説明

無線CDMAシステムにおいて送信電力立上りを短符号の利用により制御するシステム

【課題】無線CDMA通信システムにおいて加入者ユニットと基地局との間の通信チャンネル設定期間中の送信電力立上りの制御方法を改良する。
【解決手段】CDMA通信システムにおけるチャンネル設定期間中の送信電力制御のためのシステムおよび方法は、初期送信電力上昇時に加入者ユニットから基地局への短符号の送信を利用する。この短符号は慣用の拡散符号よりもずっと短い周期の基地局による検出のための系列である。送信電力上昇は基地局による検出に必要な送信電力レベルよりも低いことが保証されている送信電力レベルから開始する。加入者ユニットは前記短符号を繰り返し送信しながら前記基地局によるその信号の検出まで送信電力を急速に上昇させる。基地局は、その短符号をいったん検出すると、送信電力上昇を停止するように加入者ユニットに指示を送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は概括的にはCDMA通信システムに関する。より詳しくいうと、この発明は加入者ユニットからの信号を基地局で検出するための所要時間を短縮するように、加入者局から基地局への短符号送信を利用するCDMA通信システムに関する。検出時間の短縮によって加入者ユニットからの初期送信電力のより速い立上りが可能になり、不要な送信電力オーバーシュートを低減できる。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの利用は、それらシステムの信頼性および通信容量の改良に伴って過去十年の間に劇的に伸びた。無線通信は、有線通信が実用的でないまたはその使用が不可能な多様な応用分野で用いられている。無線通信の利用には、セルラー電話通信、遠隔地通信、災害復旧用の応急通信などがある。また、無線通信は老朽化した電話回線および旧式の電話機器の置換の際の経済的に実現可能な代替品になった。
【0003】
無線通信システムに利用可能なRFスペクトラム帯は重要な資源である。このRFスペクトラムを商用、官庁用、軍用のあらゆる用途に共用しなければならない。システム通信容量の拡大のために無線通信システムの効率の改善が常に求められている。
【0004】
この分野では符号分割多重アクセス(CDMA)無線通信システムがとくに有望視されている。より普通の時分割多重アクセス(TDMA)システムも周波数分割多重アクセス(FDMA)システムも最近の技術的進歩の利用により改善されてきたが、CDMAシステム、とくに広帯域符号分割多重アクセス(B-CDMA)システムはTDMAシステムおよびFDMAシステムに比べて著しい利点を備える。B-CDMAシステムにおける符号化および変調密度、干渉除去およびマルチパス耐性、同一周波数スペクトラムの各通信セルにおける再使用などが効率改善の理由である。CDMA通信信号のフォーマットのために通信傍受は極めて困難になり、通話者間の秘密が確保され詐欺防止策となる。
【0005】
CDMAシステムでは周波数スペクトラムの同一部分が全加入者の通話に使われる。各加入者ユニットのベースバンドデータ信号を、繰返し周波数のずっと高い「拡散符号」と呼ばれる符号系列と乗算する。データシンボルの繰返し周波数に対する拡散符号の繰返し周波数は「拡散率」または「処理利得」と呼ばれる。この符号化によって、ベースバンド信号の周波数スペクトラムよりもずっと広い伝送周波数スペクトラムが生じ、そのためにこの手法は「スペクトラム拡散」と呼ばれる。加入者ユニット相互間の区別およびそれらユニットからの信号の区別は、CDMAチャンネルと呼ばれる通信リンクの各々に特有の拡散符号を割り当てることによって行う。通話はすべて同一の周波数帯経由で送られるので、各CDMA通話は他の加入者ユニットからの通話信号および周波数・時間両領域における雑音関連信号と重なる。
【0006】
複数の加入者ユニットが同一の周波数スペクトラムを使うのでシステムの効率が向上する。しかし、加入者ユニットの使用数が増加するに伴ってシステムの性能が徐々に低下する。各加入者ユニットはそのユニットに特有の拡散符号を伴う通話信号を有効信号として検出し、それ以外のすべての信号を雑音とみなす。基地局に達する加入者ユニットからの信号が強いほど、基地局における他の加入者局からの信号の受信および復調により強い干渉を生ずる。極端な場合は、一つの加入者ユニットからの受信電力が他の加入者ユニットからの通話を停止させるほどの大きさになることもあり得る。したがって、無線CDMA通信システムでは全加入者ユニットからの送信電力を制御することが極めて重要である。通信リンク接続ののち閉ループ電力制御アルゴリズムを用いることによってこの目的は達成できる。
【0007】
加入者ユニットが基地局との交信を開始しようとしておりしかも送信電力制御ループがまだ設定されていない段階での送信電力制御がとくに重要である。通常は、加入者ユニットの所要送信電力は、伝搬損失、他の加入者からの干渉、通話路雑音、フェーディングほかの通話路特性の関数として絶え間なく変動している。したがって、加入者ユニットには送信開始時の送信電力レベルはわからない。ある加入者ユニットの送信開始時の送信電力レベルが高すぎると、それ以外の加入者ユニットの通信に干渉し、それら加入者の通信を停止させてしまう場合さえあり得る。送信開始時の送信電力レベルが低すぎると、その加入者ユニットからの信号は基地局で検出されず、通信リンクは形成されない。
【0008】
CDMA通信システムにおける送信電力制御には多様な手法がある。例えば、米国特許第5,056,109号(ギルハウゼンほか)は加入者ユニットおよび基地局の両方からの周期的信号測定値に基づいて加入者ユニット送信電力を定める送信電力制御システムを開示している。基地局からパイロット信号を全加入者ユニットに送信し、加入者が受信パイロット信号を分析し、送信信号の電力損失を推定し、それにしたがって自局送信電力を調節するのである。加入者ユニットの各々は、他加入者ユニットへの干渉の原因となる電力の急増を防止する非直線損失出力フィルタを備える。この手法は複雑すぎるので、基地局が一つの加入者局の急速捕捉をそれ以外の加入者局への干渉を抑えながら行うことはできない。また、順方向リンク(基地局から加入者ユニットへの送信)における伝搬損失、干渉および雑音レベルが逆方向リンク(加入者ユニットから基地局への送信)におけるそれら値と同じにならないことが多い。順方向リンク電力損失に基づく逆方向リンク電力損失推定値は正確でない。
