説明

無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】移動局と複数の基地局との間の信頼性の高い通信を実現する無線通信システムおよび無線通信方法を提供する。
【解決手段】移動局は、第1受信部、第2受信部、両受信部の出力信号を合成する合成部、両受信部の出力信号を選択する選択部、両受信部の出力信号から異なる複数の基地局の基地局識別信号を検出する選択判定部からなり、第1受信部のアンテナは、移動方向に対して第2受信部のアンテナより前方に位置され、上記選択判定部は、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ同一の基地局識別信号を検出するか、異なる基地局識別信号を検出するかによって第1受信部、第2受信部の何れの出力を選択するかを変えるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび無線通信方法に関し、特に、複数の基地局と移動局との通信で使用されるダイバーシチ受信システムを用いる無線通信システムおよび無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信システムにおいては、移動局が複数の基地局ゾーンにまたがって通信を行う場合、各基地局から異なる基地局識別信号を送信し、移動局では、受信した基地局識別信号を基地局指定信号として返送するといった一連のシーケンスを使用することによって、移動局と基地局の接続を行う方式が一般的であった。この方式によれば、次のゾーンが空いている場合は、接続の継続が可能であり、また、移動局が存在するゾーンを占有することができるため、通信効率が良い利点がある。
【0003】
従来の無線通信システム(例えば、特許文献1参照)の一例を図5に示す。図5において、501、502は、電波の輻射および受信を行う漏洩同軸ケーブル(以下LCXケーブルと言う。)で、LCXケーブル501、502毎に異なる無線ゾーンを構成する。503は、LCXケーブル501に接続され、LCXケーブル501のLCXゾーン(LCXゾーンAと言う。)を構成する基地局Aである。この基地局503は、アンテナ共用器505、受信機Rx506、送信機Tx507、基地局識別信号発生器508をもって無線基地局を構成する。同様に、504は、LCXケーブル502に接続され、LCXケーブル502のLCXゾーン(LCXゾーンBと言う。)を構成する基地局Bである。この基地局504は、アンテナ共用器509、受信機Rx510、送信機Tx511、基地局識別信号発生器512をもって無線基地局を構成する。各基地局503、504は、異なる基地局識別信号を送信し、移動局530は、受信した基地局識別信号を基地局指定信号として返送する。また、各基地局は、制御装置520にそれぞれ接続され、移動局530から返送された基地局指定信号を制御装置520に供給する。制御装置520は、基地局指定信号検出器521および522で検出された基地局指定信号に基づいて、切替器523を切り替えて受信する基地局系統を選択する。同様にして切替器524は、送信基地局系統を選択する。回線接続装置525は、制御装置520と電話等の端末526、527に接続されている。
【0004】
一方、移動局530は、アンテナ531でLCXケーブル501、502からの電波が受信され、共用器532を経由して受信機Rx533で復調され、回線接続装置536に供給される。また、受信機Rx533からの出力のもう一方は、基地局識別信号検出器535に供給され、その結果が回線接続装置536に出力される。回線接続装置536からの送信出力は、基地局識別信号に応じて、基地局指定信号と合成して送信機Tx534、共用器532を経由してアンテナ531から送信される。
【0005】
次に、図5に示すシステムの動作について説明する。図5において、基地局A503内の基地局識別信号発生器508から発生した信号は、送信機507から送信され、共用器505を経由して、常時LCXケーブル501から送信される。同様に、基地局B504内の基地局識別信号発生器512から発生した信号は、送信機511から送信され、共用器509を経由して常時LCXケーブル502から送信される。これら識別信号は、LCXゾーンAとLCXゾーンBでは異なるものである。移動局530がLCXゾーンAを通過しているとき、移動局530のアンテナ531でLCXケーブル501からの電波を受信し、共用器532、受信機533を経由して基地局識別信号検出器535で基地局識別信号CC1が検出される。
【0006】
