説明

無鉛性カチオン電着塗料組成物及び塗装方法

【課題】VOC及び金属イオン濃度が低く、また、電着塗料自体の使用量も少なくて済むために、環境に与える影響が少ない無鉛性カチオン電着塗料組成物、及びこれを用いる電着塗装方法を提供すること。
【解決手段】水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、カチオン性エポキシ樹脂を中和するための中和酸、有機溶媒、金属触媒を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物において、不揮発固形分が22〜35重量%であり、揮発性有機分含有量が1重量%以下であり、金属イオン濃度が500ppm以下であり、中和酸の量がバインダー樹脂固形分100gに対して10〜30mg当量であり、被塗物に対して厚さ20μmに電着された塗膜の膜抵抗が1000〜1500kΩ/cm2である無鉛性カチオン電着塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無鉛性カチオン電着塗料組成物に関し、特に、揮発性有機分含有量(VOC)及び金属イオン濃度が低い高つきまわり性の無鉛性カチオン電着塗料組成物、及びこれを用いる電着塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体等の大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として広く普及している。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる。
【0003】
これまで電着塗料には、塗膜の耐食性を改良するため、鉛を含む金属触媒(耐食性付与剤等)が添加されてきた。近年、金属イオン、特に鉛イオンは環境に対して悪影響を与えることから、電着塗料に使用する金属触媒の量を削減することが要求されている。
【0004】
一方、最近、環境に対する意識が高まるにつれ、先進国では、有害大気汚染物質(HAPs)の量を規制する方向に進んでいる。電着塗料は樹脂を合成する際の溶剤として、及び電着塗膜のフロー助剤や塗装作業性の調整剤として、揮発性有機溶媒を含んでいる。そのため、環境規制基準が強化された場合は使用が困難となる怖れがある。
【0005】
他方、塗装コストの低減の為、塗料自体の使用量の減少も望まれている。
【0006】
カチオン電着塗装の過程における塗膜の析出は電気化学的な反応によるものであり、電圧の印加により、被塗物表面に塗膜が析出する。析出した塗膜は絶縁性を有するので、塗装過程において、塗膜の析出が進行して析出膜の膜厚が増加するのに従い、塗膜の電気抵抗は大きくなる。
【0007】
その結果、当該部位への塗料の析出は低下し、代わって未析出部位への塗膜の析出が始まる。このようにして、順次未被着部分に塗料固形分が被着して塗装を完成させる。本明細書中、被塗物の未着部位に塗膜が順次形成される性質をつきまわり性という。
【0008】
カチオン電着塗装においては、上述したように被塗物表面に絶縁性の塗膜が順次形成されていくので、理論的には無限のつきまわり性を有しており、被塗物の全ての部分に均一に塗膜を形成することができるはずである。
【0009】
しかしながら、被塗物の未着部位においては、被着部位と比較して浴中で印加される電圧が弱くなるため塗料固形分が着き難く、電着塗料のつきまわり性は必ずしも充分でなく、膜厚のムラが生じる。
【0010】
カチオン電着塗装は、通常は下塗り塗装に使用され、防錆等を主目的として行われることから、複雑な構造を有する被塗物であっても、すべての部分でその塗膜の膜厚を所定値以上にする必要がある。そのため、膜厚にムラがあると、厚い部分は塗り過ぎであり、塗料が過剰に使用されていることとなる。従って、塗料の使用量を減少させるためには、電着塗料のつきまわり性を改良する必要がある。
【0011】
つきまわり性低下の要因としては、形成させる塗膜中に、塗料に含まれているイオン性基、水和官能基等が残存し、これらが電荷移動媒体となることによって塗膜の電気抵抗値を下げてしまうことが考えられる。従って、カチオン電着塗装において、高いつきまわり性を実現するためには、このような要因を除去して塗膜の電気抵抗値を上げる必要がある。
【0012】
つきまわり性低下の他の要因は、バインダー樹脂の析出性が低いことが考えられる。被塗物の未着部位に印加される電圧は弱く、当該部位に塗料固形分が被塗物に析出し難くなるのである。この場合、塗料エマルションから被塗物ヘのバインダー樹脂の析出性を高めることができれば、被塗物の未着部位に印加される弱い電圧によっても塗料固形分が析出し、被塗物の全ての部分に均一に塗膜が形成されることとなる。
【0013】
また、従来のカチオン電着塗料組成物は、不揮発固形分が20重量%程度と比較的低く、バインダー樹脂の析出性を十分に高めることが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、VOC及び金属イオン濃度が低く、また、電着塗料自体の使用量も少なくて済むために、環境に与える影響が少ない高つきまわり性の無鉛性カチオン電着塗料組成物、及びこれを用いる電着塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、カチオン性エポキシ樹脂を中和するための中和酸、有機溶媒、金属触媒を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物において、不揮発固形分が22〜35重量%であり、揮発性有機分含有量(VOC)が1重量%以下であり、金属イオン濃度が500ppm以下であり、中和酸の量がバインダー樹脂固形分100gに対して10〜30mg当量であり、被塗物に対して厚さ10〜20μmに電着された塗膜の膜抵抗が1000〜1500kΩ/cm2である無鉛性カチオン電着塗料組成物を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0016】
また、本発明は、水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、カチオン性エポキシ樹脂を中和するための中和酸、有機溶媒、金属触媒を含有し、不揮発固形分が22〜35重量%であり、揮発性有機分含有量が1重量%以下であり、金属イオン濃度が500ppm以下であり、中和酸の量がバインダー樹脂固形分100gに対して10〜30mg当量である無鉛性カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する工程;及び
該被塗物を陰極として電着塗装を行なうことにより、被塗物表面に厚さ10〜20μm、膜抵抗1000〜1500kΩ/cm2の塗膜を形成する工程;
を包含する電着塗装方法を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0017】
