説明

無線通信システム、基地局制御装置、および無線基地局の不正利用防止方法

【課題】無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを容易に判断する。
【解決手段】周辺ゾーンテーブル12は、無線基地局101〜105ごとに、その無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報を予め格納している。呼処理部11は、無線端末201から無線基地局101〜105のいずれかを介して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号を含むハンドオフ要求信号を受信すると、周辺ゾーンテーブル12を参照して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号が、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局の周辺ゾーン情報に含まれておらず、かつ、ハンドオフ要求信号の送信元以外の無線基地局の周辺ゾーン情報のいずれかに含まれている場合に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局制御装置、および無線基地局の不正利用防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話システムなどの無線通信システムには、携帯電話機などの無線端末と、無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、複数の無線基地局を束ねて制御する基地局制御装置とが含まれている。
【0003】
無線基地局は、一般的に、電気通信関係法規により、許可を受けた内容に基づいて設置され運用されるため、無線基地局を許可無く移設させることは許されていない。
【0004】
また、無線基地局は、一般的に、据付工事を行う際に、建物などに強固に固定されるため、移設させること自体が難しい。
【0005】
しかし、今後、無線基地局がより小型化されると、移設が容易になる可能性があり、無線基地局が全く別の場所に移設され、不正利用されてしまうおそれがある。
【0006】
ただし、無線基地局は、一般的に、基地局制御装置と専用の伝送路で接続されているため、別の場所に移設されたとしても、基地局制御装置との間の伝送経路を確保することは難しい。
【0007】
しかし、無線基地局がLANおよびインターネットを介して基地局制御装置に接続されるなど、無線基地局と基地局制御装置との間の伝送路のIP(Internet Protocol)化が行われ、伝送路が専用の伝送路ではない状態になると、無線基地局と基地局制御装置との間の伝送経路を確保することは容易になる。
【0008】
そのため、無線基地局が全く別の場所に移設されたとしても、無線基地局が基地局制御装置と通信可能となって正常に動作してしまう場合があり、この場合、不正に移設された無線基地局の利用が可能になってしまう。
【0009】
例えば、基地局制御装置は、特許文献1に示すように、無線端末からハンドオフ先の無線基地局を指定したハンドオフ要求信号を受信した時に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであったとしても、ハンドオフを許可してしまう場合があり、この場合、不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局の利用が可能になってしまう。
【特許文献1】特開平11−027716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来技術においては、無線基地局が不正に移設されて利用されることを防止することができないという課題があり、かかる課題を解決するには、無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを判断する手段が必須である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを容易に判断することにより、無線基地局が不正に移設されて利用されることを防止することができる無線通信システム、基地局制御装置、および無線基地局の不正利用防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の第1の態様の無線通信システムは、
無線端末と、前記無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、前記複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置とを有してなる無線通信システムにおいて、
前記基地局制御装置は、
前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報を予め格納するテーブルと、
前記無線端末から前記複数の無線基地局のいずれかを介して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号を含むハンドオフ要求信号を受信すると、前記テーブルを参照し、前記ハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号が、前記ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局の周辺ゾーン情報には含まれず、かつ、前記ハンドオフ要求信号の送信元以外の無線基地局の周辺ゾーン情報に含まれている場合に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断する呼制御部とを有することを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、基地局制御装置は、ハンドオフ要求信号を受信した場合、ハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号をキーにして、テーブルを参照することにより、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを容易に判断することができる。
【0014】
このように、基地局制御装置は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたか否かの判断が容易となることから、この判断結果に基づいて不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局の利用を防止することができる。
【0015】
