信号分離回路581と、信号分離回路581に接続されたパイロット信号処理部582および主制御部(プロセッサ)584と、内部バス585を介して主制御部(プロセッサ)584に接続されたストレージ583と、内部バス585に接続された外部インタフェース586とを含んでいる。外部インタフェース586には、図示しない表示装置や入力キーなどの入出力装置が接続される。ストレージ583には、主制御部584が実行する各種のアプリケーションプログラムやデータが格納される。
【0081】
信号分離回路581は、受信部53から出力された信号の種類を識別し、音声信号はコーデック59、SYNCパイロットはパイロット信号処理部582、音声以外のユーザデータと制御信号は主制御部584に出力する。主制御部584は、制御信号を受信すると、制御信号に応じたプロトコル処理を実行し、ユーザデータを受信すると、受信データに対応したアプリケーションプログラムを実行する。例えば、モデム部52から動画データが入力された場合、主制御部584は、受信データをMPEGなどの画像復号化ルーチンで復号化した後、インタフェース586を介して、表示画面に出力する。受信データを不ストレージに一旦格納した後、画像の復号化してもよい。また、画像の復号化は、専用のハードウエアで実行してもよい。
【0082】
本実施例では、送信タイミング制御部54によって、端末から基地局に送信されるデータの送信タイミングを伝播遅延に応じて調整できるようにしている。送信タイミングの調整に必要な遅延制御情報は、基地局10と同様、パイロット信号処理部582と主制御部584によって、ストレージ583に格納される。伝播遅延に応じたデータ送信タイミング調整が不要であれば、ストレージ8583に遅延制御情報を格納する必要はない。
【0083】
端末50は、図6で説明したように、基地局からSYNCパイロットを受信した時、一定時間後にSYNC応答を送信する必要がある。本実施例では、パイロット信号処理部582は、SYNCパイロットを検出すると、SYNCパイロットの送信元情報と受信時刻をストレージ583の送信制御情報エリアに記憶し、主制御部584にSYNC応答の送信要求を出力する。主制御部584は、パイロット信号処理部582からSYNC応答の送信要求を受信すると、ストレージ583の送信制御情報エリアに記憶されたSYNCパイロット受信時刻を参照し、所定の待ち時間Tが経過したタイミングで、パイロット生成部56にSYNC応答の生成を指示する。待ち時間Tは、端末毎に異なった値となっており、送信制御情報エリアに記憶されている。尚、SYNCパイロットの受信時刻の記憶を主制御部584で行う場合、パイロット信号処理部582を省略して、信号分離回路581から主制御部584に直接的にSYNCパイロットを通知すればよい。
【0084】
本発明によれば、それぞれが複数のアンテナを備える複数の基地局から同一端末宛に送信されたデータ信号が、基地局協調によって送信タイミング制御されているため、端末50では、異なる基地局から並列的に送信されたデータ信号を、あたかも同一基地局から並列的に送信されたデータ信号のように、受信タイミングがガードインターバルの時間幅内に揃った並列データ信号として受信できる。そのため、基地局側の見かけ上の送信アンテナ数を増大でき、システム全体のスループットと、ユーザ端末あたりのスループットを向上することが可能となる。
【0085】
図11、本発明の基地局協調制御によるスループット増大効果を示すグラフである。
ここでは、基地局10Aと10Bが、それぞれ4本のアンテナを備え、ユーザ端末50(50−1、50−2、50−3、・・・)も、それぞれ4本のアンテナを備えた場合を想定している。図11において、横軸はユーザ端末数を表し、縦軸は、図1に示した基地局10Aと10Bで構成される無線通信システムの全体スループットをユーザ端末数で除算して得られる1ユーザ端末当たりのスループットの平均値を表している。
【0086】
グラフ1が示すように、基地局10Aが単独でデータ送信した場合(送信アンテナ数:4)、通信相手となるユーザ端末数が4台の時は、1ユーザ端末当たりのスループット平均値は10bit/s/Hzとなり、ユーザ端末数が増えるに従って、1ユーザ端末当たりのスループット平均値は減少する。これに対し、グラフ2が示すように、基地局制御装置20aを介して基地局10Aと基地局10Bを連携させ、データ送信を協調制御した場合、基地局側のトータルの送信アンテナ数を8本に増大できるため、通信相手となるユーザ端末数が4台の時は、1ユーザ端末当たりのスループット平均値を20bit/s/Hzに増加できる。従って、本発明の基地局協調制御により、データを並列送信するための基地局側の有効アンテナ数を増やすことによって、通信システム全体のスループットを増加できることが分かる。
