説明

無線通信システム

【課題】ユーザが他のユーザの実在感を認識しやすく、直接的なユーザ間のコミュニケーションの発展にも寄与することが可能な無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線LANアクセスポイント300に予め対応づけられたバーチャルな空間のマップデータを、サービス管理サーバ500が、上記無線LANアクセスポイント300に接続する無線端末100や無線端末200に提供し、そのマップ上に無線端末100や無線端末200のユーザのキャラクタを登場させ、キャラクタを通じて無線端末100−無線端末200間でメッセージの交換や、他のユーザの属性情報を取得するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば無線LANなどを用いてコミュニケーションサービスを提供する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(IEEE802.11方式)により「いつでも/どこでも」をキーワードとして端末のモバイル性とそれを支えるユビキタス環境が求められているが、積極的な導入はなかなか進んでいない。これは、無線LANネットワークを利用することによる明確なビジョンやサービスを一般ユーザへ打ち出せていないことが問題としてある。
【0003】
例えば、ADSLなどのブロードバンドアクセスの普及は、e-mailやwebブラウジングなどといったサービス(キラーアプリ)の存在による影響が大きいと考えられるが、無線LANアクセスによるそれらサービスの利用要求は極めて乏しいと思われる。
【0004】
これは、無線LANアクセスだからこそのサービス提供ではないことや、無線LANならではといった利点が活かされていないことが挙げられる。事実、出先でメールの閲覧やwebアクセスを必要とする人の割合は、多くの外出を伴うビジネスマンといった非常に限定された範囲しか要求されない。
【0005】
ところで、現在「引きこもり」といった現象が社会問題として浮上してきている。これは、ネットワークを介してのコミュニケーションが容易に行えるようになったことから、実際のFace-to-Faceな接触を伴わずとも、部屋などの閉じた空間にいながらにして交流が行えるという利点や利便性が高まる一方で、これまでの直接的な人間関係が希薄になり、人として生活する上で必要なコミュニケーションが図れないという問題が生じている。
【0006】
これらの実際の接触を伴わない交流は、インスタントメッセージやチャットルーム、電子掲示板などのコミュニティを利用して広く行われており、相手を特定することが困難であるという秘匿性も手伝ってか、人と何らかのつながりを持ちたいと言う欲求がある一方で、相手を思いやる心遣いやエチケット、ルールといったものが、ないがしろにされる傾向がある。
【0007】
無線LANアクセスは、「移動を伴いながらもネットワーク接続ができる」というのが利点であるが、これはネットワーク側の観点から見て十分条件ではあるが、必要条件ではない。
【0008】
従来は、ネットワーク上に市場を出すといったバーチャルリアリティ環境を利用したものが存在する(例えば、特許文献1、特許文献2)が、これはこれまでの閉じた空間からのネットワーク利用によるものと同様であり、その延長線上にあるものである。また、遠方にある施設環境を投影するものもあり(例えば、特許文献3、特許文献4)、展示情報の提示を利用者の存在位置に従って提供する。
【0009】
その他、相手の在席情報を知るために個人を特定するといった点が特徴とするものもある(例えば、特許文献5)が、これはある特定人物に対して行う行為であり、個人の特徴を出すためにキャラクターへ投影するといった特徴を有するもの(例えば、特許文献6、特許文献7)があるが、コミュニケーションを図るものではあるものの、閉じた空間でのコミュニケーションという観点では、これまでのアプリケーションで行われていたものと大きく変わりがない。
【特許文献1】特開2004−206432公報
【特許文献2】特開2004−127249公報
【特許文献3】特開2004−102835公報
【特許文献4】特開2004−030120公報
【特許文献5】特開2004−234590公報
【特許文献6】特開2004−005044公報
【特許文献7】特開2003−178328公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のネットワークを通じたユーザ間のコミュニケーションは、各ユーザがそれぞれ存在する現実の空間とは無関係な仮想空間を通じて行われるものであるため、ユーザは他のユーザの実在感を認識しがたく、直接的な人間関係を築きにくいという問題があった。
【0011】