移動局530が送信する場合は、基地局指定信号としてLCXゾーンAを指定する信号を付加して送信することにより、LCXゾーンAの基地局A503と通信回線が接続される。移動局530がLCXゾーンAをはずれて隣接するLCXゾーンBに入った場合は、移動局530のアンテナ531でLCXゾーンBからの電波を受信することになり、基地局識別信号検出器535でLCXゾーンBの基地局B504の識別信号CC2を検出する。また、送信するときの基地局指定信号は、LCXゾーンBを指定することにより、LCXゾーンBの基地局B504と通信回線が接続される。上述したように移動局と複数の基地局の異なるゾーン間での通信が順次切替えられ通信がなされるように構成されている。
【0007】
而して、上述した移動局は、単一のアンテナを有し、LCXゾーンからの漏洩する電波を受信する場合について説明したが、移動局が移動しながら電波を受信する場合、伝送路の状態によりフェージングあるいはマルテイパス等の影響により受信状態が悪くなる場合がある。このような悪い受信状態を改善する方法としてダイバーシチ受信方式が採用されている。ダイバーシチ受信方式は、複数のアンテナによって得られる受信信号を信号電力に応じて切替えるか、あるいは、重み付け合成して受信する方法であり、特にデジタル移動無線システムでは、端末の移動に伴うフェージングに対する耐性を高める有効な手段である。
【0008】
図6は、一般的なダイバーシチ受信機の概略構成のブロック図を示す。図6において、アンテナ101−1から入力される受信信号は、受信RF部102−1において増幅、周波数変換等の処理が行われ復調部103−1に供給される。復調部103−1では、デジタル復調が行われ、複素信号であるベースバンド信号として合成部104に出力される。なお、アンテナ101−1、受信RF部102−1および復調部103−1で構成される系を第1受信部と称する。
【0009】
一方、これと同じように第2受信部が設けられている。第2受信部は、アンテナ101−2、受信RF部102−2、復調部103−2で構成されている。これら第1受信部と第2受信部の出力は、合成部104において合成、例えば、加算演算される。合成の方法は、種々考えられるが、代表的なものとして最大比合成法がある。これは、各々の受信部に含まれる信号のS/N(信号電力対雑音電力比)またはC/N(キャリア電力対雑音電力比)に応じて入力信号に個々に重み付けを行い、合成出力信号のS/NまたはC/Nが最大となるように重み付け係数を制御するものである。合成部104で最大比合成された出力信号は、復号部105で復号され、出力端子108から受信信号が出力される。なお、復号部105は、例えば、I−Q座標軸で直交変調されて送られてくる信号を元の信号に復号するもので、これについては良く知られているので詳細な説明は省略する。
【0010】
このようなダイバーシチ受信方式では、2つのアンテナがある程度離して配置され、受信入力電力の第1受信部と第2受信部間の相関がある程度小さい条件下では、フェージングによるビット誤り率の劣化を効果的に低減できる。
【0011】
また、以上述べたダイバーシチ受信方式は、通常の空間波伝搬システムだけではなく、列車無線等に用いられる漏洩同軸ケーブルによるシステムでも有効である。図7は、このようなシステムの例である。基地局503、504は、列車の沿線に配置されており、基地局の送信信号は、列車の線路に沿って敷設された漏洩同軸ケーブルLCX501、502に印加される。なお、上記例では、基地局は、2局のみ示しているが、実際は、複数の基地局が沿線に沿って配置されている。この信号は、漏洩同軸ケーブル内を、エネルギーを空間に少しずつ放射しながら伝搬する。これを受ける受信側では、移動体(車両とも言う。)530の外側に取り付けられたアンテナ101−1、101−2がこの放射信号を受信し、車両内部の受信部で復調が行われる。なお、車両内部の受信部は、例えば、図6に示されるような構成となっている。
【0012】
このように移動局530に設置されるアンテナ101−1、101−2を適切に離して配置すれば、空間波の場合と同様にダイバーシチ受信による効果が期待できる。しかしながらこのダイバーシチ受信システムは、ゾーンAとゾーンBの境界において、異なる基地局識別信号を受信する時間が存在する。例えば、図7において、車両530が矢印の方向に移動した場合、アンテナ101−1、101−2に入力される信号は、基地局503からの信号から基地局504からの信号へと切り替わるが、アンテナ101−1とアンテナ101−2が進行方向に沿って配置されているために、受信される信号が切り替わるタイミングは、二つのアンテナで異なっている。図8は、この状態を説明するための図であり、横軸は時刻を表している。図8において、時刻T1では、アンテナ101−1の入力信号が切り替わり、時刻T2では、アンテナ101−2の入力信号が切り替わる。