説明

無線通信装置

【課題】変調効率が高い無線通信装置を提供することを課題とする。
【解決手段】無線通信装置は、ベースバンド信号生成器により生成されたNビットのデジタルデータに応じて、クロック発生器により生成された2N個のパルス信号のうちの1個のパルス信号を選択するセレクタと、セレクタにより選択されたパルス信号のパルス幅を短くする短パルス発生器と、短パルス発生器によりパルス幅が短くされたパルス信号に含まれる周波数成分の中から通過周波数帯域の周波数成分のみを通過させ、通過周波数帯域以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタとを有し、クロック発生器により生成される2N個のパルス信号は、第1のパルス及び第2のパルスを含む全期間非送信パルス(S0)、第3のパルス及び第4のパルスを含む全期間送信パルス(S7)、並びにパルス幅が同じであって位相が異なる2N−2個の一部期間送信パルス(S1〜S6)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インパルス無線通信は、極めてパルス幅の小さい高周波(RF)パルスの無線通信であり、広帯域無線通信システムへの適用が期待されている。インパルス無線通信において、変調効率を高めるために検討されている多値変調技術の代表的なものはパルス位置変調(PPM)である。パルス位置変調技術に関しては、例えば下記の特許文献1〜3にその例を見ることができる。
【0003】
図1は、パルス位置変調を示す図である。パルス位置変調は、データ系列に応じた遅延時間分だけパルスの発生を遅らせることが特徴となっている。例えば3ビットデジタルデータのパルス位置変調の場合、デジタルデータ系列(n1,n2,n3)に対して、Δt×{22×n1+21×n2+n3}だけパルス発生時間を遅らせる。ここで、nkは1または0であり、Δtはステップ時間であり、Twは高周波(RF)パルスの時間幅である。このときシンボル長Ts1は、時刻t1からt3までの時間であり、(23−1)×Δt+TWとなる。伝送速度は、3/{(23−1)×Δt+TW}である。一般化すると、Nビットデジタルデータのパルス位置変調の場合の伝送速度はn/{(2n−1)×Δt+TW}となる。この式からステップ時間Δtを小さくすればする程、多値化による変調効率の改善が可能となる。ところが、ステップ時間Δtは復調器に使用するデバイスの位相識別感度に依存するため、小さくすることにはおのずと限界がある。例えば、ステップ時間Δtを20ピコ秒(ps)、時間幅TWを200psとした場合、3ビットデジタルデータのパルス位置変調では、シンボル長Ts1が340ps、伝送速度が8.8ギガビット/秒(Gb/s)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−521143号公報
【特許文献2】特開2000−278332号公報
【特許文献3】特開2009−88947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、変調効率が高い無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
無線通信装置は、Nビット(Nは2以上の整数)のデジタルデータを生成するベースバンド信号生成器と、前記Nビットのデジタルデータに対応する2N個のパルス信号を生成するクロック発生器と、前記ベースバンド信号生成器により生成されたNビットのデジタルデータに応じて、前記クロック発生器により生成された2N個のパルス信号のうちの1個のパルス信号を選択するセレクタと、前記セレクタにより選択されたパルス信号のパルス幅を短くする短パルス発生器と、前記短パルス発生器によりパルス幅が短くされたパルス信号に含まれる周波数成分の中から通過周波数帯域の周波数成分のみを通過させ、前記通過周波数帯域以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタを通過した信号を無線送信するためのアンテナとを有し、前記クロック発生器により生成される2N個のパルス信号は、第1のパルス及び第2のパルスを含む全期間非送信パルス、第3のパルス及び第4のパルスを含む全期間送信パルス、並びにパルス幅が同じであって位相が異なる2N−2個の一部期間送信パルスを含み、前記セレクタが前記一部期間送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは1シンボル長内の一部の期間の時間幅を有する信号を出力し、前記セレクタが前記2N−2個の一部期間送信パルスのうちの1個である第1の一部期間送信パルスを選択した時の前記バンドパスフィルタの出力信号は、前記セレクタが前記2N−2個の一部期間送信パルスのうちの前記第1の一部期間送信パルス以外の一部期間送信パルスを選択した時の前記バンドパスフィルタの出力信号に対して、時間幅が同じであって位相が異なり、前記セレクタが前記全期間非送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは前記第1のパルスに対応する信号と前記第2のパルスに対応する信号とが打ち消し合って減衰した信号を出力し、前記セレクタが前記全期間送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは前記1シンボル長内の全期間の時間幅を有する信号を出力する。
【発明の効果】
【0007】
Nビットのデジタルデータに対応する1シンボル長を短くすることができ、変調効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】パルス位置変調を示す図である。
【図2】第1の実施形態によるインパルス無線通信装置の変調方式を説明するための図である。
【図3】図3(A)はインパルス無線通信装置の送信部の構成例を示す図であり、図3(B)は全期間非送信信号の生成方法を示す図である。
【図4】全期間送信信号の生成方法を示す図である。
【図5】図5(A)はインパルス無線通信装置の構成例を示す図であり、図5(B)はバンドパスフィルタの通過周波数帯域を示す図である。
【図6】図5のパルス発生器、短パルス発生器及びバンドパスフィルタの構成例を示す図である。
【図7】図7(A)は15相クロック発生器の構成例を示す図であり、図7(B)は15相クロック発生器により生成されるパルス信号を示す図である。
【図8】図6のセレクタの構成例を示す図である。
【図9】図6のセレクタの動作を説明するためのタイムチャートである。