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、ユーザが他のユーザの実在感を認識しやすく、ユーザ間の直接的なコミュニケーションの発展にも寄与することが可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明は、分散配置された複数のアクセスポイントがネットワークを通じてサーバに接続され、このサーバが、前記アクセスポイントと無線通信する無線端末にサービスを提供する無線通信システムであって、サーバは、アクセスポイントに無線接続される無線端末とアクセスポイントを通じて通信する第1通信手段と、複数のアクセスポイントにそれぞれ対応づけた仮想空間の画像を記憶する空間画像記憶手段と、第1通信手段を制御してアクセスポイントに無線接続される無線端末と通信し、アクセスポイント毎に、接続している無線端末の識別情報を集計する第1制御手段と、この第1制御手段が集計した情報に基づいて第1通信手段を制御し、無線端末が接続しているアクセスポイントに対応した仮想空間の画像を空間画像記憶手段から読み出して、無線端末に送信する第2制御手段と、第1制御手段が集計した情報に基づいて第1通信手段を制御し、無線端末に対して、この無線端末が接続しているアクセスポイントに接続される他の無線端末の識別情報を送信する第3制御手段とを備え、無線端末は、アクセスポイントと無線通信して、アクセスポイントを通じてサーバと通信する第2通信手段と、画像を表示する表示手段と、この表示手段を制御して、サーバから受信した仮想空間の画像を表示させるとともに、画像上に他の無線端末の識別情報に基づく端末識別画像を表示させる第1表示制御手段と、表示手段に識別情報が表示された他の無線端末に対する指定と、メッセージの入力を受け付ける受付手段と、第2通信手段を制御して、受付手段で指定された無線端末の識別情報を宛先とし、自己の識別情報を送信元として受付手段が受け付けたメッセージを送信する第4制御手段と、第2通信手段が他の無線端末からメッセージを受信した場合に、表示手段を制御して、送信元の識別情報に対応する端末識別画像に対応づけて、メッセージを表示させる第2表示制御手段とを具備して構成するようにした。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ユーザが他のユーザの実在感を認識しやすく、ユーザ間の直接的なコミュニケーションの発展にも寄与することが可能な無線通信システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる無線通信システムの構成を示すものである。この無線通信システムは、無線端末100、無線端末200、無線LANアクセスポイント300、管理サーバ400およびサービス提供サーバ500とを備えている。なお、図1では、無線LANアクセスポイント300を1つだけ例示するが、多数の無線LANアクセスポイント300が分散して配置される。
【0015】
無線端末100は、当該システムによってサービスの提供を受けるユーザが使用するものであって、後述する無線LANアクセスポイント300と無線LAN通信を行うものであり、無線LAN通信機能を備えた携帯電話機やパーソナルコンピュータを想定したものであって、制御部101と、記憶部102と、無線通信部103と、入力部104と、表示部105とを備える。
【0016】
制御部101は、記憶部102に記憶される制御プログラムや制御データにしたがって、当該無線端末100の各部を統括して制御するものである。無線通信部103は、無線LANアクセスポイント300と無線LAN通信を行うものである。入力部104は、複数のキースイッチなどからなり、ユーザの要求を受け付ける入力インターフェースである。表示部105は、LCD(Liquid Crystal Display)などを用いて、情報を視覚的に表示するものである。
【0017】
無線端末200は、無線端末100と同様に、当該システムによってサービスの提供を受けるユーザが使用するものであって、後述する無線LANアクセスポイント300と無線LAN通信を行うものであり、無線LAN通信機能を備えた携帯電話機やパーソナルコンピュータを想定したものであって、制御部201と、記憶部202と、無線通信部203と、入力部204と、表示部205とを備える。
【0018】
制御部201は、記憶部202に記憶される制御プログラムや制御データにしたがって、当該無線端末200の各部を統括して制御するものである。無線通信部203は、無線LANアクセスポイント300と無線LAN通信を行うものである。入力部204は、複数のキースイッチなどからなり、ユーザの要求を受け付ける入力インターフェースである。表示部205は、LCDなどを用いて、情報を視覚的に表示するものである。
【0019】
無線LANアクセスポイント300は、上記無線端末100や無線端末200と無線LAN通信し、これらの端末をネットワークNWに接続するもので、制御部301と、記憶部302と、無線通信部303と、通信部304とを備える。
【0020】
