説明

無線通信装置、無線通信システム、および、無線通信方法

【課題】複数の通信相手に対して高信頼で無線通信するためのアンテナダイバーシティのアンテナ選択処理を提供すること。
【解決手段】基地局10は、各中継局20から通信品質の計測結果の通知を受けると、各中継局20における最も通信品質の計測結果が高い基準信号の送受信に使用されるアンテナ431a,431bとアンテナ431c,431dとの組み合わせを特定し、その特定したアンテナ431aを無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択し、各中継局20は、基地局10によって選択された無線信号のブロードキャストに使用するアンテナ431aを送信用アンテナとしたときの、通信品質の計測結果が最高となるアンテナ431c,431dを、無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム、および、無線通信方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において複数のアンテナを無線通信装置に設けることで、無線通信時に受信特性のよいアンテナを選択するアンテナダイバーシティにより、無線通信の通信信頼性を向上させることができる。
【0003】
特許文献1に記載のアンテナダイバーシティでは、送受信に同一の周波数を用い、所定の周期で送受信を切り替えて通信を行い、複数系統のアンテナの中から通信に用いるアンテナを選択することで、通信相手装置と同じタイミングでのアンテナを切り替えることを防ぐ。
【0004】
特許文献2に記載のアンテナダイバーシティでは、複数のアンテナから無線通信に使用するアンテナを選択した後、そのアンテナで使用する無線通信方式の優先度を計算する優先度計算処理により、無線通信方式の優先順位付けのための処理量を削減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−206549号公報
【特許文献2】特開2011−9964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のアンテナダイバーシティでは、複数系統のアンテナの中から通信に用いるアンテナを選択するときに、アンテナの通信指標(電波強度など)を参照していたが、この指標は、ユニキャスト(1:1通信)で測定される指標である。しかし、基地局から送信される無線信号は、その基地局の周囲に存在する複数の無線端末に対して一斉に送信される信号であることも多い(ブロードキャストなどの「1:多」通信)。
【0007】
よって、「1:多」通信におけるアンテナダイバーシティのアンテナ選択処理としては、従来のアンテナダイバーシティでは、充分な通信精度を得られなかった。そのため、「1:多」の無線通信を高信頼に行うためのアンテナ選択処理を行う必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、複数の通信相手に対して高信頼で無線通信するためのアンテナダイバーシティのアンテナ選択処理を提供することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、複数の無線通信装置間で無線通信を行う無線通信システムであって、
前記各無線通信装置が、それぞれ自身が無線通信に使用するアンテナを複数本有しており、
無線通信システムを構成する前記無線通信装置のうちの送信側装置が、無線通信システムを構成する前記無線通信装置のうちの複数台の受信側装置に対して、アンテナの通信品質を測定するための基準信号を、自身の複数本の送信側アンテナそれぞれを介して送信し、
前記各受信側装置が、自身の複数本の受信側アンテナそれぞれについて前記基準信号を受信することによって、前記各受信側アンテナについての前記通信品質を計測して、その計測結果を前記送信側装置に通知し、
前記送信側装置が、前記各受信側装置から前記通信品質の計測結果の通知を受けると、前記各受信側装置における最も前記通信品質の計測結果が高い前記基準信号の送受信に使用される前記送信側アンテナと前記受信側アンテナとの組み合わせを特定し、その特定した前記送信側アンテナが最も多いものを、無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択し、