従って、時刻T1より以前は、基地局503からの信号がアンテナ101−1、101−2に適切に受信され、時刻T2以降は、基地局504からの信号がアンテナ101−1、101−2に適切に受信されるため、ダイバーシチ合成が適切に行われる。時刻T1から時刻T2の間は、異なる基地局識別信号の合成となり、受信信号が正常に復調されないという不都合が生じる。なお、一般的にダイバーシチ受信方式の2つのアンテナ間距離は、極めて短く、また、列車の速度が数十Km〜数百Kmの速度で走行している場合、この時刻T1から時刻T2の間は、ごく短いと考えられるが、この間隔が長くなったり、列車が低速走行するような場合には、何れの基地局からの信号も受信できない時間が長くなるという問題が生じる可能性があり、その対策が望まれている。
【0013】
【特許文献1】特開2000−49683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
移動局が複数の基地局ゾーンにまたがって通信を行う場合、ダイバーシチ受信システムでは、基地局ゾーン境界において異なる基地局識別信号を受信するので、この基地局ゾーン境界が長くなったり、列車が低速走行するような場合には、何れの基地局からの信号も受信できない時間が長くなるという問題が生じる可能性があり、その対策が望まれている。
【0015】
本発明の目的は、移動局と複数の基地局との間の信頼性の高い通信を実現する無線通信システムおよび無線通信方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、複数の基地局ゾーンの干渉による受信の影響を低減するダイバーシチ受信システムを用いる無線通信システムおよび無線通信方法を提供することである。
【0017】
本発明の更に他の目的は、ダイバーシチ受信システムにおいて複数の基地局の識別信号を容易に識別できる無線通信システムおよび無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の無線通信システムは、異なる基地局識別信号を送信する複数の基地局と、上記基地局と無線回線で接続される移動局からなり、上記移動局は、少なくとも第1受信部と、第2受信部と、第1受信部と第2受信部の出力信号を合成する第1合成部と、上記第1受信部と上記第2受信部および上記合成部のそれぞれの出力信号を選択する選択部および上記第1受信部と第2受信部の出力信号から上記複数の基地局の基地局識別信号を検出する選択判定部からなり、上記第1受信部のアンテナは、上記移動局の移動方向に対して上記第2受信部のアンテナより前方に位置され、上記選択判定部は、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ同一の上記基地局識別信号を検出した場合、上記第1合成部からの出力信号を選択し、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ異なる上記基地局識別信号を検出した場合、上記移動局の前方に位置されたアンテナの上記第1受信部の出力信号を選択するように上記選択部を制御するように構成される。
【0019】
また、本発明の無線通信システムにおいて、上記第1合成部は、最大比合成法で上記第1受信部と第2受信部の出力信号を合成するように構成される。
【0020】
また、本発明の無線通信システムにおいて、更に、上記選択判定部は、上記第1受信部と第2受信部のいずれか一方からの上記基地局識別信号を検出した場合および上記第1受信部と第2受信部のいずれからも上記基地局識別信号を検出しない場合、上記第1合成部からの出力信号を選択するように上記選択部を制御するように構成される。
【0021】
また、本発明の無線通信システムにおいて、更に、上記第1受信部および第2受信部のそれぞれの受信電界強度を検出する比較判定部を具え、上記比較判定部の判定結果に基づいて上記選択部を制御するように構成される。
【0022】
また、本発明の無線通信システムにおいて、上記選択判定部が上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ異なる上記基地局識別信号を検出した場合、上記比較判定部の判定結果に基づいて上記選択部を制御するように構成される。
【0023】
