説明

無臭セレン化合物

【課題】使用上問題となる臭気を有さず、セレノ化反応等に使用可能なセレン化合物及び該セレン化合物を含んでなるセレノ化反応用試薬を提供する。
【解決手段】下記一般式[1]で示される化合物。


(式中、RはC1〜6のアルキル基、C1〜6のアルコキシ基、C6〜14のアリール基又はC7〜15のアラルキル基を表し、Rは置換基を有していてもよいC6〜14の2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは−Se−X、−SeX、又は


を表し、Yの各基に於けるXはハロゲン原子を、Rは上記と同じものを表し、Rも上記と同じものを表す。)、上記化合物を含んでなるセレノ化反応用試薬及び該試薬と酸化剤とからなる試薬キット、上記化合物を用いた、セレノ化反応方法、セレノラクトン化反応方法及びセレノヒドロキシル化反応方法、並びにα,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−エポキシカルボニル化合物及びエーテル化合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用上問題となる臭気を有さないセレン化合物、該セレン化合物を使用したセレノ化反応方法、セレノラクトン化反応方法及びセレノヒドロキシル化反応方法、並びに上記セレン化合物を用いた、α,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−エポキシカルボニル化合物及びエーテル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香環を有するセレン化合物であるジフェニルジセレニド、ベンゼンセレネニルクロライド、ベンゼンセレネニルブロマイド等は、α,β−不飽和カルボニル化合物の合成(製造)等に有用なものであり、セレノ化反応用試薬として知られている。しかしながら、これらセレン化合物は独特の極めて強い臭気を有するため、その取り扱いが困難であるという問題点を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の如き状況に鑑みなされたもので、使用上問題となる臭気を有さず、セレノ化反応等に使用可能なセレン化合物、該セレン化合物を含んでなるセレノ化反応用試薬、該セレン化合物を使用したセレノ化反応方法、セレノラクトン化反応方法及びセレノヒドロキシ化反応方法、並びに該セレン化合物と酸化剤を用いたα,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−エポキシカルボニル化合物及びエーテル化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
「下記一般式[1]で示される化合物。

【0005】
(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜14のアリール基又は炭素数7〜15のアラルキル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは−Se−X、−SeX、又は

【0006】
を表し、Yの各基に於けるXはハロゲン原子を、Rはそれぞれ独立して上記と同じものを表し、Rも上記と同じものを表す。)」、
「一般式[1]で示される化合物を含んでなるセレノ化反応用試薬」、
「塩基又は還元剤の存在下、カルボニル基を有する化合物又はハロゲン原子を有する化合物に、一般式[1]で示される化合物を接触させることを特徴とする、セレノ化反応方法」、
「酸化剤の存在下、不飽和結合及びカルボキシル基を有する直鎖状の脂肪族炭化水素化合物に、一般式[1]で示される化合物を接触させることを特徴とする、セレノラクトン化反応方法」、
「還元剤の存在下、エポキシ基を有する化合物に、一般式[1]で示される化合物を接触させることを特徴とする、セレノヒドロキシル化反応方法」、
「塩基又は還元剤の存在下、カルボニル基を有する化合物に、一般式[1]で示される化合物を接触させるた後或いは同時に、酸化剤を接触させることを特徴とする、α,β−不飽和カルボニル化合物又はα,β−エポキシカルボニル化合物の製造方法」、
「第一の酸化剤の存在下、α,β−不飽和アミド、α,β−不飽和エステル又はα,β−不飽和ニトリルに、アルコールと一般式[1]で示される化合物を接触させた後或いは同時に、第二の酸化剤を接触させることを特徴とする、エーテル化合物の製造方法」及び
「上記セレノ化反応用試薬と、酸化剤を含んでなる酸化反応用試薬とからなる酸化反応用試薬キット」に関する。
【発明の効果】
【0007】
一般式[1]で示される化合物は使用上問題となる臭気を有さないが、従来のセレン化合物と同様の反応に使用でき、また、同等の反応性を有し、更にこれをセレノ化反応、セレノラクトン化反応、セレノヒドロキシル化反応に使用してもセレン特有の強い臭気を発しないという効果を奏する。また、一般式[1]で示される化合物と酸化剤とを併せて使用することにより、臭気を発することなく、α,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−エポキシカルボニル化合物及びエーテル化合物を容易に製造することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】

【0009】
本発明に係る一般式[1]に於いてRで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状のものが挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソピロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1、1−ジメチル−2−メチルプロピル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、tert-ブチル基、1、1−ジメチル−2−メチルプロピル基等が好ましく、特にメチル基、tert-ブチル基等が好ましい。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状でも分枝状でもよく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられ、中でもメトキシ基等が好ましい。また、炭素数6〜16のアリール基としては、炭素数6〜14のものが好ましいものとして挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられ、中でもフェニル基等が好ましい。炭素数7〜15のアラルキル基としては、炭素数7〜10のものが好ましいものとして挙げられ、具体的には、例えばトリル基、キシリル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、1-メチル-3-フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等が挙げられ、中でもキシリル基が好ましい。
【0010】
上記Rの具体例の中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、メトキシ基、フェニル基、ベンジル基及びキシリル基等が好ましいものとして挙げられ、一般式[1]中の下記基

【0011】
の具体例としては、上記具体例を組み合わせた、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、(1、1−ジメチル−2−メチルプロピル基)ジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリp−キシリルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルメトキシフェニルシリル基等が好ましいものとして挙げられる。
【0012】
本発明に係る一般式[1]に於いて、Rで表される置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基の2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基が好ましく、特にp-フェニレン基が好ましい。
【0013】
上記Rで表される2価の芳香族炭化水素基は置換基を有していないものがより好ましいが、置換基を有する場合の置換基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基、

(但し、Rは夫々独立して前記と同じ。)で示される基等が挙げられる。また、これら置換基の数は通常1〜4個、好ましくは1〜2個、更に好ましくは1個である。尚、ここでいう炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分枝状又は環状の何れでもよく、具体的には例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソピロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙がられ、炭素数6〜14のアリール基としては、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状でも分枝状でもよく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0014】
また、Rで表される2価の芳香族炭化水素基が環状のアルキル基を置換基として有する場合、該置換基と2価の芳香族炭化水素基がそれらが有する2つの隣り合う炭素原子を共有して結合する形をとってもよい。
【0015】
本発明に係る一般式[1]に於いて、−Se−X又は−SeX中のXで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。尚、−Se−Xはセレンが2価の場合に、−SeXはセレンが4価の場合に構成される。
【0016】
本発明に係る一般式[1]に於いて、Yが−Se−X又は−SeXの場合には、一般式[1]で示される化合物は、例えば下記一般式[1]-1又は[1]-2

【0017】

【0018】
(式中、R、R及びXは前記と同じ。)で表され、その具体例としては例えば
【0019】

【0020】

【0021】

【0022】

等が挙げられる。
【0023】
また、Yが下記一般式[2]で示される基

の場合には、一般式[1]で示される化合物は、例えば下記一般式[1]-3
【0024】

(式中、R及びRは前記と同じ。)で表され、中でも、製造が容易な左右対称の化合物が好ましい。その具体例としては例えば
【0025】

等が挙げられる。
【0026】
本発明の一般式[1]で示される化合物のうち、Yが一般式[2]で示される基である化合物(以下、本発明のジセレナイド化合物と表記する場合がある)の製造方法としては、例えば、下記一般式[4]

【0027】
(式中、R、R及びXは前記と同じ。)で示される化合物とマグネシウムを、要すれば活性化剤の存在下で反応させてグリニヤール試薬を得、該グリニヤール試薬を要すれば適当な溶媒中でセレンと反応させた後、更に反応試薬を加えることにより得られる(製造される)。
【0028】
尚、ここで中間体として得られるグリニヤール試薬とは、下記一般式[5]で表される。