前記各受信側装置が、前記送信側装置によって選択された無線信号のブロードキャストに使用するアンテナを送信用アンテナとしたときの、前記通信品質の計測結果が最高となる前記受信側アンテナを、無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の通信相手に対して高信頼で無線通信するためのアンテナダイバーシティのアンテナ選択処理を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に関する本実施形態の無線通信システムを示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に関する図1の無線通信システムにおいて、中継局が1本のアンテナで無線通信する形態を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に関する図1の無線通信システムにおいて、中継局が2本のアンテナで無線通信する形態を示す構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に関する図1の無線通信システムを構成する基地局の詳細を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に関するユニット式電力量計の構成図の例である。
【図6】本発明の一実施形態に関する無線ノード(中継局、無線端末)を示す構成図である。
【図7】本発明の一実施形態に関する無線通信システムにおける無線信号の伝送手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に関する無線通信システムにおいて、下流への通信として伝送される各無線信号についての送信のタイミングを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、各図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の無線通信システムを示す構成図である。
無線通信システムは、基地局10と、各中継局20(中継局20a〜中継局20c)と、各無線端末30(無線端末30a〜無線端末30g)とから構成される。無線通信システムとして、電力使用量の検針業務における自動検針システムへ適用するときには、各中継局20や各無線端末30は、ユニット式電力量計40(図5で後記)に内蔵される無線通信手段である。
なお、無線通信システムを構成する装置(以下、適宜「無線ノード」とする)の台数は、図1で例示した比較的小規模な台数に限定されず、数100台以上となるような大規模な台数としてもよい。
これらの無線通信システムを構成する各装置間は、無線通信の電波が伝達される仮想的なリンクである無線リンク100(無線リンク100a〜100j)によって接続されている。これらの無線リンク100は、無線通信によって双方向のいずれにも通信可能である。
【0014】
以下、本実施形態では、無線ノード間の通信の場所や方向を示すために、以下の用語を用いる。
基地局10を無線信号の送信元とし、その無線信号が基地局10から直接無線リンク100で接続される他無線ノードへと伝搬し(第1ホップとする)、さらにその第1ホップの無線ノードから直接無線リンク100で接続される他無線ノードへと伝搬する(第2ホップとする)。
例えば、基地局10→中継局20a(第1ホップ)→無線端末30d(第2ホップ)の順に、無線信号が送信される。
第1ホップの通信に使用される無線リンク100は、無線リンク100a〜100fである。
第2ホップの通信に使用される無線リンク100は、無線リンク100g〜100jである。
【0015】
このように、基地局10を始点として第1ホップ→第2ホップの順に送信される通信を「下流への通信」と呼ぶ。同様に、「下流への通信」への応答として、第2ホップ→第1ホップ→基地局10へと返信される通信を「上流への通信」と呼ぶ。
【0016】
図2は、図1の無線通信システムにおいて、中継局20が1本のアンテナ431で無線通信する形態を示す構成図である。
第1ホップの通信として、基地局10は、アンテナ431aを使用して、無線信号101a〜101cを同じブロードキャストの無線信号として送信して、中継局20a〜20cにてそれぞれ受信させる。
同様に、第1ホップの通信として、基地局10は、アンテナ431bを使用して、無線信号102a〜102cを同じブロードキャストの無線信号として送信して、無線端末30a〜30cにてそれぞれ受信させる。
なお、図2や後記する図3で示すアンテナ431間の実線矢印は、無線信号の送受信に使用される電波の流れを示すものであるが、実線矢印が図示されていないアンテナ431間にも、電波は送信されている。
【0017】
【表1】

【0018】
表1は、図2の無線通信システムにおける通信品質の測定結果を、第1ホップの送信先ごとに示す表である。通信品質の評価値は、0〜100までの範囲とし、評価値が高いほどよい通信品質を示す。
通信品質としては、各種の通信測定パラメータ、例えば、通信成功率、ビットエラー率、パケットエラー率、受信信号の電力強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indication)を単独または組み合わせて求める。
例えば、以下の計算式により、RSSIが高くても通信成功率が低い状況(外来ノイズが多い場合や、建物からの反射波によるマルチパスフェージングが生じる場合)でも、RSSIへの重み値が小さいので、高精度な通信品質を求めることができる。
