説明

無線通信支援システム及び移動端末装置

【課題】 複数の無線通信システムの中で移動端末装置の接続先を切り替える際に、移動端末装置に通知する利用可能な無線通信システムの情報の精度向上を図る。
【解決手段】 複数の無線通信システムに接続可能な移動端末装置10から位置情報及び接続中の無線通信システムの情報を受信し、受信した位置情報及び無線通信システム情報を記憶するLAS−DB71と、前記受信した位置情報の位置周辺で登録済みの無線通信システムをLAS−DB71から検索し、発見した無線通信システムの情報を記載した利用可能システムリストを作成し、作成した利用可能システムリストを移動端末装置10へ返信する検索装置72とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信システムに接続可能な移動端末装置に対して、利用可能な無線通信システムを通知する無線通信支援システム及びその移動端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の無線通信システム、例えばセルラー、PHS(登録商標)(Personal Handyphone System)、無線LANなどと接続可能な通信機能を有する移動端末装置(MN;Mobile Node)が実現されている。そして、そのMNがそれら複数の無線通信システム間でハンドオーバすることで、複数の無線通信システムに渡って一つの通信を継続しながら移動可能とするための検討が行われている。
【0003】
例えば、非特許文献1及び2に記載の技術(従来技術1)では、複数の無線通信システムに共通のコアネットワークを設け、このコアネットワーク内に各無線通信システムの基地局(BS;Base Station)の位置を管理する機能を有するリソースマネージャ(RM;Resource Manager)を配置する。MNは、通信開始時に、自局の位置情報をRMに送信する。RMは、MNから受信した位置情報と管理しているBSの位置情報とに基づいて、BSの送信出力に基づく伝播パターンの推定を行い、当該MNが利用可能な無線通信システムを判定し、当該MNの位置で利用可能な無線通信システムを記載したリストをMNへ返信する。これにより、MNは、当該リスト中の無線通信システムの中から利用したい無線通信システムを選択して、通信を開始することができる。
【0004】
また、非特許文献3に記載の技術(従来技術2)では、MNは複数の無線デバイスを常時起動し、各無線通信システムの電波状況を常時監視することで、その時々で最適な無線通信システムを選択している。
【非特許文献1】井上真杉、マハムド・カレド、村上誉、長谷川幹雄,“MIRAI実証システムの開発−(1)概要−”,電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,2002年9月
【非特許文献2】村上誉、長谷川幹雄、マハムド・カレド、井上真杉,“MIRAI実証システムの開発−(1)リソースマネージャとシグナリング手順−”,電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,2002年9月
【非特許文献3】Qian Zhang、 Chuanxiong Guo、 Zihua Guo, Wenwu Zhu,“Efficient mobility management for vertical handoff between WWAN and WLAN”,IEEE Communications Magazine, Nov. 2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術1では、BSの送信出力に基づく伝播パターンの推定結果からMNが利用可能な無線通信システムを判定しているが、該推定された伝播エリアはBSを中心とした円で形成される。しかし、実際には、建物などの障害物の影響(シャドーイング、フェージングなど)により、伝播エリアは必ずしも円とはならず、複雑な形で形成される。したがって、MNがRMから受け取ったリスト中の利用可能な無線通信システムの中には、実際には接続できないものが含まれている可能性があり、利用可能な無線通信システムの情報の精度が悪い。さらに、BSの位置情報を使用するので、BSの設置・撤去・故障などに応じてデータベースを即時に更新しなければならず、その管理コストが大きい。また、全てのBSは位置情報を取得する手段を保持し、かつ自身の位置情報をRMに登録しなければならない。これは、異なる管理者が管理する無線通信システム間では実現が難しい。
【0006】
