説明

無線通信システム

【課題】基地局装置と複数の端末局装置(例えば、移動局装置)とが無線通信する無線通信システムで、通常の通信と通信品質測定用の通信を効率的に行う。
【解決手段】基地局装置は、時分割で設けられた複数のチャネルCH1〜CH4のスロットを使用して端末局装置との間で無線通信し、1つ以上のチャネルのスロットをデータ通信に使用し且つ他の1つ以上のチャネルのスロットを通信品質測定用の通信に使用するように制御する。端末局装置は、割り当てられたチャネルのスロットを使用して基地局装置との間で無線通信し、データ通信を行い或いは通信品質の測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、通常の通信と通信品質測定のための通信を効率的に行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムなどの無線通信システムは、種々な用途に使用されており、例えば、会社内の構内無線や、消防庁の公共用システムや、空港における通信システムなどのように、自営系の通信ネットワークにも使用されている。
一例として、自営系通信ネットワークとして構築されるデジタル移動通信システムとして、電波産業会の規格であるARIB STD−T61(非特許文献1)で規定されている狭帯域デジタル通信方式を使用するシステムがあり、この規格では、周波数分割多元接続(FDMA:Frequency Division Multiple Access)方式により、基地局装置と移動局装置との間や、移動局装置と移動局装置との間で、無線通信が行われる。
【0003】
図1には、このような無線通信システムの概略的な構成例を示してある。なお、ここでは、説明の便宜上から、後述する実施例で参照される図1を用いて説明するが、本発明を限定する意図は無い。
図1に示されるように、基地局装置1と複数の移動局装置A1〜A3が無線により通信する。また、基地局装置1から移動局装置A1〜A3への下りの通信では下りの周波数F1が使用され、移動局装置A1〜A3から基地局装置1への上りの通信では上りの周波数f1(周波数F1とは異なる周波数)が使用される。
【0004】
図5(a)〜(c)には、通信のスロットタイミングの一例を示してある。なお、t0〜t6は時刻を表しており、tの後の数値が大きいほど時間的に遅い時刻を示す。
図5(a)には基地局装置1により行われる通信のスロットタイミングを示してあり、図5(b)には第1の移動局装置A1により行われる通信のスロットタイミングを示してあり、図5(c)には第2の移動局装置A2により行われる通信のスロットタイミングを示してある。
【0005】
本例では、時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)方式により、4個のチャネルCH1〜CH4を使用して、4チャネル多重の通信が行われる。具体的には、基地局装置1により行われる通信において、下り通信では同一の時間幅を有する第1のチャネルCH1のスロット、第2のチャネルCH2のスロット、第3のチャネルCH3のスロット、第4のチャネルCH4のスロットが順に並べられてそれが繰り返されており、この下り通信のタイミングより1個のスロット分だけずらされて上り通信では前記と同一の時間幅を有する第4のチャネルCH4のスロット、第1のチャネルCH1のスロット、第2のチャネルCH2のスロット、第3のチャネルCH3のスロットが順に並べられてそれが繰り返されている。
また、本例では、基地局装置1と移動局装置A1〜A2との間で、2波(周波数F1、f1)を使用する複信方式及び上りのプレストーク方式が使用されている。
【0006】
第1の移動局装置A1が通話を行う場合には、第1のチャネルCH1のスロットを使用して通話データを含む信号(電波)の送受信を行う。具体的には、下り通信では、基地局装置1から周波数F1で時刻t0のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t0のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で第1の移動局装置A1により受信される。また、上り通信では、第1の移動局装置A1から周波数f1で時刻t1のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t1のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で基地局装置1により受信される。また、以降においても同様に、第1の移動局装置A1は、第1のチャネルCH1のスロットを使用して送受信を行う。
【0007】