通信品質 =(RSSI)×重み値「0.3」+(通信成功率)×重み値「0.7」
なお、この計算式における(通信成功率)は、ビットエラー率とパケットエラー率とで代替してもよい。
【0019】
表1の第1レコードによると、中継局20aのアンテナ431は、基地局10のアンテナ431aから送信された基準信号を通信品質「100」で受信し、基地局10のアンテナ431bから送信された基準信号を通信品質「70」で受信する。このように、同じ基地局10のアンテナでも受信時の通信品質が異なる要因としては、例えば、アンテナの向きや、各無線ノードの配置、周囲の反射物の影響や空間ノイズなど、さまざまな要因がある。
そのため、基地局10は、アンテナ431を複数設けるアンテナダイバーシティとし、基地局10から無線信号を受信する各無線ノードは、アンテナ431aおよびアンテナ431bのうちの通信品質が高いアンテナを選択することで、安定した無線通信を実現できる。
【0020】
よって、中継局20a〜中継局20cは、それぞれアンテナ431aの通信品質がアンテナ431bの通信品質を上回っているため、アンテナ431aを無線通信手段として選択する(表1および後記する表2において、選択したアンテナを示す「(選択)」の文字列を、評価値の右に併記する)。
一方、無線端末30a〜無線端末30cは、それぞれアンテナ431bの通信品質がアンテナ431aの通信品質を上回っているため、アンテナ431bを無線通信手段として選択する。
【0021】
さらに、表1では、第2ホップの送信先(無線端末30d〜30g)は測定対象から省略されているが、もし基地局10からの基準信号を所定レベル以上の通信品質で受信できたときには、中継局20a〜中継局20cを経由せず、直接基地局10から無線信号を受信することとしてもよい(換言すると、第2ホップから第1ホップへと昇格してもよい)。
【0022】
図2に戻り、第2ホップの通信として、以下に示すように、中継局20a〜20cが、それぞれ無線端末30d〜30gに無線信号を送信する。
中継局20aは、無線信号101aで伝送された通信データを無線信号103で中継して送信し、無線端末30dに受信させる。
中継局20bは、無線信号101bで伝送された通信データを無線信号104a,104bで中継して送信し、無線端末30e,30fに受信させる。
中継局20cは、無線信号101cで伝送された通信データを無線信号105で中継して送信し、無線端末30gに受信させる。
【0023】
図3は、図1の無線通信システムにおいて、中継局20が2本のアンテナ431c,431dで無線通信する形態を示す構成図である。
図3と図2との違いは、第1ホップの通信として、基地局10が、アンテナ431aを使用して、無線信号101a〜101cを同じブロードキャストの無線信号として送信して、中継局20a〜20cにてそれぞれ受信させる処理である。
この受信処理において、中継局20a〜20cは、それぞれ自身に接続されている2本のアンテナ431c,431dのうちの通信品質のよいアンテナを使用する。なお、通信品質の測定処理は、例えば、測定用の基準信号を複数回通信することで実施される。その結果、中継局20a,中継局20bでは、1本目のアンテナ431cが選択され、中継局20cでは、2本目のアンテナ431dが選択される。
【0024】
さらに、中継局20a〜20cは、第2ホップの通信として、無線端末30d〜30gに無線信号を送信するときも、第1ホップの通信と同様に、自身に接続されている2本のアンテナ431c,431dのうちの通信品質のよいアンテナを使用する。
【0025】
【表2】

【0026】
表2は、図3の無線通信システムにおける通信品質の測定結果を、第1ホップの送信先ごとに示す表である。表1との相違点として、中継局20a〜中継局20cがそれぞれ2本のアンテナ431c,431dを備えているので、通信品質の測定値は、アンテナごとに表記される。
【0027】
そして、図3の無線通信システムでは、表2に示す通信品質の測定結果が揃った後に、基地局10側の送信用アンテナ431a,431bのどちらを選択するかを決定し、その決定された送信用アンテナからの無線信号を受信する受信用アンテナ431c,431dのどちらを選択するかを決定する。
【0028】
送信用アンテナの決定処理としては、まず、2本のアンテナ431c,431dを備えている第1ホップの送信先(中継局20a〜中継局20c)ごとに、最高の通信品質を得られる送受信アンテナの組み合わせを抽出する。
・中継局20aでは、「アンテナ431a→アンテナ431c」の通信品質「100」
・中継局20bでは、「アンテナ431a→アンテナ431c」の通信品質「90」
・中継局20cでは、「アンテナ431b→アンテナ431d」の通信品質「90」
そして、中継局20の数の多数決(アンテナ431aを選択する2台の中継局20と、アンテナ431bを選択する1台の中継局20)により、送信用アンテナをアンテナ431aとして決定する。
