説明

無線通信端末及び無線通信端末における歩数計測方法

【課題】携帯通信端末に歩数計測機能を内蔵させた場合の誤動作を良好に防ぐようにする。
【解決手段】携帯通信端末に加速度センサ21を内蔵させたものに適用される。そして、携帯通信端末は、所定の基地局との無線通信で基地局から送信されるパイロット信号を受信して検出し、その受信したパイロット信号に基づいた処理が行われる。そのパイロット信号の変化を検出した場合の、その変化を検出する時間間隔を判断し、その判断した時間間隔に基づいて、当該端末が歩行で移動している状態と、その他の状態とを区別する。その区別で、歩行で移動している状態と判断した場合に、加速度センサ21の出力に基づいた歩数計測を行う歩数計測処理を行う。静止状態や高速移動と判断した場合には、歩数計測を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話端末などの無線通信端末及びその端末に適用される歩数計測方法に関し、特に加速度センサを備えた端末に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末に加速度センサを搭載して、端末に加わる加速度を検出して各種アプリケーションを実行するようにしたものが実用化されている。この加速度センサを利用したアプリケーションとしては、例えば携帯電話端末の画面でビデオゲームを実行する際に、端末を振ることで操作を行う等、種々のものが適用可能である。
【0003】
そのような加速度センサを使ったアプリケーションの1つとして、携帯電話端末を所持したユーザの歩数を計測する、いわゆる万歩計(登録商標)としての機能を持たせることが可能である。
即ち、加速度センサでの加速度の検出状況により、携帯電話端末を持ち歩いているユーザが歩いた歩数を積算して、表示画面にその積算した歩数を表示させるものである。
【0004】
特許文献1には、携帯電話端末に加速度センサを内蔵させた構成例についての記載がある。
【特許文献1】特開2008−140227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、加速度センサなどを使って歩数計を構成させる場合には、歩行中でない状態のときに、加速度センサに加わる加速度から、歩いていることを検出しないようにして、誤動作を防止することが重要である。例えば、携帯電話端末に内蔵されたバイブレータ機能が作動中には、歩数計測をしないように制限することが考えられている。
【0006】
このようなバイブレータ機能などの端末自身の動作による誤動作については、比較的簡単に防ぐことが可能であるが、端末を所持したユーザ自身の移動状況に基づいた誤動作を防ぐことは不可能である。例えば、端末を所持したユーザが、自動車などに搭乗している際には、加速度センサが加速度を検出した場合であっても、歩行中ではないため、歩数計測をしないようにするのが好ましい。ところが、加速度センサの検出加速度からそのような状態を検出するのは簡単ではないという問題がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、携帯通信端末に歩数計測機能を内蔵させた場合の誤動作を良好に防ぐようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、携帯通信端末に加速度センサを内蔵させたものに適用される。そして、携帯通信端末は、所定の基地局との無線通信で基地局から送信されるパイロット信号を受信して検出し、その受信したパイロット信号に基づいた処理が行われる。そのパイロット信号の変化を検出した場合の、その変化を検出する時間間隔を判断し、その判断した時間間隔に基づいて、当該端末が歩行により移動している状態と、歩行でない状態とを区別する。その区別で、歩行による移動している状態と判断した場合に、加速度センサの出力に基づいた歩数計測を行い、歩行でない場合には歩数計測を制限する歩数計測処理を行う。
【0009】
このようにしたことで、基地局から送信されるパイロット信号の変化に基づいて、携帯通信端末の移動状況を推測できるようになる。即ち、無線通信用の基地局は、ある程度の間隔で配置してあり、自動車などの乗り物に搭乗中には、端末で受信されるパイロット信号が、比較的早い時間間隔で変化することになる。一方、歩行中には、端末で受信されるパイロット信号の変化が、歩行速度に対応して比較的遅い時間間隔で現れるようになる。このため、パイロット信号の変化に基づいて、携帯通信端末が歩行中か否か、精度よく判定できるようになり、本発明ではその点を利用して歩数計測の制限を行うようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、携帯通信端末に搭載された加速度センサを使って歩数計測を行う場合に、加速度センサの出力に基づいて歩数計測を行うのが適正な状態か否かが、パイロット信号の受信状況から確実に判断できるようになる。従って、加速度センサの出力に基づいて歩数計測を行う場合の計測精度を向上させることができる。また、この計測精度の向上に必要な処理である、パイロット信号の変化を検出する処理は、この種の携帯通信端末が元々持つものであり、パイロット信号の変化を検出する処理を行うことによる構成の複雑化やコストの上昇を招くことなく実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態の例を、添付図面を参照して説明する。
