説明

無線通信システム

【課題】利用者分布の偏りによる無線サービスの品質低下を防止することが可能な無線通信システムを提供する。
【解決手段】この無線通信システムでは、セル1.1〜1.Mよりも少ない数の通信装置6.1〜6.Nを基地局5に設け、通信装置6.1〜6.Nが通信している端末の数が等しくなるように、通信装置6.1〜6.Nと光ファイバ4.1〜4.Mを結合する。したがって、利用者分布が偏った場合でも、一部の通信装置の負荷が過大になることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無線通信システムに関し、特に、サービス提供エリアを複数のセルに分割し、基地局と、各セルに設けられた子局と、各子局と基地局の間に接続された光伝送路とを備えた無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の利用者を対象にして、広範囲なエリアに無線サービスを提供する場合、サービス提供エリアは多数のセル(小面積地域)に分割され、各セルに子局が設けられる。これは、端末などから出射される電波の強度が法令で制限されており、電波には物理的減衰による到達限界があるからである。従来は、各子局に無線機を設け、各無線機と基地局を光ファイバで接続し、各無線機がセル内の端末と無線通信していた。
【0003】
しかし、この方法では、各子局毎に無線機を設けていたので、多数の無線機が必要となり、コスト高になるという問題があった。また、多数の無線機を広いエリアに分散配置していたので、無線機の設置、保守に手間が掛かるという問題があった。
【0004】
また、端末の利用者は一般にサービス提供エリア内に偏って分布し、しかもその分布は時間的に変動する。このため、あるセルに多数の利用者が集中して、そのセルに対応する無線機の負荷が過大になり、無線サービスの品質(データ伝送速度など)が低下するという問題があった。その一方、他のセルでは利用者がほとんど存在せず、そのセルに対応する無線機はほとんど使用されていなかった。
【0005】
また、光電波融合技術を採用し、複数の無線機を基地局に集中配置し、各無線機の出力信号を光信号に変換し、その光信号を光ファイバを介して子局に伝送し、子局で光信号を無線信号に変換してセル内の各端末に送信する方法がある(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
この方法によれば、複数の無線機を基地局に集中配置するので、無線機の設置、保守の手間を大幅に低減することができる。また、光信号の分岐合成を行なって1台の無線機を複数の子局で共用することにより、無線機の台数を低減化し、コストの低減化を図ることができる。
【特許文献1】特開2005−348354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この方法でも、利用者分布が偏った場合には、一部の無線機の負荷が過大になり、無線サービスの品質が低下していた。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、利用者分布の偏りによる無線サービスの品質低下を防止することが可能な無線通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る無線通信システムは、サービス提供エリアを複数のセルに分割し、基地局と、各セルに設けられた子局と、各子局と基地局の間に接続された光伝送路とを備えた無線通信システムにおいて、各子局は、対応のセル内の各端末と無線通信を行なうとともに、対応の光伝送路を介して基地局と光通信を行ない、基地局は、セルの数よりも少ない複数の通信装置を含み、各通信装置は各光伝送路を介して各子局と光通信を行ない、基地局は、さらに、各通信装置の負荷と他の通信装置の負荷との差が小さくなるように、各光伝送路と複数の通信装置のうちのいずれかの通信装置とを結合する結合手段を含むことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、結合手段は、各通信装置が通信している端末の数が他の通信装置が通信している端末の数との差が小さくなるように、各光伝送路と複数の通信装置のうちのいずれかの通信装置とを結合する。
【0011】
また好ましくは、結合手段は、各通信装置の稼働率と他の通信装置の稼働率との差が小さくなるように、各光伝送路と複数の通信装置のうちのいずれかの通信装置とを結合する。
【0012】
また好ましくは、子局は、アンテナと、アンテナを介して各端末から受信した無線信号を、対応の光伝送路に与えるための光信号に変換する第1の電気−光変換器と、対応の光伝送路を介して与えられた光信号を、アンテナを介して各端末に送信するための無線信号に変換する第1の光−電気変換器とを含む。各通信装置は、無線周波数の搬送波信号を情報信号で変調する変調器と、変調器で生成された変調信号を、結合手段によって結合された光伝送路に与えるための光信号に変換する第2の電気−光変換器と、結合手段によって結合された光伝送路から与えられた光信号を電気信号に変換する第2の光−電気変換器と、第2の光−電気変換器で生成された電気信号を復調する復調器とを含む。