【0029】
受信用アンテナの決定処理としては、中継局20ごとに、送信用アンテナ431aにおける通信品質が高い方のアンテナを、受信用アンテナとして決定する。
例えば、中継局20cでは、アンテナ431cの通信品質「50」よりも、アンテナ431dの通信品質「80」のほうが高いので、アンテナ431dを受信用アンテナとして決定する。
なお、アンテナ431b→「中継局20cのアンテナ431d」の通信品質は「90」であるが、送信用アンテナの決定処理として、アンテナ431bは選択されなかったので、この通信品質「90」は、受信用アンテナの決定処理には参照されない。
【0030】
図4(a)は、図1の無線通信システムを構成する基地局10の詳細を示す構成図である。基地局10は、有線/無線変換装置11と、無線通信装置12とから構成される。
有線/無線変換装置11は、低圧配電線と有線ネットワークとに接続される。低圧配電線の先には、高圧配電線へと接続するために変圧処理を行うための変圧器48が存在する。有線ネットワークは、例えば、光ファイバ通信、メタル線などの回線であり、外部ネットワークと接続される。
【0031】
図4(b)は、図4(a)の無線通信装置12を示す。無線通信装置12は、基地局10の無線通信を行う手段であり、2本のアンテナ431a,431bと、無線通信部432と、通信制御部433と、記憶部434と、入出力インターフェース部435と、電源部436とを備える。
【0032】
2本のアンテナ431a,431bは、例えば向きが異なるように配置されており、前記した図2,図3で説明したように、アンテナダイバーシティにおいて通信品質(通信特性)がよいアンテナが選択され、選択されたアンテナを介して無線信号が通信される。他のアンテナの配置方法としては、例えば、偏波面が直交になるように配置しても良いし、無線信号の半波長以上離すように配置しても良いし、指向性の異なる2本のアンテナを用いて配置しても良い。
【0033】
無線通信部432は、通常は変復調、周波数変換器、フィルタ、高周波スイッチなどの無線通信で用いられる回路にて構成される。無線通信部432は、通信制御部433から入力されるデータに基づき、2本のアンテナ431a,431bを介して無線信号を外部へ送信する。2本のアンテナ431a,431bを介して受信した無線信号は、通信制御部433に出力される。
【0034】
通信制御部433は、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)で構成してもよいし、DSP(Digital Signal Processer)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成してもよい。通信制御部433は、入出力インターフェース部435において外部と入出力されるデータを記憶部434に保存し、無線通信部432を制御してデータを無線通信するためのデータに変換する。
記憶部434は、一般的にはSRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリで構成される。
【0035】
入出力インターフェース部435は、一般的にはEthernet(登録商標)やRS−232C、IrDAなどの有線、無線、赤外線インターフェースなどで構成される。入出力インターフェース部435は、無線ノードが図5に示すユニット式電力量計40として使用されるときには、電力量計測部41から電力量を入手し、開閉器42の開閉状態を入手するとともに、開閉操作信号を与える。
電源部436は、外部から供給される電源(AC100Vなど)から、自装置内で使用される複数の電源(DC5Vなど)に変換してから、自装置内の各処理部に供給する。
【0036】
図5は、ユニット式電力量計40の構成図の例である。ユニット式電力量計40は、電力量計測部41と、開閉器42と、無線ノードとしての中継局20または無線端末30とを有する。さらに、ユニット式電力量計40は、図4(a)の基地局10と同様に、変圧器48および高圧配電線と接続するための低圧配電線がそれぞれ接続される。
【0037】
電力量計測部41は、家屋内での使用電力を時間的に積算した量(電力量Wh)を検針値として計測する電力量計である。
無線ノードは、電力量計測部41の検針値や各家庭での太陽光発電などの発電電力値(売電電力量の検針結果)などを他装置に無線送信し、かつ、外部からの指示信号(開閉器42への開閉操作信号など)を無線受信する無線通信手段(例えば、2.4GHz帯や950MHz帯を使用する)である。
開閉器42は、無線ノードが受信した外部からの指示信号をもとに、分電盤49を介して家屋内への電力供給を一度に遮断する切断状態(OFF)への制御を実行する。
【0038】
図6は、無線ノード(中継局20、無線端末30)を示す構成図である。図4(b)で示した無線通信装置12との相違点に着目して、説明する。