例えば、前記呼制御部は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、前記無線端末によるハンドオフ先の無線基地局へのハンドオフを中止する制御を行うこととしても良い。
【0016】
また、前記無線通信システムの監視者が管理する監視卓をさらに有し、
前記呼制御部は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を前記監視卓に対して報知することとしても良い。この構成によれば、監視員は、不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局に対して、装置停止等の処理を行うことができる。
【0017】
上記目的を達成するために本発明の第2の態様の無線通信システムは、
無線端末と、前記無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、前記複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置とを有してなる無線通信システムにおいて、
前記基地局制御装置は、
前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に監視信号を送信してから、該無線基地局から応答信号を受信するまでの時間を示す応答時間を格納するテーブルと、
定期的に、前記複数の無線基地局の各々に対して前記監視信号を送信し、前記複数の無線基地局の各々から前記応答信号を受信することにより、前記複数の無線基地局ごとに前記応答時間を監視して前記テーブルの応答時間を更新するとともに、更新前後の応答時間に一定以上の時間差が生じている無線基地局がある場合、該無線基地局が不正に移設されたものであると判断する呼制御部とを有することを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、基地局制御装置は、複数の無線基地局の各々の更新前後の応答時間を比較することにより、無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを容易に判断することができる。
【0019】
このように、基地局制御装置は、無線基地局が不正に移設されたか否かの判断が容易となることから、この判断結果に基づいて不正に移設された無線基地局の利用を防止することができる。
【0020】
例えば、前記無線通信システムの監視者が管理する監視卓をさらに有し、
前記呼制御部は、無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を前記監視卓に対して報知することとしても良い。この構成によれば、監視員は、不正に移設された無線基地局に対して、装置停止等の処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成された本発明によれば、基地局無線装置は、複数の無線基地局ごとに、その無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報を予め格納するテーブルと、ハンドオフ要求信号を受信すると、そのハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号が、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局の周辺ゾーン情報には含まれず、かつ、ハンドオフ要求信号の送信元以外の無線基地局の周辺ゾーン情報に含まれている場合に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断する呼制御部とを有する構成となっている。
【0022】
そのため、基地局制御装置は、ハンドオフ要求信号を受信した場合、そのハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号をキーにして、テーブルを参照することにより、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを容易に判断することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の無線通信システムは、無線端末201と、無線端末201と無線通信を行う複数の無線基地局101〜105と、複数の無線基地局101〜105の制御を行う基地局制御装置10と、本無線通信システムの監視員が管理する監視卓20とを含む。なお、無線基地局101〜105は、基地局制御装置10と伝送路30で接続されている。また、基地局制御装置10は、公衆回線網40と接続されている。
【0026】
無線基地局101〜105は、無線端末201と無線で接続されており、音声信号またはデータ信号をやりとりし、制御チャネルを用いてハンドオフ要求信号等の通信を行う。
【0027】
図2は、図1に示した無線基地局101〜105の正規配置の例を示す図である。
【0028】
図2においては、無線基地局101〜105と、無線基地局101〜105の各々が通信可能な無線ゾーン301〜305とが示されている。無線ゾーン301〜305の各々は隣接する無線ゾーンと一部重複しており、この重複している区間において無線端末201は無線基地局間のハンドオフを行う。
【0029】
図3は、図1に示した無線端末201による無線基地局101,102間のハンドオフ方法を示す図である。
【0030】
図3に示すように、無線端末201は、A地点からB地点へ移動したときに、無線基地局101から無線基地局102へのハンドオフを行う。
【0031】
図4は、図2に示した無線基地局103が不正に移設された後の配置の例を示す図である。
【0032】
図4においては、無線基地局103を移設先では無線基地局103−2とし、無線基地局103−2の無線ゾーンを無線ゾーン303−2としている。
【0033】
図5は、図1に示した基地局制御装置10の構成の一部を示す図である。なお、図5においては、本発明と無関係な部分に関しては割愛されている。
【0034】
図5に示すように、基地局制御装置10は、呼処理部11と、周辺ゾーンテーブル12とを含む。
【0035】
周辺ゾーンテーブル12は、無線基地局101〜105ごとに、その無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報を予め格納している。なお、図5では、図2のように配置された無線基地局101〜105の周辺ゾーン情報が示されている。
【0036】