【0009】
上記以外の従来型送信電力制御システムの多くは、送信電力制御のために交信ユニット間の複雑な制御用シグナリングまたは所定送信電力値を必要とする。それら送信電力制御手法は融通性に欠け、実動化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP 0 565 507
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、無線CDMA通信システムにおける加入者ユニットの送信電力の初期立上りを効率的に制御する方法が必要である。この発明の目的は、CDMA加入者ユニットと基地局との間の通信チャンネルの設定期間中の送信電力立上りの制御に改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、無線CDMA通信システムにおけるチャンネル設定期間中の送信電力制御を、送信電力の初期立上りの期間中に加入者ユニットから基地局に短符号を送信することによって行う新規な送信電力制御方法から成る。上記短符号は、基地局検出用で慣用の拡散符号よりもずっと短い周期のパルス系列である。送信電力立上りは、基地局による検出のための所要電力レベルよりも必ず低い電力レベルから開始する。加入者ユニットは、上記短符号を繰返し送信しながら、その短符号が基地局に検出されるまで、送信電力を急速に増大させる。基地局は、その短符号を検出すると、送信電力増大を止めるよう加入者ユニットに指示を送る。この短符号の利用によって、送信電力オーバーシュートおよび他の加入者ユニットへの干渉を制限し、基地局がその加入者ユニット特有の拡散符号に急速に同期できるようにする。
【発明の効果】
【0013】
無線CDMA通信システム用の加入者ユニットおよび基地局の初期立上りの制御を効率化する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明による符号分割多重アクセス(CDMA)通信システムの概略的概観図。
【図2】基地局の稼動範囲を示す概略図。
【図3】基地局と加入者ユニットとの間の通信信号のタイミング図。
【図4】基地局と加入者ユニットとの間の通信チャンネル設定の流れ図。
【図5】加入者ユニットからの送信出力電力のグラフ。
【図6A】この発明の好適な実施例による短符号利用の基地局・加入者ユニット間通信チャンネル設定の流れ図。
【図6B】この発明の好適な実施例による短符号利用の基地局・加入者ユニット間通信チャンネル設定の流れ図。
【図7】短符号を用いた加入者ユニットからの送信出力電力のグラフ。
【図8】短符号の適応型選択を示す説明図。
【図9】この発明による基地局のブロック図。
【図10】この発明による加入者ユニットのブロック図。
【図11A】この発明にしたがって実行される送信電力立上げ手順のフロー図。
【図11B】この発明にしたがって実行される送信電力立上げ手順のフロー図。
【図12】基地局と複数の加入者ユニットとの間の信号の伝搬を示す図。
【図13】低速初期捕捉を用いた基地局・加入者ユニット間通信チャンネル初期設定の好適な実施例の流れ図。
【図14】高速再捕捉を用いた基地局・加入者ユニット間通信チャンネル再設定の好適な実施例の流れ図。
【図15】図15Aは基地局と複数の加入者局との間の通信の概略図、図15Bは基地局と実質的に位置把握ずみの加入者ユニットとの概略図。
【図16】実質的に位置把握ずみの複数の加入者ユニットの概観図。
【図17】この発明によって製造した加入者ユニットのブロック図。
【図18】低速初期捕捉を用いた基地局・加入者ユニット間通信チャンネル初期設定の代替的実施例の流れ図。
【図19】高速再捕捉を用いた基地局・加入者ユニット間通信チャンネル再設定の代替的実施例の流れ図。
【図20】低速初期捕捉を用いた基地局・加入者ユニット間通信チャンネル初期設定の第2の代替的実施例の流れ図。
【図21A】流れ図の各ステップの対応訳。
【図21B】流れ図の各ステップの対応訳。
【図21C】流れ図の各ステップの対応訳。
【図21D】流れ図の各ステップの対応訳。
【図21E】流れ図の各ステップの対応訳。
【図21F】流れ図の各ステップの対応訳。
【図21G】流れ図の各ステップの対応訳。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して好適な実施例を説明する。これら図面全体を通じて、同一の構成要素は同一の参照数字で表す。
【0016】
この発明を実施した通信網10を図1に示す。通信網10は各々が複数の加入者ユニット16と無線通信可能な一つ以上の基地局14を備え、加入者ユニット16の各々は固定局でも移動局でもよい。各加入者ユニット16は最寄りの基地局14または通信信号強度の最も大きい基地局14と通信する。基地局14は、基地局14相互間の通信を調整する基地局コントローラ20とも通信する。通信網10は公衆交換網(PSTN)22とも接続でき、その場合は基地局コントローラ20は基地局14とPSTN22との間の調整も行う。各基地局14と基地局コントローラ20との間の通信は有線回線でも可能であるが無線リンク経由とするのが好ましい。基地局14が基地局コントローラ20の近傍にある場合は有線回線を利用できる。
【0017】
基地局コントローラ20はいくつかの機能を有する。まず、基地局コントローラ20は、加入者ユニット16、基地局14および基地局コントローラ20の相互間の無線通信すべての設定および維持に関連する運用、管理、維持(OA&M)シグナリングを供給する。また、基地局コントローラは無線通信システム10とPSTN22との間のインタフェースを形成する。このインタフェースは基地局コントローラ20経由でシステム10に出入りする通信信号の多重化および多重化解除を含む。無線通信システム10をRF信号送信用アンテナを備えるものとして図示したが、マイクロ波または衛星アップリンク経由の通信も可能であることは当業者に認識されよう。また、基地局コントローラ20の機能を基地局14に組み入れて「主基地局」を形成することもできる。
【0018】