図6(a)は、図2の無線通信システムで用いられる中継局20、または、図2,図3の無線通信システムで用いられる無線端末30の内部構成を示す。図4(b)の無線通信装置12にはアンテナ431が431a,431bというように2本接続されているのに対し、図6(a)の無線ノードにはアンテナ431が1本接続されている。
図6(b)は、図3の無線通信システムで用いられる中継局20の内部構成を示す。図4(b)の無線通信装置12の構成に加え、アンテナ切替部437と、アンテナ切替信号438とが追加されている。アンテナ切替部437は、通信制御部433から出力されるアンテナ切替信号438に従って、複数のアンテナ431c,431dのうちの無線通信に使用するアンテナを切り替える。
【0039】
図7は、無線通信システムにおける無線信号の伝送手順を示すフローチャートである。このフローチャートでは、基地局10から第1ホップの各無線ノードへの、ブロードキャスト通信を利用した下流への通信処理を示す。
【0040】
基地局10は、自装置を初期化して無線通信を起動すると、アンテナ431aを介して通信品質を測定するための基準信号を送信する(S111)。
第1ホップの各無線ノードは、自装置を初期化して無線通信を起動すると、S111の基準信号を受信し、通信品質を評価し(S211)、その評価結果である通信品質を基地局10に送信する(S212)。
基地局10は、アンテナ431aを介して、S212の通信品質の評価結果を受信する(S112)。
基地局10は、アンテナ431bについても、アンテナ431aと同様に、基準信号をもとにした通信品質の測定処理を実行する(S113,S114,S213,S214)。
【0041】
基地局10は、アンテナ431a,431bそれぞれで受信した通信品質の評価結果(S112,S114)を元に、第1ホップ(中継局20向け、無線端末30向け)への送信処理に使用するアンテナを選択する(S115)。その結果、図2,図3で示すように、中継局20向けのアンテナ431aと、無線端末30向けのアンテナ431bとがそれぞれ選択される。
【0042】
基地局10は、第1ホップの各中継局20に対して、アンテナ431aを使用して無線信号の通信データをブロードキャストで送信し(S116)、各中継局20に受信させる(S215)。
基地局10は、第1ホップの各無線端末30に対して、アンテナ431bを使用して無線信号の通信データをブロードキャストで送信し(S117)、各無線端末30に受信させる(S216)。
そして、基地局10は、S115で選択したアンテナを変更しないときには、処理をS116に戻し、アンテナを変更するときには、処理をS111に戻す。
【0043】
図8は、無線通信システムにおいて、下流への通信として伝送される各無線信号についての送信のタイミングを示すグラフである。
基地局10は、第1ホップの各中継局20に対して、無線信号101a〜101cをブロードキャストで送信する。
その後、基地局10は、第1ホップの各無線端末30に対して、無線信号102a〜102cをブロードキャストで送信するとともに、第1ホップの各中継局20は、第2ホップの各無線端末30に対して、無線信号103,104a,104b,105を送信する。
【0044】
ここで、隣接する空間に複数種類の無線信号を伝送するときの電波干渉を回避するために、無線信号の多重化(時分割多重、周波数分割多重)を行うことが望ましい。
例えば、各無線信号の送信時期を互いにずらす(時分割多重)こととしてもよいし、各無線信号の伝送に使用する周波数チャネルを互いにずらす(周波数分割多重)こととしてもよい。以下に、各無線信号の伝送に使用する周波数チャネルを例示する。
無線通信信号102a,102b,102c:周波数チャネル「952MHz」
無線通信信号103:周波数チャネル「953MHz」
無線通信信号104a,104b:周波数チャネル「954MHz」
無線通信信号103:周波数チャネル「955MHz」
【0045】
以上、図8で説明した下流への各無線信号は、ブロードキャストおよびユニキャストを用途に応じて併用する。一方、上流への各無線信号は、主にユニキャストを使用する。ここで、ユニキャストを使用するときには、通信信頼性を向上するために、エラー訂正処理およびエラー検出処理(エラーを検出した場合には再送)のうちの少なくとも1つの通信信頼性の向上処理を行うことが望ましい。
【0046】
以上説明した本実施形態では、アンテナダイバーシティを適用する無線通信システムとして、図3に示したように、送信側アンテナと受信側アンテナとでそれぞれアンテナ選択処理を行うことにより、とくにブロードキャスト通信における高信頼な無線通信を可能とする。
【符号の説明】
【0047】
10 基地局(送信側装置)
11 有線/無線変換装置
12 無線通信装置
20 中継局(受信側装置)
30 無線端末(受信側装置)
40 ユニット式電力量計