制御部301は、記憶部302に記憶される制御プログラムや制御データにしたがって、当該無線LANアクセスポイント300の各部を統括して制御するものである。無線通信部303は、無線端末100や無線端末200と無線LAN通信を行うものである。通信部304は、ネットワークNWを介して通信機器と通信するものである。
【0021】
管理サーバ400は、後述するサービス提供サーバ500が提供するサービスを利用しようとするユーザの認証を行うもので、制御部401と、記憶部402と、通信部403とを備える。
【0022】
制御部401は、記憶部402に記憶される制御プログラムや制御データにしたがって、当該管理サーバ400の各部を統括して制御するものである。記憶部402は、上記制御プログラムや制御データの他に、ユーザIDとパスワードを対応づけた認証データリストなどを記憶する。通信部403は、ネットワークNWを介して通信機器と通信するものである。
【0023】
サービス提供サーバ500は、上述した管理サーバ400にて認証された通信機器に対してサービスを提供するもので、制御部501と、記憶部502と、通信部503とを備える。
【0024】
制御部501は、記憶部502に記憶される制御プログラムや制御データにしたがって、当該サービス提供サーバ500の各部を統括して制御するものである。上記通信部503は、ネットワークNWを介して通信機器と通信するものである。
【0025】
記憶部502は、上記制御プログラムや制御データの他に、コンテンツデータやパーソナルデータなどを記憶する。コンテンツデータとしては、複数の無線LANアクセスポイント300にそれぞれ対応するマップデータや掲示板データ、キャラクタデータを記憶する。図2にマップデータに基づくマップの一例を示し、図3にキャラクタデータに基づくキャラクタの一覧の例を示す。
【0026】
また上記パーソナルデータとしては、ユーザIDにそれぞれ対応づけて、ユーザが使用するキャラクタデータの識別情報や、個人情報を含む属性情報をtag形式で記憶する。図4に属性情報の一例(XML(eXtensible Markup Language)形式)を示す。この属性情報は、アクセスされる無線端末100や無線端末200を通じてユーザが自由に編集、拡張などの設定可能な情報である。テキストベースとすることで、カスタマイズの柔軟性を高めることができる。また記憶部502は、ユーザIDに対応づけて、代替メッセージデータを記憶する。
【0027】
次に、上記構成の無線通信システムの動作について説明する。
まず、サービス利用に先立って行われる認証処理について説明する。図5にそのシーケンスを示す。なお、以下の説明では、無線端末100が認証を受ける場合の動作について説明するが、無線端末200も同様であることより、無線端末200については説明を省略する。
【0028】
無線端末100では、制御部101が入力部104を通じてユーザから要求を受け付けると、無線通信部103を制御し、所定の手順に従って、無線LANアクセスポイント300と無線接続し、ネットワークNWと通信可能な状態となる。
【0029】
これにより、無線LANアクセスポイント300では、制御部301が無線通信部303および通信部304を制御して、無線端末100とネットワークNWとの間で通信の中継を開始する。
【0030】
このようにして、無線端末100とネットワークNWとの間に通信リンクが確立されると、無線端末100では、制御部101が無線通信部103を制御して、上記通信リンクを通じて、接続許可を要求する情報を管理サーバ400に対して送信する(S1)。
【0031】
これに対して管理サーバ400は、上記接続許可を要求する情報を通信部403が受信し、この受信した情報から送信元である無線端末100のIPアドレスを制御部401が検出する。そして制御部401は、通信部403を制御して、上記IPアドレス(無線端末100)に宛てて、認証データの送信を要求する情報を送信する(S2)。
【0032】
これに対して無線端末100では、上記情報を無線通信部103が受信すると、制御部101は、表示部105を制御して、ユーザIDとパスワードの入力をユーザに求める表示を行わせる(S3)。そして、入力部104を通じてユーザIDとパスワードが入力されると、制御部101は、無線通信部103を制御して、上記ユーザIDとパスワードを認証データとして管理サーバ400に宛てて送信する(S4)。
【0033】
これに対して管理サーバ400では、通信部403が上記認証データを受信すると、制御部401が記憶部402に予め記憶される認証データリストを参照する。この認証データリストは、サービス利用者のユーザIDとパスワードが対応づけられたものである。そして制御部401は、通信部403が受信した認証データのユーザIDとパスワードの組み合わせが、上記認証データリストで示されたユーザIDとパスワードの組み合わせに一致するか否かを判定する認証処理を実施する(S5)。
