説明

無線通信装置

【課題】妨害波到来による干渉を回避し、信頼性の高い無線通信を可能とする。
【解決手段】無線通信装置1−1の制御部23は、妨害波判定部25により、複数の無線周波数チャネルそれぞれで受信された無線信号から受信電界強度をそれぞれ検出し、検出された各無線周波数チャネルの受信電界強度を妨害波レベルとして妨害波テーブル241に格納する。制御部23は、周波数選択部26により、受信電界強度が希望波を受信するために予め定められた閾値以上であって、かつ前記受信電界強度が低い無線周波数チャネルから順に通信用チャネルの候補として優先順位を設定し、優先順位テーブル242を作成する。制御部23は、この優先順位テーブル242にしたがって複数の無線周波数チャネルの中から優先順位の高い無線周波数チャネルを選択し、選択された無線周波数チャネルを用いて相手先の無線通信装置との間の通信路を確立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の無線周波数チャネルを選択的に用いて送受信を行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置同士で直接通信する場合、周囲の環境により到来するさまざまな妨害波の存在により干渉を受け、通信品質が劣化するおそれがある。干渉源としては、例えば、無線通信装置の近辺に設置されている電子機器からのノイズ放射や、発生源が特定できない外来到来波による干渉などが考えられる。
【0003】
通常、無線通信装置には希望波以外の妨害波を無線機内部のフィルタにより減衰させる選択度特性があるため、希望波と周波数の異なる妨害波であれば、ある一定以上の妨害波干渉に耐えうる能力を持つ。しかし、該当する妨害波が希望波の周波数と同一の場合には、もはや従来無線機によりこの問題を解決することはできず、ノイズ放射源となる電子機器を取り去るか、中継増幅器により弱い無線信号を増幅させ中継通信動作するような、妨害波レベルを上回る希望波レベルで通信するしかない。
【0004】
なお、マルチチャネルアクセス方式の無線通信システムにおいて、圏内判定を行うために、的確に受信電界強度を検出する手法が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平9−247075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、無線通信装置において、希望波の受信周波数と妨害波の受信周波数が同一であり、妨害波源の除去や、中継増幅器を用いる設備投資が困難である場合、通信品質が低下し、通信の接続が不安定になる、あるいは通信の接続自体が不可能となるおそれがある。また、実際の運用において、複雑な電波環境を完全に把握することは困難であり、刻々と変化する電波環境によって通信品質が悪化する場合がある。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、妨害波到来による干渉を回避し、信頼性の高い無線通信を行うことができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明は、複数の移動局それぞれに設けられ、複数の無線周波数チャネルを介して通信範囲内にある他の移動局との間で無線信号を送受信する無線通信装置であって、前記複数の無線周波数チャネルそれぞれで受信された無線信号から受信電界強度をそれぞれ検出する手段と、前記検出された各無線周波数チャネルの受信電界強度をもとに妨害波のレベルが所定の値を超えたか否かを判定する手段と、前記妨害波のレベルが所定の値を超えたと判定された場合に、前記受信電界強度が希望波を受信するために予め定められた閾値以上であって、かつ前記受信電界強度が低い無線周波数チャネルから順に通信用チャネルの候補として優先順位を設定する手段と、前記設定された優先順位にしたがって前記複数の無線周波数チャネルの中から優先順位の高い無線周波数チャネルを選択する手段と、前記選択された無線周波数チャネルを用いて前記他の移動局との間の通信路を確立する手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
上記構成では、マルチチャネルアクセス方式の無線通信システムにおいて、無線周波数チャネル毎に受信入力電界強度を検出し、これを周囲の電波環境の優劣を推定する判断材料とすることで、より品質の良い無線周波数チャネルを自動選択し通信を行う。すなわち、希望波以外の受信入力は全て妨害波であると仮定することで、無線通信装置は、希望波以外の高いレベルの受信電界強度を検出した場合に、周囲環境に存在する妨害波レベルが高いと判断し、通信品質が劣化ないし、不可であるものとしてその無線周波数チャネルを選択しないようにする。低いレベルの受信電界強度を検知した場合には、周囲環境に存在する妨害波レベルが低いと判断し、当該無線周波数チャネルを優先的に用いるようにする。
【発明の効果】
【0009】