41 電力量計測部
42 開閉器
48 変圧器
49 分電盤
431 アンテナ
432 無線通信部
433 通信制御部
434 記憶部
435 入出力インターフェース部
436 電源部
437 アンテナ切替部
438 アンテナ切替信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置間で無線通信を行う無線通信システムに用いられる無線通信装置であって、
前記各無線通信装置は、それぞれ自身が無線通信に使用するアンテナを複数本有しており、
無線通信システムを構成する前記無線通信装置のうちの送信側装置は、無線通信システムを構成する前記無線通信装置のうちの複数台の受信側装置に対して、アンテナの通信品質を測定するための基準信号を、自身の複数本の送信側アンテナそれぞれを介して送信し、
前記各受信側装置は、自身の複数本の受信側アンテナそれぞれについて前記基準信号を受信することによって、前記各受信側アンテナについての前記通信品質を計測して、その計測結果を前記送信側装置に通知し、
前記送信側装置は、前記各受信側装置から前記通信品質の計測結果の通知を受けると、前記各受信側装置における最も前記通信品質の計測結果が高い前記基準信号の送受信に使用される前記送信側アンテナと前記受信側アンテナとの組み合わせを特定し、その特定した前記送信側アンテナが最も多いものを、無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択し、
前記各受信側装置は、前記送信側装置によって選択された無線信号のブロードキャストに使用するアンテナを送信用アンテナとしたときの、前記通信品質の計測結果が最高となる前記受信側アンテナを、無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択することを特徴とする
無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置は、前記基準信号をもとに前記通信品質を計測する処理として、前記基準信号の通信成功率、前記基準信号のビットエラー率、前記基準信号のパケットエラー率、および、前記基準信号の受信時の電力強度のうちの少なくとも1つのパラメータを元に、前記通信品質を計測することを特徴とする
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信装置は、前記基準信号をもとに前記通信品質を計測する処理として、以下の重み付け加算を計算することとし、
前記通信品質=(前記基準信号の受信時の電力強度)×(第1重み値)+(前記基準信号の通信成功率)×(第2重み値)
前記(第1重み値)よりも前記(第2重み値)を大きい値とすることを特徴とする
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無線通信装置が、複数台で無線通信を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
複数の無線通信装置間で無線通信を行う無線通信システムが実行する無線通信方法であって、
前記各無線通信装置は、それぞれ自身が無線通信に使用するアンテナを複数本有しており、
無線通信システムを構成する前記無線通信装置のうちの送信側装置は、無線通信システムを構成する前記無線通信装置のうちの複数台の受信側装置に対して、アンテナの通信品質を測定するための基準信号を、自身の複数本の送信側アンテナそれぞれを介して送信し、
前記各受信側装置は、自身の複数本の受信側アンテナそれぞれについて前記基準信号を受信することによって、前記各受信側アンテナについての前記通信品質を計測して、その計測結果を前記送信側装置に通知し、
前記送信側装置は、前記各受信側装置から前記通信品質の計測結果の通知を受けると、前記各受信側装置における最も前記通信品質の計測結果が高い前記基準信号の送受信に使用される前記送信側アンテナと前記受信側アンテナとの組み合わせを特定し、その特定した前記送信側アンテナが最も多いものを、無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択し、
前記各受信側装置は、前記送信側装置によって選択された無線信号のブロードキャストに使用するアンテナを送信用アンテナとしたときの、前記通信品質の計測結果が最高となる前記受信側アンテナを、無線信号のブロードキャストに使用するアンテナとして選択することを特徴とする
無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−256974(P2012−256974A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127459(P2011−127459)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】