説明

無線通信装置、端末、通信制御方法及び通信プログラム

【課題】無線端末と無線通信装置との省電力化を同時に実現する。
【解決手段】本発明の一態様としての無線通信装置は、第1期間長に関わる情報を含むビーコンを送信する手段を備え、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能とし、前記第2の状態における無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線通信装置、端末、通信制御方法及び通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11無線LAN規格には、無線端末が無線基地局に接続し、無線基地局を介して通信するインフラストラクチャモードが規定されており、さらに、インフラストラクチャモードにおいて無線端末の消費電力を抑えるための省電力機能(パワーセーブモード)が定義されている(非特許文献1)。これは、無線基地局ではなく無線端末側の省電力化を実現する機能であり、基地局から周期的に送信されるビーコン信号と同期して無線端末が無線通信モジュールをスリープ状態に遷移させることで電力消費を抑えるものである。スリープ状態に遷移した無線端末はデータを受信することができないため、無線基地局がデータを一時的にバッファリングし、ビーコン信号にTIM(Traffic Indication Map)を含めることによってその旨を無線端末に通知する。通知を受けた無線端末は無線基地局に対してポーリングを行なうことで、該データを無線基地局から受信することができる。
【0003】
一方、特許文献1には、インフラストラクチャモードにおける無線基地局の省電力化を図る方法が示されている。一般的に、インフラストラクチャモードにおける無線基地局は、いつ生じるか分からない無線端末からのデータの送信を常に待ち構えている必要があり、スリープ状態に遷移できない問題がある。特許文献1では、無線基地局がスリープ状態に遷移する前に、無線端末の送信を禁止するCTS(Clear To Send)フレームを無線端末に送信することで、無線基地局がスリープ状態に遷移する方法を提案している。
【非特許文献1】IEEE Std. 802.11-2007, “Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications”
【特許文献1】特開2004-336401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、無線端末側の省電力機能と、無線基地局側の省電力機能の各々が示されているが、両方の省電力機能を同時に動作させる方法については述べられてはいない。近年、ノートPC(Personal Computer)やスマートフォン等の携帯端末はマルチインタフェース化(3G、WiMAX、Wi-Fi等)されつつあり、今後、携帯端末を無線基地局として設定して周辺のガジェット機器(ゲーム機、音楽再生機等)を接続し、携帯端末経由でインターネット(The Internet)にアクセスさせるという要求が出てくると予想される。このような構成では、無線基地局および無線端末はいずれもバッテリが有限な携帯端末となり得る。従って、インフラストラクチャを構成する無線基地局および無線端末の両方で同時に省電力化を図ることが重要となる。
【0005】
非特許文献1に規定された無線端末の省電力機能は、前述の通り、無線端末がスリープ状態を解除したタイミングでデータの送信および受信を行なう。従って、無線端末の省電力化を図る上では、データの送信および受信が可能となる期間を短くし、スリープ状態の期間を長く確保することが望ましい。一方、特許文献1は、無線端末のデータ送信を禁止する方式を採用しており、禁止を指示するCTSフレームをCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)の仕組みを用いて送信する。従って、無線端末がデータを送信する機会と無線基地局がCTSフレームを送信する機会とに公平性が保たれることから、無線端末がデータを送信する前にCTSフレームを受信する可能性がある。この時、無線端末は速やかにスリープ状態に遷移することができず、省電力効果が低下する問題が生じる。また、特許文献1は、コンテンションウィンドウにおけるバックオフ時間を制御することで、無線端末がデータを送信する機会を優先する制御方法を提案している。しかし、この優先制御はあくまで最初の送信機会に対して働くものであり、複数のデータを連続送信する無線端末は、複数のデータの送信が完了する前にCTSフレームの受信を回避できず、速やかにスリープ状態に遷移することができない。従って、同様に省電力効果が低下する問題を生じる。
【0006】
本発明の実施形態は、無線端末との省電力化を同時に実現する無線通信装置、端末、通信制御方法および通信プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様としての無線通信装置は、第1期間長に関わる情報を含むビーコンを送信する手段を備え、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能とし、前記第2の状態における無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様としての無線通信装置は、第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを送信する手段を備え、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移し、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移し、前記第2の状態における無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様としての無線通信装置は、第1期間長に関わる情報を含むビーコンを送信する手段を備え、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能とし、前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様としての無線通信装置は、第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを送信する手段を備え、