説明

無線通信システム及び送信電力制御方法

【課題】整数バイト長のACK/NACKパケットを用いて無線通信を行う場合に、無線通信に使用する無線リソースを低減するとともに、送信電力を適切に制御することが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】無線通信システムは、送信電力の制御対象となる制御対象無線装置1と、制御対象無線装置1の無線通信の相手となる通信相手無線装置3とを備える。通信相手無線装置3は、(a)制御対象無線装置1から受信した無線信号に基づいて受信品質を測定し、(b)受信品質と、当該受信品質が目標とすべき目標受信品質とに基づいて電力変更量を決定し、(c)整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケット52の空き領域に電力変更量を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を制御対象無線装置1に送信する。制御対象無線装置1は、通信相手無線装置3から受信した無線信号に含まれる電力変更量に基づいて、送信電力を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムと、当該無線通信システムにおいて無線信号を送信するための送信電力を制御する送信電力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波を利用した無線通信システムにおいては、回線品質の確保及び装置のバッテリ持続時間の長期化等を目的として、無線信号を送信するための送信電力が制御されている。例えば、移動通信端末と基地局との無線通信において、端末と基地局との距離が近い場合には、回線品質が比較的過剰に良好となることから、送信電力を低く抑えることによりバッテリ持続時間をなるべく長くしている。一方、端末と基地局との距離が遠い場合には、無線信号の電波の減衰量が大きくなることから、回線品質を良好に保つべく送信電力を高くしている。
【0003】
非特許文献1に記載の無線通信システムにおいては、例えば、上りリンク(端末(UE)から基地局(Node−B)への無線信号の送信)の送信電力を制御するクローズドループ制御が行われる。具体的には、基地局が、通信開始時から上りリンクにおける物理チャネルの受信品質(例えばSIR(Signal-to-interference ratio))を測定する。そして、測定された物理チャネル品質が、目標とすべき目標物理チャネル品質より大きければ、端末の送信電力を下げる命令が下りリンク(基地局から端末への無線信号の送信)に割り当てられ、逆に目標物理チャネル品質よりも小さければ、端末の送信電力を上げる命令が下りリンクに割り当てられる。この命令はTPCコマンドと呼ばれ、物理チャネルであるTPCフィールド上に割り当てられる。以上のように、端末の送信電力は、下りリンクのTPCフィールドに割り当てられたTPCコマンドに基づいて制御されている。この制御は、インナーループ制御と呼ばれている。
【0004】
また、基地局は、受信したデータに付加される誤り検出符号を用いて、複数のデータの誤り率(BLER;Block Error Rate)を算出し、当該算出に係るBLERと、予め定められた通信の目標品質(ここでは「目標BLER」と呼ぶ)とを比較する。そして、基地局は、算出したBLERが目標BLERより高ければ、算出されるBLERを低くすべく上述のインナーループ制御で用いる目標物理チャネル品質を高く設定し、逆に算出したBLERが目標BLERより低ければ、算出されるBLERを高くすべく当該目標物理チャネル品質を低く設定する制御を行うことで、最適な目標物理チャネル品質に補正している。この制御は、アウターループ制御と呼ばれている。無線通信システムにおいては、以上のインナーループ制御とアウターループ制御とを組合せて行うことにより送信電力制御が実現されている。
【0005】
一方、特許文献1には、ACK(肯定的応答)を含む無線信号の受信回数とNACK(否定的受信)を含む無線信号の受信回数との差に応じて、送信出力を制御する無線データ通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−8777号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3Gpp TS25.211<http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html-info/25211.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、デジタル無線装置においては、ACK/NACKのいずれかが格納される、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットを用いて無線通信を行うものが提案されている。このようなデジタル無線装置において、上述の非特許文献1の技術を適用すると、TPCコマンドが物理チャネル上にマッピングされることになるが、一般には、無線通信に使用される無線リソースはなるべく低減されることが望まれている。