更に、本発明の無線通信システムは、異なる基地局識別信号を送信する複数の基地局と、上記基地局と無線回線で接続される移動局からなり、上記移動局は、第1受信部と第3受信部で構成された第1ペアー受信部と、第2受信部と第4受信部で構成された第2ペアー受信部と、第1受信部と第3受信部の出力信号を合成する第2合成部と、第2受信部と第4受信部の出力信号を合成する第3合成部と、上記第2合成部と上記第3合成部とを合成する第4合成部と、上記第2合成部と上記第3合成部および上記第4合成部のそれぞれの出力信号を選択する選択部および上記第2合成部と上記第3合成部の出力信号から上記複数の基地局の基地局識別信号を検出する選択判定部からなり、上記第1ペアー受信部のアンテナは、上記移動局の移動方向に対して上記第2ペアー受信部のアンテナより前方に位置され、上記選択判定部は、上記第1ペアー受信部と上記第2ペアー受信部の出力信号からそれぞれ同一の上記基地局識別信号を検出した場合、上記第4合成部からの出力信号を選択し、上記第1ペアー受信部と第2ペアー受信部の出力信号からそれぞれ異なる上記基地局識別信号を検出した場合、上記移動局の前方に位置されたアンテナの上記第1ペアー受信部の出力信号を選択するように上記選択部を制御するように構成される。
【0024】
また、本発明の無線通信システムにおいて、上記第2合成部と上記第3合成部および第4合成部の少なくとも1つは、最大比合成法で合成される。
【0025】
更にまた、本発明は、異なる基地局識別信号を送信する複数の基地局と、上記基地局と無線回線で接続される移動局から構成され、上記移動局は、少なくとも第1受信部と、第2受信部と、第1受信部と第2受信部の出力信号を合成する第1合成部とから構成された無線通信システムにおける無線通信方法であって、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ同一の上記基地局識別信号を検出した場合、上記第1合成部からの出力信号を選択し、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ異なる上記基地局識別信号を検出した場合、上記移動局の前方に位置されたアンテナの上記第1受信部の出力信号を選択するように構成される。
【発明の効果】
【0026】
上述したように移動局が複数の基地局ゾーンにまたがって通信を行う場合であっても、移動局と複数の基地局との間の信頼性の高い通信を実現でき、複数の基地局ゾーンの干渉による受信の影響を低減することができる。また、ダイバーシチ受信システムにおいて複数の基地局の識別信号を容易に識別できる。更に、複数の基地局から構成され、漏洩同軸ケーブルを用いた列車無線システムのダイバーシチ受信システムにおいて、ゾーン境界で異なる基地局からの送信信号を受信した場合でも、合成によるゾーン間干渉を回避し、受信不能区間または受信不能時間を最小限にできるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例の概略構成のブロック図を示す。図1において、100−1は、第1受信部であり、アンテナ101−1、受信RF部102−1および復調部103−1から構成されている。100−2は、第2受信部であり、アンテナ101−2、受信RF部102−2および復調部103−2から構成されている。105−1、105−2、105−3は、復号部、106は、選択判定部、107は、選択部である。なお、図6と同じものには同じ符号が付されている。また、図1に示される一実施例は、ダイバーシチ受信部を示すものであり、このダイバーシチ受信部が適用される無線通信システムは、例えば、図5に示す無線通信システムと同じシステムである。そして、このダイバーシチ受信部は、図5に示される移動局530の受信部に置換えることができる。即ち、図1の出力端子108は、回線接続装置536に入力される。従って、ここでの無線通信システムの詳細な説明は省略する。
【0028】
次に、図1の動作を説明する。まず、ダイバーシチ受信部の第1受信部100−1では、アンテナ101−1に入力される受信信号は、受信RF部102−1において増幅され、周波数変換等の処理が行われ、復調部103−1に入力される。復調部103−1では、デジタル復調が行われて複素信号であるベースバンド信号として出力される。この出力は、復号部105−1と合成部104に送られる。復号部105−1では、入力されるベースバンド信号から、例えば、I−Q座標による直交変調された信号に対するシンボル判定を行い、送信時の元の信号に復号され選択部107の入力端子Aに供給される。
【0029】
一方、上記第1受信部100−1と同様に、ダイバーシチ受信部の第2受信部100−2では、アンテナ101−2に入力される受信信号は、受信RF部102−2において増幅され、周波数変換等の処理が行われ、復調部103−2に入力される。復調部103−2では、デジタル復調が行われて複素信号であるベースバンド信号として出力される。この出力は、復号部105−2と合成部104に送られる。復号部105−2では、入力されるベースバンド信号から、例えば、I−Q座標による直交変調された信号に対するシンボル判定を行い、送信時の元の信号に復号され選択部107の入力端子Bに供給される。