第2の移動局装置A2が通話を行う場合には、第2のチャネルCH2のスロットを使用して通話データを含む信号の送受信を行う。具体的には、下り通信では、基地局装置1から周波数F1で時刻t1のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t1のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で第2の移動局装置A2により受信される。また、上り通信では、第2の移動局装置A2から周波数f1で時刻t2のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t2のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で基地局装置1により受信される。また、以降においても同様に、第2の移動局装置A2は、第2のチャネルCH2のスロットを使用して送受信を行う。
【0008】
また、例えば、更に他の移動局装置が存在する場合には、第3のチャネルCH3のスロットを使用して通話データを含む信号の送受信を行うことや、第4のチャネルCH4のスロットを使用して通話データを含む信号の送受信を行うことが可能であり、総じて4つの移動局装置により通信することが可能である。
【0009】
次に、ビットエラーレート(ビット誤り率)を測定する場合について説明する。
図6(a)、(b)には、ビットエラーレートの測定を行う場合における通信のスロットタイミングの一例を示してある。なお、t0〜t6は時刻を表しており、tの後の数値が大きいほど時間的に遅い時刻を示す。
図6(a)には基地局装置1により行われる通信のスロットタイミングを示してあり、図6(b)には第1の移動局装置A1により行われる通信のスロットタイミングを示してある。
【0010】
基地局装置1では、下り通信において、4個のチャネルCH1〜CH4の全てのスロットに通常の送信データの代わりに擬似ランダム符号(例えば、PN符号)を挿入してそれを無線送信する。移動局装置A1では、基地局装置1から無線送信される擬似ランダム符号を任意のタイミングで受信して、当該受信信号に基づいてビットエラーレートを測定(計測)し、当該測定結果の情報(例えば、ビットエラーレートの値)を上り通信により基地局装置1へ無線送信する。
【0011】
図6(a)、(b)に示される例では、基地局装置1から周波数F1で時刻t0のタイミングで無線送信された擬似ランダム符号を含む信号が、その時刻t0のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で第1の移動局装置A1により受信され、第1の移動局装置A1から周波数f1で時刻t1のタイミングで無線送信されたビットエラーレートの測定結果を含む信号が、その時刻t1のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で基地局装置1により受信される。
【0012】
【非特許文献1】ARIB STD−T61、「狭帯域デジタル通信方式(SCPC/FDMA)」、社団法人 電波産業会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図6に示されるようなビットエラーレート測定の方式では、システムにおいてビットエラーレートを測定するための運用状態へ切り替える必要があり、つまり、通常の通信データを信号に載せて無線通信する通常の運用状態ではビットエラーレートの測定ができないため、通常の運用状態を停止させて、通信データの代わりに擬似ランダム符号を信号に載せて基地局装置1から無線送信する運用状態へ切り替える必要があり、このため、基地局装置1及び移動局装置A1〜A3では共に通常の通話ができなくなるといった問題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、通常の通信と通信品質測定のための通信を効率的に行うことができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る無線通信システムでは、次のような構成により、基地局装置と複数の端末局装置とが無線により通信する。
すなわち、前記基地局装置では、基地局通信手段が、時分割で設けられた複数のチャネルのスロットを使用して、前記端末局装置との間で無線により通信し、この場合に、基地局制御手段が、前記複数のチャネルのうちの1つ以上のチャネルのスロットをデータ通信(例えば、通常の運用状態で行われる通信用のデータの通信)に使用し、且つ、他の1つ以上のチャネルのスロットを通信品質測定用の通信に使用するように、前記基地局通信手段による通信を制御する。
前記端末局装置では、端末局通信手段が、自装置(当該端末局装置)に割り当てられたチャネルのスロットを使用して、前記基地局装置との間で無線により通信し、この場合に、端末局制御手段が、自装置(当該端末局装置)に割り当てられたチャネルのスロットが前記基地局装置によりデータ通信に使用されている場合には、前記端末局通信手段によりデータ通信を行い、また、自装置(当該端末局装置)に割り当てられたチャネルのスロットが前記基地局装置により通信品質測定用の通信に使用されている場合には、前記端末局通信手段による通信に基づいて通信品質の測定を行う。