【0009】
また、TPCコマンドは、送信電力を上げ下げする二つの命令しかなく、一定の変更幅でしか変更できない。この場合に、変更幅を自在に切り替え可能な柔軟な制御を実現することは困難である。また、特許文献1に記載の技術では、例えば、急に送信電力を大きくすることが必要となったとしても、NACKを受信した累積回数が多くならないと送信電力を大きく上げることができず、急には送信電力を大きく上げることができないことから、精度よく制御できないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットを用いて無線通信を行う場合に、無線通信に使用する無線リソースを低減するとともに、送信電力を適切に制御することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る無線通信システムは、送信電力の制御対象となる制御対象無線装置と、前記制御対象無線装置の無線通信の相手となる通信相手無線装置とを備える。前記通信相手無線装置は、(a)前記制御対象無線装置から受信した無線信号に基づいて受信品質を測定し、(b)前記受信品質と、当該受信品質が目標とすべき目標受信品質とに基づいて電力変更量を決定し、(c)整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に前記電力変更量を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を前記制御対象無線装置に送信する。前記制御対象無線装置は、前記通信相手無線装置から受信した無線信号に含まれる前記電力変更量に基づいて、前記通信相手無線装置に無線信号を送信するための送信電力を変更する。
【0012】
また、上記と別構成として、本発明に係る無線通信システムは、送信電力の制御対象となる制御対象無線装置と、前記制御対象無線装置と無線通信の相手となる通信相手無線装置とを備える。前記通信相手無線装置は、(a)前記制御対象無線装置から受信した無線信号に基づいて受信品質を測定し、(b)整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に前記受信品質を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を前記制御対象無線装置に送信する。前記制御対象無線装置は、(c)前記通信相手無線装置から受信した無線信号に含まれる前記受信品質を取得し、当該受信品質と、当該受信品質が目標とすべき目標受信品質とに基づいて電力変更量を決定し、(d)前記電力変更量に基づいて、前記通信相手無線装置に無線信号を送信するための送信電力を変更する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信相手無線装置は、ACK/NACKパケットの空き領域に電力変更量を割り当てる。したがって、TPCフィールドを省略することが可能となることから、無線通信に使用する無線リソースを低減することができる。また、多段階の電力変更量により、送信電力を精度良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る送信パケットの構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1に係る送信電力制御の動作例を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る送信パケットの構成を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態に係る無線通信システムは、送信電力の制御対象となる制御対象無線装置1と、制御対象無線装置1の無線通信の相手となる通信相手無線装置3とを備える。この無線通信システムでは、制御対象無線装置1が通信相手無線装置3に無線信号を送信する際の送信電力が制御される。次に、制御対象無線装置1及び通信相手無線装置3の構成について説明する。
【0016】
制御対象無線装置1は、アンテナ11と、高周波受信部12と、受信ベースバンド部13と、高周波送信部14と、送信ベースバンド部15と、再送制御部16と、上位レイヤ処理部17と、送信電力制御部18とを備える。この制御対象無線装置1には、例えば、端末装置が該当する。
【0017】