図2を参照すると、基地局14と複数の加入者ユニット16との間の信号伝搬が示してある。双方向通信チャンネル(リンク)18は基地局14から加入者ユニット16への送信信号20(Tx)と加入者ユニット16から基地局14への受信信号22(Rx)とを含む。Tx信号20は基地局14から送信され、伝搬遅延Δtののちに加入者ユニット16に受信される。同様に、Rx信号22は加入者ユニット16から送信されて追加の伝搬遅延Δtののちに基地局14で受信される。すなわち、往復伝搬遅延は2Δtになる。好適な実施例では、基地局の稼動範囲は約30キロメートルである。最大稼動範囲にある加入者ユニットに関連する往復伝搬遅延は200マイクロ秒である。
【0019】
基地局と加入者ユニットとの間の通信チャンネルの設定が、基地局14および加入者ユニット16におけるこの発明の範囲外の多数のタスクを伴う複雑な手順であることは当業者に明らかであろう。この発明は通信チャンネル設定時の初期送信電力立上りおよび同期を対象とする。
【0020】
図3を参照すると、基地局14と加入者ユニット16との間のシグナリングが示してある。この発明によると、基地局14はその基地局14の送信範囲内に位置する加入者ユニット16全部にパイロット符号40を連続的に送信する。パイロット符号40はデータビットを搬送しない拡散符号である。このパイロット符号は加入者ユニット16捕捉および同期、並びに受信用適応型整合フィルタのパラメータ決定に用いる。
【0021】
加入者ユニット16は基地局14からのパイロット符号40を捕捉しなければデータ送受信ができない。捕捉は加入者ユニット16が自局でローカルに発生した拡散コードを受信パイロット符号40に位相合わせる過程である。加入者ユニット16は、受信パイロット符号40の可能性あるすべての位相のサーチを、正しい位相(パイロット符号40の始点)の検出まで行う。この受信用および送信用同期は、拡散符号の位相に関する限り加入者ユニット16による追加の遅延の導入はないことを意味する。したがって、図3に示すとおり、基地局14から送信されたパイロット符号40と、基地局14の受信した加入者ユニット送信拡散符号42との間の相対遅延は往復伝搬遅延のみによる2Δtである。
【0022】
好適な実施例においては、パイロット符号の長さは29,877,120チップであり、送信所要時間は拡散率に応じて約2乃至5秒である。パイロット符号の長さはデータ伝送速度または帯域幅に関わりなくデータシンボルの倍数に選んである。当業者に周知の通り、パイロット符号40は長いほど無作為性特性が向上し周波数応答がより均一になる。また、長いパイロット符号40はチャンネル相互相関を低下させ、より多数の加入者ユニット16をより低い相互干渉でサポートしてシステム10の通信容量を増大させる。さらに、長いパイロット符号40の使用によってより多数のランダム短符号をサポートできる。同期のために、パイロット符号40の同期をシステム10で用いた他の拡散符号全部の同期と同じにする。したがって、加入者ユニット16がパイロット符号40をいったん捕捉すると、基地局14からのそれ以外の信号全部に同期する。
【0023】
遊休期間中において呼が進行中でも未決状態でもない場合は、加入者ユニット16はパイロット符号40の周期的な再捕捉によって基地局14に同期した状態を維持する。加入者ユニット16がダウンリンク送信、とくに入来呼を表す呼出しメッセージを受信し復調するにはこれが必要である。
【0024】
通信リンクを要求する場合は、基地局14は加入者ユニット16からの信号をまず捕捉しなければデータ復調ができない。加入者ユニット16は、双方向通信リンクの設定の開始のためには、基地局14に捕捉させるアップリンク信号を送信しなければならない。この手順における重要なパラメータは加入者ユニット16の送信電力レベルである。高すぎる送信電力レベルはサービスエリア全体における通信を阻害する可能性があり、一方、低すぎる送信電力レベルは基地局14による上記アップリンク信号の検出を不可能にする。
【0025】
この発明の第1の実施例では、加入者ユニット16は所要送信電力レベル以下であることを保証された送信電力レベルで送信を開始し、正しい電力レベルに到達するまでその送信電力を増大させる。これによって強い干渉の急激な発生を回避でき、それだけシステム10の通信容量は改善される。
【0026】
この発明による通信チャンネルの設定、並びに基地局14および加入者ユニット16の行うタスクを図4に示す。基地局14の稼動範囲の中には多数の加入者ユニット16を配置できるが、この明細書では発明の動作の説明の単純化のために単一の加入者ユニット16について述べる。
【0027】
基地局14は、その稼動範囲の中に位置する加入者ユニット16全部に周期的パイロット符号40を連続的に送信して動作開始する(ステップ100)。基地局14はパイロット符号40を送信する一方(ステップ100)、加入者ユニットからの「アクセス符号」42をサーチする(ステップ101)。アクセス符号42は、通信開始および送信電力立上げの期間に加入者ユニット16から基地局14に送信される既知の拡散符号である。基地局14は、正しい位相の検出のために加入者ユニット16からのアクセス符号42のとり得る位相(時間シフト)全部をサーチしなければならない。これは「捕捉」または「検出」プロセス(ステップ101)と呼ばれる。アクセス符号42が長いほど、基地局14による位相サーチおよび正しい位置の捕捉の所要時間が長くなる。
【0028】
上述のとおり、基地局14からの送信信号と基地局14における帰還受信信号との間の相対遅延は往復伝搬遅延2Δtに対応する。最大遅延は、セル境界として知られる基地局14の最大稼動距離で生じる。したがって、基地局14は、最大往復伝搬遅延中にある最大の符号位相数までサーチしなければならず、これは通常、1つの符号期間中にある符号位相より少ない。
【0029】
データ速度Rbおよび拡散符号速度Rcに対して、比L=Rc/Rbを拡散率または処理利得と呼ぶ。この発明の好適な実施例においては、セル境界半径は30kmであり、これは処理利得によって最大往復伝搬遅延内の約1000乃至2500個の符号位相に対応する。
【0030】
基地局14が最大往復伝搬遅延対応の符号位相をサーチし終えるまでにアクセス符号を検出できなかった場合は、零遅延対応のパイロット符号40の位相から開始するサーチを繰り返す(ステップ102)。
【0031】
遊休期間中には基地局14からのパイロット符号40を加入者ユニット16が受信して加入者ユニット送信拡散符号発生器をそれに周期的に同期させる(ステップ103)。パイロット符号40との同期が外れた場合は、加入者ユニット16はパイロット符号を再捕捉して再同期する(ステップ104)。
