説明

無線ICタグを用いた配管漏水検査方法

【課題】リーダライタにおいて無線ICタグの情報と検査位置情報を簡単に且つ正確に関連付けることで、配管漏水検査の精度を向上させた。
【解決手段】配管漏水検査方法は、配管1における漏水の検査箇所Aに無線ICタグ20を貼り付け、検査位置情報Bをコード化させたバーコード10を配管系統図に貼り付けたバーコード付き配管図面3を設け、検査箇所Aに対応するバーコード10と無線ICタグ20とをリーダライタ4で読み取り、バーコード10の検査位置情報Bと、無線ICタグ20のタグ情報Tとを関連付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグを用いた配管漏水検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばビルやプラントなどの建物内の配管設備や、地下に埋設されている上下水道などの配管の漏水検査には、配管の検査箇所に無線ICタグなどの検知センサを貼り付け、リーダライタなどの読取り器(検出器)を用いて検知センサから離れた位置で測定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。このように非接触によって検知センサを検出器で検知する方法では、例えば配管の周囲に保温材が巻かれたような場合であっても、漏水検査を行なうことができる。
特許文献1は、検知センサを備えた無線ICタグを配管に貼り付け、検知センサで得られた振動、伸び、管内圧力などの配管データ(検査情報)を無線ICタグに記憶させておき、無線ICタグと離れた場所からリーダライタ(検出器)を使用して前記データを読み取る。そして、得られたデータの情報から漏水の有無を判定する検査方法である。
【特許文献1】特開平11−287866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記に示す従来の無線ICタグを使用した漏水検査方法では、通常、無線ICタグには検査位置情報が記録されていないうえ検査箇所が多くあるため、リーダライタによって無線ICタグから読み取った検査情報がどの検査位置であったか分からなくなったり、データが入れ替わったりする恐れがあり、検査精度が低下するという問題があった。
また、リーダライタに検査情報と共に検査位置情報を手入力により記録しておく作業が行われているが、手間がかかるうえ、検査が効率よく行なえないといった欠点があった。そして、手入力作業であるため入力ミスにより検査位置情報と検査情報が不一致となる可能性があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、リーダライタにおいて無線ICタグの情報と検査位置情報を簡単に且つ正確に関連付けることで、配管漏水検査の精度を向上させた無線ICタグを用いた配管漏水検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る無線ICタグを用いた配管漏水検査方法では、配管における漏水の検査箇所に非防水型の無線ICタグを貼り付けて、リーダライタによって無線ICタグを読み取り、リーダライタと無線ICタグとの交信状態から検査情報を検出するようにした無線ICタグを用いた配管漏水検査方法であって、検査位置情報をコード化させたバーコードを配管系統図に貼り付けたバーコード付き配管図面を設け、検査箇所に対応する前記バーコードと無線ICタグとをリーダライタで読み取り、バーコードの検査位置情報と、無線ICタグの識別情報とを関連付けるようにしたことを特徴としている。
本発明では、リーダライタでバーコード付き配管図面のバーコードを読み取ることで、同じくリーダライタによって読み取った無線ICタグの識別情報に対して検査位置情報を簡単に且つ正確に関連付けることができる。このため、従来のように検査位置情報をリーダライタに手入力する必要がなくなり、効率よく検査作業を行うことができる。
【0006】
また、本発明に係る無線ICタグを用いた配管漏水検査方法では、配管における漏水の検査箇所に非防水型の無線ICタグを貼り付けて、リーダライタによって無線ICタグを読み取り、リーダライタと無線ICタグとの交信状態から検査情報を検出するようにした無線ICタグを用いた配管漏水検査方法であって、検査位置情報をコード化させたバーコードを配管系統図に貼り付けたバーコード付き配管図面を設け、検査箇所に対応するバーコードの検査位置情報と、無線ICタグの識別情報とを関連付けした情報をリーダライタに入力しておき、任意の検査箇所のバーコードをリーダライタで読み取ったときに、バーコードに対応する無線ICタグが選択され、選択された無線ICタグのみを検査可能としたことを特徴としている。