【0030】
復調部103−1及び復調部103−2の出力は、合成部104において、加算演算等の合成が行われる。合成の方法は、種々考えられるが、例えば、最大比合成法がある。これは、各々の受信部に含まれる信号のS/N(信号電力対雑音電力比)またはC/N(キャリア電力対雑音電力比)に応じて入力信号に個々に重み付けを行い、合成出力信号のS/NまたはC/Nが最大となるように重み付け係数を制御するものである。即ち、第1受信部の受信信号が第2受信部の受信信号よりも小さく、雑音がより多く含まれている場合には、第1受信部の重み付け係数を小さく、第2受信部の重み付け係数を大きくとり、この係数を乗じた上で加算を行う。例えば、第2受信部の重み付け係数を“1”とし、第1受信部の重み付け係数を“1/100”に設定するような重み付けを行う。このようにする理由は、小さい受信信号の第1受信部の出力P1をより小さく(P1/100)し、大きい受信信号の第2の受信部の出力P2をそのまま(P2)出力して合成する。この方が、演算のビット幅を小さくできる利点がある。
【0031】
合成部104の出力は、復号部105−3に供給される。復号部105−3では、上述と同様に入力されるベースバンド信号に対するシンボル判定を行い、対応する符号に変換して選択部107の入力端子Cに供給される。また、復号部105−1および105−2の出力は、選択判定部106にも供給される。
【0032】
選択判定部106は、例えば、図5に示される基地局識別信号発生器508から発生した信号または基地局識別信号発生器512から発生した信号を復号部105−1、105−2からの出力信号から検出し、検出された基地局識別信号の内容に従って選択部107を制御し、入力端子A、B、Cのいずれかを選択し、出力端子108に出力する。
【0033】
選択判定部106の動作について表1および図9を用いて説明する。表1は、選択判定部106の動作を説明するためのものである。
【0034】
【表1】

【0035】
表1において、検出の内容は、選択判定部106で検出される基地局識別信号の検出内容を示し、選択判定部の選択内容は、選択判定部106により制御される選択部107の制御の内容を示している。また、図9において、横軸は、距離を、縦軸は、LCXケーブルから漏洩される電波の電界強度Eを示している。また、901は、LCXケーブル501からの漏洩電波の電界強度曲線、902は、LCXケーブル502からの漏洩電波の電界強度曲線を示している。Lは、LCXケーブルの間隙を示し、約1mから数mの長さである。また、アンテナの配置は、図7に示すように、車両530のアンテナ101−1がアンテナ101−2よりも進行方向前方に配置され、アンテナ101−1とアンテナ101−2との間隔は、約1m〜2m程度である。また、基地局503の識別信号(識別情報とも言う。)をCC1、これより進行方向前方にある基地局504の識別信号(識別情報とも言う。)をCC2とした場合、第1受信部100−1と第2受信部100−2で受信された識別情報が同一の場合(表1の選択種別Aに該当する。)、即ち、基地局識別信号CC1またはCC2のいずれかであれば、選択判定部106は、入力端子Cを選択する。その結果、合成部105−3の出力であるダイバーシチ合成による出力が選択される。これは、図8において、車両530の位置が時刻T1より前の時間、あるいは時刻T2より後の時間の状態にあると判断することによるものである。図9では、アンテナ101−1とアンテナ101−2の両方がゾーンA内にあるか、ゾーンB内にあるかのいずれかである。
【0036】
一方、第1受信部100−1と第2受信部100−2で受信された識別情報が異なる場合(表1の選択種別Bに該当する。)、即ち、第1受信部100−1のアンテナ101−1がゾーンBの領域に入り、第2受信部100−2のアンテナ101−2がゾーンAの領域に位置する場合、第1受信部100−1が識別情報CC2を受信し、第2受信部100−2は、識別情報CC1を受信することとなる。この場合は、選択判定部106は、入力端子A、即ち、第1受信部100−1、復号部105−1からの出力信号を選択する。これは、進行方向前のアンテナの信号を受信することで、進行方向の先の情報を早く入手できる特徴がある。
【0037】