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移し、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移し、前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様としての通信制御方法は、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して無線通信装置と一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、第1期間長に関わる情報を含むビーコンを前記無線通信装置から送信し、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は前記無線通信装置は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、前記無線通信装置を第2の状態に遷移することを可能とし、前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様としての通信制御方法は、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して無線通信装置と一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを前記無線通信装置から送信し、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は前記無線通信装置は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は前記無線通信装置を第2の状態に遷移させ、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記無線通信装置を前記第1の状態に遷移させ、前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様としての通信制御方法は、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、第1期間長に関わる情報を含むビーコンを送信し、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能とし、前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様としての通信制御方法は、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを送信し、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移し、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移し、前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様としての通信プログラムは、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、第1期間長に関わる情報を含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能にならしめるステップと、を備え、前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様としての通信プログラムは、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、 前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移させ、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移させるステップと、を備え、前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様としての通信プログラムは、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、第1期間長に関わる情報を含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能にならしめるステップと、を備え、前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様としての通信プログラムは、CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移させ、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移させるステップと、を備え、前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成例を示す。
【0021】
図1において、1はインターネット、Zはインターネット1と接続する、携帯電話事業者が設置する3G基地局(第2の無線装置)、2は3G基地局Zが提供する無線リンク(第2の無線リンク)、3はIEEE802.11規格の無線リンク(第1の無線リンク)を示す。
【0022】
Aは携帯電話端末とIEEE802.11無線基地局を兼ねた通信装置(基地局)を示し、基地局Aは無線リンク2に対しては携帯電話端末として動作し、無線リンク3に対してはIEEE802.11無線基地局として動作する。
【0023】
H1およびH2は、それぞれ無線リンク(第1の無線リンク)3を介して基地局Aと接続された無線端末(第1の無線装置)である。無線端末H1はIEEE802.11規格のパワーセーブモードが有効であり、無線端末H2はパワーセーブモードが無効であるとする。
【0024】
基地局(通信装置)Aおよび基地局Zは3G規格に従った無線ネットワーク(第2の無線ネットワーク)を形成して互いに無線通信を行なう。基地局Aと無線端末H1、H2とはIEEE802.11の無線LAN規格に従った無線ネットワーク(第1の無線ネットワーク)を形成して互いに無線通信を行う。無線端末H1およびH2は基地局Aを介してインターネット1にアクセスすることが可能である。
【0025】
なお、図1には、無線リンク3に接続する無線端末が2台の例を示しているが、2台以上の無線端末が無線リンク3と接続しても構わない。
【0026】
