説明

無線通信方式、無線通信装置、方法、およびプログラム

【課題】基地局を持たない対等分散ネットワークシステムにおいて、システム全体の通信量を最大化することができる新規な無線通信方式を提供する。
【解決手段】本発明によれば、複数の無線端末が基地局を持たない対等分散ネットワークを構成する無線通信方式において、各無線端末は、前記ネットワーク内の他の各端末に送信するための指向性無線信号を生成する空間分割多重送信部と、1系統の受信部と、前記空間分割多重送信部の送信動作と前記受信部の受信動作を時分割に制御する時分割多重アクセス制御部と含み、時分割多重アクセス方式を用いて、同一時刻において、前記複数の無線端末のいずれか1つの端末が送信権を獲得して前記空間分割多重送信部から指向性無線信号を一斉に送信し、送信権を持たない他の各端末の前記受信部が該指向性無線信号を一斉に受信するように制御することを特徴とする無線通信方式が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信方式に関し、より詳細には、対等分散ネットワークに適用される非対称無線通信方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線基地局と複数の無線端末装置からなるネットワークにおいて、通信量の多い基地局から端末への下り回線には空間分割多重アクセス(SDMA)を使い、比較的通信量の少ない端末から基地局への上り回線には時分割多重アクセスを用いることを特徴とした非対称無線アクセス方式が検討されている。特許第3926669号(特許文献1)は、そのような非対称無線アクセス方式を採用する無線通信システムを開示する。
【0003】
ここで、SDMA方式の原理について、特許第4435039号(特許文献2)に基づいて概説する。図12は、特許文献2が開示する空間多重伝送用送信装置の機能ブロック図を示す。図12に示すように、空間多重伝送用送信装置700は、送信信号入力端子から入力される送信信号系列を分配する分配部710と、複数の変調部720(1〜n)と、複数の指向性形成部740(1〜n)と、複数の合成部760(1〜n)と、複数のアンテナ素子780(1〜n)を備える。変調部720は、分配部710により分配される信号に対して予め設定される変調を行い、指向性形成部740に出力する。指向性形成部740は、変調部720からの変調信号に対し各アンテナに固有の重み係数を掛ける(乗算)ことによって、振幅および位相の異なる変調信号をアンテナ毎に生成する。生成された変調信号は、アンテナ毎に設けられた合成部760を介して各アンテナ素子780に出力される。このようにして各アンテナ素子から発信される振幅および位相の異なる変調信号が空間で合成されることによって指向性をもった変調信号が生成される。空間多重伝送用送信装置700においては、複数の指向性形成部740(1〜n)から出力される変調信号(アンテナ毎に振幅および位相の異なる変調信号)がアンテナ毎に設けられた各合成部760に入力され、合成(加算)された後、各アンテナ素子780から発信される。その結果、異なる指向性をもった変調信号が指向性形成部740の数だけ生成されることになり、空間分割多重伝送が実現される。
【0004】
一方、近年、基地局を持たない端末同士が直接通信する対等分散ネットワーク方式が注目されている。ここで、基地局を持たない対等分散ネットワークに空間分割多重アクセス方式を適用したとすると、N個の端末からなるシステムにおいては、全端末がN−1パスの信号を同時に他端末に送信する結果、システム内にN*(N−1)通りの膨大な空間パスが発生するため、干渉波の影響が問題となる。一方、受信側端末はN−1の他端末からの信号を同時に処理する必要が生じ、その負荷が膨大になるという問題がある。さらに、これを共通周波数で通信を行う場合、送信端末と受信端末を分ける必要が生じるため、そのための複雑な制御が必要となる。さらに、移動端末の場合、端末の位置は固定されないため、移動する端末に向けた送信信号の指向性をどのように制御するのかが問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、基地局を持たない対等分散ネットワークシステムにおいて、システム全体の通信量を最大化することができる新規な非対称無線通信方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、基地局を持たない対等分散ネットワークシステムにおいて、システム全体の通信量を最大化することができる新規な無線通信方式につき鋭意検討した結果、空間分割多重方式と時分割多重方式を組み合わせ、これに方位測定制御技術を連携させることによって、システム全体の通信量を現実的なレベルで最大化できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明によれば、複数の無線端末が基地局を持たない対等分散ネットワークを構成する無線通信方式において、各無線端末は、前記ネットワーク内の他の各端末に送信するための指向性無線信号を生成する空間分割多重送信部と、1系統の受信部と、前記空間分割多重送信部の送信動作と前記受信部の受信動作を時分割に制御する時分割多重アクセス制御部と含み、時分割多重アクセス方式を用いて、同一時刻において、前記複数の無線端末のいずれか1つの端末が送信権を獲得して前記空間分割多重送信部から指向性無線信号を一斉に送信し、送信権を持たない他の各端末の前記受信部が該指向性無線信号を一斉に受信するように制御することを特徴とする無線通信方式が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の無線通信システムの動作を説明するための概念図。
【図2】本実施形態の無線通信システムの動作を説明するための概念図。
【図3】本実施形態の無線通信システムにおけるタイムスロット毎の情報信号の流れを示す図。
【図4】本実施形態の無線端末装置の機能ブロック図。