【0016】
従って、複数のチャネルのうちの1つ以上のチャネルのスロットをデータ通信に使用するとともに、他の1つ以上のチャネルのスロットを通信品質測定用の通信に使用することにより、基地局装置と端末局装置との間で、通常の通信と通信品質測定のための通信を効率的に行うことができる。
【0017】
ここで、端末局装置としては、例えば、移動局装置が用いられ、或いは、固定的に設置された無線通信装置が用いられてもよい。
また、通信対象となるデータ(通信データ)としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、通話データなどの音声データや、画像データや、テキストデータなどを用いることができる。
また、通信に使用される複数のチャネルの数としては、種々な数が用いられてもよい。
また、スロットの構成としては、種々なものが用いられてもよい。
また、基地局装置は、例えば、通信相手となる各端末局装置に対して通信に使用するチャネルの割り当てを行う。
【0018】
また、複数のチャネルのうちで、通常のデータ通信に使用するチャネルやその数や、通信品質測定用の通信に使用するチャネルやその数としては、種々な態様が用いられてもよく、例えば、その態様を通信状況に応じて適応的に可変に制御する構成を用いることができる。
また、通信品質としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、通信品質の指標となるビットエラーレートなどを測定する態様を用いることができる。
【0019】
本発明に係る無線通信システムでは、一構成例として、次のような構成とした。
すなわち、前記基地局装置から前記端末局装置への下りの無線通信と前記端末局装置から前記基地局装置への上りの無線通信とで異なる周波数が使用される。
前記基地局装置の前記基地局制御手段は、通信品質測定用の通信として、通信品質測定用の信号を前記基地局通信手段により無線送信する。
前記端末局装置の前記端末局制御手段は、自装置(当該端末局装置)に割り当てられたチャネルのスロットが前記基地局装置により通信品質測定用の通信に使用されている場合には、前記端末局通信手段により受信された前記通信品質測定用の信号に基づいて通信品質の測定を行う。
【0020】
従って、通信品質測定用の通信では、基地局装置から端末局装置へ通信品質測定用の信号を送信し、端末局装置が当該通信品質測定用の信号の受信状況に基づいて通信品質を測定して当該測定結果の情報を利用することや基地局装置へ通知することにより、基地局装置と端末局装置との間の無線伝搬路(無線回線)の通信品質を把握することができる。
【0021】
ここで、下りの無線通信で使用される周波数や、上りの無線通信で使用される周波数としては、それぞれ、種々な周波数が用いられてもよい。
また、通信品質測定用の信号としては、種々な信号が用いられてもよく、例えば、PN(Pseudorandom Noise)符号からなる擬似ランダム符号などを用いることができる。
また、通信品質の測定結果の情報としては、例えば、ビットエラーレートの測定値のように、通信品質の測定結果そのものの情報が用いられてもよく、或いは、通信品質の測定結果を加工した情報が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る無線通信システムによると、基地局装置と複数の端末局装置との間で複数のチャネルのスロットを使用して無線通信するに際して、一部のチャネルのスロットを通常の通信に使用し且つ他の一部のチャネル(或いは、他の全てのチャネル)のスロットを通信品質測定用の通信に使用することを可能としたことにより、通信品質の測定が必要なときにおいても、通常の通信を継続することができ、これにより、通常の通信と通信品質測定のための通信を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る無線通信システムの概略的な構成例を示してある。
本例の無線通信システムは、自営系通信ネットワークとして構築されたデジタル移動通信システムであり、基地局装置1と、複数の移動局装置A1〜A3を備えている。
このように本例の無線通信システムは主に基地局設備及び移動局設備から構成されており、基地局装置1と移動局装置A1〜A3との間や、移動局装置A1〜A3と他の移動局装置A1〜A3との間で、無線により通信が行われる。なお、移動局装置A1〜A3同士の間での通信は、例えば、基地局装置1を経由して行われる場合や、或いは、直接的に行われる場合がある。
【0024】
また、本例では、周波数分割多元接続(FDMA)方式が使用されており、基地局装置1から移動局装置A1〜A3への下りの通信では下りの周波数F1が使用され、移動局装置A1〜A3から基地局装置1への上りの通信では上りの周波数f1(周波数F1とは異なる周波数)が使用される。