更に、上述した選択条件の他に、伝送路のフェージングあるいはマルチパスによる受信電界の変動があり、これによっても各アンテナの受信状態が影響される。従って、本発明者らは、各種実験の結果、選択判定部106の選択条件を次のように設定し、信頼性の高いダイバーシチ受信システムを用いる無線通信システムを実現した。即ち、第1受信部100−1が識別情報CC1を受信し、第2受信部100−2が識別情報CC2を受信を受信する場合(表1の選択種別Bに該当する。)、車両530は、ゾーン境界にあることが確かであり、車両530は、まもなく完全に基地局504のゾーンBに入ることが予想される。従って、選択判定部106は、選択部107の入力端子Aを選択するように制御する。
【0038】
また、第1受信部100−1および第2受信部100−2のどちらか一方のみからの識別情報しか検出されない場合(表1の選択種別Cに該当する。)、検出できない方の基地局からの受信電界が著しく低下していると考えられるので、選択判定部106は、選択部107の入力端子Cを選択するように制御し、最大比合成信号を活かすようにする。
【0039】
また、第1受信部100−1および第2受信部100−2のどちらからも識別情報が受信できない場合(表1の選択種別Dに該当する。)、第1受信部100−1および第2受信部100−2の両方とも受信電界が低下していると考えられるので、選択判定部106は、選択部107の入力端子Cを選択するように制御し、最大比合成信号を活かすようにする。
【0040】
以上のように選択判定部106は、第1受信部100−1および第2受信部100−2から検出される既知局識別情報の内容により選択部107を制御し、常に最良の受信状態で受信できる無線通信システムを実現することができる。
【0041】
本発明の他の一実施例を図2および図3を用いて説明する。図2は、列車無線システムを説明するための図であるが、基地局、制御装置等については、図5と同じであるので、詳細な説明は省略する。図2において、201−1、201−2は、鉄道の軌道を示し、車両530が軌道201−1上を矢印の方向に走行している。LCX501−1、LCX501−2、LCX502−1、LCX502−2は、軌道201−1、201−2の両側に配置されたLCXケーブルを示し、L1、L2は、LCXケーブルの間隙を示す。なお、LCX501−1、LCX501−2は、同一の基地局503に接続され、同一の基地局識別信号CC1を有している。また、LCX502−1、LCX502−2は、同一の基地局504に接続され、同一の基地局識別信号CC2を有している。101−1、101−2、101−3、101−4は、車両530に設けられたアンテナを示し、202は、受信装置を示している。この受信装置の詳細は、図3に示される。
【0042】
次に、図3の受信装置202について説明する。図3において、100−3は、第3受信部を構成し、この第3受信部は、アンテナ101−3、受信RF部102−3および復調部103−3から構成されている。また、100−4は、第4受信部を構成し、この第4受信部は、アンテナ101−4、受信RF部102−4および復調部103−4から構成されている。104−1、104−2、104−3は、合成部、105−4、105−5、105−6は、復号部、301は、選択判定部、302は、選択部を示す。なお、図1と同じものには同じ符号が付されている。
【0043】
図3から明らかなように、車両530の前方に位置されるアンテナ101−1と101−3は、ペアーの受信部、即ち、第1受信部と第3受信部がペアーを構成し、それぞれの出力が合成部104−1で、例えば、最大比合成され、その出力が復号部105−4および合成部104−3に供給される。なお、第1受信部と第3受信部を第1ペアー受信部と称する。また、車両530の後方に位置されるアンテナ101−2と101−4は、ペアーの受信部、即ち、第2受信部と第4受信部がペアーを構成し、それぞれの出力が合成部104−2で、例えば、最大比合成され、その出力が復合部105−5および合成部104−3に供給される。なお、第2受信部と第4受信部を第2ペアー受信部と称する。合成部104−3では、第1ペアー受信部および第2ペアー受信部からの出力を合成、例えば、最大比合成し、復号部105−6に出力する。そして、復号部105−4で復号された信号は、選択部302の入力端子Aに供給され、復号部105−5で復号された信号は、選択部302の入力端子Bに供給され、復号部105−6で復号された信号は、選択部302の入力端子Cに供給される。
【0044】
選択判定部301は、復号部105−4および105−5から出力される信号から基地局識別信号CC1およびCC2を検出し、その内容に従って選択部302を制御する。この動作は、表2で示す通りである。なお、前述したようにアンテナ101−1および101−3は、車両530の進行方向に対して車両のほぼ同じ位置の左右に取り付けられているので、同じ基地局識別信号(識別情報とも言う。)が受信される。同様の理由でアンテナ101−2および101−4も同じ基地局識別信号(識別情報とも言う。)を受信する。