図2に、本実施形態に係る基地局(通信装置)Aの構成例を示す。
【0027】
基地局Aは、3G無線通信部9、IEEE802.11無線通信部10、基地局情報取得部12、記憶部11、送信許可期間決定部13、制御信号生成部14、電力管理部15、ブリッジ部(中継部)16を備えている。
【0028】
3G無線通信部(第2の無線通信部)9は、無線リンク2を介して基地局Zと無線通信を行なう。3G無線通信部9は、無線リンク2を介して無線端末H1、H2宛に受信したデータを、ブリッジ部16を介してIEEE802.11無線通信部10に渡す。
【0029】
IEEE802.11無線通信部(第1の無線通信部)10は、無線リンク3を介して無線端末H1,H2と無線通信を行なう。IEEE802.11無線通信部10は、3G無線通信部9からブリッジ部16を介して渡されたデータを内部のバッファに記憶し、必要な手続に従ってバッファ内のデータを無線端末H1、H2に送信する。またIEEE802.11無線通信部10は、無線端末H1、H2からインターネット上の装置宛のデータを受信したら、これをブリッジ部16を介して3G無線通信部9に渡す。3G無線通信部9では渡されたデータを、無線リンク2を介して送信する。IEEE802.11無線通信部10は、制御信号生成部14により一定周期毎に生成されるビーコン信号(制御信号)を無線端末H1、H2に送信する。
【0030】
ブリッジ部16は、3G無線通信部9とIEEE802.11無線通信部10との間をブリッジすることにより、IEEE802.11規格のLANネットワーク(第1の無線ネットワーク)と3G規格の無線ネットワーク(第2の無線ネットワーク)間の通信を中継する。
【0031】
基地局情報取得部12は、無線リンク2、3の状態に関する情報である基地局情報(後述する図4参照)を取得する。無線リンク3に関する基地局情報は特に第1のリンク情報、無線リンク2の状態に関する情報は特に第2のリンク情報と称される。基地局情報取得部12は、第1のリンク情報を取得する第1の情報取得部と、第2のリンク情報を取得する第2の情報取得部とを備える。
【0032】
記憶部11は、基地局情報取得部12により取得された基地局情報(第1および第2のリンク情報)を内部に記憶する。
【0033】
送信許可期間決定部13は、記憶部11内の基地局情報に従って、無線端末H1、H2によるデータ送信を許可する送信許可期間を設定する。送信許可期間の設定は、たとえば直前のビーコン信号の送信から次のビーコン信号の送信までの各ビーコン間隔期間において行う。また、たとえば送信許可期間の起点はビーコン間隔期間の開始時点である。期間の長さはビーコン間隔期間毎に計算してもよいし複数のビーコン間隔期間毎に計算してもよい。
【0034】
制御信号生成部(ビーコン送信部、通知部)14は、一定周期でビーコン信号を生成し、生成したビーコン信号に上記送信許可期間を指定した制御信号を含めてIEEE802.11無線通信部10を介して送信する。これによりビーコン信号を受信した無線端末は、ビーコン間隔期間のうち、ビーコン信号で指定された送信許可期間の間のみデータ送信を行い、それ以外の期間(送信禁止期間)の間はデータ送信を停止する(データ受信は禁止されない)。
【0035】
電力管理部15は、上記送信許可期間と、ビーコンの送信タイミング期間との間、IEEE802.11無線通信部10に電力を供給し、通信期間のうち上記送信許可期間とビーコンの送信タイミング以外の期間(休止期間)の間は、IEEE802.11無線通信部10への電力供給を停止するように制御する。
【0036】
図2の各要素9、10、11、12、13、14、15、16は、ハードウェアとして構成されてもよいし、基地局A上で実行されるソフトウエアモジュールとして構成されてもよい。
【0037】
図3は、基地局情報取得部12の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0038】
まず、基地局情報取得部12は、3G無線通信部9から、無線リンク2の状態に関する基地局情報(第2のリンク情報)を取得する(S11)。この基地局情報は、無線リンク2と接続を確立しているか、それとも、切断しているかを示すインタフェースの稼動状態(例えば、OSで設定するインタフェースのアップ・ダウン情報など)と、無線リンク2の通信品質に関わる統計情報とを含む。統計情報としては、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、BER(Bit Error Rate)、FER(Frame Error Rate)などがある。
【0039】
次に、基地局情報取得部12は、IEEE802.11無線通信部10から、無線リンク3の状態に関する基地局情報(第1のリンク情報)を取得する(S12)。この基地局情報は、無線リンク10の利用状況に関わる統計情報を含む。この統計情報としては、例えば、無線端末の接続数、単位時間のトラフィック量などがある。トラフィック量は、単位時間に無線リンク3で通信したデータ量もしくはパケット数で表し、例えば、bps(bit per seconds)やpps(packet per seconds)の単位で表される。なお、無線端末の接続数および単位時間の無線トラフィック量は、インフラストラクチャモードにおいて基地局のみが知り得る特有の統計情報である。
【0040】
最後に、基地局情報取得部12は、取得した基地局情報を記憶部11に登録する(S13)。基地局情報の一例を図4に示す。
【0041】
図5は、送信許可期間決定部13、制御信号生成部14、電力管理部15の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0042】
まず、送信許可期間決定部13は記憶部11から基地局情報を取得し(S21)、取得した基地局情報から送信許可期間長を計算し、送信許可期間長の期間をビーコン間隔期間において送信許可期間として決定する(S22)。ここではビーコン間隔期間の開始時点から上記送信許可期間長だけ連続する期間を送信許可期間として決定する。そして、制御信号生成部14は、決定した送信許可期間を指定する制御信号(すなわちビーコン間隔期間のうち、送信許可期間ではデータ送信を許可し、それ以外の送信禁止期間ではデータ送信の禁止を指示する制御信号)を含むビーコン信号を生成して送信する(S23)。
【0043】