また、本例では、時分割多元接続(TDMA)方式により、4個のチャネルCH1〜CH4を使用して、4チャネル多重の通信が行われる。具体的には、基地局装置1は、通信相手となる各移動局装置A1〜A3に対して異なるチャネルを割り当てて、当該チャネル割当の内容を当該各移動局装置A1〜A3へ通知し、これにより、当該チャネル割当に従ったチャネルのスロットを使用して基地局装置1と当該各移動局装置A1〜A3との間で無線通信が行われる。
また、本例では、基地局装置1と移動局装置A1〜A2との間で、2波(周波数F1、f1)を使用する複信方式及び上りのプレストーク方式が使用されている。
【0025】
次に、ビットエラーレート(ビット誤り率)を測定する場合について説明する。
例えば、基地局装置1では、検出されたビットエラーレートに基づいて、当該基地局装置1のサービスエリアにおける電波通信状況を検出することや、移動局装置A1〜A3に対する送信レベルを調整することや、移動局装置A1〜A3に対するチャネルの割り当てを変更することなどが行われる場合があり、また、移動局装置A1〜A3では、検出されたビットエラーレートに基づいて、基地局装置1のサービスエリアにおける電波通信状況を検出して、無線接続する基地局装置1を変更するハンドオーバなどが行われる場合がある。
【0026】
図2(a)〜(d)には、通信のスロットタイミングの一例を示してある。なお、t0〜t6は時刻を表しており、tの後の数値が大きいほど時間的に遅い時刻を示す。
図2(a)には基地局装置1により行われる通信のスロットタイミングを示してあり、図2(b)には第1の移動局装置A1により行われる通信のスロットタイミングを示してあり、図2(c)には第2の移動局装置A2により行われる通信のスロットタイミングを示してあり、図2(d)には第3の移動局装置A3により行われる通信のスロットタイミングを示してある。
【0027】
本例では、基地局装置1により行われる通信において、下り通信では同一の時間幅を有する第1のチャネルCH1のスロット、第2のチャネルCH2のスロット、第3のチャネルCH3のスロット、第4のチャネルCH4のスロットが順に並べられてそれが繰り返されており、この下り通信のタイミングより1個のスロット分だけずらされて上り通信では前記と同一の時間幅を有する第4のチャネルCH4のスロット、第1のチャネルCH1のスロット、第2のチャネルCH2のスロット、第3のチャネルCH3のスロットが順に並べられてそれが繰り返されている。
【0028】
図2(a)〜(d)に示される例では、第1の移動局装置A1と第3の移動局装置A3との間で、上り周波数f1及び下り周波数F1を使用した複信方式により、基地局装置1を経由して、通話を行う。
第1の移動局装置A1が通話を行う場合には、第1のチャネルCH1のスロットを使用して通話データを含む信号の送受信を行う。具体的には、下り通信では、基地局装置1から周波数F1で時刻t0のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t0のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で第1の移動局装置A1により受信される。また、上り通信では、第1の移動局装置A1から周波数f1で時刻t1のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t1のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で基地局装置1により受信される。また、以降においても同様に、第1の移動局装置A1は、第1のチャネルCH1のスロットを使用して送受信を行う。
【0029】
第3の移動局装置A3が通話を行う場合には、第3のチャネルCH3のスロットを使用して通話データを含む信号(電波)の送受信を行う。具体的には、下り通信では、基地局装置1から周波数F1で時刻t2のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t2のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で第3の移動局装置A3により受信される。また、上り通信では、第3の移動局装置A3から周波数f1で時刻t3のタイミングで無線送信された信号が、その時刻t3のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で基地局装置1により受信される。また、以降においても同様に、第3の移動局装置A3は、第3のチャネルCH3のスロットを使用して送受信を行う。
【0030】
