説明

無線通信端末

【課題】アドホックモードにより形成された無線ネットワークにおいて、認証要求端末から認証要求され、すでに接続中の他の無線通信端末との通信を中断させずに、認証要求端末が接続認証されない理由をユーザに通知する無線通信端末を提供する。
【解決手段】無線通信端末100が、無線ネットワーク1に属する無線通信端末300若しくは無線通信端末400及び無線ネットワーク1に属さない無線通信端末200と無線通信する無線通信部102と、トリガ検出する制御部110と、無線通信端末300または無線通信端末400と通信中であるか否かを判定し、無線通信端末300または無線通信端末400と通信中である場合であってトリガ検出された場合に、無線ネットワーク1に属さない無線通信端末200からの当該無線ネットワークへの接続要求に対して、肯定的な応答の送信を禁止するよう無線通信部102を制御する制御部110と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末間で直接相互通信する無線ネットワークを形成する無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
無線ネットワークに参加するため接続認証を要求する通信端末(以下、「認証要求端末」と称する)が、認証要求を認証端末に無線送信し、そのネットワークに参加するために必要な接続設定データ(例えば、ネットワーク識別子、通信暗号方式、暗号鍵など)を、認証端末から受信することで、認証要求端末が認証端末に接続認証され、そのネットワークに参加することを可能とする、WPS(Wi−Fi Protected Setup)に代表される無線ネットワーク接続認証方法が注目されている。
【0003】
さらにWPSには、ユーザにとって接続開始操作と認証指示操作が簡便な「プッシュボタン方式」(Push Button Configuration)(以下、「PBC」と称する)と呼ばれる無線ネットワーク接続認証方法がある。PBCでは、認証要求端末と、認証端末と、の双方に操作ボタンが備えられ、ユーザがこれら双方の操作ボタンを押下することにより、その後はユーザの操作によらずに認証要求端末と認証端末との無線接続と認証が行われることで、認証要求端末はその無線ネットワークに参加することができるようになる。
【0004】
従来のPBCは、認証端末であるアクセスポイントを介して接続するインフラストラクチャーモードにより形成された無線ネットワークに、認証要求端末が参加することを想定した接続認証方法であった。このため認証要求端末は、認証端末であるアクセスポイントに接続認証されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−215232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アクセスポイントを介さずに端末間で直接相互通信するアドホックモードにより形成された無線ネットワークに、このPBCを適用する場合、アドホックモードではその無線ネットワーク専用の認証端末が無いため、その無線ネットワークに属する無線通信端末のいずれかが認証端末となる必要がある。このため認証端末となった無線通信端末は、認証要求端末を接続認証する処理を実行してしまうと、すでに接続中の他の無線通信端末との通信が一時的に途絶える可能性があった。
【0007】
本発明は、前記の諸点に鑑みてなされたものであり、アドホックモードにより形成された無線ネットワークにおいて、認証要求端末から認証要求され、すでに接続中の他の無線通信端末との通信を中断させずに、認証要求端末が接続認証されない理由をユーザに通知する無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、通信端末が直接相互通信する無線ネットワークに属する他の通信端末及び前記無線ネットワークに属さない通信端末と無線通信する通信部と、所定のトリガを検出する検出部と、前記無線ネットワークに属さない通信端末と、無線通信する通信部と、前記他の通信端末と通信中であるか否かを判定し、前記他の通信端末と通信中であると判定した場合であって前記トリガが検出された場合に、前記無線ネットワークに属さない通信端末からの当該無線ネットワークへの接続要求に対して、肯定的な応答の送信を禁止するよう前記通信部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする無線通信端末である。
【0009】
また本発明は、所定のデータを表示する表示部を備え、前記制御部は、前記他の通信端末と通信中に、無線接続設定ができない旨を示すデータを表示するよう前記表示部を制御することを特徴とする無線通信端末である。
【0010】
また本発明は、前記制御部が、前記通信部が所定の通信データを所定の時間内に入力または出力した場合に、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする無線通信端末である。
【0011】
また本発明は、前記制御部が、前記通信部が使用するバッファにデータが存在する場合に、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする無線通信端末である。
【0012】
また本発明は、前記制御部が、前記通信部に所定の通信データを入力または出力させる場合に、通信中であることを示すフラグデータに値を設定し、前記フラグデータに基づいて、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする無線通信端末である。