ここで、基地局Aは、送信許可期間長の基準値を、内部的に管理しているものとし、本実施形態では例えば100msecであるとする。また、この基準値は管理者がウェブブラウザ等を用いて基地局AのGUIにアクセスし、変更可能となるようにしてもよい。以下、基地局情報に応じた送信許可期間長の計算例を示す。
【0044】
<送信許可期間長の計算例>
(1)インタフェース稼動状態に基づく送信許可期間長の計算例
3G無線通信部9のインタフェース稼動状態がDOWNの場合には、無線リンク3に接続する無線端末H1、H2が送信したデータは基地局Aの内部で破棄される。すなわち、インタフェース稼動状態がDOWNの場合には無線端末H1、H2がデータを送信する機会を極力抑えることが望ましい。従って、例えば、送信許可期間長を最小値に設定するというルールを設定する。ここで、最小値は基地局Aが内部的に管理しているものとし、本実施例では例えば10msecであるとする。また、この最小値は管理者がウェブブラウザ等を用いて基地局AのGUIにアクセスし、変更可能となるようにしてもよい。図4におけるインタフェース稼動状態がDOWNである例においては、送信許可期間長は最小値の10msecとなる。
【0045】
(2)RSSIに基づく送信許可期間長の計算例
インターネットアクセス用の無線リンク2のRSSIが著しく低下した場合には、無線リンク2で多くの通信データが損失し通信できない状態となる。すなわち、RSSIが著しく低下した場合には無線端末H1、H2がデータを送信する機会を極力抑えることが望ましい。従って、例えば、RSSIがある一定の閾値を下回った場合には送信許可期間長を最小値に設定するというルールを設定する。ここで、閾値および最小値は基地局Aが内部的に管理しているものとし、本実施形態では例えば閾値は-70dBm、最小値は10msecであるとする。この閾値および最小値は管理者がウェブブラウザ等を用いて基地局のGUIにアクセスし、変更可能となるようにしてもよい。図4におけるRSSIが-80dBmである例においては、-70dBmの閾値を下回るため、送信許可期間長は最小値の10msecとなる。
【0046】
(3)BERに基づく送信許可期間長の計算例
インターネットアクセス用の無線リンク2のBERが著しく増加した場合には、無線リンク2で多くの通信データが損失し通信できない状態となる。すなわち、BERが著しく増加した場合には無線端末H1、H2がデータを送信する機会を極力抑えることが望ましい。従って、例えば、BERがある一定の閾値を上回った場合には送信許可期間長を最小値に設定するというルールを設定する。ここで、閾値および最小値は基地局Aが内部的に管理しているものとし、本実施形態では例えば閾値は10%、最小値は10msecであるとする。また、この閾値および最小値は管理者がウェブブラウザ等を用いて基地局AのGUIにアクセスし、変更可能となるようにしてもよい。図4におけるBERが50%である例においては、10%の閾値を上回るため、送信許可期間長は最小値の10msecとなる。
【0047】
(4)FERに基づく送信許可期間長の計算例
インターネットアクセス用の無線リンク2のFERが著しく増加した場合には、無線リンク2で多くの通信データが損失し通信できない状態となる。すなわち、FERが著しく増加した場合には無線端末H1、H2がデータを送信する機会を極力抑えることが望ましい。従って、例えば、FERがある一定の閾値を上回った場合には送信許可期間長を最小値に設定するというルールを設定する。ここで、閾値および最小値は基地局Aが内部的に管理しているものとし、本実施形態では例えば閾値は10%、最小値は10msecであるとする。また、この閾値および最小値は管理者がウェブブラウザ等を用いて基地局のGUIにアクセスし、変更可能となるようにしてもよい。図5におけるFERが50%である例においては、10%の閾値を上回るため、送信許可期間長は最小値の10msecとなる。
【0048】
(5)無線端末接続数に基づく送信許可期間長の計算例
無線端末接続数が増加するに伴い、無線リンク3のトラフィック量が増加する可能性がある。トラフィック量が増加するに伴って送信許可期間長を拡大しなければ、基地局Aおよび無線端末H1、H2の内部でデータが破棄される可能性がある。従って、例えば、無線端末1台につき送信許可期間長を20msec延長するというルールを設定する。図5における無線端末接続数が5台である例においては、送信許可期間長は「基準値100msec+無線端末数5台×20msec」と計算し、200msecとなる。
【0049】
(6)トラフィック量に基づく送信許可期間長の計算例
トラフィック量が増加するに伴って送信許可期間長を拡大しなければ、基地局Aおよび無線端末H1、H2の内部でデータが破棄される可能性がある。従って、例えば、トラフィック量200ppsにつき送信許可期間長を20msec延長するというルールを設定する。図4におけるトラフィック量が1000ppsである例においては、送信許可期間長は「基準値100msec+トラフィック量1000pps÷200pps×20msec」と計算し、200msecとなる。
【0050】
ここでは各種基地局情報の内の1つから送信許可期間長を計算する例を示したが、以下のように、複数の基地局情報を組み合わせて計算してもよい。
【0051】
例えば、送信許可期間長を最小値に設定する(1)、(2)、(3)、(4)の計算例を組み合わせる場合は、インタフェース稼動状態がDOWNである、RSSIが閾値を下回る、FERが閾値を上回る、BERが閾値を上回る、のうちいずれか1つの最小値条件が満たされれば、最小値に設定する方式を採用できる。
【0052】
送信許可期間長を拡大する(5)、(6)の計算例を組み合わせる場合は、例えば、無線端末1台につき送信許可期間長を20msec延長し、さらに、トラフィック量200ppsにつき送信許可期間長を20msec延長する、というように延長期間を足し合わせる方式を採用できる。例えば、図4における無線端末接続数が5台、トラフィック量が1000ppsである例においては、送信許可期間長は「基準値100msec+無線端末数5台×20msec+トラフィック量1000pps÷200pps×20msec」と計算し、300msecとなる。
【0053】
なお、送信許可期間長を最小値に設定する(1)、(2)、(3)、(4)の少なくとも1つ以上と、送信許可期間長を拡大する(5)、(6)の少なくとも1つ以上とを組み合わせる場合は、前者の計算結果を優先する。従って、(1)、(2)、(3)、(4)のそれぞれに対応する上記最小値条件のうちのいずれか1つが満たされれば送信許可期間長を最小値に設定し、このとき、無線端末接続数、トラフィック量がいかなる値を示していても(5)もしくは(6)の計算は行なわず送信許可期間の延長は行なわない。
