説明

無線通信システム、干渉防止方法

【課題】周波数ホッピングを行う無線通信ネットワーク間で通信干渉を防止する。
【解決手段】無線通信ネットワーク10aにより、デバイスとコーディネータ間の通信周波数を周波数ホッピング方式により時間帯毎に切り替えて無線通信を行い、また時間帯毎にその通信周波数で構成されるEBを発信し、無線通信ネットワーク10bにより、電源投入直後の最初の通信期間前において、無線通信ネットワーク10aから発信されたEBをスキャニングするためのスキャニング期間を設け、スキャニング期間において受信したEBが自らの通信周波数と一致する場合には、これを取得して通信干渉を防止するための制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信ネットワークの、互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワーク間で通信干渉を防止する上で好適な無線通信システム、干渉防止方法を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)は、有線LANと比較して、ケーブルのためのスペースが削減されることや、ノート型パーソナルコンピュータ(ノートPC)等を始めとした携帯端末が、その携帯性を損なうことなくLANに接続できる等の利点がある。また無線LANそのものも高速化され、また安価になってきたため、無線LANに対する実用化が一段と加速している。このような背景から、無線LANの標準化がIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineering)で進められている。
【0003】
特に無線LANに代表される無線パケット通信システムにおいて、複数の端末間における無線リソースの競合が問題視されている。この無線リソースの競合を回避するためには、媒体アクセス制御(MAC:Medium Access Control)が必要となる。この無線LANにおけるMACプロトコルとしては、端末がパケットを送信する前に他端末の搬送波を検出する、いわゆるキャリアセンスを実行し、キャリアを捕捉できない場合に自身のパケットを送信するCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式が提案されている。また、このCSMA方式に対して、更にパケットの衝突回避の仕組みを付加したCSMA/CA方式(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式も提案されている。
【0004】
このCSMA/CA方式では、通信を開始して、通信相手の無線ノードからACK(Acknowledge)信号の返信を受け取った場合には、通信が成功したものとみなし、ACK信号を受け取らなかった場合には、他の無線ノードとの通信衝突が発生したものとみなして、再びバックオフ時間を設けてパケットデータを再送信するシステムである。
【0005】
特に近年において、このCSMA/CA方式は、IEEE802.15.4規格に準拠する場合が多くなっている。IEEE802.15.4規格は、868MHz、915MHz及び2.45GHz付近の周波数を利用する無線通信であって、特にZigbee(登録商標)等の家電向け近距離通信に利用されている。Zigbee(登録商標)は、IEEE802.15.4規格で規定されたPHY層及びMAC層を用い、その上位のネットワーク層、アプリケーション層を規格化したものである。このZigbee(登録商標)は、IEEE802.15.4規格の特徴を生かし、超低消費電力化、小型化、低コスト化を実現可能としている。
【0006】
このように、IEEE802.15.4規格は、センサネットワークのみならず、ホームネットワーク、オフィスネットワーク、人体に装着した各種医療用機器との通信ネットワークに加え、将来的にはユビキタスネットワーク社会を実現するためのキーテクノロジーとしても注目されている。
【0007】
IEEE802.15.4規格による無線通信では、図8に示すように、ネットワーク7を制御するNC(Network-Coordinator)71と、複数のED(End Device)72と間で無線通信を行うのが一般的である。ちなみに、このネットワーク7の例としては、スター型、ツリー型、メッシュ型といった多彩なネットワーク形態が選択可能である。
【0008】