【0029】
また、該グリニヤール試薬を得るための上記マグネシウムの使用量は、上記一般式[4]で示される化合物1当量に対して通常通常0.5〜5当量、好ましくは通常0.7〜3当量、より好ましくは1〜2当量である。また、活性化剤としては、例えばヨウ素、ジブロモエタン等が挙げられ、これらは反応系に少量添加されていればよく、反応溶液中に通常1〜10mg、好ましくは1〜5mg添加されればよい。尚、上記グリニヤール試薬を得るための反応は、通常−20〜150℃、好ましくは30〜80℃で、通常0.5〜20時間好ましくは1〜3時間なされればよい。
【0030】
上記本発明のジセレナイド化合物の製造方法に於ける、グリニヤール試薬とセレンの反応は、通常−20〜150℃、好ましくは0〜30℃で、通常10分〜30時間、好ましくは20〜30時間反応させればよい。この際に用いられるセレンは、どのような形状であってもよいが、反応速度を上げるために粉末状のものを使用することが好ましい。またその使用量は、一般式[4]で示される化合物1当量に対して通常0.5〜5当量、好ましくは通常0.7〜3当量、より好ましくは1〜2当量である。
【0031】
また、要すれば用いられる溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられ、中でもTHF、ジエチルエーテル等が好ましいものとして挙げられる。その使用量は、使用するセレン1gに対して通常0.1〜1000ml、好ましくは0.5〜100ml、より好ましくは1〜10mlである。
【0032】
グリニヤール試薬とセレンの反応後に添加される反応試薬としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム、臭素等が挙げられ、その使用量は、セレン1g原子に対して通常0.25〜10当量、好ましくは0.5〜5当量、より好ましくは0.5〜1当量である。尚、反応試薬を反応させるときは、通常−20〜150℃、好ましくは0〜30℃で、通常0.5〜20時間好ましくは1〜2時間反応させればよい。
【0033】
本発明の一般式[1]で示される化合物に於いて、Yが−Se−Xである化合物(以下、本発明のセレネニルハロゲン化合物と略記する場合がある)の製造方法は、本発明のジセレナイド化合物を適当な溶媒に溶解した後、ハロゲン化剤を添加反応させることによりなされる。尚、該反応溶液は反応をさせると、本発明のセレネニルハロゲン化合物が生成した時点で深赤色となるので、深赤色に変化した時点を反応終了とすれば、本発明のセレネニルハロゲン化合物を得ることができる。
【0034】
本発明の一般式[1]で示される化合物に於いて、Yが−SeXである化合物(以下、本発明のセレネニルトリハロゲン化合物と略記する場合がある)の製造方法は、上記の本発明のセレネニルハロゲン化合物の製造方法と同様に、本発明のジセレナイド化合物を適当な溶媒に溶解した後、ハロゲン化剤を添加反応させることによりなされるが、該反応溶液は深赤色となった後、本発明のセレネニルトリハロゲン化合物が生成した時点で無色となるので、この時点で反応を終了することにより、本発明のセレネニルトリハロゲン化合物を得ることができる。
【0035】
上記の両製造方法に於ける適当な溶媒とは、本発明のジセレナイド化合物を溶解し得るものであればよく、具体的には例えば、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、臭化メチレン、トリブロモメタン等が挙げられ、その用量は、通常ジセレナイド化合物1gに対して5〜100ml、好ましくは5〜30mlである。また、ハロゲン化剤としては、具体的には、塩素、塩化スルフリル、臭素、ヨウ素等が挙げられ、その用量は、本発明のセレネニルハロゲン化合物を得る場合には、ジセレナイド1当量に対して、1〜5当量、好ましくは1〜3当量であり、本発明のセレネニルトリハロゲン化合物を得る場合には、ジセレナイド1当量に対して、3〜10当量、好ましくは3〜5当量である。上記製造方法に於ける反応温度は、通常−20〜150℃、好ましくは0〜30℃である。
【0036】
本発明の一般式[1]で示される化合物は、従来用いられていたセレン化合物と同様にセレノ化反応用試薬として用いることが出来る。その反応性は従来のセレン化合物と同等であるにもかかわらず、セレン特有の臭気を発しないという優れた効果を有する。また、酸化反応用試薬(酸化剤)と併せて用いることで酸化反応に用いることもできる。
【0037】
本発明のセレノ化反応用試薬は、上記の如き一般式[1]で示される化合物を含有するものであれば固体であっても液体であってもよい。尚、液体として供する場合、一般式[1]で示される化合物は、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等の溶媒中に溶解されるのが望ましい。該液体状の試薬中に含まれる一般式[1]で示される化合物の濃度は、下記の反応の項で示されているような濃度となるものであれば特に限定はされない。尚、セレノ化反応用試薬とは、セレノ基を導入する反応用の試薬を意味するものであり、具体的には例えばセレノ化反応、セレノラクトン化反応、セレノヒドロキシル化反応に用いることが出来る試薬であることを意味する。
【0038】
本発明の酸化反応用試薬キットとしては、上記セレノ化反応用試薬と、酸化剤を含んでなる酸化反応用試薬とからなるものであればよく、これら以外に、通常この分野で用いられている触媒や反応用溶媒等を含んでいてもよい。尚、酸化反応用試薬に於ける酸化剤としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされないが、好ましいものとしては、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム、過酢酸、t-ブチルヒドロペルオキシド、オゾン、3-アリール-2-ベンゼンスルホニルオキサジリジン等が挙げられ、中でも過酸化水素が特に好ましい。また、酸化剤は、反応基質1当量に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量となるようにして用いられる。尚、ここでいう反応基質とは、出発物質のことであり、例えばセレノ化反応等の基質となるものを意味する。以下、反応基質とは同様の意味で用いられる。
【0039】
本発明の一般式[1]で示される化合物は、例えばセレノ化反応、セレノラクトン化反応、セレノヒドロキシル化反応に供することができ、セレノ化反応は、塩基又は還元剤の存在下、カルボニル基を有する化合物に本発明の一般式[1]で示される化合物を接触させることにより(下記(1)セレノ化反応で詳述)、或いはハロゲン原子を有する化合物を本発明の一般式[1]で示される化合物を接触させることにより(下記(2)セレノ化反応で詳述)行うことができ、セレノラクトン化反応は、酸化剤の存在下、不飽和結合及びカルボキシル基を有する脂肪族炭化水素化合物に本発明の一般式[1]で示される化合物を接触させることにより行うことができ(下記(3)セレノラクトン化反応で詳述)、セレノヒドロキシル化反応は、還元剤の存在下、エポキシ基を有する化合物に本発明の一般式[1]で示される化合物を接触させることにより行うことができる(下記(4)セレノヒドロキシル化反応で詳述)。
【0040】
以下に、これらの反応を詳細に説明する。
(1)セレノ化反応(反応基質:カルボニル基を有する化合物)
塩基又は還元剤の存在下、要すれば適当な溶媒中、カルボニル基を有する化合物を反応基質とし、これに本発明の一般式[1]で示される化合物とを反応させることにより、反応基質中のカルボニル基のα位の炭素に下記で示されるセレノ基

【0041】
(但し、R及びRは前記と同じ。)を導入した化合物を得ることが出来る。
【0042】
ここで用いられる塩基又は還元剤としては、例えば水素化ナトリウム(NaH)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム等の塩基、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)等の還元剤が好ましいものとして挙げられ、その使用量は、反応基質の量に準じて調節すればよく、反応基質1当量に対して通常1〜3当量、好ましくは1.5〜2当量用いればよい。また、本発明の一般式[1]で示される化合物の量は、通常反応基質1当量に対して通常1〜2当量用いればよい。
上記反応に於いて要すれば用いられる溶媒は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされないが、例えばテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ヘキサン、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられ、それらは単独でも、適宜組み合わせて用いてもよい。その使用量は、反応基質の量に準じて調節すればよく、通常反応基質1gに対して0.5〜100ml、好ましくは1〜10mlである。また、上記反応の反応温度及び反応時間は、用いられる反応基質やその量等によって適宜設定すればよく、通常−100〜150℃、10分〜20時間、好ましくは10〜300分の間で設定される。尚、上記溶媒及び反応温度は、通常、塩基又は還元剤の種類に応じて決定(設定)されればよく、具体的には例えば塩基又は還元剤としてLDAを用いる場合、溶媒はTHFを使用し、反応温度は−80〜−70℃に設定され、例えばNaHを用いる場合、溶媒はTHFを使用し、反応温度は0〜10℃に設定され、例えば水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール又は水、或いはこれらにTHF、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、ベンゼンを混合したものを使用し、反応温度は0〜10℃に設定するのが望ましい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている反応を促進するための例えば臭素等の反応促進剤等を添加しても構わない。
【0043】
上記の如きセレノ化反応の例として、例えば以下の一般式で示されるカルボニル基を有する化合物を反応基質として用いた場合の反応式を以下に示す。

