説明

無線通信システム

【課題】安定的に論理アドレスの重複を検出する。
【解決手段】マスタデバイス1からのスレーブ情報(スレーブ最大接続可能数Nmax、アドレス通知周期T)と自己に設定されているデバイス番号#nとに基づいて、スレーブデバイス2−1〜2−Nにおいて、アドレス情報の通知タイミングΔTを算出し、ΔT時間のディレイ後、周期T毎に、自己のアドレス情報(論理アドレス+通信アドレス)をマスタデバイス1に通知する。マスタデバイス1は、アドレス情報を受信する毎に、その論理アドレスと通信アドレスとの組み合わせを記憶して行き、この記憶に際して受信した論理アドレスと一致する論理アドレスが既に記憶されている場合、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスをチェックし、受信した通信アドレスと一致していない場合に、受信した論理アドレスを重複していると判断する。また、次の重複判断のために、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスを受信した通信アドレスに書き替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マスタデバイスと複数のスレーブデバイスとから構成される無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を利用して、環境計測・監視・制御などを行うシステムが増加している。この環境計測・監視・制御などを行う無線通信システムでは、対象エリアが比較的広い、又は、対象エリア内に無線通信の障害物が多々存在する場合が多い。このような場合、対象エリアをカバーするためには、受信器と送信器の設置位置や電波状況等の環境により直接通信できなくても、他のデバイスを中継して通信を行うことができる無線通信ネットワークを利用することが有利である。
【0003】
この種の無線通信ネットワークとして、ジグビー(Zigbee(登録商標))プロトコルを利用した無線通信ネットワーク(例えば、特許文献1、2参照)など、メッシュネットワークが提案されている。このメッシュネットワークでは、マスタデバイスとスレーブデバイスとの間の双方向の通信を直接通信圏内にある他のスレーブデバイスを中継して行うもので、1つの通信経路がマルチパスフェージングの影響を受けて通信不能に陥ったとしても、他の通信経路を探索して通信を継続することができる技術である。なお、マルチパスフェージングとは、複数の通信電波反射経路の間に発生する位相差により受信電波が打ち消され、受信ができなくなる現象をいう。
【0004】
このようなマスタデバイスと複数のスレーブデバイスとからなる無線通信システムでは、スレーブデバイスの種別や階層を定義するために、システムのプロトコルに基づいて単一の体系としてマスタデバイスが割り当てる通信アドレスとは別に、論理アドレスがスレーブデバイスに設定される。この論理アドレスは、システム構成に応じて個別に定められ、通常、手動で設定される。このため、異なるスレーブデバイスに、重複した論理アドレスが設定されるということが起こり得る。仮に、重複した論理アドレスが設定されたままシステムが運用されると、所望の運用ができないため、この重複を検出する必要がある。
【0005】
そこで、従来の論理アドレス重複検出方式として、パケット通信方式のネットワークにおいて、パケットを中継する中継器が、パケット毎の論理アドレスを抽出して記憶しておき、記憶された論理アドレスと抽出された論理アドレスとの重複を検出し、重複が検出されたときにネットワーク管理端末に通知する方式が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−5928号公報
【特許文献2】特開2006−42370号公報
【特許文献3】特開平6−75900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献3に示された論理アドレス重複検出方式をジグビープロトコルを利用したメッシュネットワークに適用した場合、例えば、電源起動時などに各中継局(マスタデバイスまたはスレーブデバイス)が通信ルートの構築を行った場合、過度の通信トラフィックが発生して、中継器がメッセージを受信できない可能性があり、この場合、論理アドレスの重複を検出することはできない。また、何らかの方法で中継器がネットワークに存在する全てのメッセージを受信するしくみがないと、ネットワークに存在する全てのデバイスについて論理ドレスの重複を検出することはできない。