【図5】第1実施形態の無線通信システムを示す図。
【図6】第1実施形態の無線通信システムで取得される離間距離情報を示す図。
【図7】第1の実施形態における調整パラメータ参照テーブルと調整パラメータ設定用テーブルを示す図。
【図8】第2実施形態の無線通信システムを示す図。
【図9】第2実施形態における調整パラメータ参照テーブルと調整パラメータ設定用テーブルを示す図。
【図10】第2実施形態における空間分割多重送信部の機能ブロック図。
【図11】第2実施形態における測位用要求パケット送信時における送信側の設定方位と受信端末側の信号レベルの関係を示す図。
【図12】SDMA方式の原理を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0010】
本発明の無線通信システムは、N台の無線端末からなる対等分散ネットワークシステムとして構成されるものであり、各無線端末は、ネットワーク内の他の端末と無線基地局を介さずに直接通信を行う。本システムにおける各無線端末は、その送信において、固有ビーム空間分割多重方式(E−SDM:Eigenbeam-Space Division Multiplexing)を採用する。すなわち、各無線端末は、(N−1)方向に対する指向性を持つ送信用マルチビームを形成することができ、各ビームが確立する伝送路によって複数パスの同時通信を実現する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態である無線通信システム300の動作を説明するための概念図である。なお、図1においては、説明を容易にするために、4台の無線端末(I,A,B,C)からなるシステムを示している。本実施形態の無線通信システム300は、同一時刻に、4台の無線端末の中の1台の無線端末に対してのみに送信権を割り当て、その間、他の3台の端末についてはデータ送信を禁じるように制御される。送信権は、4台の無線端末(I,A,B,C)に対して時分割で順番に割り当てられ、各端末において一定時間(タイムスロット期間)保持される。図1に示すタイムスロット[0]においては、無線端末Iに送信権が付与されており、その他の端末(A,B,C)は受信だけが許可されている。タイムスロット[0]が終了すると送信権は、無線端末Iから無線端末Aに移る。タイムスロット[0]に続く次のタイムスロット[1]においては、図2(a)に示すように無線端末Aが送信権を獲得し、タイムスロット[2]においては、図2(b)に示すように無線端末Bが送信権を獲得し、タイムスロット[3]においては、図2(c)に示すように無線端末Cが送信権を獲得する。その後、次のタイムスロットで送信権は無線端末Iに戻り、以下これを順次繰り返す。
【0012】
ここで、再び、図1を参照すると、無線端末Iのアンテナは、3つの異なる指向性を持った送信用ビームa〜cを形成し、各ビームが確立する伝送路を使って無線端末A〜Cのそれぞれに対して同一時刻・同一周波数で異なるデータ系列の信号S〜Sを送信する。このとき、送信権を持たない無線端末A〜Cは受信動作のみを行う。ここで、無線端末Aに着目すると、同一時刻にシステム内に発生するパスは、無線端末Iを送信元とする3つのパス(情報信号S〜S)だけであり、情報信号S以外の情報信号Sおよび情報信号Sはノイズレベルとなるので、無線端末Aは、自身に宛てられた情報信号Sのみを確実に受信して復調することができることができる。すなわち、無線端末Aの受信部は、信号分離機構や干渉波除去機構を備える必要がなく、単一パス用の無指向性の受信部とすることができる。なお、上述した送受信に係る構成は、無線端末(I,A,B,C)の全てが共通して備えるものとして参照されたい。
【0013】
図3は、無線通信システム300におけるタイムスロット毎の情報信号の流れを示す図である。図3に示すように、タイムスロット[0]においては、無線端末I→A、無線端末I→B、無線端末I→Cという3本の通信パスで、各無線端末A〜Cに向けた情報信号が無線端末Iから同一時刻に送信され、各無線端末A〜Cは無線端末Iから送信される自分宛の情報信号のみを受信する。続くタイムスロット[1]、[2]、[3]…[n]においても同様に、各無線端末は、送信権を獲得した1スロット期間中、システム内の他の無線端末に対して同時一斉に情報信号を送信する一方、それ以外の期間は、当該期間に送信権を持つ他の無線端末から自分宛の情報信号の受信のみを行う。
【0014】
ここで、仮に、対等分散ネットワークに対して時分割多重アクセス方式(TDMA:Time Division Multiple Access)を適用した場合を想定すると、そのようなシステムでは、1スロット毎に1本の通信パスしか形成できないが、本実施形態によれば、1スロット毎に(N−1)本の通信パスを形成することができるので、通信容量は、TDMA方式を採用するシステムの(N−1)倍となる。
【0015】
次に、対等分散ネットワークを構成する全端末が同時に空間分割多重による送受信を行うシステムを想定すると、そのようなシステムにおいては、各端末が送受信を同時に行うと送信信号が受信に回り込んで正常な通信が出来ないため、ネットワーク内の全端末を送信側と受信側に振り分ける必要が生じる。そこで、仮に、全端末のうち、半分を送信元とし残りの半分を受信先とした場合を考えると、同時通信パス数は、(N/2)本となり、理論上、本実施形態のN/4倍程度の通信容量を実現できることになる。
【0016】
しかしながら、基地局を持たない対等分散ネットワークの場合、全端末が同時に空間分割多重による送受信を行うと膨大な数の空間パスが発生する。その結果、受信側は、他端末からの複数の情報信号を同時に処理しながら、膨大な数のパスに起因する干渉も排除しなければならない。さらに、膨大なパスが発生する中、端末間の均等な送受信を担保するようにネットワーク内の全端末を送信側と受信側に適切に振り分けることは、実際には至難の業である。
【0017】