(但し、R及びRは前記と同じ。R3はそれぞれ独立して、水素、置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は天然テルペンノイド類由来の一価の基を表す。)
【0044】
反応式[7]のR3で示される置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜40のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ペンタデシル基、n-イコサニル基、n-トリアコンタニル基、n-テトラコンタニル基等が挙げられ、置換基としては、炭素数6〜14のアリール基等が挙げられる。ここでいう炭素数6〜14のアリール基としては、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0045】
3で示される置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
【0046】
3で示される置換基を有するアリール基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基を置換基として有するフェニル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基或いは例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい例えばシクロヘキシル基、シクロペンチル基等の飽和脂肪族環の1〜5個と縮合環を形成したフェニル基、アセチル基等の低級アシル基を環の置換基として有するフェニル基、これらのフェニル基が置換基を有していてもよい窒素原子を環形成異性原子として含有する飽和環状基やキノン環と縮合乃至結合したもの等が挙げられる。
【0047】
3で示される置換基を有していてもよいアラルキル基のアラルキル基としては、通常炭素数7〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられ、置換基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、例えばメチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0048】
3で示される天然テルペンノイド類由来の一価の基としては、例えばジテルペノイド、トリテルペン、ステロイド、アルカロイド等のから誘導される一価の有機残基等が挙げられる。
【0049】
上記セレノ化反応で用いられるカルボニル基を有する化合物としては、カルボニル基を有する化合物であれば特に限定はされないが、具体的には、例えば

(式中、Rは上記と同じ)
【0050】


(式中、Rは上記と同じ)
【0051】


(式中、Rは上記と同じ)
【0052】


(式中、Rは上記と同じ)
【0053】


等が挙げられる。
【0054】
(2)セレノ化反応(反応基質:ハロゲン原子を有する化合物)
還元剤の存在下、要すれば適当な溶媒中、ハロゲン原子を有する化合物を反応基質として、これに本発明の一般式[1]で示される化合物とを反応させることにより、反応基質のハロゲン原子が下記で示されるセレノ基

【0055】
(但し、R及びRは前記と同じ。)に置換された化合物を得ることが出来る。
【0056】
ここで用いられる還元剤としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)等が好ましいものとして挙げられ、その使用量は、反応基質の量に準じて調節すればよく、通常反応基質1当量に対して0.25〜5当量、好ましくは1〜2当量用いればよい。また、本発明の一般式[1]で示される化合物の量は、通常反応基質1当量に対して通常1〜2当量用いればよい。
【0057】
上記反応に於いて、要すれば用いられる溶媒としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされず、前記(1)セレノ化反応(反応基質:カルボニル基を有する化合物)の項で記載している溶媒と同じものが挙げられ、その使用量も前記同様に反応基質の量に準じて設定されればよい。また、上記反応の反応温度及び反応時間は、用いられる反応基質やその量等によって適宜設定すればよく、通常−100〜150℃、10分〜24時間の間で設定される。尚、上記溶媒及び反応温度は、還元剤の種類に応じて決定(設定)されればよく、具体的には例えば還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール又は水、或いはこれらにTHF、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、ベンゼンを混合したものを使用し、反応温度は0〜10℃に設定するのが望ましい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている反応を促進するための例えば臭素等の反応促進剤等を添加しても構わない。
上記の如きセレノ化反応の例として、例えば以下の一般式で示されるハロゲン原子を有する化合物を反応基質として用いた場合の反応式を以下に示す。
【0058】

(但し、式中のR、R、R及びXは前記と同じ。)
【0059】
前記のハロゲン原子を有する化合物としては、ハロゲン原子を有する化合物であれば特に限定はされないが、例えば

(但し、式中のR及びXは前記と同じ。)等が挙げられ、好ましいものとしては、
【0060】

【0061】
(但し、式中のXは前記と同じ。mは、20以下の自然数を表す。)等が挙げられ、具体的には例えば、クロロメタン、クロロエタン、クロロプロパン、クロロペンタン、クロロヘキサン、クロロヘプタン、クロロオクタン、クロロノナン、クロロデカン、クロロドデカン、クロロペンタデカン、クロロイコサン、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモプロパン、ブロモペンタン、ブロモヘキサン、ブロモヘプタン、ブロモクタン、ブロモノナン、ブロモデカン、ブロモドデカン、ブロモペンタデカン、ブロモイコサン、ヨードメタン、ヨードエタン、ヨードプロパン、ヨードペンタン、ヨードヘキサン、ヨードヘプタン、ヨードクタン、ヨードノナン、ヨードデカン、ヨードドデカン、ヨードペンタデカン、ヨードイコサン等が挙げられる。
【0062】
(3)セレノラクトン化反応
酸化剤の存在下、要すれば適当な溶媒中、反応基質である不飽和結合及びカルボキシル基を有する脂肪族炭化水素化合物と本発明の一般式[1]で示される化合物とを反応させることにより、下記で示されるセレノ基

【0063】
(但し、式中のR及びRは前記と同じ。)が導入されたラクトン環(セレノラクトン環)を有する化合物を得ることが出来る。尚、上記反応により得られるセレノラクトン環のセレノ基が脱離しやすい化合物(例えばセレノ基が直接ラクトン環に結合している化合物等)の場合には、上記反応を長時間(通常1〜48時間、好ましくは10〜30時間)行うことにより、セレノラクトン環からセレノ基が脱離したラクトン環を有する化合物を得ることができる。
【0064】
ここで用いられる酸化剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)等が好ましいものとして挙げられ、その使用量は、反応基質の量に準じて調節すればよく、通常反応基質1当量に対して0.5〜3当量、好ましくは0.75〜2当量用いればよい。また、本発明の一般式[1]で示される化合物の量は、通常反応基質1当量に対して通常1〜2当量用いればよい。
【0065】
上記反応に於いて、要すれば用いられる溶媒は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされず、前記セレノ化反応(反応基質:カルボニル基を有する化合物)の項で記載している溶媒と同じものが挙げられ、その使用量も前記同様に反応基質の量に準じて設定すればよい。また、上記反応の反応温度及び反応時間は、用いられる反応基質やその量等によって適宜設定すればよく、通常−100〜150℃、10分〜24時間の間で設定される。尚、上記溶媒及び反応温度は、酸化剤の種類に応じて決定(設定)されればよく、具体的には例えば酸化剤として過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム又は過硫酸カリウムを用いる場合、溶媒はアセトニトリルを使用し、反応温度は通常60〜80℃に、例えばDDQを用いる場合、溶媒はアセトニトリルを使用し、反応温度は通常20〜30℃に設定するのが望ましい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている反応を促進するための例えば臭素等の反応促進剤等を添加しても構わない。
【0066】
上記の如きセレノラクトン化反応の例として、例えば以下の一般式で示される不飽和結合及びカルボキシル基を有する脂肪族炭化水素化合物を反応基質として用いた場合の反応式を以下に示す。
【0067】

(但し、式中のR及びRは前記と同じ。)
【0068】
また、同様に長時間反応させてセレノ基を脱離させてラクトン環を有する化合物を得る場合の反応式を以下に示す。
【0069】

【0070】
前記の不飽和結合及びカルボキシル基を有する脂肪族炭化水素化合物は、通常炭素数4〜40、好ましくは5〜20のものであり、具体例としては、例えば

【0071】

【0072】

【0073】


等が挙げられる。
【0074】
(4)セレノヒドロキシル化反応
還元剤の存在下、要すれば適当な溶媒中、反応基質であるエポキシ基を有する化合物に本発明の一般式[1]で示される化合物を反応させることにより、反応基質のエポキシ基が開裂して水酸基及び
【0075】

(但し、R及びRは前記と同じ。)で示される基が導入された化合物を得ることが出来る。
【0076】
ここで用いられる還元剤としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム等が好ましいものとして挙げられ、その使用量は、反応基質の量に準じて調節すればよく、通常反応基質1当量に対して0.25〜3当量、好ましくは0.5〜2当量用いればよい。また、本発明の一般式[1]で示される化合物の量は、通常反応基質1当量に対して通常1〜2当量用いればよい。
【0077】
上記反応に於いて、要すれば用いられる溶媒は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされず、前記(1)セレノ化反応(反応基質:カルボニル基を有する化合物)の項で記載している溶媒と同じものが挙げられ、その使用量も前記同様に反応基質の量に準じて設定すればよい。また、上記反応の反応温度及び反応時間は、用いられる反応基質やその量等によって適宜設定すればよく、通常−100〜150℃、10分〜24時間の間で設定される。尚、上記溶媒及び反応温度は、還元剤の種類に応じて決定(設定)されればよく、具体的には例えば還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール又は水、或いはこれらにTHF、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、ベンゼンを混合したものを使用し、反応温度は0〜10℃に設定すればよい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている反応を促進するための例えば臭素等の反応促進剤等を添加しても構わない。
上記の如きセレノヒドロキシル化反応の例として、例えば以下の一般式で示されるエポキシ基を有する化合物を反応基質として用いた場合の反応式を以下に示す。
【0078】

