説明

無線通信装置

【課題】データの衝突を回避しつつ、データ送信の機会を増加させる
【解決手段】通信装置2A,2B,2Cは、定期送信期間を示すデータである定期送信期間情報を無線送信するように構成され、通信装置3A,3B,3Cは、定期送信装置2から定期送信期間情報を受信すると、定期送信期間情報により示される定期送信期間外をランダム送信期間として、ランダム送信期間内にデータ送信する。通信装置2は、送信データの送信タイミングが定期送信期間内であり、且つ、当該通信装置2自身の定期送信期間外である場合には、当該通信装置2自身の定期送信期間内である場合よりも、送信電力を小さくしてデータ送信する。通信装置3は、送信データの送信タイミングが定期送信期間内であり、且つ、データを直接受信できない通信装置2の定期送信期間内である場合には、ランダム送信期間である場合よりも、送信電力を小さくしてデータ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定周期毎に繰り返される定期送信期間内にデータを無線送信する無線通信システムで使用される無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信装置が同一の通信チャンネルを利用して相互に無線通信を行う場合には、各通信装置が、送信要求の発生時に、キャリアセンスによって通信チャンネルの空き状態を検出するアクセス制御を行い、このアクセス制御によって通信チャンネルの空き状態を検出するとデータ送信を開始するというCSMA方式の無線通信が知られている。
【0003】
また、こうしたCSMA方式の無線通信では、複数の通信装置がランダムにデータ送信を行う。このため、例えば、自動車の安全運転支援システムでの無線通信に適用すると、重要性の高い情報を路上機から車載機へ送信しようとしても、路上機が通信チャンネルで送信権を取得するのに時間がかかり、重要情報を周囲の車両に送信できないことがある。
【0004】
そこで、路上機が、一定周期毎に繰り返される定期送信期間内に送信データを無線送信する際に、定期送信期間を示す定期送信期間情報を、この送信データに付加して送信し、車載機が、送信データに付加された定期送信期間情報を受信すると、定期送信期間情報により示される定期送信期間に基づいて送信禁止期間を設定し、車載機側で、送信禁止期間内におけるデータ送信を禁止するという方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
これにより、路上機から車載機へデータ送信する機会を定期的に確保することができるとともに、路上機から無線送信されたデータと車載機から無線送信されたデータとの衝突の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−21870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、車載機は、転送等により定期送信期間情報を受信した場合は、当該定期送信期間内でデータ送信を全く行うことができなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、データの衝突を回避しつつ、データ送信の機会を増加させることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の無線通信装置は、一定周期毎に繰り返されて該周期よりも短い定期送信期間内に、所定の通信チャンネルを利用してデータを無線送信する1または複数の第1通信装置と、通信チャンネルを利用してデータを無線受信するとともに、データ送信が必要になったときに通信チャンネルが空いているか否かを判定して、通信チャンネルが空いている場合にデータを無線送信する複数の第2通信装置との2種類の通信装置が混在し、第1通信装置は、定期送信期間を示すデータである定期送信期間情報を無線送信するように構成され、第2通信装置は、第1通信装置から定期送信期間情報を受信すると、定期送信期間情報により示される定期送信期間の期間外にデータ送信するように構成された無線通信システムにおいて、第1通信装置または第2通信装置として使用される無線通信装置である。
【0010】
そして、1または複数の第1通信装置のうち、第1通信装置から無線送信されたデータを当該無線通信装置が直接受信することができない第1通信装置を、直接受信不能第1通信装置とし、直接受信不能第1通信装置の定期送信期間を、直接受信不能定期送信期間とし、当該無線通信装置が第1通信装置である場合には、当該無線通信装置の定期送信期間を通常データ送信許可期間とし、当該無線通信装置が第2通信装置である場合には、当該無線通信装置が受信した定期送信期間情報により示される定期送信期間外の期間を通常データ送信許可期間とし、送信制御手段は、直接受信不能定期送信期間の期間内である場合には、通常データ送信許可期間の期間内である場合よりも、送信電力を小さくしてデータを無線送信させる。
【0011】
なお、上記の「直接受信する」とは、無線通信装置から送信されたデータを、他の無線通信装置を介することなく受信することである。
すなわち本発明の無線通信装置は、当該無線通信装置が直接受信することができない第1通信装置の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)の期間内でも、データ送信を行う。従来、通常データ送信許可期間となっていない期間でもデータ送信することになる。
【0012】
したがって、当該無線通信装置が直接受信することができない第1通信装置の定期送信期間(直接受信可能定期送信期間)の期間内にデータ送信を行わない場合と比較して、データ送信の機会を増加させることができ、上記所定の通信チャンネルの利用効率を向上させることができる。これにより、送信データのデータ到達率を向上させることができる。
【0013】
また、当該無線通信装置が直接受信することができない第1通信装置の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)の期間内にデータ送信を行う場合には、上記通常データ送信許可期間の期間内にデータ送信を行う場合よりも、送信電力を小さくしてデータを送信する。
【0014】
したがって、当該無線通信装置が直接受信することができない第1通信装置(直接受信不能第1通信装置)の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)の期間内に、この直接受信不能第1通信装置がデータ送信を行った場合に、この直接受信不能第1通信装置の送信データと、当該無線通信装置から送信されたデータとが衝突してしまうという状況の発生を抑制することができる。
【0015】
以上より、データの衝突を回避しつつデータ送信の機会を増加させることができる。
ところで、当該無線通信装置が直接受信することができない第1通信装置(直接受信不能第1通信装置)が複数存在している場合には、直接受信不能第1通信装置の位置はそれぞれ異なる。
【0016】
そこで、請求項1に記載の無線通信装置において、請求項2に記載のように、送信制御手段は、直接受信不能定期送信期間の期間内においてデータを無線送信するときの送信電力を、予め設けられた送信電力設定条件に応じて、直接受信不能定期送信期間毎に変化させるようにするとよい。
【0017】
このように構成された無線通信装置によれば、直接受信不能第1通信装置のそれぞれの通信可能領域(すなわち、直接受信不能第1通信装置からの送信データを直接受信可能な領域)においてデータ衝突が発生しないように、直接受信不能定期送信期間毎に適切な送信電力を設定することが可能になる。
【0018】
また、請求項2に記載の無線通信装置において、第1通信装置が、定期送信期間情報を転送した回数である転送回数を示す転送回数情報を、定期送信期間情報に付加して無線送信するように構成され、第2通信装置が、定期送信期間情報を受信すると、受信した定期送信期間情報に付加された転送回数情報が示す転送回数を1加算し、加算後の転送回数を示す転送回数情報が付加された定期送信期間情報を無線送信するように構成されている場合には、請求項3に記載のように、送信電力設定条件は、受信した定期送信期間情報に付加された転送回数情報が示す転送回数が大きいほど、受信した定期送信期間情報が示す定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を大きくすることであるようにするとよい。
【0019】
すなわち、転送回数が大きいほど、この転送回数に対応する直接受信不能第1通信装置までの距離が大きいと判断している。そして、距離が大きいほど送信電力を大きくしても、この転送回数に対応する直接受信不能第1通信装置の通信可能領域に送信データが到達したときに、このデータを受信するときの電力は、データ衝突が発生しない程度に小さくなるという考えに基づいている。
【0020】
このように構成された無線通信装置によれば、直接受信不能第1通信装置との相対距離を示す情報を別途取得する必要がないため、直接受信不能定期送信期間毎の送信電力を簡便に設定することができる。
【0021】
また、請求項2に記載の無線通信装置において、当該無線通信装置と第1通信装置との間の相対距離を示す相対距離情報を取得可能に構成されている場合には、請求項4に記載のように、送信電力設定条件は、相対距離が大きいほど、相対距離に対応した第1通信装置の定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を大きくすることであるようにするとよい。
【0022】
このように構成された無線通信装置によれば、直接受信不能第1通信装置との相対距離を正確に把握することが可能となり、直接受信不能第1通信装置の通信可能領域においてデータ衝突が発生しないようにするための送信電力を正確に算出することができる。電波の電力は距離の二乗に反比例して減衰するという特性を有しているためである。これにより、直接受信不能第1通信装置のそれぞれの通信可能領域においてデータ衝突が発生しないようにするための送信電力を、請求項3に記載の無線通信装置と比較して、より適切に設定することができる。
【0023】