また、上述した従来技術2では、MNは、常時、複数の無線デバイスを起動して受信環境を監視するので、消費電力が増大して電池寿命が短くなるというMNにとっては大きな問題が生じる。また、一つの無線デバイスを用いてソフトウェアにより複数の無線通信システムに対応可能なソフトウェア無線を具備するMNでは、同時に一つの無線通信システムにしか接続することができないので、適用不可である。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、複数の無線通信システムの中で移動端末装置の接続先を切り替える際に、移動端末装置に通知する利用可能な無線通信システムの情報の精度向上を図ることができる無線通信支援システムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、本発明の無線通信支援システムに適用可能な移動端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線通信支援システムは、複数の無線通信システムに接続可能な移動端末装置に対して、利用可能な無線通信システムを通知する無線通信支援システムであって、前記移動端末装置から位置情報及び接続中の無線通信システムの情報を受信し、受信した位置情報及び無線通信システム情報を記憶するデータベース装置と、前記受信した位置情報の位置周辺で登録済みの無線通信システムを前記データベース装置から検索し、発見した無線通信システムの情報を記載した利用可能システムリストを作成し、作成した利用可能システムリストを前記移動端末装置へ返信する検索装置とを備えたことを特徴としている。
【0010】
本発明に係る無線通信支援システムにおいては、前記データベース装置は、前記移動端末装置から前記位置情報及び無線通信システム情報と共に受信状態レベル情報を受信し、受信した受信状態レベル情報を前記位置情報及び無線通信システム情報と共に記憶し、前記検索装置は、前記発見した無線通信システムの情報と共に、当該無線通信システムに係る受信状態レベル情報を前記利用可能システムリストに含めることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る無線通信支援システムにおいては、前記データベース装置は、前記受信した受信状態レベル情報を加重平均し、前記受信状態レベル情報の加重平均値を記憶することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る無線通信支援システムにおいては、既存の通信プロトコルのメッセージを前記移動端末装置との間で送受するプロトコル装置を備え、前記プロトコル装置は、前記移動端末装置から受信した前記メッセージ内に前記位置情報及び無線通信システム情報が含まれている場合、当該メッセージを前記データベース装置に転送し、前記検索装置は、前記メッセージ内に前記利用可能システムリストを含めて当該メッセージを前記プロトコル装置に送信し、前記プロトコル装置は、前記検索装置から受信したメッセージ内に前記利用可能システムリストが含まれている場合、当該メッセージを前記移動端末装置に転送することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る移動端末装置は、複数の無線通信システムに接続可能な移動端末装置であって、位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記取得した位置情報と接続中の無線通信システムの情報とを登録先へ送信する送信手段と、利用可能な無線通信システムの情報が記載された利用可能システムリストを受信する受信手段と、前記受信した利用可能システムリストを保存する記憶手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
本発明に係る移動端末装置においては、前記保存された利用可能システムリスト中の無線通信システムの情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る移動端末装置においては、前記保存された利用可能システムリスト中の無線通信システムの情報に基づき、所定の優先順位に従って、接続を切り替える先の無線通信システムを選択する制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る移動端末装置においては、接続中の無線通信システムに係る受信状態レベル情報を測定する測定手段を備え、前記送信手段は、前記位置情報及び無線通信システム情報と共に、前記測定された受信状態レベル情報を前記登録先へ送信することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る移動端末装置においては、前記送信手段は、既存の通信プロトコルのメッセージ内に、前記位置情報及び無線通信システム情報を含めて送信し、前記受信手段は、前記利用可能システムリストを含む前記メーセージを受信することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る移動端末装置においては、前記取得した位置情報に基づいて移動速度を算出する移動速度算出手段を備え、前記送信手段は、前記算出した移動速度に応じた頻度で前記登録先に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動端末装置の位置情報及び当該位置で接続中の無線通信システムの情報によってデータベース装置で管理される位置情報及び当該位置で接続可能であった無線通信システムの情報が随時更新されるので、データベース装置には各位置における実際の無線環境に即した利用可能な無線通信システムが登録される。