アンテナ11は、高周波受信部12及び高周波送信部14に共用されるアンテナであり、外部と無線信号を送受信する。高周波受信部12は、アンテナ11で受信された受信信号をベースバンド帯域にダウンコンバートするとともにデジタル形式に変換することによって、受信ベースバンド信号を取得する。受信ベースバンド部13は、当該受信ベースバンド信号に対して、デジタル復調、誤り訂正復号、物理チャネル品質測定を行うことによって、受信データと送達確認情報(ACK/NACK)とを含む受信パケットと、物理チャネル品質(SIR等)とを取得する。受信ベースバンド部13は、当該受信パケットを再送制御部36に与える。
【0018】
再送制御部16は、受信ベースバンド部13で取得された受信パケットに基づく受信データを上位レイヤ処理部17に与える。一方で、この再送制御部16は、上位レイヤ処理部17から送信データを受け取り、これらをパケット化することにより送信パケットを生成し、送信ベースバンド部15に与える。再送制御部16は、以上の動作と並行して、送信パケット及び受信パケットの再送制御を行う。また、再送制御部16は、受信ベースバンド部13からの受信パケットに含まれるACK/NACKパケットを送信電力制御部18に与える。
【0019】
上位レイヤ処理部17は、無線通信のプロトコル処理を行うものであり、アプリケーションを搭載する。この上位レイヤ処理部17は、再送制御部16から受信データを受け取り、その一方で、再送制御部16に送信データを与える。
【0020】
送信電力制御部18には、再送制御部16からのACK/NACKパケットが入力される。本実施の形態では、後述するように、通信相手無線装置3から受信した無線信号に含まれるACK/NACKパケットには、電力変更量が割り当てられており、送信電力制御部18は、当該電力変更量に基づいて、高周波送信部14における送信電力を制御する。
【0021】
送信ベースバンド部15は、再送制御部16からの送信パケットに、デジタル変調、誤り訂正符号化、誤り検出符号化を行うことによって、送信ベースバンド信号を生成する。高周波送信部14は、当該送信ベースバンド信号を高周波帯域にアップコンバートするとともにアナログ形式に変換することによって送信信号を生成し、アンテナ11を介して当該送信信号を外部に送信する。
【0022】
次に、通信相手無線装置3について説明する。通信相手無線装置3は、アンテナ31と、高周波受信部32と、受信ベースバンド部33と、高周波送信部34と、送信ベースバンド部35と、再送制御部36と、上位レイヤ処理部37と、目標物理チャネル品質制御部38と、制御電力決定部39とを備える。この通信相手無線装置3には、例えば、基地局が該当し、任意の制御対象無線装置1と無線通信を行う。なお、以下の説明においては、制御対象無線装置1から通信相手無線装置3への無線信号の送信を、「上りリンク」と呼ぶこともあり、逆に、通信相手無線装置3から制御対象無線装置1への無線信号の送信を、「下りリンク」と呼ぶこともある。
【0023】
アンテナ31は、高周波受信部32及び高周波送信部34に共用されるアンテナであり、外部と無線信号を送受信する。高周波受信部32は、アンテナ31で受信された受信信号をベースバンド帯域にダウンコンバートするとともにデジタル形式に変換することによって、受信ベースバンド信号を取得する。受信ベースバンド部33は、当該受信ベースバンド信号に対して、デジタル復調、誤り訂正復号、誤り検出、物理チャネル品質測定を行うことによって、受信データ及び送達確認情報を含む受信パケットと、誤り検出符号と、物理チャネル品質(SIR等)とを取得する。そして、受信ベースバンド部33は、取得した受信パケットを再送制御部36に与える。また、受信ベースバンド部33は、取得した誤り検出符号を目標物理チャネル品質制御部38に与え、取得した物理チャネル品質を制御電力決定部39に与える。
【0024】
目標物理チャネル品質制御部38には、受信ベースバンド部33からの誤り検出符号が入力される。詳細な動作については後述するが、目標物理チャネル品質制御部38は、誤り検出符号等に基づいて、受信ベースバンド部33(通信相手装置3)で取得される物理チャネル品質が目標とすべき目標物理チャネル品質を設定する。
【0025】
制御電力決定部39は、受信ベースバンド部33で取得された物理チャネル品質と、目標物理チャネル品質制御部38で設定された目標物理チャネル品質とに基づいて、制御対象無線装置1における送信電力制御に用いられる電力変更量を決定する。そして、制御電力決定部39は、当該電力変更量を再送制御部36に与える。
【0026】
再送制御部36は、受信ベースバンド部33で取得された受信パケットに基づく受信データを上位レイヤ処理部27に与える。一方で、この再送制御部36は、受信ベースバンド部33での誤り検出結果に基づいて、通信相手無線装置3が制御対象無線装置1からのデータを正しく受信できたか否かを示す送達確認情報(ACK/NACK)を含む送信パケット50を生成し、送信ベースバンド部35に与える。