【0054】
電力管理部15は、ビーコン信号の送信タイミング期間と、上記で決定した送信許可期間の間、無線通信部16へ給電を行い、通信期間のうち送信許可期間とビーコンの送信タイミング期間以外の休止期間の間は、無線通信部16への給電を停止するように制御する(S24)。
【0055】
以降、基地局AはS21〜S24を、周期的に繰り返し行う。
【0056】
以下、図6を用いて、ステップS23およびS24の具体的な処理の流れについてさらに詳細に説明する。
【0057】
図6は、図1における基地局A、無線端末H1、無線端末H2で制御信号およびデータの送受信を行なう処理の流れの一例を示している。
【0058】
本例ではビーコン信号として、IEEE802.11で規定されたQuiet IE(Quiet Information Element)フィールドを含むビーコン信号を用いる。このフィールドは、データ送信の禁止を開始するオフセット時間を指定するフィールド(Quiet Offsetフィールド)と、データ送信の禁止を解除するまでの禁止時間を指定するフィールド(Quiet Durationフィールド)を含む。このビーコン信号を用いるとき、制御信号はQuiet IEのQuiet DurationフィールドおよびQuiet Offsetフィールドのデータ信号であり、送信許可期間決定部13は、オフセット時間と、禁止時間とを計算することにより送信許可期間の設定を行う。ここでは、ビーコン信号の送信周期が500msecに設定され、オフセット時間が100msec、禁止時間が、ビーコン信号の送信周期からオフセット時間を減算した400msecと計算したとする。また、無線端末H1はパワーセーブモードが有効であり、無線端末H2はパワーセーブモードが無効であるとする。
【0059】
まず、基地局Aは、無線端末H1宛のデータ(たとえばインターネット2から届いたデータ)がある旨を通知するTIMと、Quiet IEとを含めたビーコン信号を送信する(S101)。ビーコン信号の形式を図7に示す。Quiet IEのQuiet Durationフィールドには400msec、Quiet Offsetフィールドには100msecを設定する。これにより、ビーコン信号を受信した無線端末H1および無線端末H2に対して、受信から100msec(オフセット時間)の期間(送信許可期間)の間、データを送信することを許可し、100msec経過後からさらに400msec(禁止時間)が経過するまでの送信禁止期間の間、データの送信を停止するように仕向けることができる。なおS101で送信されたビーコン信号では、400msec経過後については、データ送信は禁止されていない。
【0060】
基地局Aはビーコン信号の送信毎にQuiet DurationおよびQuiet Offset等のパラメタ(すなわち禁止時間とオフセット時間を計算する)ことが可能である。ここで、Quiet Durationに設定する禁止時間をビーコン信号の送信周期より大きく設定することもでき、この場合、無線端末が電波干渉等により次のビーコン信号を受信できなかった場合にも、さらに次のビーコン信号の送信まで無線端末のデータの送信を抑制するように仕向けることができる。
【0061】
ここで、ビーコン信号は、基地局が無線端末に対して無線リンクの存在および可用性を周期的に広告することを目的とした制御信号であり、パワーセーブモードに遷移した無線端末はビーコン信号の送信周期と同期してスリープ状態を解除して確実にビーコン信号の受信処理を行なう。従って、ビーコン信号により送信許可期間を通知する方法は、特許文献1で示した通知方法と比較して、無線端末に確実に情報を通知する上で最も適した部であると言える。
【0062】
ビーコン信号を受信した無線端末H1および無線端末H2は、100msec(オフセット時間)が経過するまではデータ送信が許可される。無線端末H1は、S101で基地局Aから自分宛のデータをバッファリングしている旨の通知を受けたため、基地局AをポーリングするためにIEEE802.11規格で規定されたPS-Pollを送信して、自分宛のデータを基地局Aから受信し、また必要に応じてデータを基地局Aに送信する(S102〜S104)。パワーセーブモードが有効である無線端末H1は、データの送受信を行なった後にスリープ状態に遷移する(S105)。また、パワーセーブモードが無効である無線端末H2は、オフセット時間の間(送信許可期間の間)、データの送受信を行なう(S106、S107)。
【0063】
なお、図6で示したデータの送受信処理の順序は一例であり、実際にはCSMA/CAの仕組みによって決まる順序に応じてデータは送受信される。
【0064】
ビーコン信号の送信から100msec(オフセット時間)が経過したら、基地局Aはスリープ状態に遷移し(S108)、無線端末H2はデータの送信を停止する(S109)。さらに、次のビーコン信号を送信する送信タイミング期間になったら、基地局Aはスリープ状態を解除して(S110、S111)、ビーコン信号を送信する(S112)。一方、無線端末H1は、ビーコン信号の受信から100msec(オフセット時間)が経過し、さらに400msecの時間が経過する直前に、次のビーコン信号の受信(S112)のため、スリープ状態111を解除する(S111)。当該次のビーコン信号では前回と同じ制御信号が設定され、当該次のビーコン信号を受信した無線端末H2は、オフセット時間の間、データの送受信を再開する(S113)。
【0065】
本実施形態ではビーコン間隔期間の開始時点から送信許可期間長の期間を送信許可期間として決定したが、送信許可期間は、ビーコン間隔期間内で分割して設定されても構わない。たとえば送信許可期間長が200 msecのとき、図6の例においてオフセット時間を100 msec、禁止時間を300 msecとし、オフセット時間100 msecの期間と、禁止時間経過後、次のビーコン信号の送信までの100 msecの期間とを送信許可期間としてもよい。
【0066】
以上より、基地局Aは一定の周期で送信するビーコン信号の周期期間の間でスリープ状態に遷移して消費電力を抑えることが可能となる。また、パワーセーブモードが有効な無線端末H1は所望するデータの送受信後には速やかにスリープ状態に遷移して消費電力を抑え、パワーセーブモードが有効でない無線端末H2はオフセット時間の後、禁止時間の間データ送信を停止することで消費電力を抑えることができる。これらにより基地局A、無線端末H1、H2の消費電力を同時に抑えることが可能となる。