そして、このデータベース装置の記憶情報に基づいて移動端末装置の位置に応じた利用可能な無線通信システムのリストが作成されて移動端末装置に提供されるので、複数の無線通信システムの中で移動端末装置の接続先を切り替える際に、移動端末装置に通知する利用可能な無線通信システムの情報の精度向上を図ることができる。これにより、移動端末装置は円滑にシステム間ハンドオーバを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の各実施形態について順次説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信支援システムの構成を示すブロック図である。図1において、移動端末装置(MN;Mobile Node)10は、複数の無線通信システム(WCS−A,B,C)30,40,50と接続可能な通信機能を有する。
【0021】
無線通信システム(WCS−A)30は、広範なサービスエリアを有している、例えばセルラーシステムである。無線通信システム(WCS−B,C)40,50は、WCS−A_30より小さなサービスエリアを有している。WCS−B_40は、例えばPHS(登録商標)や無線MAN(Metropolitan Area Network)である。WCS−C_50は、例えば無線LANである。そして、図1に示されるように、WCS−A_30に対して、WCS−B_40及びWCS−C_50がオーバーレイされている。
【0022】
WCS−A_30は基地局(BS;Base Station)31を備える。WCS−B_40はBS_41を備える。WCS−C_50はBS_51を備える。各BS_31,41,51はコアネットワーク70に接続されている。
【0023】
コアネットワーク70は、各WCS−A,B,C_30,40,50に共通のネットワークである。コアネットワーク70には、LAS−DB(Location information and Applied System information Data Base)71及び検索装置72が設けられている。検索装置72は、LAS−DB71にアクセスしてデータ検索を行うことが可能である。
【0024】
MN10は、WCS−A,B,C_30,40,50を介してコアネットワーク70に接続し、LAS−DB71及び検索装置72にアクセス可能である。
【0025】
なお、WCS−A,B,C_30,40,50は、それぞれ異なる通信事業者のシステムであってもよい。また、LAS−DB71及び検索装置72は、WCS−A,B,C_30,40,50のいずれかのシステム内に設けられてもよい。この場合、各WCS−A,B,C_30,40,50間は、インターネット等の公衆網、或いは専用線で接続し、いずれのWCSからでもLAS−DB71及び検索装置72にアクセスできるようにする。
【0026】
図2は、図1に示すMN10の構成を示すブロック図である。
図2において、無線部11はアンテナを介してBS31,41,51との間で無線信号を送受信し、音声通話又はデータ通信を行う。無線環境測定部12は受信電波強度等の無線環境を測定する。制御部13はMN10の各部を制御すると共に、接続先の無線通信システムを切り替えるための制御処理などを行う。記憶部14は、制御部13からアクセスされ、各種データを記憶する。操作部15は、テンキーや各種ファンクションキーなどの入力デバイスを有し、入力データを制御部13に出力する。表示部16は、液晶パネル等の表示デバイスを有し、制御部13から入力される表示データを表示する。マイク17は、通話時の音声入力を行う。スピーカ18は、通話時の音声出力を行う。GPS(Global Positioning System)部19は、人工衛星からの送信電波を検出してMN10の現在位置を示す位置情報を得る。
【0027】
制御部13は、定期的に、GPS部19により取得した位置情報と、現在接続中の無線通信システムの情報(識別子等)をLAS−DB71に通知する。
【0028】
図3は、図1に示すLAS−DB71に備わる管理テーブル101の構成例を示す図である。
