説明

無電解めっき方法及び無電解めっき装置

【課題】触媒付与処理及び/または無電解めっきに先立って、基板の表面から防食剤及び/または金属錯体を完全に除去して、配線表面に均一な膜厚の保護膜を成膜できるようにする。
【解決手段】内部に埋込み配線を形成した基板を用意し、ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に洗浄液を供給して基板の前洗浄を行い、前洗浄後の基板の表面を触媒付与液に接触させて配線の表面に触媒を付与し、しかる後、基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき方法及び無電解めっき装置に関し、特に半導体ウェーハ等の基板の表面に設けた配線用凹部に銅等を配線材料(導電体)として埋め込んで構成した埋込み配線の露出表面に、該配線の露出表面を保護する保護膜を選択的に形成するのに使用される無電解めっき方法及び無電解めっき装置に関する。本発明の無電解めっき方法及び無電解めっき装置は、例えばMRAMの磁性膜製造工程やフラットパネル製造工程などにも適用される。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の配線形成プロセスとして、トレンチやビアホール等の配線用凹部に金属(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、層間絶縁膜に予め形成したトレンチやビアホールに、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属をめっきによって埋め込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
近年、半導体デバイスの高速化・微細化の加速とともに、アルミニウムを代わって銅配線/低誘電率層間絶縁膜材(Low−K)のダマシンプロセス(配線の埋込み)は益々重要になって来ている。更に、デバイスの信頼性を高めるには、銅配線のエレクトロマイグレーション(EM)耐性を増強させることが不可欠である。対策の一つとして、銅配線上に選択的にコバルト(Co)合金膜を形成することで、EMの耐性を向上させるために顕著な効果が実証されている。また、形成されたコバルト膜が銅または酸素(O)の拡散を防ぐ役割を十分に果たせれば、従来のプロセスに使われる誘電率が高い絶縁材のキャップ層を省くことが可能となり、各配線層間の実効誘電率を一層下げることが期待できる。成膜の方法について、無電解めっき法は金属と絶縁材を混在する表面に対して、金属上のみに選択的に成膜できる固有な性質を持つため、銅配線上へコバルト合金薄膜を形成するのに最適な方法と考えられる。以上のことから、無電解めっきによるコバルト合金膜形成する(無電解キャップめっき)技術は、次世代高信頼性の銅配線構築における最も有望な新規プロセスと考えられる。
【0004】
図24(a)に従来の銅ダマシン配線構造を示す。通常、銅配線513とその隣接する、例えばSiN、SiCまたはSiCNからなる絶縁キャップ層514との密着性が金属同士に比べて低いため、その界面での原子の移動は、配線513中または配線513とそれを取り囲むバリアメタル層515との界面より活発になる傾向を持っている。配線513の微細化とともに、配線513に流れる電流密度が増える時、銅配線513と絶縁キャップ層514との境界に沿って原子移動の経路に最もなり易く、その界面は、EMによる不良(ボイドの形成)の発生箇所になる確率が高い。
【0005】
一つの対策案として、図24(b)に示すように、銅配線513と絶縁キャップ層514との間に、新たな合金薄膜516を導入することが提案されている。この合金薄膜516をキャップメタルという。このキャップメタル516は、銅配線513および絶縁キャップ層514のそれぞれと優れた密着性を有し、それの導入により銅配線513のEM耐性が大幅に改善される。また、このキャップメタル516に銅および酸素(O)の拡散に対して十分な耐性を持たせれば、図24(c)に示すように、現在使用している絶縁キャップ層514の代わりに保護膜517として使用が可能となる。一般に、絶縁キャップ層514は、誘電率が高いため、それを積層しないことで、各配線層間の電荷容量(C)を低減することができ、回路のRC遅延の抑制により信号の伝達の高速化に寄与する。更には、ノイズが低減され、発熱を低減させることも出来る。
【0006】
一般に、配線513の表面に保護膜517を選択的に形成するには、先ず、図25(a)に示すように、CMPによって、絶縁膜518内の配線513の表面を露出させる。この時、配線513の表面には銅酸化膜519aが形成され、また、絶縁膜518上に残渣519bが残ることがある。そこで、図25(b)に示すように、表面を洗浄して、銅酸化膜519a及び残渣519bを除去し、次に、図25(c)に示すように、配線513の表面に、Pd等の触媒(核)521を付与する。そして、表面に、例えば無電解CoWPめっきを行って、図25(d)に示すように、配線513の表面にCoWP合金からなる保護膜517を選択的に形成する。この時、保護膜517や絶縁膜518の表面に金属残渣523が残ることがある。
【0007】
そこで、図25(e)に示すように、めっき後洗浄を行って、保護膜517や絶縁膜518の表面に残った金属残渣523を除去し、しかる後、表面を純水で洗浄し乾燥させて、図25(f)に示すように、表面を安定化させた保護膜517を得るようにしている。
被めっき対象の特徴および目的によって、あるステップの間に特殊な処理工程を追加または削除されることもある。以下、幾つかの基本な処理ステップについて説明する。
【0008】
無電解めっきは、銅ダマシン配線に使われる電解めっきと違って、外部からの電子供給を使用せず、めっき対象物を単に金属イオンを含むめっき溶液に浸すことによりその金属イオンを還元させ、金属皮膜として析出させる方法である。金属イオンを還元させるためには、めっき溶液中に金属イオンの他に、電子を放出するための還元剤成分が必須となっている。次亜燐酸塩を還元剤としためっき溶液系におけるCoWP(コバルト、タングステン、リン)の合金の皮膜を析出する場合の基本的な化学反応式を以下に示す。
【0009】
・次亜燐酸イオンの酸化反応
PO+OH→HPO+H+e
・コバルトイオンの還元反応
Co+2HPO+OH→Co+HPO+H
・リンイオンの還元反応
PO+e→P↓+2OH
・タングステンイオンの還元反応
WO2++6HPO+4HO→W+6HPO+3H+2H
・水素の生成反応
+e+H→H
【0010】
以上のように、還元剤の次亜燐酸塩の酸化反応により電子を放出し、反応表面にコバルト、リンおよびタングステンイオンがその電子を獲得して共析反応を行い、合金の膜を形成する。その共析反応と共に、通常水素の還元反応も進行する。
めっき溶液における代表的な還元剤は、前述の次亜燐酸塩のほかに、有機系のジメチルアミンボラン(DMAB)がある。DMABを還元剤として使用するめっき溶液は、次亜燐酸塩のめっき溶液と異なる挙動を示す。
【0011】
無電解めっきでは、析出を開始させるためには、初期の被覆表面が還元剤の酸化反応に対して十分な触媒活性を持っていなければならない。次亜燐酸塩のアノード酸化反応に対して、銅が非常に低い触媒活性を示すため、原理的にめっき反応が起こりえないことになる。そのため、銅表面にコバルト合金を析出させるために、触媒活性が高いPdを使用することは一般的である。つまり、めっき反応を開始する前に、被覆表面にPdイオンを含む前処理液での触媒処理が必要となる。触媒処理は置換反応であり、反応式は以下の通りである。
Cu→Cu2++e
Pd2++e→Pd
【0012】
通常、Pdは、絶縁材であるSiOやSiOC等のLow−K材の表面では置換反応を起こさないため、無電解めっき反応は銅配線上でしか発生しない、いわゆる選択的成膜が出来るプロセスになる。
【0013】
前述のように、Pd触媒を使用する無電解めっきは、原理的に選択的な成膜になるが、実際、図25(a)に示すように、CMP工程後の(層間)絶縁膜518上にスラリ残渣519bが残ったり、配線513上に銅酸化膜519aが形成されたり、ウォータマークなどの不純物が残る場合がある。その不純物の上にPd置換反応またはめっき反応が起こると、配線の間の異常析出物は配線のリークを引き起こすだけでなく、表面ディフェクトの増加の原因にもなる。そのため、めっき処理前または処理後に適切な表面の洗浄処理を行う事は本プロセス性能の向上に不可欠な手段となる。