【0067】
(第2の実施形態)
第1の実施形態ではQuiet IEのQuiet DurationフィールドおよびQuiet Offsetフィールドを利用して無線端末のデータ送信を制御したが、本実施形態では、IEEE802.11規格で規定されたCF-Poll制御信号およびCF-ACK+CF-End制御信号を使用してデータ送信を制御する場合について説明する。本実施形態における基地局のブロック図および動作フロー図は第1の実施形態と同じである。本実施形態では特に制御信号生成部14の動作が第1の実施形態と異なっており、以下では第1の実施形態との差分について説明する。
【0068】
本実施形態における制御信号生成部(データ送信制御部)14は、送信許可期間の間、無線端末H1、H2にそれぞれ個別に、データ送信を許可する送信許可フレーム(制御信号)と、データ送信を禁止する送信禁止フレーム(制御信号)とをこの順序でIEEE802.11無線通信部10を介して送信する。これにより制御信号生成部14は、無線端末H1、H2が送信許可フレームを受けてから送信禁止フレームを受けるまでの間のみデータ送信を行うように制御する。無線端末H1、H2は、送信禁止フレームを受けた後は、送信許可フレームを再度受信するまでデータ送信を行うことができない。
【0069】
図8は、制御信号としてCF-Poll制御信号(送信許可フレーム)およびCF-ACK+CF-End制御信号(送信禁止フレーム)を使用する場合の、S23およびS24の具体的な処理の流れの一例を示す。CF-Poll制御信号はデータ送信の開始を指示する信号であり、たとえば上記送信許可フレームに相当する。CF-ACK+CF-End制御信号は、データ受信の肯定確認を示すと同時にデータ送信の停止を指示する信号であり、たとえば上記送信禁止フレームに相当する。送信許可期間は、ビーコン間隔期間の開始時点から連続する100msecとし、また、ビーコン信号の送信周期は500msecに設定されているものとする。また、無線端末H1はパワーセーブモードが有効であり、無線端末H2はパワーセーブモードが無効であるとする。
【0070】
まず、基地局Aは、無線端末H1宛のデータがある旨を通知するTIMを含めたビーコン信号を送信する(S201)。
【0071】
次に、基地局Aは、ビーコン信号の送信から100msecが経過するまでは、無線端末H1および無線端末H2とデータ送受信を行なう。より詳細には、パワーセーブモードが有効である無線端末H1は、基地局AからTIMによりバッファリングしているデータがある旨の通知を受けて基地局AにPS-Poll信号を送信してデータを受信する(S202、S203)。また、無線端末H1は基地局AからCF-Poll制御信号(送信許可フレーム)を受信したことを契機にデータの送信を行なう(S204、S205、S206)。すなわちデータ送信の許可は基地局AがCF-Poll制御信号によりポーリングを行って与える。基地局Aは、無線端末H1からデータを受信した後、無線端末H1にCF-ACK+CF-End制御信号を送信することで、データ受信の肯定確認を無線端末H1に通知すると同時に無線端末H1に対しデータ送信の停止(禁止)を指示する(S207)。CF-ACK+CF-End制御信号を受けた無線端末H1はデータ送信を停止する(S208)。パワーセーブモードが有効である無線端末H1は、データ送信を停止した後にスリープ状態に遷移する(S209)。
【0072】
パワーセーブモードが無効である無線端末H2は、基地局Aからデータを受信するとともに(S210)、基地局AからCF-Poll制御信号を受信したことを契機にデータの送信を行なう(S211、S212、S213)。基地局Aは無線端末H2にCF-ACK+CF-End制御信号を送信することで、データ受信の肯定確認を無線端末H2に通知すると同時に無線端末H2に対しデータ送信の停止を指示する。CF-ACK+CF-End制御信号を受けた無線端末H2はデータ送信を停止する(S215)。
【0073】
なお、図8で示したデータの送受信処理の順序は一例であり、実際にはCSMA/CAの仕組みによって決まる順序に応じてデータは送受信される。
【0074】
ビーコン信号の送信から100msec(オフセット時間)が経過したら、基地局Aはスリープ状態に遷移し(S216)、次のビーコン信号の送信タイミング期間で、スリープ状態を解除し(S217)、ビーコン信号を送信する(S219)。一方、スリープ状態の無線端末H1は、次のビーコン信号の受信のため、スリープ状態111を解除する(S218)。
【0075】
以上より、基地局Aはスリープ状態に遷移して消費電力を抑えることが可能となる。また、パワーセーブモードが有効な無線端末H1は所望するデータの送受信後には速やかにスリープ状態に遷移して消費電力を抑え、パワーセーブモードが有効でない無線端末H2はオフセット時間の後、データ送信を停止することで消費電力を抑えることができる。これらにより基地局A、無線端末H1、H2の消費電力を同時に抑えることが可能となる。
【0076】
以上のように本発明の実施形態によれば、無線システムのインフラストラクチャモードにおいて、基地局および無線端末の省電力化を同時に実現する手段を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係わる通信システムの構成例を示す図。
【図2】基地局Aの構成例を示すブロック図。
【図3】基地局情報取得部の動作の処理の流れを示すフローチャート。
【図4】基地局情報の一例を示す図。
【図5】送信許可期間決定部、制御信号生成部、電力管理部の動作の流れを示すフローチャート。
【図6】基地局A、無線端末H1、無線端末H2間で制御信号およびデータを送受信する処理の流れの一例を示す図。
【図7】ビーコン信号の形式を示す図。
【図8】基地局A、無線端末H1、無線端末H2間で制御信号およびデータを送受信する処理の流れの他の例を示す図。
【符号の説明】
【0078】
1:インターネット
2:3G無線リンク(第2の無線リンク)
3:IEEE802.11無線リンク(第1の無線リンク)
A:基地局(通信装置)
Z:3G基地局(第2の無線装置)
H1,H2:無線端末(第1の無線装置)
9:3G無線通信部(第2の無線通信部)
10:IEEE802.11無線通信部(第1の無線通信部)
11:記憶部
12:基地局情報取得部(第1および第2の情報取得部)
13:送信許可期間決定部(期間決定部)
14:制御信号生成部(ビーコン送信部、通知部、データ送信制御部)
