説明

無線通信システム

【課題】 特に高速で移動する移動局と基地局の通信においても、他のシステムからの干渉を回避でき、かつ、他のシステムへの干渉も最小化でき、信頼性を向上させることができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】 基地局102が、キャリアセンスを行い、当該キャリアセンスにより干渉の小さいチャネルを選択し、選択したチャネルを用いてユニークワードを複数回送信し、移動局101が、基地局102から複数回送信されたユニークワードについてチャネルサーチを行い、当該チャネルサーチにより使用されるチャネルを判定し、判定したチャネルから求められる次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行い、当該キャリアセンスの結果を回線品質情報として基地局102に送信する無線通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に、移動局と基地局が高品質な無線通信を行うために、他のシステムからの干渉の影響が少ない無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
近年、ライセンス不要で利用可能な帯域である2.4GHz帯を用いた無線通信システムの利用が拡大している。2.4GHz帯はISM(Industry-Science-Medical)帯と呼ばれ、IEEE802.11系の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)などといった無線規格に準拠するシステムの他、様々な産業機器、医療機器にも用いられている。
【0003】
この様な、利用自由度の高いISM帯では、自らのシステム以外からの干渉を受けることを許容しなくてはならないばかりか、他システムに与える干渉量を最小限にすることが求められる。
しかしながら、信号システムや監視システムなどといったシステムは常時通信が行われており、通信の切断は社会的にも大きなインパクトを与える恐れがある。このため、ISM帯であっても、通信が途切れることなく、高信頼な通信が行われなくてはならない。
【0004】
ところで、列車信号システムのひとつとして、列車に搭載された移動局と地上に設置された基地局の通信によって列車の制御が行われる、CBTC(Communication-Based Train Control)システムがある。
CBTCシステムのように移動局が高速に移動する場合、受ける干渉の状態も時々刻々と高速に変化しており、ISM帯での高信頼な通信を実現することはさらに困難なものとなる。
【0005】
ISM帯における、干渉回避策としては、周波数ホッピングが広く用いられている。特に、Bluetooth(登録商標)などでは、適応周波数ホッピングにより、干渉の多い周波数チャネルの使用を積極的に回避する方式が用いられている。
一般に、適応周波数ホッピングでは、通信品質のログを取得し、その情報を送受信の端末で交換し、その情報を基にホッピングパターンを交換することによってホッピングパターンを決定する。
【0006】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2009−225135号公報「列車無線通信システムにおける周波数チャネルの選択方法および車上無線端末」(株式会社日立製作所)[特許文献1]、特開2009−171078号公報「無線通信システム、基地局及び周波数チャネル選択方法」(株式会社日立製作所)[特許文献2]がある。
【0007】
特許文献1には、列車に搭載される前方端末と後方端末がチャネルサーチ期間に送信周波数チャネルを探索し、受信強度が1番目と2番目の周波数チャネルの双方が検出される領域を走行中に、互いに異なる周波数チャネルを選択することによって異なる基地局経由で下り電文を受信することが示されている。
【0008】
特許文献2には、隣接基地局との干渉が発生しないように予め周波数チャネルを設定してある第1と第2のホッピングテーブルを各基地局は持ち、干渉信号の状況に応じて使用するホッピングテーブルを選択することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−225135号公報
【特許文献2】特開2009−171078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の周波数ホッピング方式を用いた無線通信システムでは、全てのチャネルに関するログの取得と情報の交換、さらには決定したホッピングパターンの交換が必要なため、回線品質情報の取得から通信開始までに時間がかかり、この間、通信が行えないことから、CBTCシステムや監視システムには不向きであるという問題点があった。
【0011】