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、安定的に論理アドレスの重複を検出することができる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために本発明は、第1〜第N(N≧2)のスレーブデバイスと、これらスレーブデバイスからのメッセージを受信するマスタデバイスとを備える無線通信システムにおいて、マスタデバイスは、スレーブデバイスの最大接続可能数とスレーブデバイスからのアドレス情報の通知周期とをスレーブ情報として記憶するスレーブ情報記憶手段と、少なくとも起動時に、第1〜第Nのスレーブデバイスにスレーブ情報をブロードキャストで送信し、第1〜第Nのスレーブデバイスからのアドレス情報の通知を要求するアドレス情報通知要求手段と、アドレス情報通知要求手段からのアドレス情報の通知要求に応じて第1〜第Nのスレーブデバイスからアドレス情報として通知される論理アドレスと通信アドレスとに基づいて、第1〜第Nのスレーブデバイスに設定されている論理アドレスの重複を検出する論理アドレス重複検出手段とを備え、第1〜第Nのスレーブデバイスは、スレーブデバイスの最大接続可能数を最大値として順番に定められるデバイス番号と自己のアドレス情報として設定される論理アドレスと通信アドレスとを機器情報として記憶する機器情報記憶手段と、マスタデバイスからのアドレス情報の通知要求を受けて、スレーブ情報として送られてくるスレーブデバイスの最大接続可能数とアドレス情報の通知周期と機器情報として記憶されているデバイス番号とに基づいて、自己のアドレス情報を通知するタイミングを算出するアドレス情報通知タイミング算出手段と、アドレス情報通知タイミング算出手段によって算出された通知タイミングに従ってアドレス情報の通知周期毎に機器情報として記憶されている自己のアドレス情報をマスタデバイスに通知するアドレス情報通知手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明において、マスタデバイスは、少なくとも起動時に、第1〜第Nのスレーブデバイスにブロードキャストでスレーブ情報(スレーブデバイスの最大接続可能数Nmax+スレーブデバイスからのアドレス情報の通知周期T)を送信し、第1〜第Nのスレーブデバイスからのアドレス情報の通知を要求する。このアドレス情報の通知要求を受けて、第1〜第Nのスレーブデバイスは、スレーブデバイスの最大接続可能数Nmaxとアドレス情報の通知周期Tとデバイス番号#nとに基づいて、自己のアドレス情報を通知するタイミングΔTを算出する。例えば、ΔT=#n*(T/Nmax)として、自己のアドレス情報を通知するタイミングを算出する。そして、この算出した通知タイミングに従って、アドレス情報の通知周期T毎に、自己のアドレス情報(論理アドレス+通信アドレス)をマスタデバイスに通知する。
【0011】
マスタデバイスは、第1〜第Nのスレーブデバイスから通知されるアドレス情報(論理アドレス+通信アドレス)に基づいて、第1〜第Nのスレーブデバイスに設定されている論理アドレスの重複を検出する。例えば、第1〜第Nのスレーブデバイスからのアドレス情報を受信する毎に、アドレス情報として送られてくる論理アドレスと通信アドレスとの組み合わせを記憶して行き、この記憶に際して受信した論理アドレスと一致する論理アドレスが既に記憶されている場合、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスをチェックし、その記憶されている通信アドレスと受信した通信アドレスとが一致していない場合に、受信した論理アドレスを重複していると判断する。この場合、次の重複判断のために、重複すると判断された論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスを受信した通信アドレスに書き替えるようにするとよい。また、受信した論理アドレスを重複していると判断した場合、その論理アドレスを外部に出力するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スレーブデバイスの最大接続可能数とスレーブデバイスからのアドレス情報の通知周期とをスレーブ情報とし、このスレーブ情報をマスタデバイスより第1〜第Nのスレーブデバイスにブロードキャストで送信し、第1〜第Nのスレーブデバイスにおいて、スレーブデバイスの最大接続可能数とアドレス情報の通知周期とデバイス番号とに基づいて自己のアドレス情報を通知するタイミングを算出し、この算出した通知タイミングに従ってアドレス情報の通知周期毎に自己のアドレス情報(論理アドレス+通信アドレス)をマスタデバイスに通知し、マスタデバイスにおいて、第1〜第Nのスレーブデバイスからアドレス情報として通知される論理アドレスと通信アドレスとに基づいて、第1〜第Nのスレーブデバイスに設定されている論理アドレスの重複を検出するようにしたので、運用中にルートの再構築が行われるような場合でも、マスタデバイス側で安定的に論理アドレスの重複を検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る無線通信システムの一実施の形態における電源投入後のシーケンス図である。
【図2】この無線通信システムにおけるマスタデバイスでの論理アドレスの重複検出処理を示すフローチャートである。
【図3】論理アドレスの重複検出の具体例について2台のスレーブデバイスの構成例で説明するシーケンス図(重複発生時)である。