【0027】
図2は、再送制御部36が生成する送信パケット50の構成を示す図である。図2に示すように、再送制御部36は、上位レイヤ処理部27からの送信データが割り当てられたデータ部51と、送達確認情報(ACK/NACK)が割り当てられる、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケット52とを有する送信パケット50を生成する。なお、データ部51は必要に応じて省略される場合もある。
【0028】
本実施の形態では、再送制御部36は、このACK/NACKパケット52の空き領域に、上述の制御電力決定部39で決定された電力変更量を割り当てる。
【0029】
上位レイヤ処理部37は、無線通信のプロトコル処理を行うものであり、アプリケーションを搭載する。この上位レイヤ処理部37は、再送制御部36から受信データを受け取り、その一方で、再送制御部36に送信データを与える。
【0030】
送信ベースバンド部35は、再送制御部36からの送信パケット50に、デジタル変調、誤り訂正符号化を行うことによって、送信ベースバンド信号を生成する。高周波送信部34は、当該送信ベースバンド信号を高周波帯域にアップコンバートするとともにアナログ形式に変換することによって送信信号を生成し、アンテナ31を介して当該送信信号を外部に送信する。
【0031】
図3は、以上のように構成された本実施の形態に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。ここで、当該無線通信システムの動作を詳細について説明する前に、その概略を説明する。
【0032】
まず、通信相手無線装置3が、制御対象無線装置1から受信した無線信号に基づいてSIR等の物理チャネル品質(受信品質)を測定する。そして、通信相手無線装置3が、測定した物理チャネル品質と、当該物理チャネル品質が目標とすべき目標物理チャネル品質(目標受信品質)とに基づいて電力変更量を決定する。そして、通信相手無線装置3が、下りリンクにおいて、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に当該電力変更量を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を制御対象無線装置1に送信する。制御対象無線装置1は、通信相手無線装置3から受信した無線信号に含まれる電力変更量に基づいて、通信相手無線装置3に無線信号を送信するための送信電力(上りリンクの送信電力)を変更する。
【0033】
次に、図3を用いて、本実施の形態に係る無線通信システムの動作を詳しく説明する。まず、ステップs1〜s7の動作は、通信相手無線装置3において行われる。
【0034】
ステップs1にて、通信相手無線装置3のアンテナ31は、制御対象無線装置1から送信された送信信号を受信信号として受信し、高周波受信部32は、当該受信信号から受信ベースバンド信号を取得する。同ステップs1にて、受信ベースバンド部33は、当該受信ベースバンド信号にデジタル復調、誤り訂正復号を行うことによって受信パケットを取得する。また、受信ベースバンド部33は、当該受信ベースバンド信号(実質的には制御対象無線装置1から受信した無線信号)に基づいて、SIRなどの物理チャネル品質を測定する。
【0035】
ステップs2にて、受信ベースバンド部33は、高周波受信部32が取得した受信ベースバンド信号(実質的には制御対象無線装置1から受信した無線信号)に誤り検出を行うことによって、受信パケットの誤り率であるBLER(BLock Error Rate)を取得する。
【0036】
ステップs3にて、目標物理チャネル品質制御部38は、ステップs2で取得した取得BLERと、予め定められた本通信の目標BLER(目標値)とに基づいて、目標物理チャネル品質を適切に設定する。具体的には、目標物理チャネル品質制御部38は、非特許文献1に開示されているアウターループ制御と同様に、取得したBLER(誤り率)が目標BLERより高ければ、次回に取得されるBLERを低くすべく目標物理チャネル品質を現在より高く設定し、逆に取得BLERが目標BLERより低ければ、消費電力を低くすべく目標物理チャネル品質を現在よりも低く設定する。なお、ここで設定された目標物理チャネル品質は、図示しないメモリ等の記憶装置に一時的に記憶され、次に説明するステップs4に用いられる。
【0037】
ステップs4にて、制御電力決定部39は、ステップs1で測定された物理チャネル品質と、ステップs3で設定された目標物理チャネル品質とを比較する。そして、ステップs5にて、制御電力決定部39は、その比較結果に基づいて電力変更量を決定する。本実施の形態では、後述するように、制御電力決定部39は、ステップs1で測定された物理チャネル品質と、ステップs3で設定された目標物理チャネル品質との差分に基づいて電力変更量を決定する。