【0013】
また本発明は、前記制御部が、前記制御部が前記通信部に所定の通信データを入力または出力するための記憶領域が記憶部に割り当てられている場合に、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする無線通信端末である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アドホックモードにより形成された無線ネットワークにおいて、無線通信端末が他の無線通信端末と通信中である場合に、その無線通信端末は、認証要求端末との無線接続設定をしないので、接続中の通信が中断されない。
【0015】
また、すでに他の無線通信端末と通信中であるために認証要求端末を接続認証することができない旨を、無線通信端末はユーザに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における無線ネットワーク1を形成する各無線通信端末の構成と、無線ネットワーク1に属する無線通信端末100に認証要求する無線通信端末200と、を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における無線通信端末100のアプリケーションプログラム実行部112の動作を示すフローチャートである。
【図3】押下操作信号が入力された場合における、認証要求端末と認証端末の動作を示すWPSのシーケンス図である。
【図4】番号入力操作信号が入力された場合における、認証要求端末と認証端末の動作を示すWPSのシーケンス図である。
【図5】認証端末が自己のPINコードを受信した場合における、認証要求端末と認証端末の動作を示すWPSのシーケンス図である。
【図6】本発明の一実施形態における無線通信端末100のアプリケーションプログラム実行部112の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
本発明を実施するための一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態における無線ネットワーク1を形成する各無線通信端末の構成と、無線ネットワーク1に属する無線通信端末100に認証要求する無線通信端末200と、を示す図である。無線ネットワーク1は、無線通信端末100と、無線通信端末300と、無線通信端末400と、を備える。ここで無線通信端末200は、無線ネットワーク1に属していないものとする。
【0018】
無線通信端末100は、操作部101と、無線通信部102と、表示部103と、記憶部104と、制御部110と、を備える。操作部101は、例えば操作ボタンであって、押下操作を検出した場合、押下操作信号を制御部110に出力する。また操作部101は、例えば認証要求端末のPIN(Personal Identification Number)コードなどの番号を入力する操作を検出した場合、このPINコードの入力操作に基づいて、制御部110のアプリケーションプログラム実行部112等に番号入力操作信号を出力する。ここで番号入力操作信号には、入力された番号が含まれる。また操作部101は、他の無線通信端末と無線通信する処理を開始させるための操作入力を検出した場合、アプリケーションプログラム実行部112等に開始信号を出力する。
【0019】
無線通信部102は、記憶部104に設けられた送信バッファ(不図示)に記憶されたデータを取得し、他の無線通信端末と無線通信する。また無線通信部102は、他の無線通信端末から送信されたデータ(例えば、WPSにおける、プローブリクエスト(Probe Request)、EAP(Extensible Authentication Protocol)リクエストなど)を受信して、記憶部104に設けられた受信バッファ(不図示)を介して、ドライバ実行部113に出力する。
【0020】
無線通信部102は自らへのデータの入出力を監視し、所定の時間内にデータの入出力がなかった場合、所定の時間内にデータの入出力がなかったことを、ドライバ実行部113を介してアプリケーションプログラム実行部112に通知する。一方、所定の時間内にデータの入出力があった場合、無線通信部102は、所定の時間内にデータの入出力があったことを、ドライバ実行部113を介してアプリケーションプログラム実行部112に通知する。
【0021】
表示部103は、例えば液晶パネル等であって、オペレーティングシステム実行部111を介してアプリケーションプログラム実行部112から制御される。表示部103は、アプリケーションプログラム実行部112から文字データ等を取得し、この文字データ等を表示する。なお表示部103は、例えば発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)等であってもよく、アプリケーションプログラム実行部112の制御に応じて、発光色を切り替えるとしてもよい。
【0022】
制御部110は、例えば中央演算処理装置であって、オペレーティングシステム実行部111と、アプリケーションプログラム実行部112と、ドライバ実行部113と、が動作する。
【0023】
オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113が使用する記憶領域を記憶部104に割り当てる。これによりドライバ実行部113は処理を起動する。またオペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113が使用する記憶領域を記憶部104から削除する。これによりドライバ実行部113は処理を終了する。オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113が起動することを許可するためのシステムコール(サービスコール)をアプリケーションプログラム実行部112から受信した場合、ドライバ実行部113が起動することを許可する。またオペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113が起動することを禁止するためのシステムコール(サービスコール)をアプリケーションプログラム実行部112から受信した場合、ドライバ実行部113が起動することを禁止する。
【0024】
ドライバ実行部113が使用する受信バッファ(不図示)または送信バッファ(不図示)にデータが記憶されているか否かを問い合わせるシステムコール(サービスコール)をアプリケーションプログラム実行部112から受信した場合、オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113が使用する受信バッファ(不図示)または送信バッファ(不図示)の少なくともいずれかにデータが記憶されているか否かを、アプリケーションプログラム実行部112に出力する。
【0025】
オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113が起動中か否かを問い合わせるシステムコール(サービスコール)をアプリケーションプログラム実行部112から受信した場合、ドライバ実行部113が起動中か否かと、その起動が無線通信部102に通信データを入出力するための起動か否かを示す識別子と、をアプリケーションプログラム実行部112に出力する。
【0026】
オペレーティングシステム実行部111は、無線通信部102から制御部110にデータ入力があった場合に、ドライバ実行部113を起動する。オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113がそのデータをアプリケーションプログラム実行部112に出力した場合に、ドライバ実行部113を終了させる。同様にオペレーティングシステム実行部111は、アプリケーションプログラム実行部112からデータ出力する場合に、ドライバ実行部113を起動し、ドライバ実行部113がそのデータを制御部110から出力した場合に、ドライバ実行部113を終了させる。
【0027】
ドライバ実行部113は通信ドライバとして動作し、記憶部104に設けられた受信バッファ(不図示)に無線通信部102が受信して一時記憶(バッファリング)されたデータを、アプリケーションプログラム実行部112に出力する。またドライバ実行部113は、記憶部104に設けられた送信バッファ(不図示)に、無線通信部102に送信させるデータを記憶させる。
【0028】
ドライバ実行部113は、所定の時間内にデータの入出力があったか否かについて無線通信部102から通知された場合、その通知をアプリケーションプログラム実行部112に転送する。
【0029】
ドライバ実行部113は、無線通信部102から制御部110にデータ入力があった場合に、オペレーティングシステム実行部111により起動され、ドライバ実行部113がそのデータをアプリケーションプログラム実行部112に出力した場合に、オペレーティングシステム実行部111により終了される。同様に、ドライバ実行部113は、アプリケーションプログラム実行部112からデータ出力する場合に、オペレーティングシステム実行部111により起動され、ドライバ実行部113がそのデータを制御部110から出力完了した場合に、オペレーティングシステム実行部111により終了される。
【0030】
アプリケーションプログラム実行部112は、文字データ等を表示部103に出力する。またアプリケーションプログラム実行部112は、押下操作信号と、番号入力操作信号と、を操作部101から取得する。またアプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113を介して無線通信部102から自己のPINコードを取得する。
【0031】
アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113が起動することを許可するためのシステムコール(サービスコール)システムコール(サービスコール)、またはドライバ実行部113が起動することを禁止するためのシステムコール(サービスコール)を、オペレーティングシステム実行部111に送信する。
【0032】
通信中か否かの判定には、次のような判定条件がある。第1の判定条件を用いる場合、アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113が起動中か否かを問い合わせるシステムコール(サービスコール)を所定の周期でオペレーティングシステム実行部111に送信し、ドライバ実行部113が「起動中または起動待ち」であるか否か、を判定する。ドライバ実行部113が「起動中または起動待ち」であり、識別子が通信データを入出力するための起動であることを示した場合、アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113が通信中であると判定する。一方、アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113が「起動中または起動待ち」でない場合、ドライバ実行部113が通信中でないと判定する。