この点につき、本実施形態は、対等分散ネットワークを構成する全端末のうち、同一時刻に1つの端末だけに択一的に送信権を付与した上で、送信権を獲得した当該端末について空間分割多重送信を行わせ、他の端末は、当該送信権を獲得した端末からの送信信号だけを受信する構成を採用する。その結果、各端末において、送受信モードの複雑な切替制御や、信号分離・干渉波除去制御が不要となり、端末の構成を大幅に簡略化することが可能になる。以上、本実施形態の無線通信システム300の動作について説明してきたが、次に、無線通信システム300を構成する無線端末装置について詳細に説明する。
【0018】
図4は、無線通信システム300を構成する無線端末装置100の機能ブロック図を示す。無線端末装置100は、空間分割多重送信部10と、受信部20と、時分割多重アクセス制御部30と、システムIF部40とを含み、さらに、好ましくは、端末方位測定部50と、アンテナ指向性制御部60とを含んで構成される。
【0019】
時分割多重アクセス制御部30は、N−1個のMAC(Media Access Control)送信部と1個のMAC受信部と、時分割アクセス制御部から構成され、空間分割多重送信部10の送信動作と受信部20の受信動作を時分割に制御する。本実施形態においては、時分割アクセス制御方式として、端末毎に周期的に特定の期間アクセス許可を与える時分割多重接続方式(TDMA)を採用することができる。N−1個のMAC送信部は、入力されたデータに対してMACレイヤに関する送信処理を施し、空間分割多重送信部の各BB送信部への入力データを生成する。一方、MAC受信部はBB受信部からの復調データに対してMACレイヤに関する受信処理を行う。
【0020】
空間分割多重送信部10は、複数のデータストリームのそれぞれを、異なる指向性を持った固有の送信用ビーム(伝送路)に対応づけて送信するための機能部である。空間分割多重送信部10は、ビーム・フォーミングの手法により、N-1台の無線端末を送信先とする場合、最も好ましくは、(N−1)個の指向性ビームを形成する。
【0021】
空間分割多重送信部10は、複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナの各アンテナ素子への給電信号をディジタル信号処理により生成し、ネットワーク内の他の端末毎に送信情報信号の指向方向を夫々電気的に調整した後に、指向性の無線信号に変換して他の端末に対して一斉に送信するための機能部である。
【0022】
空間分割多重送信部10は、N−1個のBB(Baseband)送信部、N−1個のBB送信信号をM個のアンテナ送信信号に変換する空間分割多重部、ならびにM個のアンテナ素子を含む構成を有している。各BB送信部は、時分割多重アクセス制御部から入力されたデータをBB信号に変調する。空間分割多重部は、N−1個の当該BB信号夫々についてアンテナ素子の数だけ複製し、振幅および位相に関する調整係数を掛けた後、M個のアンテナ毎にすべてのBB送信信号に調整係数を掛けた後の信号の総和を入力し、高周波(RF)信号にアップコンバートし、各アンテナ素子を介してRF信号を電波としてそれぞれ送出する。M個のアンテナ素子から送出されたM個の同一信号(振幅および位相は異なる)は、空間で合成されることによって、所定方位に対して指向性を帯びた信号となる。ここで、空間分割多重部では、BB信号とアンテナの組合せ毎に異なる調整係数が設定され、その結果、(N−1)方向に対して指向性を持つ送信用マルチビームが形成される。調整係数はM行N−1列の複素行列であらわされる。なお、図4には、空間分割多重送信部10に対して3つのアンテナ記号を図示しているが、BB送信部の数N−1とアンテナ数Mは同じである必要は無く、N-1≦Mであればよい。M本の送信アンテナはN−1個のBB送信部で同時に共用する。
【0023】
受信部20は、アンテナを介して受信されたRF信号をBB信号にダウンコンバートするRF受信部と、ダウンコンバートされたBB信号を復調するBB受信部で構成されている。なお、本システムにおいては、受信部20は単一パス用に構成すればよく、受信部20に対しては空間分割多重受信のための信号分離・干渉波除去のための構成を設ける必要はない。なお、受信部20は、指向性制御を行わないため、空間分割多重送信部10とアレイアンテナを共有することができ、アレイアンテナのいずれか1本を無指向性の受信アンテナとしても良いし、複数本のアンテナを受信アンテナとし、その出力信号を単純に合成して受信信号としても良い。
【0024】
以下、本実施形態をWiMedia規格に準拠したデバイスに適用した場合を例にとって説明する。時分割多重アクセス制御部30は、256μsの期間を有する256個のメディア・アクセス・スロット(Medium Access Slot:MAS)からなる65,536μs周期のスーパーフレームにおいて、各フレーム先頭のビーコン期間に、システム内の他の端末との間でビーコンを送受信してシステムの時間同期を取る。時分割多重アクセス制御部30は、ビーコンを用いて予約したMASの期間に則って、空間分割多重送信部10および受信部20を制御する。具体的には、システムIF部40を介して本体システム部200から入力されたデータを所定のタイムスロットにおいて送信する複数パス送信モードと、他の端末から送信された信号を所定のタイムスロットにおいて単一パスで受信して復号し、システムIF部40を介して本体システム部200に出力する単一パス受信モードとを交互に切替える。
【0025】
ここで、本実施形態の無線通信システム300が移動無線端末を含むシステムである場合、ネットワーク内の端末の相互位置関係が動的に変化することを前提にしなければならない。すなわち、ネットワーク内の端末の位置関係の変化に応じて、各端末のアンテナ指向性を適応的に変化させる必要がある。ここで、仮に、移動した端末の受信側が空間分割多重に対応していれば、移動端末側から伝播チャネルの特性を送信側の端末に返させることで、送信側の端末が当該特性に基づいて指向性を調整することができるが、本実施形態における受信部20は、上述したように空間分割多重に対応していないため、別法を検討する必要がある。この点につき、本実施形態の無線端末装置100は、アンテナ指向性の適応的制御を実現するために、端末方位測定部50およびアンテナ指向性制御部60を備える。以下、端末方位測定部50およびアンテナ指向性制御部60の機能について、具体的に説明する。