【0032】
通信リンクを始める必要がある場合は、加入者ユニット16がアクセス符号42を基地局14に返送し始める(ステップ106)。加入者ユニット16がアクセス符号42の再送信を行いながら送信電力を連続的に増加させ、基地局14から確認信号を受信するまでその連続的増加を維持する(ステップ108)。基地局14は、受信用最小電力レベルに到達するとアクセス符号42を正しい位相で検出する(ステップ110)。次に、基地局14はアクセス符号検出確認信号を加入者ユニット16に送信する(ステップ112)。この確認信号を受信すると、加入者ユニット16は送信電力増加を停止する(ステップ114)。送信電力立上げが完結すると、双方向通信リンク設定のために閉ループ送信電力制御および呼設定シグナリングが行われる(ステップ116)。
【0033】
この実施例は加入者ユニット16の送信電力を制限するが、基地局14による加入者ユニット捕捉をこのように行うと、加入者ユニット16から不要な送信電力オーバーシュートが生じ、システム10の性能が低下する。
【0034】
加入者ユニット16の送信出力電力変化を図5に示す。時点tにおいて、加入者ユニット16は開始時送信電力レベルP、すなわち基地局14における検出に必要な送信電力レベル以下であることを保証された電力レベルPで送信を開始する。加入者ユニット16は基地局14から検出表示を受信するまで送信電力レベルを上げ続ける。基地局14が加入者ユニット16からのアクセス符号42を正しく検出するには、そのアクセス符号42は、(1)十分な電力レベルで受信され、(2)正しい位相で検出されなければならない。したがって、図5においては、アクセス符号42は時点tで基地局14による検出に十分な送信電力レベルになるが、基地局14は時点tで生ずるアクセス符号42の正しい位相のサーチを続けなければならない。
【0035】
加入者ユニット16は基地局14から検出表示を受信するまで送信出力電力レベルを上げ続けるので、アクセス符号42の送信電力は基地局14による検出に必要な送信電力レベルを超える。その結果、上記以外の加入者ユニット16全部に不必要な干渉を生ずる。この送信電力オーバーシュートが大きすぎると、それら加入者ユニット16への干渉がそれら加入者ユニット16において進行中の通話を中断させるほどに悪化する。
【0036】
送信電力オーバーシュートを避けるために加入者ユニット16の送信電力増大の速さを下げることはできるが、そうすると呼設定所要時間が長くなる。適応型立上げ速度の利用が可能であることは当業者に明らかであるが、それら速度にも短所があり、あらゆる場合における送信電力オーバーシュートを認識可能な程度に解消するには至らない。
【0037】
この発明の好適な実施例は「短符号」および二段階通信リンク設定手順を利用して送信電力オーバーシュートを大きくすることなく送信電力高速立上げを達成する。加入者ユニット16の送信する拡散符号は拡散符号の残余の部分よりもずっと短く(したがって短符号という用語)位相数も限られ基地局14による符号サーチも急速にできる。この目的に使う短符号はデータを搬送しない。
【0038】
この発明の好適な実施例により短符号を利用して通信チャンネルを設定するための基地局14および加入者ユニット16のタスクを図6Aおよび図6Bに示す。遊休期間中は基地局14はその局14の稼動範囲内の加入者ユニット16全部にパイロット符号を周期的に継続して送信する(ステップ150)。基地局14は加入者ユニット16の送信した短符号の継続的サーチも行う(ステップ152)。加入者ユニット16はパイロット符号を捕捉して、自局の送信拡散符号発生器をそのパイロット符号に同期させる。加入者ユニット16は同期状態確認のために周期的チェックも行う。同期が外れると、加入者ユニット16は基地局からのパイロット信号を再捕捉する(ステップ156)。
【0039】
通信リンクを必要とする場合は、加入者ユニット16は最小送信電力レベル Pで短符号の送信を開始し(ステップ158)、その短符号の再送信のあいだ送信電力レベルを基地局14から短符号受信確認を受けるまで上げ続ける(ステップ160)。
【0040】
好適な実施例におけるアクセス符号は上述のとおり長さ約3千万チップである。しかし、上記の短符号はずっと小さい。短符号の長さは、高速検出を可能にするのに十分に短い任意の値を選ぶことができる。アクセス符号周期を均等に分割する短符号長を選ぶと好都合である。この明細書で述べるアクセス符号に対しては、短符号長を32チップ、64チップまたは128チップにするのが好都合である。あとで詳述するとおり、短符号を1シンボル長程度に短くすることもできる。
【0041】
短符号の開始とアクセス符号の開始とは同期しているので、基地局14はいったん短符号を捕捉すると、アクセス符号の対応位相は短符号の長さがNのとき短符号位相からNチップの整数倍であることがわかる。したがって、基地局14は最大往復伝搬遅延対応の可能性ある全位相をサーチする必要はない。
【0042】
短符号を用いると、基地局14に検出されるべき正しい位相はより頻繁に生ずる。受信可能な最小送信電力が達成されると、短符号は急速に検出され(ステップ162)、送信電力オーバーシュートは限られる。送信電力オーバーシュートを大きくする懸念なしに送信電力立上げ速度を大幅に上げることができる。この発明の好適な実施例では、短符号利用時の送信電力立上げ速度は1ミリ秒あたり1dBである。
【0043】
基地局14は次に短符号検出表示信号を加入者ユニット16に送り(ステップ164)、その表示信号を受けると加入者ユニット16は送信電力立上げの第2段階に入る。加入者ユニット16はこの段階では短符号の送信を停止し(ステップ166)、周期的アクセス符号を連続的に送信し始める(ステップ166)。加入者ユニット16はアクセス符号の送信を続けながら送信電力立上げを続けるが、この段階では送信電力増加速度は短符号使用時の先行の送信電力増加速度よりもずっと低い(ステップ168)。アクセス符号使用時の送信電力増加速度は1ミリ秒あたり0.05dBにするのが好ましい。低速増加はチャンネル伝搬特性の小変動による基地局14とのあいだの同期外れを防ぐ。
【0044】