呼処理部11は、無線基地局101〜105と伝送路30で接続されている。呼処理部11は、無線端末201からハンドオフ要求信号を受信すると、周辺ゾーンテーブル12を参照してハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを判断し、不正に移設されたものである場合は、その旨を監視卓20に対して報知するとともに、無線端末201によるハンドオフを中止する制御を行う。
【0037】
以下、図1に示した無線通信システムの動作について説明する。
【0038】
まず、図2に示したように無線基地局101〜105が配置されている状況において、無線端末201が、無線基地局101の無線ゾーン301から無線基地局102の無線ゾーン302へ移動する時のハンドオフ動作について説明する。
【0039】
無線端末201が無線基地局101の無線ゾーン301のA地点(図3参照)に位置している場合、A地点では無線基地局101の制御チャネルの受信レベルが高い。そのため、無線端末201は、無線基地局101と音声信号またはデータ信号を通信し、無線基地局101は、基地局制御装置10と伝送路30を介して音声信号またはデータ信号を通信している。
【0040】
また、無線端末201は、無線基地局101との通信中、その周辺の無線基地局(例えば、無線基地局102)の制御チャネルの受信レベルを測定しており、周辺の無線基地局の制御チャネルの受信レベルが一定の閾値を超えた時にハンドオフを起動する。無線基地局から送信される制御チャネルには、その無線基地局を特定する識別符号が含まれている。無線基地局101には識別符号“101”が割り当てられ、無線基地局102には識別符号“102”が割り当てられている。
【0041】
ここで、無線端末201が、A地点からB地点(図3参照)へ、すなわち、無線基地局101の無線ゾーン301から無線基地局102の無線ゾーン302へ向かって移動し、B地点で無線基地局102の制御チャネルの受信レベルが閾値を超えたとする。
【0042】
すると、無線端末201は、ハンドオフを起動し、ハンドオフ先の無線基地局102の制御チャネルに含まれる識別符号“102”を含めたハンドオフ要求信号を、現在通信中の無線基地局101に対して送信する。
【0043】
無線基地局101は、無線端末201から受信したハンドオフ要求信号を、伝送路30を介して基地局制御装置10に対して送信する。
【0044】
基地局制御装置10の呼処理部11は、無線基地局101からハンドオフ要求信号を受信すると、周辺ゾーンテーブル12を参照して、そのハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局102の識別符号“102”が、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局101の周辺ゾーン情報に含まれているか否かを判定する。
【0045】
判定の結果、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局101の周辺ゾーン情報には、ハンドオフ先の無線基地局102の識別符号“102”が含まれている(図5参照)。
【0046】
そのため、呼処理部11は、ハンドオフ先の無線基地局102が不正に移設されたものではないと判断し、伝送路30および無線基地局101を介して、無線端末201に対してハンドオフを指示する。同時に、呼処理部11は、伝送路30を介して無線基地局102に対して無線端末201との通信を開始するよう指示する。また、呼処理部11は、無線基地局102と無線端末201との通信が成功したならば、無線基地局101に対して無線端末201との通信を中止するよう指示する。
【0047】
次に、図4に示すように無線基地局103が無線基地局103−2の位置へと不正に移設された状況において、無線端末201が、無線基地局102の無線ゾーン302から無線基地局103−2の無線ゾーン303−2へ移動する時のハンドオフ動作について説明する。なお、無線基地局103−2に割り当てられる識別符号は、元々の無線基地局103と同じ“103”である。
【0048】
無線端末201が無線基地局102の無線ゾーン302に位置している場合、無線端末201は、無線基地局102と音声信号またはデータ信号を通信し、無線基地局102は、基地局制御装置10と伝送路30を介して音声信号またはデータ信号を通信している。
【0049】
ここで、無線端末201が、無線基地局102の無線ゾーン302から無線基地局103−2の無線ゾーン303−2へ向かって移動し、その移動先で無線基地局103−2の制御チャネルの受信レベルが閾値を超えたとする。
【0050】
すると、無線端末201は、ハンドオフを起動し、ハンドオフ先の無線基地局103−2の制御チャネルに含まれる識別符号“103”を含めたハンドオフ要求信号を、現在通信中の無線基地局102に対して送信する。
【0051】
無線基地局102は、無線端末201から受信したハンドオフ要求信号を、伝送路30を介して基地局制御装置10に対して送信する。
【0052】
基地局制御装置10の呼処理部11は、無線基地局102からハンドオフ要求信号を受信すると、周辺ゾーンテーブル12を参照して、そのハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局103−2の識別符号“103”が、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局102の周辺ゾーン情報に含まれているか否かを判定する。
【0053】
判定の結果、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局102の周辺ゾーン情報には、ハンドオフ先の無線基地局103−2の識別符号“103”が含まれていない(図5参照)。しかし、識別符号“103”は、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局102以外の無線基地局101,104の周辺ゾーン情報に含まれている。
【0054】
そのため、呼処理部11は、ハンドオフ先の無線基地局103−2が不正に移設されたものであると判断し、伝送路30および無線基地局102を介して、無線端末201に対してハンドオフの中止を指示する。同時に、呼処理部11は、監視卓20に対して、無線基地局103−2が不正に移設されたものであることを報知する。それにより、監視卓20を管理する監視員は、不正に移設された無線基地局103−2に対して、装置停止等の処理を行うことができる。
【0055】