【図4】論理アドレスの重複検出の具体例について2台のスレーブデバイスの構成例で説明するシーケンス図(重複解消時)である。
【図5】この無線通信システムにおけるマスタデバイスとスレーブデバイスの要部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はこの発明に係る無線通信システムの一実施の形態における電源投入後のシーケンス図である。同図において、1はマスタデバイスであり、2(2−1〜2−N)はスレーブデバイスである。
【0015】
この無線システムにおいて、マスタデバイス1には、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略す)を接続するなどして、スレーブデバイスの最大接続可能数(スレーブ最大接続可能数)Nmaxとスレーブデバイスからのアドレス情報の通知周期(アドレス通知周期)Tが設定されている。
【0016】
また、スレーブデバイス2には、論理アドレスと通信アドレスとデバイス番号とが設定されている。論理アドレスはパソコンを接続するなどして手動で設定されており、通信アドレスはネットワーク接続時に親デバイス(マスターデバイスまたはスレーブデバイス)によって割り当てられている。なお、デバイス番号は、スレーブデバイスの最大接続可能数Nmaxを最大値として、マスタデバイスデバイス1によって順番に割り当てられているものとする。もしくは、論理アドレスを変換したものとしてもよい。例えは、論理アドレスの下2桁をデバイス番号とした場合、論理アドレスが「1002」ならばデバイス番号は#2となる。
【0017】
この例では、スレーブデバイス2−1に、論理アドレスとして「10001」が、通信アドレスとして「aaaa」が、デバイス番号として#1が設定されている。また、スレーブデバイス2−2に、論理アドレスとして「10002」が、通信アドレスとして「aaab」が、デバイス番号として#2が設定されている。以下同様にして、各スレーブデバイス2に論理アドレスと通信アドレスとデバイス番号が設定されており、最後のスレーブデバイス2−Nに、論理アドレスとして「1000N」が、通信アドレスとして「aaaZ」が、デバイス番号として#Nが設定されている。
【0018】
〔マスタデバイスからのアドレス情報の通知要求〕
この無線通信システムにおいて、マスタデバイス1は、電源投入後(イニシャル完了後)、および長周期(例えば、1時間に1回)で、スレーブデバイスの最大接続可能数Nmaxとスレーブデバイスからのアドレス情報の通知周期Tとをスレーブ情報として、スレーブデバイス2−1〜2−Nにブロードキャストで送信し、スレーブデバイス2−1〜2−Nからのアドレス情報の通知を要求する(図1:矢印(1),(2),(3))。
【0019】
〔スレーブデバイスからのアドレス情報の通知(平準化)〕
このマスタデバイス1からのアドレス情報の通知要求を受けて、スレーブデバイス2−1〜2−Nは、自己に設定されているデバイス番号に基づいたディレイ後、通知されたアドレス情報の通知周期T毎に自己に設定されている論理アドレスと通信アドレスとをアドレス情報としてマスタデバイス1に通知する。この例では、自己のデバイス番号を#nとし、ΔT=#n*(T/Nmax)としてアドレス情報の通知タイミングを求め、この通知タイミングΔTに従って、アドレス情報の通知周期T毎に、自己のアドレス情報(論理アドレス+通信アドレス)をマスタデバイス1に通知する。
【0020】
この場合、スレーブデバイス2−1は、ΔT=#1*(T/Nmax)としてアドレス情報の通知タイミングを求め、マスタデバイス1からのアドレス情報の通知要求を受けた後、ΔT=#1*(T/Nmax)時間のディレイ後、通知されたアドレス情報の通知周期T毎に、自己に設定されている論理アドレス「10001」と通信アドレス「aaaa」をマスタデバイス1に通知する(図1:矢印(4),(7))。
【0021】
スレーブデバイス2−2は、ΔT=#2*(T/Nmax)としてアドレス情報の通知タイミングを求め、マスタデバイス1からのアドレス情報の通知要求を受けた後、ΔT=#2*(T/Nmax)時間のディレイ後、通知されたアドレス情報の通知周期T毎に、自己に設定されている論理アドレス「10002」と通信アドレス「aaab」をマスタデバイス1に通知する(図1:矢印(5),(8))。
【0022】
スレーブデバイス2−Nは、ΔT=#N*(T/Nmax)としてアドレス情報の通知タイミングを求め、マスタデバイス1からのアドレス情報の通知要求を受けた後、ΔT=#N*(T/Nmax)時間のディレイ後、通知されたアドレス情報の通知周期T毎に、自己に設定されている論理アドレス「1000N」と通信アドレス「aaaZ」をマスタデバイス1に通知する(図1:矢印(6))。
【0023】
これにより、スレーブデバイス2−1〜2−Nからのアドレス情報の通知が平準化され、通信負荷をかけることなく、マスタデバイス1での論理アドレスの重複検出を行わせることができるようになる。
【0024】
〔マスタデバイスでの論理アドレスの重複検出〕
マスタデバイス1は、スレーブデバイス2から通知されるアドレス情報(論理アドレス+通信アドレス)を受信する(図2:ステップS101)。ここで、通知された論理アドレスが初めて通知されたものであれば(ステップS102のYES)、通知された論理アドレスと通信アドレスとの組み合わせを自己のメモリに記憶する(ステップS103)。
【0025】
これに対し、通知された論理アドレスと一致する論理アドレスが既に自己のメモリに記憶されていれば(ステップS102のNO)、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスと通知された通信アドレスとを比較し(ステップS104)、この2つの通信アドレスが一致すれば(ステップS105のYES)、通知された論理アドレスは重複していないと判断する(ステップS106)。
【0026】
これに対し、その2つの通信アドレスが一致しなければ(ステップS105のNO)、通知された論理アドレスは重複すると判断し(ステップS107)、論理アドレスの重複が生じていることを外部へ通知する(ステップS108)。この際、重複中の論理アドレスを外部へ出力し、接続されたパソコンの画面上に表示させるなどしてもよい。
【0027】
そして、マスタデバイス1は、次の重複判断のために、重複すると判断された論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスを、通知された通信アドレスに書き替える(ステップS109)。
【0028】
〔論理アドレスの重複検出の具体例〕
この論理アドレスの重複検出の具体例について2台のスレーブデバイスの構成例で説明する。図3にこの場合のシーケンス図を示す。この構成例において、マスタデバイス1とスレーブデバイス2−1,2−2は同一電源系統で同時に電源ONとなるものとする。また、この例では、スレーブデバイス2−2の論理アドレスを間違え、スレーブデバイス2−1と同じ論理アドレス「10001」が設定されているものとする。
【0029】
マスタデバイス1は、電源ON後、初めてスレーブデバイス2−1からのアドレス情報の通知を受けた時(図3:矢印(1))、スレーブデバイス2−1からアドレス情報として通知される論理アドレス「10001」と通信アドレス「aaaa」との組み合わせをメモリに記憶する(図3(a)参照)。この場合、論理アドレスの重複は発生していない。
【0030】
次に、マスタデバイス1は、スレーブデバイス2−2からのアドレス情報の通知を受けると(図3:矢印(2))、スレーブデバイス2−2から通知された論理アドレス「10001」と一致する論理アドレスが既にメモリに記憶されていることを確認し、その論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaaa」と通知された通信アドレス「aaab」とを比較する。
【0031】
この場合、記憶されている通信アドレス「aaaa」と通知された通信アドレス「aaab」とは一致していないので、通知された論理アドレス「10001」が重複していると判断する。そして、次の重複判断のために、論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaaa」を通知された通信アドレス「aaab」に書き替える(図3(b)参照)。
【0032】
次に、マスタデバイス1は、スレーブデバイス2−1からのアドレス情報の通知を受けると(図3:矢印(3))、スレーブデバイス2−1から通知された論理アドレス「10001」と一致する論理アドレスが既にメモリに記憶されていることを確認し、その論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaab」と通知された通信アドレス「aaaa」とを比較する。
【0033】
この場合、記憶されている通信アドレス「aaab」と通知された通信アドレス「aaaa」とは一致していないので、通知された論理アドレス「10001」が重複していると判断する。そして、次の重複判断のために、論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaab」を通知された通信アドレス「aaaa」に書き替える(図3(c)参照)。
【0034】
次に、マスタデバイス1は、スレーブデバイス2−2からのアドレス情報の通知を受けると(図3:矢印(4))、スレーブデバイス2−2から通知された論理アドレス「10001」と一致する論理アドレスが既にメモリに記憶されていることを確認し、その論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaaa」と通知された通信アドレス「aaab」とを比較する。
【0035】
この場合、記憶されている通信アドレス「aaaa」と通知された通信アドレス「aaab」とは一致していないので、通知された論理アドレス「10001」が重複していると判断する。そして、次の重複判断のために、論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaaa」を通知された通信アドレス「aaab」に書き替える(図3(d)参照)。