したがってこの発明によれば、妨害波到来による干渉を回避し、信頼性の高い無線通信を行うことができる無線通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について詳細に説明する。
図1に、本発明に係る無線通信装置を用いた無線通信システムの一実施形態を示す構成例と周囲に存在する干渉源を示す。
図1において、無線通信装置1−1と無線通信装置1−2との間で送受信波2を介して無線通信を行う。このとき、近接に存在する電子機器3から発せられる電磁ノイズ4や、発生元が不明な外来から到来するノイズ5または、同一の無線通信システムに属する無線通信装置6が発射する電磁波7は、通信対象とする系である無線通信装置1−1および無線通信装置1−2にとっては通信品質の劣化を引き起こす妨害波である。なお、無線通信装置1−1および無線通信装置1−2は同一構成であるため、以下、無線通信装置1−1を例に挙げて説明を行う。
【0011】
図2は、無線通信装置1−1の構成を示すブロック図である。無線通信装置1−1は、アンテナ21と、送受信部22と、制御部23と、記憶部24と、妨害波判定部25と、周波数選択部26とを備える。送受信部22は、制御部23による制御の下で、複数の無線周波数チャネルを選択的に用いて通信相手先の無線通信装置1−2との間で無線信号の送受信を行う。記憶部24には、妨害波テーブル241および優先順位テーブル242が記憶される。
【0012】
妨害波判定部25は、各無線周波数チャネル全て又は、必要とする無線周波数チャネルについて、無線周波数チャネルごとに受信電界強度を表す受信信号強度表示信号(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を検出する。検出の結果得られた受信電界強度を妨害波レベルとしてテーブル化して妨害波テーブル241に記憶する。妨害波判定部25は、この妨害波テーブル241をもとに周囲の電波環境の優劣を判定する。図3に、無線周波数チャネルとRSSIの表す受信電界強度との対応関係の一例を表す。妨害波判定部25は、希望波以外の受信入力は全て妨害波であると仮定することで、希望波以外の高いレベルの受信入力電界強度を検出した場合に、周囲環境に存在する妨害波レベルが高いと判定し、その無線周波数チャネルは、通信品質が劣化ないし、通信不可であるものと判断する。一方、低いレベルの受信入力電界強度を検知した場合には、周囲環境に存在する妨害波レベルが低いと判断する。
【0013】
周波数選択部26は、上記作成された妨害波テーブル241をもとに、最適な受信周波数チャネルを選択するための優先順位テーブル242を作成する。例えば、図3において、無線周波数チャネルを選択する際は、希望波を受信するために予め定められた閾値L0以上であって、かつ妨害波レベルが低いチャネルの順にL1、L3、L2、…という順序で受信周波数チャネルの候補として優先順位を設定し、優先順位テーブル242に格納する。周波数選択部26は、この優先順位テーブル242にしたがって、複数の無線周波数チャネルの中から優先順位の高い無線周波数チャネルを選択し、選択された無線周波数チャネルを用いて通信相手先の無線通信装置1−2との間の通信路を確立する。
【0014】
次に、このように構成された無線通信装置1−1の動作について説明する。
(妨害波テーブルの更新処理)
図4は、妨害波テーブルの更新処理の手順とその内容を示すフローチャートである。
無線通信装置1−1の制御部23は、妨害波判定部25によりすべての無線周波数チャネル、または必要のある無線周波数チャネルについて妨害波レベルの判定を行う。図4において、制御部23は、RSSIをもとに受信電界強度を検出する(ステップS4a)。そして、自己の通信システム固有のプロトコルにしたがって同期がとれるか否かを判定する(ステップS4b)。この判定において、同期が取れた場合は、希望波と判定し、次のチャネルの処理に移行する(ステップS4c)。上記判定において、同期が取れなかった場合は妨害波と判定する(ステップS4d)。妨害波と判定された場合は、妨害波テーブル241において当該無線周波数チャネルの受信電界強度の値を更新する(ステップS4e)。
【0015】
(周波数チャネルの選択処理)
図5は、周波数チャネルの選択処理の手順とその内容を示すフローチャートである。ここでは3つの周波数チャネルを受信周波数チャネルの候補とする場合を示している。
制御部23は、周波数選択部26により、妨害波テーブル241から3つの受信周波数チャネル(f1〜f3)の候補となる優先順位テーブル242を作成する(ステップS5a)。次に、作成した優先順位テーブル242を通信相手である無線通信装置1−2に向けて送信する(ステップS4b)。通信相手である無線通信装置1−2は、この優先順位テーブル242にしたがって複数の無線周波数チャネルの中から優先順位の高い無線周波数チャネルを送信周波数チャネルに選択し、優先順位テーブル242の送信元の無線通信装置1−1に対し、一定時間無線信号の送信を行う。
【0016】