【0014】
銅配線にあっては、平坦化後、その配線の表面が外部に露出しており、この上に埋込み配線を形成する際、例えば次工程の層間絶縁膜形成プロセスにおけるSiO形成時の表面酸化やビアホールを形成するためのSiOエッチング等に際して、ビアホール底に露出した配線のエッチャントやレジスト剥離等による表面汚染が懸念されている。
【0015】
このため、前述のように、銅や銀等の配線材料との接合が強く、しかも比抵抗(ρ)が低い、例えば無電解めっきによって得られるCo(コバルト)またはCo合金層や、Ni(ニッケル)またはNi合金層で配線の表面を選択的に覆って配線を保護することが提案されている。
【0016】
図26(a)〜図26(d)は、半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す。先ず図26(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上に、例えばSiOからなる酸化膜やLow−K材膜等の絶縁膜(層間絶縁膜)2を堆積し、この絶縁膜2の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、配線用の微細凹部としてのビアホール3と配線溝4を形成し、その上にTaN等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてのシード層6をスパッタリング等により形成する。
【0017】
そして、図26(b)に示すように、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、基板Wのビアホール3及び配線溝4内に銅を充填させるとともに、絶縁膜2上に銅層7を堆積させる。その後、化学機械的研磨(CMP)などにより、絶縁膜2上のバリア層5、シード層6及び銅層7を除去して、ビアホール3及び配線溝4内に充填させた銅層7の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図26(c)に示すように、絶縁膜2の内部にシード層6と銅層7からなる配線(銅配線)8を形成する。
【0018】
次に、図26(d)に示すように、基板Wの表面に無電解めっきを施し、配線8の露出表面に、Co合金やNi合金等からなる保護膜9を選択的に形成し、これによって、配線8の表面を保護膜9で覆って保護する。
【0019】
一般的な無電解めっきによって、例えばCoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を(銅)配線8の表面に選択的に形成する工程を、図27を参照して説明する。先ず、CMP等の平坦化処理を施して配線8を露出させた半導体ウェーハ等の基板W(図26(c)参照)を用意する。この基板Wを、例えば常温の希硫酸または希塩酸中に1分程度浸漬させて、絶縁膜2の表面の金属酸化膜や銅等CMP残渣等の不純物を除去し、これによって、基板Wの前洗浄を行う。そして、基板Wの表面を純水等で洗浄(リンス)した後、例えば常温のPdCl/HClまたはPdSO/HSO混合溶液中に基板Wを1分間程度浸漬させ、これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させて配線8の露出表面を活性化させる。
【0020】
次に、基板Wの表面を純水等で洗浄(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板Wを120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっきを施し、しかる後、基板Wの表面を純水等で洗浄(リンス)する。これによって、図26(d)に示すように、配線8の露出表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的に形成して配線8を保護する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
基板の表面にCMP(化学機械的研磨)を施し該表面を平坦化して形成された配線(銅配線)にあっては、次の成膜工程で処理するまで、BTA(ベンゾトリアゾール)などの防食剤で配線表面を腐食から保護することが広く行われている。この防食剤の一部分は、配線金属に結合して金属錯体を形成し、これによって配線を腐食から防止する。この場合、次の成膜工程の直前に、防食剤及び/または金属錯体を基板の表面から完全に除去する必要がある。次の成膜工程が基板の表面に絶縁材のバリア層をCVDで形成する場合、前処理として行われるプラズマ洗浄やUV照射などの乾式処理で、基板の表面の防食剤及び/または金属錯体を除去することができる。
【0022】
しかし、次の成膜工程が配線の露出表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきの場合、基板の表面に向けて処理液を噴射するか、または基板を処理液中に浸漬させて基板を洗浄する前洗浄(前処理)では、防食剤及び/または金属錯体の配線表面に対する付着力が一般に強いため、配線表面の防食剤及び/または金属錯体の除去が十分でない場合がある。その結果、洗浄後の配線表面の一部に防食剤及び/または金属錯体が残り、これが、次の工程の触媒付与処理及び/または無電解めっき処理の阻害となって、無電解めっきによって配線表面に成膜された保護膜の膜厚が不均一となる。
【0023】
また、基板の表面に向けて処理液を噴射して基板の前洗浄(前処理)を行う場合、基板全面を有効に洗浄するために、多数の噴射ノズルから処理液を噴射させることが一般に行われている。そのため、1回の処理で使用する処理液(薬液)の量が多くなり、コスト的に不利となる。一方、基板を処理液中に浸漬させて基板の前洗浄(前処理)を行う場合、処理液は、一般に循環させながら再使用されるため、処理液中に混入した不純物が基板の表面に再付着して洗浄効率が落ちることがある。また、洗浄処理に要する時間も一般に長くなる。
【0024】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、触媒付与処理及び/または無電解めっきに先立って、基板の表面から防食剤及び/または金属錯体を完全に除去して、配線表面に均一な膜厚の保護膜を成膜できるようにした無電解めっき方法及び無電解めっき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載の発明は、内部に埋込み配線を形成した基板を用意し、ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に前処理液を供給して前処理を行い、しかる後、基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成することを特徴とする無電解めっき方法である。
【0026】
この発明によれば、配線表面に、触媒を付与することなく直接保護膜を成膜したり、基板表面の洗浄と配線表面への触媒付与処理を一つの前処理液を使用して同時に行った後に配線表面に保護膜を成膜したりする場合に、無電解めっきによる成膜に先立って、前処理液による化学的作用と洗浄部材による機械的作用(スクラブ洗浄)を組合せた前処理で基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体を完全に除去することができる。しかも、基板の表面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させることで、基板の全面に亘る前処理を行うことができる。
【0027】
請求項2に記載の発明は、前記前処理後の基板の表面を純水でリンスし、基板の表面が完全に乾燥する前に基板の表面を無電解めっき液に接触させることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき方法である。
これにより、前処理から無電解めっきを開始するまでの間に、配線の表面に酸化膜が再形成されたり、ウォータマークが形成されたりするのを抑えて、保護膜(めっき膜)に欠陥の生じることを防止することを目的としている。
【0028】
請求項3に記載の発明は、内部に埋込み配線を形成した基板を用意し、ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に洗浄液を供給して基板の前洗浄を行い、前洗浄後の基板の表面を触媒付与液に接触させて配線の表面に触媒を付与し、しかる後、基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成することを特徴とする無電解めっき方法である。