15:電力管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1期間長に関わる情報を含むビーコンを送信する手段を備え、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能とし、
前記第2の状態における無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする、無線通信装置。
【請求項2】
CSMA/CA方式にしたがって通信し、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第2の状態にある期間は、前記他の無線端末がデータ送信を行わない期間であることを特徴とする、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無線通信装置と、
前記第1期間長の決定に関わる情報を設定するための設定手段と
を備えた端末。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第1取得部と、
前記無線リンクの状態に基づき、前記第1期間長を決定する決定部と
を備えた端末。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置とは別の無線ネットワークと通信する第2の無線通信装置と
を備えた端末。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第1取得部と、
前記無線通信装置とは別の無線ネットワークと通信する第2の無線通信装置と
前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第2取得部と、
前記無線通信装置の無線リンクの状態と、前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態に基づき、前記第1期間長を決定する決定部と
を備えた端末。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置とは別の無線ネットワークと通信する第2の無線通信装置と、
前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第2取得部と、
前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態に基づき、前記第1期間長を決定する決定部と
を備えた端末。
【請求項9】
表示手段と、入力手段とをさらに備えた請求項4ないし8のいずれか一項に記載の端末。
【請求項10】
第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを送信する手段を備え、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移し、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移し、前記第2の状態における無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする、
無線通信装置。
【請求項11】
CSMA/CA方式にしたがって通信し、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の無線通信装置と、
前記第3の期間に関わる情報を設定するための設定手段と
を備えた端末。
【請求項13】
請求項10または11に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第1取得部と、
前記無線リンクの状態に基づき、前記第3の期間を決定する決定部と
を備えた端末。
【請求項14】
請求項10または11に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置とは別の無線ネットワークと通信する第2の無線通信装置と
を備えた端末。
【請求項15】
請求項10または11に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第1取得部と、
前記無線通信装置とは別の無線ネットワークと通信する第2の無線通信装置と
前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第2取得部と、
前記無線通信装置の無線リンクの状態と、前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態に基づき、前記第3の期間を決定する決定部と
を備えた端末。
【請求項16】
請求項10または11に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置とは別の無線ネットワークと通信する第2の無線通信装置と、
前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態を取得する第2取得部と、
前記第2の無線通信装置の無線リンクの状態に基づき、前記第3の期間を決定する決定部と
を備えた端末。
【請求項17】
表示手段と、入力手段とをさらに備えた請求項10ないし16のいずれか一項に記載の端末。
【請求項18】
第1期間長に関わる情報を含むビーコンを送信する手段を備え、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能とし、
前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする、無線通信装置。
【請求項19】
第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを送信する手段を備え、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移し、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移し、前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする、無線通信装置。
【請求項20】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して無線通信装置と一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、
