説明

無線通信システム及び信号補正方法、並びにこれに用いる送信装置、受信装置

【課題】 受信した信号をより精度よく補正することができる無線通信システム及びこれに用いる信号補正方法を提供する。
【解決手段】 本発明の無線通信システムは、通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号を送信するBS10と、前記送信信号を受信するMS20とを備えている。BS10は、前記パイロット信号のみが配列された領域からなるパイロット領域PAと、前記データ信号が配列された領域からなるデータ領域DAとが、時間軸に沿って交互に配置された前記送信信号を生成する送信信号生成部13を有している。MS20は、受信した送信信号に含まれるパイロット領域PA中のパイロット信号に基づいて、パイロット領域PAごとの前記伝送路推定値を求める伝送路推定部23と、受信した送信信号に含まれるデータ領域DA中のデータ信号を前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う信号補正部24を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域移動無線通信システムなどに用いられる無線通信システム及び信号補正方法、並びにこれに用いる送信装置、受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、広範囲なエリアを無線でカバーして高速ブロードバンドサービスを提供することができる通信システムとして、例えば、IEEE802.16に規定されるいわゆる「WiMAX」と呼ばれる広帯域移動無線通信システム(Broadband Wireless Access System)が、注目されている。
一般に、上記無線通信システムにおいて、送信側が送信した信号に対して、受信側での受信信号は、伝送路環境に応じて、その振幅や位相に変化が生じる。このため、従来の無線通信装置では、受信信号に含まれるパイロット信号により得られる伝送路特性の推定値(伝送路推定値)に基づいて、受信信号についての補正を行うといった方法が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、上記従来の無線通信システムにて用いられる送信信号の構造を示す図である。図において、横軸は時間、縦軸は周波数を示している。図のように、送信信号は、サブキャリアに配列された複数のデータ信号(白抜き丸印)と、これら複数のデータ信号の配列中の所定位置に配置されたパイロット信号(黒塗り丸印)とを有している。このような構成の送信信号を受信した受信側の装置が周波数軸方向における伝送路推定値を求める場合には、周波数軸方向に複数のデータ信号を介して位置する一対のパイロット信号の伝送路推定値を求め、さらにこの伝送路推定値に基づいて線形補間による推定を行い、前記一対のパイロット信号同士間に位置する前記複数のデータ信号の伝送路推定値を求める。時間軸方向についても周波数軸方向と同様に、時間軸方向に並ぶ一対のパイロット信号の伝送路推定値を用いて線形補間することにより、これら信号同士間の伝送路推定値を求める。
上記従来例では、以上のようにして求められた各データ信号に対応する伝送路推定値に基づいて、位相変化等が生じた各データ信号の補正が行われていた。
【0004】
【特許文献1】特開2007−124553号公報(図32〜34)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の信号の補正方法では、各パイロット信号の伝送路特性を推定し、さらにその推定値を用いた線形補間による推定を行うことにより、各データ信号の伝送路推定値を求めるので、パイロット信号の伝送路特性を推定する際に生じる誤差と、線形補間による推定により生じる誤差とが、相乗的に各データ信号の伝送路推定値に影響を及ぼすこととなる。このため、データ信号の伝送路推定値に含まれる誤差が大きくなるおそれがあり、信号補正の精度を低下させる要因となっていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、受信した信号をより精度よく補正することができる無線通信システム及び信号補正方法、並びにこれに用いる送信装置、受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号を送信する送信装置と、前記送信信号を受信する受信装置とを備えた無線通信システムであって、前記送信装置は、前記データ信号が配列された領域により構成されるデータ領域と、実質的に前記パイロット信号のみが配列された領域により構成されるパイロット領域とが、同じ周波数帯域で、時間軸に沿って交互に配置された前記送信信号を生成する送信信号生成部を有し、前記受信装置は、受信した前記送信信号に含まれる前記パイロット領域中の前記パイロット信号に基づいて、前記パイロット領域ごとの伝送路推定値を求める伝送路推定部と、受信した前記送信信号に含まれる前記データ領域中のデータ信号を、当該データ領域に対して時間軸方向で隣接配置された前記パイロット領域の前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う信号補正部を有していることを特徴としている。