【0034】
ここで、上記組み合わせが一致する場合には、制御部401は通信部403を制御して、接続を許可する情報を上記IPアドレス(無線端末100)に宛てて送信する(S6)とともに、上記IPアドレスの通信機器が正当なユーザであるものとして、上記IPアドレスを識別データとしてサービス提供サーバ500に通知する(S7)。一方、上記組み合わせが一致しない場合には、制御部401は、S6およびS7を行わない。
【0035】
以上のようにして管理サーバ400によって、無線端末100が正当なユーザであることが認証されると、無線端末100は、サービス提供サーバ500と通信し、サービス提供サーバ500は、上記無線端末100のIPアドレスから認証された端末であることを認識する。これにより、無線端末100は、サービス提供サーバ500との間にサービス提供リンクを確立し(S8)、サービスを受けることが可能となる。
【0036】
この際、サービス提供サーバ500では、制御部501が、無線端末100が経由する無線LANアクセスポイント300の識別情報と、上記無線端末100のIPアドレスとを対応づけて、記憶部502に記録している。これにより、サービス提供サーバ500では、サービスを提供する無線端末がどの無線LANアクセスポイントを経由して接続されているかを集計管理し、この集計した情報に基づいて以下の処理を実行する。
【0037】
次に、無線端末100が、サービス提供サーバ500よりサービスの提供を受ける場合の動作について説明する。無線端末200についても同様であることより、その説明を省略する。なお、図5に示したサービス提供リンク(S8)は、その開設時に、ユーザIDが無線端末100からサービス提供サーバ500に通知されており、図6に示すようなTCP/IPプロトコルスタックに基づいて開設されるものである。そのうち、サービス提供サーバ500より提供されるサービスは、アプリケーションレイヤに属するものである。そしてこのアプリケーションレイヤは、マップフィールドレイヤL1、フィルタリングレイヤL2、パーソナルレイヤL3およびメッセージレイヤL4のレイヤを備える。
【0038】
サービス提供サーバ500では、制御部501が、無線LANアクセスポイント300を通じて接続される無線端末100に対して、マップフィールドレイヤL1において、上記無線LANアクセスポイント300に対応するマップデータを記憶部502から読み出して、このマップデータを通信部503を通じて無線端末100に送信する。これに対して、無線端末100は、無線通信部103を通じて上記マップデータを受信すると、制御部101が上記マップデータに基づいて表示部105にマップを表示する。
【0039】
またマップデータが、無線LANアクセスポイント300が実際に敷設される空間のエリアに対応させたものである場合には、提示版データも記憶部502から読み出して上記マップデータに併せて無線端末100に送信する。掲示板データには、掲示内容(例えば「新春特売バーゲンを開始します。」や「1月2日からアルバイトできる人を募集中!詳細は…」)の他に、マップ上の位置を示す位置データが含まれており、制御部101は、この位置データに基づいて、マップ上の店舗の位置に対応づけるなどして上記掲示内容を表示する。その一例を図7に示す。
【0040】
なお、掲示板データとしては、「フットサルの対戦チーム募集中!!」というように、アクセスしている他の無線端末のユーザの属性情報内に記録される特定の情報を掲示するようにしてもよい。
【0041】
そして、サービス提供サーバ500では、上述したようにマップデータを送信した後、パーソナルレイヤL3において、制御部501がユーザIDに対応するパーソナルデータに基づいて、ユーザIDに対応するキャラクタデータを記憶部502から読み出し、通信部503を制御して、無線LANアクセスポイント300に接続されるすべての端末装置に対して、無線端末100のIPアドレスとともに送信する。すなわち、無線端末100以外に、無線端末200が無線LANアクセスポイント300に接続している場合には、無線端末200に対しても、無線端末100のユーザのキャラクタデータと無線端末100のIPアドレスが送信される。
【0042】
これに対して無線端末100は、サービス提供サーバ500から自己のIPアドレスが対応づけられたキャラクタデータを無線通信部103が受信すると、制御部101が受信したキャラクタデータに基づいて、表示部105に表示しているマップ上に、自己のキャラクタとして表示する。このように自己のキャラクタを表示する処理は、無線端末200においても同様にしてなされる。また同様にして、無線端末100には、無線端末200のユーザが使用するキャラクタデータも送信され、無線端末100に表示される。
【0043】