また、本例では、第1の移動局装置A1と第3の移動局装置A3との間で基地局装置1を経由して通話が行われている状態において、第2の移動局装置A2が基地局装置1からの擬似ランダム符号(例えば、PN符号)に基づいてビットエラーレートを測定することを可能とする。
具体的には、基地局装置1では、第2の移動局装置A2によりビットエラーレートを測定する場合には、第2の移動局装置A2により使用される第2のチャネルCH2のスロットを用いて当該スロットの位置に擬似ランダム符号を挿入してそれを下り通信で無線送信する。第2の移動局装置A2では、第2のチャネルCH2のスロットにより基地局装置1からの擬似ランダム符号を受信した場合には、それに応じて、受信した擬似ランダム符号に基づいてビットエラーレートを測定し、当該測定結果の情報(例えば、ビットエラーレートの値)を第2のチャネルCH2のスロットにより基地局装置1へ上り通信で無線送信する。
【0031】
なお、本例では、基地局装置1から移動局装置A1〜A3へ送信される擬似ランダム符号は、移動局装置A1〜A3に対してビットエラーレートの測定及びその測定結果の返信を指示する役割を有しているが、他の構成例として、基地局装置1から移動局装置A1〜A3へ、擬似ランダム符号以外に、移動局装置A1〜A3に対してビットエラーレートの測定及びその測定結果の返信を指示する情報が送信されてもよく、或いは、移動局装置A1〜A3が、例えば予め設定された条件に応じて、ビットエラーレートを測定してその測定結果を基地局装置1へ送信することを決定して、それを行ってもよい。
【0032】
図2(a)、(c)に示される例では、基地局装置1から周波数F1で時刻t1のタイミングで無線送信された擬似ランダム符号を含む信号が、その時刻t1のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で第2の移動局装置A2により受信され、第2の移動局装置A2から周波数f1で時刻t2のタイミングで無線送信されたビットエラーレートの測定結果を含む信号が、その時刻t2のタイミング(実際には、通信に要する時間だけ遅れたタイミング)で基地局装置1により受信される。
このように、第1の移動局装置A1と第3の移動局装置A3との間で基地局装置1を経由して通信が行われている状態において、第2の移動局装置A2は基地局装置1からの擬似ランダム符号を受信してビットエラーレートを測定することができる。
【0033】
以上のように、本例の無線通信システムでは、各チャネルCH1〜CH4毎に、通常の通信データを送受信するための信号をタイムスロットに載せて基地局装置1から無線送信する状態と、ビットエラーレート測定用のテスト信号(本例では、擬似ランダム符号を含む信号)をタイムスロットに載せて基地局装置1から無線送信する状態とを切り替えて、タイムスロット(本例では、4個のチャネルCH1〜CH4のスロット)の一部に当該テスト信号を挿入することにより、通常の通信をしながら、ビットエラーレートの測定を行うことができる。
【0034】
このように、本例の無線通信システムでは、複数のチャネルCH1〜CH4のうち、一部のチャネルのスロットを通常の通信データを信号に載せて無線通信する通常の運用状態における通信に使用し、他の一部のチャネル(或いは、他の全てのチャネル)のスロットをビットエラーレートを測定するための運用状態における通信に使用することにより、通常の運用状態に割り当てたチャネルに対応した移動局装置A1〜A3と基地局装置1との間では通常の運用状態の通信を継続することができ、このような通常の運用状態の通信を保ちながら、ビットエラーレート測定用に割り当てたチャネルに対応した移動局装置A1〜A3と基地局装置1との間ではビットエラーレート測定のための通信を行ってビットエラーレートを測定することが可能である。
【0035】
ここで、本例では、複数のチャネルCH1〜CH4のうち、一部のチャネルのスロットを通常のデータ通信に使用し且つ他の一部のチャネル(或いは、他の全てのチャネル)のスロットを通信品質測定用(本例では、ビットエラーレート測定用)の通信に使用する場合を説明したが、本例の無線通信システムでは、例えば、通信状況に応じて、複数のチャネルCH1〜CH4の全てのチャネルのスロットを通常のデータ通信に使用することもでき、また、複数のチャネルCH1〜CH4の全てのチャネルのスロットを通信品質測定用の通信に使用することもできる。すなわち、複数のチャネルCH1〜CH4のそれぞれ毎に、任意の通信(本例では、通常のデータ通信或いは通信品質測定用の通信)を行うことが可能である。
【0036】
また、本例では、通信品質測定用の通信において、基地局装置1から移動局装置A1〜A3へ通信品質測定用の信号(本例では、擬似ランダム符号)を無線送信し、移動局装置A1〜A3が受信した通信品質測定用の信号に基づいて通信品質(本例では、ビットエラーレート)を測定して当該測定結果の情報を基地局装置1へ無線送信する構成を示したが、他の構成例として、移動局装置A1〜A3が受信した通信品質測定用の信号に基づいて通信品質を測定するが、当該測定結果の情報を基地局装置1へ無線送信せずに、当該移動局装置A1〜A3で利用するような構成を用いることも可能である。