管理テーブル101には、MN10から通知される位置情報および無線通信システム情報(識別子等)が登録される。図3において、管理テーブル101は、位置情報(緯度、経度、高度)ごとに、当該位置でMN10が接続した無線通信システムの情報を記憶する個別テーブルを有する。個別テーブルには無線通信システム別のタイマーが設けられる。各個別テーブルの新規登録時にはタイマーがセットされ起動される。そして、タイムアウトした個別テーブルは削除される。一方、タイムアウト前に、登録済みの位置情報に係る登録済みの無線通信システム情報を受信した場合、該当する個別テーブルのタイマーはリセット後に再起動される。また、既存の個別テーブルに、受信した無線通信システム情報が未登録ならば、当該無線通信システム情報が追加される。タイマーの初期値は通信事業者が予め設定する。
【0029】
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係る動作を説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係るシーケンス図である。
図4において、MN10は、定期的に、現在の位置情報及び接続中の無線通信システムの情報をLAS−DB71に送信する(ステップS1)。LAS−DB71は、位置情報及び無線通信システム情報を受信すると、当該MN10についての認証を行い、認証が成功したならば当該受信情報に基づいて管理テーブル101を更新する(ステップS2)。次いで、検索装置72は、LAS−DB71の管理テーブル101から、該受信した位置情報の位置周辺で登録済みの無線通信システムを検索し、発見した無線通信システムの情報を記載した利用可能システムリストを作成する(ステップS3)。これにより、利用可能システムリストには、位置情報及び無線通信システム情報を送信したMN10の位置周辺で利用可能な無線通信システムの情報が記載されることになる。次いで、検索装置72は、作成した利用可能システムリストを当該MN10に返信する(ステップS4)。
【0030】
次いで、MN10は、受信した利用可能システムリストを記憶部14に保存し、当該利用可能システムリスト中の無線通信システム情報を表示部16に表示する。これにより、MN10の使用者は、表示された利用可能な無線通信システムの中から、所望の無線通信システムを選択して切替先を指示することができる。この指示を受けると、MN10は、指示された無線通信システムにハンドオーバを行う(ステップS5)。
【0031】
上述した第1の実施形態によれば、MN10の位置情報及び当該位置で接続中の無線通信システムの情報によってLAS−DB71の管理テーブル101が随時更新されるので、管理テーブル101には各位置における実際の無線環境に即した利用可能な無線通信システムが登録される。そして、管理テーブル101に基づいてMN10の位置に応じた利用可能な無線通信システムのリストを作成し、MN10に該リストを提供するので、複数の無線通信システムの中でMN10の接続先を切り替える際に、MN10に通知する利用可能な無線通信システムの情報の精度向上を図ることができる。これにより、MN10は円滑にシステム間ハンドオーバを行うことが可能となる。
【0032】
また、MN10では、接続中の無線通信システムの電波状況を監視するのみでよいので、ソフトウェア無線に対応することが可能となる。
【0033】
なお、MN10は、広範囲なサービスエリアを有するWCS−A_30をデフォルトの接続先として登録しておき、通常は該WCS−A_30に接続するようにしてもよい。この場合、MN10は各WCS−A,B,C_30,40,50ごとに各々無線デバイスを具備しているならば、通常はWCS−B,C_40,50用の無線デバイスを待機状態にする。なお、WCS−A_30用の無線デバイスは常時アクティブであってもよい。
【0034】
また、MN10は、予め設定してある優先情報に従って利用可能システムリストの中から切替先を自動的に選択するようにしてもよい。また、切り替えるか、現在の接続を維持するかを判断するようにしてもよい。上記優先情報とは、接続先の優先順位を示す情報である。例えばPHS(登録商標)と無線LANが共に利用可能な場合は無線LANを優先的に選択するなどである。
【0035】
また、MN10は各WCS−A,B,C_30,40,50ごとに各々無線デバイスを具備しているならば、接続先を切り替える前に、切替先の無線通信システムの無線デバイスをアクティブに移行し、実際に通信サービスを受けることが可能か電波強度等の無線環境のサーチを行う。この結果、実際に通信サービスを受けることが可能な場合はシステム間ハンドオーバを行う。一方、上記したLAS−DB71の管理テーブル101の更新のタイムラグにより、実際には通信サービスを受けることができない場合、MN10は当該無線通信システムが利用不可であることを当該位置情報と共にLAS−DB71に通知する。これにより、LAS−DB71の管理テーブル101が最新化される。
上記した無線環境のサーチ結果から、接続先のシステムを切り替えると判断するための電波状態等の閾値は予め設定する。
【0036】