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る無線通信システムでは、各子局は、対応のセル内の各端末と無線通信を行なうとともに、対応の光伝送路を介して基地局と光通信を行ない、基地局は、セルの数よりも少ない複数の通信装置を含み、各通信装置は各光伝送路を介して各子局と光通信を行ない、各端末は、対応の子局、対応の光伝送路および各通信装置を介してサービス提供エリア内の他の端末と無線通信を行ない、基地局は、さらに、各通信装置の負荷と他の通信装置の負荷との差が小さくなるように、各光伝送路と複数の通信装置のうちのいずれかの通信装置とを結合する結合手段を含む。したがって、複数の通信装置の負荷を平均化するので、利用者分布が偏った場合でも、一部の通信装置の負荷が過大になることを防止することができ、無線サービスの品質低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、この発明の一実施の形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1において、この無線通信システムでは、サービス提供エリアはM個(ただし、Mは2以上の整数である)のセル1.1〜1.Mに分割される。セル1.1〜1.Mの各々には、子局2が配置される。サービス提供エリア内には、多数の端末3が偏って分布しており、しかもその分布は時間的に変動する。端末3は、たとえば、携帯電話機、PHS(personal Handyphone System)、PDA(Personal Digital Assistance;個人用携帯情報端末)、パーソナルコンピュータである。セル1.1〜1.Mの子局2は、それぞれ光ファイバ4.1〜4.Mを介して基地局5に接続されている。
【0015】
子局2は、図2に示すように、アンテナ11、アンテナ共用器12、増幅器13,17、電気−光変換器(E/O)14、方向性結合器15、および光−電気変換器(O/E)16を含む。アンテナ共用器12は、対応のセル(たとえば1.1)内の端末3から送信された無線信号をアンテナ11を介して受信する。アンテナ共用器12で受信された無線信号は、増幅器13で増幅され、電気−光変換器14で光信号に変換され、その光信号は方向性結合器15および対応の光ファイバ(この場合は4.1)を介して基地局5に伝送される。
【0016】
基地局5から光ファイバ4.1を介して伝送された光信号は、方向性結合器15を介して光−電気変換器16に与えられる。この光信号は、光−電気変換器16で電気信号に変換され、増幅器17で増幅されてアンテナ共用器12に与えられる。アンテナ共用器12は、その電気信号をアンテナ11を介して対応のセル1.1内の各端末3に送信する。
【0017】
図1に戻って、基地局5は、N個(ただし、NはMよりも小さな自然数である)の通信装置6.1〜6.Nと、制御部7と、切換スイッチ8とを含む。通信装置6.1〜6.Nの各々は、時分割多重方式を採用している。したがって、複数の端末3はインターネット9などのネットワークと同時に通信することができる。また、通信装置6.1〜6.Nは互いに結合されており、各通信装置は他の通信装置と情報信号の授受を行なうことができる。また、通信装置6.1〜6.Nの各々は、同時に通信している端末3の数を把握しており、その数を示す信号を制御部7に与える。
【0018】
制御部7は、通信装置6.1〜6.Nからの信号に基づき、通信装置6.1〜6.Nが通信している端末3の数が互いに等しくなるように、切換スイッチ8を制御する。切換スイッチ8は、制御部7によって制御され、光ファイバ4.1〜4.Mの各々を通信装置6.1〜6.Nのうちのいずれか1つの通信装置に結合させる。M>Nであるので、各通信装置には、1本以上の光ファイバが接続される。したがって、切換スイッチ8は、光信号の分岐合成機能も有する。
【0019】
切換スイッチ8は、たとえば、それぞれ光ファイバ4.1〜4.Mに対応して設けられたM個の第1ミラーと、それぞれ通信装置6.1〜6.Nに対応して設けられたN個の第2ミラーと、制御部7によって制御され、各ミラーの角度を調整する駆動部とで構成される。たとえば、光ファイバ4.Mと通信装置6.1を結合した場合は、光ファイバ4.Mから出力された光信号は、対応の第1ミラーおよび第2ミラーで反射されて通信装置6.1に入力される。
【0020】
図3は、通信装置6.1の構成を示すブロック図である。図3において、通信装置6.1は、方向性結合器21、光−電気変換器22、増幅器23,27、復調器24、通信制御部25、変調器26、および光−電気変換器28を含む。増幅器23,27、復調器24、通信制御部25、および変調器26は、従来の無線機に相当する。
【0021】
切換スイッチ8を介して入力された光信号は、方向性結合器21を介して光−電気変換器22に与えられる。この光信号は、光−電気変換器22で電気信号に変換され、増幅器23で増幅され、復調器24で復調されてデジタル信号に変換される。通信制御部25は、そのデジタル信号を通信先のインターネット9、変調器26、または他の通信装置の通信制御部25に転送する。また、通信制御部25は、同時に通信している端末3の数を示す信号を制御部7に与える。
【0022】
変調器26は、無線周波数の搬送波信号をデジタル信号で変調して無線信号を生成する。この無線信号は、増幅器27で増幅され、電気−光変換器28で光信号に変換される。この光信号は、方向性結合器21を介して切換スイッチ8に与えられ、さらに光ファイバを介して子局2に与えられる。他の通信装置6.2〜6.Nも通信装置6.1と同じ構成である。