【0029】
この発明によれば、配線表面に触媒を付与した後に保護膜を成膜する場合に、配線表面に触媒を付与する処理に先立って、洗浄液による化学的作用と洗浄部材による機械的作用を組合せた前洗浄で基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体を完全に除去して、配線表面により均一に触媒を付与し、しかも配線表面に防食剤及び/または金属錯体がない状態で保護膜を成膜することができる。
【0030】
請求項4に記載の発明は、前記前洗浄後の基板の表面を純水でリンスし、基板の表面が完全に乾燥する前に基板の表面を触媒付与液に接触させることを特徴とする請求項3記載の無電解めっき方法である。
これにより、前洗浄処理から触媒付与処理を開始するまでの間に、配線表面に酸化膜が再形成されたり、ウォータマークが形成されたりするのを抑えて、配線表面に触媒を均一に付与し、その後の無電解めっきで成膜される保護膜(めっき膜)に欠陥の生じることを防止することができる。
【0031】
請求項5に記載の発明は、ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に前処理液を供給して前処理を行う前処理ユニットと、基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきユニットを有することを特徴とする無電解めっき装置である。
【0032】
請求項6に記載の発明は、ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に洗浄液を供給して基板の前洗浄を行う前洗浄ユニットと、前洗浄後の基板の表面を触媒付与液に接触させて配線の表面に触媒を付与する触媒付与ユニットと、基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきユニットを有することを特徴とする無電解めっき装置である。
【0033】
請求項7に記載の発明は、基板を洗浄液中に浸漬させるか、または基板に向けて洗浄液を噴射して基板を洗浄する洗浄ユニットを更に有することを特徴とする請求項5または6記載の無電解めっき装置である。
これにより、前処理ユニットと洗浄ユニット、または前洗浄ユニットと洗浄ユニットとを組合せたマルチステップ処理を行って、基板の洗浄効果をより高めることができる。
【0034】
請求項8に記載の発明は、前記洗浄部材は、多孔質連続気孔組織のポリビニルアルコールまたはフッ素樹脂材からなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の無電解めっき装置である。
多孔質連続気孔組織のポリビニルアルコール(PVA)は、吸湿性と対薬品性に優れ、ロールスポンジとして広く使われており、これを基板の表面に接触して該表面を洗浄する洗浄部材として使用することで、基板の表面にダメージを与えることなく、基板の表面に残った残留物を容易に除去することができる。
【0035】
請求項9に記載の発明は、前記洗浄部材は、中心に回転軸を有するロール状ブラシであることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の無電解めっき装置である。
これにより、ロール状ブラシを基板の表面に接触させながら回転させて基板の表面を洗浄することで、基板の表面の洗浄効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、薬液による化学的作用と洗浄部材による機械的作用(スクラブ洗浄)を組合せて前処理等を行って、配線の表面を含めた基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体を有効に除去し、しかる後に、触媒付与処理及び/または無電解めっきを行うことで、配線表面に均一な膜厚の保護膜を成膜することができる。しかも、薬液の使用量を、例えば1リットル以下に抑えながら、例えば5〜60秒程度の短時間で基板全面に亘る均一な前処理や前洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例では、図26(d)に示すように、配線8の露出表面を、CoWP合金等からなる保護膜(蓋材)9で選択的に覆って、配線8を保護膜9で保護するようにした例を示す。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態における無電解めっき装置の平面配置図を示す。図1に示すように、この無電解めっき装置には、表面に配線8を形成した半導体ウェーハ等の基板Wを収容した基板カセットを載置収容するロード・アンロードユニット11が備えられている。そして、排気系統を備えた矩形状の装置フレーム12の内部に、基板の表面を前洗浄する前洗浄ユニット14、前洗浄後の基板の表面に触媒付与液を接触させて、配線8の表面に、例えばPd等の触媒を付与する触媒付与ユニット15が配置されている。
【0039】
装置フレーム12の内部には、基板の表面に無電解めっきを行う2基の無電解めっきユニット16、無電解めっきによって配線8の表面に形成された保護膜(合金膜)9の選択性を向上させるため、基板の後洗浄(後処理)を行う後洗浄ユニット18、後洗浄後の基板を乾燥させる乾燥ユニット20、及び仮置台22が配置されている。更に、装置フレーム12の内部には、ロード・アンロードユニット11に搭載された基板カセットと仮置台22との間で基板Wの受渡し行う第1基板搬送ロボット24と、仮置台22と各ユニット14,15,16,18,20との間で基板の受渡しを行う第2基板搬送ロボット26が、それぞれ走行自在に配置されている。
【0040】
次に、図1に示す無電解めっき装置に備えられている各ユニットの詳細を以下に説明する。なお、前洗浄ユニット14は、触媒付与処理に先立って、配線の表面を含めた基板Wの表面に残った防食剤及び/または金属錯体等を除去するにしたユニットで、後洗浄ユニット18は、無電解めっき後の基板表面上のパーティクルや不要物を除去するようにしたユニットである。この例では、前洗浄ユニット14と後洗浄ユニット18は、使用する処理液が異なるだけで、同じ構成であるので、ここでは、前洗浄ユニット14のみを説明して、後洗浄ユニット18の説明を省略する。
【0041】
前洗浄ユニット14には、図2及び図3に示すように、基板Wの外周部を挟み込んで基板Wを保持する複数のローラ30と、ローラ30で保持した基板Wの表面に洗浄液を供給する洗浄液用ノズル32及び純水を供給する純水用ノズル34と、ローラ30で保持した基板Wの裏面に洗浄液を供給する洗浄液用ノズル36及び純水を供給する純水用ノズル38を備えられている。
【0042】
ローラ30で保持した基板Wの表面側に位置して、中心に回転軸40を有する円筒状の洗浄部材42が、基板の裏面側に位置して、中心に回転軸44を有する円筒状の洗浄部材46が、それぞれ上下方向に移動して基板Wに接触するように配置されている。この両洗浄部材42,46は、例えば多孔質連続気孔組織のポリビニルアルコール(PVA)製のロールスポンジからなるロール状ブラシで構成されている。このように、吸湿性と対薬品性に優れた多孔質連続気孔組織のポリビニルアルコール(PVA)製のロールスポンジで洗浄部材(ロール状ブラシ)42,46を構成することにより、基板の表面に洗浄部材42,46を接触させて両者を相対移動させることで、基板の表面にダメージを与えることなく、基板の表面に残った残留物を容易に除去することができる。しかも、洗浄部材42,46を、中心に回転軸40,44を有するロール状ブラシとし、ロール状ブラシを基板の表面に接触させながら回転させて基板の表面を洗浄することで、基板の表面の洗浄効率を向上させることができる。
なお、洗浄部材をフッ樹脂材としてもよい。
【0043】
この前洗浄ユニット14によれば、基板Wをその表面(被処理面)を上向きにして複数のローラ30で保持し、ローラ30を介して、基板Wを所定の回転速度、例えば110rpmで回転させながら、基板Wの表面(上面)に純水用ノズル34から純水を滴下して、基板Wの全表面を純水で濡らす。次に、基板Wの上方に配置された洗浄部材(ロール状ブラシ)42を所定の回転速度、例えば100rpmで回転させながら下降させて基板Wの表面に接触させる。そして、洗浄部材(ロール状ブラシ)42が基板Wの表面に接触すると同時に、基板Wの上方に配置された洗浄液用ノズル32から基板Wの表面に洗浄液を供給する。これにより、配線表面に触媒を付与した後に保護膜を成膜する場合に、配線表面に触媒を付与する処理に先立って、洗浄液による化学的作用と洗浄部材42による機械的作用(スクラブ洗浄)を組合せた前洗浄で基板Wの表面に残った防食剤及び/または金属錯体等を完全に除去することができる。