【0045】
【表2】

【0046】
表2において、検出の内容は、選択判定部301で検出される基地局識別情報の検出内容を示し、選択判定部の選択内容は、選択判定部301により制御される選択部302の制御の内容を示している。なお、表2に示す検出の内容は、表1で説明した内容と同じであるので詳細な説明は省略する。図2および図4で説明したように基地局からの信号を軌道の両側に敷設されたLCXケーブルからの漏洩電波をペアーの受信部で受信し、最大比合成で信号を検出するので、図1に示すアンテナが1本の場合より伝送路で発生するフェージングやマルテイパスの影響を少なくすることができる。
【0047】
図4は、本発明の更に他の一実施例の概略構成を示すブロック図である。図4において、401は、比較判定部、402は、比較電圧設定端子である。なお、図1と同じものには同じ符号が付されている。比較判定部401には、受信RF部102−1、102−2からのRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信電界)信号が供給される。このRSSI信号は、受信電界の強度を示すもので、例えば、RF(Radio Frequency)増幅器のゲインコントロール信号を用いることができる。そして、この比較判定部401では、比較電圧設定端子402で所定の電圧Vthが設定されている。
【0048】
この比較判定部の動作を説明すると、例えば、表1において、選択種別Bあるいは選択種別Cが選択判定部106で判定されるような場合、即ち、第1と第2の受信部が異なる識別信号を検出する場合は、入力端子Aが選択され、どちらか一方の識別信号を検出する場合は、入力端子Cを選択する。しかしながら図4に示す実施例では、受信RF部102−1、102−2からの受信電界の強度信号が比較判定部401に供給されており、その電界強度が比較電圧設定端子402で設定されている所定の電圧Vthより高い場合、検出される信号は、十分なレベルにあることが判断される。従って、この場合には、比較判定部401の判定結果を優先し、十分な電界強度を有する基地局信号を選択する。即ち、選択部107の入力端子AまたはBを選択するように動作する。このように構成すると受信RF部102−1、102−2からの受信電界の強度を直接検出し、いずれの基地局からの受信信号が最適かどうかを判断できるので、更にシステムの信頼性が向上する利点がある。
【0049】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、2個の受信部あるいは2個のペアー増幅部に限られるものではなく、複数のアンテナを持つ増幅部にも適応できることは言うまでもない。また、上記実施例では、軌道上を移動する移動局について説明したが、軌道上ではなく、道路等を走行する移動体に適応することもできることは言うまでもない。また、図2に示す車両等に搭載する場合は、ペアーを構成する増幅部で構成する方が構成が簡単であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0050】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線通信システムおよび無線通信方法に限定されるものではなく、上記以外の無線通信システムおよび無線通信方法に広く適応することが出来ることは、言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の一実施例を説明するための図である。
【図3】図2に示す本発明の一実施例の受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の更に他の一実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図5】従来の無線通信システムの一例の概略構成を示すブロック図である。
【図6】従来のダイバーシテイ受信部の一例の概略構成を示すブロック図である。
【図7】従来の移動通信システムを説明するための図である。
【図8】図7の動作を説明するための図である。
【図9】本発明を説明するための図である。
【符号の説明】
【0052】