このため、無線LANアクセスポイント300に接続される無線端末100および無線端末200の両表示部105,205には、例えば図7に示すように、互いのキャラクタが表示されるので、無線LANアクセスポイント300を利用するユーザが自分以外にも存在することが認識できる。すなわち、同じ無線LANアクセスポイント300を利用可能な実際のエリア内に、他のユーザが存在することが認識でき、通信機器を使用する人の存在を目視して確認することで、ユーザはおおよそ誰が当該サービスを利用しているか見当をつけることができる。
【0044】
なお、ユーザは、無線端末100を通じてサービス提供サーバ500に対し、使用したいキャラクタを予め指定しておく。具体的には、入力部104を操作して選択情報を入力すると、制御部101が無線通信部103を制御して、上記選択情報をサービス提供サーバ500に送信する。これを通信部503で受信したサービス提供サーバ500は、制御部501がユーザIDに、上記選択情報で示されるキャラクタの識別情報を対応づけて、記憶部502にパーソナルデータとして記録する。
【0045】
以上のようにして、表示部105にマップとキャラクタが表示された後、ユーザが入力部104に所定の操作を加えると、これに応動して制御部101は、ユーザのキャラクタをマップ上で移動させる画像処理を実行する。そして、上記操作に応じたキャラクタ座標情報が制御部101によって生成され、制御部101によって上記キャラクタ座標情報は、無線端末100のIPアドレスとともに、移動情報として無線通信部103を通じて無線LANアクセスポイント300に送信される。
【0046】
上記キャラクタ座標情報を受信した無線LANアクセスポイント300は、制御部301が無線通信部303を制御して、当該無線LANアクセスポイント300に接続される他の無線端末、例えば無線端末200に対し、無線端末100のIPアドレスと上記受信したキャラクタ座標情報を送信する。
【0047】
無線端末200では、無線通信部203が無線端末100のIPアドレスとキャラクタ座標情報を受信すると、制御部201は、上記IPアドレスに基づいて無線端末100のキャラクタを検出し、このキャラクタを上記キャラクタ座標情報に応じた座標に移動する表示を行う画像処理を実施する。これにより、表示部205における無線端末100のキャラクタは、無線端末100のユーザによる入力部104の操作に応動して、移動した位置に表示されることになる。
【0048】
次に、他のユーザの属性情報する動作について説明する。
ユーザが入力部104を操作して他のユーザのキャラクタを指定と、属性情報の要求を行うと、制御部101は、これらの操作を検出し、表示部105を制御して指定されたキャラクタのIPアドレスを検出し、無線通信部103を制御して、上記IPアドレスと属性情報を求める要求に、自己のIPアドレスを付加してサービス提供サーバ500に送信する。
【0049】
この要求を受信したサービス提供サーバ500では、制御部501が、通知されたIPアドレスに対応するユーザIDを検出し、このユーザIDに対応する属性情報を記憶部502から検出する。そして制御部501は、通信部503を制御して、上記検出した属性情報を、通知されたIPアドレスに基づいて、上記要求を行った無線端末100に対して送信する。
【0050】
これに対して無線端末100では、上記属性情報を無線通信部103が受信すると、制御部101が表示部105を制御して上記属性情報を表示する。これにより、ユーザは指定したキャラクタのユーザの属性情報を取得することができ、コミュニケーションを図りたい人物か否かを判断できる。
【0051】
次に、メッセージの送受信について説明する。図8にそのシーケンスを示す。
上述したような操作によりキャラクタをマップ上で移動させて他のキャラクタに近づけた後、ユーザが入力部104を操作してメッセージ入力とメッセージの送信対象となるキャラクタを指定し、送信要求を行うと、制御部101は、これらの操作を検出し、表示部105を制御して入力されたメッセージを自己のキャラクタに対応づけて表示する。また制御部101は、無線通信部103を制御して、入力されたメッセージのデータ(以下、メッセージデータと称する)を、上記送信対象となるキャラクタに対応づけられたIPアドレスを宛先として送信する(S11)。
【0052】
これを受信した無線LANアクセスポイント300では、制御部301が、送信元の無線端末100のIPアドレスを検出し、このIPアドレスを、受信したメッセージデータに対応づける。そして、制御部301は、通信部503を制御して、宛先のIPアドレスの無線端末に対して、上記メッセージデータと送信元である無線端末100のIPアドレスを送信する(S12)。ここで、送信対象となる無線端末が無線端末200であったものとする。
【0053】
これに対し、送信対象である無線端末200は、無線通信部203が上記メッセージデータと送信元のIPアドレスを受信すると、制御部201は、表示部205に表示しているキャラクタのうち、上記IPアドレスに対応する無線端末100のキャラクタに対応づけて上記メッセージデータに基づくメッセージを表示する。