同様に、優先順位テーブル242を送信した無線通信装置1−1は、優先順位テーブル242にしたがって、優先順位の高い順に無線周波数チャネルを受信周波数チャネルに選択して、順次受信処理を行い、自己の通信システム固有のプロトコルにしたがって同期が取れたか否かを判定する(ステップS5c〜5e)。上記判定において、同期が取れたチャネルを受信周波数チャネルに設定する(ステップS5f〜5i)。この周波数設定を通信相手である無線通信装置1−2に通知し(ステップS5j)、送信周波数チャネルを決定することで通信路を確立する。以降は再度周波数の選択処理がなされるまで設定された周波数チャネルを用いて通信相手である無線通信装置1−2との間で通信を行う(ステップS5k)。
【0017】
このとき、通信相手である無線通信装置1−2に対しても上記同様の処理がなされることにより、双方の無線通信装置1−1、1−2において、より品質の良い通信路をアダプティブに選択することが可能となる。
【0018】
以上述べたように上記実施形態では、無線通信装置1−1の制御部23は、妨害波判定部25により、複数の無線周波数チャネルそれぞれで受信された無線信号から受信電界強度をそれぞれ検出し、検出された各無線周波数チャネルの受信電界強度を妨害波レベルとして妨害波テーブル241に格納する。制御部23は、周波数選択部26により、受信電界強度が希望波を受信するために予め定められた閾値以上であって、かつ前記受信電界強度が低い無線周波数チャネルから順に通信用チャネルの候補として優先順位を設定し、優先順位テーブル242を作成する。制御部23は、この優先順位テーブル242にしたがって複数の無線周波数チャネルの中から優先順位の高い無線周波数チャネルを選択し、選択された無線周波数チャネルを用いて相手先の無線通信装置との間の通信路を確立する。
【0019】
すなわち、希望波以外の受信入力は全て妨害波であると仮定することで、無線通信装置1−1は、希望波以外の高いレベルの受信電界強度を検出した場合に、周囲環境に存在する妨害波レベルが高いと判断し、通信品質が劣化ないし、不可であるものとしてその無線周波数チャネルを選択しないようにする。一方、低いレベルの受信電界強度を検知した場合には、周囲環境に存在する妨害波レベルが低いと判断し、当該無線周波数チャネルを優先的に用いるようにする。
【0020】
このようにすることで、無線通信装置1−1は、より品質の良い無線周波数チャネルを選択し続けるため、刻々と電波環境が変化し通信品質劣化を招くことが想定される状況においても、妨害波到来による干渉を回避し、信頼性の高い無線通信を行うことが可能となる。
【0021】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る無線通信装置を用いた無線通信システムの一実施形態を示す構成例と周囲に存在する干渉源を示す図。
【図2】無線通信装置の構成を示すブロック図。
【図3】無線周波数チャネルと妨害波レベルとの対応関係の一例を示す図。
【図4】妨害波テーブルの更新処理の手順とその内容を示すフローチャート。
【図5】周波数チャネルの選択処理の手順とその内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0023】
1−1、1−2…無線通信装置、2…無線通信、3…電子機器、4…電子機器より発する妨害波、5…外来到来妨害波、6…他の無線通信装置、7…他の無線通信装置から送信される無線波、21…アンテナ、22…送受信部、23…制御部、24…記憶部、241…妨害波テーブル、242…優先順位テーブル、25…妨害波判定部、26…周波数選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動局それぞれに設けられ、複数の無線周波数チャネルを介して通信範囲内にある他の移動局との間で無線信号を送受信する無線通信装置であって、
前記複数の無線周波数チャネルそれぞれで受信された無線信号から受信電界強度をそれぞれ検出する手段と、
前記検出された各無線周波数チャネルの受信電界強度をもとに妨害波のレベルが所定の値を超えたか否かを判定する手段と、
前記妨害波のレベルが所定の値を超えたと判定された場合に、前記受信電界強度が希望波を受信するために予め定められた閾値以上であって、かつ前記受信電界強度が低い無線周波数チャネルから順に通信用チャネルの候補として優先順位を設定する手段と、
前記設定された優先順位にしたがって前記複数の無線周波数チャネルの中から優先順位の高い無線周波数チャネルを選択する手段と、
前記選択された無線周波数チャネルを用いて前記他の移動局との間の通信路を確立する手段と
を具備することを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−77224(P2009−77224A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245198(P2007−245198)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】