また、請求項2に記載の無線通信装置において、請求項5に記載のように、1または複数の第1通信装置のうち、第1通信装置から無線送信されたデータを当該無線通信装置が直接受信することができる第1通信装置を、直接受信可能第1通信装置とし、直接受信可能第1通信装置の定期送信期間を、直接受信可能定期送信期間とし、送信電力設定条件は、当該無線通信装置と直接受信可能第1通信装置との間の相対距離に応じて、相対距離が大きいほど、直接受信不能第1通信装置の定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を小さくすることであるようにしてもよい。
【0024】
すなわち、当該無線通信装置と直接受信可能第1通信装置との間の相対距離が小さいほど、直接受信不能第1通信装置との間の相対距離が大きくなるという考えに基づいている。
【0025】
このように構成された無線通信装置によれば、請求項3に記載の無線通信装置のように直接受信不能第1通信装置毎に転送回数情報を取得したり、請求項4に記載の無線通信装置のように直接受信不能第1通信装置毎に相対距離情報を取得したりするということがなくなり、直接受信可能第1通信装置との間の相対距離を示す情報を取得すれば送信電力を算出することができるため、請求項3,4に記載の無線通信装置と比較して送信電力を簡便に設定することができる。
【0026】
なお、当該無線通信装置と直接受信可能第1通信装置との間の相対距離は、直接受信可能第1通信装置の設置位置を示す情報を当該無線通信装置の外部から取得することにより算出するようにしてもよいし、直接受信可能第1通信装置から送信されたデータを受信するときの受信電力が大きいほど距離が小さくなるようにして算出するようにしてもよい。
【0027】
また、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の無線通信装置において、請求項6に記載のように、送信制御手段が、第1送信電力設定条件に加えて、第1送信電力設定条件と異なるように予め設けられた第2送信電力設定条件に応じて、送信電力を直接受信不能定期送信期間毎に変化させることが可能に構成されるとともに、第2送信電力設定条件で送信電力を変化させた場合には、第2送信電力設定条件で送信電力を変化させた直接受信不能定期送信期間について、第1送信電力設定条件に基づく送信電力の変化を禁止するように構成され、第2送信電力設定条件は、直接受信不能第1通信装置から送信されたデータを直接受信することができる第2通信装置からデータを受信したときの受信電力の中から電力値が最大となるものを抽出して、この受信電力最大値からノイズフロアを減算した値を、送信電力減衰量とし、通常データ送信許可期間内である場合よりも、送信電力減衰量分、送信電力を小さくすることであるようにしてもよいし、請求項2に記載の無線通信装置において、請求項7に記載のように、送信電力設定条件は、直接受信不能第1通信装置から送信されたデータを直接受信することができる第2通信装置からデータを受信したときの受信電力の中から電力値が最大となるものを抽出して、この受信電力最大値からノイズフロアを減算した値を、送信電力減衰量とし、通常データ送信許可期間内である場合よりも、送信電力減衰量分、送信電力を小さくすることであるようにしてもよい。
【0028】
なお、当該無線通信装置は、直接受信不能第1通信装置から送信されたデータを直接受信することができる上記第2通信装置よりも高い送信電力ではデータを送信しないものとする。
【0029】
すなわち、「上記受信電力最大値からノイズフロアを減算した値(送信電力減衰量)分、送信電力を小さくしてデータを送信した場合に、この送信データが、上記受信電力最大値のデータを送信した第2通信装置に到達したときの受信電力はノイズフロア以下となり、データの衝突が発生しないという考え」と、「上記受信電力最大値のデータを送信した第2通信装置に到達したときの受信電力がノイズフロア以下となるのであれば、上記受信電力最大値より小さい受信電力のデータを送信した第2通信装置に到達したときの受信電力もノイズフロア以下となっているという考え」とに基づいて、送信電力を設定している。
【0030】
このように構成された請求項6または請求項7に記載の無線通信装置によれば、当該無線装置がデータを受信した第2通信装置を、「当該無線通信装置がデータを送信した場合にデータの衝突を発生させる可能性がある第2通信装置」として特定し、特定した第2通信装置においてデータの衝突を発生させないように、上記受信電力を用いて送信電力を適切に設定することができる。
【0031】
すなわち、データの衝突を発生させる可能性がある第2通信装置を特定できない状態で送信電力を設定する場合には、データの衝突を発生させないようにするための余裕を十分に見積もって、送信電力を低めに設定する必要があり、これにより、送信データのデータ到達範囲が狭くなるおそれがある。これに対し、請求項6または請求項7に記載の無線通信装置では、データの衝突を発生させる可能性がある第2通信装置が特定されているため、上記余裕のために送信電力を無駄に低めに設定する必要がなく、これにより、送信データのデータ到達範囲が狭くなるのを抑制することができる。
【0032】
また、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の無線通信装置において、データを送信するときの送信電力の減衰量を示す減衰量情報を第1通信装置毎に取得可能に構成されている場合には、請求項8に記載のように、送信制御手段が、第1送信電力設定条件に加えて、第1送信電力設定条件と異なるように予め設けられた第2送信電力設定条件に応じて、送信電力を直接受信不能定期送信期間毎に変化させることが可能に構成されるとともに、第2送信電力設定条件で送信電力を変化させた場合には、第2送信電力設定条件で送信電力を変化させた直接受信不能定期送信期間について、第1送信電力設定条件に基づく送信電力の変化を禁止するように構成され、第2送信電力設定条件は、直接受信不能第1通信装置の定期送信期間の期間内に送信するときには、通常データ送信許可期間内である場合よりも、直接受信不能第1通信装置の減衰量情報が示す減衰量分、送信電力を小さくすることであるようにするとよいし、請求項2に記載の無線通信装置において、データを送信するときの送信電力の減衰量を示す減衰量情報を第1通信装置毎に取得可能に構成されている場合には、請求項9に記載のように、第1送信電力設定条件は、直接受信不能第1通信装置の定期送信期間の期間内に送信するときには、通常データ送信許可期間内である場合よりも、直接受信不能第1通信装置の減衰量情報が示す減衰量分、送信電力を小さくすることであるようにするとよい。なお、直接受信不能第1通信装置の減衰量情報が示す減衰量は、第1通信装置側で、請求項3〜請求項5に記載の方法により算出すればよい。
【0033】
このように構成された請求項8または請求項9に記載の無線通信装置によれば、当該無線通信装置において減衰量を算出することなく、通常データ送信許可期間の期間内に送信するときの送信電力から、減衰量情報が示す減衰量を減算するという簡便な方法で、送信電力を設定することができる。
【0034】
また、請求項1に記載の無線通信装置において、請求項10に記載のように、送信制御手段は、直接受信不能定期送信期間の期間内においてデータを無線送信するときの送信電力を、直接受信不能定期送信期間の全てで一定とするようにしてもよい。
【0035】
このように構成された無線通信装置によれば、直接受信不能定期送信期間毎に異なる送信電力を算出する必要がなくなるため、当該無線通信装置の処理負荷を低減することができるとともに、当該無線通信装置の構成を簡略化することができる。
【0036】
また、請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の無線通信装置において、請求項11に記載のように、送信制御手段が、第1通信装置から直接受信したデータ、または第2通信装置から受信したデータを、直接受信不能定期送信期間の期間内に送信するようにしてもよい。
【0037】
このように構成された無線通信装置によれば、当該無線通信装置が第1通信装置から直接受信したデータ、または当該無線通信装置が第2通信装置から受信したデータが当該無線通信装置から再度送信されることにより、これらのデータの送信の機会を増加させることができ、当該無線通信装置以外の無線通信装置から送信されたデータのデータ到達率を向上させることができる。
【0038】
また、請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の無線通信装置において、当無線通信装置の送信データに優先度が予め設定されている場合には、請求項12に記載のように、送信制御手段が、無線通信装置の送信データのうち、優先度が低いものであるとして予め設定されたデータを直接受信不能定期送信期間の期間内に送信するとともに、優先度が高いものであるとして予め設定されたデータを直接受信不能定期送信期間の期間外に送信するようにしてもよい。
【0039】
このように構成された無線通信装置によれば、直接受信不能定期送信期間の期間内に優先度が低いものを送信することにより、直接受信不能定期送信期間の期間外に送信するデータの量を削減することが可能となる。
【0040】
なお、直接受信不能定期送信期間の期間内に送信するデータは、送信電力を下げているため到達範囲が通常よりも狭くなる。しかし、優先度の低いデータは遠方まで届かせる必要がないという考えに基づき、優先度が低いデータを直接受信不能定期送信期間の期間内に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】無線通信システムの構成及び動作の概要を示す説明図である。
【図2】通信装置2の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の定期送信期間テーブル30の構成を示す図である。
【図4】通信装置3の構成を示すブロック図である。
【図5】テーブル更新処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の通信装置2のデータ送信処理を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の通信装置3のデータ送信処理を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態における通信方法を説明する図である。