また、従来の無線通信システムでは、高速移動する移動局との通信では、時間と共に高速に変化する干渉に対して、追従できず、十分な通信品質を得られない可能性があるという問題点があった。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、他のシステムへの干渉を考慮しながらも、常時無線通信を行うCBTCなどの列車信号システムや監視システムに適用し、更に高速に移動する移動局との通信で十分な品質を得ることができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、周波数ホッピング方式を用いて通信を行う無線通信システムであって、スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行い、当該キャリアセンスにより干渉の小さいチャネルを選択し、選択したチャネルを用いてユニークワードを複数回送信する基地局と、基地局から複数回送信されたユニークワードについてチャネルサーチを行い、当該チャネルサーチにより使用されるチャネルを判定し、判定したチャネルから求められる次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行い、当該キャリアセンスの結果を回線品質情報として基地局に送信する移動局とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局が、スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行うと共に、移動局から送信された回線品質情報を参照して、キャリアセンスの結果と回線品質情報に基づいて干渉の小さいチャネルを選択することを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局が、スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを組とする周波数ホッピングパターンを記憶部に記憶していることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、移動局が、スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを組とする周波数ホッピングパターンを記憶部に記憶しており、判定したチャネルと当該周波数ホッピングパターンから次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを特定することを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局が、選択したチャネルを用いてユニークワードを複数回送信した後に、次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルの情報を含む下り電文を送信し、移動局が、下り電文を受信し、当該下り電文から次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基地局が、キャリアセンスを行い、当該キャリアセンスにより干渉の小さいチャネルを選択し、選択したチャネルを用いてユニークワードを複数回送信し、移動局が、基地局から複数回送信されたユニークワードについてチャネルサーチを行い、当該チャネルサーチにより使用されるチャネルを判定し、判定したチャネルから求められる次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行い、当該キャリアセンスの結果を回線品質情報として基地局に送信する無線通信システムとしているので、他のシステムからの干渉を回避でき、かつ、他のシステムへの干渉も最小化でき、信頼性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略図である。
【図2】本システムの通信装置の構成ブロック図である。
【図3】チャネルの割り当てを示す概略図である。
【図4】本システムの通信動作の説明図である。
【図5】ホッピングパターン例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、各位相に複数の周波数利用候補を有する周波数ホッピングパターンを用い、通信が双方向に常時周期的に行われるという特徴に鑑みて、移動局は基地局からの電文を受信後、次の利用周波数チャネル候補のみをキャリアセンスし、得られた干渉電力情報を、基地局への電文と共に送信し、それを受信した基地局は、次の利用周波数候補のみをキャリアセンスし、移動局から受信した干渉電力情報と合わせ、最も干渉電力が小さい周波数チャネルを選択し、そのチャネルを使用して次の送信を行うものであり、特に高速で移動する移動局と基地局の通信においても、他のシステムからの干渉を回避でき、かつ、他のシステムへの干渉も最小化でき、信頼性を向上させることができる。
【0021】
本発明の実施の形態に係る無線通信システムにおける動作の概要を説明すると、基地局は、移動局への電文を送信する前に、選択した周波数チャネルを用いてユニークワードを複数回送信する。
移動局は、チャネルサーチ期間の間、周波数チャネルを切り替えながら、ユニークワードの検出を試みており、最も受信電力の大きいユニークワードを、基地局が使用する周波数チャネルとして認識する。
【0022】
基地局から移動局へ電文が送られると、移動局は認識した周波数チャネルで受信を行い、その後、周波数ホッピングパターンを参照し、次に基地局が使用する可能性のある周波数チャネルを認識し、認識した全ての周波数チャネルについてキャリアセンスを行う。
そして、キャリアセンスによって得られた、各周波数チャネルの干渉電力情報と基地局への電文を下り電文受信時と同じ周波数チャネルで送信する。
【0023】
移動局からの電文を受信した基地局は、周波数ホッピングパターンを参照し、次に使用する周波数チャネルの候補を認識し、全ての候補についてキャリアセンスを行う。そして、移動局からの干渉電力情報と基地局の干渉電力情報から、最も良い回線品質の周波数チャネルであると判断し、次の送信に用いる周波数チャネルとして選択する。