ここで、「無鉛性」とは、実質上鉛を含まないことをいい、環境に悪影響を与えるような量で鉛を含まないことを意味する。具体的には、電着浴中の鉛化合物濃度が50ppm、好ましくは20ppmを超える量で鉛を含まないことをいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物はVOC及び金属イオン濃度が低く、つきまわり性が高く、塗料自体の使用量も少なくて済むために、環境に与える影響が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
カチオン電着塗料組成物は、水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、バインダー樹脂、中和酸、有機溶媒、金属触媒等種々の添加剤を含有する。バインダー樹脂は官能基を有するカチオン性樹脂とこれを硬化させるブロックイソシアネート硬化剤とを含む。水性媒体としては、イオン交換水等が一般に用いられる。
【0020】
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物では、カチオン性樹脂としてエポキシ樹脂のエポキシ環にアミン等活性水素化合物を反応させ、そのエポキシ基を開環してカチオン性基を導入したカチオン性エポキシ樹脂を用い、ブロックイソシアネート硬化剤としてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックしたブロックポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0021】
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。このカチオン性エポキシ樹脂は、特開昭54−4978号、同昭56−34186号などに記載されている公知の樹脂でよい。
【0022】
カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0023】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
【0024】
特開平5−306327号公報第0004段落の式、化3に記載のような、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
【0025】
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックポリイソシアネートとポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
【0026】
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
【0027】
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されている。
【0028】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0029】
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
【0030】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。本発明の1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0031】
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
【0032】
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤で使用するポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
【0033】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4´−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0034】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0035】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0036】
ブロック剤としては、ε−カプロラクタムやブチルセロソルブ等通常使用されるものを用いることができる。しかしながら、これらの内、揮発性のブロック剤はHAPsの対象として規制されているものが多く、使用量は必要最小限とすることが好ましい。
【0037】
顔料
一般に、電着塗料組成物には着色剤として一般に顔料を含有させる。しかしながら、本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物には着色顔料を含有させないことが好ましい。塗料のつきまわり性が向上するからである。
【0038】
塗膜に耐食性を付与するため防錆顔料や体質顔料は含有させてもよい。但しその量は塗料組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との重量比(P/V)が1/9以下になる量とする。塗料組成物中の顔料の量が樹脂固形分との重量比1/9を越えると塗料固形分の析出性が低下するため、つきまわり性が低下する。
【0039】
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物に含有させてよい顔料の例としては、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー及びシリカのような体質顔料、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等が挙げられる。
【0040】
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0041】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は5〜40重量部、顔料は20〜50重量部の固形分比で用いる。
【0042】
金属触媒
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物には塗膜の耐食性を改良するための触媒として、金属触媒を金属イオンとして含有させる。その金属イオンとしては、セリウムイオン、ビスマスイオン、銅イオン、亜鉛イオンが好ましい。これらは適当な酸と組み合わせた塩や金属イオンを含有する顔料からの溶出物として電着塗料組成物に配合される。酸としては、カチオン性エポキシ樹脂を中和するための中和酸として後に説明する塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸のいずれかであればよい。好ましい酸は酢酸である。
【0043】