また、このIEEE802.15.4規格による無線通信では、ビーコンを使用したいわゆるスーパーフレーム構造を用いる。このスーパーフレーム構造は、ビーコン間隔を全てのED72がアクセス可能なCAP(Contention Access Period)、特定のED72が専有してアクセス可能なCFP(Contention Free Period)、全てのED72がアクセス禁止となるInactive期間に分割される。またCFPは、GTS(Guaranty time Slot)メカニズムにより7等分されて、通信を優先的に行いたいED72へ割り当てることが可能となる。なお、上述したIEEE802.15.4g企画では、ビーコンを用いた無線通信ネットワークに加えて、ビーコンを使用しないで同期等の処理を行う無線通信ネットワークも重要である。このビーコンを用いない無線通信ネットワークにおいては、コーディネータから周期的にビーコンが送られることはない。
【0009】
従来におけるこのIEEE802.15.4規格による無線パケット通信システムとしては、例えば、特許文献1、2等が提案されている。またCSMA/CA方式におけるパケットの衝突を最小限に抑える技術としては、例えば、特許文献3、4の開示技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−102218号公報
【特許文献2】特開2008−026310号公報
【特許文献3】特開2004−242204号公報
【特許文献4】特開2006−197177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、例えば図9に示すように、2以上のネットワーク7、7´が共存する場合もある。ネットワーク7は、NC71と、複数のED72からなり、ネットワーク7´は、NC71´とED72´とからなるが、それぞれ異なる物理層を介して無線通信を行うものである。
【0012】
しかしながら、このように2以上のネットワーク7、7´が共存する場合には、互いに通信干渉が生じる場合がある。即ち、ネットワーク7におけるNC71とED72との間における通信が、他のネットワーク7´におけるNC71´とED72´との間で行われている通信により干渉を受ける場合がある。これは、それぞれのネットワーク7、7´における中央制御ユニットとしての役割を担うNC71、NC71´との間で何らやり取りがなされていないことによるものであり、それぞれ互いに存在を無視して独立した物理層を介して無線通信を行うためである。
【0013】
このため、このような互いに異なる物理層を有する2以上のネットワーク7、7´が共存する無線通信システムにおいて、通信干渉を防止することができる干渉防止方法を案出する必要性が特に近年において高まりつつあった。
【0014】
また、特にこれらのネットワーク7が、信号の搬送波周波数を、与えられた帯域内で離散的にランダムに切り替えてスペクトラムを拡散する周波数ホッピング方式に基づいて通信を行う場合もある。かかる周波数ホッピング方式を採用するネットワーク7においても、同様に通信干渉を防止するための処理動作を行う必要があった。
【0015】
また、ビーコンを使用しない無線通信ネットワーク間10間で共存処理を行う際においても有効な方法が従来より求められていた。
【0016】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、互いに異なる物理層を有する2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは複数のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、何れかの無線通信ネットワークが周波数ホッピング方式を採用する場合であっても通信干渉を防止することが可能な無線通信システム及び干渉防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明を適用した無線通信システムは、上述した課題を解決するために、2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、デバイスとコーディネータ間の通信周波数を周波数ホッピング方式により時間帯毎に切り替えて無線通信を行い、また時間帯毎にその通信周波数で構成される共存通知信号を発信する第1の無線通信ネットワークと、電源投入直後の最初の通信期間前において、上記第1の無線通信ネットワークから発信された共存通知信号をスキャニングするためのスキャニング期間を設け、上記スキャニング期間において上記第1の無線通信ネットワークから発信された上記共存通知信号が自らの通信周波数と一致する場合には、これを取得して当該第1の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行う第2の無線通信ネットワークとを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明を適用した干渉防止方法は、上述した課題を解決するために、2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムの干渉防止方法において、第1の無線通信ネットワークにより、デバイスとコーディネータ間の通信周波数を周波数ホッピング方式により時間帯毎に切り替えて無線通信を行い、また時間帯毎にその通信周波数で構成される共存通知信号を発信し、第2の無線通信ネットワークにより、電源投入直後の最初の通信期間前において、上記第1の無線通信ネットワークから発信された共存通知信号をスキャニングするためのスキャニング期間を設け、上記スキャニング期間において上記第1の無線通信ネットワークから発信された上記共存通知信号が自らの通信周波数と一致する場合には、これを取得して当該第1の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上述した構成からなる本発明によれば、周波数ホッピング方式を採用する無線通信ネットワークであっても、共存通知信号をスキャニングしたコーディネータが、自らの近辺において他のコーディネータ、ひいてはその無線通信ネットワークが存在していることを識別することが可能となる。そして、この共存通知信号を取得したコーディネータは、当該他の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】無線通信ネットワークにおけるホッピングパターンの例を示す図である。
【図3】本発明を適用した干渉防止方法について説明するための図である。
【図4】無線通信ネットワークによって行われる周波数ホッピングのタイムチャートである。
【図5】EBに各種情報を記述した例を示す図である。
【図6】実際の干渉防止のためのプロセスを示すフローチャートである。
【図7】本発明を適用した干渉防止方法の他の実施形態について説明するための図である。
【図8】従来のNCと、複数のEDとからなる無線通信システムを示す図である。
【図9】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0022】
図1は、本発明を適用した無線通信システム1の構成例を示している。この無線通信システム1は、2つの無線通信ネットワーク10a、10bから構成されている。無線通信ネットワーク10aは、複数のデバイス2aと、ネットワーク全体を制御するコーディネータ3aとを備えている。また、無線通信ネットワーク10bは、複数のデバイス2bと、ネットワーク全体を制御するコーディネータ3bとを備えている。
【0023】
上述した図1に示す無線通信システム1では、あくまで2つの無線通信ネットワーク10a、10bから構成されている場合を例示しているが、これに限定されるものではなく、3以上の無線通信ネットワーク10からなるものであってもよい。
【0024】
これら無線通信ネットワーク10は、例えばIEEE802.15.4g標準に基づくPAN(Personal Area Network)である。なお、無線通信ネットワーク10は、図1に示すようなスター型に限定されるものではなく、ツリー型やメッシュ型等いかなるネットワーク形態を適用してもよい。
【0025】
デバイス2は、例えば、ノート型のパーソナルコンピュータ(ノートPC)や、携帯電話等を初めとした各種携帯情報端末等で構成される。デバイス2は、少なくともWPANにおいてコーディネータ3との間で無線パケット通信を行うことができ、更にはコーディネータ3を介して他のデバイス2との間で無線パケット通信を行う。
【0026】
コーディネータ3も同様に上述した携帯情報端末と構成を同一とするものであってもよい。このコーディネータ3は、中央制御ユニットとしての役割を担う。そして、このコーディネータ3は、デバイス2から送信されてくるビーコンを取得し、またデバイス2をそれぞれWPANに接続させるために、これらを互いに同期化させる役割を担う。
【0027】
これら2つの無線通信ネットワーク10a、10bは、それぞれ独自の物理層を介してコーディネータ3とデバイス2間において無線通信を行う。これは、これら2つの無線通信ネットワーク10a、10bは、互いに異なる物理層を介してコーディネータ3とデバイス2間の無線通信を行っていることを意味するものである。但し、本発明は、2つの無線通信ネットワーク10a、10が互いに異なる物理層を採用する場合に限定されるものではなく、互いに同一の物理層を採用する場合も適用可能である。
【0028】
なお、以下の説明においては、無線通信ネットワーク10aがいわゆる周波数ホッピング・スペクトラム拡散に基づいて、コーディネータ3とデバイス2間で無線通信を行う場合を考える。この周波数ホッピングでは、送信側と受信側でホッピングシーケンスやホッピングパターンを設定し、それに従って一定の通信帯域の中で高速に通信周波数を切り替えて通信を行う。
【0029】