そして、以上のプロセスが繰り返し行われることで、高信頼な通信を実現する。
【0024】
以上の無線通信システムは、全てのチャネルではなく必要最小限のキャリアセンスと、ログではない通信直前の干渉電力情報を交換することと、使用する周波数チャネルやホッピングパターンの交換が不要であることが特徴であり、これらの特徴により、高速で移動する移動局との通信も高信頼に行える。
また、移動局は、ユニークワードの検出によってチャネルの認識を行うため、仮に位相情報やホッピングテーブルの情報が何らかの理由で失われたとしても、チャネルサーチによって使用するチャネルを正しく認識し、通信を正常に行うことができることも特徴である。この点も高信頼通信の実現に寄与する。
【0025】
尚、本発明の実施の形態では、ISM帯である2.4GHz帯において特に好適な無線通信システムであるが、この他のISM帯やISM帯以外の周波数帯について用いても有効である。
【0026】
[無線通信システム:図1]
本発明の実施の形態に係る無線通信システムについて図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの概略図である。
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本システム)は、図1に示すように、移動局(MT:Mobile Terminal)101と、基地局(AP:Access Point)102と、基地局と有線でつながれたネットワーク103によって構成されている。
ネットワーク103は、あるシステムに対して閉じたネットワークであっても、システム外部とのつながりを持つ、開かれたネットワークであっても良い。
例えば、列車信号システムの構成法のひとつとしては、基地局や移動局や列車制御システムなどを閉じたネットワークで形成する方法がある。
そして、本システムにおいて特徴的な通信は、移動局101と基地局102との間で為される。
【0027】
[通信装置:図2]
本システムにおいて、移動局及び基地局を構成する通信装置について図2を参照しながら説明する。図2は、本システムの通信装置の構成ブロック図である。
通信装置(移動局及び基地局)は、図2に示すように、アンテナ201と、無線受信部202と、無線送信部203と、サーキュレータ204と、主制御部205と、ベースバンド(BB:Base Band)信号処理部206と、MAC(Medium Access Control)処理部207と、ホッピングパターン記憶部208と、位相記憶部209と、回線品質記憶部210と、周波数チャネル選択/記憶部211と、受信電力検出部212と、インターフェース部213とを備えている。
【0028】
[通信装置の各部]
次に、通信装置の各部について説明する。
アンテナ201は、無線信号の入出力を行う。
サーキュレータ204は、アンテナ201で受信した無線信号を無線受信部202に出力する機能と、無線送信部203で生成された送信信号をアンテナ201に出力する機能を備える。
【0029】
無線受信部202は、サーキュレータ204から入力された信号について無線周波数帯からベースバンド信号への周波数変換などの受信処理を行い、受信処理された受信信号を主制御部部205に出力する。
無線送信部203は、主制御部部205から入力された送信信号についてベースバンド信号から各無線周波数チャネルへの周波数変換などの送信処理を行い、サーキュレータ204に出力する。
【0030】
主制御部205は、無線機全体の制御を行う。
具体的には、主制御部部205は、無線受信部202から入力された受信信号をBB信号処理部206〜インターフェース部213に対して入出力の制御を行い、送信データについて上記各部からの入出力を制御し、無線送信部203に送信信号を出力する。
【0031】
ベースバンド(BB)信号処理部206は、送信信号に対してパイロット信号の付加や誤り訂正符号化処理を行ってベースバンド変調を行うと共に、受信信号に対してベースバンド復調を行って誤り訂正復号処理などを行う。
【0032】
MAC処理部207は、使用する周波数チャネルや送受信のタイミング制御を行い、パケットに無線機の識別IDの付加を行い、送信元無線機の認識などを行う。
ホッピングパターン記憶部208は、ホッピングパターンを記憶する。
位相記憶部209は、次回の送信に用いる位相を記憶する。
回線品質記憶部210は、各周波数チャネルの回線品質の履歴を記憶する。
【0033】
周波数チャネル選択/記憶部211は、使用する周波数チャネルを選択し記憶する。
受信電力検出部212は、干渉信号電力や所望信号電力の検出などを行うものであり、特に、次のスーパーフレームで使用する候補のチャネルについてキャリアセンスを行い、キャリアセンスの結果を主制御部205に出力する。
インターフェース部213は、無線通信すべきデータの入出力処理を行う。
【0034】
[基地局の主制御部の動作]
基地局の主制御部205は、位相記憶部209とホッピングパターン記憶部208から次の送信の位相と周波数チャネルの候補を取得し、候補の周波数チャネルについて受信電力検出部212でキャリアセンスし、干渉電力を検出し、検出した干渉電力の値を回線品質記憶部210に記憶する。
【0035】
基地局の主制御部205は、周波数チャネル選択/記憶部211に回線品質記憶部210を参照させ、干渉電力の値が小さい周波数チャネルを選択させ、記憶させる。