【0033】
第2の判定条件を用いる場合、アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113が使用する受信バッファ(不図示)または送信バッファ(不図示)に通信データが記憶されているか否かを問い合わせるシステムコール(サービスコール)を所定の周期でオペレーティングシステム実行部111に送信し、ドライバ実行部113が使用する、受信バッファ(不図示)または送信バッファ(不図示)の少なくともいずれかに、通信データが記憶されているか否か、を判定する。受信バッファ(不図示)または送信バッファ(不図示)の少なくともいずれかに、通信データが記憶されている場合、アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113が通信中であると判定する。一方、アプリケーションプログラム実行部112は、送信バッファ(不図示)と受信バッファ(不図示)のいずれにもデータが記憶されていない場合、ドライバ実行部113が通信中でないと判定する。
【0034】
第3の判定条件を用いる場合、アプリケーションプログラム実行部112は、所定の時間内に無線通信部102にデータの入出力がなかったことをドライバ実行部113から通知された場合、無線通信部102が通信中でないと判定する。一方、アプリケーションプログラム実行部112は、所定の時間内に無線通信部102にデータの入出力があった場合、無線通信部102が通信中であると判定する。
【0035】
アプリケーションプログラム実行部112は、無線通信部102が受信して記憶部104に設けられた受信バッファ(不図示)に記憶されたデータを、ドライバ実行部113から取得する。またアプリケーションプログラム実行部112は、他の無線通信端末に送信する所定のデータを、ドライバ実行部113に出力する。
【0036】
アプリケーションプログラム実行部112は、自らが通信中、すなわち無線通信端末に送信する所定のデータをドライバ実行部113に出力した場合、通信中であることを示すフラグ(初期値「0」)に値「1」を加算して、記憶部104に記憶させる。アプリケーションプログラム実行部112は、通信中でない、すなわちすなわち無線通信端末に送信する所定のデータをドライバ実行部113に出力していない場合、通信中であることを示すフラグから値「1」を減算して、記憶部104に記憶させる。なお、アプリケーションプログラム実行部は複数あってもよく、通信中であることを示すフラグが値「0」でない場合は、いずれかのアプリケーションプログラム実行部が通信中であることを示す。
【0037】
アプリケーションプログラム実行部112は、無線通信部102が認証要求(例えば、WPSにおけるプローブリクエスト)を受信し、さらに押下操作信号または番号入力操作信号を操作部101から取得した場合、プローブレスポンス(肯定的な応答)を認証要求端末に送信し、認証要求を送信した無線通信端末(認証要求端末)との無線接続設定を実行する(図3、図4に後述)。即ち、押下操作信号または番号入力操作信号の取得というトリガを検出した場合、上述の無線接続設定を実行する。また、プローブリクエストに含まれた自己のPINコードを無線通信部102が受信した場合、プローブレスポンス(肯定的な応答)を認証要求端末に送信し、認証要求を送信した無線通信端末(認証要求端末)との無線接続設定を実行する(図5に後述)。なおアプリケーションプログラム実行部112は、WPSによって無線接続設定を実行した後に、さらに接続認証処理を実行する。即ち、自己のPINコードの受信というトリガを検出した場合、上述の無線接続設定を実行する。したがって、制御部110のアプリケーションプログラム実行部112は、トリガを検出する検出部でもある。
【0038】
アプリケーションプログラム実行部112は、表示部103に表示させる文字データ、例えば、他の端末と通信中でない場合に「接続認証のための無線接続設定をすることができます」。他の端末と通信中である場合に「他の端末と通信中です。接続認証のための無線接続設定をすることができません」等を作成し、表示部103に出力する。
【0039】
図2は、本発明の一実施形態における無線通信端末100のアプリケーションプログラム実行部112の動作を示すフローチャートである。以下、無線通信端末200(認証要求端末)を無線ネットワーク1に参加させるため、無線通信端末100(認証端末)と無線通信端末200の双方の操作ボタンをユーザが押下操作することにより、無線通信端末200が無線通信端末100に認証要求データを送信する場合について説明する。また図2のフローチャートに示した動作は、アプリケーションプログラム実行部112によって所定の周期(例えば、100ms周期)で実行される。
【0040】
ユーザが無線通信端末200の操作ボタン(不図示)を押下操作することにより、無線通信端末200は、WPSによって認証要求を無線送信する。無線通信部102は、無線通信端末200が送信した認証要求を受信する。無線通信部102は、記憶部104に設けられた受信バッファ(不図示)に認証要求を出力する。
【0041】
データの入力があったため、オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113を起動する。ドライバ実行部113は、受信バッファ(不図示)に一時記憶されたデータ(認証要求など)を、アプリケーションプログラム実行部112に出力する。オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113を終了させる。