以下の順序で本実施の形態について説明する。
1.端末の全体構成例:図1
2.パイロット信号とその検出状態の例:図2〜図8
3.歩数検出精感度の調整例:図9
4.実施の形態の処理構成による効果
5。変形例の説明
【0012】
[1.端末の全体構成例]
まず、図1を参照して、本実施の形態の無線通信端末の構成例について説明する。
本実施の形態の例(以下本例と称する)においては、基地局との間で、CDMA方式(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)などの各種無線通信方式で無線電話回線を設定して無線通信を行う無線通信端末に適用した例としてある。無線通信端末は、ユーザが常時所持できるように、小型の筐体に内蔵させて構成させてある。図1に示した本例の無線通信端末1は、図示はしないが内蔵されたバッテリを電源としたものである。また、本例の無線通信端末1は、内蔵された加速度センサ21の出力を使って、無線通信端末1を所持したユーザの歩数を計測する機能を備える。
【0013】
図1に示した無線通信端末1の構成について説明すると、無線通信端末1は、無線電話用の基地局と無線通信を行うための無線通信部である、無線電話用通信回路13を備える。無線電話用通信回路13には、アンテナ11が接続してある。図示はしないが、この無線電話用の通信回路の他に、Bluetooth(商標)用や無線LAN用の比較的近距離の無線通信用の通信回路を備えてもよい。
【0014】
この無線通信部13での無線通信は、この無線通信端末1の制御部12の制御で実行され、制御部12が通信制御部として機能する。基地局との無線接続などの処理も、制御部12が制御する。制御部12は、パイロット信号検出部としての機能も備える。即ち、後述するパイロット信号の受信と、その受信に基づいた処理が、制御部12の制御に基づいて実行される。制御部12は、制御ライン25を介して通信端末1内の各部と制御データのやりとりを行い、無線通信以外の端末内の各機能の制御を行う。歩数計測を行うための制御についても、制御部12が実行するようにしてある。
【0015】
無線電話用通信回路13で受信したパケット内に、音声データが含まれる場合には、その音声データを取出す。受信パケットから取り出した音声データは、データライン26を介して音声処理部20に供給し、アナログ音声信号への復調処理を行い、復調されたアナログ音声信号をスピーカ18に供給して、音声を出力させる。
また、音声が入力されるマイクロフォン19を備え、マイクロフォン19で拾った音声信号を、音声処理部20で送信用の音声データに変調し、変調された音声データを無線電話用通信回路13に供給する。無線電話用通信回路13では、供給される音声データを、基地局に送信するパケット内に配置して、無線送信する。
【0016】
また、無線通信端末1は、液晶表示パネルなどで構成される表示部14を備え、制御部12の制御で、各種情報の表示を行う。ここでの表示としては、電話の発信や着信に関する表示、電話帳やメールアドレスリストなどの登録された情報の表示、受信メールや送信メールの表示、インターネットに接続してダウンロードした画像の表示などがある。あるいは、歩数計測機能による歩数表示なども行うようにしてある。
また、無線通信端末1は、操作部15を備え、操作部15での操作に基づいて、制御部12が各種処理を行う。例えば、無線電話通信による発信や、メールの送受信、インターネットへのアクセスなどのデータ通信の開始や終了などが、操作部15として用意されたキーなどが操作されることで実行される。
また、無線通信端末1は記憶部16が制御ライン25及びデータライン26に接続してあり、例えば外部から受信して記憶する必要のあるデータが、記憶部16に記憶される。また、制御部12での制御処理に必要なプログラムについても、記憶部16に記憶される。
【0017】
さらに、無線通信端末1は、加速度センサ21を内蔵している。この加速度センサ21は、例えばそれぞれ直交する3軸の方向に加わる加速度を検出するセンサで構成する。この加速度センサ21で検出した加速度は、制御部12に供給し、制御部12で実行中のアプリケーションソフトウェアでの処理に使用する。加速度センサ21の出力を利用して実行されるアプリケーションソフトウェアとしては、例えば、無線通信端末1の表示部14にビデオゲームの実行画面を表示させた場合に、そのゲームの操作を行うために端末を振る場合がある。端末を振ることにより、加速度センサ21で検出された加速度を、制御部12が判断して、その加速度に基づいたゲームの操作が実行される。ゲーム以外の無線通信端末1に実装されたその他の機能の操作についても、同様に加速度センサ21での検出に基づいて実行させる構成としてもよい。