また、他の構成例として、通信品質測定用の通信において、移動局装置A1〜A3から基地局装置1へ通信品質測定用の信号を無線送信し、基地局装置1が受信した通信品質測定用の信号に基づいて通信品質を測定する構成を用いることも可能であり、更に、基地局装置1が当該測定結果の情報を当該移動局装置A1〜A3へ無線送信する構成を用いることも可能である。
【0037】
また、他の構成例として、通信品質測定用の通信において、上記したように基地局装置1から移動局装置A1〜A3へ通信品質測定用の信号を送信して移動局装置A1〜A3が通信品質を測定する(或いは、更に、測定結果の情報を基地局装置1へ送信する)ことと、上記したように移動局装置A1〜A3から基地局装置1へ通信品質測定用の信号を送信して基地局装置1が通信品質を測定する(或いは、更に、測定結果の情報を当該移動局装置A1〜A3へ送信する)ことの両方を行う構成を用いることも可能である。
【0038】
なお、本例の基地局装置1では、複数のチャネルCH1〜CH4のスロットを使用して移動局装置A1〜A3との間で無線通信する無線通信機能により基地局通信手段が構成されており、通常のデータ通信を継続しながら一部のチャネルで通信品質測定用の通信を行うように当該無線通信機能を制御する制御機能により基地局制御手段が構成されている。
また、本例の移動局装置(端末局装置の一例)A1〜A3では、割り当てられたチャネルCH1〜CH4のスロットを使用して基地局装置1との間で無線通信する無線通信機能により端末局通信手段が構成されており、割り当てられたチャネルCH1〜CH4の使用状況に応じて通常のデータ通信或いは通信品質の測定を行うように当該無線通信機能を制御する制御機能により端末局制御手段が構成されている。
【0039】
次に、図3及び図4を参照して、本発明を適用することが可能なシステムの一例を示す。
図3には、防災デジタル無線システムの一例である消防デジタル無線システムの構成例を示してある。
本例の消防デジタル無線システムは、操作部81と表示部82と記憶部83を有する指令装置(指令卓)71と、回線制御装置(無線回線制御装置)72と、複数であるp個の基地局装置G1〜Gpと、複数であるp個の遠隔制御器H1〜Hpと、複数であるq個の移動局装置I1〜Iqを備えている。
各移動局装置I1〜Iqは、車載機91と携帯機92から構成されており、また、携帯機92を置くための置台93を有している。
【0040】
本例の消防デジタル無線システムは、東京都など各都道府県の地域防災のために用いることができる。本例では、指令装置71や回線制御装置72は防災センタに設置されており、各基地局装置G1〜Gpは消防署内或いはビルの上や街中や山上などの外部に設置されており、各遠隔制御器H1〜Hpは消防署内に設置されており、各移動局装置I1〜Iqは消防車或いは救急車などの車両に設置されている。
各車両では、例えば、車載機91や置台93が当該各車両に取り付けられるなどして搭載されており、携帯機92は人により持ち運ぶことや置台93に置くことが可能になっている。
なお、図3に示されるのと同様なシステムを複数設けて、いずれかのシステムを運用するとともに他のシステムを予備として待機させ、運用しているシステムが故障したときに予備のシステムを運用させることで全体の運用を継続させるような構成とすることも可能である。
また、基地局装置G1〜Gpとの間で通信する配下の装置としては、例えば、固定機、半固定機、携帯機、可搬機など、種々なものが用いられてもよい。
【0041】
本例の消防デジタル無線システムにおいて行われる動作の概要を示す。
指令装置71では、操作部81が人(指令者)により操作されることにより各種の指示や情報を入力し、表示部82が表示対象となる各種の情報を画面に表示出力し、メモリから構成された記憶部83が記憶対象となる各種の情報を記憶する。
指令者は、指令装置71から配下の装置(回線制御装置72、基地局装置G1〜Gp、遠隔制御器H1〜Hp、移動局装置I1〜Iq)へ各種の指示を送信することができる。また、指令者は、指令装置71が配下の装置から受信した各種の情報を画面表示により見ることができる。また、必要な情報は、記憶部83に保持される。
【0042】
回線制御装置72は、例えば有線で指令装置71と複数の基地局装置G1〜Gpと接続されており、これらの間の通信を中継し、また、無線回線などに関する各種の制御を行う。
各基地局装置G1〜Gpは、通信可能な領域(エリア)に存在する移動局装置I1〜Iqとの間で無線により通信し、また、有線で接続された各遠隔制御器H1〜Hpとの間で通信する。
各遠隔制御器H1〜Hpは、有線で接続された各基地局装置G1〜Gpとの間で通信し、例えば、移動局装置と同様な機能を有しており、人(署員)により操作などされる。