【0038】
ステップs6にて、再送制御部36は、ステップs2で行った誤り検出の結果が、誤りなしであれば、誤りなく受信した旨を示すステータスパケット(ACKパケット)を生成する。一方、再送制御部36は、ステップs2で行った誤り検出の結果が、誤りありであれば、誤りなく受信できなかった旨を示すステータスパケット(NACKパケット)を生成する。この際に、再送制御部36は、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケット52の空き領域にステップs4で決定された電力変更量を割り当てる。そして、同ステップs6にて、再送制御部36は、データ部51に、ACK/NACKパケット52をヘッダとして付加した送信パケット50(図2)を生成する。
【0039】
ステップs7にて、送信ベースバンド部35は、ステップs6で生成された送信パケット50にデジタル変調、誤り訂正符号化を行うことによって送信ベースバンド信号を生成する。そして、高周波送信部34は、当該送信ベースバンド信号から送信信号を生成し、アンテナ31を介して当該送信信号を制御対象無線装置1に送信する。
【0040】
次に、ステップs8〜s13の動作は、制御対象無線装置1において行われる。
【0041】
ステップs8にて、制御対象無線装置1のアンテナ11は、通信相手無線装置3から送信された送信信号を受信信号として受信し、高周波受信部12は、当該受信信号から受信ベースバンド信号を取得する。同ステップs8にて、受信ベースバンド部13は、当該受信ベースバンド信号にデジタル復調、誤り訂正復号を行うことによって受信パケットを取得する。
【0042】
そして、同ステップs8にて、再送制御部16は、受信パケット(ステップs6のパケット)の送達を確認し、そのデータ部に基づくデータを上位レイヤ処理部17に与えるとともに、当該受信パケットに含まれるACK/NACKパケット52を送信電力制御部18に与える。ステップs8の後、ステップs9〜s11と、ステップs12とが並行して行われる。
【0043】
ステップs9にて、再送制御部16は、ACK/NACKパケット52がACK/NACKのいずれを示すかを判定する。ACK/NACKパケット52がACKを示すと判定した場合にはステップs10に進み、NACKを示すと判定した場合にはステップs11に進む。
【0044】
ステップs10にて、通信相手無線装置3に前回送信されたデータの次のデータが上位レイヤ処理部17から再送制御部16に与えられる。再送制御部16は、当該次のデータを割り当てたデータ部51にヘッダを付加し、それをパケット化することにより送信パケットを生成する。そして、再送制御部16は、生成した送信パケットを送信ベースバンド部15に与えるとともに、送信パケットを与えた旨を送信電力制御部18に通知する。
【0045】
ステップs11にて、再送制御部16は、通信相手無線装置3に前回送信されたデータと同じデータを割り当てたデータ部51にヘッダを付加し、それをパケット化することにより送信パケットを生成する。そして、再送制御部16は、生成した送信パケットを送信ベースバンド部15に与えるとともに、送信パケットを与えた旨を送信電力制御部18に通知する。
【0046】
ステップs12にて、送信電力制御部18は、ステップs8で再送制御部16から与えられたACK/NACKパケット52から電力変更量を取得し、メモリに記憶する。そして、送信電力制御部18は、直近に記憶された電力変更量を高周波送信部14に与える。高周波送信部14は、当該電力変更量に基づいて、通信相手無線装置3に無線信号を送信するための送信電力を変更する。ステップs10及びステップs12が行われた後、あるいは、ステップs11及びステップs12が行われた後、次に説明するステップs13が行われる。
【0047】
ステップs13にて、送信ベースバンド部15は、ステップs10またはステップs11で生成された送信パケットにデジタル変調、誤り訂正符号化、誤り検出符号化を行うことによって送信ベースバンド信号を生成する。そして、高周波送信部14は、当該送信ベースバンド信号から送信信号を生成し、アンテナ11を介して当該送信信号を通信相手無線装置3に送信する。その後、ステップs1に戻る。
【0048】
次に、以上で説明した制御対象無線装置1及び通信相手無線装置3の動作例について説明する。
【0049】
図4は本実施の形態に係る送信電力制御の動作例を示す図であり、図5はこのときに通信相手無線装置3において生成される送信パケット50の構成を示す図である。ここでは、通信相手無線装置3で測定される物理チャネル品質の指標として、SIRを用いるものとする。また、目標物理チャネル品質制御部38における上述のステップs3の動作により、通信相手無線装置3には、適当な目標物理チャネル品質(目標SIR)としてA[dB]が設定されているものとする。