また、図1中のMN−2_10のように、MN10が狭いサービスエリアの無線通信システムのサービスエリアから出る際には、接続中の無線通信システムの電波状況に基づき、接続先システムの切り替えを行うか否かを判断するようにしてもよい。つまり、現在接続中の無線通信システムにおける電波状態が悪くなってきた場合には、デフォルトの無線通信システム、或いは利用可能システムリスト中の無線通信システムへのハンドオーバの事前調査(無線デバイスの起動及び無線環境のサーチ等)を行い、この調査結果に基づいてハンドオーバを行う。
【0037】
また、LAS−DB71において、管理テーブル101にMN10の位置情報を登録する際、例えば緯度及び経度の「秒」を丸めて登録するようにしてもよい。また、ハッシュ値に変換して登録するようにしてもよい。これにより、管理テーブル101の検索にかかる負荷が軽減されるので、検索時間の短縮が可能となる。
【0038】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、上記第1の実施形態のLAS−DB71に、図5に示される管理テーブル201を備える。図5の管理テーブル201では、上記図3の管理テーブル101に対して、無線通信システムの受信状態のレベルの情報が追加されている。この受信状態レベル情報は、無線通信システムのある位置における例えばCIR(Carrier to Interference Ratio)などの受信強度レベルである。図5の例では、受信強度が8段階のレベル分けされている。
【0039】
MN10は、LAS−DB71に対して、定期的に、現在の位置情報と共に、接続中の無線通信システムの識別子と無線環境測定部12で測定した受信状態レベルの情報を送信する。このMN10からの情報に基づいて、LAS−DB71は管理テーブル201を更新する。この更新時には、既に管理テーブル201に登録済みの受信状態レベル値と、新たに通知された受信状態レベル値との平均をとって更新値とする。この平均値には加重平均値を用いることが好ましい。この理由は時間的により新しい値の方を大きな重み付けとすることで、実際の無線環境により即した情報となりうるためである。
【0040】
そして、検索装置72は、管理テーブル201の検索結果に基づき、利用可能な無線通信システムの識別子及び受信状態レベル情報を利用可能システムリストに記載する。
【0041】
これにより、同時に2つの無線通信システムにアクセスすることができないMN(例えばソフトウェア無線のみを実装するMN)では、システム間ハンドオーバを行う際に、利用可能システムリスト中の受信状態レベル情報と予め設定された閾値とを比較し、閾値以上の受信状態レベルの無線通信システムにハンドオーバを行うことで、通信品質を確保することが可能となる。
【0042】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、MN10が位置情報及び無線通信システム情報をLAS−DB71に通知する頻度を自己の移動速度に応じて変更する。
図2のMN10において、制御部13は、GPS部19により取得した位置情報に基づいてMN10の移動速度を算出する。そして、MN10の移動速度が時速vキロメートルであるとき、通知頻度は毎秒α*v回とする。αはサービス事業者が決定可能なパラメータである。
【0043】
これにより、高速移動中は無線環境が大きく変化する可能性が高いので、通知頻度を増して無線環境の変化に応じた情報を即時にLAS−DB71に通知し、管理テーブルに反映させることができる。一方、低速移動中には、無線環境が大きく変化する可能性が低く、LAS−DB71に対して頻繁に通知しても有効とはならない場合が生じる。このため、低速時には通知頻度を減らしてネットワーク及びLAS−DB71などにかかる負荷の低減を図る。
【0044】
なお、制御部13は、移動速度が予め設定した値以上の場合、特定の無線通信システムへ接続先を切り替えるシステム間ハンドオーバを行わないようにしてもよい。これにより、高速移動中のMN10に追従不可能な無線通信システムに接続することが防止される。
【0045】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、MN10とLAS−DB71及び検索装置72との間の情報のやり取りに、モビリティプロトコル等の既存の通信プロトコルで用いられるメッセージを利用する。
例えば、モビリティプロトコルとして“Mobile IP”が知られている。“Mobile IP”では、MN10がHA(Home Agent)に対して、BU(Binding Update)を用いて移動先のIPアドレスを通知することにより、HAでMN10のIPアドレスを管理する。また、HAはMN10からBUを受信すると、BAckをMN10へ返信する。以下、“Mobile IP”で用いられるBU及びBAckを利用する場合を例に挙げて説明する。
【0046】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る無線通信支援システムの構成を示すブロック図である。図6では、上記図1の無線通信支援システムに対して、コアネットワーク70内にHA81が設けられている。HA81とLAS−DB71及び検索装置72とは同一ドメイン内に設けられることが好ましい。