本発明では、リーダライタでバーコードを読み取る簡単な作業で正確に検査位置情報と無線ICタグの識別情報とを関連付けることができる。そして、漏水検査時に、バーコードの検査位置情報に対応して選択された無線ICタグの検査情報のみをリーダライタで読み取って記録できる。つまり選択されていない無線ICタグを読みとって検査することができないため、検査位置情報に対応した検査箇所の検査情報を確実に関連付けることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の無線ICタグを用いた配管漏水検査方法によれば、リーダライタにおいて、無線ICタグの識別情報に対して検査位置情報を簡単且つ正確に関連付けることができる。このため、従来のように検査位置情報をリーダライタに別途入力する手間を省くことができ、効率よく検査作業を行うことができる。したがって、検査データの間違いを減らすことができるため、検査精度を向上させる効果を奏する。
また、本発明の無線ICタグを用いた配管漏水検査方法によれば、漏水検査時に、バーコードの検査位置情報に対応して選択された無線ICタグの検査情報のみをリーダライタで読み取って記録できる。つまり選択されていない無線ICタグを読みとって検査することができないため、検査位置情報に対応した検査箇所の検査情報を確実に関連付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第一の実施の形態による無線ICタグを用いた配管漏水検査方法について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による配管漏水検査方法を示す概要図、図2は無線ICタグの平面図、図3は配管に貼り付けられた無線ICタグとリーダライタとの交信状態を示す説明図である。
【0009】
図1に示すように、本第一の実施の形態による無線ICタグを用いた配管漏水検査方法では、例えばビルやプラントなどの建物の配管設備において、配管1の漏水を検査するためのものである。
配管漏水検査方法は、配管系統図の漏水の検査箇所A(A1、A2、A3)にバーコード10(11、12、13)を貼り付けたバーコード付き配管図面3を作成し、配管1の検査箇所Aに無線ICタグ20(21、22、23)を貼り付け、バーコード10の検査位置情報Bと無線ICタグ20のタグ情報T(識別情報)とを読み取り可能なリーダライタ4を設け、コンピュータ5を使用してリーダライタ4と相互にデータ通信して蓄積された組合せ情報R(詳細は後述)を管理するように構成されている。そして、配管1と無線ICタグ20は、ともに保温材2に覆われている。
【0010】
以下、配管漏水検査方法についてさらに具体的に説明する。
先ず、図1に示すように、バーコード付き配管図面3は、漏水検査前に予め準備しておき、配管系統図上の検査箇所Aに1次元の検査位置情報Bをコード化したバーコード10を貼り付けるものであり、検査箇所毎に1つのバーコード10が貼り付けられている。このバーコード付き配管図面3は、バーコード10をスキャナなどでコンピュータ5に取り込み、コンピュータ5内で作成してデジタルデータ化させた図面であってもよい。なお、バーコード10は、一次元のみならず二次元であってもよい。
【0011】
図2に示すように、無線ICタグ20は、例えば無線によりデータを送受信することが可能な非接触方式のICカードなどが採用され、電池を搭載しないカード形状をなし、コイル状に形成されたアンテナ24と、アンテナ24の端部24aに接続されたICチップ25とからなる。
ICチップ25は、CPU(中央演算処理装置)やデータの読み書きを可能とするメモリなどから構成され、アンテナ24によって受信した外部からの信号を処理し、その結果をリーダライタ4に送信させる相互通信可能な集積回路である。各々の無線ICタグ20は、夫々にID(識別情報)が記録されているため、リーダライタ4によって信号を検出する際にこのIDを判別することができる。
【0012】
そして、無線ICタグ20は、内部のICチップ25などが漏水により水に浸かるとリーダライタ4との交信機能が失われる又は低下するため、その内部に水が浸入するように非防水型の構造のものを採用する。例えば、紙や剥離紙などからなる図示しない保護層によって覆っておき、この保護層に開口部を設けるなどして水が内部に浸入し得る構造である。
【0013】
図1に示すリーダライタ4は、持ち運びが容易な小型で軽量なハンディタイプのものを採用する。
また、コンピュータ5は、リーダライタ4と相互にデータを交信することができ、リーダライタ4によって蓄積された情報を取り込んでリスト化して整理したり、検査結果を出力処理することができる。
【0014】