【0054】
また制御部201は、無線LANアクセスポイント300からメッセージデータを受信すると、応答信号を無線LANアクセスポイント300に送信し(S13)、これを受信した無線LANアクセスポイント300は、送信元である無線端末100に応答信号を送信する(S14)。また無線LANアクセスポイント300では、応答信号を送信すると、制御部301は、この送信からの経過時間を計時する。
【0055】
やがて、無線端末200から無線端末100に宛てたメッセージ送信を受信すると、制御部301は、上記計時を終了し、受信したメッセージを無線端末100に送信する。これに対して無線端末100では、無線通信部103がメッセージデータと無線端末200のIPアドレスを受信すると、制御部101は、表示部105に表示しているキャラクタのうち、上記IPアドレスに対応するキャラクタに対応づけて上記メッセージデータに基づくメッセージを表示する。
【0056】
しかしここで、上記経過時間が予め設定した時間を経過しても、無線端末200から無線端末100に宛てたメッセージ送信を受信しない場合には、制御部301は、上記計時を終了し、通信部304を制御して、送信元となる無線端末200のIPアドレスと宛先となる無線端末100のIPアドレスとともに代替メッセージを求める要求をサービス提供サーバ500に対して行う(S15)。
【0057】
これに対してサービス提供サーバ500では、制御部501が上記要求を受信したことを検出すると、記憶部502に記憶されるパーソナルデータを参照し、送信元となる無線端末200のIPアドレスに対応づけられた代替メッセージデータを検出する。この代替メッセージデータとしては、例えば「ちょっとお待ちください」といった返事を入力中である旨を示すデータが設定される。そして、制御部501は、通信部503を制御して、上記検出した代替メッセージを、無線端末100のIPアドレスを宛先として送信する(S16)。
【0058】
これを通信部304を通じて受信した無線LANアクセスポイント300は、制御部301が無線通信部303を制御して、上記代替メッセージを無線端末100に送信する(S17)。これを受信した無線端末100では、制御部101が無線通信部103を制御して応答信号を送信するとともに、上記受信した代替メッセージに基づき、表示部105において、送信元として設定される無線端末200のキャラクタに対応づけて、上記「ちょっとお待ちください」といった表示を行う(S18)。
【0059】
やがて、無線端末200において、入力部204より無線端末100に対する返事の入力がなされると、これを検出した制御部201は、入力されたメッセージに基づいて、宛先を無線端末100のIPアドレスとするメッセージデータを生成し、無線通信部203を制御して送信する(S19)。
【0060】
これに対して無線LANアクセスポイント300は、無線端末200から無線端末100に宛てたメッセージ送信を受信すると、制御部301は、受信したメッセージを無線端末100に送信する。これに対して無線端末100では、無線通信部103がメッセージデータと無線端末200のIPアドレスを受信すると、制御部101は、表示部105に表示しているキャラクタのうち、上記IPアドレスに対応する無線端末200のキャラクタに対応づけて上記メッセージデータに基づくメッセージを表示する。
【0061】
以上のような無線端末100、サービス提供サーバ500および無線端末200を通じた通信は、メッセージレイヤL4においてなされ、例えば図9に示すような表示が、無線端末100の表示部105と、無線端末200の表示部205の双方でなされ、メッセージによる会話が可能となる。
【0062】
以上のように、上記構成の無線通信システムでは、無線LANアクセスポイント300に予め対応づけられたバーチャルな空間のマップデータを、上記無線LANアクセスポイント300に接続する無線端末100や無線端末200に提供し、そのマップ上に無線端末100や無線端末200のユーザのキャラクタを登場させ、キャラクタを通じて無線端末100−無線端末200間でメッセージの交換や、他のユーザの属性情報を取得するようにしている。
【0063】
したがって、上記構成の無線通信システムによれば、同じ無線LANアクセスポイント300を利用可能な現実空間に位置する無線端末100のユーザと無線端末200のユーザとが、同じ仮想空間にキャラクタを登場させてコミュニケーションを図れるので、互いの存在を認識しやすい現実空間でバーチャルな空間を通じたコミュニケーションを図ることができる。このため、直接現実空間で会話する前に、バーチャルな空間を通じて相手の情報の入手やコミュニケーションを図ることができるとともに、ユーザ間の直接的なコミュニケーションの発展にも寄与することができる。
【0064】