各移動局装置I1〜Iqは、当該各移動局装置I1〜Iqが収容される基地局装置G1〜Gpとの間で無線により通信する。
【0043】
図4には、車載機91の構成例及び携帯機92の構成例を示してある。
車載機91は、アンテナ101と、無線部102と、キー操作部103と、表示部104と、マイクを有するマイク部105と、例えば2つのスピーカを有するスピーカ部106と、メモリ107と、携帯インタフェース108と、制御部109を備えている。
携帯機92は、アンテナ111と、無線部112と、キー操作部113と、表示部114と、マイクを有するマイク部115と、スピーカを有するスピーカ部116と、メモリ117と、車載インタフェース118と、制御部119を備えている。
ここで、車載機91が有する内部の処理機能と携帯機92が有する内部の処理機能は、例えばスピーカの数が異なるなどの相違はあるが、概略的には、同様である。
【0044】
車載機91では、無線部102がアンテナ101により基地局装置G1〜Gpとの間で信号を無線送信や無線受信し、キー操作部103が人(使用者)からのキー操作を受け付け、表示部104が使用者に対して情報を画面に表示し、マイク部105が使用者などにより発せられる音(音声)を入力し、スピーカ部106が使用者に対して音(音声)を出力し、メモリ107が例えば呼び出されるための電話番号となる呼出情報(ID情報)を記憶し、携帯インタフェース108が携帯機92の車載インタフェース118との間で例えば光信号により通信し、制御部109が各種の制御を行う。
【0045】
同様に、携帯機92では、無線部112がアンテナ111により基地局装置G1〜Gpとの間で信号を無線送信や無線受信し、キー操作部113が人(使用者)からのキー操作を受け付け、表示部114が使用者に対して情報を画面に表示し、マイク部115が使用者などにより発せられる音(音声)を入力し、スピーカ部116が使用者に対して音(音声)を出力し、メモリ117が例えば呼び出されるための電話番号となる呼出情報(ID情報)を記憶し、車載インタフェース118が車載機91の携帯インタフェース108との間で例えば光信号により通信し、制御部119が各種の制御を行う。
【0046】
ここで、車載機91のメモリ107に記憶される呼出情報(ID情報)と携帯機92のメモリ117に記憶される呼出情報(ID情報)としては、同一の情報が設定される。
また、車載機91と携帯機92とは、携帯機92が置台93に置かれた状態では携帯インタフェース108と車載インタフェース118との間で通信することが可能であるが、例えば、携帯機92が置台93から取り外されて持ち運ばれる状態では携帯インタフェース108と車載インタフェース118との間では通信しない。
【0047】
本例では、携帯機92が置台93にセットされている(置かれている)状態では、携帯機92は特に機能せず、基地局装置G1〜Gpからの受信や、基地局装置G1〜Gpへの送信や、キー入力や、表示出力や、音声入力や、音声出力などは全て車載機91により行われる。
一方、携帯機92が置台93から取り外された状態では、携帯機92により基地局装置G1〜Gpからの受信や、基地局装置G1〜Gpへの送信や、キー入力や、表示出力や、音声入力や、音声出力などの全てが行われ、この状態では、車載機91により基地局装置G1〜Gpからの受信や、表示出力や、音声出力のみが行われる。つまり、車載機91と携帯機92とは同一の呼出情報(ID情報)が設定されており、受信は両方で同時に行うことが可能であるが、送信は片方ずつ行う構成となっている。
【0048】
なお、置台93から取り外された携帯機92は、車載機91を介さずに、基地局装置G1〜Gpとの間で直接的に無線通信する。この点は、通常の親子電話の子機とは異なる点であると考えられる。
また、携帯機92が置台93にセットされた状態や置台93から取り外された状態は、車載機91や携帯機92により検出されて、それぞれの制御部109、119によりそのときの状態に応じて実行可能な機能(或いは、実行不可能な機能)が設定される。
【0049】
また、車載機91では、2つのスピーカを有しており、例えば、携帯機92が置台93から取り外された状態では、基地局装置G1〜Gpから携帯機92へ送信される通話の内容を一のスピーカから音声出力するとともに、携帯機92から基地局装置G1〜Gpへ送信される通話の内容を他のスピーカから音声出力する。
一例として、消防車などに移動局装置I1〜Iqが設けられており、当該消防車などが火災などの現場にいて、或る隊員が携帯機92を持って当該消防車などの外部に出て活動し、他の隊員が当該消防車などの内部で待機する際に、当該他の隊員は車載機91から出力される音声を聞くことにより、携帯機92と基地局装置G1〜Gpとの間で行われる通話の内容を聞くことができる。
なお、例えば、基地局装置G1〜Gpから移動局装置I1〜Iqへの下りの通信と、移動局装置I1〜Iqから基地局装置G1〜Gpへの上りの通信とでは、異なる周波数が用いられる。