更に、基地局の主制御部205は、MAC処理部207とBB信号処理部206で電文又はユニークワードの信号を生成させ、周波数チャネル選択/記憶部211に記憶されている周波数チャネルを用いて、生成させた信号を無線送信部203にアンテナ201から送信を行わせる。
【0036】
[移動局の主制御部の動作]
移動局の主制御部205は、受信電力検出部212を用いて、16チャネル全てに対してチャネルサーチを行い、受信電力が最も高い周波数チャネルを判断し、周波数選択/記憶部211にその周波数チャネルを選択させ、記憶させる。
移動局の主制御部205は、周波数選択/記憶部211に記憶された周波数チャネルを用いて、BB信号処理部206とMAC処理部207で下り電文の受信処理を行う。
【0037】
更に、移動局の主制御部205は、位相記憶部209とホッピングパターン記憶部208を参照して、次のスーパーフレームで使用可能な候補の周波数チャネルを認識し、その周波数チャネルについて受信電力検出部212にキャリアセンスを行わせる。
また、移動局の主制御部205は、キャリアセンスした結果の回線品質情報を回線品質記憶部210に記憶させ、BB信号処理部206、MAC処理部207を用いて、回線品質記憶部209に記憶している回線品質情報と上り電文を送信信号として生成させ、周波数チャネル選択/記憶部211に記憶されている周波数チャネルで無線送信部203に送信処理させる。
【0038】
[チャネルの割り当て:図3]
次に、本システムにおけるチャネルの割り当てについて図3を参照しながら説明する。図3は、チャネルの割り当てを示す概略図である。
本実施例では、図3に示すように、2.400GHz〜2.480GHzの範囲を16チャネルに分割し、1周波数チャネルあたり5MHzの帯域を割当て、周波数の低いチャネルから昇順にCH1、CH2、CH3、CH4、CH5、CH6、CH7、CH8、CH9、CH10、CH11、CH12、CH13、CH14、CH15、CH16とチャネル番号を割当てることとする。
【0039】
[通信動作:図4]
次に、本システムにおける通信動作について図4を参照しながら説明する。図4は、本システムの通信動作の説明図である。
特に、図4では移動局101、基地局102の通信の動作例を示す。
図4に示すように、移動局101と基地局102との間の通信は、時分割によって行われており、スーパーフレームをひとつの単位とする。
【0040】
基地局(AP)102に関するスーパーフレームの構成は、キャリアセンス1と、チャネル選択、ユニークワード(UW)送信と、下り電文の送信と、上り電文と移動局の干渉電力情報(回線品質情報)の受信のための各期間で構成される。
ここで、UW送信は、選択されたチャネル(図4ではCH1)を用いて、移動局側で全てのチャネル(CH1〜CH16)についてUW検出を行うチャネルサーチに対応して複数回送信される。
また、下り電文送信、上り電文受信も選択されたチャネル(CH1)を用いて行う。
【0041】
一方、移動局(MT)101に関するスーパーフレームの構成は、チャネルサーチ(UW検出)と、下り電文受信と、キャリアセンス2と、上り電文と自身の干渉電力情報の送信のための各期間で構成される。
移動局でCH1〜CH16についてチャネルサーチを行うことで、基地局から選択されたチャネル(CH1)で送信されたUWを検出し、UWを検出したチャネル(CH1)を使用チャネルとして、下り電文の受信及び上り電文の送信を行う。
【0042】
また、キャリアセンス2は、次のスーパーフレームで使用する可能性があるチャネルについてキャリアをセンスして、センスしたチャネルに対する回線品質情報を取得する。
具体的には、次のスーパーフレームで使用する可能性があるチャネルが予め定められており(図4では「CH5,CH9」と決まっている時)、そのチャネルについてキャリアセンスを行う。
【0043】
更に、基地局102において、次のスーパーフレーム内で、当該フレームで予め定められた使用可能なチャネル(CH5,CH9)についてキャリアセンスを行い、移動局101から受信した回線品質情報(移動局側の「CH5,CH9」の品質情報)と基地局102でキャリアセンスした回線品質情報(基地局側の「CH5,CH9」の品質情報)とから判断してチャネル選択を行う。この場合、CH5,CH9のいずれかが選択される。
【0044】
次のスーパーフレームで使用可能なチャネルは、以下の図5のホッピングパターンが予め定められており、次のスーパーフレームで使用可能なチャネルのテーブルを基地局102及び移動局101の各々の記憶部で記憶しておき、キャリアセンスの際に参照され、該当するチャネルについてのみキャリアセンスが為される。
【0045】
基地局と移動局が、次のスーパーフレームで使用可能なチャネルのテーブルを保持する代わりに、基地局だけでテーブルを保持し、移動局には下り電文の内容で、次のスーパーフレームで使用可能なチャネルを通知するようにしてもよい。
また、基地局及び移動局でテーブルを保持せず、基地局の上位局から次のスーパーフレームで使用可能なチャネルの通知を受け、更に基地局が移動局にそのチャネルを下り電文の内容で通知するようにしてもよい。
【0046】
[ホッピングパターン:図5]
次に、本システムにおけるホッピングパターンについて図5を参照しながら説明する。図5は、ホッピングパターン例を示す図である。図5のホッピングパターンは位相との関係で定められている。