【0018】
また本例においては、加速度センサ21が検出する加速度を、歩数計測処理に使用するようにしてある。この歩数計測処理についても、記憶部16などに記憶された歩数計測用ソフトウェアを、制御部12が実行することで行われる。このため、制御部12は歩数計測部としての機能も備える。この歩数計測の機能では、無線通信端末1を所持したユーザが歩く際の歩数を、カウントするものである。カウント値については、記憶部16などに記憶させ、必要により表示部14に歩数の累積値を表示させる。歩数の累積値は、例えば1日ごとの値としたり、或いはユーザ操作でリセットがあってからの値とする。
【0019】
加速度センサ21が検出する加速度に基づいて歩数計測を行う処理は、基本的には、歩きに対応して現われる加速度の周期的な変化の1周期を、2歩(又は1歩)としてカウントする。
この歩数計測を行う上で、本例の無線通信端末1の制御部12では、歩数計測を行うのに適正な状況か否か判断して、適正な状況である場合にだけ、加速度センサ21の検出出力に基づいた歩数のカウント処理を行う構成としてある。適正でない状況の場合には、加速度センサ21の検出出力を検出した場合であっても、歩数のカウント処理を行わない構成とするか、或いは検出感度を落として、大きく動いた場合にだけ歩数のカウント処理を行う。
【0020】
本例においては、この歩数のカウント処理を行うのが適正か否か判断するために、無線電話用通信回路13で、基地局からのパイロット信号の受信状況を利用する。
基地局からのパイロット信号は、無線電話ネットワーク内の各基地局から随時送信される信号であり、各無線通信端末ではそのパイロット信号を受信して、そのパイロット信号に同期させる処理が行われる。同期処理は、受信したパイロット信号の内で、最も受信電界強度が強い基地局からのパイロット信号に同期させる処理が行われる。それぞれの基地局からのパイロット信号は、それぞれ異なる識別符号が付与された信号としてあり、端末で受信するパイロット信号の識別符号が変化した場合には、応答信号を各無線通信端末から返送する構成としてある。
【0021】
[2.パイロット信号とその検出状態の例]
CDMA方式の無線電話システムでは、基地局からのパイロット信号は、基準時間からのオフセットを持つPN符号(pseudorandom noise符号)を使用してある。このPN符号は、例えば図3に示すように構成される。この図3の例は、CDMA方式の1x方式の例であり、この例ではPN符号は1周期が80/3msecの長さを持ち、CDMA基準時間からのオフセット値nで示されている。オフセット値nは、0から255までの値で示される。オフセットを持つ各PN符号は、直交性があるため、それぞれのパイロット信号の独立性が維持され、お互いが干渉することがないシステムとなっている。例えば1つの基地局では、3つの識別コードのPN符号を、それぞれ異なる方向に送信する構成としてある(図6参照)。
【0022】
各無線通信端末では、受信したパイロット信号のオフセット量から、受信したパイロット信号がどの識別番号かを判別する構成としてある。判別した情報は、パイロット信号リストとして、無線通信端末1内の記憶部16などに記憶させてある。図4に示した送信カウンタNの値は、受信されるパイロット信号が変化する毎にインクリメントされる値である。その送信カウンタのN値のときに、受信したパイロット信号の種別(PN0〜PN255のいずれか)を記憶させてある。図4の例では、送信カウンタのN値を1から12として、12個のパイロット信号種別を記憶させてある。
また、各無線通信端末では、受信したパイロット信号の種別(識別コード)が変化したとき、その新たに受信されたパイロット信号の送信元に対して、応答信号を送信して、該当する基地局のエリアに端末が存在することを登録させる。この応答信号は、Pilot Strength Measurement Messageと称され、受信したパイロット信号の端末での受信強度を通知するデータが付加してある。
【0023】
そして本例の無線通信端末1では、受信したパイロット信号の変化を検出して応答信号(Pilot Strength Measurement Message)を送信すると、前回に応答信号を送信してから今回応答信号を送信するまでの間隔を判断する。例えば、前回に応答信号を送信した時刻と、現在の応答信号の送信時刻との差を、送信間隔TpΔとして記憶する。この送信間隔TpΔの判断は、例えばタイマの値から判断する。制御部12は、この送信間隔TpΔを、予め無線通信端末1内の記憶部16に記憶された閾値と比較して、歩数計測を行うのに適正な状況か否か判断する。