【図9】第2実施形態の通信装置2のデータ送信処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態の通信装置3のデータ送信処理を示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態の定期送信期間テーブル30の構成を示す図である。
【図12】第3実施形態における通信方法を説明する図である。
【図13】第4実施形態における通信方法を説明する図である。
【図14】第5実施形態の通信装置3の構成を示すブロック図である。
【図15】第5実施形態の定期送信期間テーブル30の構成を示す図である。
【図16】第5実施形態の通信装置3のテーブル更新処理を示すフローチャートである。
【図17】第5実施形態における通信方法を説明する図である。
【図18】第6実施形態の通信装置2の構成を示すブロック図である。
【図19】第6実施形態の通信装置3の構成を示すブロック図である。
【図20】第6実施形態の通信装置2のデータ送信処理を示すフローチャートである。
【図21】第6実施形態の通信装置3のデータ送信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1は、無線通信システムの構成および動作の概要を示す説明図である。
【0043】
本実施形態の無線通信システムは、図1(a)に示すように、路上機として自動車の走行路付近に分散して設置される複数の通信装置2A,2B,2C,…と、自動車に搭載され、路上機や他の車両との間で無線通信を行う通信装置3A,3B,3C,…とから構成されている。なお、通信装置2A,2B,2C,…をまとめて通信装置2といい、通信装置3A,3B,3C,…をまとめて通信装置3という。
【0044】
通信装置2A,2B,2C,…は、通信装置2の外部に設置された情報局(不図示)と有線または無線でデータ入力可能に構成されており、この情報局から、交通情報等の各種情報を示すデータを入力し、入力したデータを周囲の自動車に定期的に送信する定期送信機能を有する。
【0045】
また、通信装置3A,3B,3C,…は、自動車に搭載された制御装置からの送信要求を受けて、自車両の状態等を路上機や他の車両に送信するランダム送信機能を有する。
そして、これら各通信装置2A,2B,2C,…,3A,3B,3C,…間の通信には、全て共通の通信チャンネルが使用され、通信装置3A,3B,3C,…がランダム送信する際には、CSMA方式のアクセス制御によって通信チャンネルが空いているか否かを判断し、通信チャンネルが空いているときにデータ送信を開始する。
【0046】
また、通信装置2A,2B,2C,…は、定期送信を行うが、この定期送信の周期は、予め決められており、通信装置2A,2B,2C,…には、定期送信一周期内のどの期間を定期送信に利用するかが割り当てられている。
【0047】
そして、通信装置2A,2B,2C,…は、その割り当てられた定期送信期間を、定期送信によって通信装置3A,3B,3C,…に通知する。
つまり本実施形態では、定期送信機能を有する通信装置2A,2B,2C,…が、図1(b)に示すように、定期送信期間の開始タイミングと定期送信期間の長さ(期間長)を表す定期送信期間情報に、通信装置2A,2B,2C,…の識別情報である装置IDと後述の転送回数と、送信時刻を付加した定期送信情報を、単独あるいは他の送信データに付加して、周囲に定期送信する。
【0048】
そして、ランダム送信機能を有する通信装置3A,3B,3C,…は、通信装置2A,2B,2C,…が送信した定期送信情報を受けると、その定期送信情報に基づき、図1(c)に示すように、通信装置2A,2B,2C,…の定期送信期間以外の期間(ランダム送信期間)を設定し、このランダム送信期間内におけるランダム送信を許可する。
【0049】
また図1(a)に示すように、通信装置3Bが、通信装置2Aからの送信電波が届く通信可能領域AR1内に位置し、通信装置3Cがその通信可能領域AR1外に位置する場合、通信装置3Cには通信装置2Aから送信された定期送信情報が届かず、通信装置3Cが通信装置2Aの定期送信期間内にランダム送信を開始し、通信装置3B側では、通信装置2A,3Cからの送信電波が同時に届き、それぞれの送信データを受信できなくなることが考えられる。
【0050】
そこで本実施形態では、通信装置3A,3B,3C,…が定期送信情報を受信したときには、その定期送信情報を再送信することにより、通信装置2から離れた他の通信装置3に定期送信情報を通知するようにされている。
【0051】
そして、通信装置3A,3B,3C,…が他の通信装置3に定期送信情報を再送信する際には、定期送信情報の中の転送回数を更新(+1)することで、定期送信情報を受信した通信装置側で、その定期送信情報が、通信装置2が最初に送信してから何度目の転送で届いたのかを識別できるようにされている。
【0052】
また通信装置3側で、定期送信情報に基づきランダム送信期間を設定するには、通信装置2側で認識されている定期送信の周期と、通信装置3側で認識されている定期送信の周期とを一致させる必要がある。
【0053】
そこで本実施形態では、通信装置2が定期送信情報を送信するときや、通信装置3が定期送信情報を転送するときには、その送信時刻を自らの時計から読み出して定期送信情報の中の送信時刻を書き換える。そして、定期送信情報を受信した通信装置3側では、定期送信情報の中の送信時刻と、自らの時計から読み出した受信時刻とを比較することで、時計の時刻を、定期送信情報を送信してきた通信装置2,3側の時刻と同期させる。
【0054】
つまり、例えば、図1(a)において、通信装置2Aから送信された定期送信情報は通信装置3Bに届き、通信装置3Bは、その定期送信情報を通信装置3Cに転送することになるが、通信装置3B,3Cが定期送信情報を受信した際に、自らの時計の時刻を、定期送信情報を送信してきた通信装置2A,3Bの時計と同期させることで、定期送信情報を受信した各通信装置3B,3Cの時計が、全て、通信装置2Aの時計と同一時刻となるように時刻同期させるのである。
【0055】
この結果、各通信装置2A,3B,3Cは、自らの時計を用いて、定期送信の一周期を同タイミングで検知できるようになる。
(通信装置2の構成)
図2は、通信装置2の構成を示すブロック図である。
【0056】
通信装置2は、図2に示すように、データ送信部11と変調処理部12とRF部13と復調処理部14とデータ受信部15とを備える。
データ送信部11は、外部から入力される送信データにヘッダ等の付加情報を付加して出力する。なおデータ送信部11は、入力した送信データを格納するデータ格納部と、データ格納部に格納されたデータの送信順を決定する送信順決定部と、データ格納部に格納されたデータを、送信順決定部で決定された送信順で変調処理部12へ送出するデータ送出部とを備えている。
【0057】
変調処理部12は、データ送信部11から出力された送信データを所定の通信チャンネルでの送信信号(高周波信号)に変換して出力する。
RF部13は、変調処理部12から出力された送信信号を所定の電力に増幅して通信アンテナへ出力するとともに、通信アンテナにて受信された受信信号を所定の電力に増幅して出力する。
【0058】
復調処理部14は、RF部13から出力された受信信号を取り込み、他の通信装置からの送信データを復元する。
データ受信部15は、復調処理部14にて復元された受信データからヘッダ等の付加情報を抽出し、受信データが当該通信装置2に向けて送信されたものであれば受信データを外部の制御装置に出力する。
【0059】
また通信装置2は、内部クロックをカウントすることにより時刻を計時する時計21を備える。そしてデータ送信部11は、この時計21による計時時刻に基づき、定期送信の周期、及び、その周期内の定期送信期間を検知し、データ送信を制御する。
【0060】
また時計21にはタイマリセット部22が接続されている。このタイマリセット部22は、時計21による計時時刻(詳しくはカウント値)が、定期送信一周期分のカウント値の所定の整数値倍になった時点で、時計21をリセットして、そのカウント値を初期化する。
【0061】
なお、このタイマリセット部22は、基準となる絶対時刻を表す外部信号を入力できるようにされており、タイマリセット部22は、外部信号が入力されているときには、この外部信号から得られる基準時刻で時計21をリセットすることにより、同じ外部信号が入力される他の通信装置との間で、時計21を時刻同期させる。
【0062】
また通信装置2は、定期送信期間テーブル30を備える。
定期送信期間テーブル30は、通信装置2が定期送信を行う際に設定される定期送信情報(以下、自装置定期送信情報という)、若しくは、他の通信装置から取得した定期送信情報(以下、他装置定期送信情報という)を記憶する。
【0063】
図3(a)は、通信装置2の定期送信期間テーブル30の構成を示す図である。
定期送信期間テーブル30は、図3(a)に示すように、転送回数、装置ID、定期送信期間の開始タイミング、定期送信期間の期間長、直接受信可否、および送信電力減衰量を示す情報を、装置ID毎に記憶するように構成されている。なお図3(a)では、定期送信期間テーブル30の行CL1に、当該通信装置2に関する情報が記憶される。このため、行CL1には、直接受信可否、および送信電力減衰量を示す情報は含まれない。そして行CL2,3,4に、その他の通信装置2に関する情報が記憶されている。
【0064】
さらに通信装置2は、図2に示すように、テーブル更新部31と減衰量算出部32と送信制御部33とを備える。
テーブル更新部31は、入力した自装置定期送信情報と他装置定期送信情報に基づいて、定期送信期間テーブル30を更新する。
【0065】
減衰量算出部32は、定期送信期間テーブル30内の定期送信情報に基づいて、データ送信時の送信電力の減衰量を算出し、算出した送信電力減衰量を定期送信期間テーブル30に記憶する。
【0066】
本実施形態では、転送回数をC1として、送信電力減衰量Aが下式(1)により決定される。
【0067】
【数1】

【0068】