【0008】
上記のように構成された無線通信システムによれば、データ信号の補正を行う際、パイロット領域ごとの伝送路推定値を、当該データ信号の伝送路推定値として用いるので、上記従来例のように線形補間による推定を行う必要がない。このため、データ信号の補正のための伝送路推定値に含まれる誤差を小さくすることができ、この結果、受信した信号をより精度よく補正することができる。
【0009】
前記伝送路推定部は、前記パイロット領域に含まれる前記パイロット信号の内、同一の周波数で時間軸方向に並ぶパイロット信号に基づいて、周波数ごとの伝送路推定値を求め、前記信号補正部は、前記伝送路推定部が算出した前記周波数ごとの伝送路推定値に基づいて、前記データ領域に含まれる前記データ信号に対して、対応する周波数ごとに信号補正を行うものであることが好ましい。
【0010】
この場合、周波数ごとに求められた伝送路推定値を、対応する周波数のデータ信号の伝送路推定値として補正を行うので、周波数に起因する伝送路環境の変化に応じた信号補正を行うことができ、より信号補正の精度を高めることができる。
【0011】
また、上記無線通信システムにおいて、前記通信フレームは、前記送信信号を送信するためのバースト領域を含むユーザデータ領域を有しており、前記パイロット領域及び前記データ領域は、それぞれ、前記バースト領域を最小単位として構成されているものであってもよく、この場合、パイロット信号とデータ信号との多重処理が容易となる。
【0012】
また、本発明は、周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号を、受信装置に向けて送信する送信装置であって、前記データ信号が配列された領域により構成されるデータ領域と、実質的に前記パイロット信号のみが配列された領域により構成されるパイロット領域とが、同じ周波数帯域で、時間軸に沿って交互に配置された前記送信信号を生成する送信信号生成部を有しており、前記送信信号を受信し、前記送信信号に含まれる前記パイロット信号に基づいて前記パイロット領域ごとの伝送路推定値を求め、前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う前記受信装置に対して、前記送信信号を送信することを特徴としている。
【0013】
上記構成の送信装置によれば、受信装置が信号補正を行う際において、データ信号の補正のための伝送路推定値に含まれる誤差を小さくすることができる。この結果、受信装置に受信した信号をより精度よく補正させることができる。
【0014】
また、本発明は、周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号を送信する送信装置から前記送信信号を受信する受信装置であって、前記データ信号が配列された領域により構成されるデータ領域と、実質的に前記パイロット信号のみが配列された領域により構成されるパイロット領域とが、同じ周波数帯域で、時間軸に沿って交互に配置されるとともに、前記送信装置から送信される前記送信信号を受信し、受信した前記送信信号に含まれる前記パイロット領域中の前記パイロット信号に基づいて、前記パイロット領域ごとの伝送路推定値を求める伝送路推定部と、受信した前記送信信号に含まれる前記データ領域中のデータ信号を、当該データ領域に対して時間軸方向で隣接配置された前記パイロット領域の前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う信号補正部を有していることを特徴としている。
【0015】
上記構成の受信装置によれば、上述のように、データ信号の補正のための伝送路推定値に含まれる誤差を小さくすることができ、この結果、受信した信号をより精度よく補正することができる。
【0016】