【0044】
この基板の表面(上面)の前洗浄と並行して、必要に応じて、基板の裏面(下面)の前洗浄を行う。つまり、基板Wの裏面(下面)に純水用ノズル38から純水を供給し、基板Wの下方に配置された洗浄部材(ロール状ブラシ)46を所定の回転速度、例えば100rpmで回転させながら上昇させて基板Wの裏面に接触させる。そして、洗浄部材(ロール状ブラシ)46が基板Wの裏面に接触すると同時に、基板Wの下方に配置された洗浄液用ノズル36から基板Wの表面に洗浄液を供給し、これによって、洗浄液による化学的作用と洗浄部材46による機械的作用を組合せた前洗浄で基板Wの裏面を洗浄する。
【0045】
そして、所定時間、例えば30秒間基板の表面を洗浄した後、洗浄部材42を上昇させて基板Wの表面から離し、洗浄液用ノズル32からの洗浄液の供給を停止した後、純水用ノズル34から基板Wの表面に純水を供給して基板Wの表面を純水でリンスする。
基板Wの裏面にあっても同様に、所定時間基板の裏面を洗浄した後、洗浄部材46を下降させて基板Wの裏面から離し、洗浄液用ノズル36からの洗浄液の供給を停止した後、純水用ノズル38から基板Wの裏面に純水を供給して基板Wの裏面を純水でリンスする。
【0046】
なお、基板の裏面側に純水用ノズル38のみを配置して、基板の裏面の純水によるリンスのみを行うようにしてもよく、また洗浄液の基板の裏面側への回り込みがない場合には、基板の裏面の純水によるリンスを省略するようにしてもよい。
この例にあっては、前洗浄ユニット14に基板Wのエッジ(外周部)に当接しながら回転するスポンジ48が備えられ、このスポンジ48を基板Wのエッジに当てて、ここをスクラブ洗浄するようになっている。
【0047】
触媒付与ユニット15は、図4乃至図6に示すように、フレーム50の上部に取付けた固定枠52と、この固定枠52に対して相対的に上下動する移動枠54を備えており、図7に示すように、この移動枠54に、下方に開口した有底円筒状のハウジング部56と基板ホルダ58とを有する処理ヘッド60が懸架支持されている。つまり、移動枠54には、ヘッド回転用サーボモータ62が取付けられ、このサーボモータ62の下方に延びる出力軸(中空軸)64の下端に処理ヘッド60のハウジング部56が連結されている。
【0048】
この出力軸64の内部には、図7に示すように、スプライン66を介して該出力軸64と一体に回転する鉛直軸68が挿着され、この鉛直軸68の下端に、ボールジョイント70を介して処理ヘッド60の基板ホルダ58が連結されている。基板ホルダ58は、ハウジング部56の内部に位置している。また鉛直軸68の上端は、軸受72及びブラケットを介して、移動枠54に固定した固定リング昇降用シリンダ74に連結されている。これにより、この昇降用シリンダ74の作動に伴って、鉛直軸68が出力軸64とは独立に上下動する。
【0049】
図4乃至図6に示すように、固定枠52には、上下方向に延びて移動枠54の昇降の案内となるリニアガイド76が取付けられ、ヘッド昇降用シリンダ(図示せず)の作動に伴って、移動枠54がリニアガイド76を案内として昇降する。
【0050】
図7に示すように、処理ヘッド60のハウジング部56の周壁には、この内部に基板Wを挿入する基板挿入窓56aが設けられている。また、処理ヘッド60のハウジング部56の下部には、図8及び図9に示すように、例えばポリエーテルエーテルケトン製のメインフレーム80とガイドフレーム82との間に周縁部を挟持されてシールリング84が配置されている。このシールリング84は、基板Wの下面の周縁部に当接し、ここをシールするためのものである。
【0051】
基板ホルダ58の下面周縁部には、基板固定リング86が固着され、この基板ホルダ58の基板固定リング86の内部に配置したスプリング88の弾性力を介して、円柱状のプッシャ90が基板固定リング86の下面から下方に突出する。更に、基板ホルダ58の上面とハウジング部56の上壁部との間には、内部を気密的にシールする、例えばテフロン(登録商標)製で屈曲自在な円筒状の蛇腹板92が配置されている。更に、基板ホルダ58には、この基板ホルダ58で保持した基板の上面を覆う被覆板94が備えられている。
【0052】
これにより、基板ホルダ58を上昇させた状態で、基板Wを基板挿入窓56aからハウジング部56の内部に挿入する。すると、この基板Wは、ガイドフレーム82の内周面に設けたテーパ面82aに案内され、位置決めされてシールリング84の上面の所定位置に載置される。この状態で、基板ホルダ58を下降させ、この基板固定リング86のプッシャ90を基板Wの上面に接触させる。そして、基板ホルダ58を更に下降させることで、基板Wをスプリング88の弾性力で下方に押圧し、これによって、基板Wの表面(下面)の周縁部にシールリング84で圧接させて、ここをシールしつつ、基板Wをハウジング部56と基板ホルダ58との間で挟持して保持する。
【0053】
このように、基板Wを基板ホルダ58で保持した状態で、ヘッド回転用サーボモータ62を駆動すると、この出力軸64と該出力軸64の内部に挿着した鉛直軸68がスプライン66を介して一体に回転し、これによって、ハウジング部56と基板ホルダ58も一体に回転する。
【0054】
処理ヘッド60の下方に位置して、該処理ヘッド60の外径よりもやや大きい内径を有する上方に開口した、外槽100aと内槽100bを有する処理槽100(図10参照)が備えられている。内槽100bの外周部には、蓋体102に取付けた一対の脚部104が回転自在に支承されている。更に、図4乃至図6に示すように、脚部104には、クランク106が一体に連結され、このクランク106の自由端は、蓋体移動用シリンダ108のロッド110に回転自在に連結されている。これにより、蓋体移動用シリンダ108の作動に伴って、蓋体102は、内槽100bの上端開口部を覆う処理位置と、側方の待避位置との間を移動するように構成されている。この蓋体102の表面(上面)には、例えば純水を外方(上方)に向けて噴射する多数の噴射ノズル112aを有するノズル板112が備えられている。
【0055】
更に、図10に示すように、処理槽100の内槽100bの内部には、第1処理液タンク120から第1処理液ポンプ122の駆動に伴って供給された第1処理液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル124aを有するノズル板124が、該噴射ノズル124aが内槽100bの横断面の全面に亘ってより均等に分布した状態で配置されている。この内槽100bの底面には、第1処理液(排液)を外部に排出する排水管126が接続されている。この排水管126の途中には、三方弁128が介装され、この三方弁128の一つの出口ポートに接続された戻り管130を介して、必要に応じて、この第1処理液(排液)を第1処理液タンク120に戻して再利用できるようになっている。
【0056】
蓋体102の表面(上面)に設けられたノズル板112は、第2処理液供給源132に接続されている。これによって、第2処理液が噴射ノズル112aから基板の表面に向けて噴射される。また、外槽100aの底面にも、排水管127が接続されている。
【0057】
これにより、基板を保持した処理ヘッド60を下降させて、処理槽100の内槽100bの上端開口部を処理ヘッド60で塞ぐように覆い、この状態で、処理槽100の内槽100bの内部に配置したノズル板124の噴射ノズル124aから第1処理液を、基板Wに向けて噴射することで、基板Wの下面(処理面)の全面に亘って第1処理液を均一に噴射し、しかも第1処理液の外部への飛散を防止しつつ第1処理液を排水管126から外部に排出する。
【0058】
更に、処理ヘッド60を上昇させ、処理槽100の内槽100bの上端開口部を蓋体102で閉塞した状態で、処理ヘッド60で保持した基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射することで、基板Wの下面(処理面)の全面に亘って第2処理液を均一に噴射する。この第2処理液は、外槽100aと内槽100bの間を通って、排水管127を介して排出されるので、内槽100bの内部に流入することが防止されて、第1処理液に混ざることが防止される。