本システムでは、図5のホッピングパターンを用いて通信を行っており、位相記憶部209に記憶されている位相は「1」であると仮定し、位相はスーパーフレームごとに一つずつ進めることとする。
【0047】
具体的には、位相「1」に選択可能なチャネル(CH1,CH13)が、位相「2」に選択可能なチャネル(CH5,CH9)が、位相「3」に選択可能なチャネル(CH2,CH14)が、位相「4」に選択可能なチャネル(CH6,CH10)が、位相「5」に選択可能なチャネル(CH3,CH15)が、位相「6」に選択可能なチャネル(CH7,CH11)が、位相「7」に選択可能なチャネル(CH4,CH16)が、位相「8」に選択可能なチャネル(CH8,CH12)が設定されている。
【0048】
[具体的な動作処理]
まず初めに、基地局の主制御部205は、位相記憶部209とホッピングパターン記憶部208を参照し、次回の送信の位相と周波数チャネルの候補を取得する。
具体的には、位相記憶部209から次回の送信が位相「1」であることを認識し、ホッピングパターン記憶部208から周波数チャネルの候補が「CH1」と「CH13」であることを認識する。
【0049】
この情報を基に、キャリアセンス1の期間、受信電力検出部212は、CH1とCH13の周波数チャネルのキャリアセンスを行い、干渉電力の検出を行う。検出した干渉電力は、回線品質情報として回線品質記憶部210に記憶される。
【0050】
続いて、主制御部205の命令により周波数チャネル選択/記憶部211が、回線品質記憶部210に記憶されている候補チャネル(CH1とCH13)の回線品質情報を参照し、干渉電力の小さいチャネルを、次回の送信に用いる周波数チャネルとして選択し記憶する。
このとき、移動局からの干渉電力に関する情報が、回線品質記憶部210に記憶されている場合には、併せて回線品質判定の情報とし、最も干渉電力が小さいチャネルを選択することとする。本実施例では、干渉電力が小さく回線品質の良いチャネルとしてCH1が選択されている。
【0051】
そして、主制御部205の命令により、MAC処理部207とBB信号処理部206で電文又はユニークワード(UW)の信号が生成される。さらに、その信号は無線送信部203にて周波数チャネル選択/記憶部211に記憶されている周波数チャネルに切り替え、アンテナ201から送信が行われる。
基地局は、まず、下り電文の送信に先立ち、選択されたCH1を用いてユニークワードを複数回送信する。
【0052】
その間、移動局はチャネルサーチ期間に受信電力検出部212を用いて、16チャネル全てに対して電力の検出を行う。全てのチャネルに対してチャネルサーチを行うのは、この時点では、移動局はどの基地局と通信するのか、また、各基地局の位相を認識していないためである。
そして、周波数選択/記憶部211は、最も高い受信電力を検出した周波数チャネルが基地局の使用する周波数チャネルであると判定し、その周波数チャネルを記憶する。
また同時に、主制御部205は、ホッピングパターン記憶部208を参照することで、現在の位相を認識し、その位相を位相記憶部209に保存する。そして、主制御部205は、下り電文の受信待ち状態として待機する。
【0053】
基地局からのユニークワード送信後に、基地局の無線送信部203は、主制御部205の命令により、選択および記憶した周波数チャネルに切り替え、アンテナ201から下り電文を送信し、移動局は、主制御部205の命令に従って受信を行う。
【0054】
続いて、移動局は、周囲の干渉電力を調査するため、キャリアセンスを行う。
移動局の主制御部205は、位相記憶部209とホッピングパターン記憶部208を参照することにより現在の位相が「1」であることを認識し、基地局が次のスーパーフレームにおいて送信に用いる、位相「2」に対応する周波数チャネル(CH5,CH9)を認識する。
そして、移動局の主制御部205は、認識した周波数チャネルの候補全てについて受信電力検出部212を用いてキャリアセンスを行うことで干渉電力を検出し、その結果を移動局の回線品質記憶部209に記憶する。
【0055】
そして、移動局は主制御部205の命令により、BB信号処理部206、MAC処理部207を用いて、回線品質記憶部209に記憶している回線品質情報と上り電文を送信信号として生成し、無線送信部203にて周波数チャネル選択/記憶部211に記憶されている周波数チャネルに切り替えた後、アンテナ201を用いて送信する。
【0056】
基地局では主制御部205の命令に従い、無線受信部202とBB信号処理部207とMAC処理部208によって上り電文と干渉電力情報の受信を行う。
移動局から送信された干渉電力情報は、回線品質記憶部210に記憶され、位相記憶部210の値は次の位相である「2」に更新される。
【0057】
そして、基地局は位相「2」の周波数チャネル候補であるCH5とCH9のキャリアセンスを受信電力検出部212で行い、先ほど移動局から得られた回線品質情報を基にチャネル選択し、選択したチャネルを用いてユニークワード及び下り電文を送信する。
【0058】
最も良い回線品質の周波数チャネルの選択基準としては、干渉電力に対するパケット誤り率の表を基に、下りと上りの往復でのパケット誤り率が最も小さくなるようなチャネルを選択しても良い。
また、最大限許容できる干渉電力の閾値を設けて、閾値以下となった干渉電力のチャネルの中からランダムに選択しても良い。