また、本発明は、周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号により通信を行う無線通信システムの信号補正方法であって、第一の時間幅において前記パイロット信号のみが配列されたパイロットグループと、第二の時間幅において前記データ信号のみが配列されたデータグループとが、時間軸に沿って交互に配置された前記送信信号を生成する送信信号生成ステップと、前記送信信号生成ステップによって生成された送信信号を送信する送信ステップと、前記送信ステップによって送信された送信信号を受信し、受信した前記送信信号に含まれる前記パイロットグループ中の前記パイロット信号の伝送路推定値を求めるとともに、この伝送路推定値に基づいて、前記パイロットグループごとに前記パイロット信号の前記伝送路推定値の平均値を求める伝送路推定ステップと、受信した前記送信信号に含まれる前記データグループ中のデータ信号を、当該データグループに対して時間軸上で隣接配置された前記パイロットグループの前記平均値に基づいて信号補正を行う信号補正ステップと、を有していることを特徴としている。
【0017】
上記のように構成された信号補正方法によれば、上述のように、線形補間による推定を行う必要がないので、データ信号の補正のための伝送路推定値として用いられる平均値に含まれる誤差を小さくすることができ、受信した信号をより精度よく補正することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の無線通信システム及び信号補正方法によれば、受信した信号をより精度よく補正することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔無線通信システムの構成〕
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態である無線通信システムの構成を示す図である。この無線通信システムは、例えば、広帯域無線通信を実現するために直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式をサポートするIEEE802.16に規定される「WiMAX」に準拠した通信システムが採用されており、多数の基地局装置10(以下、BS10ともいう)と、移動が可能な多数の移動端末20(以下、MS20ともいう)とを有して構成される。なお、図1では、BS10とMS20をそれぞれ一つずつ示している。
BS10は、MS20との間で通信を確立し、所定の通信フレームに情報を載せることで、ユーザデータの送受信が可能であり、MS20は、ユーザデータの送受信によって、外部ネットワークへのエントリーが可能となる。これによって、BS10は、MS20に対して、無線通信による高速のブロードバンドサービスを提供することができる。
【0020】
BS10は、MS20に向けて下り送信信号を送信するための機能部を有しており、前記機能部は、MS20へ送信されるユーザデータの並列変換、符号化、変調等を行いデータ信号を生成するデータ変換部11と、パイロット信号を生成するパイロット信号生成部12と、前記データ信号及び前記パイロット信号を配列して下り送信信号を生成する送信信号生成部13と、前記下り送信信号に対して逆高速フーリエ変換、D/A変換、増幅等を行い、下り送信信号をアンテナ15を介し信号波として送信する送信部14とを有して構成されている。
【0021】
データ変換部11は、ユーザデータを並列変換し、後述する通信フレームにおける周波数ごと(サブキャリアごと)の系列を時間軸上に配列することでデータ信号を生成する。
パイロット信号生成部12は、予め定められた信号特性値に設定された信号であるパイロット信号を生成し、送信信号生成部13に出力する。このパイロット信号は、通信フレームに配置されて、MS20に送信される。このパイロット信号を受信したMS20は、当該パイロット信号の送信時における予め定められた信号特性値を記憶しておき、この送信時の信号特性値と、受信後のパイロット信号の信号特性値とを用いて演算することで、受信した信号の伝送路特性を推定することができる。
【0022】
送信信号生成部13は、データ変換部11が生成するデータ信号の配列中に、パイロット信号生成部12が生成するパイロット信号を配列することで、下り送信信号を生成する。
上記のようにデータ変換部11及び送信信号生成部13は、データ信号及びパイロット信号が周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される領域上に配置された下り送信信号を生成する。
送信部14は、送信信号生成部13が生成した下り送信信号を、逆高速フーリエ変換することによって、OFDMAで変調された信号を生成した後、D/A変換し、この信号を信号波として送信する。