【0042】
アプリケーションプログラム実行部112は、他の無線通信端末と無線通信する処理の起動受付を禁止する。例えば、他の無線通信端末に記憶された動画ファイルデータを無線通信で取得しながら動画再生する処理の開始を要求する「開始信号」が操作部101から出力された場合、アプリケーションプログラム実行部112は、この開始信号を受け付けず、動画ファイルデータを無線通信によって取得する処理を開始しない。このようにして、アプリケーションプログラム実行部112は、通信中に無線接続設定を変更することがないようにする(ステップS1)。
【0043】
次に、アプリケーションプログラム実行部112は、前述の判定条件のいずれかを用いて、他の通信端末と通信中か否かについて判定する。例えば、アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113が使用する受信バッファ(不図示)または送信バッファ(不図示)に通信データが記憶されているか否かを問い合わせるシステムコール(サービスコール)をオペレーティングシステム実行部111に送信し、ドライバ実行部113が使用する、受信バッファ(不図示)または送信バッファ(不図示)の少なくともいずれかにデータが記憶されているか否か、を判定する(ステップS2)。通信中であると判定した場合、アプリケーションプログラム実行部112は、文字データ「他の端末と通信中です。接続認証のための無線接続設定をすることができません。」等を作成し、表示部103に出力する。
【0044】
オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113を起動する。ドライバ実行部113は、取得した文字データを表示部103に出力する。オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113を終了させる。表示部103は、入力された文字データ等を表示する。なお表示部103は、例えば赤色に発光するとしてもよい(ステップS7)。その後、アプリケーションプログラム実行部112は、他の無線通信端末と無線通信する処理の起動受付を許可する(ステップS6)。
【0045】
一方、ステップS2において通信中でないと判定した場合、アプリケーションプログラム実行部112は、文字データ「他の通信端末と通信中でないため、無線接続設定をすることができます。」等を作成し、表示部103に出力する。表示部103は、入力された文字データ等を表示する。なお表示部103は、例えばLEDで緑色に発光するとしてもよい(ステップS3)。
【0046】
続いて、アプリケーションプログラム実行部112は、押下操作信号若しくは番号入力操作信号が入力されたか、または自己のPINコードを受信したか否かについて判定する(ステップS4)。即ち、押下操作信号若しくは番号入力操作信号の入力、自己のPINコードの受信というトリガを検出する。図3は、押下操作信号が入力された場合における、認証要求端末と認証端末の動作を示すWPSのシーケンス図である。また図4は、番号入力操作信号が入力された場合における、認証要求端末と認証端末の動作を示すWPSのシーケンス図である。
【0047】
ステップS3で、無線接続設定可である旨の表示を確認したユーザは、操作部101を押下操作、番号入力操作(認証要求端末PINコード入力操作)したとする。操作部101は、ユーザによる操作を検出したため、操作入力に基づいて、押下操作信号または番号入力操作信号を制御部110に出力する。制御部110のアプリケーションプログラム実行部112は、押下操作信号または番号入力操作信号に含まれるデータを取得する。これをトリガとして、アプリケーションプログラム実行部112は、WPSにおけるEAPリクエストとEAPレスポンスを用いて共通鍵の交換をし、無線接続設定を行う。
【0048】
また図5は、認証端末が自己のPINコードを受信した場合における、認証要求端末と認証端末の動作を示すWPSのシーケンス図である。ここで、無線通信部102がプローブリクエストに含まれた自己のPINコードを受信したとする。無線通信部102は、受信した自己のPINコードを制御部110に出力する。制御部110のアプリケーションプログラム実行部112は、受信したPINコードが表示部103に表示している自己のPINコードと一致しているかを確認し、一致が確認された場合は、これをトリガとして、WPSにおけるEAPリクエストとEAPレスポンスを用いて共通鍵の交換をし、無線接続設定を行う(ステップS5)。
【0049】
アプリケーションプログラム実行部112は、無線接続設定を実行した後に、WPSによって接続認証を実行する(図3、図4、図5)。さらにアプリケーションプログラム実行部112は、ステップS6に移行して、処理を終了する。
【0050】
[第2の実施の形態]
各ブロックの構成は、第1の実施の形態(図1)と同構成を有する。認証要求端末と認証端末の動作を示すWPSのシーケンス図(図3から図5)も同様である。図2に示したフローチャートは、以下のようにしてもよい。図6は、本発明の一実施形態における無線通信端末100のアプリケーションプログラム実行部112の動作を示すフローチャートである。図6のフローチャートに示した動作は、アプリケーションプログラム実行部112によって所定の周期(例えば、100ms周期)で実行される。
【0051】