(但し、式中のR、R及びRは前記と同じ。)
【0079】
前記エポキシ基を有する化合物の具体例としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定はされないが、具体的には、例えば
【0080】

(但し、式中のRは前記と同じ。)
【0081】

【0082】

(但し、式中のRは前記と同じ。)等が挙げられる。
【0083】
本発明の一般式[1]で示される化合物は、酸化剤と併せて用いることにより、α,β−不飽和カルボニル化合物の製造、α,β−エポキシカルボニル化合物の製造、並びにエーテル化合物の製造を可能とする。α,β−不飽和カルボニル化合物は、塩基又は還元剤の存在下、カルボニル基を有する化合物に本発明の一般式[1]で示される化合物を接触させた後或いは同時に、酸化剤を接触させることにより製造し得(下記(5)に詳述)、α,β−不飽和エポキシカルボニル化合物は、塩基又は還元剤の存在下、カルボニル基を有する化合物に本発明の一般式[1]で示される化合物を接触させた後或いは同時に、更に酸化剤を接触させることにより製造し得(下記(6)に詳述)、エーテル化合物は、第一の酸化剤の存在下、α,β−不飽和アミド、α,β−不飽和エステル又はα,β−不飽和ニトリルに、アルコールと本発明の一般式[1]で示される化合物を接触させた後或いは同時に、更に第二の酸化剤を接触させることにより(下記(7)に詳述)、製造し得る。
上記の製造方法について以下に詳細に説明する。
【0084】
(5)α,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法
塩基又は還元剤の存在下、要すれば適当な溶媒中、カルボニル基を有する化合物と本発明の一般式[1]で示される化合物とを反応させ、セレノ基が導入された化合物(セレノ化化合物)を得、更にそれを、適当な溶媒中で酸化剤と反応させることにより、上記のカルボニル基を有する化合物に対応したα,β−不飽和カルボニル化合物を製造することが出来る。尚、上記酸化剤は、カルボニル基を有する化合物と本発明の一般式[1]で示される化合物との反応(第一の反応)の際、同時に添加してもよい。その際の反応温度はセレノ化化合物を得るまでの方法に準じて設定すればよく、反応時間は、通常30分〜20時間の間で設定される。
【0085】
上記セレノ化化合物は、(1)のセレノ化反応により得られるものであり、セレノ化化合物を得るまでの方法は、前記(1)セレノ化反応の記載に準じて行えばよい。また、酸化剤を第一の反応の際同時に添加する場合も、酸化剤を添加する以外は同様に前記(1)のセレノ化反応に準じて反応を行えばよい。また、カルボニル基を有する化合物も前記(1)セレノ化反応で記載のものと同じものが挙げられる。
【0086】
セレノ化化合物を得た後(若しくは実質的に得るために)用いられる適当な溶媒としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされず、セレノ化化合物を得るまでの方法に用いられるものと同じものであっても、異なるものであっても構わない。具体的には、例えばテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ヘキサン、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられ、それらは単独でも、適宜組み合わせて用いてもよい。その使用量は、セレノ化化合物(若しくは反応基質)の量に準じて調節すればよく、通常セレノ化化合物(若しくは反応基質)1gに対して0.5〜100ml、好ましくは1〜10mlである。
【0087】
また、ここで用いられる酸化剤としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされないが、好ましいものとしては、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム、過酢酸、t-ブチルヒドロペルオキシド、オゾン、3-アリール-2-ベンゼンスルホニルオキサジリジン、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等が挙げられ、中でも過酸化水素が特に好ましい。これら酸化剤の使用量は、酸化剤の強さにより異なるが、セレノ化化合物1当量に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。例えば、過酸化水素を酸化剤として用いた場合には、セレノ化化合物1当量に対して、通常1〜3当量、好ましくは1〜2当量を添加すればよい。
【0088】
セレノ化化合物と酸化剤の反応温度は、通常−80〜100℃、好ましくは0〜30℃であり、反応時間は、通常10分〜24時間、好ましくは10〜120分であり、これらは用いられる酸化剤とその量等を考慮して適宜設定すればよい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている酸化反応を促進するための例えばピリジン等の反応促進剤等を添加しても構わない。また、反応の進行度を調べるため、反応液を自体公知の方法、例えば薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等で分析してもかまわない。尚該進行度の分析については、以下の(6)α,β−エポキシカルボニル化合物の製造方法及び (7)エーテル化合物の製造でも同様にして行うことができる。
【0089】
上記の如くして得られるα,β−不飽和カルボニル化合物の反応式の一般例を以下に示す。

(但し、式中のR、R及びRは前記と同じ。)
【0090】
このようにして得られるα,β−不飽和カルボニル化合物の具体例としては、例えば

(但し、式中のRは前記と同じ。)
【0091】


(但し、式中のRは前記と同じ。)
【0092】


(但し、式中のRは前記と同じ。)
【0093】


(但し、式中のRは前記と同じ。)等が挙げられる。
【0094】
(6)α,β−エポキシカルボニル化合物の製造方法
塩基又は還元剤の存在下、要すれば適当な溶媒中、カルボニル基を有する化合物を反応基質とし、これと本発明の一般式[1]で示される化合物とを反応させ、セレノ基が導入された化合物(セレノ化化合物)を得、更にそれを、適当な溶媒中で酸化剤と反応させることにより、上記のカルボニル基を有する化合物に対応するα,β−不飽和エポキシカルボニル化合物を製造することが出来る。尚、上記酸化剤は、カルボニル基を有する化合物と本発明の一般式[1]で示される化合物との反応の際、同時に添加してもよい。その際の反応温度はセレノ化化合物を得るまでの方法に準じて設定すればよく、反応時間は、通常30分〜24時間の間で設定される。
【0095】
該製造方法は、前記(5)のα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法とほぼ同様に操作を行えばよいが、α,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法よりも酸化剤の量を増やし、反応時間を長くすることによって、α,β−不飽和エポキシカルボニル化合物を得ることが出来る。よって、反応基質であるカルボニル基を有する化合物も同様に前記(1)セレノ化反応の項で記載のものと同じものが挙げられ、セレノ化化合物を得た後に(若しくは実質的に得るために)用いられる適当な溶媒は、前記(5)のα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法で記載されているものと同じものが挙げられ、使用量も前記の通りである。また、酸化剤も、前記と同じものが挙げられる。但し、その酸化剤の使用量は、酸化剤の強さにより異なるが、セレノ化化合物(若しくは反応基質)1当量に対して、通常1〜10当量、好ましくは2〜5当量である。例えば、過酸化水素を酸化剤として用いた場合には、セレノ化化合物(若しくは反応基質)1当量に対して、通常2〜3当量を添加すればよい。
【0096】
セレノ化化合物と酸化剤の反応温度は、通常−80〜100℃、好ましくは0〜30℃であり、反応時間は、通常30分〜24時間、好ましくは40〜180分であり、これらは用いられる酸化剤とその量等を考慮して適宜設定すればよい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている酸化反応を促進するための例えばピリジン等の反応促進剤等を添加しても構わない。
【0097】
上記の如くして得られるα,β−不飽和カルボニル化合物の反応式の一般例を以下に示す。