【0023】
MS20は、BS10から送信される下り送信信号を受信するための機能部を有しており、前記機能部は、BS10からの前記送信波を受信するためのアンテナ21と、受信した前記信号波の増幅や、A/D変換、高速フーリエ変換等を行うことで下り送信信号を得る受信部22と、得られた下り送信信号に基づいて当該下り送信信号の伝送路推定値を求める伝送路推定部23と、前記伝送路推定値に基づいてデータ信号の補正を行う補正部24とを有して構成されている。この補正部24により補正されたデータ信号は、その後、復号化や、直列変換等が行われ、ユーザデータとして、MS20に取得される。
【0024】
なお、BS10は、MS20からの上り送信信号を受信するための機能部として、MS20が有する上記の下り送信信号を受信するための機能部と同様の機能部(図示せず)を有している。
また、MS20も、同様に、BS10に向けて上り送信信号を送信するための機能部として、BS10が有する下り送信信号を送信するための機能部と同様の機能部(図示せず)を有している。
【0025】
〔通信フレームの構成〕
図2は、本実施形態の無線通信システムの通信フレームの構成を示す図である。この通信フレームは、縦軸を周波数、横軸を時間としたときに2次元として表される各データの配置構成であり、データ変換部11及び送信信号生成部13によって生成される下り送信信号を構成するデータ信号及びパイロット信号の配置について表すことができる。
本システムの通信フレームは、BS10が送信する下り送信信号が割り当てられる下りサブフレームDと、MS20が送信する上り送信信号が割り当てられる上りサブフレームUとによって構成され、両サブフレームは時間軸上に、所定時間のギャップを介して交互に配列されている。
また、上記通信フレームにおいて、一の下りサブフレームDの送信開始時から、次の下りサブフレームDの開始時までの時間幅が、5ミリ秒に設定されている。
【0026】
下りサブフレームには、プリアンブル(Preamble)や、フレーム制御ヘッダ(FCH)、下りサブフレーム割当情報(DL−MAP)等の通信の制御に必要な制御メッセージが格納される領域M、及び、ユーザ信号及びパイロット信号が格納される下りユーザデータ領域duが割り当てられている。
下りユーザデータ領域duは、BS10との間で通信を確立しているMS20それぞれに対応して複数の下りバースト領域dbに分割されており、複数の下りバースト領域dbは、通信を確立しているMS20それぞれに対応してユーザ信号及びパイロット信号を送信するための領域として割り当てられる。
MS20の上り送信信号を送信するための送信領域である上りサブフレームUには、上りのユーザ信号及びパイロット信号が格納される上りユーザデータ領域uuが割り当てられている。上りユーザデータ領域uuは、BS10との間で通信を確立しているMS20それぞれに対応した複数の上りバースト領域ubに分割されており、複数の上りバースト領域ubは、通信を確立しているMS20それぞれに対応してユーザ信号及びパイロット信号を送信するための領域として割り当てられる。
なお、以下では、理解を容易とするために、BS10がMS20に向けて送信する下り送信信号に着目して説明する。
【0027】
本実施形態において、送信信号生成部13は、図2(a)及び(b)に示すように、下りユーザデータ領域duに格納される信号が異なる2種類の下りサブフレームDが生成されるようにデータ信号及びパイロット信号を配置する。すなわち、送信信号生成部13は、図2(a)に示すように、下りユーザデータ領域duに、実質的にパイロット信号のみが配列された第一の下りサブフレームD1と、図2(b)に示すように、下りユーザデータ領域duにデータ信号のみが配列された第二の下りサブフレームD2が生成されるようにデータ信号及びパイロット信号を配置する。
【0028】
図2(a)に示す第一の下りサブフレームD1は、下りユーザデータ領域du全域に、実質的にパイロット信号のみが格納されており、下りユーザデータ領域duを構成する全ての下りバースト領域dbにおいても、実質的にパイロット信号のみが格納されている。従って、BS10との間で通信を確立しているMS20それぞれに対して、第一の下りサブフレームD1の下りバースト領域dbによる信号送信については、パイロット信号のみが送信される。
なお、ここで、下りユーザデータ領域du及びこれに含まれる下りバースト領域dbにおいて、実質的にパイロット信号のみが格納されている状態とは、当該領域にデータ信号が配置されておらず、多数のパイロット信号と、ガードサブキャリアや中心周波数サブキャリア等を構成するヌル信号とが格納されている状態をいう。