なお、式(1)のX,Yは予め設定された固定値であり、本実施形態では、X=20dB,Y=5dBである。
但し、減衰量算出部32は、転送回数が1である場合には、送信電力減衰量の算出を行わない。
【0069】
送信制御部33は、定期送信期間テーブル30内の定期送信情報と送信電力減衰量に基づいて、データ送信部11におけるデータ送信の可否と、RF部13における送信電力減衰量を決定する。
【0070】
このテーブル更新部31と減衰量算出部32と送信制御部33は、マイクロコンピュータによるソフトウェア処理により実現される機能ブロックである。
なお、テーブル更新部31、減衰量算出部32、および送信制御部33以外の機能ブロック、つまり、データ送信部11、変調処理部12、RF部13、復調処理部14、データ受信部15、時計21、タイマリセット部22、および定期送信期間テーブル30は、全てデジタル回路からなるハードウェア構成にて実現される。
(通信装置3の構成)
図4は、通信装置3の構成を示すブロック図である。
【0071】
通信装置3は、図4に示すように、通信装置2と同様に、データ送信部11と変調処理部12とRF部13と復調処理部14とデータ受信部15とを備える。
また通信装置3は、通信装置2と同様に時計21とタイマリセット部22とを備える。
【0072】
さらに通信装置3には、データ受信部15が受信した定期送信情報の送信時刻やその受信データの受信時刻を取り込み、時刻差(受信時刻−送信時刻)を算出する時刻差分計算部23と、時刻差分計算部23で算出された時刻差と、時計21の他の通信装置との同期精度を表す同期精度情報とに基づき、時刻差が同期精度に対応した許容範囲内にあるか否かを判定して、許容範囲内になければ、時計21に時刻補正情報を出力することで、時刻を補正させる時刻補正判断部24が設けられている。
【0073】
また通信装置3は、通信装置2と同様に、定期送信期間テーブル30とテーブル更新部31と減衰量算出部32と送信制御部33とを備える。
図3(b)は、通信装置3の定期送信期間テーブル30の構成を示す図である。
【0074】
定期送信期間テーブル30は、図3(b)に示すように、転送回数、装置ID、定期送信期間の開始タイミング、定期送信期間の期間長、直接受信可否、および送信電力減衰量を示す情報を、通信装置2の装置ID毎に記憶するように構成されている。以下、装置ID毎に記憶されている転送回数、装置ID、定期送信期間の開始タイミング、定期送信期間の期間長、直接受信可否、および送信電力減衰量を示す情報をまとめて定期送信期間登録情報という。
【0075】
なお上述のように、転送回数が1の場合には、減衰量算出部32による送信電力減衰量の算出が行われない。このため、転送回数が1である定期送信期間登録情報には、送信電力減衰量を示す情報が含まれない(図3(b)を参照)。後述のように、転送回数が1である定期送信期間登録情報で示される定期送信期間は、「データを直接受信できる通信装置2」の定期送信期間であるため、この定期送信期間内に通信装置3はデータ送信を実行せず、送信電力減衰量を設定する必要がないからである。
【0076】
なお、時刻差分計算部23、時刻補正判断部24、テーブル更新部31、減衰量算出部32、および送信制御部33以外の機能ブロック、つまり、データ送信部11、変調処理部12、RF部13、復調処理部14、データ受信部15、時計21、タイマリセット部22、および定期送信期間テーブル30は、全てデジタル回路からなるハードウェア構成にて実現される。
(通信装置2のソフトウェア処理)
次に、通信装置2におけるテーブル更新部31と送信制御部33の機能を実現するためにマイクロコンピュータにて実行されるソフトウェア処理について説明する。
【0077】
図5は、通信装置2のテーブル更新部31に相当するテーブル更新処理を示すフローチャートである。このテーブル更新処理は、通信装置2が起動しているときに繰り返し実行される処理である。
【0078】
テーブル更新処理が実行されると、通信装置2のマイクロコンピュータは、まずS10にて、データ受信部15が定期送信情報を含むデータを受信したか否かを判断する。ここで、定期送信情報を含むデータを受信していない場合には(S10:NO)、S10の処理を繰り返すことにより、他の通信装置から定期送信情報を含むデータを受信するまで待機する。一方、定期送信情報を含むデータを受信した場合には(S10:YES)、S20にて、定期送信情報の転送回数C1と装置IDを読み込む。
【0079】
その後S30にて、S20で読み込んだ装置IDに対応した定期送信期間登録情報が定期送信期間テーブル30に記憶されているか否かを判断する。ここで、装置IDに対応した定期送信期間登録情報が記憶されていない場合には(S30:NO)、S40にて、受信した定期送信情報を定期送信期間登録情報として定期送信期間テーブル30に新たに登録する。なお、この登録時に、転送回数C1が1である場合には直接受信可否を「YES」とし、転送回数C1が2以上である場合には直接受信可否を「NO」とする。
【0080】
そしてS40の処理が終了すると、テーブル更新処理を一旦終了する。
一方、装置IDに対応した定期送信期間登録情報が記憶されている場合には(S30:YES)、S50にて、S20で読み込んだ転送回数C1が、S20で読み込んだ装置IDに対応した定期送信期間登録情報の転送回数C1(以下、登録転送回数CRという)より小さいか否かを判断する。
【0081】
ここで、転送回数C1が登録転送回数CR以上である場合には(S50:NO)、テーブル更新処理を一旦終了する。一方、転送回数C1が登録転送回数CRより小さい場合には(S50:YES)、S60にて、S20で読み込んだ装置IDに対応した定期送信期間登録情報の内容を、受信した定期送信情報の内容に書き換えることで定期送信期間テーブル30の定期送信期間登録情報を更新する。なお、この更新時に、転送回数C1が1である場合には直接受信可否を「YES」とし、転送回数C1が2以上である場合には直接受信可否を「NO」とする。
【0082】
そしてS60の処理が終了すると、テーブル更新処理を一旦終了する。
図6は、通信装置2の送信制御部33に相当するデータ送信処理を示すフローチャートである。このデータ送信処理は、通信装置2が起動しているときに繰り返し実行される処理である。
【0083】
データ送信処理が実行されると、通信装置2のマイクロコンピュータは、まずS110にて、データの送信要求があるか否かを判断する。すなわち、データ送信部11のデータ格納部に送信データが格納されているか否かを判断する。
【0084】
ここで、データの送信要求がない場合には(S110:NO)、S110の処理を繰り返すことにより、送信要求があるまで待機する。一方、送信要求がある場合には(S110:YES)、S120にて、定期送信期間テーブル30に記憶された定期送信期間登録情報を読み込む。
【0085】
そしてS130にて、データ送信部11の送信順決定部で「今回送信する」と決定された送信データの送信タイミングが、定期送信期間テーブル30に登録されている定期送信期間登録情報の定期送信期間内の何れかに含まれているか否かを、S120で読み込んだ定期送信情報に基づいて判断する。ここで、定期送信期間登録情報の定期送信期間内の何れにも送信タイミングが含まれていない場合には(S130:NO)、定期送信期間になるまで待機する。
【0086】
一方、定期送信期間登録情報の定期送信期間内の何れかに送信タイミングが含まれている場合には(S130:YES)、S140にて、当該通信装置2自身の定期送信期間内に送信タイミングが含まれているか否かを判断する。ここで、当該通信装置2自身の定期送信期間内である場合には(S140:YES)、S160にて、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させ、データ送信処理を一旦終了する。
【0087】
一方、当該通信装置2自身の定期送信期間外である場合には(S140:NO)、S150にて、S120で読み込んだ定期送信情報に基づいて送信電力減衰量を決定して、当該通信装置2自身の定期送信期間内にデータ送信する場合よりも、決定した送信電力減衰量分小さい送信電力で送信信号を増幅させるようにRF部13を設定する。具体的には、この定期送信期間に該当する通信装置2に対応する送信電力減衰量を定期送信期間テーブル30から抽出し、この送信電力減衰量分、送信電力を小さくする。
【0088】
そしてS160にて、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させ、データ送信処理を一旦終了する。
(通信装置3のソフトウェア処理)
次に、通信装置3におけるテーブル更新部31と送信制御部33の機能を実現するためにマイクロコンピュータにて実行されるソフトウェア処理について説明する。
【0089】
まず、通信装置3のテーブル更新部31に相当するテーブル更新処理は、通信装置2のテーブル更新処理と同一である。このため、通信装置3のテーブル更新処理についての説明を省略する。
【0090】
図7は、通信装置3の送信制御部33に相当するデータ送信処理を示すフローチャートである。このデータ送信処理は、通信装置3が起動しているときに繰り返し実行される処理である。
【0091】
データ送信処理が実行されると、通信装置3のマイクロコンピュータは、まずS210にて、データの送信要求があるか否かを判断する。すなわち、データ送信部11のデータ格納部に送信データが格納されているか否かを判断する。
【0092】
ここで、データの送信要求がない場合には(S210:NO)、S210の処理を繰り返すことにより、送信要求があるまで待機する。一方、送信要求がある場合には(S210:YES)、S220にて、定期送信期間テーブル30に記憶された定期送信期間登録情報を読み込む。
【0093】
そしてS230にて、データ送信部11の送信順決定部で「今回送信する」と決定された送信データの送信タイミングが、定期送信期間テーブル30に登録されている定期送信期間登録情報の定期送信期間内の何れかに含まれているか否かを判断する。ここで、定期送信期間登録情報の定期送信期間内の何れにも送信タイミングが含まれていない場合には(S230:NO)、S260にて、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させ、データ送信処理を一旦終了する。