送信間隔TpΔは、例えば無線通信端末1内の記憶部16に、過去の値まで所定の複数個記憶させておき、ある程度過去まで、送信間隔TpΔの変化の履歴が、記憶データから判るようにしてある。具体的には、例えば図5に示すように、送信間隔TpΔとして、t1,t2,t3,・・・,t12の過去の12回の値を記憶させておく。また、図5の備考の欄に示したように、それぞれの記憶値が、どのパイロット信号からどのパイロット信号に変化したのかの履歴も、必要により記憶させておく。
【0024】
図2のフローチャートは、本例の無線通信端末1でのパイロット信号の受信による処理例を示した図である。このパイロット信号の受信による処理は、制御部12の制御で実行され、パイロット信号の受信とその変化に基づいた応答信号の送信は、無線電話用通信回路13で実行される。
まず、いずれかの基地局からのパイロット信号PNを受信して、その受信したパイロット信号PNにより同期確立させる(ステップS11)。その後、受信したパイロット信号に変化が検出されると(ステップS12)、応答信号(Pilot Strength Measurement Message)を基地局に対して送信する(ステップS13)。このときの送信回数をN回目とし、このとき受信したパイロット信号を、パイロット信号リストに追加する(ステップS14)。
このとき、送信カウンタNの値をインクリメントし(ステップS15)、タイマを起動させる(ステップS16)。この状態で、受信されるパイロット信号が変化するまで待機する。
【0025】
そして、受信したパイロット信号に変化が検出されると(ステップS17)、応答信号(Pilot Strength Measurement Message)を基地局に対して送信する(ステップS18)。このとき受信したパイロット信号を、パイロット信号リストに追加する(ステップS19)。
さらに、ステップS16で起動させたタイマの値に基づいて、前回応答信号を送信してから、今回応答信号を送信するまでの間隔TpΔを判断して、記憶させる(ステップS20)。その後、ステップS15の処理に戻って、受信されるパイロット信号が変化する毎に処理が繰り返される。
【0026】
ここで、実際に複数の基地局から異なるパイロット信号が送信される状況と、その状況の中で、無線通信端末1を所持したユーザが歩行した状態の例を、図6に示す。
この図6に示すように、複数の基地局BTS1〜BTS14が、ある程度の間隔で配置されているとする。図6の例では、1つの基地局から3つの種類のパイロット信号が、それぞれ異なる方向に送信されている状態を示している。例えば、左上の端の基地局BTS1からは、パイロット信号PN1,PN2,PN3が送信されている。これらのパイロット信号は、近隣の基地局では異なる種類となるようにしてある。
【0027】
この状態で、ここまで説明した構成の無線通信端末1に相当する携帯電話端末MS1を所持したユーザが、矢印Aで示すような経路で歩行して、携帯電話端末MS1′として示す位置まで移動したとする。
このような歩行があると、それぞれの位置で受信されるパイロット信号が、隣接した基地局が変化する毎に変化する。
【0028】
図7は、パイロット信号の変化に対する応答信号の送信状態の例を示した図である。
この図7の例では、ある目的地にほぼ静止している状態から、移動して、別の目的地に到達した場合の例を示したものである。それぞれの応答信号の送信位置に示したNの値は、パイロット信号リストに記憶される送信カウンタNの値を示したものであり、応答信号の送信間隔TpΔが、2つの応答信号の間の間隔として示される。
この図7に示すように、無線通信端末1が静止している状態では、応答信号の送信間隔TpΔは、非常に長い間隔となる。なお、静止した状態であっても、周囲の基地局の配置状態や無線通信環境の変化などで、同一位置で複数のパイロット信号を受信することがあり、そのために、送信カウンタNの値1,2,3で示すように、比較的長い送信間隔TpΔでの応答信号の送信が発生することがある。
【0029】
これに対して、歩行での移動中には、図6に示した矢印Aの経路の途中で隣接する基地局が変化することからも判るように、受信されるパイロット信号が次々変化することになる。このため、比較的短い送信間隔TpΔでの応答信号の送信が発生する。
本例においては、この送信間隔TpΔの変化を利用して、無線通信端末1を所持したユーザが歩行していない状態と、歩行している状態とを区別する。
【0030】
また、歩行時と、自動車などの車両に搭乗して高速に移動している状態についても、この送信間隔TpΔの変化で検出する。即ち、歩行しているときの送信間隔TpΔが、図8(a)に示した間隔Tsであるとすると、車両に搭乗して高速に移動しているときの送信間隔TpΔが、図8(b)に示した間隔Tfとなる。この図8(a)と図8(b)を比較すると判るように、高速移動中の間隔Tfと、歩行中の間隔Tsとを比較すると、高速移動中の間隔Tfの方が大幅に短くなり、Ts>>Tfの関係となる。
【0031】