【0029】
図2(b)に示す第二の下りサブフレームD2は、下りユーザデータ領域du全域にデータ信号が格納されており、下りユーザデータ領域duを構成する全ての下りバースト領域dbにおいても、実質的にユーザ信号のみが格納されている。従って、BS10との間で通信を確立しているMS20それぞれに対して、第二の下りサブフレームD2の下りバースト領域dbによる信号送信については、データ信号のみが送信される。
送信信号生成部13は、両下りサブフレームD1,D2をそれぞれ予め定められた時間幅の範囲で交互に生成することで、両下りサブフレームD1,D2それぞれが配置される時間幅の範囲を時間軸上に交互に配置する。
【0030】
図3は、通信フレームにおける、両下りサブフレームD1,D2の配置の態様を示す図である。図3中、横軸を時間軸としたときの通信フレームFの一部を示している。図において、ハッチングで示した部分は、通信フレーム中において、第一の下りサブフレームD1が送信される領域を示しており、その他の部分は、第二の下りサブフレームD2が送信される領域を示している。これら両領域は、それぞれ、時間軸上で交互に配置される。
第一の下りサブフレームD1が送信される領域の時間幅である第一の時間幅t1、及び、第二の下りサブフレームD2が送信される領域の時間幅である第二の時間幅t2は、共に、予め定められた値に設定されており、隣り合う下りサブフレームD同士の開始時間の間隔が上述のように5ミリ秒であるので、これら両時間幅t1,t2は、5ミリ秒の倍数に設定される。
また、第一の時間幅t1は、第二の時間幅t2よりも小さくなるように設定されている。第一の時間幅t1においては、第一の下りサブフレームD1で送信されるので、下りバースト領域dbによってMS20に送信される信号はパイロット信号のみとなる。このため、第一の時間幅t1を大きく設定すると、データ信号を送信する際の実質的な送信速度が低下するおそれがある。このため、第一の時間幅t1を第二の時間幅t2よりも小さく設定することで、データ信号の送信速度が低下するのを抑制することができる。
【0031】
以上のように、両下りサブフレームD1,D2は、時間軸上に交互に配置される両時間幅t1,t2の範囲にそれぞれ配置される。
【0032】
〔送信信号の構造〕
図4は、上記通信フレームによって送信される下り送信信号をMS20が受信したときの当該下り送信信号の構造を示した模式図である。図中、横軸は時間、縦軸は周波数を示している。また、図4では、下りバースト領域dbにおいて送信される信号のみを示しており、白抜きの丸印はデータ信号を示しており、黒塗りの丸印はパイロット信号を示している。
図中、第一の時間幅t1においては、実質的にパイロット信号のみが配列された下りバースト領域db(下りユーザデータ領域du)を含む第一の下りサブフレームD1によって下り送信信号が送信されるので、第一の時間幅t1においては、実質的にパイロット信号のみが配列されている。
このように、本実施形態の送信信号は、第一の時間幅t1の範囲において、実質的にパイロット信号のみが配列された領域からなるパイロット領域PAを有している。なお、図例では、第一の時間幅t1が、例えば10ミリ秒に設定されており、パイロット領域PAは、二つの下りバースト領域db(下りユーザデータ領域du)によってそれぞれ送信されるパイロット信号を含んで構成される。すなわち、パイロット領域PAは、実質的にパイロット信号のみが配列された下りバースト領域dbを最小単位として構成されている。
【0033】
また、第二の時間幅t2においては、データ信号のみが配列された下りバースト領域db(下りユーザデータ領域du)を含む第二の下りサブフレームD2によって下り送信信号が送信されるので、第二の時間幅t2においては、データ信号のみが配列されている。
このように、本実施形態の下り送信信号は、第二の時間幅t2の範囲において、データ信号のみが配列された領域であるデータ領域DAを有している。なお、図例では、第二の時間幅t2が、例えば15ミリ秒に設定されており、データ領域DAは、三つの下りバースト領域db(下りユーザデータ領域du)によってそれぞれ送信されるデータ信号のみを含んで構成される。すなわち、送信信号には制御メッセージ等の信号も含まれているが、データ領域DAは、データ信号のみが配列された下りバースト領域dbを最小単位として構成されている。また、データ領域DAと、パイロット領域PAとは、同じ周波数帯域で配置されている。
【0034】
両下りサブフレームD1,D2は、時間軸上に交互に配置される両時間幅t1,t2の範囲内にそれぞれ配置されるので(図3参照)、上記パイロット領域PA及びデータ領域DAは、同じ周波数帯域で、互いに時間軸に沿って交互に配置される。