(但し、式中のR、R及びRは前記と同じ。)
【0098】
このようにして得られるα,β−不飽和エポキシカルボニル化合物の具体例としては、例えば

(但し、式中のEtはエチル基を表す。)
【0099】

(但し、式中のRは前記と同じ。)
【0100】

(但し、式中のRは前記と同じ。)
【0101】

(但し、式中のRは前記と同じ。)
等が挙げられる。
【0102】
(7)エーテル化合物の製造
第一の酸化剤の存在下、要すれば適当な溶媒中、β、γ−不飽和エステル、β、γ−不飽和アミド又はβ、γ−不飽和ニトリルを反応基質とし、これらとR−OH(但し、Rは置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)で示される化合物と本発明の一般式[1]で示される化合物とを反応させ、β位にセレノ基、γ位に−OR基が導入された化合物(セレノ化エーテル化合物)を得、更にそれを、適当な溶媒中で第二の酸化剤と反応させることにより、上記のカルボニル基を有する化合物に対応したγ位にアルコキシ基が導入された、α,β−不飽和エステル、α,β−不飽和アミド又はα,β−不飽和ニトリル、即ち、エーテル化合物を製造することが出来る。尚、第二の酸化剤は、反応基質、R−OHで示される化合物及び本発明の一般式[1]で示される化合物の反応の際、同時に添加してもよい。この場合、第一の酸化剤と第二の酸化剤を、同時に添加することになるが、これら酸化剤は同じものでも異なるでも何れでもよい。また、その際の反応温度はセレノ化エーテル化合物を得るまでの方法に準じて設定すればよく、反応時間は、通常10分〜24時間の間で設定される。
【0103】
セレノ化エーテル化合物を得る際に用いられる第一の酸化剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等が好ましいものとして挙げられ、その使用量は、反応基質の量に準じて調節すればよく、通常反応基質1当量に対して1〜3当量、好ましくは1〜2当量用いればよい。また、セレノ化エーテル化合物を得る際に用いられる溶媒は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされず、前記(1)セレノ化反応(反応基質:カルボニル基を有する化合物)の項で記載している溶媒と同じものが挙げられ、その使用量も前記と同様に反応基質の量に準じて設定すればよい。また、エーテル化合物を得る際に用いられる溶媒も同じものが挙げられ、セレノ化エーテル化合物を得る際に用いられる溶媒と同じものを使用しても異なるものを使用しても構わない。上記反応の反応温度及び反応時間は、用いられる反応基質やその量等によって適宜設定すればよく、通常−100〜100℃、10〜500分の間で設定される。尚、上記溶媒及び反応温度は、第一の酸化剤の種類に応じて決定(設定)されればよく、具体的には例えば第一の酸化剤として過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム又は過硫酸カリウムを用いる場合、溶媒はアセトニトリルを使用し、反応温度は通常60〜80℃に設定すればよい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている酸化反応を促進するための例えばピリジン等の反応促進剤等を添加しても構わない。
【0104】
上記のR−OHで示される置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜40のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ペンタデシル基、n-イコサニル基、n-トリアコンタニル基、n-テトラコンタニル基等が挙げられる。また、アリール基としては、通常炭素数6〜16、好ましくは炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基等が挙げられ、アラルキル基としては、通常炭素数7〜15、好ましくは炭素数7〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、1-メチル-3-フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等が挙げられる。
【0105】
尚、上記アルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。ここでいう炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分枝状又は環状の何れでもよく、具体的には例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソピロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙がられ、炭素数6〜14のアリール基としては、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状でも分枝状でもよく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0106】
上記エーテル化合物を得る際に用いられる第二の酸化剤としては、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされないが、好ましいものとしては、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム、過酢酸、t-ブチルヒドロペルオキシド、オゾン、3-アリール-2-ベンゼンスルホニルオキサジリジン、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等が挙げられ、中でも過酸化水素が特に好ましい。尚、該第二の酸化剤は、第一の酸化剤と同じものを用いても構わない。これら酸化剤の使用量は、酸化剤の強さにより異なるが、セレノ化エーテル化合物1当量に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。例えば、過酸化水素を酸化剤として用いた場合には、セレノ化エーテル化合物1当量に対して、通常1〜3当量、好ましくは1〜2当量を添加すればよい。
【0107】
セレノ化エーテル化合物と酸化剤の反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは0〜30℃であり、反応時間は、通常10〜300分、好ましくは10〜120分であり、これらは用いられる酸化剤とその量等を考慮して適宜設定すればよい。また、上記反応に於いては、通常この分野で用いられている酸化反応を促進するための例えばピリジンや酸化反応促進剤等を添加しても構わない。
【0108】
上記の如くして得られるエーテル化合物の反応式の一般例を以下に示す。

(但し、式中のR、R、R及びRは前記と同じ。EWGは、−COOR、−CONH2、又は−CNを表す。)
【0109】
上記の、β、γ−不飽和エステル、β、γ−不飽和アミド又はβ、γ−不飽和ニトリルの具体例としては、例えば

【0110】

【0111】

等が挙げられる。
【0112】
また、上記のようにして得られるエーテル化合物の具体例としては、例えば

【0113】

【0114】

等が挙げられる。
【0115】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこらにより何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0116】
ビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニドの合成
室温でマグネシウム(268mg、11,01mmol、1.5eq)とヨウ素(5mg)と乾燥テトラヒドロフラン(7mL)の懸濁液を攪拌しながら、ヨウ素の色がなくなるまで1-ブロモ-4-トリメチルシリルベンゼン1.68g(7.34mmol、1.0eq)の一部を滴下した。滴下後に残った1-ブロモ-4-トリメチルシリルベンゼンをテトラヒドロフラン(20mL)で希釈して、更に前記溶液に滴下した。この溶液を室温で1.5時間攪拌し反応を完結させた。反応溶液にセレン粉(870mg、11.01mmol、1.5eq)を加え、24時間激しく攪拌すると反応液の色が暗赤色に変化した。セライトパッドで濾過し、濾液に冷たい塩化アンモニウム水溶液(75mL)を注ぎ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層を食塩水(2×25mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し濾過後、濃縮した。得られた粗残渣をメタノール(20mL)で溶解し、0℃で水素化ホウ素ナトリウムをゆっくり加え、同じ温度で1.5時間攪拌した後、水(100mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、食塩水(2×30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン)で分離して、ビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニドを黄色油状物で得た(1.10g、収率65%)。