図2の上段において無線通信ネットワーク10aにおけるホッピングパターンの例を示す。無線通信ネットワーク10aでは、使用する周波数チャネルが、チャネル#0〜チャネル#N(Nは、1以上の整数)でホッピングさせている。チャネル#0〜チャネル#Nまで順にホッピングさせることによりチャネルホッピングがちょうど1周することになる。チャネル#Nまで到達した後、再びチャネル#0に戻ってチャネルホッピングを行う。このホップする周波数をホッピングチャンネルといい、そのチャネル数をホッピングチャネル数という。この図2の例においてホッピングチャネル数はN+1である。このホッピングチャネル数が多いほど、通信妨害や通信干渉に強くなり、また通信の秘匿性を向上させることが可能となる。ホッピングチャンネルの一部にノイズが存在した場合でも、高速に通信周波数を切替えるため、かかるノイズにより通信が妨害されるのを防止することが可能となる。
【0030】
無線通信ネットワーク10aは、チャネル#0〜チャネル#Nまで時間帯毎に通信周波数を無線通信を行うとともに、その時間帯毎にその通信周波数で構成される共存通知信号(EB)を発信する。即ち、チャネル#0〜チャネル#Nの各時間帯において少なくとも1つのEBを発信する。そして、この発信されるEBの通信周波数帯域は、それぞれチャネル#0〜チャネル#Nの各周波数チャネルに応じたものとなる。このEBのフレーム構成については後段において詳述するが、正弦波に対してディジタル信号で変調を行う周波数変換式変調方式としてのFSK(Frequency Shift Keying)、直交周波数分割多重方式としてのOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、直接拡散方式としてのDSSS(Direct Sequence Spread Spectrum)等の物理層の各仕様に基づくようにしてもよい。なお、これらFSK、OFDM、DSSSは一例であって、他のいかなる物理層の仕様を用いるようにしてもよい。
【0031】
無線通信ネットワーク10bは、電源投入直後の最初の通信期間前において、上記第1の無線通信ネットワークから発信された共存通知信号をスキャニングするためのスキャニング期間を設けている。無線通信ネットワーク10bにおけるコーディネータ3bは、このスキャニング期間においてEBをスキャニングし、これを捉えることが可能となる。
【0032】
但し、この無線通信ネットワーク10bは、使用するチャネル周波数が、EBの周波数帯域と一致しない限り、EBを受信することができない。例えば、図2の例では、無線通信ネットワーク10bがチャネル#0を採用する場合には、無線通信ネットワーク10aにおけるチャネル#0の時間帯において送信されてくるEBを取得することができる。同様に、無線通信ネットワーク10bがチャネル#1を採用する場合には、無線通信ネットワーク10aにおけるチャネル#0の時間帯において送信されてくるEBを取得することができず、あくまでチャネル#0の時間帯において送信されてくるEBを取得することができる。同様に、無線通信ネットワーク10bがチャネル#2を採用する場合には、無線通信ネットワーク10aにおけるチャネル#2の時間帯のEBが送信されてくるまで待機しなければならない。
【0033】
即ち、無線通信ネットワーク10bは、自らの通信周波数と一致する周波数帯域を持つEBが送信されてくるまで待機しなければならない。この図2では、仮に無線通信ネットワーク10bがチャネル#Nを自らの通信周波数として採用する場合は、スキャニング期間が、無線通信ネットワーク10aにおけるチャネル#Nの時間帯と一致していないため、結果としてEBを受信することができない。
【0034】
このため、このEBの取得可能性を高くするためには、図3に示すようにチャネルホッピングが一周する期間以上までスキャニング期間を設定することが望ましい。この図3の例では、無線通信ネットワーク10aにおけるチャネル#0〜チャネル#Nの時間帯を含むように、無線通信ネットワーク10bのスキャニング期間を設定した場合を例に挙げているがこれに限定されるものではなく、スキャニング期間の始端がチャネル#kに一致するものであればそこからチャネルホッピングが1周する期間以上までスキャニング期間を設定するものであればよい。
【0035】
また、この無線通信ネットワーク10bは、以下に説明する方法に基づいてスキャニング期間を設定するようにしてもよい。
【0036】
図4は、無線通信ネットワーク10aによって行われる周波数ホッピングのタイムチャートの例を示している。チャネル#0〜チャネル#Nまで周波数ホッピングが行われる過程で、各周波数チャネルの時間帯の長さは、いずれも等しく、以下ではこれをDTDとする。一般にこのDTDは10msとされているが、これに限定されるものではない。また、FHEBIは、互いに前後する周波数チャネル#間におけるそれぞれのEBの間隔を示している。またHCSDは、周波数チャネルの時間帯において、その時間帯の開始時からEBが発信されるまでの間隔を示している。またFHCDは、チャネル#0〜チャネル#Nまで順にホッピングさせることによりチャネルホッピングがちょうど1周するまでの時間を示している。FHCDは、周波数ホッピングのホッピングチャネル数(N+1)と時間帯の長さ(DTD)の積で表される。