また、同じ空間に存在しながらも、同じ空間にいる他の人たちに認識されることなくコミュニケーションを図ることができ、さらにはすべての人に実際の区間で各々話しかけなくても、無線端末を通じて他のユーザの属性情報を参照することで、自分の必要とする人物を探索することができる。
【0065】
このため、企業やその関係者が多く参加する展示会などにおいて、効率的な情報交換が可能となる。例えば、ユーザがライバル関係にあるなど、立場上、コミュニケーションを取るのに制約がある場合などに、バーチャルなコミュニケーションフィールドを介することで、忌憚のない技術交流やアドバイスなどを交わすことができ、またビジネスチャンスの場を有効活用することも可能である。
【0066】
また、ユーザが認識可能な実空間の範囲(無線LANアクセスポイント300の通信可能エリア)内で個人情報を公開でき、それを上記範囲内の不特定多数のユーザが閲覧可能であるので、現実世界とインターネット(仮想)世界との距離を一歩近づけ、人と人とを心理的に結びつける一つのユーザインタフェースとして機能する。
【0067】
これにより「移動することができるからこそ行える新たなコミュニケーション・サービス」を提供でき、所謂「オンラインゲーム(コミュニケーション)」を現実世界へ展開するが可能で、不特定多数の人間との関わりや偶然の出会いを娯楽として捉えたサービスを提供できる。
【0068】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0069】
その一例として例えば、上記実施の形態では、同じ無線LANアクセスポイント300を利用する無線端末に対してはマルチ(ブロード)キャストで情報を制約無く提供するようにしたが、フィルタリングルールを設けて、特定のユーザに対してだけ属性情報を提供するようにすることも可能である。
【0070】
具体的には、各ユーザの属性情報内にそれぞれフィルタリングルールを記述しておき、制御部501が、ある条件に一致するユーザに対してだけ予め定めた情報を提供するようにしたり、あるいはある条件に一致しないユーザに対してだけ予め定めた情報を提供するように、ユニキャスト送信を行うように通信部503を制御する。
【0071】
また情報の提供に限らず、キャラクタの表示、すなわち利用するユーザの存在自体を、ある条件に一致するユーザに対してだけ行ったり、あるいはある条件に一致するユーザに対してだけ行わないように制御部501が通信部503を制御してもよい。
【0072】
また、上述では、情報を提供する側が、提供する情報に制限を設けるものとして説明したが、情報を享受する側で受信した情報の表示に制限を設けることで、限定された情報を公開するようにしてもよい。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明に係わる無線通信システムの一実施形態の構成を示す回路ブロック図。
【図2】図1に示した無線通信システムのサービス提供サーバから無線端末に提供されるマップの一例を示す図。
【図3】図1に示した無線通信システムのサービス提供サーバから無線端末に提供されるキャラクタの一欄の例を示す図。
【図4】図1に示した無線通信システムのサービス提供サーバに、無線端末に対応づけて登録される属性データの一例を示す図。
【図5】図1に示した無線通信システムの管理サーバと無線端末との間の認証シーケンスを示す図。
【図6】図1に示した無線通信システムのサービス提供サーバと無線端末との間に確立される通信リンクのレイヤ構成を示す図。
【図7】図1に示した無線通信システムの無線端末の表示部に表示される画像の一例を示す図。
【図8】図1に示した無線通信システムの無線端末間でメッセージをやり取りする際のシーケンスを示す図。
【図9】図1に示した無線通信システムの無線端末の表示部に表示される画像の一例を示す図。
【符号の説明】
【0074】
100…無線端末、101…制御部、102…記憶部、103…無線通信部、104…入力部、105…表示部、200…無線端末、201…制御部、202…記憶部、203…無線通信部、204…入力部、205…表示部、300…無線LANアクセスポイント、301…制御部、302…記憶部、303…無線通信部、304…通信部、400…管理サーバ、401…制御部、402…記憶部、403…通信部、500…サービス提供サーバ、501…制御部、502…記憶部、503…通信部、NW…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散配置された複数のアクセスポイントがネットワークを通じてサーバに接続され、このサーバが、前記アクセスポイントと無線通信する無線端末にサービスを提供する無線通信システムであって、
前記サーバは、
アクセスポイントに無線接続される無線端末とアクセスポイントを通じて通信する第1通信手段と、
前記複数のアクセスポイントにそれぞれ対応づけた仮想空間の画像を記憶する空間画像記憶手段と、
前記第1通信手段を制御してアクセスポイントに無線接続される無線端末と通信し、アクセスポイント毎に、接続している無線端末の識別情報を集計する第1制御手段と、