【0094】
一方、定期送信期間登録情報の定期送信期間内の何れかに送信タイミングが含まれている場合には(S230:YES)、S240にて、データを直接受信できない通信装置2の定期送信期間内であるか否かを、S220で読み込んだ定期送信期間登録情報の直接受信可否情報に基づいて判断する。ここで、「データを直接受信できる通信装置」の定期送信期間内である場合には(S240:NO)、S230に移行して上述の処理を繰り返す。
【0095】
一方、「データを直接受信できない通信装置」の定期送信期間内である場合には(S240:YES)、S250にて、S220で読み込んだ情報に基づいて送信電力減衰量を決定して、定期送信期間外にデータ送信する場合よりも、決定した送信電力減衰量分小さい送信電力で送信信号を増幅させるようにRF部13を設定する。具体的には、この定期送信期間に該当する通信装置2に対応する送信電力減衰量を定期送信期間テーブル30から抽出し、この送信電力減衰量分、送信電力を小さくする。
【0096】
そしてS260にて、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させ、データ送信処理を一旦終了する。
このように構成された無線通信システムは、一定周期毎に繰り返される予め設定された定期送信期間内に、所定の通信チャンネルを利用してデータを無線送信する通信装置2A,2B,2C,…と、通信チャンネルを利用してデータを無線受信するとともに、データ送信が必要になったときに通信チャンネルが空いているか否かを判定して、通信チャンネルが空いている場合にデータを無線送信する通信装置3A,3B,3C,…との2種類の通信装置が混在したものである。
【0097】
また、通信装置2A,2B,2C,…は、定期送信期間を示すデータである定期送信期間情報を無線送信するように構成され、通信装置3A,3B,3C,…は、定期送信装置2から定期送信期間情報を受信すると、定期送信期間情報により示される定期送信期間の期間外をランダム送信期間として設定し、このランダム送信期間内にデータ送信するように構成される。
【0098】
そして通信装置2は、送信データの送信タイミングが定期送信期間内であり(S130:YES)、且つ、当該通信装置2自身の定期送信期間外である場合には(S140:NO)、当該通信装置2自身の定期送信期間内である場合よりも(S140:YES)、送信電力を小さくしてデータを無線送信させる(S150,S160)。
【0099】
また通信装置3は、送信データの送信タイミングが定期送信期間内であり(S230:YES)、且つ、データを直接受信できない通信装置2の定期送信期間内である場合には(S240:YES)、ランダム送信期間である場合よりも(S230:NO)、送信電力を小さくしてデータを無線送信させる(S250,S260)。
【0100】
すなわち通信装置2,3は、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2(以下、直接受信不能通信装置2という)の定期送信期間(以下、直接受信不能定期送信期間という)の期間内でも、データ送信を行う。
【0101】
例えば図8(a)に示すように、通信装置2A,2B,2Cの通信可能領域AR1,AR2,AR3内にそれぞれ通信装置3A,3B,3Cが存在している場合に、通信装置3Aは、図8(b)に示すように、通信装置2Aの定期送信期間内にはデータ送信を行わない一方、通信装置2B,2Cの定期送信期間内にはデータ送信を行う。そして、通信装置2B,2Cの定期送信期間内である場合には、ランダム送信期間である場合よりも、送信電力を小さくしてデータを無線送信する。
【0102】
したがって、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2の定期送信期間(直接受信可能定期送信期間)の期間内にデータ送信を行わない場合と比較して、データ送信の機会を増加させることができ、上記所定の通信チャンネルの利用効率を向上させることができる。これにより、送信データのデータ到達率を向上させることができる。
【0103】
また、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)の期間内にデータ送信を行う場合には、上述のように送信電力を小さくしてデータを送信する。
【0104】
したがって、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2(直接受信不能通信装置2)の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)の期間内に、この直接受信不能通信装置2がデータ送信を行った場合に、この直接受信不能通信装置2の送信データと、当該通信装置2,3から送信されたデータとが衝突してしまうという状況の発生を抑制することができる。
【0105】
以上より、データの衝突を回避しつつデータ送信の機会を増加させることができる。
また、直接受信不能定期送信期間の期間内においてデータを無線送信するときの送信電力を、直接受信不能定期送信期間毎に変化させる。これにより、直接受信不能通信装置2のそれぞれの通信可能領域(すなわち、直接受信不能通信装置2からの送信データを直接受信可能な領域)においてデータ衝突が発生しないように、且つ、定期送信期間内ではない通信装置2の通信可能領域内に存在する通信装置3に対して送信データが到達するように、直接受信不能定期送信期間毎に適切な送信電力を設定することが可能になる。
【0106】
また、式(1)に示すように、受信した定期送信期間情報に付加された転送回数C1が大きいほど、受信した定期送信期間情報が示す定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を大きくする(S150)。すなわち、転送回数C1が大きいほど、この転送回数C1に対応する直接受信不能通信装置2までの距離が大きいと判断している。
【0107】
これにより、直接受信不能通信装置2との相対距離を示す情報を別途取得する必要がないため、直接受信不能定期送信期間毎の送信電力を簡便に設定することができる。
以上説明した実施形態において、通信装置2は本発明における第1通信装置、通信装置3は本発明における第2通信装置、送信制御部33は本発明における送信制御手段である。
【0108】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を図面とともに説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0109】
まず、第2実施形態における通信装置2と通信装置3のデータ送信部11は、データ格納部の構成が第1実施形態と異なる。すなわち、データ送信部11のデータ格納部は、入力した送信データのうち、予め設定された優先度が高い送信データを格納する高優先度データ格納部と、予め設定された優先度が低い送信データを格納する低優先度データ格納部とから構成されている。
【0110】
そして、データ送信部11の送信順決定部は、高優先度データ格納部と低優先度データ格納部のそれぞれについて、格納されたデータの送信順を決定する。
また、第2実施形態における通信装置2と通信装置3のデータ送信処理が第1実施形態と異なる。
【0111】
図9は、第2実施形態における通信装置2のデータ送信処理を示すフローチャートである。
第2実施形態における通信装置2のデータ送信処理は、S160の処理が省略された点と、S170,S180の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。
【0112】
すなわち、S150の処理が終了すると、S170にて、低優先度データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、優先度の低いデータを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0113】
また、S140にて、当該通信装置2自身の定期送信期間内である場合には(S140:YES)、S180にて、高優先度データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、優先度の高いデータを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0114】
図10は、第2実施形態における通信装置3のデータ送信処理を示すフローチャートである。
第2実施形態における通信装置3のデータ送信処理は、S260の処理が省略された点と、S270,S280の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。
【0115】
すなわち、S250の処理が終了すると、S270にて、低優先度データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、優先度の低いデータを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0116】
また、S230にて、登録されている通信装置2の定期送信期間内の何れにも送信タイミングが含まれていない場合には(S230:NO)、S280にて、高優先度データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、優先度の高いデータを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0117】
このように構成された無線通信システムでは、通信装置2,3の送信データのうち、優先度が低いものであるとして予め設定されたデータを、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2(直接受信不能通信装置2)の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)の期間内に送信するとともに、優先度が高いものであるとして予め設定されたデータを直接受信不能定期送信期間の期間外に送信する。