【0026】
端末方位測定部50は、ネットワーク内の他の端末について無線端末装置100(送信側)から見た方位を定期的に測定し、当該方位をアンテナ指向性制御部60に通知する。アンテナ指向性制御部60は、通知された方位に対応した指向性調整パラメータを空間分割多重送信部10に与える。その結果、空間分割多重送信部10が形成する各送信用ビームの指向性が他の端末の各方位に合致する。以下、端末方位測定部50について2つの実施形態を説明する。
【0027】
図5は、第1の実施形態である端末方位測定部50aを備える無線端末装置100で構成される無線通信システム300を示す。無線通信システム300は、4つ無線端末(I,A,B,C)から構成されており、図5は、そのうちの無線端末Iの機能ブロックを代表して示すが、他の無線端末(A,B,C)についても同様の構成を備えるものとして参照されたい(以下、図8についても同様)。
【0028】
端末方位測定部50aは、自端末とネットワーク内の他の端末との離間距離を測定するための測距用パケットを生成する測距用パケット生成部72と、ネットワーク内の他の端末から送信された測距用パケットを解析する測距用パケット解析部74と、測距用パケットに基づいて自端末から見た他端末の方位を計算によって求める方位計算部76を含んで構成される。
【0029】
測距用パケット生成部72は、ネットワーク内の他の端末の端末IDと「送信依頼時刻」を紐づけた「測距用要求パケット」をID毎に生成する。なお、当該「送信依頼時刻」は、所定の時間間隔をもった時刻テーブルに基づいて生成される。図5に示す例においては、測距用パケット生成部72は、端末A〜Cのそれぞれに向けた測距用要求パケットa〜cを生成し、生成した測距用要求パケットの送信を時分割多重アクセス制御部30に依頼する。時分割多重アクセス制御部30は、測距用要求パケットに含まれる「送信依頼時刻」に基づいて予約したMASに則って空間分割多重送信部10を制御して、当該「送信依頼時刻」に測距用要求パケットa〜cを送信させる。この際、空間分割多重送信部10は、1系統のみを無指向性に調整し、当該系統を使用して無指向性の測距用要求パケットa〜cを、順次、全方位に向けて送信する。
【0030】
ネットワーク内の各端末A〜Cの各受信部20は、受信したパケットが測距用要求パケットであることを検知すると、これを測距用パケット解析部74に渡す。その結果、測距用パケット解析部74は、端末Iから送信された測距用要求パケットa〜cを随時受信し、当該測距用要求パケットに含まれる端末IDが自身の端末IDであるか否かを解析する。測距用パケット解析部74は、端末IDが自身の端末IDであった場合、当該測距用要求パケットに対する「測距用応答パケット」の生成を測距用パケット生成部72に対して依頼する。
【0031】
「測距用応答パケット」の生成につき、端末Cを例に取って説明すると、端末Cの測距用パケット生成部72は、自身の端末IDと、測距用要求パケットcに含まれていた「送信依頼時刻」を紐づけた測距用応答パケットcを生成し、当該測距用応答パケットcの送信を時分割多重アクセス制御部30に依頼する。時分割多重アクセス制御部30は、空間分割多重送信部10を制御して測距用応答パケットcを送信させる。この際、空間分割多重送信部10は、測距用要求パケットの場合と同様に、無指向性に調整された1系統のみを使用して、測距用応答パケットcを全方位に向けて送信する。
【0032】
端末Cから全方位に向けて送信された測距用応答パケットcは、端末Iの受信部20に受信される。受信部20は、受信したパケットが測距用応答パケットであることを検知して、これを測距用パケット解析部74に渡す。測距用パケット解析部74は、測距用応答パケットcの「受信時刻」を取得した上で、当該「受信時刻」と測距用応答パケットcに含まれる「送信依頼時刻」の差分に基づいて端末Iと端末Cの離間距離を算出する。上述したのと同様の手順で、端末Iの測距用パケット解析部74は端末Iと端末Aの離間距離および端末Iと端末Bの離間距離を求め、得られた3組の離間距離(IC間、IA間、IB間)を方位計算部76に渡す。
【0033】
さらに、測距用パケット解析部74は、この3組の離間距離(IC間、IA間、IB間)を他の端末に通知するための「測距用通知パケット」の生成を測距用パケット生成部72に依頼する。測距用パケット生成部72は、これら3組の離間距離と送信先となる端末(C、A、B)の各端末IDに紐づけた測距用通知パケットc,a,bを生成し、当該測距用通知パケットの送信を時分割多重アクセス制御部30に依頼する。これを受けて、空間分割多重送信部10は、測距用通知パケットc,a,bを順次、全方位に向けて送信する。
【0034】
一方、端末Iの受信部20は、他の端末(C、A、B)から測距用通知パケットc,a,bを受信する。端末Iの受信部20は、受信したパケットが測距用通知パケットであることを検知すると、これを測距用パケット解析部74に渡す。測距用パケット解析部74は、測距用通知パケットc,a,bに含まれる端末IDが自身の端末IDであるか否かを解析する。その結果、端末IDが自身の端末IDであった場合、当該測距用通知パケットcに含まれる離間距離(AC間、AB間、BC間)を方位計算部76に渡す。
【0035】
図6は、無線通信システム300において、上述した手順が実行された結果、無線端末Iが取得する離間距離情報を示す。図6に示されるように、無線端末Iは、上述した測距用要求パケットおよび測距用応答パケットの送受信によって、端末A、BおよびCとの離間距離L(ia)、L(ib)およびL(ic)を直接的に取得し、それ以外の離間距離L(ab)、L(bc)およびL(ac)については、端末A〜Cから送られる測距用通知パケットから取得する。