本例の場合には、この静止に近い状態の送信間隔TpΔと、歩行時の送信間隔TpΔと、高速移動時の送信間隔TpΔの3つを区別する閾値を、予め無線通信端末1内の記憶部16に記憶させておく。そして、その記憶された閾値と送信間隔TpΔとを比較して、現在の無線通信端末1が、静止に近い状態と、歩行状態と、高速移動状態の3つの判別を行う。具体的には、静止に近い状態で現われる送信間隔TpΔと、歩行時に現われる送信間隔TpΔとの間で、閾値T1を設定する。また、歩行時に現われる送信間隔TpΔと、高速移動時に現われる送信間隔TpΔとの間で、閾値T2を設定する。
そして、現在の送信間隔が、閾値T1以下且つ閾値T2以上である場合に、ユーザが歩行中であると判断する。この歩行中であると判断した場合に、無線通信端末1内の制御部12は、加速度センサ21の出力の変動に基づいて、歩数計測を行う。また、閾値T1を越えていると判断した場合には、静止に近い状態であると判断して、無線通信端末1内の制御部12は、加速度センサ21の出力に変動があっても歩数計測を制限する。同様に、閾値T2より小さいと判断した場合にも、高速移動中と判断して、無線通信端末1内の制御部12は、加速度センサ21の出力に変動があっても歩数計測を制限する。ここでの制限とは、加速度センサ21の出力から制御部12が歩数計測を行う感度を落とす(下げる)ようにする。或いは、制御部12が歩数計測をしないように制限する。
【0032】
[3.歩数検出感度の調整例]
次に、この応答信号の送信間隔の判断に基づいて、歩数計測を行う感度を調整する例を、図9のフローチャートに示す。
図9に沿って説明すると、まず、初期状態では、加速度センサ21を起動させて、歩数計測モードで、計測を開始させる(ステップS31)。
そして、送信間隔TpΔが更新されたか否か判断し(ステップS32)、更新された場合には、閾値T1,T2と送信間隔TpΔとを比較する(ステップS33)。この比較で、送信間隔TpΔが閾値T1より大きい場合と、閾値T2より小さい場合には、歩行状態でないと判断して、歩数計測用の加速センサ21の検出感度を落とす(ステップS34)。歩数計測用の加速センサ21の検出感度を落とすことで、端末が大きく動きたときだけ、歩数のカウント動作が行われることになる。その後、ステップS32の判断に戻る。この加速センサ21の検出感度の設定は、例えば加速度センサ21の出力を増幅するアンプのゲインを可変させることで行う。
【0033】
また、ステップS33で、送信間隔TpΔが閾値T1より大きくなく、さらに閾値T2より小さくない場合(即ち閾値T1以下で閾値T2以上の場合)に、ユーザが歩行中であると判断して、歩数計測用の加速センサ21の検出感度を通常に設定する(ステップS35)。その後、ステップS32の判断に戻る。
【0034】
[4.実施の形態の処理構成による効果]
このようにして、加速度センサの検出感度を、歩行状態とその他の状態とで変えることで、歩数計測が良好に行えるようになる。即ち、歩数計測をする感度を落とした状態では、比較的大きな動きがあった場合にだけ、歩数のカウント動作が行われ、端末に加わる小さな加速度によっては、歩数のカウント動作が行われなくなる。従って、歩行時以外の誤検出を効果的に防止できるようになり、結果的に無線通信端末1に内蔵させた歩数計の計測精度が向上する。
しかも、本例の場合には、その歩行状態の判断を行う処理として、無線通信端末が元々基地局に同期させるために必要なパイロット信号の応答信号(Pilot Strength Measurement Message)の送信間隔を判断するだけでよく、制御のために新たに必要となる構成が殆どなく、低コストに実現できる効果を有する。
【0035】
[5.変形例の説明]
なお、上述した実施の形態では、端末が静止した状態と、歩行した状態と、歩行でない高速移動状態との3つの状態を区別するようにしたが、2つの状態を区別するだけとしてもよい。例えば、歩行した状態と、歩行でない高速移動状態とだけを、1つの閾値との比較で区別して、高速移動中の誤動作を防止するようにしてもよい。或いは、静止に近い状態と、歩行した状態とだけを、1つの閾値との比較で区別して、静止に近い状態での誤動作を防止するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、静止状態と高速移動状態については、加速度センサの感度を落として、大きく動いたときだけ歩数のカウント動作を行うようにしたが、これらの状態では全く歩数のカウントを行わないように制限してもよい。
また、上述した閾値T1,T2は、予め適正な値を設定するのが好ましいが、ユーザ操作で調整できるようにしてもよい。
【0036】
さらに上述した実施の形態では、CDMA方式で送信されるパイロット信号を利用した例について説明したが、その他の無線通信方式で基地局から送信されるパイロット信号或いはパイロット信号に準じた信号を受信して、利用するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、パイロット信号の変化を検出した際の応答信号の送信間隔を判断する構成としたが、パイロット信号の変化を検出した間隔を直接計測するようにしてもよい。