この時点では基地局14は正しい位相および送信電力レベルで短符号を検出ずみである(ステップ162)。この段階で基地局14はアクセス符号、すなわちそれ以外の拡散符号と同じ長さで短縮符号よりはずっと長いアクセス符号に同期することになる。短符号を用いると、基地局14はアクセス符号の正しい位相をより急速に検出できる。基地局14はアクセス符号の正しい位相のサーチを開始する(ステップ170)。しかし、アクセス符号の始まりは短符号の始まりと同期しているので、基地局14はN=短符号の長さとしたときNチップずつサーチするだけでよい。要するに、基地局14による正しい位相および送信電力レベルのアクセス符号の急速捕捉は、(1)短符号を検出し、(2)その短符号の始点からアクセス符号Nチップずつサーチしてアクセス符号の正しい位相を算定することによって行われる。
【0045】
最大往復伝搬遅延時間内の位相数のサーチののちアクセス符号が検出されなかった場合は、基地局14はNチップずつではなく1チップずつサーチしてアクセス符号のサーチを再開する(ステップ172)。アクセス符号の正しい位相が検出された場合は(ステップ174)、基地局14はアクセス符号検出確認信号を加入者ユニット16に送り(ステップ176)、この確認信号を受けると加入者ユニット16は送信電力増大を停止する。送信電力立上げが完了すると、送信電力の閉ループ制御および呼設定シグナリングが行われて双方向通信リンクが形成される。
【0046】
図7においては、開始時送信電力レベルPは前述の実施例と同じであるが、加入者ユニット16は短符号利用により送信電力レベルの立上げをより高速に行っている。短符号は送信電力レベルが最小検出レベルを超えたのち急速に検出され、それによって送信電力オーバーシュートを最小に抑えている。
【0047】
同じ短符号を加入者ユニット16で再使用できるが、この発明の好適な実施例では次の手順により短符号を動的に選択し交信する。図8を参照すると、短符号の周期は1シンボル長に等しく、各周期の始点はシンボル境界と一致させてある。短符号は一定長の拡散符号から発生する。拡散符号の始点からのシンボル長部分を記憶して、次の3ミリ秒にわたり短符号として用いる。各3ミリ秒ごとに拡散符号の新たなシンボル長部分が先行短符号と置換される。拡散符号周期は3ミリ秒の整数倍であるから、同じ短符号を拡散符号周期の一つごとに繰り返す。短符号を周期的に更新することによって、短符号による干渉をスペクトラム全体にわたって平均化する。
【0048】
基地局14のブロック図を図9に示す。簡単に述べると、基地局14は受信機部分50、送信機部分52およびダイプレクサ部分54を備える。RF受信機56はダイプレクサ54からのRF信号を受信してダウンコンバートする。受信拡散符号発生器58はデータ受信機60および符号検出器62の両方に拡散符号を出力する。データ受信機60では拡散符号をベースバンド信号と相関処理してデータ信号を抽出し以後の信号処理のために送出する。受信したベースバンド信号は符号検出器62、すなわち加入者ユニット16からのアクセス符号または短符号を検出して拡散符号発生器58のタイミングを通信チャンネル18の形成のために調節する。
【0049】
基地局14の送信機部分52においては、送信拡散符号発生器64は拡散符号をデータ送信機66およびパイロット符号送信機68にも出力する。パイロット符号送信機68は周期的パイロット符号を連続的に送信する。データ送信機66は、符号検出器62による短符号またはアクセス符号検出ののち、短符号検出表示信号およびアクセス符号検出確認信号をそれぞれ送信する。データ送信機は上記以外のメッセージおよびデータ信号も送る。データ送信機66およびパイロット符号送信機68からの信号は合成して、加入者ユニット16への送信のためにRF送信機70でアップコンバートする。
【0050】
加入者ユニット16のブロック図を図10に示す。簡単にいうと、加入者ユニット16は受信部72、送信部74およびダイプレクサ84を備える。RF受信機76はダイプレクサ84からのRF信号を受けてダウンコンバートする。パイロット符号検出器80は拡散符号とベースバンド信号との間の相関をとり基地局16からのパイロット符号を捕捉する。このようにして、パイロット符号検出器80はパイロット符号との同期を維持する。受信機拡散符号発生器82は拡散符号を発生してデータ受信機78およびパイロット符号検出器18にそれを出力する。データ受信機78は拡散符号とベースバンド信号との間の相関をとり基地局からの短符号検出表示およびアクセス符号検出確認を処理する。
【0051】
送信部74は拡散符号発生器86、すなわち拡散符号を発生しデータ送信機88並びに短符号およびアクセス符号送信機90に出力する。短符号およびアクセス符号送信機90は上述の送信電力立上げ手順の互いに異なる段階でこれらの符号を送信する。データ送信機88並びに短符号およびアクセス符号送信機90の出力した信号は合成されて、基地局14への送信のためにRF送信機92でアップコンバートされる。受信機拡散符号発生器82のタイミングは捕捉プロセスを通じてパイロット符号検出器80で調節する。受信機拡散符号発生器82および送信機拡散符号発生器86も同期する。
【0052】
この発明の実施例による上述の送信電力立上げの概要を図11Aおよび図11Bに要約する。基地局14は短符号をサーチしながらパイロット符号を送信する(ステップ200)。加入者ユニット16は基地局14からのパイロット符号を捕捉し(ステップ202)、所要送信電力レベル以下であることを保証ずみの最小送信電力レベルPで短符号送信を開始し、送信電力を急速に上げる(ステップ204)。基地局14における受信電力レベルが短符号検出に必要な最小レベルに達すると(ステップ206)、基地局14はその短符号の正しい位相を捕捉し、その短符号の検出を表示する信号を送信し、アクセス符号のサーチを開始する(ステップ208)。加入者ユニット16はこの短符号検出表示を受信すると短符号送信を停止してアクセス符号送信を開始する。加入者ユニット16はアクセス符号を送りながら送信電力の低速立上げを開始する(ステップ210)。基地局14は上記アクセス符号の各短符号長部分の中の一つの位相だけをサーチすることによってアクセス符号の正しい位相をサーチする(ステップ212)。基地局14がアクセス符号の位相のサーチを最大往復伝搬遅延まで進めても正しい位相を検出できない場合は、各位相ごとのサーチを繰り返す(ステップ214)。基地局14はアクセス符号の正しい位相を検出すると受信確認信号を加入者ユニット16に送る(ステップ216)。その受信確認信号を加入者ユニット16が受けると送信電力立上げプロセスが完結する。すなわち、閉ループ送信電力制御が形成され、加入者ユニット16は関連の呼設定メッセージの送出により呼設定プロセスを続ける(ステップ218)。