【0087】
尚、上述した実施例では、遅延時間測定期間内の第1のTDMAスロット1で、主基地局10AがSYNCパイロットを送信し、第2のTDMAスロット2で従基地局10BがSYNCパイロットを送信することによって、主基地局10Aと従基地局10Bが、同期制御に必要な時間差情報を取得しているが、SYNCパイロットの代わりに、基地局10A、10Bが、TDMAスロットの基準タイミングで定期的に送信される他の種類の信号フレームを同期制御信号として、端末50に応答信号の返信を要求し、T1、T2を測定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明が適用される無線通信システムの1例を示す図。
【図2】2つの基地局が連携してデータ信号を送信した場合の問題点を説明するための図。
【図3】本発明による複数基地局の協調制御に必要な遅延時間測定について説明するための図。
【図4】遅延期間測定期間と基地局協調送信期間の関係を示す図。
【図5】2つの基地局から1つの端末にデータ送信する場合の本発明による送信タイミング制御を説明するための図。
【図6】遅延期間測定期間に実行される通信シーケンスの第1の実施例を示す図。
【図7】遅延期間測定期間に実行される通信シーケンスの第2の実施例を示す図。
【図8】2つの基地局から複数の端末にデータ送信する場合の本発明による送信タイミング制御を説明するための図。
【図9】基地局10の1実施例を示す構成図。
【図10】端末50の1実施例を示す構成図。
【図11】本発明の効果を説明するための図。
【符号の説明】
【0089】
10:基地局、20:基地局制御装置、22:ゲートウェイ、50:端末、
11、51:無線部、12、51:モデム部、13、53:受信部、
14、54:送信タイミング制御部、15、55:多重化回路、
16、56:パイロット生成部、17、57:送信部、18、58:制御部、
19:局間インタフェース、110、510:アンテナ、
131、531:MIMO復調器、132、532:P/S変換器、
133、533:誤り訂正復号器、171、571:誤り訂正符号器、
172、572:多重化回路、173、573:S/P変換器、
174、574:MIMO変調器、181、581:信号分離回路、
182、582:パイロット信号処理部、184、584:主制御部、
183:遅延制御情報ファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数のアンテナを備える第1送信局と第2送信局とが連携して、一連のTDMAスロットで同一受信局宛に並列的にデータ信号を送信する無線通信システムにおけるデータ送信タイミング制御方法であって、
上記第2送信局が、データ送信期間に先行する遅延時間測定期間内に、上記第1、第2送信局間および上記第1、第2送信局と上記受信局との間の信号伝播遅延時間を検出し、
上記第2送信局が、上記遅延時間測定期間内に検出された信号伝播遅延時間から、上記受信局宛データの送信タイミングの調整量を算出し、
上記第1送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで上記受信局宛のデータを送信し、
上記第2送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングと上記調整量とで決まる送信タイミングで上記受信局宛のデータを送信することを特徴とするデータ送信タイミング制御方法。
【請求項2】
前記遅延時間測定期間が、第1TDMAスロットと第2TDMAスロットとからなり、
前記第1送信局が、上記第1TDMAスロットの基準タイミングで、前記受信局に同期制御信号を送信し、上記受信局が、上記同期制御信号を受信してから所定時間Tが経過した時点で、上記第1送信局に応答信号を送信し、
前記第2送信局が、上記第1TDMAスロットで、上記第1送信局が送信した同期制御信号の受信時刻と、上記受信局が送信した応答信号の受信時刻を検出し、上記第1TDMAスロットの基準タイミングと上記同期制御信号の受信時刻との時間差を示す第1の時間情報と、上記同期制御信号と上記応答信号との受信時刻時間差を示す第2の時間情報とを記憶しておき、
上記第2送信局が、上記第2TDMAスロットの基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信し、上記受信局が、上記同期制御信号を受信してから所定時間Tが経過した時点で、上記第2送信局に応答信号を送信し、