【0117】
得られた2-(4-(トリメチルシリル)フェニルセレノ)-n-ブチロフェノンのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。尚、得られた化合物からは刺激臭や不快臭は感じられなかった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.60 (AB, J = 8.2 Hz, 4H, Ar-H), 7.41 (AB, J = 8.2 Hz, 4H, Ar-H), 0.25 (s, 18H, CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3):δ 139.7 (Cq-Ar), 134.0 (C-Ar), 131.9 (Cq-Ar), 130.1 (C-Ar), -1.1 (Si-3CH3).
IR (neat): 2955, 1715, 1600, 1575, 1540, 1375, 1250 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 458 (M+, 39), 456 (36), 215 (20), 214 (48), 91 (42), 73 (100).
HRMS (EI) Calcd for (C18H26Se2Si2): 457.9903; Found 457.9902.
【実施例2】
【0118】
4-(トリメチルシリル)フェニルセレネニルクロライドの合成
実施例1で得られたビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(194 mg, 0.42 mmol) を無水クロロホルム5 mLに溶解し、その溶液に5〜10℃で塩化スルフリル(102μL, 1.27 mmol) を滴下した。その後、反応溶液が深赤色に変化するのを待った後、溶媒を留去し、暗赤色油状物としての4-トリメチルシリルフェニルセレニルクロライド200mgを得た。
【0119】
得られた4-トリメチルシリルフェニルセレニルクロライドのMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。尚、得られた化合物はからは刺激臭や不快臭は感じられなかった。
MS (EI, 60 eV): 264 (M+, 37), 249 (60), 229 (12), 149 (12), 91 (30), 73 (100).
HRMS (EI): Calcd for (C6H13SeSiCl): 263.9640; Found 263.9645.
【実施例3】
【0120】
4-トリメチルシリルフェニルセレニルトリクロライドの合成
実施例1で得られたビス(4-(トリメチルシリル)フェニル) ジセレニド(194 mg, 0.42 mmol) を無水クロロホルム(5 mL) に溶解し、その溶液に5-10℃で塩化スルフリル(102μL, 1.27 mmol) を滴下した。その後、反応溶液が深赤色から明茶色になりさらに無色に変化するのを待った後、溶媒を留去し、4-トリメチルシリルフェニルセレニルトリクロライドを薄黄色結晶(mp. 65-67℃)として得た。尚、得られた化合物からは刺激臭や不快臭は感じられなかった。
【実施例4】
【0121】
セレノ化反応1
−78℃でリチウムジイソプロピルアミド(LDA、35.4mg、0.33mmol)を含むテトラヒドロフラン(THF)溶液にn-ブチロフェノン(32.5mg、0.22mmol)を含むTHF溶液(2mL)を滴下した。20分後、反応溶液にビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(70.5mg、0.15mmol)と臭素(8μl、0.15mmol)を加え、−78℃で1時間攪拌した。次いで、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)に添加溶解した後、酢酸エチル(3×30mL)で抽出、食塩水(2×30mL)、水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で分離することにより、2-(4-(トリメチルシリル)フェニルセレノ)-n-ブチロフェノンの淡黄色油状物64mgを得た(収率77%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0122】
得られた2-(4-(トリメチルシリル)フェニルセレノ)-n-ブチロフェノンのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.86 (dd, J = 1.2, 8.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.51-7.55 (m, 1H, Ar-H), 7.38-7.43 (m, 6H, Ar-H), 4.43 (t, J = 7.2 Hz, 1H, CH), 2.08 (quint, J = 7.2 Hz, 1H, CH2), 1.91 (quint, J = 7.2 Hz, 1H, CH2), 1.05 (t, J = 7.2 Hz, 3H, CH3), 0.26 (s, 9H, Si-3CH3).
13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ 196.0 (CO), 141.3, 136.4 (Cq-Ar), 135.4, 133.8, 132.7, 128.4, 128.3 (C-Ar), 128.0 (Cq-Ar), 47.7 (CH), 24.4 (CH2), 12.8 (CH3), -1.2 (Si-3CH3).
IR (neat): 2960, 1675, 1600, 1580, 1450, 1250, 1200 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 376 (M+, 19), 374 (12), 271 (12), 215 (7), 214 (9), 105 (57), 91 (27), 73 (100).
HRMS (EI): Calcd for (C19H24OSeSi): 376.0761; Found 376.0757.
【実施例5】
【0123】
セレノ化反応2
−78℃でLDA(43.4mg、0.41mmol)を含むTHF溶液に2-メチル-γ-ブチロラクトン(27.2mg、0.27mmol)を含むTHF溶液(2mL)を滴下した。20分後、反応溶液にビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(249mg、0.54mmol)を加え、−78℃で1時間攪拌した。次いで、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)に添加、溶解した後、酢酸エチル(3×30mL)で抽出、食塩水(2×30mL)、水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で分離して、2-メチル-2-(4-(トリメチルシリル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトンの淡黄色油状物76mgを得た(収率85.4%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0124】
得られた2-メチル-2-(4-(トリメチルシリル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトンのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果の測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.63 (AB, J = 8.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.48 (AB, J = 8.4 Hz, 2H, Ar-H), 4.23 (ddddd, J = 2.8, 6.8, 8.0, 9.2, 15.6 Hz, 2H, CH2), 2.36 (ddddd, J = 2.8, 6.8, 8.0, 9.2, 14.4 Hz, 2H, CH2), 1.65 (s, 3H, CH3), 0.27 (s, 4H, Si-3CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3):δ 177.5 (CO), 142.6 (Cq-Ar), 136.8, 133.9 (C-Ar), 126.3 (Cq-Ar), 64.9 (OCH2), 44.0 (Cq), 37.7 (CH2), 24.2 (CH3), -1.1 (Si-3CH3).
IR (neat): 3025, 3015, 1760, 1465, 1380, 1225 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 328 (M+, 50), 326 (25), 313 (14), 215 (100), 213 (56), 149 (14), 135 (13), 91 (48), 83 (34), 73 (34), 55 (22).
HRMS (EI) Calcd for (C14H20O2SeSi): 328.0397; Found: 328.0400.
【実施例6】
【0125】
セレノ化反応3
水素化ナトリウム(70%懸濁液 7.25mg、0.21mmol)を0℃でTHF(5mL)に溶解した溶液に、2-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル(30mg、0.18mmol)を滴下した。15分後、反応溶液にビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(48.4mg、0.105mmol)と臭素(5.4μL、0.105mmol)を加え、0℃で0.5〜1時間攪拌した。反応後、水(50mL)に注入した。ついで、酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)、食塩水(3×30mL)、水(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で分離することにより、2-オキソ-1-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-シクロヘキサンカルボン酸エチルを淡黄色結晶として得た(融点94-96℃、67mg、収率93.2%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0126】
得られた、2-オキソ-1-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-シクロヘキサンカルボン酸エチルのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.54 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.44 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 4.17 (q, J = 7.2 Hz, 2H, OCH2), 2.62-2.67 (m, 1H), 2.40-2.50 (m, 2H), 2.00-2.05 (m, 1H), 1.92 (ddd, J = 4.0, 9.2, 12.8 Hz, 1H), 1.48-1.80 (m, 3H), 1.21 (t, J = 7.2 Hz, 3H, CH3), 0.26 (s, 9H, Si-3CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3): δ 203.8 (CO), 169.1 (CO), 142.0 (Cq-Ar), 137.3, 133.4 (C-Ar), 126.4 (Cq-Ar), 62.5 (Cq), 61.8 (OCH2), 40.9, 38.0, 27.1, 23.8 (CH2), 14.0 (CH3), -1.1 (Si-3CH3).
IR (neat): 3030, 2955, 1710, 1605, 1240, 1200 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 398 (M+, 64), 396 (31), 215 (46), 123 (53), 95 (74), 73 (100), 55 (65).
HRMS (EI): Calcd for (C18H26O3SeSi): 398.0816; Found 398.0823.
【実施例7】
【0127】
セレノ化反応4
水素化ナトリウム(70%エマルジョン 7.25mg、0.21mmol)を含むTHF溶液に、0℃でTHF(5mL)に溶解した2-アセチル-γ-ブチロラクトン(23mg、0.18mmol)を滴下した。15分後、反応溶液にビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(48.4mg、0.105mmol)と臭素(5.4μL、0.105mmol)を加え、0℃で0.5〜1時間攪拌した。反応後、水(50mL)に注入した。次いで、酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)、食塩水(3×30mL)、水(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。更に、濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で分離することにより、2-アセチル-2-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトンを得た(53mg、収率83%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0128】
得られた、2-アセチル-2-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトンのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.49 (br s, 4H, Ar-H), 4.24-4.37 (m, 2H, CH2), 2.77 (ddd, J = 6.4, 9.2, 14.4 Hz, 1H, CH2), 2.65 (s, 3H, CH3), 2.09 (ddd, J = 3.2, 9.2, 14.4 Hz, 1H, CH2), 0.27 (s, 9H, Si-3CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3): δ 199.0 (CO), 172.1 (CO), 143.7 (Cq-Ar), 136.0, 134.3 (C-Ar), 126.1 (Cq-Ar), 65.4 (OCH2), 56.3 (Cq), 30.9 (CH2), 26.1 (CH3), -1.2 (Si-3CH3).
IR (neat): 3040, 2955, 1760, 1700, 1575, 1375, 1250 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 356 (M+, 19), 354 (12), 314 (31), 312 (16), 234 (33), 233 (66), 215 (19), 214 (30), 131 (83), 83 (97), 73 (100).
HRMS (EI): Calcd for (C15H20O3SeSi): 356.0347; Found 356.0344.
【実施例8】
【0129】
セレノ化反応5
ビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(62mg、0.14mmol)を0℃で無水エタノール溶液5mlに攪拌、溶解した後、ホウ素化ナトリウム(11.0mg、0.27mmol)を添加した。該反応溶液の色が消えた後(5〜7分)、反応溶液にn-デシルブロミド(30mg、0.14mmol)を含むエタノール2mlを滴下した。反応溶液は3時間室温で攪拌した後、減圧濃縮し、これに飽和塩化アンモニウム溶液75mlを注いだ。次いで、酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、有機層を食塩水(2×30mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。更に濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で分離することにより、1-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-n-デカンを淡黄色油状物で得た(47mg、収率94%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0130】
得られた、1-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-n-デカンのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.45 (AB, J = 8.2 Hz, 2H, Ar-H), 7.38 (AB, J = 8.2 Hz, 2H, Ar-H), 2.92 (t, J = 7.3 Hz, 2H, CH2), 1.71 (quint, J = 7.3 Hz, 2H, CH2), 1.40 (quint, J = 7.3 Hz, 2H, CH2), 1.22-1.34 (m, 12H, CH2), 0.88 (t, J = 7.3 Hz, 3H, CH3), 0.27 (s, 9H, Si-3CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3): δ 138.3 (Cq-Ar), 133.8 (C-Ar), 131.9 (Cq-Ar), 131.1 (C-Ar), 31.9, 30.2, 29.9, 29.6, 29.5, 29.3, 29.1, 27.6, 22.7 (CH2), 14.1 (CH3), -1.2 (Si-3CH3).
IR (neat): 2930, 2855, 1605, 1250, 840 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 370 (M+, 100), 368 (51), 355 (36), 215 (57), 230 (21), 73 (79), 55 (82).
HRMS (EI): Calcd for (C19H34SeSi): 370.1595; Found 370.1599.
【実施例9】
【0131】
セレノラクトン化反応1
ペンテノイック酸(38mg,0.38mmol)、ビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(104.3mg、0.23mmol)及びジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ、51.7mg,0.23mmol)を含有する無水アセトニトリル溶液7mlを室温で24時間反応させた。次いで、該溶液を減圧濃縮し、10%炭酸ナトリウム溶液に注入した。更に、ジエチルエーテル(3×25mL)で抽出し、有機層を水(25mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で分離することにより、4-(4-(トリメチル)フェニルセレノメチル)-γ-ブチロラクトンを得た(119mg、収率95.5%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0132】
得られた4-(4-(トリメチル)フェニルセレノメチル)-γ-ブチロラクトンのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.51 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.42 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 4.62-4.68 (m, 1H, CH), 3.32 (dd, J = 4.8, 12.8 Hz, 1H, CH2), 3.01 (dd, J = 8.2, 12.8 Hz, 1H, CH2), 2.50-2.64 (m, 2H, CH2), 2.38-2.50 (m, 1H, CH2), 1.92-2.02 (m, 1H, CH2), 0.26 (s, 9H, CH3).
13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ 176.3 (CO), 140.0 (Cq-Ar), 134.2 (C-Ar), 132.1 (C-Ar), 129.8 (Cq-Ar), 79.3 (OCH), 31.5 (CH2), 28.8, 27.7 (CH2), -1.2 (Si-3CH3).
IR (neat): 2955, 1770, 1580, 1380, 1250, 1170 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 328 (M+, 4), 326 (2), 215 (2.5), 149 (4), 83 (100), 73 (8), 55 (14).
HRMS (EI): Calcd for (C14H20SeSi): 328.0397; Found 328.0400.
【実施例10】
【0133】
セレノラクトン化反応2
ヘキセノイック酸(30mg,0.26mmol)、ビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(60.2mg、0.13mmol)及び過硫酸アンモニウム(72mg,0.32mmol)を含有する無水アセトニトリル溶液7mlを70℃で5時間攪拌反応させた。次いで、該溶液を減圧濃縮し、10%炭酸ナトリウム溶液に注入した。更に、ジエチルエーテル(3×25mL)で抽出し、有機層を水(25mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で分離することにより、(S)- 4-エチル-(R)-3-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトンを得た(79mg、収率88%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0134】
得られた(S)- 4-エチル-(R)-3-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトンのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.52 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.42 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 4.33 (ddd, J = 4.0, 4.0, 7.6 Hz, 1H, CH-O), 3.51 (ddd, J = 7.6, 8.4, 9.2 Hz, 1H, CH), 2.93 (ABX, dd, J = 8.4, 18.0 Hz, 1H, CH2), 2.59 (ABX, dd, J = 9.2, 18.0 Hz, 1H, CH2), 1.80-1.88 (m, 1H, CH2), 1.62-1.70 (m, 1H, CH2), 1.01 (t, J = 7.2 Hz, 3H, CH3), 0.26 (s, 9H, CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3):δ 174.6 (CO), 141.6 (Cq-Ar), 134.9, 134.2 (C-Ar), 126.7 (Cq-Ar), 87.0 (OCH), 38.5 (CH-Se), 36.5, 26.8 (CH2), 9.8 (CH3), -1.2 (Si-3CH3).
IR (neat): 3010, 1775, 1250, 1240, 1200 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 342 (M+, 35), 283 (7), 215 (100), 73 (82).
HRMS (EI): Calcd for (C15H22O2SeSi): 342.0554; Found 342.0562.
【実施例11】
【0135】
セレノヒドロキシル化反応
ビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(128.3mg、0.28mmol)を0℃で無水エタノール溶液5mlに攪拌、溶解し、得られた溶液にホウ素化ナトリウム(19.3mg、0.51mmol)を添加した。該反応溶液の色が消えた後(5〜7分)、反応溶液にシクロヘキセンオキサイド(50mg、0.51mmol)を含むエタノール2mlを滴下した。反応溶液を室温で2時間攪拌した後、減圧濃縮し、飽和塩化アンモニウム溶液75mlに注いだ。次いで、酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、有機層を食塩水(2×20mL)、水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で分離することにより、(R)-2-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-(R)-シクロヘキサノールを淡黄色油状物で得た(159mg、収率95.2%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【0136】
得られた(R)-2-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-(R)-シクロヘキサノールのNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.58 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.43 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 3.35 (ddd, J = 4.0, 9.6, 15.6 Hz, 1H, CH), 2.89-2.96 (m, 2H, CH, OH), 2.12-2.23 (m, 2H, CH2), 1.22-1.76 (m, 6H, CH2), 0.26 (s, 9H, Si-3CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3):δ 140.3 (Cq-Ar), 134.8 (C-Ar), 133.8 (C-Ar), 127.6 (Cq-Ar), 72.4 (CH-OH), 53.7 (CH-Se), 33.9, 33.5, 26.9, 24.5 (CH2), -1.1 (Si-3CH3).
IR (neat): 3010, 2940, 2860, 1575, 1450, 1250, 1235 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 328 (M+, 43), 326 (22), 230 (52), 215 (100), 81 (95), 73 (40), 55 (28).
HRMS (EI): Calcd for (C15H24OSeSi): 328.0761; Found 328.0761.
【実施例12】
【0137】
α,β−不飽和カルボニル化合物の合成1
実施例4で得られた2-(4-(トリメチルシリル)フェニルセレノ)-n-ブチロフェノン112mg (0.3mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、そこに、30%過酸化水素112mgを溶解した水2mLを0℃で滴下した。反応溶液を0℃で5分間、室温で25分間攪拌しTLCで反応終点を確認した。その後、ジクロロメタン20mlを添加抽出し、その有機層を1N 塩酸25ml、10%炭酸水素ナトリウム(2×25mL)、食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で分離して、1-フェニル-2-ブテン-1-オン45mgを得た(収率97%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【実施例13】
【0138】
α,β−不飽和カルボニル化合物の合成2
実施例5で得られた2-メチル-2-(4-(トリメチルシリル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトン62mg (0.3mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、そこに、30%過酸化水素108mgを溶解した水2mLを0℃で滴下した。反応溶液を0℃〜室温で45分攪拌しTLCで反応終点を確認した。その後、ジクロロメタン20mlを添加抽出し、その有機層を10%炭酸水素ナトリウム(2×25mL)、食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で分離して、3-メチル-5H -フラン-2-オン17.3mgを得た(収率96%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【実施例14】
【0139】
α,β−不飽和カルボニル化合物の合成3
実施例6で得られた2-オキソ-1-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-シクロヘキサンカルボン酸エチル41mg (0.1mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、そこに、30%過酸化水素35mgを溶解した水2mLを0℃で滴下した。反応溶液を0℃〜室温で30分攪拌しTLCで反応終点を確認した。次いでジクロロメタン15mlを添加抽出し、その有機層を10%炭酸水素ナトリウム水溶液(2×25mL)、食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で分離して、6-オキソ-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸エチルを12.5mg得た(収率72%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【実施例15】
【0140】
α,β−不飽和カルボニル化合物の合成4
実施例7で得られた2-アセチル-2-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-γ-ブチロラクトン77mg (0.22mmol)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、そこに、30%過酸化水素50mgを溶解した水2mLを0℃で滴下した。反応溶液を15分0℃で攪拌反応させた。次いでジクロロメタン10mlを添加し、その有機層を10%炭酸水素ナトリウム水溶液(2×25mL)、食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で分離して、3-アセチル-5H -フラン-2-オンを18mg得た(収率64%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【実施例16】
【0141】
α,β−エポキシカルボニル化合物の合成
実施例6で得られた2-オキソ-1-(4-(トリメチル)フェニルセレノ)-シクロヘキサンカルボン酸エチル109.7mg (0.27mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、そこに、30%過酸化水素2mlに水2mLを添加した溶液を0℃で滴下した。反応溶液を0℃〜室温で2時間攪拌反応させた。次いでジクロロメタン20mlを添加抽出し、その有機層を10%炭酸水素ナトリウム水溶液(2×25mL)、食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。カラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で純化して、2-オキソ-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-1-カルボン酸エチルを46mg得た(収率91%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【実施例17】
【0142】
ラクトン化反応
ヘキセノイック酸(30mg,0.26mmol)、ビス(4-(トリメチルシリル)フェニル)ジセレニド(60.2mg、0.13mmol)及び過硫酸アンモニウム(72mg,0.32mmol)を含有する無水アセトニトリル溶液7mlを70℃で17時間攪拌反応させた。次いで、該溶液を減圧濃縮し、10%炭酸ナトリウム溶液に注入した。更に、ジエチルエーテル(3×25mL)で抽出し、有機層を水(25mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮しカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-200、溶媒はn-ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で分離することにより、5-エチル-5H -フラン-2-オンを得た(27.7mg、収率95%)。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。