【0053】
通信リンク再形成におけるこの発明の代替的実施例を図12を参照して説明する。基地局314と複数の加入者ユニット316との間の通信チャンネル318の設定におけるいくつかの信号の伝搬を図示してある。順方向パイロット信号320は基地局14から時点tで送信され、伝搬遅延Δtののちに加入者ユニット316で受信される。基地局314で捕捉されるようにするために、加入者ユニット316はアクセス信号322を送信し、その信号は伝搬遅延Δtだけさらに遅れて基地局314に受信される。したがって、往復伝搬遅延は2Δtである。アクセス信号322は順方向パイロット信号320と同期した形で送信され、したがって、送信時のアクセス信号322の符号位相は受信順方向パイロット信号320の符号位相と等しくなる。
【0054】
上記往復伝搬遅延は基地局314に対する加入者局316の位置に依存する。基地局314とその基地局により近い位置にある加入者ユニット316との間の通信信号の伝搬遅延はより遠い位置にある加入者ユニット316との間の通信信号の伝搬遅延よりも短い。基地局314はセル330内の任意の位置にある加入者ユニット316を捕捉できる必要があるので、基地局314はセル330の伝搬遅延の任意の値に対応するアクセス信号全位相をサーチしなければならない。
【0055】
図13を参照すると、基地局314による加入者ユニット316の初期捕捉に関連するタスクが示してある。通信チャンネル設定の相手にしたことのない基地局14とチャンネル318を設定しようとする時点では、加入者ユニット316には往復伝搬遅延はわからない。したがって、加入者ユニット316は初期捕捉チャンネル設定プロセスに入る。
【0056】
加入者ユニット316は低初期電力レベルおよび零符号位相遅延を選択し(送信アクセス信号322の符号位相を受信順方向パイロット信号320に同期させる)、送信電力を徐々に上げながら(0.05−0.1dB/ミリ秒)アクセス信号322の送信を開始する(ステップ400)。加入者ユニット316は基地局314からの確認信号の待ち受けの間符号位相遅延を零からセル330の周縁対応の遅延(最大符号位相遅延)まで所定の刻みで階段状に変動させ、それら階段状の刻み相互間の時間を基地局314がアクセス信号322を検出するのに十分な長さとする(ステップ402)。加入者ユニット316は、セル330の周縁対応の符号位相遅延に達すると、低速送信電力立上げを続けながら符号位相遅延変動プロセスを繰り返す(ステップ402)。
【0057】
アクセス要求中の加入者ユニット316を捕捉するために基地局314は順方向パイロット信号320を続けて送信し、加入者ユニット316からのアクセス信号322の検出を試みる(ステップ404)。従来技術の場合のようにセル330内の符号遅延全部でアクセス信号322を試験する代わりに、基地局14はセル330の周縁近傍の符号遅延だけを試験すればよい。
【0058】
基地局314は、加入者ユニット316がセル330周縁に位置した場合に対応する符号位相遅れで十分な送信電力の送信を始めるとアクセス信号322を検出し(ステップ406)、それによって加入者ユニット316をセル330の周縁で「仮想的に」位置設定する。次に、基地局314はアクセス信号322の受信を確認する信号を加入者ユニット316に送信し(ステップ408)、チャンネル設定プロセスを続ける(ステップ410)。
【0059】
加入者ユニット316は、その確認信号を受けると(ステップ412)、送信電力上昇を停止し、符号位相遅延の変動を停止し(ステップ414)、後続の捕捉動作に備えて符号位相遅延の値を記録する(ステップ416)。加入者ユニット316はさらに閉ループ送信電力制御などのチャンネル設定プロセスを継続する(ステップ418)。
【0060】
加入者ユニット316が基地局314との間のチャンネル318の形成を求める再捕捉の場合は、その加入者ユニット316は図14に示す再捕捉チャンネル設定プロセスに入る。すなわち、加入者ユニット316は初期捕捉プロセス(図13に示す)の間に記録した符号位相遅れおよび低い初期送信電力レベルを選択し、立上げ送信電力を急速に増大させながら(1dB/ミリ秒)アクセス信号322の連続的送信を開始する(ステップ420)。加入者ユニット316は基地局314からの確認信号を待ち受ける間にアクセス信号322の符号位相遅延を記録ずみの符号位相遅延を中心として僅かに変動させ、遅延変化の前にアクセス信号322を基地局314が検出するのに十分な時間を与える(ステップ422)。図13に示した基地局314は順方向パイロット信号320を送信し、その稼動範囲内の加入者ユニット316の捕捉試行においてセル330の周縁における符号位相遅延だけを試験する(ステップ424)。基地局314は、加入者ユニット316からセル330周辺位置対応の符号位相遅延で十分な送信電力で出力されるとアクセス信号322を検出する(ステップ426)。次に、基地局314はアクセス信号受信を確認する信号を加入者ユニット316に送信し(ステップ428)、チャンネル設定プロセスを続ける(ステップ430)。
【0061】
加入者ユニット316は上記確認信号を受けると(ステップ432)送信電力増大を停止し符号位相遅延を停止し(ステップ434)、後続の再捕捉に備えて符号位相遅延の現在値を記録する(ステップ436)。この符号位相遅延は再捕捉プロセス開始時に当初用いた符号位相遅延とは僅かに異なる(ステップ422)。次に加入者ユニット316はそのままの送信電力レベルでチャンネル設定プロセスを続ける(ステップ438)。加入者ユニット316が所定時間後までに確認信号を受信しなかった場合は、その加入者ユニット316は図13の初期捕捉プロセスに戻る。
【0062】
基地局314と加入者ユニット316との間のTx通信およびRx通信に符号位相遅延を導入した効果を図15Aおよび図15Bを参照して次に説明する。図15Aを参照すると、基地局460は二つの加入者ユニット462、464と通信している。第1の加入者ユニット462は基地局460から30kmの最大稼動距離に位置する。第2の加入者ユニット464は基地局460から15kmの距離に位置する。第1の加入者ユニット462と基地局460との間のTx通信およびRx通信の伝搬遅延は第2の加入者ユニット464と基地局460との間のそれら通信の伝搬遅延の2倍になる。