【0118】
これにより、直接受信不能定期送信期間の期間内に優先度が低いものを送信することにより、直接受信不能定期送信期間の期間外に送信するデータの量を削減することが可能となる。なお、直接受信不能定期送信期間の期間内に送信するデータは、送信電力を下げているため到達範囲が通常よりも狭くなる。しかし、優先度の低いデータは遠方まで届かせる必要がないという考えに基づき、優先度が低いデータを直接受信不能定期送信期間の期間内に送信する。
【0119】
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を図面とともに説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0120】
まず、情報局は、通信装置2に対して、各通信装置2の設置位置を示す設置位置情報を有線または無線で送信するとともに、通信装置3に対して、この設置位置情報を無線で送信する。
【0121】
そして、通信装置2,3では、情報局から受信した設置位置情報がテーブル更新部31に記憶される。
また通信装置3は、自動車に搭載された制御装置から、自車両の位置を示す自車位置情報を入力するように構成されており、この自車位置情報は、テーブル更新部31に記憶される。
【0122】
また、定期送信期間テーブル30の構成が第1実施形態と異なる。
図11(a),(b)はそれぞれ、通信装置2,3の定期送信期間テーブル30の構成を示す図である。
【0123】
図11(a),(b)に示すように、通信装置2,3の定期送信期間テーブル30はそれぞれ、当該通信装置2,3自身と、各装置IDに対応する通信装置2との間の相対距離を示す相対距離情報を記憶する項目が追加された点以外は、第1実施形態と同じである。
【0124】
そして、通信装置2のテーブル更新部31は、当該通信装置2自身の設置位置情報と、情報局から受信した設置位置情報とに基づいて、他の通信装置2との相対距離を算出し、この算出値を相対距離情報として定期送信期間テーブル30に記憶するように構成されている。
【0125】
また、通信装置3のテーブル更新部31は、当該通信装置3自身の自車位置情報と、情報局から受信した設置位置情報とに基づいて、他の通信装置2との相対距離を算出し、この算出値を相対距離情報として定期送信期間テーブル30に記憶するように構成されている。
【0126】
また減衰量算出部32は、定期送信期間テーブル30内の相対距離情報に基づいて、データ送信時の送信電力の減衰量を算出し、算出した送信電力減衰量を定期送信期間テーブル30に記憶する。
【0127】
本実施形態では、相対距離をR[km]として、送信電力減衰量Aが下式(2)により決定される。
【0128】
【数2】

【0129】
なお、式(2)のX,Yは予め設定された固定値であり、本実施形態では、X=20dB,Y=20dBである。
このように構成された無線通信システムでは、当該通信装置2,3と通信装置2との間の相対距離を示す相対距離情報を取得し、相対距離が大きいほど、相対距離に対応した通信装置2の定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を大きくする。例えば図12に示すように、通信装置2Cの通信可能領域AR3外に通信装置3Aが位置している場合に、通信装置3Aは、通信装置2Cの定期送信期間内でのデータ送信において、通信装置2Cとの相対距離が小さくなるほど、送信電力を小さくする。そして、通信装置2Cの通信可能領域AR3内に通信装置3Aが位置すると、通信装置2Cは、通信装置3Aが直接受信することができる通信装置2となるため、通信装置3Aは、通信装置2Cの定期送信期間内でのデータ送信を行わない。
【0130】
このように構成された無線通信システムによれば、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2(直接受信不能通信装置2)との相対距離を正確に把握することが可能となり、直接受信不能通信装置2の通信可能領域においてデータ衝突が発生しないようにするための送信電力を正確に算出することができる。電波の電力は距離の二乗に反比例して減衰するという特性を有しているためである。これにより、直接受信不能通信装置2のそれぞれの通信可能領域においてデータ衝突が発生しないようにするための送信電力を、第2実施形態と比較して、より適切に設定することができる。
【0131】
(第4実施形態)
以下に本発明の第4実施形態を図面とともに説明する。なお、第4実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0132】
まず、情報局は、通信装置2に対して、各通信装置2の設置位置を示す設置位置情報を有線または無線で送信するとともに、通信装置3に対して、この設置位置情報を無線で送信する。
【0133】
そして、通信装置2,3では、情報局から受信した設置位置情報がテーブル更新部31に記憶される。
また通信装置3は、自動車に搭載された制御装置から、自車両の位置を示す自車位置情報を入力するように構成されており、この自車位置情報は、テーブル更新部31に記憶される。
【0134】
また、第4実施形態における通信装置3のデータ送信処理が第1実施形態と異なる。そして、第4実施形態における通信装置3のテーブル更新処理は、S250の処理が変更された点以外は第1実施形態と同じである。
【0135】
すなわち、S250では、まず、S220で読み込んだ定期送信期間登録情報の直接受信可否情報に基づいて、「データを直接受信できる通信装置2」を特定する。そして、当該通信装置3自身の自車位置情報と、情報局から受信した設置位置情報とに基づいて、当該通信装置3と「データを直接受信できる通信装置2」との相対距離を算出する。さらに、相対距離をR[km]として、送信電力減衰量Aを下式(2)により決定する。
【0136】
【数2】

【0137】
なお、式(2)のX,Yは予め設定された固定値であり、本実施形態では、X=20dB,Y=20dBである。
その後、定期送信期間外にデータ送信する場合よりも、決定した送信電力減衰量分小さい送信電力で送信信号を増幅させるようにRF部13を設定し、S260に移行する。
【0138】
このように構成された無線通信システムでは、当該通信装置3が直接受信することができる通信装置2(以下、直接受信可能通信装置2という)との間の相対距離に応じて、相対距離が大きいほど、直接受信可能通信装置2の定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を小さくする。すなわち、当該通信装置3と直接受信可能通信装置2との間の相対距離が小さいほど、直接受信不能通信装置2との間の相対距離が大きくなるという考えに基づいている。
【0139】
例えば図13に示すように、通信装置2Aの通信可能領域AR1内に通信装置3Aが位置している場合に、通信装置2Aは、通信装置3Aが直接受信することができる通信装置2となるため、通信装置3Aは、通信装置2Aの定期送信期間内でのデータ送信を行わない。一方、通信装置2B,2Cの通信可能領域AR2,AR3内に通信装置3Aが位置している場合に、通信装置3Aは、通信装置2Aの定期送信期間内でのデータ送信において、通信装置2B,2Cとの相対距離が小さくなるほど、送信電力を大きくする。
【0140】
このように構成された無線通信システムによれば、第1実施形態のように直接受信不能通信装置2毎に転送回数C1を取得したり、第3実施形態のように直接受信不能通信装置2毎に相対距離情報を取得したりするということがなくなり、直接受信可能通信装置2との間の相対距離を示す情報を取得すれば送信電力を算出することができるため、第1,3実施形態と比較して送信電力を簡便に設定することができる。
【0141】
(第5実施形態)
以下に本発明の第5実施形態を図面とともに説明する。なお、第5実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0142】
まず、通信装置3の構成が第1実施形態と異なる。
図14は、第5実施形態の通信装置3の構成を示すブロック図である。
図14に示すように、第5実施形態の通信装置3は、RF部13が、通信アンテナで信号を受信したときの電力(以下、受信電力という)を示す情報をテーブル更新部31へ出力するように構成される。
【0143】
また、通信装置3の定期送信期間テーブル30の構成が第1実施形態と異なる。
図15は、通信装置3の定期送信期間テーブル30の構成を示す図である。
図15に示すように、通信装置3の定期送信期間テーブル30は、受信電力を示す受信電力情報を記憶する項目が追加された点以外は、第1実施形態と同じである。
【0144】
また、第5実施形態における通信装置3のテーブル更新処理が第1実施形態と異なる。
図16は、第5実施形態における通信装置3のテーブル更新処理を示すフローチャートである。
【0145】
図16に示すように、第5実施形態における通信装置3のテーブル更新処理は、S70,S80,S90の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。
すなわち、S60の処理が終了すると、S20で読み込んだ転送回数C1が、S20で読み込んだ装置IDに対応した定期送信期間登録情報の転送回数C1(登録転送回数CR)に等しいか否かを判断する。
【0146】
ここで、転送回数C1が登録転送回数CRに等しくない場合には(S70:NO)、テーブル更新処理を一旦終了する。一方、転送回数C1が登録転送回数CRに等しい場合には(S70:YES)、S80にて、S10において「受信した」と判断したデータを受信した時の受信電力P1が、S20で読み込んだ装置IDに対応した定期送信期間登録情報の受信電力情報が示す受信電力(以下、登録受信電力PRという)より大きいか否かを判断する。
【0147】
ここで、受信電力P1が登録受信電力PR以下である場合には(S80:NO)、テーブル更新処理を一旦終了する。一方、受信電力P1が登録受信電力PRより大きい場合には(S80:YES)、S90にて、S20で読み込んだ装置IDに対応した定期送信期間登録情報の受信電力情報を、S10において「受信した」と判断したデータを受信した時の受信電力P1の値に書き換えることで定期送信期間テーブル30の定期送信期間登録情報を更新し、テーブル更新処理を一旦終了する。