第1期間長に関わる情報を含むビーコンを前記無線通信装置から送信し、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は前記無線通信装置は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、前記無線通信装置を第2の状態に遷移することを可能とし、
前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする
通信制御方法。
【請求項21】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して無線通信装置と一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、
第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを前記無線通信装置から送信し、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は前記無線通信装置は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は前記無線通信装置を第2の状態に遷移させ、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記無線通信装置を前記第1の状態に遷移させ、
前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする通信制御方法。
【請求項22】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、
第1期間長に関わる情報を含むビーコンを送信し、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は第1の状態にあり、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能とし、
前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする
通信制御方法。
【請求項23】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する通信制御方法であって、
第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを送信し、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は第1の状態にあり、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移し、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移し、
前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする通信制御方法。
【請求項24】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、
第1期間長に関わる情報を含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能にならしめるステップと、を備え、
前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする通信プログラム。
【請求項25】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、
第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移させ、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移させるステップと、を備え、
前記第2の状態における前記無線通信装置の消費電力は前記第1の状態における前記無線通信装置の消費電力よりも小さいことを特徴とする通信プログラム。
【請求項26】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、
第1期間長に関わる情報を含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第1期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、前記第1の期間長の期間の経過後、次のビーコン送信タイミングまで、第2の状態に遷移することを可能にならしめるステップと、を備え、
前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きく、前記第2の状態にある間は、他の無線端末がデータ送信を行わないことを特徴とする通信プログラム。
【請求項27】
CSMA/CA方式にしたがって、ひとつ以上の他の無線端末に対して一対多型の接続関係を形成して通信する無線通信装置に対するコンピュータに実行させるための通信プログラムであって、
第2の期間長に関わる情報と、第3の期間に関わる情報とを含むビーコンを前記無線通信装置から送信するステップと、
前記ビーコンの送信タイミングから、少なくとも前記第2の期間長の期間の間は前記無線通信装置を第1の状態にし、その後、前記第3の期間の間は第2の状態に遷移させ、前記第3の期間の終了時点あるいは次のビーコン送信タイミングのどちらか早いタイミングに前記第1の状態に遷移させるステップと、を備え、
前記第1の状態はデータを受信可能であり、前記第2の状態はデータの受信を制限する状態であり、前記第1の状態における消費電力は前記第2の状態の消費電力よりも大きいことを特徴とする通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−195971(P2012−195971A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154652(P2012−154652)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2008−293503(P2008−293503)の分割
【原出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】