【図10】第2の実施形態によるパルス発生器、短パルス発生器及びバンドパスフィルタの構成例を示す図である。
【図11】図11(A)は30相クロック発生器の構成例を示す図であり、図11(B)は30相クロック発生器により生成されるパルス信号を示す図である。
【図12】図10のセレクタの構成例を示す図である。
【図13】図10のセレクタの動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態によるインパルス無線通信装置の変調方式を説明するための図である。例えば、3ビットのデジタルデータ「000」〜「111」は、それぞれ1シンボル長Ts2内の8個の信号S0〜S7に変調される。信号S1〜S6は、1シンボル長Ts2内の一部の期間の時間幅Twを有する一部期間送信信号であり、相互に時間幅Twが同じであってステップ時間Δtの正の整数倍位相が異なる。信号S1〜S6は、デジタルデータ「001」〜「110」がパルス位置変調された信号である。デジタルデータ「000」の変調信号S1は、時刻t1から時間幅Twが開始するRFパルス(波束)である。デジタルデータ「001」の変調信号S2は、変調信号S1に対してΔtだけ遅延した信号である。デジタルデータ「010」の変調信号S3は、変調信号S1に対して2×Δtだけ遅延した信号である。デジタルデータ「011」の変調信号S4は、変調信号S1に対して3×Δtだけ遅延した信号である。デジタルデータ「100」の変調信号S5は、変調信号S1に対して4×Δtだけ遅延した信号である。デジタルデータ「101」の変調信号S6は、変調信号S1に対して5×Δtだけ遅延した信号である。デジタルデータ「000」の変調信号S0は、1シンボル長Ts2内の全期間でRFパルスが送信されない全期間非送信信号である。デジタルデータ「111」の変調信号S7は、1シンボル長Ts2内の全期間の時間幅を有する全期間送信信号である。
【0010】
図2の変調方式は、図1の変調方式に対して全期間非送信信号S0及び全期間送信信号S7を追加したものである。Nビットのデジタルデータを変調する場合の1シンボル長Ts2は(2N−3)×Δt+Twである。図1の1シンボル長Ts1は(2N−1)×Δt+Twである。1シンボル長Ts2は、時刻t1からt2までの時間であり、図1の1シンボル長Ts1(時刻t1〜t3)よりも2×Δt短い。1シンボル長Ts2を短くできるので、変調効率が向上する。
【0011】
図2の伝送速度は、N/{(2N−3)×Δt+Tw}(bps)である。図1の伝送速度は、N/{(2N−1)×Δt+Tw}(bps)である。N=3、Tw=200ps、Δt=20psの場合、図1の伝送速度は8.8Gbpsであり、図2の伝送速度は10.0Gbpsである。図1の伝送速度は、図2の伝送速度より13.3%向上する。
【0012】
また、図2のシンボル長Ts2を図1のシンボル長Ts1と同じにした場合には、図2のステップ時間Δtを28psに約40%増やすことができ、トランジスタ等のハードウエアへの負荷を軽減でき、より安価なトランジスタを用いてインパルス無線通信装置を構成できる大きなメリットが得られる。
【0013】
以上のように、図2の変調方式は、パルス位置変調の信号S1〜S6に全期間非送信信号S0及び全期間送信信号S7を追加することにより、ステップ時間Δtの総数を低減して1シンボル長Ts2を短縮し、伝送速度つまり変調効率を向上させることができる。さらに、後述するが、全期間非送信信号S0及び全期間送信信号S7の生成に関し、インパルス無線通信という方式上の特色を活かした手段を用いる。
【0014】
図3(A)はインパルス無線通信装置の送信部の構成例を示す図であり、図3(B)は全期間非送信信号S0の生成方法を示す図である。インパルス無線通信装置は、短パルス発生器503及びバンドパスフィルタ504を有する。全期間非送信信号S0は、インパルス無線方式の特色を活かした方法で生成される。短パルス発生器503は、Nビットのデジタルデータに対応した極細い短パルス信号521を発生する。短パルス信号521は、半値幅が10ps以下であり、直流からミリ波帯に至る広帯域のエネルギーを有する。バンドパスフィルタ504は、短パルス信号521の所望の通過周波数帯域の周波数成分のみを通過させ、通過周波数帯域以外の周波数成分を減衰させ、RFパルス(波束)522を出力する。RFパルス522は、増幅された後、アンテナにより無線送信される。バンドパスフィルタ504の通過周波数帯域は、fc±Δfである。ここで、fcは、バンドパスフィルタ504の通過周波数帯域の中心周波数である。
【0015】
RFパルス522は、近似的に、RFパルス振動周期Tc(=1/fc)で振動する時間幅Twのパルスである。時間幅Twは、約1/(2×Δf)である。例えば、fc=100GHz、Δf=2.5GHzとすれば、送信信号は中心周波数fc=100GHzで振動する時間幅Tw=200psのRFパルス522が生成される。
【0016】
インパルス無線通信方式により生成される送信信号のもつ以上の特徴を利用すれば、全期間非送信信号S0は図3(B)に示す原理で生成できる。バンドパスフィルタ504は、短パルス発生器503から第1の短パルスPa1を入力するとRFパルスSa1を出力する。その後、バンドパスフィルタ504は、短パルス発生器503から第2の短パルスPa2を入力するとRFパルスSa2を出力する。短パルス発生器503は、第1の短パルスPa1の発生後、(2×k−1)/(2×fc)秒後に、第2の短パルスPa2を発生させる。ここで、kは正の整数である。すなわち、第2の短パルスPa2は、第1の短パルスPa1の発生後、振動周期Tcの1/2の奇数倍の時間後に生成される。これにより、バンドパスフィルタ504はRFパルスSa1とRFパルスSa2とが逆相で重畳し、相互に打ち消し合って減衰した全期間非送信信号S0を出力する。全期間非送信信号S0では、RFパルスSa1及びSa2がお互い打ち消すので1シンボル長Ts2の全期間内でRFパルスは出力されない。
【0017】