【0063】
図15Bを参照すると、第2の加入者ユニット464のTxPN発生器に追加の遅延値466を導入したのちは、第1の加入者ユニット462と基地局460との間の通信の伝搬遅延は第2の加入者ユニット464と基地局460との間の通信の伝搬遅延と同じになる。基地局460から見ると、第2の加入者ユニット464は仮想距離464’に位置するように見える。
【0064】
図16を参照すると、複数の加入者ユニットS1−S7を仮想距離475の位置S1’−S7’に仮想的に再配置した場合は、基地局Bは仮想距離475を中心とする符号位相遅延を試験するだけでよいことが理解されよう。
【0065】
この発明を用いると、十分な送信出力レベルを設定ずみの加入者ユニット316を基地局314は約2ミリ秒内に捕捉する。捕捉時間が短くなるので、加入者ユニット316は、所望送信電力レベルの大幅なオーバーシュートなしに、より高速度で(1dB/ミリ秒のオーダーで)送信電力を立上げ可能になる。送信電力バックオフを同じく20dBとすると、基地局314による検出に十分な送信電力に加入者ユニットが達するのに約20ミリ秒を要する。したがって、この発明の再捕捉プロセスの全体の継続時間は約22ミリ秒であり、従来の再捕捉手法に比べて著しい短縮になる。
【0066】
この発明のこの実施例の加入者ユニット500を図17に示す。加入者ユニット500は受信部502および送信部504を含む。アンテナ506は基地局314からの信号を受け、その信号を帯域幅がチップ速度の2倍に等しく中心周波数が拡散スペクトラムシステムの帯域幅の中心周波数に等しい帯域フィルタ508で濾波する。フィルタ508の出力を固定周波数(Fc)の局部発振器によりミキサ510でベースバンド信号にダウンコンバートする。次にミキサ510の出力を、RxPN発生器514内のミキサ510へのPN系列の印加により、拡散スペクトラム復号化する。ミキサ512の出力をPCMデータ速度(Fb)に等しい遮断周波数の低域フィルタ516に加える。フィルタ516の出力をユーザ520とのインタフェースを形成する符復号器(コーデック)518に入力する。
【0067】
ユーザ520からのベースバンド信号をコーデック518でパルス符号変調する。この変調には毎秒32キロビットの適応型パルス符号変調(ADPCM)を用いるのが好ましい。このPCM信号をTxPN発生器524内のミキサ522に供給する。ミキサ522はPCMデータ信号を上記PN系列を乗算する。ミキサ522の出力はシステムチップ速度と等しい遮断周波数の低域フィルタ526に加える。次にフィルタ526の出力をミキサ528に加え、他方の端子に加えられた搬送波周波数Fcで定まる周波数に適宜アップコンバートする。アップコンバートずみの信号を帯域フィルタ530経由で広帯域RF増幅器532に供給し、その出力をアンテナ534に導く。
【0068】
マイクロプロセッサ536は上述の捕捉プロセスだけでなくRxPN発生器514およびTxPN発生器524をも制御する。マイクロプロセッサ536は、順方向パイロット信号320の捕捉および基地局314による加入者ユニット500の捕捉のためにRxPN発生器514およびTxPN発生器524に加えられる符号位相遅延を制御し、それらPN発生器相互間の符号位相差を記録する。その記録された遅延をマイクロプロセッサ536は再捕捉のためにTxPN発生器524に加える。
【0069】
基地局314は加入者ユニット500からのPN符号化を受けた信号を検出するために加入者ユニット316と同様の構成を用いる。基地局314内のマイクロプロセッサ(図示してない)は、RxPN発生器・TxPN発生器間符号位相差を加入者ユニット316の上記仮想位置の往復伝搬遅延と等価にするように上記と同様にRxPN発生器を制御する。基地局314が加入者ユニット316からのアクセス信号322をいったん捕捉すると、その加入者ユニット316から基地局314へのそれ以外の信号全部(トラフィック、パイロットなど)が捕捉プロセス期間中に算定された同一の符号位相を用いる。
【0070】
上の説明では加入者ユニット316の仮想位置をセル330の周縁にあるものとしたが、この仮想位置は基地局314から任意の固定位置にすることができる。
【0071】
図18を参照すると、「捕捉皆無」の加入者ユニット316をこの発明のもう一つの実施例により基地局314で初期捕捉することに関連するタスクを示してある。加入者ユニット316は、チャンネル318の設定を要する場合は、同期ずみのアクセス信号322を基地局314に連続的に送信する(ステップ600)。加入者ユニット316は基地局314からの確認信号の受信を待ち受ける間アクセス信号322の送信を続けながら送信電力を上げ続ける(ステップ602)。
【0072】
捕捉されたことのない加入者ユニットを検出するために、基地局314は順方向パイロット信号320を送信し、セルの伝搬遅延の全範囲に対応する符号位相全部をサーチしてそのセルを掃引し(ステップ604)、検出に十分な送信電力に達したのちの加入者ユニット316からの同期ずみアクセス信号322を検出する(ステップ606)。基地局314はアクセス信号322の受信を確認する信号を加入者ユニット316に送信する(ステップ608)。加入者ユニット316はその確認信号を受信し(ステップ610)、送信電力増大を停止する(ステップ612)。
【0073】
基地局314は、加入者ユニット316捕捉ののち、TxPN発生器524およびRxPN発生器514の間の差を認識してその加入者ユニット316の所要符号位相遅延を算定する(ステップ614)。その所要符号位相遅延をOA&Mメッセージとして加入者316に送り(ステップ616)、加入者316はその値を受信して再捕捉期間中における使用のために蓄積し(ステップ618)、チャンネル設定プロセスを続ける(ステップ622および624)。
【0074】
図19を参照すると、この発明による代替的高速捕捉方法が示してある。通信チャンネルを加入者ユニット316と基地局314との間で再設定する必要がある場合は、上述の好適な実施例の場合と同様に加入者ユニット316から所望の符号位相遅延でアクセス信号322を送信する。
【0075】