【0148】
また減衰量算出部32は、定期送信期間テーブル30内の受信電力情報に基づいて、データ送信時の送信電力の減衰量を算出し、算出した送信電力減衰量を定期送信期間テーブル30に記憶する。
【0149】
本実施形態では、受信電力をP[dBm]として、送信電力減衰量Aが下式(3)により決定される。
【0150】
【数3】

【0151】
なお、式(3)のNはノイズフロアの電力値を示す予め設定された固定値であり、本実施形態では、N=−120dBmである。
このように構成された無線通信システムでは、当該通信装置3が直接受信することができない通信装置2(直接受信不能通信装置2)から送信されたデータを直接受信することができる通信装置3からデータを受信したときの受信電力の中から電力値が最大となるものを抽出して、この受信電力最大値からノイズフロアを減算した値を、送信電力減衰量とし、ランダム送信期間内である場合よりも、送信電力減衰量分、送信電力を小さくする。ただし、転送回数C1が3以上である場合はA=0dBとし、送信電力を減衰させない。
【0152】
なお、当該無線通信装置3は、直接受信不能通信装置2から送信されたデータを直接受信することができる上記通信装置3よりも高い送信電力ではデータを送信しないものとする。
【0153】
すなわち、「上記受信電力最大値からノイズフロアを減算した値(送信電力減衰量)分、送信電力を小さくしてデータを送信した場合に、この送信データが、上記受信電力最大値のデータを送信した通信装置3に到達したときの受信電力はノイズフロア以下となり、データの衝突が発生しないという考え」と、「上記受信電力最大値のデータを送信した通信装置3に到達したときの受信電力がノイズフロア以下となるのであれば、上記受信電力最大値より小さい受信電力のデータを送信した通信装置3に到達したときの受信電力もノイズフロア以下となっているという考え」とに基づいて、送信電力を設定している。
【0154】
例えば図17に示すように、通信装置2Aの通信可能領域AR1外に通信装置3Aが位置し、通信可能領域AR1内に通信装置3B,3C,3Dが位置している場合に、通信装置3Aが、通信装置3B,3C,3Dからデータを受信すると、通信装置3B,3C,3Dの中で受信電力が最も大きいのは、通信装置3Aとの相対距離が最も小さい通信装置3Bであるため、通信装置3Bの受信電力を用いて送信電力減衰量し、送信電力を設定する。例えば、通信装置3Bの受信電力がー60dBmである場合には、送信電力減衰量を60dBとして送信電力を設定する。
【0155】
このように構成された無線通信システムによれば、当該通信装置3がデータを受信した通信装置3を、「当該通信装置3がデータを送信した場合にデータの衝突を発生させる可能性がある通信装置3」として特定し、特定した通信装置3においてデータの衝突を発生させないように、上記受信電力を用いて送信電力を適切に設定することができる。
【0156】
すなわち、データの衝突を発生させる可能性がある通信装置3を特定できない状態で送信電力を設定する場合には、データの衝突を発生させないようにするための余裕を十分に見積もって、送信電力を低めに設定する必要があり、これにより、送信データの到達範囲が狭くなるおそれがある。これに対し、第5実施形態では、データの衝突を発生させる可能性がある通信装置3が特定されているため、上記余裕のために送信電力を無駄に低めに設定する必要がなく、これにより、送信データの到達範囲の減少を抑制することができる。
【0157】
(第6実施形態)
以下に本発明の第6実施形態を図面とともに説明する。なお、第6実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0158】
図18は、第6実施形態の通信装置2の構成を示すブロック図である。図19は、第6実施形態の通信装置3の構成を示すブロック図である。
図18と図19に示すように、第6実施形態における通信装置2と通信装置3は、データ受信部15から出力された受信データを格納するとともに、格納した受信データをデータ送信部11へ出力する受信データ格納部17が追加された点が第1実施形態と異なる。
【0159】
また、第6実施形態における通信装置2,3のデータ送信部11は、データ格納部の構成が第1実施形態と異なる。すなわち、データ送信部11のデータ格納部は、受信データ格納部17から出力された受信データを送信データとして格納する第1送信データ格納部と、受信データ格納部17から出力されたデータ以外の外部から入力される送信データを格納する第2送信データ格納部とから構成されている。
【0160】
そして、データ送信部11の送信順決定部は、第1送信データ格納部と第2送信データ格納部のそれぞれについて、格納されたデータの送信順を決定する。
また、第6実施形態における通信装置2と通信装置3のデータ送信処理が第1実施形態と異なる。
【0161】
図20は、第6実施形態における通信装置2のデータ送信処理を示すフローチャートである。
第6実施形態における通信装置2のデータ送信処理は、S160の処理が省略された点と、S175,S185の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。
【0162】
すなわち、S150の処理が終了すると、S175にて、第1送信データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、受信データ格納部17から出力された受信データを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0163】
また、S140にて、当該通信装置2自身の定期送信期間内である場合には(S140:YES)、S185にて、第1送信データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、受信データ格納部17から出力されたデータ以外で外部から入力された送信データを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0164】
図21は、第6実施形態における通信装置3のデータ送信処理を示すフローチャートである。
第6実施形態における通信装置3のデータ送信処理は、S260の処理が省略された点と、S275,S285の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。
【0165】
すなわち、S250の処理が終了すると、S275にて、第1送信データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、受信データ格納部17から出力された受信データを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0166】
また、S230にて、登録されている通信装置2の定期送信期間内の何れにも送信タイミングが含まれていない場合には(S230:NO)、S285にて、第2送信データ格納部に格納されたデータの中から、「今回送信する」と送信順決定部で決定された送信データを送信部11に送信させることにより、受信データ格納部17から出力されたデータ以外で外部から入力された送信データを送信し、データ送信処理を一旦終了する。
【0167】
このように構成された無線通信システムでは、通信装置2,3は、通信装置2から直接受信したデータ、または通信装置3から受信したデータを、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)の期間内に送信する。
【0168】
このため、当該通信装置2,3が通信装置2から直接受信したデータ、または当該通信装置2,3が通信装置3から受信したデータが、当該当該通信装置2,3から再度送信されることにより、これらのデータの送信の機会を増加させることができ、当該通信装置2,3以外の通信装置2,3から送信されたデータのデータ到達率を向上させることができる。
【0169】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記第3実施形態では、通信装置3側で、各通信装置2の設置位置を用いて相対距離を算出し、この相対距離に基づいて、各通信装置2の定期送信期間内でのデータ送信時の送信電力減衰量を算出するものを示した。しかし、通信装置2側で、各通信装置2の設置位置を用いて相対距離を算出し、この相対距離に基づいて、各通信装置2の定期送信期間内でのデータ送信時の送信電力減衰量を算出し、算出された各通信装置2の送信電力減衰量を示す情報を、通信装置3に対して無線送信するようにしてもよい。これにより、通信装置3側での送信電力減衰量の算出が不要となり、通信装置3の処理負荷を低減することができる。さらに、各通信装置3が別々に送信電力減衰量を算出することがなくなるため、通信装置3の間で送信電力減衰量にばらつきが発生するのを抑制することができる。
【0170】
また上記第1実施形態では、当該通信装置2,3が直接受信することができない通信装置2の定期送信期間(直接受信不能定期送信期間)毎に送信電力を変化させるものを示した。しかし、直接受信不能定期送信期間の全てで一定とするようにしてもよい。これにより、直接受信不能定期送信期間毎に異なる送信電力を算出する必要がなくなるため、当該通信装置2,3の処理負荷を低減することができるとともに、当該通信装置2,3の構成を簡略化することができる。
【0171】
また上記第1,3,4実施形態ではそれぞれ、全ての通信装置3に対して同じ送信電力設定条件に基づいて送信電力減衰量Aの算出を行うものを示した。すなわち、第1実施形態では式(1)により送信電力減衰量Aを算出し、第3,4実施形態では式(2)により送信電力減衰量Aを算出するものを示した。しかし、第1実施形態において、一部の通信装置3に対しては式(1)ではなく式(3)により送信電力減衰量Aを算出するように構成してもよいし、第3,4実施形態において、一部の通信装置3に対しては式(2)ではなく式(3)により送信電力減衰量Aを算出するように構成してもよい。このように構成された場合において、式(1),(2)は本発明における第1送信電力設定条件、式(3)は本発明における第2送信電力設定条件である。