【0050】
また、基地局装置G1〜Gpの側(例えば、指令装置71)と移動局装置I1〜Iqとの間の通信としては、例えば、プレストーク通信が行われる構成が用いられてもよく、或いは、通常の携帯電話のような両方向同時通信が行われる構成が用いられてもよく、或いは、他の態様の通信が行われる構成が用いられてもよい。また、基地局装置G1〜Gpの側から移動局装置I1〜Iqへ報知のための情報を送信して、移動局装置I1〜Iqが当該情報の受信に応じて当該情報を(自動的に)出力するような構成を用いることもできる。
【0051】
消防車の場合には、例えば、プレストーク通信が用いられ、指令装置71から複数の消防車の移動局装置I1〜Iqを呼び出してグループ通信(例えば、事業リンクでのグループ通信)し、このグループ内でプレストーク通信することにより、これら複数の消防車により同一の火災現場の処置を行うことができる。
救急車の場合には、例えば、通常の電話のような通信が用いられ、発話(発呼)及び受話により通話を行うことができる。
また、例えば、車載機91と携帯機92との間で離れた所でも無線により通信することが可能な機能を車載機91及び携帯機92に設けることも可能である。この場合、一例として、トンネル内などの不感地帯で携帯機92を車両の外部に持ち出すときに、車載機91と携帯機92をトランシーバのように用いて互いに通話することができる。
【0052】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る通信のスロットタイミングの一例を示す図である。
【図3】消防デジタル無線システムの構成例を示す図である。
【図4】車載機及び携帯機の構成例を示す図である。
【図5】通信のスロットタイミングの一例を示す図である。
【図6】ビットエラーレートの測定を行う場合における通信のスロットタイミングの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・基地局装置、 A1〜A3・・移動局装置、
71・・指令装置、 72・・回線制御装置、 81・・操作部、 82、104、114・・表示部、 83・・記憶部、 91・・車載機、 92・・携帯機、 93・・置台、 G1〜Gp・・基地局装置、 H1〜Hp・・遠隔制御器、 I1〜Iq・・移動局装置、 101、111・・アンテナ、 102、112・・無線部、 103、113・・キー操作部、 105、115・・マイク部、 106、116・・スピーカ部、 107、117・・メモリ、 108・・携帯インタフェース、 109、119・・制御部、 118・・車載インタフェース、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と複数の端末局装置とが無線により通信する無線通信システムにおいて、
前記基地局装置は、時分割で設けられた複数のチャネルのスロットを使用して前記端末局装置との間で無線により通信する基地局通信手段と、
前記複数のチャネルのうちの1つ以上のチャネルのスロットをデータ通信に使用し且つ他の1つ以上のチャネルのスロットを通信品質測定用の通信に使用するように前記基地局通信手段による通信を制御する基地局制御手段と、を備え、
前記端末局装置は、自装置に割り当てられたチャネルのスロットを使用して前記基地局装置との間で無線により通信する端末局通信手段と、
自装置に割り当てられたチャネルのスロットが前記基地局装置によりデータ通信に使用されている場合には前記端末局通信手段によりデータ通信を行い、自装置に割り当てられたチャネルのスロットが前記基地局装置により通信品質測定用の通信に使用されている場合には前記端末局通信手段による通信に基づいて通信品質の測定を行う端末局制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局装置から前記端末局装置への下りの無線通信と前記端末局装置から前記基地局装置への上りの無線通信とで異なる周波数が使用され、
前記基地局装置の前記基地局制御手段は、通信品質測定用の通信として、通信品質測定用の信号を前記基地局通信手段により無線送信し、
前記端末局装置の前記端末局制御手段は、自装置に割り当てられたチャネルのスロットが前記基地局装置により通信品質測定用の通信に使用されている場合には、前記端末局通信手段により受信された前記通信品質測定用の信号に基づいて通信品質の測定を行う、
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−34940(P2008−34940A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203307(P2006−203307)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】