同一の仮想距離にある加入者ユニット316はすべて以前に捕捉されたものであるから、基地局314はそれら加入者ユニット316のアクセス信号の捕捉のためにセル周縁の近傍の符号位置遅延だけをサーチすればよい(ステップ630)。すなわち、加入者ユニット316はより頻繁な捕捉機会を利用するために送信電力立上げを急速にできる。加入者ユニット316は上述の好適な実施例の場合と同様のやり方で遅延を実装化する。次に基地局314は加入者ユニット316をセル周縁で検出し(ステップ636)、その基地局に確認信号を送り(ステップ637)、必要に応じて所要符号遅延値を再計算する。この再計算(ステップ638)は伝搬経路変動、発振器ドリフト、その他の通信変数を補償する。加入者ユニット316は基地局316から上記確認信号を受ける(ステップ639)。
【0076】
基地局314は所要符号位相遅延の更新値を加入者ユニット316に送り(ステップ640)、その加入者ユニットはその更新値を受けて蓄積する(ステップ642)。この加入者ユニット316と基地局314はチャンネル設定プロセスの信号授受をさらに続ける(ステップ644および646)。
【0077】
上述の代替的実施例においては基地局が捕捉歴のある加入者ユニットの再捕捉のためのセル周縁近傍の符号位相遅延と捕捉歴のない加入者ユニットの捕捉のためのセル全体の符号位相遅延との両方をサーチする必要がある。
【0078】
図20を参照すると、捕捉歴のない加入者ユニット316をこの発明の第2の代替的実施例により基地局314で初期捕捉することに関連するタスクを示してある。図18の実施例においては、捕捉前歴のない加入者ユニット316の捕捉の際にアクセス信号320は順方向パイロット信号320に同期した状態に留まる。この実施例においては、基地局314および加入者ユニット316はアクセス信号322の符号位相同期を同期状態から遅延状態(符号同期遅延だけ)に変更して、加入者ユニット316がセルの周縁に現れるようにする。この変更は指定された時間に行う。
【0079】
ステップ700乃至718は図18の対応ステップ600乃至618とそれぞれ同じである。しかし、基地局314が加入者ユニット316に所望の遅延値を送ったあと(ステップ716)、基地局314は、順方向パイロット信号320のサブエポックを基準とする時点で、所望の遅延値に切り換えるようにメッセージを送る(ステップ720)。加入者ユニット316はこのメッセージを受け(ステップ722)、基地局314も加入者ユニット316も切換時間に達するまで待ち受ける(ステップ724、730)。その時点で基地局314は所望の遅延値を自局のRxPN発生器に加え(ステップ732)、加入者ユニット316は同じ所望の遅延値を自局のTxPN発生器に加える(ステップ726)。次に加入者ユニット316および基地局314はチャンネル設定プロセスのための信号授受を行う(ステップ728、734)。
【0080】
好適な実施例を詳細に参照してこの発明を上に述べてきたが、詳細な点は説明のためのものであって限定を意図するものではない。この明細書に述べたこの発明の真意と範囲を逸脱することなくこの発明の構成および動作態様に多数の改変が可能であることは当業者に認識されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0081】
無線CDMA通信システムの無線回線利用効率の改善、システム容量の増大に利用できる。
【符号の説明】
【0082】
10 通信網
14 基地局
16 加入者ユニット
18 双方向通信チャンネル(リンク)
40 パイロット符号
42 加入者ユニットからのアクセス符号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークにおける使用のための加入者ユニットであって、
前記加入者ユニットが前記無線ネットワークに最初にアクセスすることを試みるとき、第1のセットの送信ビットを送信するように構成された送信機と、
前記第1のセットの送信ビットが検出されたことを示す第1の指示を受信するように構成された受信機とを備え、
前記送信機は、前記受信した第1の指示に応答して、第2のセットの送信ビットを送信するようにさら構成され、
前記送信機は、前記第1の指示を受信しないことに応答して、第3のセットの送信ビットを送信するようにさらに構成され、前記第3のセットの送信ビットは、前記第1のセットの送信ビットと異なり、
前記送信機は、前記第2のセットの送信ビットを送信することの後に、第4のセットの送信ビットを送信するようにさらに構成され、
前記加入者ユニットは、前記第4の送信ビットに関して閉ループ電力制御を容易にするようにさらに構成されたことを特徴とする加入者ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の加入者ユニットであって、前記受信機は、前記第2のセットの送信ビットが受信されたことを示す第2の指示を受信するようにさらに構成され、前記送信機は、前記第2の指示が前記受信機によって受信されるという条件で前記第4のセットの送信ビットを送信することを特徴とする加入者ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の加入者ユニットであって、前記第1のセット、第2のセットおよび第3のセットの送信ビットは、閉ループ電力制御されないことを特徴とする加入者ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図21E】
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【図21F】
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【図21G】
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【公開番号】特開2013−110749(P2013−110749A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282175(P2012−282175)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2011−151217(P2011−151217)の分割
【原出願日】平成9年6月23日(1997.6.23)
【出願人】(596008622)インターデイジタル テクノロジー コーポレーション (871)
【Fターム(参考)】