BS10の送信信号生成部13は、上述の構造を採るように送信信号を生成する。
【0035】
〔信号補正について〕
次に、BS10が送信する下り送信信号を受信したMS20による、下り送信信号の信号補正について説明する。
BS10から送信される送信波を受信したMS20は、まず、受信部22によって、A/D変換、高速フーリエ変換等を行うことで図4に示す構造を採る下り送信信号を得る。
図4を参照して、次に、MS20は、得られた下り送信信号の内、パイロット領域PAに配列されている複数のパイロット信号それぞれについての伝送路推定値Hを、伝送路推定部23に求めさせる。ここで、MS20は、パイロット信号の送信時における予め定められた信号特性値を記憶しており、伝送路推定部23は、この送信時の信号特性値と、受信した送信信号に含まれるパイロット信号から得られる信号特性値とを用いて演算することで、当該パイロット信号の伝搬特性を推定し、複数のパイロット信号それぞれの伝送路推定値Hを求めることができる。
【0036】
さらに、伝送路推定部23は、時間軸方向に並ぶパイロット信号の伝送路推定値Hの平均値Haveを周波数ごとに求める。つまり、同一の周波数で時間軸方向に並ぶパイロット信号の伝送路推定値Hの平均値Haveを、各周波数ごとそれぞれについて求める。
つまり、伝送路推定部23は、パイロット領域PA中のパイロット信号に基づいて、パイロット領域PAごとの伝送路推定値としての平均値Haveを、周波数ごとに求める。
【0037】
そして、MS20は、伝送路推定部23が求めた周波数ごとの平均値Haveに基づいて、データ領域DAに含まれるデータ信号の補正を、補正部24に行わせる。
このとき、補正部24は、平均値Haveを求めたパイロット信号が属するパイロット領域PAに対して時間軸方向で隣接配置されたデータ領域DA(図例では、パイロット領域PAに続いて紙面右側に配置されたデータ領域DA)に含まれているデータ信号の補正を行う。
【0038】
補正部24は、周波数ごとの平均値Haveに基づいて、データ領域DAに含まれるデータ信号に対して、対応する周波数ごとに信号補正を行う。つまり、同一の周波数で時間軸方向に並ぶ複数のパイロット信号の伝送路推定値Hの平均値Haveを用いて、データ領域DA中、平均値Haveを求めたパイロット信号と同一の周波数で時間軸方向に並ぶ複数のデータ信号それぞれについて信号補正を行う。
このように、補正部24は、パイロット信号の伝送路推定値Hの周波数ごとの平均値Haveを、データ領域DAに含まれるデータ信号の伝送路推定値として用いることで信号補正を行う。
【0039】
上記のように、補正部24によって補正されたデータ信号は、その後、復号処理や、直列変換等が行われ、ユーザデータに復元されてMS20に取得される。
【0040】
上記のように構成された無線通信システムによれば、データ信号の補正を行う際、パイロット領域PAごとの伝送路推定値として周波数ごとに求める平均値Haveを、当該データ信号の伝送路推定値として用いるので、上記従来例のように線形補間による推定を行う必要がない。このため、データ信号の補正のための伝送路推定値として用いられる平均値Haveに含まれる誤差を小さくすることができ、この結果、受信したデータ信号をより精度よく補正することができる。
【0041】
また、本実施形態の無線通信システムでは、周波数ごとに求められた平均値Haveを、対応する周波数のデータ信号の伝送路推定値として補正を行うので、周波数に起因する伝送路環境の変化に応じた信号補正を行うことができ、より信号補正の精度を高めることができる。
【0042】
また、上記無線通信システムにおいて、パイロット領域PA及びデータ領域DAは、それぞれ、パイロット信号及びデータ信号のみが配置された下りバースト領域dbを最小単位として構成されているので、パイロット信号とデータ信号との多重処理が容易となる。
【0043】
なお、上記実施形態では、下りユーザデータ領域du全範囲についてパイロット信号のみを格納した第一の下りサブフレームD1、または、下りユーザデータ領域du全範囲についてデータ信号のみを格納した第二の下りサブフレームD2のいずれかによって送信信号を送信したが(図2参照)、例えば、図5に示すように、下りユーザデータ領域duにおいて各MS20に対して送信するために割り当てられた下りバースト領域dbごとに、パイロット信号又はデータ信号のみが格納された領域を生成し、当該特定のMS20が受信する下り送信信号について、パイロット領域PA及びデータ領域DAが時間軸方向に交互に配列される信号構造とすることもできる。