次に、リーダライタ4と無線ICタグ20との作用について図面に基づいて説明する。
図3に示すように、リーダライタ4を所定の距離をもって無線ICタグ20に近づけると、電池を搭載していない無線ICタグ20は、リーダライタ4から信号を受信することにより、アンテナ24に磁界が形成されて電流が得られ、ICチップ25が作動する。そして、この受信した信号はICチップ25に読み込み処理され、次いで信号はアンテナ24を介してリーダライタ4に送信される。
このようにして、リーダライタ4は無線ICタグ20の識別情報及び交信情報(検査情報)を検出することができる。
【0015】
図3に示すように、配管1に漏水が無く無線ICタグ20が浸水していないとき、リーダライタ4は、無線ICタグ20の信号を受信し、無線ICタグ20の交信状態の正常を検出する。これにより、この配管1の検査箇所において漏水が無いものと判断される。
また、配管1が漏水して無線ICタグ20が浸水すると、アンテナ24又はICチップ25が短絡するため、無線ICタグ20の交信機能が失われる又は低下することが感知される。そうすると、リーダライタ4と無線ICタグ20との交信が途絶えることになり、リーダライタ4は無線ICタグ20の信号を検出できない。これにより、無線ICタグ20の出力低下を検査することにより漏水しているものと判断される。
なお、配管1のある検査箇所に漏水が確認された場合には、その検査箇所のみを補修すればよい。
【0016】
次に、配管1の漏水検査方法の手順について図面に基づいて説明する。
先ず、図1に示すように、配管1の施工後に、配管1の検査箇所Aに無線ICタグ20を貼り付ける。そして、任意の検査箇所Aに対応したバーコード付き配管図面3上のバーコード10と無線ICタグ20とをリーダライタ4で読み取る。このとき、バーコード10から読み取った検査位置情報Bと、無線ICタグ20から読み取ったタグ情報Tとの組合せ情報R(B,T)が関連付けされてリーダライタ4に記録される。同様に他のバーコード10と無線ICタグ20とを交互に読み取ることで検査箇所A毎の組合せ情報Rが関連付けされる(関連付け作業)。ここで、「組合せ情報R」は、本発明の「関連付けされた情報」に相当する。
そして、この関連付け作業の終了後、リーダライタ4に蓄積された組合せ情報Rをコンピュータ5に転送しておく。
なお、配管1と無線ICタグ20との周囲に保温材2を取り付ける保温工事は、関連付け作業前或いは作業後に施工される。
【0017】
ここまでが、漏水検査前の準備段階の手順であり、次に、配管漏水検査を行う際の検査手順について説明する。
はじめに、コンピュータ5に保存されている組合せ情報Rを、漏水検査に使用するリーダライタ4に転送する。なお、リーダライタ4に予め組合せ情報Rが入力されている場合には、この作業を省略すればよい。
【0018】
そして、配管1の漏水検査現場において、任意の検査箇所Aのバーコード10をバーコード付き配管図面3からリーダライタ4で読み取ると、このバーコード10の検査位置情報Bに関連付けされている無線ICタグ20が選択される。例えば、配管A2を検査するとき、バーコード12をリーダライタ4で読み取ると無線ICタグ22が選択されることになる。そして、この選択された無線ICタグ20のタグ情報Tのみをリーダライタ4で読み取ることができ、検査箇所Aにリーダライタ4を近づけて無線ICタグ20と交信できる。つまり選択されていない無線ICタグ20を読みとって検査することができないため、検査位置情報Bに対応した検査箇所のタグ情報Tを確実に関連付けることができる。
上述(図3)したように配管1に漏水があった場合には、無線ICタグ20が浸水して交信機能が失われ、交信異常の情報すなわち漏水有りという検査情報が組合せ情報Rと共にリーダライタ4に記録される。一方、検査箇所に漏水がない場合は、無線ICタグ20の交信機能が正常であり、漏水無しという検査情報がリーダライタ4に記録される。そしてリーダライタ4に蓄積された組合せ情報Rを、コンピュータ5に転送し、検査結果を整理または出力処理することができる。
【0019】
上述のように本第一の実施の形態による無線ICタグを用いた配管漏水検査方法は、バーコード10をリーダライタ4で読み込むだけの作業でバーコード付き配管図面3上の検査箇所と無線ICタグ20のタグ情報Tとを関連付けが簡単且つ正確に行なうことができる。このため、従来のように検査位置情報Bをリーダライタ4に別途入力する手間を省くことができ、効率よく検査作業を行うことができる。したがって、検査データの間違いを減らすことができるため、検査精度を向上させる効果を奏する。
また、漏水検査時に、バーコード10の検査位置情報Bに対応して選択された無線ICタグ20の検査情報のみをリーダライタ4で読み取って記録できる。つまり選択されていない無線ICタグ20を読みとって検査することができないため、検査位置情報Bに対応した検査箇所の検査情報を確実に関連付けることができる。