アプリケーションプログラム実行部112は、認証要求を受信したため、ドライバ実行部113の起動を禁止するためのシステムコール(サービスコール)をオペレーティングシステム実行部111に送信する。これによりオペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113の起動を禁止する。また、オペレーティングシステム実行部111に起動された別のドライバ実行部(不図示)が送信バッファ(不図示)または受信バッファ(不図示)を操作してしまうことを防止する(ステップSa1)。
【0052】
ステップSa2からステップSa5は、図2のステップS2からステップS5と同様である。ステップSa5またはステップSa7の次に、アプリケーションプログラム実行部112は、ドライバ実行部113の起動を許可するためのシステムコール(サービスコール)をオペレーティングシステム実行部111に送信する。オペレーティングシステム実行部111は、ドライバ実行部113の起動を許可する(ステップSa6)。ステップSa7は、図2のステップS7と同様である。
【0053】
以上、本発明の実施の形態により、アドホックモードにより形成された無線ネットワーク1において、無線通信端末100が他の無線通信端末と通信中である場合に、無線通信端末200から送信された認証要求を受信した無線通信端末100は、無線通信端末200との無線接続設定をしないので、接続中の通信が中断されずに済む。
【0054】
また、無線通信端末100は、すでに他の無線通信端末と通信中であるために無線通信端末200が接続認証されない旨を、ユーザに通知することができる。
【0055】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0056】
また、本発明に記載の無線通信端末は、無線通信端末100に対応し、無線ネットワークに属する他の通信端末は、無線通信端末300と、無線通信端末400と、に対応し、無線ネットワークに属さない通信端末は、無線通信端末200に対応し、通信部は、無線通信部102に対応し、制御部は、制御部110に対応し、検出部は、制御部110と、アプリケーションプログラム実行部112と、に対応し、表示部は、表示部103に対応し、記憶部は、記憶部104に対応する。
【0057】
また、図2に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、通信端末の実行処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0058】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0059】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、端末間で直接相互通信する無線ネットワークを形成する無線通信端末に好適である。
【符号の説明】
【0061】
100…無線通信端末 101…操作部 102…無線通信部 103…表示部 104…記憶部 110…制御部 111…オペレーティングシステム実行部 112…アプリケーションプログラム実行部 113…ドライバ実行部 200…無線通信端末 300…無線通信端末 400…無線通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末が直接相互通信する無線ネットワークに属する他の通信端末及び前記無線ネットワークに属さない通信端末と無線通信する通信部と、
所定のトリガを検出する検出部と、
前記他の通信端末と通信中であるか否かを判定し、前記他の通信端末と通信中であると判定した場合であって前記トリガが検出された場合に、前記無線ネットワークに属さない通信端末からの当該無線ネットワークへの接続要求に対して、肯定的な応答の送信を禁止するよう前記通信部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
所定のデータを表示する表示部を備え、
前記制御部は、前記他の通信端末と通信中に、無線接続設定ができない旨を示すデータを表示するよう前記表示部を制御することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信部が所定の通信データを所定の時間内に入力または出力した場合に、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記制御部は、前記通信部が使用するバッファにデータが存在する場合に、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記制御部は、前記通信部に所定の通信データを入力または出力させる場合に、通信中であることを示すフラグデータに値を設定し、前記フラグデータに基づいて、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記制御部は、前記制御部が前記通信部に所定の通信データを入力または出力するための記憶領域が記憶部に割り当てられている場合に、前記他の通信端末と通信中であると判定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−245778(P2010−245778A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91398(P2009−91398)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】