【0036】
次に、途中で、スレーブデバイス2−2の論理アドレスの間違いに気が付き、スレーブデバイス2−2の論理アドレスを「10001」から「10002」に変更したものとする。
【0037】
マスタデバイス1は、スレーブデバイス2−2の論理アドレスの「10001」から「10002」への変更後、スレーブデバイス2−1からのアドレス情報の通知を受けると(図4:矢印(3))、スレーブデバイス2−1から通知された論理アドレス「10001」と一致する論理アドレスが既にメモリに記憶されていることを確認し、その論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaab」と通知された通信アドレス「aaaa」とを比較する。
【0038】
この場合、記憶されている通信アドレス「aaab」と通知された通信アドレス「aaaa」とは一致していないので、通知された論理アドレス「10001」が重複していると判断する。そして、次の重複判断のために、論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaab」を通知された通信アドレス「aaaa」に書き替える(図4(c)参照)。
【0039】
次に、マスタデバイス1は、スレーブデバイス2−2からのアドレス情報の通知を受けると(図4:矢印(4))、スレーブデバイス2−2から通知された論理アドレス「10002」と一致する論理アドレスがメモリに記憶されていないため、通知された論理アドレス「10002」と通信アドレス「aaab」との組み合わせをメモリに記憶する。この場合、論理アドレス「10002」については、重複は発生していないと判断する(図4(d)参照)。
【0040】
次に、マスタデバイス1は、スレーブデバイス2−1からのアドレス情報の通知を受けると(図4:矢印(5))、スレーブデバイス2−1から通知された論理アドレス「10001」と一致する論理アドレスが既にメモリに記憶されていることを確認し、その論理アドレス「10001」と組み合わせて記憶されている通信アドレス「aaaa」と通知された通信アドレス「aaaa」とを比較する。この場合、記憶されている通信アドレス「aaaa」と通知された通信アドレス「aaaa」とは一致しているので、論理アドレス「10001」の重複は解消されたと判断する(図4(e)参照)。
【0041】
〔機能ブロック図〕
図5に上述した無線通信システムにおけるマスタデバイス1とスレーブデバイス2の要部の機能ブロック図を示す。このマスタデバイス1およびスレーブデバイス2は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。
【0042】
マスタデバイス1は、スレーブデバイスの最大接続可能数Nmaxとスレーブデバイスからのアドレス情報の通知周期(アドレス通知周期)Tを記憶するスレーブ情報記憶部1Aと、電源投入後(イニシャル完了後)、および長周期(例えば、1時間に1回)で、スレーブデバイス2−1〜2−Nにスレーブ情報記憶部1A中のスレーブ情報をブロードキャストで送信し、スレーブデバイス2−1〜2−Nからのアドレス情報の通知を要求するアドレス情報通知要求部1Bと、アドレス情報通知要求部1Bからのアドレス情報の通知要求に応じてスレーブデバイス2−1〜2−Nからアドレス情報として通知される論理アドレスと通信アドレスとの組み合わせに基づいてスレーブデバイス2−1〜2−Nに設定されている論理アドレスの重複を検出する論理アドレス重複検出部1Cとを備えている。
【0043】
なお、この例において、マスタデバイス1は、長周期でスレーブデバイス2−1〜2−Nにアドレス情報の通知要求を行うが、電源投入後にのみ、すなわちマスタデバイス1の起動時にのみ、スレーブデバイス2−1〜2−Nにアドレス情報の通知要求を行うようにしてもよい。
【0044】
スレーブデバイスデバイス2(2−1〜2−N)は、デバイス番号と論理アドレスと通信アドレスとを機器情報として記憶する機器情報記憶部2Aと、マスタデバイス1からのアドレス情報の通知要求を受けて、スレーブデバイスの最大接続可能数Nmaxとアドレス情報の通知周期Tとデバイス番号#nとから、ΔT=#n*(T/N)として自己のアドレス情報を通知するタイミングを算出するアドレス情報通知タイミング算出部2Bと、アドレス情報通知タイミング算出部2Bによって算出された通知タイミングΔTに従ってアドレス情報の通知周期T毎に自己のアドレス情報(論理アドレス+通信アドレス)をマスタデバイス1に通知するアドレス情報通知部2Cとを備えている。
【0045】