図4は、全期間送信信号S7の生成方法を示す図である。バンドパスフィルタ504は、短パルス発生器503から第3の短パルスPb1を入力するとRFパルスSb1を出力する。その後、バンドパスフィルタ504は、短パルス発生器503から第4の短パルスPb2を入力するとRFパルスSb2を出力する。短パルス発生器503は、第3の短パルスPb1の発生後、m/fc秒後に、第4の短パルスPb2を発生させる。ここで、mは正の整数である。すなわち、第4の短パルスPb2は、第3の短パルスPb1の発生後、振動周期Tcの正の整数倍の時間後に生成される。これにより、バンドパスフィルタ504は、RFパルスSb1とRFパルスSb2とが同相で重畳した全期間送信信号S7を出力する。全期間送信信号S7では、RFパルスSb1及びSb2が互いに同相で重畳し、RFパルス1個の場合より長いRFパルスが出力される。例えば、3ビットデジタルデータのパルス位置変調の場合、1シンボル長Ts2の先頭で第3の短パルスPb1を発生させ、1シンボル長Ts2の先頭から(23−2)×Δt=6×Δt後に、第4の短パルスPb2を発生させれば、1シンボル長Ts2内の全期間送信が実現する。この場合、ステップ時間ΔtをRFパルス振動周期Tc(=1/fc)の正の整数倍にすれば、RFパルスSb1及びSb2が同相で重畳する。なお、1シンボル長Ts2が長い場合には、3個以上の短パルスを発生させ、3個以上の同相のRFパルスを重畳することにより、全期間送信信号S0を生成することができる。
【0018】
図5(A)はインパルス無線通信装置の構成例を示す図であり、図5(B)はバンドパスフィルタ504の通過周波数帯域を示す図である。インパルス無線通信装置は、ベースバンド信号生成器501、パルス発生器502、短パルス発生器503、バンドパスフィルタ504、送信アンプ505、スイッチ506、アンテナ507、受信アンプ508、バンドパスフィルタ509、検波器510及びベースバンド信号再生器511を有する。ベースバンド信号生成器501、パルス発生器502、短パルス発生器503、バンドパスフィルタ504及び送信アンプ505は、送信装置を構成する。これに対し、ベースバンド信号再生器511、検波器510、バンドパスフィルタ509及び受信アンプ508は、受信装置を構成する。
【0019】
まず、送信装置について説明する。ベースバンド信号生成器501は、NビットのデジタルデータDTを送信データとして生成する。例えば、ベースバンド信号生成器501は、図2のように、8個の3ビットデジタルデータ「000」〜「111」のうちのいずれかを生成する。パルス発生器502は、ベースバンド信号生成器501により生成されたNビットのデジタルデータDTに応じてパルス信号を生成する。パルス発生器502の詳細は、後に図6を参照しながら説明する。短パルス発生器503は、パルス発生器502により生成されたパルス信号のパルス幅を短くし、短パルス521を出力する。例えば、短パルス発生器503は、パルス幅を短くすることによりインパルスを生成する。バンドパスフィルタ504は、短パルス発生器503によりパルス幅が短くされた短パルス521に含まれる周波数成分の中から所定の通過周波数帯域の周波数成分のみを通過させ、所定の通過周波数帯域以外の周波数成分を減衰させ、RFパルス(波束)522を出力する。
【0020】
図5(B)は、バンドパスフィルタ504の通過周波数帯域532を示す図である。短パルス(インパルス)特性531は、短パルス521の周波数特性を示す。RFパルス522は、短パルス特性531のうちの通過周波数帯域532の部分のみの周波数成分を有する。UWB(超広帯域無線:Ultra Wide Band)等では、使用可能な周波数帯域が制限されている。その周波数帯域の制限を満たすようにするために、バンドパスフィルタ504を用いる。
【0021】
バンドパスフィルタ504は、図2に示すように、デジタルデータDTが「000」の時には全期間非送信信号S0を出力し、デジタルデータDTが「001」の時には一部期間送信信号S1を出力し、デジタルデータDTが「010」の時には一部期間送信信号S2を出力し、デジタルデータDTが「011」の時には一部期間送信信号S3を出力し、デジタルデータDTが「100」の時には一部期間送信信号S4を出力し、デジタルデータDTが「101」の時には一部期間送信信号S5を出力し、デジタルデータDTが「110」の時には一部期間送信信号S6を出力し、デジタルデータDTが「111」の時には全期間送信信号S7を出力する。送信アンプ505は、RFパルス522を増幅し、スイッチ506及びアンテナ507を介して、増幅したRFパルスを無線送信する。送信モードでは、スイッチ506は、送信アンプ505及びアンテナ507を相互に接続する。
【0022】
次に、受信装置について説明する。受信モードでは、スイッチ506は、アンテナ507及び受信アンプ508を相互に接続する。受信アンプ508は、他のインパルス無線通信装置から、アンテナ507及びスイッチ506を介して、図2の信号S0〜S7を受信し、増幅する。バンドパスフィルタ509は、受信アンプ508の出力信号に対して所定の通過周波数帯域のみを通過させるためのフィルタリングを行う。検波器510は、バンドパスフィルタ509の出力信号を検波して出力する。ベースバンド信号再生器511は、検波器510の出力信号を入力し、受信データの再生を行う。例えば、ベースバンド信号再生器511は、図2の信号S0〜S7を入力したときには、それぞれ3ビットデジタルデータ「000」〜「111」に再生する。
【0023】
インパルス方式による無線通信装置は、マイクロ波帯、準ミリ波帯、UWBをはじめとする超広帯域無線通信システムに利用可能である。インパルス方式は、狭帯域通信方式と比較して、発振器やミキサが不要でRF部の構成が簡素・低コストとなる特徴を有し、広帯域を利用できるミリ波帯においては10Gbpsを超える広帯域無線伝送の実現が期待される。
【0024】
図6は、図5のパルス発生器502、短パルス発生器503及びバンドパスフィルタ504の構成例を示す図である。例えば、インパルス無線通信装置は、100GHz帯の10Gbpsのインパルス無線通信装置である。バンドパスフィルタ504の通過周波数帯域は、100±2.5GHzであり、アルミナ基板上に結合マイクロストリップ線路を多段形成することで実現される。
【0025】
パルス発生器502は、シリアルパラレル変換器601、クロック乗換部602、クロック発生器603、デューティ比変換回路604、15相クロック発生器607及びセレクタ608を有する。デューティ比変換回路604は、遅延回路605及び論理積(AND)回路606を有する。短パルス発生器503は、遅延回路611及び論理積回路612を有する。
【0026】