上述したように本実施形態においては、基地局制御装置10は、無線基地局101〜105ごとに、その無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報を周辺ゾーンテーブル12に予め格納しておく。そして、無線端末201から無線基地局101〜105のいずれかを介して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号を含むハンドオフ要求信号を受信すると、周辺ゾーンテーブル12を参照して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号が、ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局の周辺ゾーン情報に含まれておらず、かつ、ハンドオフ要求信号の送信元以外の無線基地局の周辺ゾーン情報のいずれかに含まれている場合に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断する。
【0056】
したがって、基地局制御装置10は、ハンドオフ要求信号を受信した場合、ハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号をキーにして、周辺ゾーンテーブル12を参照することにより、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを容易に判断することができる。
【0057】
このように、基地局制御装置10は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたか否かの判断が容易となることから、この判断結果に基づいて不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局の利用を防止することができる。
【0058】
例えば、基地局制御装置10は、不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局の利用を防止するために、無線端末201に対してハンドオフの中止を指示する等により、無線端末201によるハンドオフを中止する制御を行うことができる。
【0059】
または、基地局制御装置10は、不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局の利用を防止するために、その旨を監視卓20に報知することができる。この場合、監視卓20を管理する監視員は、不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局に対して、装置停止等の処理を行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、基地局制御装置10は、ハンドオフ要求信号に含まれる識別符号とそのハンドオフの結果とを周辺ゾーンテーブル12に格納することとし、過去のハンドオフ要求信号の識別符号を参照することで、不正に移設された無線基地局が存在するか否かを判断することとしても良い。
【0061】
また、周辺ゾーンテーブル12は、不正に移設されたハンドオフ先の無線基地局への不必要なハンドオフを抑制するために常に最適化が図られることが望ましい。そのため、基地局制御装置10は、無線端末201からのハンドオフ要求信号に含まれる識別符号を一定期間集計し、周辺ゾーンテーブル12に反映することにより、不正に移設された無線基地局の存在のみならず、最適化された周辺ゾーン情報を用いることが可能となる。
【0062】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0063】
図6に示すように、本実施形態の無線通信システムは、図1に示した第1の実施形態と比較すると、基地局制御装置10の代わりに基地局制御装置50を設けた点と、無線基地局101,102の代わりに無線基地局601,602を設けた点とが異なる。なお、図1に示した無線基地局103〜105に相当する無線基地局は、説明の便宜のために、図6からは省略されている。その他の構成は、図1に示した第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0064】
図7は、図6に示した無線基地局601,602の正規配置の例を示す図である。
【0065】
図7においては、無線基地局601,602と、無線基地局601,602の各々が通信可能な無線ゾーン701,702とが示されている。無線ゾーン701,702の各々は隣接する無線ゾーンと重複していない。
【0066】
図8は、図7に示した無線基地局601が不正に移設された後の配置の例を示す図である。
【0067】
図8においては、無線基地局601を移設先では無線基地局601−2とし、無線基地局601−2の無線ゾーンを無線ゾーン701−2としている。
【0068】
図9は、図6に示した基地局制御装置50の構成の一部を示す図である。なお、図9においては、本発明と無関係な部分に関しては割愛されている。
【0069】
図9に示すように、基地局制御装置50は、呼処理部51と、応答時間テーブル52とを含む。
【0070】
呼処理部51は、無線基地局601,602と伝送路30を介して接続されている。また、呼処理部51は、無線基地局601,602を監視するために、定期的に、無線基地局601,602の各々に対して監視信号を送信し、無線基地局601,602の各々から応答信号を受信し、無線基地局601,602ごとに、監視信号の送信から応答信号の受信までの応答時間を応答時間テーブル52に格納して応答時間テーブル52の内容を更新している。また、呼処理部51は、応答時間テーブル52を参照して無線基地局601,602が不正に移設されたものであるか否かを判断し、不正に移設されたものである場合は、その旨を監視卓20に対して報知する。
【0071】
なお、無線基地局601,602の各々は、監視信号を受信してから応答信号を送信するまでの時間を最小とするように動作しているものとする。
【0072】
以下、図6に示した無線通信システムの動作について説明する。
【0073】
まず、図7に示したように無線基地局601,602が配置されている場合の動作について説明する。
【0074】
この場合、無線基地局601,602は隣接しているが、無線基地局601,602の各々の無線ゾーン701,702は重複しておらず、ハンドオフを行えない状態にある。
【0075】
例えば、無線基地局601と通信している無線端末201が、無線ゾーン701の外に移動した場合、無線ゾーン701と無線基地局602の無線ゾーン702とが重複していないため、無線端末201は制御チャネルを受信することができず、通信が切断する。
【0076】