【0023】
この実施の形態では、セル1.1〜1.Mよりも少ない数の通信装置6.1〜6.Nを基地局5に設け、通信装置6.1〜6.Nが通信している端末の数が等しくなるように、通信装置6.1〜6.Nと光ファイバ4.1〜4.Mを結合する。したがって、通信装置6.1〜6.Nの負荷が平均化されるので、利用者がサービス提供エリア内に偏って分布した場合でも、一部の通信装置の負荷が過大になることを防止することができ、無線サービスの品質低下を防止することができる。また、一部の通信装置の稼働率が低くなることを防止することができる。
【0024】
なお、この実施の形態では、通信装置6.1〜6.Nが通信している端末の数が等しくなるように、通信装置6.1〜6.Nと光ファイバ4.1〜4.Mを結合したが、通信装置6.1〜6.Nの稼働率が等しくなるように、通信装置6.1〜6.Nと光ファイバ4.1〜4.Mを結合してもよい。
【0025】
また、基地局5と各子局2を1本の光ファイバで接続したが、上がり用と下り用の2本の光ファイバで接続してもよい。
【0026】
また、この発明は、セルの大きさが小さくなり、広範囲のサービスを提供するためには多数のセルが必要となるマイクロ波やミリ波を使用する無線通信サービスにおいて、特に効果が大きい。具体的には、2.4GHz帯で標準的に用いられているIEEE802.11b/gなどの無線LANを用いたサービスや、5GHz帯のIEEE802.11aなどを用いた無線通信サービスなどへの適用が考えられる。
【0027】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施の形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した子局の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した基地局の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1.1〜1.M セル、2 子局、3 端末、4.1〜4.M 光ファイバ、5 基地局、6.1〜6.N 通信装置、7 制御部、8 切換スイッチ、9 インターネット、11 アンテナ、12 アンテナ共用器、13,17,23,27 増幅器、14,28 電気−光変換器、15,21 方向性結合器、16,22 光−電気変換器、24 復調器、25 通信制御部、26 変調器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービス提供エリアを複数のセルに分割し、基地局と、各セルに設けられた子局と、各子局と前記基地局の間に接続された光伝送路とを備えた無線通信システムにおいて、
各子局は、対応のセル内の各端末と無線通信を行なうとともに、対応の光伝送路を介して前記基地局と光通信を行ない、
前記基地局は、前記セルの数よりも少ない複数の通信装置を含み、各通信装置は各光伝送路を介して各子局と光通信を行ない、
前記基地局は、さらに、各通信装置の負荷と他の通信装置の負荷との差が小さくなるように、各光伝送路と前記複数の通信装置のうちのいずれかの通信装置とを結合する結合手段を含むことを特徴とする、無線通信システム。
【請求項2】
前記結合手段は、各通信装置が通信している端末の数が他の通信装置が通信している端末の数との差が小さくなるように、各光伝送路と前記複数の通信装置のうちのいずれかの通信装置とを結合することを特徴とする、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記結合手段は、各通信装置の稼働率と他の通信装置の稼働率との差が小さくなるように、各光伝送路と前記複数の通信装置のうちのいずれかの通信装置とを結合することを特徴とする、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記子局は、
アンテナと、
前記アンテナを介して各端末から受信した無線信号を、対応の光伝送路に与えるための光信号に変換する第1の電気−光変換器と、
対応の光伝送路を介して与えられた光信号を、前記アンテナを介して各端末に送信するための無線信号に変換する第1の光−電気変換器とを含み、
各通信装置は、
無線周波数の搬送波信号を情報信号で変調する変調器と、
前記変調器で生成された変調信号を、前記結合手段によって結合された光伝送路に与えるための光信号に変換する第2の電気−光変換器と、
前記結合手段によって結合された光伝送路から与えられた光信号を電気信号に変換する第2の光−電気変換器と、
前記第2の光−電気変換器で生成された電気信号を復調する復調器とを含むことを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の無線通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−235647(P2007−235647A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55705(P2006−55705)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】