この場合においても、上記特定のMS20との間では、パイロット領域PA及びデータ領域DAは、当該MS20に割り当てられる下りバースト領域db内の領域を最小単位として構成される。
上記構成によれば、BS10は、通信を確立しているMS20ごとに、下り送信信号の構造について制御することができる。
【0044】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では、下りバースト領域dbを最小単位として、実質的にパイロット信号のみが配列されたパイロット領域PA及びデータ信号が配列されたデータ領域DAが通信フレーム中に配列されるようにしたが、図6に示すように、一の下りバースト領域db内で、パイロット領域PA及びデータ領域DAが時間軸方向に交互に配置されるようにパイロット信号とデータ信号とを多重してもよい。
この場合、パイロット信号とデータ信号とが同一の下りバースト領域db内に配置されており、同じ領域内に配列されたパイロット領域PAによる平均値Haveを用いてデータ信号を補正するので、時間が経過することにより生じる誤差を抑えることができ、より精度よく信号補正を行うことができる。
【0045】
また、さらに、一の下りバースト領域db内で、パイロット領域PA及びデータ領域DAが時間軸方向に交互に配置されるようにパイロット信号とデータ信号とを多重して下り送信信号を構成する場合、図7に示すように、周波数軸方向に対しても、交互に配置されるようにパイロット領域PA及びデータ領域DAを配置することもできる。
この場合、伝送路推定部23は、同一の時間で周波数軸方向に並ぶパイロット信号の伝送路推定値Hの平均値Have´をその時間ごとそれぞれについて求め、補正部24は、この平均値Have´に基づいて、対応する時間で周波数軸方向に並ぶ複数のデータ信号それぞれについて信号補正を行うこともできる。
【0046】
また、上記実施形態では、伝送路推定部23は、パイロット領域PA内において同一の周波数で時間軸方向に並ぶパイロット信号の伝送路推定値Hの平均値Haveをパイロット領域PAごとの伝送路推定値として周波数ごとに求めたが、平均値を求めること以外に例えば、時間軸方向に並ぶパイロット信号の内、時間軸方向の位置(データ信号との時間差)に応じて、その重み付けを変えてパイロット領域PAごとの伝送路推定値を求めてもよい。この場合、よりデータ信号に時間軸上近いパイロット信号の重み付けを大きくすることで、より精度よく補正を行うことができる。
【0047】
また、上記実施形態では、BS10からMS20に向けて送信される下り送信信号について説明したが、MS20からBS10に向けて送信される上り送信信号に対しても適用できる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態である無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態の無線通信システムの通信フレームの構成を示す図である。
【図3】通信フレームにおける、両下りサブフレームD1,D2の配置の態様を示す図である。
【図4】通信フレームによって送信される下り送信信号を移動端末が受信したときの当該下り送信信号の構造を示した模式図である。
【図5】下り送信信号の他の構造を示した模式図である。
【図6】一の下りバースト領域内で、パイロット領域及びデータ領域が時間軸方向に交互に配置された構造を示した模式図である。
【図7】一の下りバースト領域内で、パイロット領域及びデータ領域が時間軸方向に交互に配置された構造の内、さらに異なる他の構造を示した模式図である。
【図8】従来の無線通信システムにて用いられる送信信号の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 基地局装置 11 データ変換部 12 パイロット信号生成部
13 送信信号生成部 14 送信部 15 アンテナ
20 移動端末 21 アンテナ 22 受信部
23 伝送路推定部 24 補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号を送信する送信装置と、前記送信信号を受信する受信装置とを備えた無線通信システムであって、
前記送信装置は、
前記データ信号が配列された領域により構成されるデータ領域と、実質的に前記パイロット信号のみが配列された領域により構成されるパイロット領域とが、同じ周波数帯域で、時間軸に沿って交互に配置された前記送信信号を生成する送信信号生成部を有し、
前記受信装置は、