シリアルパラレル変換器601は、10GHzのクロック信号CLKに同期し、10GbpsのシリアルのデジタルデータDTを例えば3ビットのパラレルのデジタルデータに変換する。クロック発生器603は、10GHzのクロック信号CLKに同期し、3.33GHzのクロック信号CLK1を生成する。クロック乗換部602は、例えばFIFO(ファーストインファーストアウト)回路であり、クロック信号CLK1に同期し、シリアルパラレル変換器601が出力する10GHzのクロック信号CLKのデータから3.33GHzのクロック信号CLK1のデータに乗り換え、3ビットのパラレルデジタルデータD0〜D2を出力する。デューティ比変換回路604は、クロック信号CLK1のデューティ比を変換し、クロック信号CLKpを出力する。クロック信号CLKpのハイレベル期間は、例えば2×Δt=2×20ps=40psである。ステップ時間Δtは例えば20psである。デューティ比変換回路604は、遅延回路605により、デューティ比40:260のクロック信号CLKpを生成する。遅延回路605は、クロック信号CLK1を遅延して出力する。論理積回路606は、遅延回路605の出力信号及びクロック信号CLK1の論理積信号をクロック信号CLKpとして出力する。15相クロック発生器607は、クロック信号CLKpを入力し、パルス信号P1〜P6をセレクタ608に出力する。
【0027】
図7(A)は15相クロック発生器607の構成例を示す図であり、図7(B)は15相クロック発生器607により生成されるパルス信号P1〜P6を示す図である。15相クロック発生器607は、Ts2/Δt個の可変遅延回路701〜715と、位相比較器721と、ローパスフィルタ722と、電流制御回路723とを有する遅延ロックループ(DLL)回路である。1シンボル長Ts2が300ps、ステップ時間Δtが20psの場合、15個の可変遅延回路701〜715が必要になる。
【0028】
クロック信号CLKpは、パルス信号P1になる。可変遅延回路701〜715は、クロック信号CLKpを入力し、直列にループ接続され、それぞれが遅延を行う。位相比較器721は、可変遅延回路701〜715のうちの初段の可変遅延回路701に入力されるパルス信号P1と最終段の可変遅延回路715から出力されるパルス信号P0との位相を比較する。ローパスフィルタ722は、位相比較器721の比較結果信号の高周波数成分を除去し、電流制御回路723に出力する。電流制御回路723は、位相比較器721が比較する2個のパルス信号P0及びP1の位相が一致するように、可変遅延回路701〜715の電流制御により、可変遅延回路701〜715の遅延時間を制御する。可変遅延回路701〜715の遅延時間は同じである。このフィードバック制御により、パルス信号P0及びP1の位相は一致する。6個のパルス信号P1〜P6は、それぞれ、可変遅延回路701〜706に入力される信号であり、ステップ時間Δt(=20ps)ずつ遅延した信号である。
【0029】
15相クロック発生器607は、15相のクロック信号を生成し、そのうちの6個のパルス信号P1〜P6を出力する。8個のデジタルデータ「000」〜「111」の変調を行う場合には、全期間非送信信号S0及び全期間送信信号S7を除いた6個の一部期間送信信号S1〜S6を生成するために6個のパルス信号P1〜P6を出力する。15個の可変遅延回路701〜715を用いることにより、ステップ時間Δt=20psが、300ps÷15という整数演算で得られるメリットがある。300psは1シンボル長Ts2である。1シンボル長Ts2は、ステップ時間Δtの正の整数倍になる。
【0030】
図8は図6のセレクタ608の構成例を示す図であり、図9はセレクタ608の動作を説明するためのタイムチャートである。セレクタ608は、遅延回路811、排他的論理和回路812、論理和(OR)回路813、及びセレクタ801〜807を有し、パルス信号P1〜P6を入力し、3ビットデジタルデータD0〜D3に応じてパルス信号Pcを出力する。遅延回路811は、パルス信号P1を15ps遅延して出力する。排他的論理和回路812は、遅延回路811の出力信号及びパルス信号P3の排他的論理和信号をパルス信号PP0として出力する。論理和回路813は、パルス信号P1及びP6の論理和信号をパルス信号PP7として出力する。
【0031】
セレクタ801は、デジタルデータD0が「1」のときにはパルス信号P1を出力し、デジタルデータD0が「0」のときにはパルス信号PP0を出力する。セレクタ802は、デジタルデータD0が「1」のときにはパルス信号P3を出力し、デジタルデータD0が「0」のときにはパルス信号P2を出力する。セレクタ803は、デジタルデータD0が「1」のときにはパルス信号P5を出力し、デジタルデータD0が「0」のときにはパルス信号P4を出力する。セレクタ804は、デジタルデータD0が「1」のときにはパルス信号PP7を出力し、デジタルデータD0が「0」のときにはパルス信号P6を出力する。
【0032】
セレクタ805は、デジタルデータD1が「1」のときにはセレクタ802の出力信号を出力し、デジタルデータD1が「0」のときにはセレクタ801の出力信号を出力する。セレクタ806は、デジタルデータD1が「1」のときにはセレクタ804の出力信号を出力し、デジタルデータD1が「0」のときにはセレクタ803の出力信号を出力する。セレクタ807は、デジタルデータD2が「1」のときにはセレクタ806の出力信号をパルス信号Pcとして出力し、デジタルデータD2が「0」のときにはセレクタ805の出力信号をパルス信号Pcとして出力する。
【0033】
すなわち、パルス信号Pcは、デジタルデータD0〜D2が「000」のときにはパルス信号PP0となり、デジタルデータD0〜D2が「001」のときにはパルス信号P1となり、デジタルデータD0〜D2が「010」のときにはパルス信号P2となり、デジタルデータD0〜D2が「011」のときにはパルス信号P3となり、デジタルデータD0〜D2が「100」のときにはパルス信号P4となり、デジタルデータD0〜D2が「101」のときにはパルス信号P5となり、デジタルデータD0〜D2が「110」のときにはパルス信号P6となり、デジタルデータD0〜D2が「111」のときにはパルス信号PP7となる。
【0034】
クロック信号CLK1は、3.33GHzのクロック信号である。パルス信号P1〜P6は、パルス幅(=40ps)が同じであって位相が20psずつ異なる一部期間送信パルスである。一部期間送信パルスP1〜P6は、図2の一部期間送信信号S1〜S6を生成するためのパルスである。パルス信号PP0は、第1のパルス901a及び第2のパルス902aを含む全期間非送信パルスであり、図2の全期間非送信信号S0を生成するためのパルスである。パルス信号PP7は、第3のパルスP1及び第4のパルスP6を含む全期間送信パルスであり、図2の全期間送信信号S7を生成するためのパルスである。