【0036】
図6に示した6つの離間距離情報を測距用パケット解析部74から受領した方位計算部76は、一部端末の既知の位置情報に基づいて求めた基線長と受領した6つの離間距離情報に基づいて、三辺測量の原理を用いて計算を行ない、端末Iから見た端末A〜Cの方位を算出する。方位計算部76は、計算によって求められた各端末の方位の値(Rad)を当該端末のIDに紐づけてアンテナ指向性制御部60aに通知する。
【0037】
本実施形態におけるアンテナ指向性制御部60aは、図7に例示される調整パラメータ参照テーブル400と調整パラメータ設定用テーブル500を備える。調整パラメータ参照テーブル400には、全方位を均等分割する各方位と、当該方位に対する指向性を実現するための調整パラメータが対応づけて格納されている。図7に示す例においては、12の参照方位が設定されている。ここで、調整パラメータとは、各方位の指向性をもった高周波(RF)ビーム・フォーミングを実現するための各種パラメータのセットをいう(以下、同様)。
【0038】
アンテナ指向性制御部60aは、測距用パケット解析部74から通知された方位に基づいて調整パラメータ参照テーブル400を参照し、当該方位の値に最も近似する参照方位に対応する調整パラメータと、当該方位に紐づけられた端末IDを調整パラメータ設定用テーブル500にセットする。
【0039】
上述した測距用パケットを使用した一連の処理が行われる結果、調整パラメータ設定用テーブル500には、図7に示すように、「端末AのID」、「端末BのID」および「端末CのID」に対応付けられて、それぞれ、調整パラメータ「DATA1」、「DATA4」および「DATA10」がセットされる。セットされた値は、次回の処理が実行されるまで保持され、次回の処理の際に新しい値に書き換えられる。なお、上述した調整パラメータの更新処理は、適切な時間間隔をもって定期的に実行することが好ましい。
【0040】
次に、第2の実施形態について説明する。図8は、第2の実施形態である端末方位測定部50bを備える無線端末装置100で構成される無線通信システム300を示す。
【0041】
端末方位測定部50bは、自端末から見たネットワーク内の他の端末の方位を測定するための測位用パケットを生成する測位用パケット生成部82と、ネットワーク内の他の端末から送信された測位用パケットを解析する測位用パケット解析部84を含んで構成される。
【0042】
本実施形態におけるアンテナ指向性制御部60bは、図9に例示される調整パラメータ参照テーブル600と調整パラメータ設定用テーブル500を備える。調整パラメータ参照テーブル600には、「方位ID」と当該「方位ID」が示す所定方位に対する指向性を実現するための調整パラメータが対応づけて格納されている。図9に示す例においては、12の方位IDが設定されている。
【0043】
測位用パケット生成部82は、方位IDを含む測位用要求パケットを複数生成する。たとえば、図9に例示する調整パラメータ参照テーブル600を使用する場合、ID001〜ID012を含む12個の測位用要求パケットを生成する。
【0044】
測位用パケット生成部82は、生成した12個の測位用要求パケットの送信を時分割多重アクセス制御部30に依頼する。時分割多重アクセス制御部30は、空間分割多重送信部10を制御して12個の測位用要求パケットを順次送信させる。この際、空間分割多重送信部10は、測位用要求パケットに含まれる方位IDに基づいて、調整パラメータ参照テーブル600を随時参照し、当該方位IDに対応する調整パラメータを使用して、高周波(RF)ビーム・フォーミングを実行する。その結果、12個の測位用要求パケットは、当該パケットに含まれる方位IDが示す方位に向けて、指向性信号として送信される。このとき、空間分割多重送信部10は、同時に、いずれかの送信アンテナ素子を使用して無指向性のノイズ信号を指向性パケット信号に重ねる。以下、無指向性のノイズ信号を重畳するための構成について図10に基づいて説明する。
【0045】
図10は、図8における空間分割多重送信部10の機能ブロックを示す。本実施形態における空間分割多重送信部10は、BB送信部12、空間分割多重部14および高周波変換部16に加えて、無指向性のノイズ信号を重畳するための機能部であるノイズ重畳部18を含んで構成されている。
【0046】
空間分割多重部14において、指向性形成部14aの各乗算器に対する重み係数はすべて独立して設定可能であり、各乗算器に対する係数を調整することで各送信データ列に対する指向性制御を行う。続く、合成多重部14bは、各アンテナに対する全送信データ列の重み付け信号を加算する。
【0047】
本実施形態におけるノイズ重畳部18は、電力測定部18aと疑似雑音発生器18bを含んで構成されている。ノイズ重畳部18は、データ信号の電力レベルとこれに重層するノイズ信号の電力レベルが等価になるように、以下の手順でノイズ信号の電力レベルを最適化する。まず、電力測定部18aは、合成多重部14bからの各合成多重出力の二乗平均の和の二乗根からデータ信号の平均振幅を求める。次に、求めた平均振幅に対して、平均振幅1の疑似雑音発生器18bの出力を掛けてノイズ信号を生成する。生成したノイズ信号に対して所望のSN比になるように振幅係数を掛けたものを合成多重部14bから出力されるいずれか1つのデータ信号に加算し、これをノイズ源として高周波変換部16に入力する。高周波変換部16は、入力されたノイズ源を無線信号に変換して無指向性アンテナに出力する。
【0048】