【0059】
この触媒付与ユニット15によれば、図4に示すように、処理ヘッド60を上昇させた状態で、この内部に基板Wを挿入して保持し、しかる後、図5に示すように、処理ヘッド60を下降させて処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置に位置させる。そして、処理ヘッド60を回転させて、処理ヘッド60で保持した基板Wを回転させながら、図10に示すように、内槽100bの内部に配置したノズル板124の噴射ノズル124aから、第1処理液を基板Wに向けて噴射することで、基板Wの全面に亘って第1処理液を均一に噴射する。そして、処理ヘッド60を上昇させて所定位置で停止させ、図6に示すように、待避位置にあった蓋体102を処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置まで移動させる。そして、この状態で、処理ヘッド60で保持して回転させた基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を噴射する。これにより、基板Wの第1処理液と第2処理液による処理を、2つの液体が混ざらないようにしながら行うことができる。
【0060】
無電解めっきユニット16を図11乃至図17に示す。この無電解めっきユニット16は、めっき槽200(図15及び図17参照)と、このめっき槽200の上方に配置されて基板Wを着脱自在に保持する基板ヘッド204を有している。
【0061】
基板ヘッド204は、図11に詳細に示すように、ハウジング部230とヘッド部232とを有し、ヘッド部232は、吸着ヘッド234と該吸着ヘッド234の周囲を囲繞する基板受け236から主に構成されている。そして、ハウジング部230の内部には、基板回転用モータ238と基板受け駆動用シリンダ240が収納され、この基板回転用モータ238の出力軸(中空軸)242の上端はロータリジョイント244に、下端はヘッド部232の吸着ヘッド234にそれぞれ連結され、基板受け駆動用シリンダ240のロッドは、ヘッド部232の基板受け236に連結されている。ハウジング部230の内部には、基板受け236の上昇を機械的に規制するストッパ246が設けられている。
【0062】
ここで、吸着ヘッド234と基板受け236との間には、スプライン構造が採用され、基板受け駆動用シリンダ240の作動に伴って基板受け236は吸着ヘッド234と相対的に上下動するが、基板回転用モータ238の駆動によって出力軸242が回転すると、この出力軸242の回転に伴って、吸着ヘッド234と基板受け236が一体に回転するように構成されている。
【0063】
吸着ヘッド234の下面周縁部には、図12乃至図14に詳細に示すように、下面をシール面として基板Wを吸着保持する吸着リング250が押えリング251を介して取付けられ、この吸着リング250の下面に円周方向に連続させて設けた凹状部250aと吸着ヘッド234内を延びる真空ライン252とが吸着リング250に設けた連通孔250bを介して互いに連通するようになっている。これにより、凹状部250a内を真空引きすることで、基板Wを吸着保持するのであり、このように、小さな幅(径方向)で円周状に真空引きして基板Wを保持することで、真空による基板Wへの影響(たわみ等)を最小限に抑え、しかも吸着リング250を無電解めっき液中に浸すことで、基板Wの表面(下面)のみならず、エッジについても、全て無電解めっき液に浸すことが可能となる。基板Wのリリースは、真空ライン252にNを供給して行う。
【0064】
一方、基板受け236は、下方に開口した有底円筒状に形成され、その周壁には、基板Wを内部に挿入する基板挿入窓236aが設けられ、下端には、内方に突出する円板状の爪部254が設けられている。更に、この爪部254の上部には、基板Wの案内となるテーパ面256aを内周面に有する突起片256が備えられている。
【0065】
これにより、図12に示すように、基板受け236を下降させた状態で、基板Wを基板挿入窓236aから基板受け236の内部に挿入する。すると、この基板Wは、突起片256のテーパ面256aに案内され、位置決めされて爪部254の上面の所定位置に載置保持される。この状態で、基板受け236を上昇させ、図13に示すように、この基板受け236の爪部254上に載置保持した基板Wの上面を吸着ヘッド234の吸着リング250に当接させる。次に、真空ライン252を通して吸着リング250の凹状部250aを真空引きすることで、基板Wの上面の周縁部を該吸着リング250の下面にシールしながら基板Wを吸着保持する。そして、無電解めっき処理を行う際には、図14に示すように、基板受け236を数mm下降させ、基板Wを爪部254から離して、吸着リング250のみで吸着保持した状態となす。これにより、基板Wの表面(下面)の周縁部が、爪部254の存在によってめっきされなくなることを防止することができる。
【0066】
図15は、めっき槽200の詳細を示す。このめっき槽200は、底部において、めっき液供給管308(図17参照)に接続され、周壁部にめっき液回収溝260が設けられている。めっき槽200の内部には、ここを上方に向かって流れる無電解めっき液の流れを安定させる2枚の整流板262,264が配置され、更に底部には、めっき槽200の内部に導入される無電解めっき液の液温を測定する温度測定器266が設置されている。また、めっき槽200の周壁外周面のめっき槽200で保持した無電解めっき液の液面よりやや上方に位置して、直径方向のやや斜め上方に向けてめっき槽200の内部に、pHが6〜7.5の中性液からなる停止液、例えば純水を噴射する噴射ノズル268が設置されている。これにより、無電解めっき終了後、ヘッド部232で保持した基板Wを無電解めっき液の液面よりやや上方まで引上げて一旦停止させ、この状態で、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、これによって、基板Wに残った無電解めっき液によって無電解めっきが進行してしまうことを防止することができる。
【0067】
更に、めっき槽200の上端開口部には、アイドリング時等のめっき処理の行われていない時に、めっき槽200の上端開口部を閉じて該めっき槽200内のめっき液の無駄な蒸発と放熱を防止するめっき槽カバー270が開閉自在に設置されている。
【0068】
このめっき槽200は、図17に示すように、底部において、めっき液貯槽302から延び、途中にめっき液供給ポンプ304、フィルタ305及び三方弁306を介装しためっき液供給管308に接続されている。更に、めっき槽200のめっき液回収溝260は、めっき液貯槽302から延びるめっき液回収管に接続されている。これにより、めっき処理中にあっては、めっき槽200の内部に、この底部から無電解めっき液を供給し、めっき槽200を溢れる無電解めっき液をめっき液回収溝260からめっき液貯槽302へ回収することで、無電解めっき液が循環できるようになっている。また、三方弁306の一つの出口ポートには、めっき液貯槽302に戻るめっき液戻り管312が接続されている。これにより、めっき待機時にあっても、無電解めっき液を循環させることができるようになっている。
【0069】
特に、この例では、めっき液供給ポンプ304を制御することで、めっき待機時及びめっき処理時に循環する無電解めっき液の流量を個別に設定できるようになっている。すなわち、めっき待機時の無電解めっき液の循環流量は、例えば2〜20L/minで、めっき処理時の無電解めっき液の循環流量は、例えば0〜10L/minに設定される。これにより、めっき待機時に無電解めっき液の大きな循環流量を確保して、セル内のめっき浴の液温を一定に維持し、めっき処理時には、無電解めっき液の循環流量を小さくして、より均一な膜厚の保護膜(めっき膜)を成膜することができる。
【0070】
めっき槽200の底部付近には、めっき槽200の内部に導入される無電解めっき液の液温を測定して、この測定結果を元に、下記のヒータ316及び流量計318を制御する温度測定器266が設けられている。
【0071】