マスタデバイス1において、論理アドレス重複検出部1Cは、論理アドレス重複判断部1C1とアドレス情報記憶部1C2とを備えており、論理アドレス重複判断部1C1は、スレーブデバイス2−1〜2−Nからのアドレス情報を受信する毎に、その論理アドレスと通信アドレスとの組み合わせをアドレス情報記憶部1C2に記憶して行き、この記憶に際して受信した論理アドレスと一致する論理アドレスが既に記憶されている場合、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスをチェックし、その記憶されている通信アドレスと受信した通信アドレスとが一致していない場合に、受信した論理アドレスを重複していると判断する。また、受信した論理アドレスを重複していると判断した場合、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスを受信した通信アドレスに書き替える。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の無線通信システムは、通信幹線を無線化したメッシュ構造の中規模、大規模の監視制御システムなど様々な分野で利用することが可能である。具体的には、VAV(可変風量調節)による居室内空調システムへの適用などが考えられる。
【符号の説明】
【0047】
1…マスタデバイス、2(2−1〜2−N)…スレーブデバイス、1A…スレーブ情報記憶部、1B…アドレス情報通知要求部、1C…論理アドレス重複検出部、1C1…論理アドレス重複判断部、1C2…アドレス情報記憶部、2A…機器情報記憶部、2B…アドレス情報通知タイミング算出部、2C…アドレス情報通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第N(N≧2)のスレーブデバイスと、これらスレーブデバイスからのメッセージを受信するマスタデバイスとを備える無線通信システムにおいて、
前記マスタデバイスは、
前記スレーブデバイスの最大接続可能数と前記スレーブデバイスからのアドレス情報の通知周期とをスレーブ情報として記憶するスレーブ情報記憶手段と、
少なくとも起動時に、前記第1〜第Nのスレーブデバイスに前記スレーブ情報をブロードキャストで送信し、前記第1〜第Nのスレーブデバイスからのアドレス情報の通知を要求するアドレス情報通知要求手段と、
前記アドレス情報通知要求手段からのアドレス情報の通知要求に応じて前記第1〜第Nのスレーブデバイスからアドレス情報として通知される論理アドレスと通信アドレスとに基づいて、前記第1〜第Nのスレーブデバイスに設定されている論理アドレスの重複を検出する論理アドレス重複検出手段とを備え、
前記第1〜第Nのスレーブデバイスは、
前記スレーブデバイスの最大接続可能数を最大値として順番に定められるデバイス番号と自己のアドレス情報として設定される論理アドレスと通信アドレスとを機器情報として記憶する機器情報記憶手段と、
前記マスタデバイスからのアドレス情報の通知要求を受けて、前記スレーブ情報として送られてくる前記スレーブデバイスの最大接続可能数と前記アドレス情報の通知周期と前記機器情報として記憶されているデバイス番号とに基づいて、自己のアドレス情報を通知するタイミングを算出するアドレス情報通知タイミング算出手段と、
前記アドレス情報通知タイミング算出手段によって算出された通知タイミングに従って前記アドレス情報の通知周期毎に前記機器情報として記憶されている自己のアドレス情報を前記マスタデバイスに通知するアドレス情報通知手段とを備える
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載された無線通信システムにおいて、
前記マスタデバイスの論理アドレス重複検出手段は、
前記第1〜第Nのスレーブデバイスからのアドレス情報を受信する毎に、アドレス情報として送られてくる論理アドレスと通信アドレスとの組み合わせを記憶して行き、この記憶に際して受信した論理アドレスと一致する論理アドレスが既に記憶されている場合、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスをチェックし、その記憶されている通信アドレスと受信した通信アドレスとが一致していない場合に、受信した論理アドレスを重複していると判断する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載された無線通信システムにおいて、
前記マスタデバイスの論理アドレス重複検出手段は、
受信した論理アドレスを重複していると判断した場合、その論理アドレスと組み合わせて記憶されている通信アドレスを受信した通信アドレスに書き替える
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された無線通信システムにおいて、
前記マスタデバイスの論理アドレス重複検出手段は、
受信した論理アドレスを重複していると判断した場合、その論理アドレスを外部に出力する
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70132(P2012−70132A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211834(P2010−211834)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】