【0047】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る無線通信支援システムで使用されるBUの構成例を示す図である。図7において、BUのメッセージデータフィールドは拡張され、MN10の位置情報(緯度、経度、標高)を格納するフィールドと接続中の無線通信システムの情報を格納するフィールド(Applied System)とが設けられている。そして、BUの予約ビットの1つをG(Geographical Information)フラグとして用い、LAS−DB71宛ての情報がBU内に含まれていることを明示する。つまり、LAS−DB71に対して位置情報及び無線通信システム情報を通知する場合、MN10の制御部13は、位置情報及び無線通信システム情報をBUに格納し、且つ当該BUのGフラグをONする。
【0048】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る無線通信支援システムで使用されるBAckの構成例を示す図である。図8において、BAckのメッセージデータフィールドは拡張され、検索装置72により作成された利用可能システムリストを格納するフィールド(Available System List)が設けられている。そして、BAckの予約ビットの1つをA(Available System List)フラグとして用い、MN10宛ての情報がBAck内に含まれていることを明示する。つまり、MN10に利用可能システムリストを送信する場合、検索装置72は、利用可能システムリストをBAckに格納し、且つ当該BAckのAフラグをONする。
【0049】
次に、図9を参照して、本発明の第4の実施形態に係る動作を説明する。図9は、本発明の第4の実施形態に係るシーケンス図である。
図9において、MN10は、現在の位置情報及び接続中の無線通信システムの情報をBUに格納すると共にGフラグをONして当該BUをHA81に送信する(ステップS11)。このBUはHA81で受信される。HA81は、受信したBUのGフラグをチェックし、GフラグがONならば、当該BUをLAS−DB71へ転送する(ステップS12)。次いで、LAS−DB71は、該転送されたBUを受信すると、当該BUから位置情報及び無線通信システム情報を取得し、上記図4のステップS2と同様にして管理テーブル101を更新する(ステップS13)。
【0050】
次いで、検索装置72は、上記図4のステップS3と同様にして利用可能システムリストを作成し(ステップS14)、当該利用可能システムリストをBAckに格納すると共にAフラグをONして当該BAckをHA81に送信する(ステップS15)。このBAckはHA81で受信される。HA81は、受信したBAckのAフラグをチェックし、AフラグがONならば、当該BAckを該当するMN10へ転送する(ステップS16)。次いで、MN10は、該転送されたBAckを受信すると、受信したBAckから利用可能システムリストを取得してハンドオーバの処理を行う(ステップS17)。
【0051】
上述した第4の実施形態によれば、既存の通信プロトコルのメッセージを利用することができるので、既存のシステムに対して少ないオーバーヘッドのみで本発明に係るシステムを構築することができる。
【0052】
なお、既存の通信プロトコルとして、SIP(Session Initiation Protocol)等のシグナリング用プロトコルを用いてもよい。例えばSIPを用いる場合、ロケーションサーバ又はSIPプロキシの近傍にLAS−DB71を配置し、例えば“REGISTER”等のSIPシグナリングデータを拡張して、MN10とLAS−DB71及び検索装置72との間の情報のやり取りに利用する。
【0053】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信支援システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すMN10の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すLAS−DB71に備わる管理テーブル101の構成例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るシーケンス図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る管理テーブル201の構成例を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る無線通信支援システムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る無線通信支援システムで使用されるBUの構成例を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る無線通信支援システムで使用されるBAckの構成例を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るシーケンス図である。