また、基地局と移動局で検出したそれぞれの周波数チャネルにおける干渉電力の最大値を各周波数チャネルの干渉電力とし、最小の干渉電力である周波数チャネルを選択しても良い。
【0059】
尚、移動局でのチャネルサーチにおいて、上記の例では、CH1〜CH16の全てのチャネルについてUWを検出するためのサーチを行っているが、そのスーパーフレームで使用される候補のチャネルを先にサーチするようにした方がUWの検出を早くできる。
また、当該スーパーフレームで使用される候補のチャネルを先にサーチし、UWの検出に対してしきい値以上であれば、そのチャネルを使用することとして、その後のチャネルサーチを止めるようにしてもよい。
【0060】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、キャリアセンスを16チャネル全てではなく、周波数ホッピングパターンに従う複数の候補のチャネルのみとすることで、キャリアセンス時間と回線品質の交換に要するオーバーヘッドを最小限にすることができ、移動局(移動端末)が高速に移動するような場合でも他システムからの干渉が最も少ない周波数チャネルを優先的に用いることが可能となり、信頼性の高い通信を行うことができる効果がある。
また、周波数ホッピングパターンによって使用する周波数候補を限定しているため、多くのチャネルを使用することができ、これによって、他システムへの干渉も少なくすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、他のシステムへの干渉を考慮しながらも、常時無線通信を行うCBTCなどの列車信号システムや監視システムに適用し、更に高速に移動する移動局との通信で十分な品質を得ることができる無線通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0062】
101...移動局、 102...基地局、 103...バックボーンネットワーク、 201...アンテナ、 202...無線受信部、 203...無線送信部、 204...サーキュレータ、205...主制御部、 206...BB信号処理部、 207...MAC処理部、 208...ホッピングパターン記憶部、 209...位相記憶部、 210...回線品質記憶部、 211...周波数チャネル選択/記憶部、 212...受信電力検出部、 213...インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数ホッピング方式を用いて通信を行う無線通信システムであって、
スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行い、当該キャリアセンスにより干渉の小さいチャネルを選択し、選択したチャネルを用いてユニークワードを複数回送信する基地局と、
前記基地局から複数回送信されたユニークワードについてチャネルサーチを行い、当該チャネルサーチにより使用されるチャネルを判定し、判定したチャネルから求められる次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行い、当該キャリアセンスの結果を回線品質情報として前記基地局に送信する移動局とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
基地局は、スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルについてキャリアセンスを行うと共に、移動局から送信された回線品質情報を参照して、前記キャリアセンスの結果と前記回線品質情報に基づいて干渉の小さいチャネルを選択することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
基地局は、スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを組とする周波数ホッピングパターンを記憶部に記憶していることを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
移動局は、スーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを組とする周波数ホッピングパターンを記憶部に記憶しており、判定したチャネルと当該周波数ホッピングパターンから次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを特定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の無線通信システム。
【請求項5】
基地局は、選択したチャネルを用いてユニークワードを複数回送信した後に、次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルの情報を含む下り電文を送信し、
移動局は、前記下り電文を受信し、当該下り電文から次のスーパーフレームで使用可能な複数のチャネルを特定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−66035(P2013−66035A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203125(P2011−203125)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】