続いてノイズ重畳の効果について述べる。仮に、測位用要求パケット信号にノイズ信号を重畳しない場合を想定すると、各端末A〜Cは、自身に向いた方位から大きくずれた微弱な測位用要求パケット信号を拾ってしまう可能性がある。この点に鑑み、本実施形態においては、上述したように測位用要求パケット信号にノイズ信号を重畳した上で、受信側がSN比の大きい信号のみを受信するように構成している。図11(a)は、測位用要求パケット送信時における、送信側の設定方位と受信端末側の信号レベルの関係を示す。図11(a)に示されるように、各端末は、SN比がパケット受信可能なレベルになった測位用要求パケット(すなわち、自身に向いた正しい方位に送信された測位用要求パケット)のみを受信して応答パケットを返すことができ、それ以外の測位用要求パケット信号はSN比がパケット受信可能なレベルに至らないために受信されない。その結果、信号の絶対強度に基づく場合に比較して方位検出精度が高くなる。
【0049】
なお、別の実施形態においては、測位用要求パケット信号とノイズ信号の態様を逆にすることもできる。すなわち、無指向性の測位用要求パケット信号を全方位に送信すると同時に、これに特定方向に急峻なNull点のあるノイズ信号を重ねて送信し、このNull点を時系列的に変化させる。図11(b)は、その際の受信端末側の信号レベルを示す。図11(b)に示されるように、各端末は、ノイズ信号のNull点近傍でのみ、信号のSN比がパケット受信可能なレベルになるため測位用要求パケットを受信して応答パケットを返すことができ、それ以外の測位用要求パケット信号はSN比がパケット受信可能なレベルに至らないために受信されない。アンテナ素子数が少ない装置であってもNull点の生成は可能であるため、当方法を採用することによって方位検出精度を上げることができる。
【0050】
本実施形態における擬似雑音発生器16bは、例えば、シフトレジスタで2値の擬似雑音系列を発生し、そこから特定の多ビットを2つ取り出し、1つをノイズの振幅に、1つをノイズの位相に対応させて擬似雑音信号を生成する回路など、既知の擬似ノイズ発生回路を用いて構成することができる。また、合成多重後の電力が一定になるように指向性形成部14aの各乗算器に対する重み係数を決めておけば、データ信号の平均振幅を求める必要がなくなるため、この場合は電力測定部18aを省略することができる。
【0051】
ここで、本実施形態においては、図11(a)(b)に示したノイズレベルを上述した振幅係数の設定値によって調整することができる。しかしながら、指向性信号の指向特性は、実際には単一の方向にピークを持つわけではなく、振幅の低いサイドローブが幾つか存在する。したがって、調整したノイズレベルが適切でない場合、サイドローブによる通信が成立してしまい、結果として方位取得の精度が低下するおそれがある。
【0052】
この点につき、本実施形態においては、以下の手順でノイズレベルを適応的に設定することができる。すなわち、(1)方位測定開始時において、ノイズレベルを高めに設定しておく。(2)指向方向を回転させながら各方位に向けて測位用パケットを送信する。(3)指向方向を1回転させる間に測位応答パケットが検出された場合、検出時の指向方向を当該測位応答パケットの送信元端末の方位とする。但し、既に検出済みの端末からの測位応答パケットの場合は無視する。(4)指向方向を1回転し、全方位に向けて測位用パケットを送信しても測位応答パケットを検出しない場合は、ノイズレベルを所定量下げる。以降、測位応答パケットを検出するか、あるいは、ノイズレベルが所定の下限値に達するまで、上記(2)〜(4)の手順を繰り返す。上述した手順を採用することによって、実際の通信環境に対応した適切なノイズレベルを適応的に設定することができる。
【0053】
以下、再び、図8に戻って説明を続ける。無線端末Iから全方位に向けて送信された12個の測位用要求パケットのうち、端末A〜Cに向けられた一部のパケットが各端末によって受信される。各端末の受信部20は、受信したパケットが測位用通知パケットであることを検知すると、これを測位用パケット解析部84に渡す。測位用パケット解析部84は、端末Iから送信された測位用要求パケットに含まれる方位IDを測位用パケット生成部82に渡して測位用応答パケットの生成を依頼する。
【0054】
この点につき、端末Cを例に取って説明すると、端末Cの測位用パケット生成部82は、自身の端末IDと、測位用要求パケットcに含まれていた「方位ID」を紐づけた測位用応答パケットcを生成し、当該測位用応答パケットcの送信を時分割多重アクセス制御部30に依頼する。時分割多重アクセス制御部30は、空間分割多重送信部10を制御して測位用応答パケットcを送信させる。この際、空間分割多重送信部10は、測位用要求パケットの場合とは異なり、無指向性に調整された1系統のみを使用して、測位用応答パケットcを全方位に向けて送信する。
【0055】
一方、端末Iの受信部20は、他の端末(C、A、B)から測位用応答パケットc,a,bを受信する。端末Iの受信部20は、受信したパケットが測位用通知パケットであることを検知すると、これを測位用パケット解析部84に渡す。測位用パケット解析部84は、測位用応答パケットc,a,bに含まれる端末IDが自身の端末IDであるか否かを解析する。その結果、端末IDが自身の端末IDであった場合、当該測位用応答パケットに含まれる方位IDおよび端末IDのセット(たとえば、「ID=aaa/ID=001」、「ID=bbb/ID=004」、「ID=ccc/ID=010」)を取得し、これらの値をアンテナ指向性制御部60bの調整パラメータ設定用テーブル500にセットする。
【0056】
上述した測位用パケットを使用した一連の処理が行われる結果、端末Iのアンテナ指向性制御部60bが有する調整パラメータ設定用テーブル500には、図9に示すように、「端末AのID」、「端末BのID」および「端末CのID」に対応付けられて、それぞれ、調整パラメータ「DATA1」、「DATA4」および「DATA10」がセットされる。セットされた値は、次回の処理が実行されるまで保持され、次回の処理の際に新しい値に書き換えられる。なお、上述した調整パラメータの更新処理は、適切な時間間隔をもって定期的に実行することが好ましい。
【0057】