さらにまた、パイロット信号が変化する間隔としては、1回で計測された間隔を直接利用する場合の他に、複数回計測した間隔の平均値を、閾値と比較して、歩行状態か否か判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態による通信端末の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるパイロット信号の受信処理例を示すフローチャートである。
【図3】PN符号の構成例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるパイロット信号リストの例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるパイロット信号の応答信号の送信間隔の例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるパイロット信号の送信状態と歩行状態の例を示す概念図である。
【図7】本発明の一実施の形態によるパイロット信号の応答信号の送信間隔の変化例を示すタイミング図である。
【図8】本発明の一実施の形態による歩行中(a)と高速移動中(b)のパイロット信号の応答信号の送信間隔の例を示すタイミング図である。
【図9】本発明の一実施の形態による検出感度調整処理例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1…無線通信端末、11…アンテナ、12…制御部、13…無線電話用通信回路、14…表示部、15…操作部、16…記憶部、18…スピーカ、19…マイクロフォン、20…音声処理部、21…加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該端末に加わる加速度を検出する加速度センサと、
所定の基地局と無線通信を行う無線通信部と、
前記無線通信部で受信される、前記基地局から送信されるパイロット信号を検出するパイロット信号検出部と、
前記パイロット信号検出部でパイロット信号の変化を検出する時間間隔に基づいて、当該端末が歩行状態で移動している状態と、歩行でない状態とを区別し、歩行状態で移動している場合に、前記加速度センサの出力に基づいた歩数計測を行い、歩行状態でない場合に前記歩数計測の制限を行う歩数計測部とを備えた
無線通信端末。
【請求項2】
前記歩数計測部が前記パイロット信号の変化を検出する時間間隔は、前記パイロット信号検出部でパイロット信号の変化を検出した場合に、前記無線通信部から応答信号を送信させる時間間隔から判断する
請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記送信制御部の制御で前記無線通信部から送信させる応答信号は、前記パイロット信号の受信強度を通知する信号である
請求項2記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記歩数計測部は、前記応答信号の送信間隔が第1の閾値より大きいとき、当該端末が静止状態と判断し、前記応答信号の送信間隔が前記第1の閾値以下で、前記第1の閾値よりも小さな値の第2の閾値以上のとき、当該端末の所持者が歩行状態であると判断し、前記応答信号の送信間隔が前記第2の閾値より小さいとき、歩行状態でない高速移動状態であると判断する
請求項3記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記応答信号の送信間隔が第1の閾値より大きいときと、前記第2の閾値より小さいときには、前記歩数計測部は、前記加速度センサの出力感度を低下させて歩数計測を行う
請求項4記載の無線通信端末。
【請求項6】
所定の基地局との無線通信で前記基地局から送信されるパイロット信号を受信して検出するパイロット信号検出処理と、
前記パイロット信号検出処理で受信したパイロット信号の変化を検出する時間間隔を判断し、その判断した送信間隔に基づいて、当該端末が歩行により移動している状態と、歩行でない状態とを区別し、歩行状態で移動している場合に、加速度センサの出力に基づいた歩数計測を行い、歩行状態でない場合に前記歩数計測の制限を行う歩数計測処理とを行う
無線通信端末における歩数計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−118956(P2010−118956A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291450(P2008−291450)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】