金属触媒の配合量は、電着塗料中の金属イオン濃度が500ppm以下とする。環境への影響をより少なくするためである。好ましくは、電着塗料中の金属イオン濃度は200〜400ppmである。但し、塗料組成物に顔料を含ませる場合は、顔料から溶出する金属イオンの量も考慮して、上記範囲内に制御する必要がある。顔料から溶出する金属イオンの例としては、亜鉛イオン、モリブデンイオン、アルミニウムイオン等がある。
【0044】
電着塗料中の金属イオン濃度が500ppmを越えると環境に対して与える影響が大きくなり、また、金属イオンの濃度が高くなると塗膜の析出性も低下することとなるため、塗料のつきまわり性も低下する。電着塗料中の金属イオン濃度は遠心分離処理により得られた上澄み液を原子吸光分析することにより測定する。
【0045】
電着塗料組成物
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物は、上に述べた金属触媒、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、及び顔料分散ペーストを水性媒体中に分散することによって調製される。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0046】
塗料組成物に含有させる中和酸の量が多くなるとカチオン性エポキシ樹脂の中和率が高くなり、バインダー樹脂粒子の水性媒体に対する親和性が高くなり、分散安定性が増加する。このことは、電着塗装時に被塗物に対してバインダー樹脂が析出し難い特性を意味し、塗料固形分の析出性は低下する。
【0047】
逆に、塗料組成物に含有させる中和酸の量が少ないとカチオン性エポキシ樹脂の中和率が低くなり、バインダー樹脂粒子の水性媒体に対する親和性が低くなり、分散安定性が減少する。このことは、塗装時に被塗物に対してバインダー樹脂が析出し易い特性を意味し、塗料固形分の析出性は増大する。
【0048】
従って、電着塗料のつきまわり性を改良するためには、塗料組成物に含有させる中和酸の量を減らしてカチオン性エポキシ樹脂の中和率を低レベルに抑えることが好ましい。
【0049】
具体的には、中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して10〜30mg当量、好ましくは15〜25mg当量とする。中和酸の量が10mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、著しく安定性に欠ける状態となり、30mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
【0050】
尚、本明細書において中和酸の量は塗料組成物に含まれているバインダー樹脂固形分100gに対するmg当量数で表わし、MEQ(A)と表示する。
【0051】
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂のブロックイソシアネート硬化剤に対する固形分重量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
【0052】
塗料組成物は、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通常のウレタン開裂触媒を含むことができる。鉛を実質的に含まないため、その量は樹脂固形分の0.1〜5重量%とすることが好ましい。
【0053】
有機溶媒はカチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶剤として必ず必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
【0054】
塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノマーエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
従って、従来、樹脂成分からこれらの有機溶媒を完全には除去せず、また、別途有機溶媒を加えることにより、電着塗料のVOCをある程度高め、重量基準で1〜5%程度に調節されている。ここで、VOC(揮発性有機分含有量)で表現されている、揮発性有機分とは、沸点250℃以下の有機溶媒のことをいい、上記で具体的に列挙したものが該当する。
【0056】
これに対し、本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物では、有機溶媒の含有量を従来と比較して低くするすることが好ましい。環境に対して悪影響を与えるのを防止するためである。具体的には、塗料組成物のVOCを1重量%以下、好ましくは0.5〜0.8重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%とする。塗料組成物のVOCが1重量%を越えると環境に対して与える影響が大きくなり、また、析出塗膜に対する流動性改良により塗膜抵抗値も減少するので、塗料のつきまわり性も低下する。
【0057】
VOCを1重量%以下にする方法としては、反応時の粘度調整に使用される有機溶媒については、反応温度を上げ低溶剤又は無溶剤で反応させることで削減する。また反応時にどうしても必要な有機溶媒については、脱ソルベントなどの工程で回収されるよう低沸点の溶媒を使用するなどして、最終製品の揮発性有機分含有量を削減することができる。塗装時の粘性調整などに用いる有機溶媒については、ソフトセグメントによる変性等、樹脂を低粘度化するなどして、その含有量を削減することができる。
【0058】
VOCの測定は、内部標準法によるガスクロ測定を実施し、有機溶媒として配合されているVOC成分量を測定することにより行なうことができる。
【0059】
また、本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物では、不揮発固形分を22〜35重量%、好ましくは24〜27重量%の範囲に調節する。塗料固形分の析出性を十分に高めるためである。塗料組成物の不揮発固形分が22重量%未満になると従来の固形分濃度とかわらず析出性を高める効果が少なくなり、35重量%を越えると乾きムラや2次タレワキなどの塗装作業性が劣化し、塗膜欠陥の原因となる。
【0060】
塗料組成物の不揮発固形分の増加は、水性媒体に配合する固形成分の量を増やすことによって行なえばよい。また、塗料組成物の不揮発固形分の測定は、一定量の塗料サンプルを105℃で3時間乾燥させた後の重量を測定することにより行なうことができる。
【0061】
塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
【0062】
本発明の無鉛性カチオン電着塗料組成物は被塗物に電着塗装され、電着塗膜(未硬化)を形成する。被塗物としては導電性のあるものであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アルミニウム板及びこれらを表面処理したもの、これらの成型物等を挙げることができる。