【符号の説明】
【0055】
10…移動端末装置(MN)、11…無線部、12…無線環境測定部、13…制御部、14…記憶部、15…操作部、16…表示部、19…GPS(位置情報取得手段)、30,40,50…無線通信システム(WCS−A,B,C)、31,41,51…基地局(BS)、70…コアネットワーク、71…LAS−DB、72…検索装置、101,201…管理テーブル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信システムに接続可能な移動端末装置に対して、利用可能な無線通信システムを通知する無線通信支援システムであって、
前記移動端末装置から位置情報及び接続中の無線通信システムの情報を受信し、受信した位置情報及び無線通信システム情報を記憶するデータベース装置と、
前記受信した位置情報の位置周辺で登録済みの無線通信システムを前記データベース装置から検索し、発見した無線通信システムの情報を記載した利用可能システムリストを作成し、作成した利用可能システムリストを前記移動端末装置へ返信する検索装置と、
を備えたことを特徴とする無線通信支援システム。
【請求項2】
前記データベース装置は、前記移動端末装置から前記位置情報及び無線通信システム情報と共に受信状態レベル情報を受信し、受信した受信状態レベル情報を前記位置情報及び無線通信システム情報と共に記憶し、
前記検索装置は、前記発見した無線通信システムの情報と共に、当該無線通信システムに係る受信状態レベル情報を前記利用可能システムリストに含めることを特徴とする請求項1に記載の無線通信支援システム。
【請求項3】
前記データベース装置は、前記受信した受信状態レベル情報を加重平均し、前記受信状態レベル情報の加重平均値を記憶することを特徴とする請求項2に記載の無線通信支援システム。
【請求項4】
既存の通信プロトコルのメッセージを前記移動端末装置との間で送受するプロトコル装置を備え、
前記プロトコル装置は、前記移動端末装置から受信した前記メッセージ内に前記位置情報及び無線通信システム情報が含まれている場合、当該メッセージを前記データベース装置に転送し、
前記検索装置は、前記メッセージ内に前記利用可能システムリストを含めて当該メッセージを前記プロトコル装置に送信し、
前記プロトコル装置は、前記検索装置から受信したメッセージ内に前記利用可能システムリストが含まれている場合、当該メッセージを前記移動端末装置に転送することを特徴とする請求項1に記載の無線通信支援システム。
【請求項5】
複数の無線通信システムに接続可能な移動端末装置であって、
位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記取得した位置情報と接続中の無線通信システムの情報とを登録先へ送信する送信手段と、
利用可能な無線通信システムの情報が記載された利用可能システムリストを受信する受信手段と、
前記受信した利用可能システムリストを保存する記憶手段と、
を備えたことを特徴とする移動端末装置。
【請求項6】
前記保存された利用可能システムリスト中の無線通信システムの情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の移動端末装置。
【請求項7】
前記保存された利用可能システムリスト中の無線通信システムの情報に基づき、所定の優先順位に従って、接続を切り替える先の無線通信システムを選択する制御手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の移動端末装置。
【請求項8】
接続中の無線通信システムに係る受信状態レベル情報を測定する測定手段を備え、
前記送信手段は、前記位置情報及び無線通信システム情報と共に、前記測定された受信状態レベル情報を前記登録先へ送信することを特徴とする請求項5に記載の移動端末装置。
【請求項9】
前記送信手段は、既存の通信プロトコルのメッセージ内に、前記位置情報及び無線通信システム情報を含めて送信し、
前記受信手段は、前記利用可能システムリストを含む前記メーセージを受信することを特徴とする請求項5に記載の移動端末装置。
【請求項10】
前記取得した位置情報に基づいて移動速度を算出する移動速度算出手段を備え、
前記送信手段は、前記算出した移動速度に応じた頻度で前記登録先に送信することを特徴とする請求項5に記載の移動端末装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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