説明

無線通信システム

【課題】従来の無線中継器では電池が消耗した場合には中継通信が行えなくなるため、交換が間に合わない場合に必要な報知や検針が行えなくなる課題があった。これに対応するため交換機関を保証するバッテリ−を使用すればコストが高くなる課題があった。
【解決手段】無線親機と複数の無線子機との間で無線中継器を介して通信を行う無線通信システムにおいて、無線中継器が自己を駆動する電池の残量を検出し、残量が低下した場合、他の無線中継器に中継の代行を依頼することを特徴とする無線通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス、水道、電気等の自動検針等に用いられる無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガス等のメ−タの検針値を公衆回線を介してセンタに送る自動検針システムが開発されつつある。この自動検針システムは、メ−タの指針値を公衆回線を介してセンタに送ろうとするものである。そして、その通信の一部を無線で行うことも試みられている。特に集合住宅においては、各メ−タに無線子機(子機)を取り付け、1台の無線親機(親機)と複数の子機との間で通信を行うことが考えられる。
【0003】
また、こうした無線検針を用いれば公衆回線ではなくハンディタ−ミナルを用いて住宅内に入らずに検針を行うことも可能となり、セキュリティへの関心とともにマンション等での要求が高まっている。
【0004】
しかしながら、無線電波として送出する電波強度は決まっているため、電波が到達する範囲には限りがある。無線機を設置する場合には、当然無線電波が到達する範囲内に設置するが、近年のマンションの高層化、住宅構造や電波環境等から十分な通信距離が確保できず、中継を行う場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−023279号公報
【特許文献2】特開平8−172491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら設置された無線中継器は設置性を高めるため電池駆動となることが多く、電池が消耗した場合には中継通信が行えなくなる課題があった。このため、電池の消耗を報知する機能もあるが、中継通信では通信量が膨大となるため、交換が追いつかず検針が出来なくなる課題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中継器の電池消耗時にも支障なく検針業務を行わせることが可能な無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために本発明は、無線親機と複数の無線子機との間で無線中継器を介して通信を行う無線通信システムにおいて、無線中継器が自己を駆動する電池の残量を検出し、残量が低下した場合、他の無線中継器に中継の代行を依頼することを特徴とする無線通信システムである。
【0009】
また、無線中継器が自己を駆動する電池の残量を検出し、残量が低下した場合、他の無線中継器に中継の代行を依頼する。また、依頼された無線中継器は中継の代行を依頼した中継器を介する中継通信の電文を受信した場合、前記中継の代行を依頼した無線中継器の代行を行う旨を送信元に通知し、通信終了までの中継を行う。
【発明の効果】
【0010】
以上、詳細に説明したように本発明では、中継器の電池消耗時にも他の中継器に中継通信を代行させるため、メンテナンスの遅延による検針業務の停滞を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の無線通信システムの概要図
【図2】本発明の実施の形態1の親機の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1の中継器の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1の中継器の動作フロ−図
【図5】本発明の実施の形態1の中継器の動作フロ−図
【図6】本発明の実施の形態1の中継器が保持するテーブルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、無線親機と複数の無線子機との間で無線中継器を介して通信を行う無線通信システムにおいて、無線中継器が自己を駆動する電池の残量を検出し、残量が低下した場合、他の無線中継器に中継の代行を依頼するものである。
【0013】
これによって、中継器の電池消耗時にも支障なく検針業務を行わせることが可能となる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明において、無線中継器が自己を介する中継通信を他の無線中継器に依頼する場合、同報通信を行い応答電文の電波強度に応じて無線中継器に順位付けを行い、無線中継器の順位付けに基づいて中継の代行を依頼する無線中継器を選定するものである。