【0063】
電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
【0064】
電着過程は、(i)カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び(ii)上記被塗物を陰極として、陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
【0065】
電着塗膜の膜厚は10〜20μmとすることが好ましい。膜厚が10μm未満であると、防錆性が不充分であり、20μmを超えると、塗料の浪費につながる。また、電着塗膜の膜抵抗は膜厚10〜20μmにおいて1000〜1500kΩ/cm2であることが好ましい。塗膜の膜抵抗が1000kΩ/cm2未満であると十分な電気抵抗が得られていない状態であり、つきまわり性に劣る状態となり、1500kΩ/cm2を越えると塗膜外観が著しく劣ることとなる。塗膜の膜抵抗は、好ましくは1000〜1300kΩ/cm2である。
【0066】
電着塗膜の膜抵抗は、析出膜の電荷移動媒体量や粘性を制御することにより調節できる。
【0067】
上述のようにして得られる電着塗膜は、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは160〜220℃で、10〜30分間焼き付けることにより硬化させる。
【実施例】
【0068】
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0069】
製造例1
アミン変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル57部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体42部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
【0070】
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、エポキシ当量410になるまで130℃で反応させた。
【0071】
続いて、ビスフェノールA87部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1190となった。その後、反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79重量%MIBK溶液25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、ガラス転移温度が22℃のアミン変性エポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
【0072】
製造例2
ブロックイソシアネート硬化剤の製造
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0073】
製造例3
顔料分散樹脂の製造
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
【0074】
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
【0075】
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
【0076】
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル1390.2部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水37.0部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
【0077】
製造例4
顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水221.7部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
【0078】
実施例1
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。その後、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して2重量%になるよう添加した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が24になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
【0079】
このエマルション2670部に、イオン交換水1310部と10%酢酸セリウム水溶液20部およびジブチル錫オキサイド15部とを混合して、固形分24重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物において実質的に顔料は含まず、塗料中の溶剤量(VOC)は0.5%、樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量は25.8、溶出しているセリウムイオンと亜鉛イオンの合計濃度は210ppmであった。また浴温30℃における20μm塗装電圧は250Vで、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1000kΩ/cm2であった。
【0080】
実施例2
実施例1と同様にして製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。その後、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して2重量%になるよう添加した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が20になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
【0081】
このエマルション2670部に、イオン交換水1310部と10%酢酸セリウム水溶液20部およびジブチル錫オキサイド15部とを混合して、固形分30重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物において実質的に顔料は含まず、塗料中の溶剤量は0.5%、樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量は21.8、溶出しているセリウムイオンと亜鉛イオンの合計濃度は200ppmであった。また浴温30℃における20μm塗装電圧は200Vで、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1300kΩ/cm2であった。