上記第2送信局が、上記第2TDMAスロットで、上記同期制御信号を送信してから上記受信局が送信した応答信号を受信するまでの時間差を測定し、該時間差を示す第3の時間情報と、前記第1、第2の時間情報とに基づいて、前記送信タイミングの調整量を算出することを特徴とする請求項1に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項3】
前記第1の時間情報が示す時間差をTab、前記第2の時間情報が示す時間差をT1、前記第3の時間情報が示す時間差をT2とした場合、前記送信タイミングの調整量が、Tab−(T2−T1)で表されることを特徴とする請求項2に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項4】
それぞれが複数のアンテナを備える第1送信局と第2送信局とが連携して、一連のTDMAスロットで、複数の受信局宛に並列的にデータ送信する無線通信システムにおけるデータ送信タイミング制御方法であって、
上記第2送信局が、データ送信期間に先行する遅延時間測定期間内に、上記第1、第2送信局間および上記第1、第2送信局と上記各受信局との間の信号伝播遅延時間を検出し、
上記第2送信局が、上記遅延時間測定期間内に検出された信号伝播遅延時間から、上記受信局毎のデータ送信タイミングの調整量を算出し、
上記第1送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで上記各受信局宛のデータを送信し、
上記第2送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングと上記送信タイミング調整量とで決まる受信局毎に異なった送信タイミングで、上記各受信局宛のデータを送信することを特徴とするデータ送信タイミング制御方法。
【請求項5】
前記遅延時間測定期間が、第1TDMAスロットと第2TDMAスロットとからなり、
上記第1TDMAスロットの基準タイミングで、前記第1送信局が同期制御信号を送信し、上記同期制御信号を受信した前記各受信局が、受信局毎の異なった個別の待ち時間が経過した時点で、上記第1送信局に応答信号を送信し、
前記第2送信局が、上記第1TDMAスロットで、上記第1送信局が送信した同期制御信号の受信時刻と、上記各受信局からの応答信号の受信時刻を検出し、上記第1TDMAスロットの基準タイミングと上記同期制御信号の受信時刻との時間差を示す第1の時間情報と、上記受信局毎に上記同期制御信号と応答信号との時間差を示す第2の時間情報を記憶しておき、
上記第2送信局が、上記第2TDMAスロットの基準タイミングで、同期制御信号を送信し、上記同期制御信号を受信した前記各受信局が、上記個別の待ち時間が経過した時点で、上記第2送信局に応答信号を送信し、
上記第2送信局が、上記第2TDMAスロットで、上記同期制御信号を送信してから、上記各受信局からの応答信号を受信するまでの時間差を測定し、上記受信局毎に、上記同期制御信号を送信して応答信号を受信するまでの時間差を示す第3の時間情報と、前記第1、第2の時間情報とに基づいて、前記送信タイミングの調整量を算出することを特徴とする請求項4に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項6】
前記各受信局が、前記個別の待ち時間として、各受信局に付随する固有の値を使用することを特徴とする請求項5に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項7】
前記各受信局が、前記個別の待ち時間として、前記第1送信局または第2送信局から指定された値を使用することを特徴とする請求項5に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項8】
前記各受信局が、前記個別の待ち時間として、乱数に依存した値を使用することを特徴とする請求項5に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項9】
前記第1の時間情報が示す時間差をTab、前記第2の時間情報が示す時間差をT1、前記第3の時間情報が示す時間差をT2とした場合、前記送信タイミングの調整量が、Tab−(T2−T1)で表されることを特徴とする請求項5に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項10】
前記第1送信局が、前記データ送信期間内の各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで前記データと共にパイロット信号を送信し、
前記第2送信局が、上記データ送信期間内の各TDMAスロットで、スロット基準タイミングと上記パイロット信号の受信時刻との時間差を検出し、該時間差を前記Tabの最新値として、次のTDMAスロットに適用すべき送信タイミングの調整量を算出することを特徴とする請求項3または請求項9に記載のデータ送信タイミング制御方法。