【0035】
図6において、短パルス発生器503は、例えばインジウム燐系HEMT(高電子移動度トランジスタ)を用いて作成される。遅延回路611は、パルス信号Pcを10ps遅延して出力する。論理積回路612は、遅延回路611の出力信号及びパルス信号Pcの論理積信号を出力することにより、半値幅10psの短パルスを発生させる。パンドパスフィルタ504は、短パルス発生器503の出力信号のうちの97.5〜102.5GHzの通過周波数帯域の周波数成分のみを通過させ、中心周波数100GHzで振動する半値幅200ps(=5GHz-1)のRFパルス522を出力する。
【0036】
図9において、セレクタ608が一部期間送信パルスP1を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S1を出力し、セレクタ608が一部期間送信パルスP2を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S2を出力し、セレクタ608が一部期間送信パルスP3を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S3を出力し、セレクタ608が一部期間送信パルスP4を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S4を出力し、セレクタ608が一部期間送信パルスP5を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S5を出力し、セレクタ608が一部期間送信パルスP6を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S6を出力する。
【0037】
セレクタ608が全期間非送信パルスPP0を出力するときにはバンドパスフィルタ504は全期間非送信信号S0を出力する。全期間非送信パルスPP0は、第1のパルス901a及び第2のパルス902aを含む。第1のパルス901a及び第2のパルス902aの間隔は15psである。これにより、バンドパスフィルタ504の通過周波数帯域の中心周波数をfc、kを正の整数とすると、短パルス発生器503によりパルス幅が短くされた第1のパルス901aの発生後、(2×k−1)/(2×fc)秒後に、短パルス発生器503によりパルス幅が短くされた第2のパルス902aが発生する。中心周波数fcは100GHzであり、1/(2×fc)は5psである。バンドパスフィルタ504の出力信号901bは、第1のパルス901aに対応する信号である。バンドパスフィルタ504の出力信号902bは、第2のパルス902aに対応する信号である。セレクタ608が全期間非送信パルスPP0を選択した時には、バンドパスフィルタ504は信号901bと信号902bとが逆相で重畳し、相互に打ち消し合って減衰した全期間非送信信号S0を出力する。全期間非送信パルスPP0内の第1のパルス901a及び902aは、パルス幅が25ps、間隔が15ps(パルス振動周期Tc(10ps)の3/2倍)であり、これを利用して全期間送信パルスPP0を作ると、お互いが逆相で打ち消し合い、全期間非送信信号S0を生成することができる。
【0038】
セレクタ608が全期間送信パルスPP7を出力するときにはバンドパスフィルタ504は全期間送信信号S7を出力する。全期間送信パルスPP7は、第3のパルスP1及び第4のパルスP6を含む。パルスP1及びP6は、分離している必要がある。これにより、mを正の整数とすると、短パルス発生器503によりパルス幅が短くされた第3のパルスP1の発生後、m/fc秒後に、短パルス発生器503によりパルス幅が短くされた第4のパルスP6が発生する。中心周波数fcは100GHzであり、1/fcは10psである。バンドパスフィルタ504の出力信号S1は、第3のパルスP1に対応する信号である。バンドパスフィルタ504の出力信号S6は、第4のパルスP6に対応する信号である。セレクタ608が全期間送信パルスPP7を選択した時には、バンドパスフィルタ504は信号S1と信号S6とが同相で重畳した全期間送信信号S7を出力する。全期間送信パルスPP7内のパルス信号P1及びP6は、パルス幅が40ps、間隔が60ps(パルス振動周期Tc(10ps)の6倍)で並ぶ信号であり、これを利用して全期間送信パルスPP7を作ると、お互いが重畳して全期間振動状態の持続する全期間送信信号S7を生成することができる。
【0039】
以上のように、15相クロック発生器607、遅延回路811、排他的論理和回路812及び論理和回路813は、NビットのデジタルデータD0〜D2に対応する2N個のパルス信号PP0,P1〜P6,PP7を生成する。セレクタ608は、ベースバンド信号生成器501により生成されたNビットのデジタルデータD0〜D2に応じて、15相クロック発生器607等により生成された2N個のパルス信号PP0,P1〜P6,PP7のうちの1個のパルス信号を選択する。
【0040】
15相クロック発生器607等により生成される2N個のパルス信号PP0,P1〜P6,PP7は、第1のパルス901a及び第2のパルス902aを含む全期間非送信パルスPP0、第3のパルスP1及び第4のパルスP6を含む全期間送信パルスPP7、並びにパルス幅が同じであって位相が異なる2N−2個の一部期間送信パルスP1〜P6を含む。
【0041】
セレクタ608が一部期間送信パルスP1〜P6を選択した時には、バンドパスフィルタ504は1シンボル長Ts2内の一部の期間の時間幅Twを有する一部期間送信信号S1〜S6を出力する。
【0042】
セレクタ608が2N−2個の一部期間送信パルスP1〜P6のうちの1個である第1の一部期間送信パルスを選択した時のバンドパスフィルタ504の出力信号は、セレクタ608が2N−2個の一部期間送信パルスP1〜P6のうちの第1の一部期間送信パルス以外の一部期間送信パルスを選択した時のバンドパスフィルタ504の出力信号に対して、時間幅Twが同じであって位相が異なる。
【0043】
セレクタ608が全期間非送信パルスPP0を選択した時には、バンドパスフィルタ504は第1のパルス901aに対応する信号901bと第2のパルス902aに対応する信号902bとが打ち消し合って減衰した全期間非送信信号S0を出力する。セレクタ608が全期間送信パルスPP7を選択した時には、バンドパスフィルタ504は1シンボル長Ts2内の全期間の時間幅を有する全期間送信信号S7を出力する。
【0044】