【0082】
実施例3
実施例1と同様にして製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。その後、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して1重量%になるよう添加した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が20になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
【0083】
このエマルション3330部に、イオン交換水650部と10%酢酸セリウム水溶液19部およびジブチル錫オキサイド15部とを混合して、固形分34重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物において実質的に顔料は含まず、塗料中の溶剤量は0.3%、樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量は21.4、溶出しているセリウムイオンと亜鉛イオンの合計濃度は190ppmであった。また浴温30℃における20μm塗装電圧は300Vで、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1450kΩ/cm2であった。
【0084】
比較例
実施例1と同様にして製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。その後、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して1重量%になるよう添加した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
【0085】
このエマルション1500部および製造例4で得られた顔料分散ペースト542部と、イオン交換水1901部と10%酢酸セリウム水溶液57部およびジブチル錫オキサイド9部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物1を得た。このカチオン電着塗料組成物における顔料と樹脂固形分との比率(P/V)は1/3、塗料中の溶剤量は1.5%、樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量は30.3、溶出しているセリウムイオンと亜鉛イオンの合計濃度は610ppmであった。また浴温30℃における20μm塗装電圧は200Vで、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は600kΩ/cm2であった。
【0086】
実施例および比較例で得られたカチオン電着塗料組成物を焼き付けて得られたカチオン電着塗膜について、以下の評価試験を行い、その結果を表1に示した。
【0087】
つきまわり性
フォードパイプ法により評価した。そのときの評価基準は以下の通りとした。
【0088】
○:つきまわり性良好(21cm以上)
×:つきまわり性不良(21cm未満)
【0089】
塩水浸積耐食性
カチオン電着塗料組成物をリン酸亜鉛処理した冷延鋼板に乾燥塗膜の膜厚が20μmになるように電着を行った。これを170℃で25分焼き付けて得られたカチオン電着塗膜を、5%食塩水に55℃で240時間浸漬した後、カット部をテープ剥離した。カット部両側の剥離幅を以下の基準で評価した。
【0090】
○: <3mm
△:3〜6mm
×: >6mm
【0091】
平滑性
未処理リン酸亜鉛鋼板に、上記で得られたカチオン電着塗料を乾燥膜厚20μmになるように電着し、水洗後、160℃で10分間焼付けし、得られた塗膜の表面を表面粗さ計Surftest−211(Mitutoyo社製)で、カットオフ0.8mmおよび走査長4mmの基準で表面粗度(Ra)を測定した。
【0092】
○:Ra値0.2μm未満
×:Ra値0.2μm以上
【0093】
電着塗料の安定性
カチオン電着塗料組成物を40℃で2週間貯蔵し、その後380メッシュのふるいにかけたときの濾過性を観察し、以下の基準で評価した。
【0094】
○:問題なく濾過できる
×:濾過できない
【0095】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、カチオン性エポキシ樹脂を中和するための中和酸、有機溶媒、金属触媒を含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物において、
不揮発固形分が22〜35重量%であり、揮発性有機分含有量が1重量%以下であり、金属イオン濃度が500ppm以下であり、中和酸の量がバインダー樹脂固形分100gに対して10〜30mg当量であり、被塗物に対して厚さ10〜20μmに電着された塗膜の膜抵抗が1000〜1500kΩ/cm2である無鉛性カチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
前記金属触媒がセリウムイオン、ビスマスイオン、銅イオン、亜鉛イオン、モリブデンイオン、アルミニウムイオンからなる群から選択される一種以上である請求項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
前記中和酸が酢酸、乳酸、蟻酸、スルファミン酸からなる群から選択される一種以上である請求項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
更に顔料を含み、塗料組成物中に含まれる顔料と樹脂固形分との重量比(P/V)が1/9以下である請求項1記載の無鉛性カチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、カチオン性エポキシ樹脂を中和するための中和酸、有機溶媒、金属触媒を含有し、不揮発固形分が22〜35重量%であり、揮発性有機分含有量が1重量%以下であり、金属イオン濃度が500ppm以下であり、中和酸の量がバインダー樹脂固形分100gに対して10〜30mg当量である無鉛性カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する工程;及び
該被塗物を陰極として電着塗装を行なうことにより、被塗物表面に厚さ10〜20μm、膜抵抗1000〜1500kΩ/cm2の塗膜を形成する工程;
を包含する電着塗装方法。

【公開番号】特開2008−156655(P2008−156655A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8200(P2008−8200)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【分割の表示】特願2002−61658(P2002−61658)の分割
【原出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】