【実施例18】
【0143】
4-トリメチルシリルフェニルセレニルクロライドによるセレノ化反応1
実施例2で得られた4-トリメチルシリルフェニルセレニルクロライド(145 mg, 0.55 mmol)をジエチル エーテル(2 mL) に溶解しアセトン(1 mL)を加えた。添加後、反応溶液は無色に変化した。反応溶液を10℃で1時間攪拌した後、水(10 mL)に投入し、反応物をジエチルエーテル(3×15 mL)で抽出した。その後、エーテル層を食塩水(2×10 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。ついで、残渣をカラムクロマトグラフィー(溶媒:n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより1-(4-トリメチルシリルフェニルセレニル)プロパン-2-オン(73 mg, 47 %)を無色の液体として得た。 尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。
【0144】
得られた反応物のNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.49 (AB, J = 8.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.42 (AB, J = 8.4 Hz, 2H, Ar-H), 3.60 (s, 2H, CH2), 2.29 (s, 3H, CH3), 0.25 (s, 9H, Si-3CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3):δ 203.4 (CO), 140.1 (Cq-Ar), 134.1, 131.9 (C-Ar), 129.5 (Cq-Ar), 36.6 (CH2), 28.1 (CH3), -1.1 (Si-3CH3).
IR (CHCl3): 3015, 2960, 1700, 1575, 1375, 1250 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 286 (M+, 9), 271 (4.4), 254 (4.2), 214 (4), 149 (7.3), 123 (9), 83 (100).
HRMS (EI): Calcd for (C12H18OSeSi): 286.0292; Found 286.0295.
【実施例19】
【0145】
4-トリメチルシリルフェニルセレニルクロライドによるセレノ化反応2
実施例2で得られた4-トリメチルシリルフェニルセレニル クロライドを無水塩化メチレン(3 mL) に溶解し、3-ヘキセン酸 (48.7 mg, 0.43 mmol) を加え反応させた。その後該反応溶液を10℃で1時間攪拌した後、水(10 mL)に投入し、反応物を酢酸エチル(3×15 mL)で抽出した。更に、有機層を炭酸水素ナトリウム(2×20 mL)、食塩水 (10 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。ついで、残渣をカラムクロマトグラフィー(溶媒:n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより5-エチル-4-(4-トリメチルシリルフェニルセレニル)-3H-ジヒドロフラン-2-オン (133.5 mg, 91 %)を無色の液体として得た。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。
【実施例20】
【0146】
4-トリメチルシリルフェニルセレニルトリクロライドによるセレノ化反応
実施例3で得られた4-トリメチルシリルフェニルセレニル トリクロライドの結晶281mg(0.84mmol)を無水ジエチルエーテル(3 mL)に溶解し、アセトン(92.5μL, 1.26 mmol)を加えた。その後、室温で10〜15分間攪拌して反応溶液を均一にした後溶媒を留去した。次いで、残渣を塩化メチレン(5 mL)で薄め、更にピリジン (340μL, 4.20 mmol)を10℃で滴下した後、1時間攪拌しながら室温に戻した。該反応溶液を1N 塩酸(20 mL)に投入した後、反応物を塩化メチレン(15 mL)で抽出した。更に、塩化メチレンを. 1N 塩酸(2×15 mL)、食塩水(10 mL)、水(10 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。ついで、残渣をカラムクロマトグラフィー(溶媒:n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより1-クロロ-1-(4-トリメチルシリルフェニルセレニル)プロパン-2-オン29 (191 mg, 71 %) を薄黄色の液体として得た。尚、本実験全般に於いて、セレン化合物特有の刺激臭や不快臭は感じられなかった。
【0147】
得られた反応物のNMR(バリアン社製、GEMINI-2000/200 spectrometer)、IR(島津製作所製 FTIR-8300 spectormeter)及びMS(日本電子データム社製、JMS-GC-mate mass spectrometer)による測定結果を以下に示す。
1H NMR (200 MHz, CDCl3):δ 7.60 (AB, J = 8.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.49 (AB, J = 8.4 Hz, 2H, Ar-H), 5.53 (s, 1H, CH), 2.37 (s, 3H, CH3), 0.27 (s, 9H, Si-3CH3).
13C NMR (50 MHz, CDCl3):δ 197.1 (CO), 142.6 (Cq-Ar), 134.7, 134.2 (C-Ar), 126.8 (Cq-Ar), 60.8 (CH), 25.3 (CH3), -1.1 (Si-3CH3).
IR (CHCl3): 3025, 2960, 1720, 1375, 1250 cm-1.
MS (EI, 60 eV): 320 (M+, 54), 305 (16), 277 (16), 214 (29), 169 (51), 91 (58), 73 (100).
HRMS (EI): Calcd for (C12H17ClOSeSi): 319.9902; Found 319.9901.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示される化合物。