【請求項11】
基地局制御装置に接続された複数の基地局からなり、各基地局が複数のアンテナを備え、上記基地局制御装置で指定された第1基地局と第2基地局が連携して、一連のTDMAスロットで同一受信局宛に並列的にデータを送信する無線通信システムであって、
上記第1基地局が、
データ送信期間に先行する遅延時間測定期間内の第1TDMAスロットの基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信する手段と、
上記受信局へのデータ送信期間に含まれる各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで上記受信局宛のデータを送信する送信タイミング制御部とを有し、
上記第2基地局が、
上記遅延時間測定期間内の第1TDMAスロットで、上記第1基地局が送信した同期制御信号の受信時刻と、上記受信局が送信した応答信号の受信時刻を検出し、上記第1TDMAスロットの基準タイミングと上記同期制御信号の受信時刻との時間差を示す第1の時間情報と、上記同期制御信号と応答信号との受信時刻時間差を示す第2の時間情報とをメモリに記憶するための手段と、
上記遅延時間測定期間内の第2TDMAスロットの基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信するための手段と、
上記第2TDMAスロットで、上記同期制御信号を送信してから、上記受信局が送信した応答信号を受信するまでの時間差を検出し、該時間差を示す第3の時間情報を上記メモリに記憶するための手段と、
上記メモリに記憶された第1、第2、第3の時間情報に基づいて、上記受信局宛のデータ送信タイミングの調整量を算出し、上記メモリに記憶するための手段と、
上記受信局へのデータ送信期間に含まれる各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングと上記メモリが示す調整量とで決まる送信タイミングで、上記受信局宛のデータを送信する送信タイミング制御部とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
基地局制御装置に接続され、上記基地局制御装置に接続された他の基地局と連携して、一連のTDMAスロットで受信局宛に並列的にデータを送信する複数のアンテナを備えた基地局であって、
上記基地局制御装置から主基地局に指定された場合、データ送信期間に先行する遅延時間測定期間内の第1TDMAスロットの基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信し、上記基地局制御装置から従基地局に指定された場合、上記遅延時間測定期間内の第2TDMAスロットの基準タイミングで、上記受信局に同期制御信号を送信するための手段と、
上記基地局制御装置から従基地局に指定された場合、上記遅延時間測定期間内の第1TDMAスロットで、上記他の基地局が送信した同期制御信号の受信時刻と、上記受信局が送信した応答信号の受信時刻を検出し、上記第1TDMAスロットの基準タイミングと上記同期制御信号の受信時刻との時間差を示す第1の時間情報と、上記同期制御信号と応答信号との受信時刻時間差を示す第2の時間情報とをメモリに記憶し、上記第2TDMAスロットで、上記同期制御信号を送信してから、上記受信局が送信した応答信号を受信するまでの時間差を検出し、該時間差を示す第3の時間情報を上記メモリに記憶するための手段と、
上記メモリに記憶された第1、第2、第3の時間情報に基づいて、上記受信局宛のデータ送信タイミングの調整量を算出し、上記メモリに記憶するための手段と、
上記基地局制御装置から主基地局に指定された場合、上記受信局へのデータ送信期間に含まれる各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングで上記受信局宛にデータを送信し、上記基地局制御装置から従基地局に指定された場合、上記受信局へのデータ送信期間に含まれる各TDMAスロットにおいて、スロット基準タイミングと上記メモリが示す調整量とで決まる送信タイミングで、上記受信局宛のデータを送信する送信タイミング制御部とを有することを特徴とする基地局。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−225137(P2009−225137A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67707(P2008−67707)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】