N−2個の一部期間送信パルスP1〜P6に対応するバンドパスフィルタ504の出力信号S1〜S6の相互の位相差はステップ時間Δtの正の整数倍である。2N−2個の一部期間送信パルスP1〜P6に対応するバンドパスフィルタ504の出力信号S1〜S6の時間幅をTwとすると、1シンボル長Ts2は(2N−3)×Δt+Twである。
【0045】
図7及び図8において、全期間送信パルスPP7は、Ts/Δt個の可変遅延回路701〜715のうちの1番目の可変遅延回路701に入力されるパルス信号P1と2N−2番目の可変遅延回路706に入力されるパルス信号P6との論理和の信号である。全期間非送信パルスPP0は、Ts/Δt個の可変遅延回路701〜715のうちのp番目(pは正の整数)の可変遅延回路701に入力されるパルス信号P1を1/(2×fc)の正の整数倍の時間だけ遅延したパルス信号とp+2番目の可変遅延回路703に入力されるパルス信号P3との排他的論理和の信号である。2N−2個の一部期間送信パルスP1〜P6は、それぞれTs/Δt個の可変遅延回路701〜715のうちの1番目から2N−2番目までの可変遅延回路701〜706に入力されるパルス信号である。
【0046】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態によるパルス発生器502、短パルス発生器503及びバンドパスフィルタ504の構成例を示す図である。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。図10のパルス発生器502は、図6のパルス発生器502に対して、15相クロック発生器607及びセレクタ608の代わりに30相クロック発生器1007及びセレクタ1008を設けたものである。バンドパスフィルタ504の通過周波数帯域は47.5〜52.5GHzであり、中心周波数fcが50GHzである。バンドパスフィルタ504が出力するRFパルス522は、時間幅Twが200ps、振動周期Tcが20psである。クロック信号CLKp2は、論理積回路606の出力信号である。クロック信号CLKp2のハイレベル期間は、2.5×Δt=2.5×20ps=50psである。30相クロック発生器1007は、クロック信号CLKp2を入力し、30相パルス信号P1〜P30を出力する。
【0047】
図11(A)は30相クロック発生器1007の構成例を示す図であり、図11(B)は30相クロック発生器1007により生成されるパルス信号P1〜P30を示す図である。30相クロック発生器1007は、30個の可変遅延回路1101〜1130と、位相比較器1141と、ローパスフィルタ1142と、電流制御回路1143とを有する遅延ロックループ(DLL)回路である。
【0048】
クロック信号CLKp2は、パルス信号P1になる。可変遅延回路1101〜1130は、クロック信号CLKp2を入力し、直列にループ接続され、それぞれが遅延を行う。位相比較器1141は、可変遅延回路1101〜1130のうちの初段の可変遅延回路1101に入力されるパルス信号P1と最終段の可変遅延回路1130から出力されるパルス信号P0との位相を比較する。ローパスフィルタ1142は、位相比較器1141の比較結果信号の高周波数成分を除去し、電流制御回路1143に出力する。電流制御回路1143は、位相比較器1141が比較する2個のパルス信号P0及びP1の位相が一致するように、可変遅延回路1101〜1130の電流制御により、可変遅延回路1101〜1130の遅延時間を制御する。可変遅延回路1101〜1130の遅延時間は同じである。このフィードバック制御により、パルス信号P0及びP1の位相は一致する。30個のパルス信号P1〜P30は、それぞれ、可変遅延回路1101〜1130の入力信号であり、10psずつ遅延した信号であり、パルス幅が50psである。
【0049】
図12は図10のセレクタ1008の構成例を示す図であり、図13はセレクタ1008の動作を説明するためのタイムチャートである。図12のセレクタ1008は、図8のセレクタ608に対して、遅延回路811を削除したものである。以下、図12のセレクタ1008が図8のセレクタ608と異なる点を説明する。排他的論理和回路812は、パルス信号P1及びP4の排他的論理和信号を全期間非送信パルスPP0として出力する。論理和回路813は、パルス信号P1及びP11の論理和信号を全期間送信パルスPP7として出力する。
【0050】
セレクタ801は、デジタルデータD0が「1」のときにはパルス信号P1を出力し、デジタルデータD0が「0」のときには全期間非送信パルスPP0を出力する。セレクタ802は、デジタルデータD0が「1」のときにはパルス信号P5を出力し、デジタルデータD0が「0」のときにはパルス信号P3を出力する。セレクタ803は、デジタルデータD0が「1」のときにはパルス信号P9を出力し、デジタルデータD0が「0」のときにはパルス信号P7を出力する。セレクタ804は、デジタルデータD0が「1」のときには全期間送信パルスPP7を出力し、デジタルデータD0が「0」のときにはパルス信号P11を出力する。
【0051】
すなわち、パルス信号Pcは、デジタルデータD0〜D2が「000」のときには全期間非送信パルスPP0となり、デジタルデータD0〜D2が「001」のときにはパルス信号P1となり、デジタルデータD0〜D2が「010」のときにはパルス信号P3となり、デジタルデータD0〜D2が「011」のときにはパルス信号P5となり、デジタルデータD0〜D2が「100」のときにはパルス信号P7となり、デジタルデータD0〜D2が「101」のときにはパルス信号P9となり、デジタルデータD0〜D2が「110」のときにはパルス信号P11となり、デジタルデータD0〜D2が「111」のときには全期間送信パルスPP7となる。
【0052】
クロック信号CLK1は、3.33GHzのクロック信号である。パルス信号P1〜P11は、パルス幅(=50ps)が同じであって位相が10psずつ異なる。パルス信号P1,P3,P5,P7,P9,P11は、パルス幅(=50ps)が同じであって位相が20psずつ異なる一部期間送信パルスである。一部期間送信パルスP1,P3,P5,P7,P9,P11は、図2の一部期間送信信号S1〜S6を生成するためのパルスである。パルス信号PP0は、第1のパルス1301a及び第2のパルス1302aを含む全期間非送信パルスであり、図2の全期間非送信信号S0を生成するためのパルスである。パルス信号PP7は、第3のパルスP1及び第4のパルスP11を含む全期間送信パルスであり、図2の全期間送信信号S7を生成するためのパルスである。