この例では、別置きのヒータ316を使用して昇温させ、流量計318を通過させた水を熱媒体に使用し、熱交換器320をめっき液貯槽302内の無電解めっき液中に設置して該めっき液を間接的に加熱する加熱装置322と、めっき液貯槽302内の無電解めっき液を循環させて攪拌する攪拌ポンプ324が備えられている。これは、無電解めっきにあっては、無電解めっき液を高温(約80℃程度)にして使用することがあり、これと対応するためであり、この方法によれば、インライン・ヒーティング方式に比べ、非常にデリケートな無電解めっき液に不要物等が混入するのを防止することができる。
【0072】
この例によれば、無電解めっき液は、基板Wと接触してめっきを行うときに、基板Wの温度が70〜90℃となるように液温が設定され、液温のばらつき範囲が±2℃以内となるように制御される。
【0073】
無電解めっきユニット16には、めっき液貯槽302内の無電解めっき液を抽出するめっき液抽出部330と、この抽出された無電解めっきユニット16が保有するめっき液の組成を、例えば吸光光度法、滴定法、電気化学的測定などで分析するめっき液組成分析部332が備えられている。このめっき液組成分析部332は、例えばコバルトイオン濃度をめっき液の吸光度分析、イオンクロマトグラフ分析、キャピラリー電気泳動分析またはキレート滴定分析により測定する。
【0074】
無電解めっき液の液温は、高くなるほどめっき速度が速くなり、低すぎるとめっき反応が起こらないことから、一般的には60〜95℃で、65〜85℃であることが好ましく、70〜75℃であることがより好ましい。基本的には、めっきを実際に行っているか否かに関わらず、一度温度を上げたら下げないことが望ましく、55℃以上にしておくことが望まれる。
【0075】
図16は、めっき槽200の側方に付設されている洗浄槽202の詳細を示す。この洗浄槽202の底部には、純水等のリンス液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル280がノズル板282に取付けられて配置され、このノズル板282は、ノズル上下軸284の上端に連結されている。更に、このノズル上下軸284は、ノズル位置調整用ねじ287と該ねじ287と螺合するナット288との螺合位置を変えることで上下動し、これによって、噴射ノズル280と該噴射ノズル280の上方に配置される基板Wとの距離を最適に調整できるようになっている。
【0076】
更に、洗浄槽202の周壁外周面の噴射ノズル280より上方に位置して、直径方向のやや斜め下方に向けて洗浄槽202の内部に純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分に洗浄液を吹き付けるヘッド洗浄ノズル286が設置されている。
【0077】
この洗浄槽202にあっては、基板ヘッド204のヘッド部232で保持した基板Wを洗浄槽202内の所定の位置に配置し、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)するのであり、この時、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を同時に噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくとも無電解めっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄することで、無電解めっき液に浸された部分に析出物が蓄積してしまうことを防止することができる。
【0078】
この無電解めっきユニット16にあっては、基板ヘッド204を上昇させた位置で、前述のようにして、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持し、めっき槽200の無電解めっき液を循環させておく。
そして、めっき処理を行うときには、めっき槽200のめっき槽カバー270を開き、基板ヘッド204を回転させながら下降させ、ヘッド部232で保持した基板Wをめっき槽200内の無電解めっき液に浸漬させる。
【0079】
そして、基板Wを所定時間めっき液中に浸漬させた後、基板ヘッド204を上昇させて、基板Wをめっき槽200内の無電解めっき液から引上げ、必要に応じて、前述のように、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、更に基板ヘッド204を上昇させて基板Wをめっき槽200の上方位置まで引上げて、基板ヘッド204の回転を停止させる。
【0080】
次に、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持したまま、基板ヘッド204を洗浄槽202の直上方位置に移動させる。そして、基板ヘッド204を回転させながら洗浄槽202内の所定の位置まで下降させ、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)し、同時に、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくとも無電解めっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄する。
【0081】
この基板Wの洗浄が終了した後、基板ヘッド204の回転を停止させ、基板ヘッド204を上昇させて基板Wを洗浄槽202の上方位置まで引上げ、更に基板ヘッド204を第2基板搬送ロボット26との受渡し位置まで移動させ、この第2基板搬送ロボット26に基板Wを受渡して次工程に搬送する。
【0082】
図18は、乾燥ユニット20を示す。この乾燥ユニット20は、先ず化学洗浄及び純水洗浄を行い、しかる後、スピンドル回転により洗浄後の基板Wを完全乾燥させるようにしたユニットで、基板Wのエッジ部を把持するクランプ機構420を備えた基板ステージ422と、このクランプ機構420の開閉を行う基板着脱用昇降プレート424を有している。この基板ステージ422は、スピンドル回転用モータ426の駆動に伴って高速回転するスピンドル428の上端に連結されている。
【0083】
更に、クランプ機構420で把持した基板Wの上面側に位置して、超音波発振器により特殊ノズルを通過する際に超音波を伝達して洗浄効果を高めた純水を供給するメガジェットノズル430と、回転可能なペンシル型洗浄スポンジ432が、旋回アーム434の自由端側に取付けられて配置されている。これにより、基板Wをクランプ機構420で把持して回転させ、旋回アーム434を旋回させながら、メガジェットノズル430から純水を洗浄スポンジ432に向けて供給しつつ、基板Wの表面に洗浄スポンジ432を擦り付けることで、基板Wの表面を洗浄する。なお、基板Wの裏面側にも、純水を供給する洗浄ノズル(図示せず)が備えられ、この洗浄ノズルから噴射される純水で基板Wの裏面も同時に洗浄される。
そして、このようにして洗浄した基板Wは、スピンドル428を高速回転させることでスピン乾燥させられる。
【0084】
また、クランプ機構420で把持した基板Wの周囲を囲繞して処理液の飛散を防止する洗浄カップ436が備えられ、この洗浄カップ436は、洗浄カップ昇降用シリンダ438の作動に伴って昇降するようになっている。
なお、この乾燥ユニット20にキャビテーションを利用したキャビジェット機能も搭載するようにしてもよい。
【0085】
次に、この無電解めっき装置による一連の処理(無電解めっき処理)について、図19を参照して説明する。
先ず、表面に配線8を形成した基板Wを該基板Wの表面を上向き(フェースアップ)で収納してロード・アンロードユニット11に搭載した基板カセットから、1枚の基板Wを第1基板搬送ロボット24で取出し仮置台22に搬送して該仮置台22上に載置する。この仮置台22に載置された基板Wを、第2基板搬送ロボット26で前洗浄ユニット14に搬送する。
【0086】
この前洗浄ユニット14では、基板Wをフェースアップで保持し、基板Wの表面に洗浄液による化学的作用と洗浄部材による機械的作用(スクラブ洗浄)を組合せた前洗浄を行って、基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体等を完全に除去する。この例では、BTA(ベンゾトリアゾール)などの防食剤及び/または金属錯体を除去するため、洗浄液として、クエン酸の水溶液にエチレンジアミン二酢酸(EDTA)を含むpHが3以上(pH>3)の有機酸溶液を使用する。
【0087】