【0015】
これによって、中継器の電池消耗時にも支障なく検針業務を行わせることが可能となる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1または2の発明において、無線中継器が自己を介する中継通信を他の無線中継器に依頼する場合、同報通信を行い各無線中継器の電池の残量を要求し、電池残量に応じて無線中継器に順位付けを行い、無線中継器の順位付けに基づいて中継の代行を依頼する無線中継器を選定するものである。
【0017】
これによって、中継器の電池消耗時にも支障なく検針業務を行わせることが可能となる。
【0018】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれか1つの発明において、無線中継器は他の無線中継器から中継の代行を依頼された場合、中継の代行を依頼した中継器を介する中継通信の電文を受信した場合、前記中継の代行を依頼した無線中継器の代行を行う旨を送信元に通知し、通信終了までの中継を行うものである。
【0019】
これによって、中継器の電池消耗時にも支障なく検針業務を行わせることが可能となる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
以下、図面に基づいて本発明の1実施例を詳細に説明する。図1は無線通信システムを
示す概略図であり、図1に示すように、ハンディタ−ミナルとしての親機1は、無線中継器2−1、2−2・・・を介して、メ−タ(図示せず)と接続された子機3−1、3−2…との間で通信を行う。
【0022】
図2は、親機1の構成を示すブロック図である。親機1は、表示部11、操作部12、無線送受信部13、制御部14、デ−タ記憶部15、電源部16、容量判定部17を有する。表示部、操作部は、後述する検針や中継検針の指示を行う。無線送受信部13は、検針時に使用する中継器2、子機3との間の通信電波を送受信する。制御部14は、テ−ブル管理、電文判別、電文作成等の処理を行う。デ−タ記憶部15は通信を行う複数の子機3のIDや電波強度に応じた子機3の順番等を記憶する。電源部16は、各部に電力を供給する。容量判定部17は電源部に蓄えられた電源の残量を判定する。
【0023】
図3は、中継器2の構成を示すブロック図である。中継器2は、無線送受信部21、制御部22、ID記憶部23、代行ID記憶部24、電源部25、容量判定部26を有する。
【0024】
無線送受信部21は、親機1との間の通信電波を送受信する。制御部22は、テ−ブル管理、電文判別、電文作成、また、中継代行判定等の処理を行う。ID記憶部23は自己のID情報を記憶する。代行ID記憶部24は代行を依頼されている中継器のIDを記憶する。電源部25は各部に電力を供給する。容量判定部26は電源部25に蓄えられた電源の残量を判定する。
【0025】
本実施例では、例えば親機1と子機3−1との間で通信を試みるとき、その通信区間に置かれた障害物によるフェ−ジング等の事情により、親機1が子機3−1に発呼を行っても、子機3−1から応答がない場合がある。このとき、親機1は子機3−1との間の通信の中継を依頼する子機(以下中継子機と称する)を選定し、例えば中継子機として中継器2−2を選定して中継を試みる。中継が可能であれば、以後親機1は中継器2−2を介して子機3−1との間で通信を行う。
【0026】
図4は中継器2の動作を示すフロ−図であり、中継器2は自己のIDを記憶しており、親機からの電波を受信した場合、(S−403)このIDを宛先としているかどうかを確認し(S−403)、同報通信(全ての機器宛)である場合(S−404、YES)は処理/応答を行う応答通信を実施する(S−415)。自己のIDを宛先としていれば(S−405)信号内容を確認し(S−407)、自己宛の設定/要求通信であれば処理/応答を行う自己通信を実施し(S−408)、中継依頼通信であれば指定の子機に中継を行う中継通信を実施し(S−412)、代行依頼通信であれば(S−406、YES)代行元のIDを取得して代行ID記憶部24にIDを記憶し、(S−409)、応答通信を行う(S−410)。
【0027】
自己宛ではない場合(S−405、No)、他の中継器から代行依頼されている場合には(S−413、YES)取得している代行元のIDと比較し(S−415)、一致すれば中継通信を実施する。
【0028】
図5は中継器2が代行依頼を行うための制御シ−ケンスを示すフロ−図である。
【0029】
図6は中継器2が代行依頼を行う際の代行先中継器選定の処理を説明するためのテ−ブルデ−タの例である。
【0030】
中継器は電池残量を検出し(S−502)残量があらかじめ定められるより少なくなった場合同報通信でデ−タ要求を行う(S−503)。この応答信号を受信し(S−504