また、呼処理部51は、無線基地局601,602を監視するために、定期的に、無線基地局601,602の各々に対して監視信号を送信し、無線基地局601,602の各々から応答信号を受信し、無線基地局601,602ごとに、監視信号の送信から応答信号の受信までの応答時間を応答時間テーブル52に格納して応答時間テーブル52の内容を更新する。この時、無線基地局601,602の各々は、監視信号を受信してから応答信号を送信するまでの時間を最小とするように動作しているが、無線基地局601,602の各々に若干の動作ばらつきがあることを考慮し複数回の応答時間の平均値を格納するようにしてもよい。
【0077】
また、呼処理部51は、無線基地局601,602の各々の更新前後の応答時間を比較し、更新前後の応答時間に一定以上の時間差が生じているか否かを判定する。
【0078】
次に、図8に示すように無線基地局601が無線基地局601−2の位置へと不正に移設された場合の動作について説明する。
【0079】
この場合も、呼処理部51は、定期的に無線基地局601−2の応答時間を監視し、応答時間テーブル52の応答時間を監視した応答時間に更新する。
【0080】
この時、更新前後の応答時間に一定以上の時間差が生じた場合、呼処理部51は、無線基地局601が不正に移設されたことにより無線基地局601に接続された伝送路30の長さが変化したと判断し、監視卓20に対して、無線基地局601−2が不正に移設された無線基地局であることを報知する。それにより、監視卓20を監視する監視員は、不正に移設された無線基地局601−2に対して、装置停止等の処理を行うことができる。
【0081】
上述したように本実施形態においては、基地局制御装置50は、無線基地局601,602を監視するために、定期的に、無線基地局601,602の各々に対して監視信号を送信し、無線基地局601,602の各々から応答信号を受信し、この監視信号の送信から応答信号の受信までの応答時間を、無線基地局601,602ごとに応答時間テーブル52に格納して応答時間テーブル52の内容を更新する。また、基地局制御装置50は、更新前後の応答時間に一定以上の時間差が生じた無線基地局がある場合、その無線基地局が不正に移設されたと判断する。
【0082】
したがって、基地局制御装置50は、無線基地局601,602の各々の更新前後の応答時間を比較することにより、無線基地局が不正に移設されたものであるか否かを容易に判断することができる。
【0083】
このように、基地局制御装置50は、無線基地局が不正に移設されたか否かの判断が容易となることから、この判断結果に基づいて不正に移設された無線基地局の利用を防止することができる。
【0084】
例えば、基地局制御装置50は、不正に移設された無線基地局の利用を防止するために、その旨を監視卓20に報知することができる。この場合、監視卓20を管理する監視員は、不正に移設された無線基地局に対して、装置停止等の処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、無線基地局を含む無線通信システムに適用可能であり、特に、無線基地局が小型化されていて移設の可能性がある場合に有効に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施形態の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した無線基地局の正規配置の例を示す図である。
【図3】図1に示した無線端末による無線基地局間のハンドオフ方法を示す図である。
【図4】図2に示した無線基地局が不正に移設された後の配置の例を示す図である。
【図5】図1に示した基地局制御装置の構成の一部を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示した無線基地局の正規配置の例を示す図である。
【図8】図7に示した無線基地局が不正に移設された後の配置の例を示す図である。
【図9】図6に示した基地局制御装置の構成の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
10 基地局制御装置
11 呼処理部
12 周辺ゾーンテーブル
20 監視卓
30 伝送路
40 公衆回線網
50 基地局制御装置
51 呼処理部
52 応答時間テーブル
101〜105 無線基地局
201 無線端末
301〜305 無線ゾーン
103−2 移設された無線基地局
303−2 無線ゾーン
601,602 無線基地局
701,702 無線ゾーン
601−2 移設された無線基地局
701−2 無線ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末と、前記無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、前記複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置とを有してなる無線通信システムにおいて、
前記基地局制御装置は、
前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報を予め格納するテーブルと、
前記無線端末から前記複数の無線基地局のいずれかを介して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号を含むハンドオフ要求信号を受信すると、前記テーブルを参照し、前記ハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号が、前記ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局の周辺ゾーン情報には含まれず、かつ、前記ハンドオフ要求信号の送信元以外の無線基地局の周辺ゾーン情報に含まれている場合に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断する呼制御部とを有する、無線通信システム。
【請求項2】
前記呼制御部は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、前記無線端末によるハンドオフ先の無線基地局へのハンドオフを中止する制御を行う、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線通信システムの監視者が管理する監視卓をさらに有し、
前記呼制御部は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を前記監視卓に対して報知する、請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線端末と、前記無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、前記複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置とを有してなる無線通信システムにおいて、