受信した前記送信信号に含まれる前記パイロット領域中の前記パイロット信号に基づいて、前記パイロット領域ごとの伝送路推定値を求める伝送路推定部と、
受信した前記送信信号に含まれる前記データ領域中のデータ信号を、当該データ領域に対して時間軸方向で隣接配置された前記パイロット領域の前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う信号補正部を有していることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記伝送路推定部は、前記パイロット領域に含まれる前記パイロット信号の内、同一の周波数で時間軸方向に並ぶパイロット信号に基づいて、周波数ごとの伝送路推定値を求め、
前記信号補正部は、前記伝送路推定部が算出した前記周波数ごとの伝送路推定値に基づいて、前記データ領域に含まれる前記データ信号に対して、対応する周波数ごとに信号補正を行う請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記通信フレームは、前記送信信号を送信するためのバースト領域を含むユーザデータ領域を有しており、
前記パイロット領域及び前記データ領域は、それぞれ、前記バースト領域を最小単位として構成されている請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号を、受信装置に向けて送信する送信装置であって、
前記データ信号が配列された領域により構成されるデータ領域と、実質的に前記パイロット信号のみが配列された領域により構成されるパイロット領域とが、同じ周波数帯域で、時間軸に沿って交互に配置された前記送信信号を生成する送信信号生成部を有しており、
前記送信信号を受信し、前記送信信号に含まれる前記パイロット信号に基づいて前記パイロット領域ごとの伝送路推定値を求め、前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う前記受信装置に対して、前記送信信号を送信することを特徴とする送信装置。
【請求項5】
周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号を送信する送信装置から前記送信信号を受信する受信装置であって、
前記データ信号が配列された領域により構成されるデータ領域と、実質的に前記パイロット信号のみが配列された領域により構成されるパイロット領域とが、同じ周波数帯域で、時間軸に沿って交互に配置されるとともに、前記送信装置から送信される前記送信信号を受信し、受信した前記送信信号に含まれる前記パイロット領域中の前記パイロット信号に基づいて、前記パイロット領域ごとの伝送路推定値を求める伝送路推定部と、
受信した前記送信信号に含まれる前記データ領域中のデータ信号を、当該データ領域に対して時間軸方向で隣接配置された前記パイロット領域の前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う信号補正部を有していることを特徴とする受信装置。
【請求項6】
周波数軸と時間軸とからなる2次元で表される通信フレームにパイロット信号及びデータ信号を配置してなる送信信号により通信を行う無線通信システムの信号補正方法であって、
前記データ信号が配列された領域により構成されるデータ領域と、実質的に前記パイロット信号のみが配列された領域により構成されるパイロット領域とが、同じ周波数帯域で、時間軸に沿って交互に配置された前記送信信号を生成する送信信号生成ステップと、
前記送信信号生成ステップによって生成された送信信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップによって送信された送信信号を受信し、受信した前記送信信号に含まれる前記パイロット領域中の前記パイロット信号に基づいて、前記パイロット領域ごとの伝送路推定値を求める伝送路推定ステップと、
受信した前記送信信号に含まれる前記データ領域中のデータ信号を、当該データ領域に対して時間軸方向で隣接配置された前記パイロット領域の前記伝送路推定値に基づいて信号補正を行う信号補正ステップと、を有していることを特徴とする無線通信システムの信号補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−177295(P2009−177295A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11303(P2008−11303)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】