【0050】
今、任意の制御対象無線装置1が、送信電力Pa[dBm]で無線信号を通信相手無線装置3に送信している。このとき、降雨・建物の新設等の環境変動の影響で、通信相手無線装置3が受信した当該無線信号のSIR測定結果が、B(ここではB<A)[dB]であったものとする(上述のステップs1)。SIR測定後、通信相手無線装置3は、測定されたSIRと目標SIRとの差分(=B−A)を算出する。ここでは、当該差分として−0.9[dB]が算出されたものとする。
【0051】
次に、通信相手無線装置3は、当該差分に基づいて電力変更量を決定する(上述のステップs5)。本実施の形態では、通信相手無線装置3は、制御対象無線装置1の送信電力値の分解能(ここでは0.2[dB])と、電力変更量であるn(n=0,±1,±2,…)との積(0.2×n[dB])が、当該差分(−0.9[dB])の正負の符号を変えた値とほぼ同じ値(ここでは1・0[dB])となるように、電力変更量(ここではn=+5)を決定する。特に、本実施の形態では、通信相手無線装置3は、上述の積(0.2×n)と、測定されたSIR(B)との和(B+0.2×n)が、目標SIR(A)を超え、かつ、当該目標SIRに最も近い値となるように、電力変更量nを決定する。
【0052】
そして、通信相手無線装置3は、図5に示すように、整数倍のバイト長(ここでは1バイト)を有するACK/NACKパケット52の空き領域(ここでは2〜8桁目のビット)に電力変更量をデジタル化して割り当てる(上述のステップs6)。
【0053】
図5に示される例では、1桁目(右側)のビットには、送達確認情報が割り当てられ、当該ビットが「0」である場合にはACKを示し、「1」である場合にはNACKを示す。2〜7桁目においては電力変更量の絶対値が割り当てられ、また、図5に示す例では、上述で決定された「+5」がデジタル化されて割り当てられている。そして8桁目(左側)のビットには、電力変更量の正負の符号が割り当てられ、当該ビットが「0」である場合は増加を示し、「1」である場合には減少を示す。
【0054】
ここで、データ部51とACK/NACKパケット52は従来から送信されているものであり、本実施の形態では、ACK/NACKパケット52の空き領域に電力変更量が割り当てられる。したがって、電力変更量の割り当てには特別なパケット追加は不要であり、当該電力変更量を、TPCフィールドが必要なTPCコマンドの代用とすることができる。よって、TPCフィールドを省略することができることから、無線通信に使用する無線リソースを低減することができるとともに、通信相手無線装置3における伝送負荷を抑制することも期待できる。
【0055】
その後、通信相手無線装置3は、送信パケット50を含む無線信号を制御対象無線装置1に送信し(上述のステップs7)、制御対象無線装置1は、当該無線信号に含まれる電力変更量と分解能との積(0.2×5)を求め、当該積と前回の送信電力との和(Pa+1.0[dB])を高周波送信部14における送信電力として設定し、以降の送信に反映させる(上述のステップs8)。
【0056】
以上のような本実施の形態に係る無線通信システム及び送信電力制御方法によれば、通信相手無線装置3は、ACK/NACKパケット52の空き領域に電力変更量を割り当てる。したがって、TPCフィールドを省略することが可能となることから、無線通信に使用する無線リソースを低減することができる。また、通常のパケット伝送の仕組みを流用することができることから、実機からの変更を抑制することができる。また、本実施の形態では、多段階の電力変更量により制御対象無線装置1の送信電力が制御される。したがって、少ないやりとりにおいても精度よく送信電力を制御することができ、制御対象無線装置1の送信電力を適切に制御することができる。
【0057】
また、本実施の形態に係る無線通信システム及び送信電力制御方法によれば、通信相手無線装置3は、測定された物理チャネル品質と、目標物理チャネル品質との差分に基づいて電力変更量を決定する。したがって、制御対象無線装置1の送信電力を精度よく制御することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る無線通信システム及び送信電力制御方法によれば、通信相手無線装置3は、制御対象無線装置1から受信した無線信号に誤り検出を行うことによってBLERを取得し、当該BLERと予め定められた目標値とに基づいて目標物理チャネル品質を設定する。したがって、アウターループ制御を行う無線通信システムにおいても有効である。
【0059】
<実施の形態2>
図6は、本発明の実施の形態2に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、実施の形態1に係る無線通信システムと同様の構成要素については同じ符号を付すものとし、実施の形態1に係る無線通信システムと異なる部分を中心に説明する。