以上、説明したように、第1および第2のいずれの実施形態によれば、空間分割多重送信部10は、データを送信する際に、パケットに含まれる送信先端末IDに基づいて、調整パラメータ設定用テーブル500を随時参照して、当該端末IDに対応する調整パラメータを取得し、当該調整パラメータに基づいて、高周波(RF)ビーム・フォーミングを実行する。その結果、ネットワーク内で端末が移動した場合であっても、当該移動端末の現在位置に適合した適切な指向性信号が送信される。
【0058】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、たとえば、時分割多重アクセス制御部を実装する時分割アクセス制御方式として、無線LANで用いられるCSMA/CA方式を採用し、本発明をIEEE802.11(WLAN)規格のMACプロトコルに沿った無線端末に展開することもできる。その他、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0059】
上述した実施形態の各機能は、アセンブリ言語、C、Visual C、C++、Visual C++、Java(登録商標)、Java(登録商標)Beans、Java(登録商標)Applet、Java(登録商標)Script、Perl、Rubyなど、レガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、装置可読な記録媒体に格納して頒布することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…空間分割多重送信部
12…BB送信部
14…空間分割多重部
16…高周波変換部
18…ノイズ重畳部
20…受信部
30…時分割多重アクセス制御部
40…システムIF部
50…端末方位測定部
60…アンテナ指向性制御部
72…測距用パケット生成部
74…測距用パケット解析部
76…方位計算部
82…測位用パケット生成部
84…測位用パケット解析部
100…無線端末装置
200…本体システム部
300…無線通信システム
400…調整パラメータ参照テーブル
500…調整パラメータ設定用テーブル
600…調整パラメータ参照テーブル
700…空間多重伝送用送信装置
710…分配部
720…変調部
740…指向性形成部
760…合成部
780…アンテナ素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特許第3926669号
【特許文献2】特許第4435039号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末が基地局を持たない対等分散ネットワークを構成する無線通信方式において、
各無線端末は、
前記ネットワーク内の他の各端末に送信するための指向性無線信号を複数重畳した信号を生成する空間分割多重送信部と、
1系統の受信部と、
前記空間分割多重送信部の送信動作と前記受信部の受信動作を時分割に制御する時分割多重アクセス制御部と
を含み、
時分割多重アクセス方式を用いて、同一時刻において、前記複数の無線端末のいずれか1つの端末が送信権を獲得して前記空間分割多重送信部から複数の指向性無線信号を一斉に送信し、送信権を持たない他の各端末の前記受信部が端末毎に別の該指向性無線信号を一斉に受信するように制御することを特徴とする無線通信方式。
【請求項2】
前記各無線端末がさらに、
前記ネットワーク内の他の端末の方位を定期的に測定する端末方位測定部と、
前記指向性無線信号の指向性を前記他の端末の方位に合致するように前記空間分割多重送信部の送信動作を制御するアンテナ指向性制御部とを含み、
前記アンテナ指向性制御部は、
各方位に対応する調整パラメータを格納する調整パラメータ参照テーブルと、
前記調整パラメータと端末IDを対応づけて管理する調整パラメータ設定用テーブルと
を含み
前記空間分割多重送信部は、端末IDに対応した前記調整パラメータを使用して指向性無線信号の送信動作を実行する、
請求項1に記載の無線通信方式。
【請求項3】
前記端末方位測定部は、
前記空間分割多重送信部および前記受信部に対して、自端末と前記ネットワーク内の他の端末との間で無指向性の測距用パケットの送受信を依頼し、測距用要求パケットの送信から測距用応答パケットの受信までに要した時間に基づいて自端末と前記ネットワーク内の他の端末との離間距離を算出して取得するともに、前記ネットワーク内の他の端末の前記端末方位測定部が算出した前記離間距離を該他の端末から取得し、
取得したすべての前記離間距離に基づいて三辺測量の原理を用いて計算を行なって前記ネットワーク内の他の端末のそれぞれの方位を算出し、
該方位と該端末の端末IDを紐づけて前記アンテナ指向性制御部に通知し、
前記アンテナ指向性制御部は、前記調整パラメータ参照テーブルを参照して、通知された前記方位に対応する調整パラメータを前記調整パラメータ設定用テーブルにセットする、
請求項1または2に記載の無線通信方式。
【請求項4】
前記端末方位測定部は、
前記空間分割多重送信部および前記受信部に対して、各方位を示す方位IDを含む指向性の測位用要求パケットの送信、および、該測位用要求パケットを受信した前記ネットワーク内の他の端末から該端末の端末IDと前記方位IDを含む測位用応答パケットの受信を依頼し、
前記アンテナ指向性制御部は、前記調整パラメータ参照テーブルを参照して、前記測位用応答パケットが含む前記方位IDが示す方位に対応する調整パラメータを前記調整パラメータ設定用テーブルにセットする、
請求項1または2に記載の無線通信方式。
【請求項5】
前記空間分割多重送信部は、前記指向性の測位用要求パケットに無指向性のノイズ信号を重ねて送信する、
請求項4に記載の無線通信方式。
【請求項6】
前記端末方位測定部は、
前記空間分割多重送信部および前記受信部に対して、各方位を示す方位IDを含む無指向性の測位用要求パケットと特定方向にNull点のあるノイズ信号を重ねて送信、および、該測位用要求パケットを受信した前記他の端末から該端末の端末IDと前記方位IDを含む測位用応答パケットの受信を依頼し、