【0172】
または、第1実施形態において、一部の通信装置3に対しては式(1)ではなく、通信装置2から無線送信された送信電力減衰量情報を用いて送信電力減衰量Aを決定するように構成してもよいし、第3,4実施形態において、一部の通信装置3に対しては式(2)ではなく、通信装置2から無線送信された送信電力減衰量情報を用いて送信電力減衰量Aを決定するように構成してもよい。このように構成された場合において、式(1),(2)は本発明における第1送信電力設定条件であり、通信装置2から無線送信された送信電力減衰量情報を用いて送信電力減衰量Aを決定することは本発明における第2送信電力設定条件である。
【符号の説明】
【0173】
2,3…通信装置、11…データ送信部、12…変調処理部、13…RF部、14…復調処理部、15…データ受信部、17…受信データ格納部、21…時計、22…タイマリセット部、23…時刻差分計算部、24…時刻補正判断部、30…定期送信期間テーブル、31…テーブル更新部、32…減衰量算出部、33…送信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定周期毎に繰り返されて該周期よりも短い定期送信期間内に、所定の通信チャンネルを利用してデータを無線送信する1または複数の第1通信装置と、
前記通信チャンネルを利用してデータを無線受信するとともに、データ送信が必要になったときに前記通信チャンネルが空いているか否かを判定して、前記通信チャンネルが空いている場合にデータを無線送信する複数の第2通信装置と
の2種類の通信装置が混在し、
前記第1通信装置は、前記定期送信期間を示すデータである定期送信期間情報を無線送信するように構成され、
前記第2通信装置は、前記第1通信装置から前記定期送信期間情報を受信すると、前記定期送信期間情報により示される前記定期送信期間の期間外にデータ送信するように構成された
無線通信システムにおいて、前記第1通信装置または前記第2通信装置として使用される無線通信装置であって、
1または複数の前記第1通信装置のうち、該第1通信装置から無線送信されたデータを当該無線通信装置が直接受信することができない前記第1通信装置を、直接受信不能第1通信装置とし、
前記直接受信不能第1通信装置の前記定期送信期間を、直接受信不能定期送信期間とし、
当該無線通信装置が前記第1通信装置である場合には、当該無線通信装置の前記定期送信期間を通常データ送信許可期間とし、当該無線通信装置が前記第2通信装置である場合には、当該無線通信装置が受信した前記定期送信期間情報により示される前記定期送信期間外の期間を前記通常データ送信許可期間とし、
前記直接受信不能定期送信期間の期間内である場合には、前記通常データ送信許可期間の期間内である場合よりも、送信電力を小さくしてデータを無線送信させる送信制御手段を備える
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記送信制御手段は、
前記直接受信不能定期送信期間の期間内においてデータを無線送信するときの送信電力を、予め設けられた第1送信電力設定条件に応じて、前記直接受信不能定期送信期間毎に変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第1通信装置は、前記定期送信期間情報を転送した回数である転送回数を示す転送回数情報を、前記定期送信期間情報に付加して無線送信するように構成され、
前記第2通信装置は、前記定期送信期間情報を受信すると、受信した前記定期送信期間情報に付加された前記転送回数情報が示す前記転送回数を1加算し、該加算後の前記転送回数を示す前記転送回数情報が付加された前記定期送信期間情報を無線送信するように構成され、
前記第1送信電力設定条件は、
受信した前記定期送信期間情報に付加された前記転送回数情報が示す前記転送回数が大きいほど、受信した前記定期送信期間情報が示す前記定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を大きくすることである
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
当該無線通信装置と前記第1通信装置との間の相対距離を示す相対距離情報を取得可能に構成され、
前記第1送信電力設定条件は、
前記相対距離が大きいほど、該相対距離に対応した前記第1通信装置の前記定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を大きくすることである
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
1または複数の前記第1通信装置のうち、該第1通信装置から無線送信されたデータを当該無線通信装置が直接受信することができる前記第1通信装置を、直接受信可能第1通信装置とし、
前記直接受信可能第1通信装置の前記定期送信期間を、直接受信可能定期送信期間とし、
前記第1送信電力設定条件は、
当該無線通信装置と前記直接受信可能第1通信装置との間の相対距離に応じて、前記相対距離が大きいほど、前記直接受信不能第1通信装置の前記定期送信期間の期間内に送信するときの送信電力を小さくすることである
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記送信制御手段は、
前記第1送信電力設定条件に加えて、前記第1送信電力設定条件と異なるように予め設けられた第2送信電力設定条件に応じて、前記送信電力を前記直接受信不能定期送信期間毎に変化させることが可能に構成されるとともに、前記第2送信電力設定条件で前記送信電力を変化させた場合には、前記第2送信電力設定条件で前記送信電力を変化させた前記直接受信不能定期送信期間について、前記第1送信電力設定条件に基づく前記送信電力の変化を禁止するように構成され、
前記第2送信電力設定条件は、
前記直接受信不能第1通信装置から送信されたデータを直接受信することができる前記第2通信装置からデータを受信したときの受信電力の中から電力値が最大となるものを抽出して、この受信電力最大値からノイズフロアを減算した値を、送信電力減衰量とし、前記通常データ送信許可期間内である場合よりも、前記送信電力減衰量分、送信電力を小さくすることである
ことを特徴とする請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第1送信電力設定条件は、
前記直接受信不能第1通信装置から送信されたデータを直接受信することができる前記第2通信装置からデータを受信したときの受信電力の中から電力値が最大となるものを抽出して、この受信電力最大値からノイズフロアを減算した値を、送信電力減衰量とし、前記通常データ送信許可期間内である場合よりも、前記送信電力減衰量分、送信電力を小さくすることである
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項8】
データを送信するときの送信電力の減衰量を示す減衰量情報を前記第1通信装置毎に取得可能に構成され、
前記送信制御手段は、
前記第1送信電力設定条件に加えて、前記第1送信電力設定条件と異なるように予め設けられた第2送信電力設定条件に応じて、前記送信電力を前記直接受信不能定期送信期間毎に変化させることが可能に構成されるとともに、前記第2送信電力設定条件で前記送信電力を変化させた場合には、前記第2送信電力設定条件で前記送信電力を変化させた前記直接受信不能定期送信期間について、前記第1送信電力設定条件に基づく前記送信電力の変化を禁止するように構成され、
前記第2送信電力設定条件は、
前記直接受信不能第1通信装置の前記定期送信期間の期間内に送信するときには、前記通常データ送信許可期間内である場合よりも、前記直接受信不能第1通信装置の前記減衰量情報が示す前記減衰量分、送信電力を小さくすることである
ことを特徴とする請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
データを送信するときの送信電力の減衰量を示す減衰量情報を前記第1通信装置毎に取得可能に構成され、
前記第1送信電力設定条件は、
前記直接受信不能第1通信装置の前記定期送信期間の期間内に送信するときには、前記通常データ送信許可期間内である場合よりも、前記直接受信不能第1通信装置の前記減衰量情報が示す前記減衰量分、送信電力を小さくすることである
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記送信制御手段は、
前記直接受信不能定期送信期間の期間内においてデータを無線送信するときの送信電力を、前記直接受信不能定期送信期間の全てで一定とする
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記送信制御手段は、
前記第1通信装置から直接受信したデータ、または前記第2通信装置から受信したデータを、前記直接受信不能定期送信期間の期間内に送信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項12】
当該無線通信装置の送信データには優先度が予め設定されており、
前記送信制御手段は、
当該無線通信装置の送信データのうち、前記優先度が低いものであるとして予め設定されたデータを前記直接受信不能定期送信期間の期間内に送信するとともに、前記優先度が高いものであるとして予め設定されたデータを前記直接受信不能定期送信期間の期間外に送信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の無線通信装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図1】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−90151(P2013−90151A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229105(P2011−229105)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】