この第1制御手段が集計した情報に基づいて前記第1通信手段を制御し、無線端末が接続しているアクセスポイントに対応した仮想空間の画像を前記空間画像記憶手段から読み出して、前記無線端末に送信する第2制御手段と、
前記第1制御手段が集計した情報に基づいて前記第1通信手段を制御し、無線端末に対して、この無線端末が接続しているアクセスポイントに接続される他の無線端末の識別情報を送信する第3制御手段とを備え、
前記無線端末は、
前記アクセスポイントと無線通信して、前記アクセスポイントを通じて前記サーバと通信する第2通信手段と、
画像を表示する表示手段と、
この表示手段を制御して、前記サーバから受信した仮想空間の画像を表示させるとともに、前記画像上に他の無線端末の識別情報に基づく端末識別画像を表示させる第1表示制御手段と、
前記表示手段に識別情報が表示された他の無線端末に対する指定と、メッセージの入力を受け付ける受付手段と、
前記第2通信手段を制御して、前記受付手段で指定された無線端末の識別情報を宛先とし、自己の識別情報を送信元として前記受付手段が受け付けたメッセージを送信する第4制御手段と、
前記第2通信手段が他の無線端末からメッセージを受信した場合に、前記表示手段を制御して、送信元の識別情報に対応する端末識別画像に対応づけて、前記メッセージを表示させる第2表示制御手段とを具備したことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記サーバは、さらに
ユーザに関するユーザ情報を記憶するユーザ情報記憶手段と、
前記第1制御手段が集計した情報に基づいて、無線端末に対して、この無線端末が接続しているアクセスポイントに接続される他の無線端末を利用するユーザのユーザ情報を前記ユーザ情報記憶手段から読み出し、前記他の無線端末の識別情報を付加して前記第1通信手段を制御して送信する第5制御手段とを備え、
前記無線端末は、さらに
前記第2通信手段がサーバからユーザ情報を受信した場合に、前記表示手段を制御して、前記ユーザ情報に付加された識別情報に対応する端末識別画像に対応づけて、前記ユーザ情報を表示させる第3表示制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第5制御手段は、送信対象となる無線端末に応じて、提供するユーザ情報の内容を制限して前記無線端末に送信することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第3表示制御手段は、前記第2通信手段がサーバから受信したユーザ情報のうち、所定の情報についてのみ前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記ユーザ情報記憶手段は、前記ユーザ情報をtag形式で記述された情報で記憶することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1表示制御手段は、前記端末識別情報として予め設定されたキャラクタを表示させることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線端末は、さらに
前記表示手段に表示しているキャラクタを移動させる要求を受け付ける移動要求受付手段と、
この移動要求受付手段が受け付けた移動要求に基づいて移動情報を生成し、前記第2通信手段を制御して、前記移動情報に自己の識別情報を付加して他の無線端末に送信する第6制御手段と、
前記第2通信手段が他の無線端末から前記移動情報を受信した場合に、前記表示手段を制御して、前記移動情報に付加された識別情報に対応するキャラクタを、前記移動情報に基づいて移動させて表示させる第4表示制御手段とを備えることを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記サーバは、さらに
アクセスポイントに対応づけた掲示板情報を記憶する掲示板情報記憶手段と、
前記第1制御手段が集計した情報に基づいて、無線端末に対して、この無線端末が接続しているアクセスポイントに対応する掲示板情報を前記掲示板情報記憶手段から読み出して前記第1通信手段を制御して送信する第7制御手段とを備え、
前記無線端末は、さらに
前記第2通信手段がサーバから掲示板情報を受信した場合に、前記表示手段を制御して、前記仮想空間の画像上に、前記掲示板情報を表示させる第5表示制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−260064(P2006−260064A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75633(P2005−75633)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】