100:受信部、101、531:アンテナ、102:受信RF部、103:復調部、104:合成部、105:復号部、106、301:選択判定部、107、302:選択部、108:出力端子、201:鉄道の軌道、202:受信装置、401:比較判定部、402:比較電圧設定端子、501、502:LCXケーブル、503、504:基地局、505、509、532:アンテナ共用器、506、510、533:受信機、507、511、534:送信機、508、512:基地局識別信号発生器、520:制御装置、521、522、535:基地局指定信号検出器、523、524:切替器、525、536:回線接続装置、526、527:電話等の端末、530:移動局(車両)、901、902:電界強度曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる基地局識別信号を送信する複数の基地局と、上記基地局と無線回線で接続される移動局からなり、上記移動局は、少なくとも第1受信部と、第2受信部と、第1受信部と第2受信部の出力信号を合成する第1合成部と、上記第1受信部と上記第2受信部および上記合成部のそれぞれの出力信号を選択する選択部および上記第1受信部と第2受信部の出力信号から上記複数の基地局の基地局識別信号を検出する選択判定部からなり、上記第1受信部のアンテナは、上記移動局の移動方向に対して上記第2受信部のアンテナより前方に位置され、上記選択判定部は、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ同一の上記基地局識別信号を検出した場合、上記第1合成部からの出力信号を選択し、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ異なる上記基地局識別信号を検出した場合、上記移動局の前方に位置されたアンテナの上記第1受信部の出力信号を選択するように上記選択部を制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、更に、上記選択判定部は、上記第1受信部と第2受信部のいずれか一方からの上記基地局識別信号を検出した場合および上記第1受信部と第2受信部のいずれからも上記基地局識別信号を検出しない場合、上記第1合成部からの出力信号を選択するように上記選択部を制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、更に、上記第1受信部および第2受信部のそれぞれの受信電界強度を検出する比較判定部を具え、上記比較判定部の判定結果に基づいて上記選択部を制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
異なる基地局識別信号を送信する複数の基地局と、上記基地局と無線回線で接続される移動局からなり、上記移動局は、第1受信部と第3受信部で構成された第1ペアー受信部と、第2受信部と第4受信部で構成された第2ペアー受信部と、第1受信部と第3受信部の出力信号を合成する第2合成部と、第2受信部と第4受信部の出力信号を合成する第3合成部と、上記第2合成部と上記第3合成部とを合成する第4合成部と、上記第2合成部と上記第3合成部および上記第4合成部のそれぞれの出力信号を選択する選択部および上記第2合成部と上記第3合成部の出力信号から上記複数の基地局の基地局識別信号を検出する選択判定部からなり、上記第1ペアー受信部のアンテナは、上記移動局の移動方向に対して上記第2ペアー受信部のアンテナより前方に位置され、上記選択判定部は、上記第1ペアー受信部と上記第2ペアー受信部の出力信号からそれぞれ同一の上記基地局識別信号を検出した場合、上記第4合成部からの出力信号を選択し、上記第1ペアー受信部と第2ペアー受信部の出力信号からそれぞれ異なる上記基地局識別信号を検出した場合、上記移動局の前方に位置されたアンテナの上記第1ペアー受信部の出力信号を選択するように上記選択部を制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
異なる基地局識別信号を送信する複数の基地局と、上記基地局と無線回線で接続される移動局から構成され、上記移動局は、少なくとも第1受信部と、第2受信部と、第1受信部と第2受信部の出力信号を合成する第1合成部とから構成された無線通信システムにおける無線通信方法は、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ同一の上記基地局識別信号を検出した場合、上記第1合成部からの出力信号を選択し、上記第1受信部と第2受信部の出力信号からそれぞれ異なる上記基地局識別信号を検出した場合、上記移動局の前方に位置されたアンテナの上記第1受信部の出力信号を選択することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−43589(P2007−43589A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227432(P2005−227432)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】