前記基地局制御装置は、
前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に監視信号を送信してから、該無線基地局から応答信号を受信するまでの時間を示す応答時間を格納するテーブルと、
定期的に、前記複数の無線基地局の各々に対して前記監視信号を送信し、前記複数の無線基地局の各々から前記応答信号を受信することにより、前記複数の無線基地局ごとに前記応答時間を監視して前記テーブルの応答時間を更新するとともに、更新前後の応答時間に一定以上の時間差が生じている無線基地局がある場合、該無線基地局が不正に移設されたものであると判断する呼制御部とを有する、無線通信システム。
【請求項5】
前記無線通信システムの監視者が管理する監視卓をさらに有し、
前記呼制御部は、無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を前記監視卓に対して報知する、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置において、
前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報を予め格納するテーブルと、
前記無線端末から前記複数の無線基地局のいずれかを介して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号を含むハンドオフ要求信号を受信すると、前記テーブルを参照し、前記ハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号が、前記ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局の周辺ゾーン情報には含まれず、かつ、前記ハンドオフ要求信号の送信元以外の無線基地局の周辺ゾーン情報に含まれている場合に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断する呼制御部とを有する、基地局制御装置。
【請求項7】
前記呼制御部は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、前記無線端末によるハンドオフ先の無線基地局へのハンドオフを中止する制御を行う、請求項6に記載の基地局制御装置。
【請求項8】
前記呼制御部は、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を、システムの監視者が管理する監視卓に対して報知する、請求項6または7に記載の基地局制御装置。
【請求項9】
無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置において、
前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に監視信号を送信してから、該無線基地局から応答信号を受信するまでの時間を示す応答時間を格納するテーブルと、
定期的に、前記複数の無線基地局の各々に対して前記監視信号を送信し、前記複数の無線基地局の各々から前記応答信号を受信することにより、前記複数の無線基地局ごとに前記応答時間を監視して前記テーブルの応答時間を更新するとともに、更新前後の応答時間に一定以上の時間差が生じている無線基地局がある場合、該無線基地局が不正に移設されたものであると判断する呼制御部とを有する、基地局制御装置。
【請求項10】
前記呼制御部は、無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を、システムの監視者が管理する監視卓に対して報知する、請求項9に記載の基地局制御装置。
【請求項11】
無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置による無線基地局の不正利用防止方法であって、
前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に隣接する無線基地局の識別符号を示す周辺ゾーン情報をテーブルに予め格納するステップと、
前記無線端末から前記複数の無線基地局のいずれかを介して、ハンドオフ先の無線基地局の識別符号を含むハンドオフ要求信号を受信すると、前記テーブルを参照し、前記ハンドオフ要求信号に含まれるハンドオフ先の無線基地局の識別符号が、前記ハンドオフ要求信号の送信元の無線基地局の周辺ゾーン情報には含まれず、かつ、前記ハンドオフ要求信号の送信元以外の無線基地局の周辺ゾーン情報に含まれている場合に、ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断するステップとを有する、不正利用防止方法。
【請求項12】
ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、前記無線端末によるハンドオフ先の無線基地局へのハンドオフを中止する制御を行うステップをさらに有する、請求項11に記載の不正利用防止方法。
【請求項13】
ハンドオフ先の無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を、システムの監視者が管理する監視卓に対して報知するステップをさらに有する、請求項11または12に記載の不正利用防止方法。
【請求項14】
無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局の制御を行う基地局制御装置による無線基地局の不正利用防止方法であって、
定期的に、前記複数の無線基地局の各々に対して監視信号を送信し、前記複数の無線基地局の各々から応答信号を受信し、前記複数の無線基地局ごとに、該無線基地局に前記監視信号を送信してから、該無線基地局から前記応答信号を受信するまでの時間を示す応答時間を監視してテーブルに格納する応答時間を更新するステップと、
前記テーブルの更新前後の応答時間に一定以上の時間差が生じている無線基地局がある場合、該無線基地局が不正に移設されたものであると判断するステップとを有する、不正利用防止方法。
【請求項15】
無線基地局が不正に移設されたものであると判断した場合、その旨を、システムの監視者が管理する監視卓に対して報知するステップをさらに有する、請求項14に記載の不正利用防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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