【0053】
セレクタ1008が一部期間送信パルスP1を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S1を出力し、セレクタ1008が一部期間送信パルスP3を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S2を出力し、セレクタ1008が一部期間送信パルスP5を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S3を出力し、セレクタ1008が一部期間送信パルスP7を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S4を出力し、セレクタ1008が一部期間送信パルスP9を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S5を出力し、セレクタ1008が一部期間送信パルスP11を出力するときにはバンドパスフィルタ504は一部期間送信信号S6を出力する。
【0054】
セレクタ1008が全期間非送信パルスPP0を出力するときにはバンドパスフィルタ504は全期間非送信信号S0を出力する。全期間非送信パルスPP0は、第1のパルス1301a及び第2のパルス1302aを含む。第1のパルス1301a及び第2のパルス1302aの間隔は20psである。バンドパスフィルタ504の出力信号1301bは、第1のパルス1301aに対応する信号である。バンドパスフィルタ504の出力信号1302bは、第2のパルス1302aに対応する信号である。セレクタ1008が全期間非送信パルスPP0を選択した時には、バンドパスフィルタ504は信号1301bと信号1302bとが逆相で重畳し、相互に打ち消し合って減衰した全期間非送信信号S0を出力する。
【0055】
セレクタ1008が全期間送信パルスPP7を出力するときにはバンドパスフィルタ504は全期間送信信号S7を出力する。全期間送信パルスPP7は、第3のパルスP1及び第4のパルスP11を含む。バンドパスフィルタ504の出力信号S1は、第3のパルスP1に対応する信号である。バンドパスフィルタ504の出力信号S6は、第4のパルスP11に対応する信号である。セレクタ1008が全期間送信パルスPP7を選択した時には、バンドパスフィルタ504は信号S1と信号S6とが同相で重畳した全期間送信信号S7を出力する。
【0056】
なお、論理和回路813は、上記の場合に限定されず、一の奇数番目のパルス信号と他の奇数番目のパルス信号との論理和の信号、又は一の偶数番目のパルス信号と他の偶数番目のパルス信号との論理和の信号を出力するものであればよい。また、排他的論理和回路812は、上記の場合に限定されず、奇数番目のパルス信号と偶数番目のパルス信号との排他的論理和の信号を出力するものであればよい。
【0057】
以上のように、全期間送信パルスPP7は、複数の可変遅延回路1101〜1130のうちの一の奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号と他の奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との論理和の信号、又は複数の可変遅延回路1101〜1130のうちの一の偶数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号と他の偶数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との論理和の信号である。
【0058】
また、全期間非送信パルスPP0は、複数の可変遅延回路1101〜1130のうちの奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号と偶数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との排他的論理和の信号である。
【0059】
N−2個の一部期間送信パルスP1,P3,P5,P7,P9,P11は、複数の可変遅延回路1101〜1130のうちの2N−2個の異なる奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号である。
【0060】
本実施形態は、第1の実施形態に比べ、第1の実施形態の遅延回路811を削除することができるので、回路規模を小さくすることができる。
【0061】
以上のように、第1及び第2の実施形態のインパルス無線通信装置は、伝送速度が10Gbpsになり、図1の場合に比べ、約13.3%の変調効率向上を実現し、大容量のデータを伝送することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
501 ベースバンド信号生成器
502 パルス発生器
503 短パルス発生器
504 バンドパスフィルタ
505 送信アンプ
506 スイッチ
507 アンテナ
508 受信アンプ
509 バンドパスフィルタ
510 検波器
511 ベースバンド信号再生器
607 15相クロック発生器
608 セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nビット(Nは2以上の整数)のデジタルデータを生成するベースバンド信号生成器と、
前記Nビットのデジタルデータに対応する2N個のパルス信号を生成するクロック発生器と、
前記ベースバンド信号生成器により生成されたNビットのデジタルデータに応じて、前記クロック発生器により生成された2N個のパルス信号のうちの1個のパルス信号を選択するセレクタと、
前記セレクタにより選択されたパルス信号のパルス幅を短くする短パルス発生器と、
前記短パルス発生器によりパルス幅が短くされたパルス信号に含まれる周波数成分の中から通過周波数帯域の周波数成分のみを通過させ、前記通過周波数帯域以外の周波数成分を減衰させるバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタを通過した信号を無線送信するためのアンテナとを有し、
前記クロック発生器により生成される2N個のパルス信号は、第1のパルス及び第2のパルスを含む全期間非送信パルス、第3のパルス及び第4のパルスを含む全期間送信パルス、並びにパルス幅が同じであって位相が異なる2N−2個の一部期間送信パルスを含み、
前記セレクタが前記一部期間送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは1シンボル長内の一部の期間の時間幅を有する信号を出力し、