つまり、全表面を純水で濡らした回転中の基板Wの表面に、洗浄部材(ロール状ブラシ)42を回転させながら接触させ、この洗浄部材(ロール状ブラシ)42が基板Wの表面に接触すると同時に、基板Wの上方に配置された洗浄液用ノズル32から、基板Wの表面に、クエン酸の水溶液にエチレンジアミン二酢酸(EDTA)を含むpHが3以上(pH>3)の有機酸溶液からなる洗浄液を供給する。これにより、洗浄液による化学的作用と洗浄部材42による機械的作用を組合せた前洗浄で基板Wの表面に残った防食剤及び/または金属錯体等を完全に除去する。この基板の表面(上面)の前洗浄と並行して、必要に応じて、基板の裏面(下面)の前洗浄を行う。
【0088】
そして、所定時間、例えば30秒間、上記処理を行った後、基板Wの表面を純水用ノズル38から供給される純水でリンスし、基板Wの裏面も同様に、必要に応じて、純水用ノズル38から供給される純水でリンスする。
【0089】
次に、前洗浄後の基板を触媒付与ユニット15に搬送し、この触媒付与ユニット15の基板ホルダ58で基板Wをフェースダウンで保持し、基板の表面に、例えばPd触媒付与液を接触させて配線8の表面に触媒を付与する。つまり、図6に示すように、内槽100bの上端開口部を覆う位置に処理ヘッド60を位置させ、内槽100b内に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから第1処理液タンク120内の第1処理液を基板Wに向けて噴出する。この第1処理液として、例えばPd触媒付与液を使用し、これによって、配線8の表面に触媒を付与する。触媒金属としては、白金族元素、コバルト、ニッケルのいずれもが使用できるが、反応速度や制御のし易さなどの点から、触媒としてPdを用いることが好ましい。
【0090】
この時、前洗浄後の基板の表面を純水でリンスし、基板の表面が完全に乾燥する前に、基板の表面を触媒付与液に接触させることが好ましい。これにより、前洗浄処理から触媒付与処理を開始するまでの間に、配線表面に酸化膜が再形成されたり、ウォータマークが形成されたりするのを抑えて、配線表面に触媒を均一に付与し、その後の無電解めっきで成膜される保護膜(めっき膜)に欠陥の生じることを防止することができる。
【0091】
触媒付与ユニット15で、配線8の表面にPd等の触媒を付与した後、基板の表面を純水で洗浄(リンス)する。つまり、基板Wを保持した基板ホルダ58を内槽100bの上方まで上昇させ、内槽100bの上部を蓋体102で覆った後、蓋体102に設けたノズル板112の噴射ノズル112aから第2処理液を基板Wに向けて噴出する。この第2処理液として、好ましくは脱気させた純水を使用し、これによって、基板Wの表面を純水で洗浄(リンス)する。
【0092】
次に、触媒付与処理後の基板Wを無電解めっきユニット16に搬送する。無電解めっきユニット16では、基板Wをフェースダウンで保持した基板ヘッド204を下降させて、基板Wをめっき槽200内の無電解めっき液に浸漬させ、これによって、無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。つまり、例えば、液温が80℃のCoWPめっき液中に、基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。
【0093】
そして、基板Wをめっき液の液面から引上げた後、噴射ノズル268から基板Wに向けて純水等のめっき停止液を噴出し、これによって、基板Wの表面のめっき液を停止液に置換させて無電解めっきを停止させる。次に、基板Wを保持した基板ヘッド204を洗浄槽202内の所定の位置に位置させ、洗浄槽202内のノズル板282の噴射ノズル280から純水を基板Wに向けて噴出して、基板Wを洗浄(リンス)し、同時にヘッド洗浄ノズル286から純水をヘッド部232に噴出してヘッド部232を洗浄する。これによって、配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0094】
次に、この無電解めっき処理後の基板Wを第2基板搬送ロボット26で後洗浄ユニット18に搬送し、ここで、基板Wの表面に形成された保護膜(金属膜)9の選択性を向上させて歩留りを高めるためのめっき後処理(後洗浄)を施す。つまり、基板Wの表面に、例えばロールスクラブ洗浄やペンシル洗浄による物理的な力を加えつつ、めっき後処理液(薬液)を基板Wの表面に供給し、これにより、絶縁膜(層間絶縁膜)2上に残っている金属微粒子等のめっき残留物を完全に除去して、めっきの選択性を向上させる。
【0095】
そして、このめっき後処理後の基板Wを第2基板搬送ロボット26で乾燥ユニット20に搬送し、ここで必要に応じてリンス処理を行い、しかる後、基板Wを高速で回転させてスピン乾燥させる。
このスピン乾燥後の基板Wを、第2基板搬送ロボット26で仮置台22の上に置き、この仮置台22の上に置かれた基板を、第1基板搬送ロボット24でロード・アンロードユニット11に搭載された基板カセットに戻す。
【0096】
この例によれば、配線表面に、触媒を付与した後に保護膜を成膜する場合に、配線表面に触媒を付与する処理に先立って、洗浄液による化学的作用と洗浄部材による機械的作用を組合せた前洗浄で基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体を完全に除去して、配線表面により均一に触媒を付与し、しかも配線表面に防食剤及び/または金属錯体がない状態で保護膜を成膜することができる。
【0097】
図20は、本発明の他の実施の形態の無電解めっき装置の平面配置図を示す。この図20に示す例の図1に示す例と異なる点は、装置フレーム12の内部に、図1に示す前洗浄ユニット14及び触媒付与ユニット15の代わりに、洗浄ユニット14a及び前処理ユニット15aを配置した点にある。この洗浄ユニット14aは、使用する処理液が異なるだけで、図1に示す触媒付与ユニット15と同じ構成で、前処理ユニット15aは、使用する処理液が異なるだけで、図1に示す前洗浄ユニット14と同じ構成である。
【0098】
この例では、洗浄ユニット14aで基板の表面を洗浄した後、前処理ユニット15aで基板の前処理、つまり基板の表面の洗浄と配線の表面への触媒の付与を同時に行い、しかる後、無電解めっきユニット16で配線の表面の保護膜を選択的に形成するようにしている。
【0099】
すなわち、図21に示すように、基板を収納してロード・アンロードユニット11に搭載した基板カセットから、1枚の基板Wを第1基板搬送ロボット24で取出し仮置台22に搬送して該仮置台22上に載置する。この仮置台22に載置された基板Wを、第2基板搬送ロボット26で洗浄ユニット14aに搬送する。
【0100】
この洗浄ユニット14aでは、前述の触媒付与ユニット15における第1処理液(触媒付与液)の代わりに洗浄液を使用し、フェースダウンで保持した基板の表面に向けて洗浄液を噴射して、基板の表面を洗浄液で洗浄し、しかる後、洗浄後の基板Wの表面を純水でリンスする。そして、洗浄後の基板を前処理ユニット15aに搬送する。
【0101】
この前処理ユニット15aでは、前述の前洗浄ユニット14における洗浄液の代わりに、触媒を含む前処理液(触媒付与兼洗浄液)を使用し、フェースアップで保持した基板Wの表面に前処理液による化学的作用と洗浄部材による機械的作用(スクラブ洗浄)を組合せた洗浄と触媒付与処理を同時に行って、基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体等を完全に除去し、同時に配線の表面に触媒を付与する。
【0102】
つまり、全表面を純水で濡らした回転中の基板Wの表面に、洗浄部材(ロール状ブラシ)42(図3参照)を回転させながら接触させ、この洗浄部材(ロール状ブラシ)42が基板Wの表面に接触すると同時に、基板Wの上方に配置された洗浄液用ノズル32(図3参照)から、基板Wの表面に前処理液(触媒付与兼洗浄液)を供給する。
そして、所定時間、例えば30秒間、上記処理を行った後、基板Wの表面を純水でリンスし、基板Wの裏面も同様に、必要に応じて、純水でリンスする。
【0103】
この時、洗浄後の基板の表面を純水でリンスし、基板の表面が完全に乾燥する前に、基板の表面を前処理液に接触させることが好ましい。これにより、洗浄処理から前処理を開始するまでの間に、配線表面に酸化膜が再形成されたり、ウォータマークが形成されたりするのを抑えて、配線表面に触媒を均一に付与し、その後の無電解めっきで成膜される保護膜(めっき膜)に欠陥の生じることを防止することができる。
【0104】
次に、前処理後の基板を無電解めっきユニット16に搬送し、ここで配線8の表面に選択的な無電解めっきを施す。これ以降の処理は、前述の例と同様である。