【0060】
実施の形態1では、通信相手無線装置3が電力変更量を決定していたのに対し、本実施の形態では、制御対象無線装置1が電力変更量を決定する。ここで、本実施の形態に係る制御対象無線装置1及び通信相手無線装置3の動作を詳細について説明する前に、その概略を説明する。
【0061】
まず、通信相手無線装置3が、制御対象無線装置1から受信した無線信号に基づいてSIR等の物理チャネル品質(受信品質)を測定する。そして、通信相手無線装置3が、下りリンクにおいて、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に当該物理チャネル品質を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を制御対象無線装置1に送信する。
【0062】
制御対象無線装置1は、通信相手無線装置3から受信した無線信号に含まれる物理チャネル品質を取得し、当該物理チャネル品質と、当該物理チャネル品質が目標とすべき目標物理チャネル品質とに基づいて電力変更量を決定する。そして、制御対象無線装置1は、当該電力変更量に基づいて、通信相手無線装置3に無線信号を送信するための送信電力(上りリンクの送信電力)を変更する。
【0063】
次に、本実施の形態に係る無線通信システムについて、通信相手無線装置3、制御対象無縁装置1の順に詳細に説明する。
【0064】
本実施の形態に係る通信相手無線装置3では、実施の形態1に係る同装置から目標物理チャネル品質制御部38及び制御電力決定部39が削除されている。
【0065】
再送制御部36は、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケット52の空き領域に、電力変更量の代わりに、受信ベースバンド部33が測定した物理チャネル品質をデジタル化して割り当てる。
【0066】
次に、本実施の形態に係る制御対象無線装置1について説明する。本実施の形態に係る制御対象無線装置1では、実施の形態1に係る同装置に目標物理チャネル品質制御部19が追加されている。
【0067】
受信ベースバンド部13は、自身が取得する受信ベースバンド信号(実質的には通信相手無線装置3から受信した無線信号)に含まれる物理チャネル品質及びACK/NACK情報を取得する。そして、受信ベースバンド部13は、取得した物理チャネル品質を送信電力制御部18に与えるとともに、取得したACK/NACK情報から算出されるBLERを目標物理チャネル品質制御部19に与える。
【0068】
目標物理チャネル品質制御部19は、受信ベースバンド部13からのBLERと、予め定められた目標BLERとに基づいて、実施の形態1に係る目標物理チャネル品質制御部38と同様に目標物理チャネル品質を適切に設定する。
【0069】
送信電力制御部18は、受信ベースバンド部13からの物理チャネル品質と、目標物理チャネル品質制御部19で設定された目標物理チャネル品質とに基づいて、実施の形態1に係る制御電力決定部39と同様に電力変更量を決定する。そして、送信電力制御部18は、実施の形態1と同様に、当該電力変更量と分解能との積を求め、当該積と前回の送信電力との和を、高周波送信部14における送信電力として設定し、以降の送信に反映させる。
【0070】
以上のような本実施の形態に係る無線通信システム及び送信電力制御方法によれば、通信相手無線装置3は、ACK/NACKパケット52の空き領域に物理チャネル品質を割り当て、制御対象無線装置1は、当該物理チャネル品質に係る電力変更量に基づいて送信電力を変更する。したがって、実施の形態1と同様に、無線通信に使用する無線リソースを抑制することができるとともに、制御対象無線装置1の送信電力を適切に制御することができる。特に、本実施の形態では、各制御対象無線装置1において送信電力が決定されることから、通信相手無線装置3の負荷を軽減することができる。このことは、特に、制御対象無線装置1の数が多く、通信相手無線装置3の負荷が大きくなっている場合には有効である。また、回線ごとに固有の目標物理チャネル品質が設定されるため、通信相手無線装置3は、個々の制御対象無線装置1に対して回線状況に特化した送信電力制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 制御対象無線装置、3 通信相手無線装置、52 ACK/NACKパケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信電力の制御対象となる制御対象無線装置と、
前記制御対象無線装置の無線通信の相手となる通信相手無線装置と
を備え、
前記通信相手無線装置は、
(a)前記制御対象無線装置から受信した無線信号に基づいて受信品質を測定し、
(b)前記受信品質と、当該受信品質が目標とすべき目標受信品質とに基づいて電力変更量を決定し、