前記セレクタが前記2N−2個の一部期間送信パルスのうちの1個である第1の一部期間送信パルスを選択した時の前記バンドパスフィルタの出力信号は、前記セレクタが前記2N−2個の一部期間送信パルスのうちの前記第1の一部期間送信パルス以外の一部期間送信パルスを選択した時の前記バンドパスフィルタの出力信号に対して、時間幅が同じであって位相が異なり、
前記セレクタが前記全期間非送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは前記第1のパルスに対応する信号と前記第2のパルスに対応する信号とが打ち消し合って減衰した信号を出力し、
前記セレクタが前記全期間送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは前記1シンボル長内の全期間の時間幅を有する信号を出力することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記2N−2個の一部期間送信パルスに対応する前記バンドパスフィルタの出力信号の相互の位相差はステップ時間Δtの正の整数倍であり、前記2N−2個の一部期間送信パルスに対応する前記バンドパスフィルタの出力信号の時間幅をTwとすると、前記1シンボル長は(2N−3)×Δt+Twであることを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記バンドパスフィルタの通過周波数帯域の中心周波数をfc、kを正の整数とすると、前記短パルス発生器によりパルス幅が短くされた前記第1のパルスの発生後、(2×k−1)/(2×fc)秒後に、前記短パルス発生器によりパルス幅が短くされた前記第2のパルスが発生し、
前記セレクタが前記全期間非送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは前記第1のパルスに対応する信号と前記第2のパルスに対応する信号とが逆相で重畳し、相互に打ち消し合って減衰した信号を出力することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
mを正の整数とすると、前記短パルス発生器によりパルス幅が短くされた前記第3のパルスの発生後、m/fc秒後に、前記短パルス発生器によりパルス幅が短くされた前記第4のパルスが発生し、
前記セレクタが前記全期間送信パルスを選択した時には、前記バンドパスフィルタは前記第3のパルスに対応する信号と前記第4のパルスに対応する信号とが同相で重畳した信号を出力することを特徴とする請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記1シンボル長は前記ステップ時間Δtの正の整数倍であり、前記ステップ時間Δtは1/fcの正の整数倍であることを特徴とする請求項3又は4記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記クロック発生器は、
クロック信号を入力し、それぞれが遅延を行う直列にループ接続される複数の可変遅延回路と、
前記複数の可変遅延回路のうちの初段の可変遅延回路に入力されるパルス信号と最終段の可変遅延回路から出力されるパルス信号との位相を比較する位相比較器と、
前記位相比較器が比較する2個のパルス信号の位相が一致するように前記複数の可変遅延回路の遅延時間を制御する制御回路とを有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記全期間送信パルスは、前記複数の可変遅延回路のうちの1番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号と2N−2番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との論理和の信号であり、
前記全期間非送信パルスは、前記複数の可変遅延回路のうちのp番目(pは正の整数)の可変遅延回路に入力されるパルス信号を1/(2×fc)の正の整数倍の時間だけ遅延したパルス信号とp+2番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との排他的論理和の信号であり、
前記2N−2個の一部期間送信パルスは、それぞれ前記複数の可変遅延回路のうちの1番目から2N−2番目までの可変遅延回路に入力されるパルス信号であることを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記全期間送信パルスは、前記複数の可変遅延回路のうちの一の奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号と他の奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との論理和の信号、又は前記複数の可変遅延回路のうちの一の偶数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号と他の偶数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との論理和の信号であり、
前記全期間非送信パルスは、前記複数の可変遅延回路のうちの奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号と偶数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号との排他的論理和の信号であり、
前記2N−2個の一部期間送信パルスは、前記複数の可変遅延回路のうちの2N−2個の異なる奇数番目の可変遅延回路に入力されるパルス信号であることを特徴とする請求項6記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−205553(P2011−205553A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72856(P2010−72856)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「基幹用ミリ波帯無線伝送システムの実現のための基盤技術の研究開発」のうち、「10Gbps無線伝送システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】