【0020】
次に、本発明による第二の実施の形態による無線ICタグを用いた配管漏水検査方法について第一の実施の形態の図1を用いて説明する。
図1に示す第一の実施の形態において漏水検査前にリーダライタ4に組合せ情報Rを予め入力させ特定の無線ICタグ20のみを検知できるようにしているが、このような方法に代えて第二の実施の形態では、検査時に組合せ情報Rが予め記録されていないリーダライタ4を使用し、検査箇所Aに対応するバーコード10と無線ICタグ20とをリーダライタ4で読み取ることで双方の情報を関連付けさせ、リーダライタ4に表示、記録させておくものである。
第二の実施の形態では、第一の実施の形態と同様にバーコード10をリーダライタ4で読み込むだけの作業でバーコード付き配管図面3上の検査箇所と無線ICタグ20のタグ情報Tとを関連付けが簡単且つ正確に行なうことができる。検査箇所に漏水があれば、漏水箇所を特定できる。そして、検査位置情報Bをリーダライタ4に手作業等で入力する手間を省くことができ、簡便に効率よく検査作業を行うことができる。したがって、本第二の実施の形態でも検査データの間違いを減らすことができるため、検査精度を向上させる効果を奏する。
【0021】
以上、本発明による無線ICタグを用いた配管漏水検査方法の第一及び第二の実施の形態について説明したが、本発明は上記の第一及び第二の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第一及び第二の実施の形態ではリーダライタ4と相互に通信可能な無線ICタグ20としているが、リーダライタ4による読み取り専用の無線ICタグであっても構わない。要は、無線ICタグの浸水によりリーダライタ4で無線ICタグの読み取りができなければよいのである。
さらに、本第一及び第二の実施の形態では配管検査を建物内の配管1に適用しているが、この用途に限定されることはなく、他に、例えば地下に埋設される配管などであってもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施の形態による配管漏水検査方法を示す概要図である。
【図2】無線ICタグの平面図である。
【図3】配管に貼り付けられた無線ICタグとリーダライタとの交信状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 配管
3 バーコード付き配管図面
4 リーダライタ
5 コンピュータ
10 バーコード
20 無線ICタグ
B 検査位置情報
T タグ情報(識別情報)
R 組合せ情報




【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管における漏水の検査箇所に非防水型の無線ICタグを貼り付けて、リーダライタによって該無線ICタグを読み取り、前記リーダライタと前記無線ICタグとの交信状態から検査情報を検出するようにした無線ICタグを用いた配管漏水検査方法であって、
検査位置情報をコード化させたバーコードを配管系統図に貼り付けたバーコード付き配管図面を設け、
前記検査箇所に対応する前記バーコードと前記無線ICタグとを前記リーダライタで読み取り、
前記バーコードの検査位置情報と、前記無線ICタグの識別情報とを関連付けるようにしたことを特徴とする無線ICタグを用いた配管漏水検査方法。
【請求項2】
配管における漏水の検査箇所に非防水型の無線ICタグを貼り付けて、リーダライタによって該無線ICタグを読み取り、前記リーダライタと前記無線ICタグとの交信状態から検査情報を検出するようにした無線ICタグを用いた配管漏水検査方法であって、
検査位置情報をコード化させたバーコードを配管系統図に貼り付けたバーコード付き配管図面を設け、
検査箇所に対応する前記バーコードの検査位置情報と、前記無線ICタグの識別情報とを関連付けした情報を前記リーダライタに入力しておき、任意の検査箇所の前記バーコードを前記リーダライタで読み取ったときに、前記バーコードに対応する前記無線ICタグが選択され、該選択された無線ICタグのみを検査可能としたことを特徴とする無線ICタグを用いた配管漏水検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−147356(P2007−147356A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340004(P2005−340004)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】