【0037】
このため、無線通信ネットワーク10b側においてスキャニング期間を設定する際には、かかるFHCDが既知であれば、そのスキャニング期間をFHCD以上とすることが望ましい。これにより、無線通信ネットワーク10bがチャネル#0〜チャネル#Nのいかなる周波数チャネルで通信を行うものであっても、必ず自己と同一の周波数のEBを取得することが可能となる。
【0038】
EBを取得することができた無線通信ネットワーク10bは、自らの近辺において他の無線通信ネットワーク10aが存在していることを識別することが可能となる。無線通信ネットワーク10bは、このEBを取得した場合には、当該他の無線通信ネットワーク10aとの間で通信干渉を防止するための制御を行う。通信干渉を防止するための制御として、同期化、通信の中段、又は別チャネルの通信の開始を行うようにしてもよい。
【0039】
なお、無線通信ネットワーク10bが周波数ホッピングに基づいて通信を行う場合においても、同様に、周波数を切り替える時間帯毎にその通信周波数で構成されるEBを発信するようにしてもよい。これにより、他の無線通信ネットワーク10が新たに同一空間に存在する場合において、同様に共存処理を実行することが可能となる。
【0040】
また無線通信ネットワーク10aは、一回目の共存処理を実行する際に、EBに上述したDTD、FHCD、FHEBI、HCSDを含めて無線通信ネットワーク10bへ送信するようにしてもよい。これにより、無線通信ネットワーク10bは、無線通信ネットワーク10aにおける周波数ホッピングに関する情報を取得することが可能となり、FHCDを初めとしたスキャニング期間を設定する上で必要な情報を取得することが可能となる。その結果、無線通信ネットワーク10bは、2回目以降の共存処理を行う場合には、予め無線通信ネットワーク10aから取得したFHCD等の情報を取得していることから、これに基づいたスキャニング期間を設定することが可能となる。
【0041】
図5は、一回目の共存処理を実行する際に、無線通信ネットワーク10bに送信する際にEBに各種情報を記述した例を示している。この図5においてフィールドID、DTD、FHCD、FHEBI、HCSDが順に記述され、更に周波数ホッピングの順序、順序のリスト、有効なホッピングチャネル等も記述されている。このような情報をEBに包含させることにより、無線通信ネットワーク10bにおいてスキャニング期間を設定する上で必要となる情報を取得することが可能となる。
【0042】
上述した処理動作は、以下の図6に示すフローチャートに基づいて動作することになる。
【0043】
先ずステップS11において、無線通信ネットワーク10bにおけるコーディネータ3bの電源がONされた後、ステップS12においてスキャニング期間においてスキャニングを行う。その結果、ステップS13において、他の無線通信ネットワーク10aコーディネータ3aからEBを捕捉することができた場合には、ステップS15へ、また捕捉できなかった場合にはステップS14へ移行する。
【0044】
ステップS14に移行した場合には、無線通信ネットワーク10bは、他の無線通信ネットワーク10が周囲に存在しないことを意味している。かかる場合には、任意のチャネルで無線通信を開始することとなる。
【0045】
ステップS15に移行した場合には、無線通信ネットワーク10bは、他の無線通信ネットワーク10が周囲に存在することを識別することができる。かかる場合には、他のチャネルで通信を開始するか否かを決定する。他のチャネルで通信を開始する旨を決定しなかった場合には、ステップS16へ移行し、無線通信ネットワーク10bは、同期を行いつつ通信を開始するか、又は通信の中止を行う。これに対して、他のチャネルで通信を開始する旨を決定した場合には、ステップS17へ移行し、無線通信ネットワーク10bは、空のチャネルでコーディネータ3bとデバイス2b間における通信を開始する。
【0046】
なお本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図7に示すように、無線通信ネットワーク10bからEBの発信を要求するための共存通知要求(EBR)を送信するようにしてもよい。無線通信ネットワーク10bのコーディネータ3bは、このEBRを電源投入直後であって、かつ最初の通信期間前において発信する。このEBRの発信タイミングは、電源投入直後で最初の通信期間前であればいかなるものであってもよいが、なるべく短い間隔でEBRを発信することにより、チャネルホッピングを行う周波数チャネルによりこれを受信することが可能となる。