(c)整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に前記電力変更量を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を前記制御対象無線装置に送信し、
前記制御対象無線装置は、
前記通信相手無線装置から受信した無線信号に含まれる前記電力変更量に基づいて、前記通信相手無線装置に無線信号を送信するための送信電力を変更する、無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記電力変更量はデジタル化して割り当てられる、無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線通信システムであって、
前記通信相手無線装置は、
前記(b)において、前記(a)で測定された前記受信品質と、前記目標受信品質との差分に基づいて前記電力変更量を決定する、無線通信システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無線通信システムであって、
前記通信相手無線装置は、
(d)前記制御対象無線装置から受信した無線信号に誤り検出を行うことによってBLER(BLock Error Rate)を取得し、当該BLERと予め定められた目標値とに基づいて前記目標受信品質を設定する、無線通信システム。
【請求項5】
送信電力の制御対象となる制御対象無線装置と、
前記制御対象無線装置と無線通信の相手となる通信相手無線装置と
を備え、
前記通信相手無線装置は、
(a)前記制御対象無線装置から受信した無線信号に基づいて受信品質を測定し、
(b)整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に前記受信品質を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を前記制御対象無線装置に送信し、
前記制御対象無線装置は、
(c)前記通信相手無線装置から受信した無線信号に含まれる前記受信品質を取得し、当該受信品質と、当該受信品質が目標とすべき目標受信品質とに基づいて電力変更量を決定し、
(d)前記電力変更量に基づいて、前記通信相手無線装置に無線信号を送信するための送信電力を変更する、無線通信システム。
【請求項6】
無線通信システムにおいて送信電力の制御対象となる制御対象無線装置の送信電力を制御する送信電力制御方法であって、
(a)前記無線通信システムにおいて前記制御対象無線装置と無線通信の相手となる通信相手無線装置が、前記制御対象無線装置から受信した無線信号に基づいて受信品質を測定する工程と、
(b)前記通信相手無線装置が、前記受信品質と、当該受信品質が目標とすべき目標受信品質とに基づいて電力変更量を決定する工程と、
(c)前記通信相手無線装置が、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に前記電力変更量を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を前記制御対象無線装置に送信する工程と、
(d)前記制御対象無線装置が、前記通信相手無線装置から受信した無線信号に含まれる前記電力変更量に基づいて、前記通信相手無線装置に無線信号を送信するための送信電力を変更する工程と
を備える、送信電力制御方法。
【請求項7】
無線通信システムにおいて送信電力の制御対象となる制御対象無線装置の送信電力を制御する送信電力制御方法であって、
(a)前記無線通信システムにおいて前記制御対象無線装置と無線通信の相手となる通信相手無線装置が、前記制御対象無線装置から受信した無線信号に基づいて受信品質を測定する工程と、
(b)前記通信相手無線装置が、整数倍のバイト長を有するACK/NACKパケットの空き領域に前記受信品質を割り当てて、当該パケットを含む無線信号を前記制御対象無線装置に送信する工程と、
(c)前記制御対象無線装置が、前記通信相手無線装置から受信した無線信号に含まれる前記受信品質を取得し、当該受信品質と、当該受信品質が目標とすべき目標受信品質とに基づいて電力変更量を決定する工程と、
(d)前記制御対象無線装置が、前記電力変更量に基づいて、前記通信相手無線装置に無線信号を送信するための送信電力を変更する工程と
を備える、送信電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147280(P2012−147280A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4489(P2011−4489)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】