(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリール基又は炭素数7〜15のアラルキル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは−Se−X、−SeX、又は

を表し、Yの各基に於けるXはハロゲン原子を、Rはそれぞれ独立して上記と同じものを表し、Rも上記と同じものを表す。)
【請求項2】
一般式[1]中のRで表される置換基を有していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基が、置換基を有していてもよいフェニレン基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式[1]中のRが、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、メトキシ基、フェニル基、ベンジル基及びキシリル基の中から選ばれるものである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Yで表される基が、−Se−X又は−SeXであり、Xで表されるハロゲン原子が塩素原子又は臭素原子である請求項1〜3の何れかに記載の化合物。
【請求項5】
Yで表される基が、

であり、左右対称の化合物である請求項1〜3の何れかに記載の化合物。
【請求項6】
一般式[2]で表される基中のRが、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、メトキシ基、フェニル基、ベンジル基及びキシリル基の中から選ばれるものであり、一般式[2]で表される基中のRで表される置換基を有していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基が、置換基を有していてもよいフェニレン基である請求項1〜3及び5の何れかに記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の化合物を含んでなるセレノ化反応用試薬。
【請求項8】
塩基又は還元剤の存在下、カルボニル基を有する化合物又はハロゲン原子を有する化合物に、請求項1〜6の何れかに記載の化合物を接触させることを特徴とする、セレノ化反応方法。
【請求項9】
酸化剤の存在下、不飽和結合及びカルボキシル基を有する直鎖状の脂肪族炭化水素化合物に、請求項1〜6の何れかに記載の化合物を接触させることを特徴とする、セレノラクトン化反応方法。
【請求項10】
還元剤の存在下、エポキシ基を有する化合物に、請求項1〜6の何れかに記載の化合物を接触させることを特徴とする、セレノヒドロキシル化反応方法。
【請求項11】
塩基又は還元剤の存在下、カルボニル基を有する化合物に、請求項1〜6の何れかに記載の化合物を接触させた後或いは同時に、酸化剤を接触させることを特徴とする、α,β−不飽和カルボニル化合物又はα,β−エポキシカルボニル化合物の製造方法。
【請求項12】
第一の酸化剤の存在下、α,β−不飽和アミド、α,β−不飽和エステル又はα,β−不飽和ニトリルに、アルコールと請求項1〜6の何れかに記載の化合物を接触させた後或いは同時に、第二の酸化剤を接触させることを特徴とする、エーテル化合物の製造方法。
【請求項13】
請求項6記載のセレノ化反応用試薬と、酸化剤を含んでなる酸化反応用試薬とからなる酸化反応用試薬キット。

【公開番号】特開2006−69973(P2006−69973A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256272(P2004−256272)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【出願人】(500514742)
【Fターム(参考)】