〜S−505)、かつ受信した信号の電界強度を判定する(S−506)。規定されるデ−タ収集が終了した場合(S−507、図6上段)、電界強度があらかじめ定められる強度以上の中継器を選別する(S−508、図6中段)。さらに、電池残量レベルの高いものから代行依頼順位を付す(S−509、図6下段)。
【0031】
この順位に従って、第一順位の中継器に対して代行を依頼し(S−510)、応答があれば(S−511、YES)処理を終了し(S−512)、応答がない場合は(S−511、No)次順位のものを繰り上げて(S−513、S−514)応答があるまで代行依頼を行う。
【0032】
今、中継器2−1が電池残量の低下を検出すると、図5のシ−ケンスS−503に従って、同報デ−タ要求を行う。周囲の中継器2−2〜5は同報デ−タ要求を受信し、図4のシ−ケンスS−402〜S−404、S−405に従って自己の電池残量を応答する。中継器2−1は図5のS−504〜S−507により応答を収集する。図1破線に示す中継器が応答信号の電波の電界強度が所定以上で受信できるとすると、S−508のシ−ケンスにより中継器2−2、2−3を選定する。いま、中継器2−2が電池残量が多い場合、中継器2−2に向けて代行依頼信号を送信する(S−510)。中継器2−2が登録子機数が多い等、何らかの理由で代行不可能なため、許可信号を応答しなかった場合、中継器2−1は図5のシ−ケンスS−513、S−514に従って、次順位である中継器2−3を選定し、同様に代行依頼を行う。中継器2−3が代行可能な場合、中継器2−3は代行を行う中継器のIDを代行ID記憶部24に記憶し、代行許可の応答を返すと、代行依頼処理が完了し、以降中継器2−1が行うべき中継処理は中継器2−3で行われる。
【0033】
たとえば、中継器2−1宛の中継要求電文が来ると、中継器2−1は図4のS−405からS−406、S−407、S−411と判断を行い、代行依頼中であるため、処理を行わない。一方中継器2−3は図4のS−405からS−413、S−414、S−412と判断、処理を行い、代行通信を行う。
【0034】
このようにして電池残量が低下した中継器の処理を他の中継器が行うことができるため、常に信頼性の高い通信を行うことが可能となり、検針や保安サ−ビスの質を向上することができる。また、電池残量低下後のメンテナンスまでの時間を保証するため、必要以上の電池容量を確保する必要がなくなるため、中継器のコスト抑制も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる無線通信システムは、常に信頼性の高い通信を行うことが可能となり、検針や保安サ−ビスの質を向上することができる。
【符号の説明】
【0036】
2 中継器
21 無線送受信部
22 制御部
23 ID記憶部
24 代行ID記憶部
25 電源部
26 容量判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線親機と複数の無線子機との間で無線中継器を介して通信を行う無線通信システムにおいて、無線中継器が自己を駆動する電池の残量を検出し、残量が低下した場合、他の無線中継器に中継の代行を依頼することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線中継器が自己を介する中継通信を他の無線中継器に依頼する場合、同報通信を行い応答電文の電波強度に応じて無線中継器に順位付けを行い、前記無線中継器の順位付けに基づいて中継の代行を依頼する無線中継器を選定することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線中継器が自己を介する中継通信を他の無線中継器に依頼する場合、同報通信を行い各無線中継器の電池の残量を要求し、電池残量に応じて無線中継器に順位付けを行い、前記無線中継器の順位付けに基づいて中継の代行を依頼する無線中継器を選定することを特徴とする請求項1または2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線中継器は他の無線中継器から中継の代行を依頼された場合、中継の代行を依頼した中継器を介する中継通信の電文を受信した場合、前記中継の代行を依頼した無線中継器の代行を行う旨を送信元に通知し、通信終了までの中継を行うことを特徴とする請求項1〜3記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−251820(P2010−251820A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95820(P2009−95820)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】