【0047】
即ち、このEBRについても、この無線通信ネットワーク10bにおいて使用する通信周波数で構成されるものであるから、無線通信ネットワーク10aにおいても、これと合致する周波数チャネルからなるチャネル#0〜チャネル#Nの何れか1つのみで受信が行われる。そして、そのEBRを受信した時間帯のチャネル#のEBを送信することで、これと一致する通信周波数を持つ無線通信ネットワーク10bにおいて当該EBを受信することが可能となる。
【0048】
なお本発明では、無線通信ネットワーク10が元来ビーコンを使用しないシステムであっても、同様の手法により共存処理を有効に行うことが可能となる。
【0049】
この図7に示す実施形態では、あくまでEBの取得を望む無線通信ネットワーク10b側からEBRを発信し、無線通信ネットワーク10aは、あくまでそのEBRを受信した場合のみEBを発信する。これにより、必要とされている場合のみEBを発信すれば足り、それ以外の場合には特にEBを発信する必要は無くなる。このため、無線通信ネットワーク10aは、EBを各周波数チャネル毎に随時発信する必要がなくなることによる処理動作の負担軽減を図ることができ、消費電力を抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 無線通信システム
2 デバイス
3 コーディネータ
10 無線通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
デバイスとコーディネータ間の通信周波数を周波数ホッピング方式により時間帯毎に切り替えて無線通信を行い、また時間帯毎にその通信周波数で構成される共存通知信号を発信する第1の無線通信ネットワークと、
電源投入直後の最初の通信期間前において、上記第1の無線通信ネットワークから発信された共存通知信号をスキャニングするためのスキャニング期間を設け、上記スキャニング期間において上記第1の無線通信ネットワークから発信された上記共存通知信号が自らの通信周波数と一致する場合には、これを取得して当該第1の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行う第2の無線通信ネットワークとを備えること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
上記第2の無線通信ネットワークは、上記第1の無線通信ネットワークにおける周波数ホッピングのホッピングチャネル数並びに上記時間帯の長さが既知である場合には、上記スキャニング期間を、そのホッピングチャネル数と上記時間帯の長さの積以上とすること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
上記第2の無線通信ネットワークは、共存通知信号の送信を要求するための共存通知要求を順次発信し、
上記第1の無線通信ネットワークは、上記共存通知信号の通信周波数と一致する帯域の時間帯においてこれを受信し、当該時間帯の通信周波数で構成される共存通知信号を発信すること
を特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
2以上の無線通信ネットワークが共存し、上記各無線通信ネットワークは、一以上のデバイスとコーディネータ間で無線通信を行う無線通信システムの干渉防止方法において、
第1の無線通信ネットワークにより、デバイスとコーディネータ間の通信周波数を周波数ホッピング方式により時間帯毎に切り替えて無線通信を行い、また時間帯毎にその通信周波数で構成される共存通知信号を発信し、
第2の無線通信ネットワークにより、電源投入直後の最初の通信期間前において、上記第1の無線通信ネットワークから発信された共存通知信号をスキャニングするためのスキャニング期間を設け、上記スキャニング期間において上記第1の無線通信ネットワークから発信された上記共存通知信号が自らの通信周波数と一致する場合には、これを取得して当該第1の無線通信ネットワークとの間で通信干渉を防止するための制御を行うこと
を特徴とする干渉防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−175388(P2012−175388A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35189(P2011−35189)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「周波数ひっ迫対策のための技術試験事務」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】