前記アンテナ指向性制御部は、前記調整パラメータ参照テーブルを参照して、前記測位用応答パケットが含む前記方位IDが示す方位に対応する調整パラメータを前記調整パラメータ設定用テーブルにセットする、
請求項1または2に記載の無線通信方式。
【請求項7】
前記空間分割多重送信部は、アンテナとして複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナを有し、
前記受信部は、前記アレイアンテナを前記空間分割多重送信部と共有し、無線受信時に前記アレイアンテナの指向特性を等方性に制御する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の無線通信方式。
【請求項8】
前記時分割多重アクセス方式として、時分割多重接続方式(TDMA)またはCSMA/CAを用いることを特徴とする、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の無線通信方式。
【請求項9】
基地局を持たない対等分散ネットワークを構成する無線通信装置であって、
前記ネットワーク内の他の各端末に送信するための指向性無線信号を複数重畳した信号を生成する空間分割多重送信部と、
1系統の受信部と、
前記空間分割多重送信部の送信動作と前記受信部の受信動作を時分割に制御する時分割多重アクセス制御部と
前記ネットワーク内の他の端末の方位を定期的に測定する端末方位測定部と、
前記指向性無線信号の指向性を前記他の端末の方位に合致するように前記空間分割多重送信部の送信動作を制御するアンテナ指向性制御部とを含み、
前記アンテナ指向性制御部は、
各方位に対応する調整パラメータを格納する調整パラメータ参照テーブルと、
前記調整パラメータと端末IDを対応づけて管理する調整パラメータ設定用テーブルと
を含み
前記空間分割多重送信部は、端末IDに対応した前記調整パラメータを使用して指向性無線信号の送信動作を実行する、
無線通信装置。
【請求項10】
前記端末方位測定部は、
前記空間分割多重送信部および前記受信部に対して、自端末と前記ネットワーク内の他の端末との間で無指向性の測距用パケットの送受信を依頼し、測距用要求パケットの送信から測距用応答パケットの受信までに要した時間に基づいて自端末と前記ネットワーク内の他の端末との離間距離を算出して取得するともに、前記ネットワーク内の他の端末の前記端末方位測定部が算出した前記離間距離を該他の端末から取得し、
取得したすべての前記離間距離に基づいて三辺測量の原理を用いて計算を行なって前記ネットワーク内の他の端末のそれぞれの方位を算出し、
該方位と該端末の端末IDを紐づけて前記アンテナ指向性制御部に通知し、
前記アンテナ指向性制御部は、前記調整パラメータ参照テーブルを参照して、通知された前記方位に対応する調整パラメータを前記調整パラメータ設定用テーブルにセットする、
請求項9に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記端末方位測定部は、
前記空間分割多重送信部および前記受信部に対して、各方位を示す方位IDを含む指向性の測位用要求パケットの送信、および、該測位用要求パケットを受信した前記ネットワーク内の他の端末から該端末の端末IDと前記方位IDを含む測位用応答パケットの受信を依頼し、
前記アンテナ指向性制御部は、前記調整パラメータ参照テーブルを参照して、前記測位用応答パケットが含む前記方位IDが示す方位に対応する調整パラメータを前記調整パラメータ設定用テーブルにセットする、
請求項9または10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記空間分割多重送信部は、前記指向性の測位用要求パケットに無指向性のノイズ信号を重ねて送信する、
請求項11に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記端末方位測定部は、
前記空間分割多重送信部および前記受信部に対して、各方位を示す方位IDを含む無指向性の測位用要求パケットと特定方向にNull点のあるノイズ信号を重ねて送信、および、該測位用要求パケットを受信した前記他の端末から該端末の端末IDと前記方位IDを含む測位用応答パケットの受信を依頼し、
前記アンテナ指向性制御部は、前記調整パラメータ参照テーブルを参照して、前記測位用応答パケットが含む前記方位IDが示す方位に対応する調整パラメータを前記調整パラメータ設定用テーブルにセットする、
請求項9または10に記載の無線通信装置。
【請求項14】
基地局を持たない対等分散ネットワークを構成する無線通信装置を動作させるためのコンピュータ実行な方法であって、
無線通信装置に対して、
前記ネットワーク内の他の各端末に対し空間分割多重方式で指向性無線信号を複数重畳した信号を一斉に送信するための機能手段と、
前記ネットワーク内の他の各端末から送信される無線信号を1系統で受信するための機能手段と、
前記指向性無線信号を送信する動作と前記無線信号を受信する動作を時分割に制御するための機能手段と、
前記ネットワーク内の他の端末の方位を定期的に測定するための機能手段と、
各方位に対応する調整パラメータを格納する調整パラメータ参照テーブルを参照して、測定された他の端末の方位に対応する調整パラメータを取得し、該調整パラメータを使用して該他の端末に送信する指向性無線信号を生成するための機能手段と
を実現する方法。
【請求項15】
コンピュータに請求項14に記載の各機能手段を実現させるためのコンピュータ実行可能なプログラム。
【請求項16】
請求項14に記載の各機能手段を実現させるためのディジタル回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−85263(P2012−85263A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133073(P2011−133073)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】