このように、洗浄ユニット14aと前処理ユニット15aとを組合せたマルチステップ処理を行って、基板の洗浄効果をより高めることができる。
【0105】
この例によれば、基板表面の洗浄と配線表面への触媒付与処理を一つの前処理液を使用して同時に行った後に配線表面に保護膜を成膜したりする場合に、無電解めっきによる成膜に先立って、前処理液による化学的作用と洗浄部材による機械的作用を組合せた前処理で基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体を完全に除去することができる。しかも、基板の表面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させことで、基板の全面に亘る前処理を行うことができる。
【0106】
なお、配線の表面に選択的に形成する保護膜を構成する合金膜の種類によっては、基板の表面に、触媒を付与することなく、保護膜(合金膜)を直接形成できるものもある。このような合金膜を保護膜として使用する場合には、図20に示す前処理ユニット15aの前処理液として、前述の前洗浄ユニット14の場合と同様に、例えばクエン酸の水溶液にエチレンジアミン二酢酸(EDTA)を含むpHが3以上(pH>3)の有機酸溶液からなる洗浄液を使用する。そして、図22に示すように、ロード・アンロードユニット11に搭載した基板カセットから取出されて仮置台22に搬送された基板Wを前処理ユニット15aに搬送し、この前処理ユニット15aで基板Wをフェースアップで保持し、基板Wの表面に前処理液(洗浄液)による化学的作用と洗浄部材による機械的作用(スクラブ洗浄)を組合せた前洗浄を行って、基板の表面に残った防食剤及び/または金属錯体等を完全に除去する。そして、基板Wの表面を純水でリンスし、基板Wの裏面も同様に、必要に応じて、純水でリンスした後、無電解めっきユニット16に搬送し、ここで配線8の表面に選択的な無電解めっきを施すようにしてもよい。これ以降の処理は、前述の例と同様である。
【0107】
この場合にあっても、洗浄ユニット14aで基板を洗浄してから、前処理ユニット15aで基板の前処理(洗浄)を行うようにしてもよい。
これまで本発明の一実施例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0108】
なお、上記の例では、基板Wの表面または両面に洗浄液(前処理液)を供給しつつ、ロール状の洗浄部材42,46を回転軸40,44まわりに同一方向に回転させながら、それらの表面を基板Wの表面または両面に接触させて、基板Wの前洗浄(前処理)を行うようにしているが、基板の表面または両面に洗浄液(前処理液)を供給しつつ、揺動アームの先端に取付けた回転可能な洗浄部材を水平方向に回転運動する基板に接触させて、基板の前洗浄(前処理)を行うようにしてもよい。また、揺動アームの先端に取付けた回転可能な洗浄部材を水平方向に回転運動する基板に当接させるとともに、超音波振動を帯びた液体を基板の表面に向けて噴射させて基板の前洗浄(前処理)を行うようにしてもよい。更に、基板の表面または両面をバフ等で研磨して、基板の前洗浄(前処理)を行うようにしてもよい。
【0109】
(実施例1)
図1に示す前洗浄ユニット14を使用した試料の前洗浄を行って、洗浄効果を調べた。先ず、1000nmの銅膜を表面に電解めっきで一様に形成し、該銅膜を500nm残してCMPで研磨した300mmφの銅ブランケットウェーハを試料として用意した。このCMP後の試料の銅表面にはベンゾトリアゾール(BTA)が残してある。
【0110】
そして、被処理面(表面)を上向きにして、試料を前洗浄ユニット14のローラ30で保持し、試料を110rpmで回転させながら、試料の全表面を純水で5秒間濡らした。そして、洗浄部材(ロール状ブラシ)42を、100rpmで回転させながら試料の表面に接触させた。洗浄部材42が試料の表面に接触すると同時に、洗浄液用ノズル32から、クエン酸の水溶液にエチレンジアミン二酢酸(EDTA)を含むpHが3以上(pH>3)の有機酸溶液からなる洗浄液を試料の表面に供給し、30秒に亘る試料の洗浄(前洗浄)を行った。その後、試料をローラ30から離し、直ちに、試料の表面を15秒間純水でリンスした。
【0111】
(比較例1)
実施例1と同様な試料を用意し、いわゆるスプレー方式による試料の洗浄を行った。つまり、被処理面(表面)を下向きにして、試料をスプレー方式の洗浄ユニットにセットし、試料を20rpmで水平回転させながら、試料の下方に配置した複数の噴射ノズルから、クエン酸の水溶液にエチレンジアミン二酢酸(EDTA)を含むpHが3以上(pH>3)の有機酸溶液からなる洗浄液を試料の全表面に向けて噴射して、30秒に亘る試料の洗浄(前洗浄)を行った。その後、試料全面を15秒間純水でリンスした。
【0112】
(比較例2)
実施例1と同様な試料を用意し、いわゆる浸漬方式による試料の洗浄を行った。つまり、被処理面(表面)を下向きにして、試料を浸漬方式の洗浄ユニットにセットし、試料を20rpmで水平回転させながら、クエン酸の水溶液にエチレンジアミン二酢酸(EDTA)を含むpHが3以上(pH>3)の有機酸溶液からなる洗浄液に浸漬させて、60秒の亘る試料の洗浄(前洗浄)を行った。その後、試料を洗浄液から引上げ、その表面を15秒間純水でリンスした。
【0113】
実施例1、比較例1及び2における処理条件をまとめて表1に示す。
【表1】

この表1から、実施例1によれは、比較例1及び2に比較して、1枚の試料に対して使用される洗浄液(薬液)が少なくて済むことが判る。
【0114】
実施例1、比較例1及び2による処理後の試料からそれぞれチップを切出し、X線光電子分光法(XPS)分析を行った。この分析によって検出されたN元素及びO元素の相対値を表2に示す。
【0115】
【表2】

N元素及びO元素は、それぞれBTAの残留量および金属酸化物に比例すると考えられる。この表2から、実施例1は、比較例1及び2に比較して、防食材であるBTAまたはCu−BTA錯体および金属酸化物の除去に有効であることが判る。
【0116】
(実施例2)
CMPで銅配線の露出表面を形成した300mmφのパタンウェーハを試料として用意した。CMP後の銅配線の表面にはベンゾトリアゾール(BTA)が残してある。
この試料の表面を前述の実施例1と同様にして洗浄(前洗浄)して純水でリンスした。次に、前洗浄後の試料を無電解めっきユニットに搬入し、Co及びWの無機塩、及びDMABを含むpHが8以上(pH>8)の無電解めっき液に試料を浸漬させて、銅配線の表面に保護膜を形成した。所定時間経過後、試料を無電解めっき液から引上げ、直ちに5秒の試料全面を純水でリンスした。その後、試料を洗浄し乾燥させた。
【0117】
(比較例3)
実施例2と同様な試料を用意し、この試料の表面を前述の比較例1と同様にして洗浄(前洗浄)し純水でリンスした。そして、この洗浄後(前洗浄後)の試料の配線の表面に、実施例2と同様にして保護膜を形成し、洗浄後乾燥させた。
【0118】
(比較例4)
実施例2と同様な試料を用意し、この試料の表面を前述の比較例2と同様にして洗浄(前洗浄)し純水でリンスした。そして、この洗浄後(前洗浄後)の試料の配線の表面に、実施例2と同様にして保護膜を形成し、洗浄後乾燥させた。
【0119】
実施例2、比較例3及び4によって銅配線上に形成された保護膜(Co合金膜)の代表的な箇所における膜厚を光学式の薄膜測定器を測定した。この測定結果から得られた保護膜の膜厚の平均値および不均一性(3σ)を表3に示す。
【0120】
【表3】

表3から、実施例2にあっては、比較例3及び4に比較して、配線上に形成した保護膜の面内均一性が良いことが判る。
【0121】
(実施例3)
実施例2と同様な試料を用意し、試料の表面を前述の実施例1と同様にして洗浄(前洗浄)して純水でリンスした。次に、試料を触媒処理ユニットに搬入し、PdSO含むpHが2以下(pH<2)の硫酸水溶液からなる触媒付与液に試料を浸漬させ、所定時間経過後に試料を触媒付与液から引上げた。そして、直ちに試料表面を10秒間純水でリンスした。その後、試料を無電解めっきユニットに搬入し、Co及びWの無機塩、及び次亜燐酸塩を含むpHが8以上(pH>8)の無電解めっき液に試料を浸漬させて、銅配線の表面に保護膜を形成した。所定時間経過後、試料を無電解めっき液から引上げ、直ちに5秒の試料全面を純水でリンスした。その後、試料を洗浄し乾燥させた。
【0122】
(比較例5)
実施例2と同様な試料を用意し、試料の表面を前述の比較例1と同様にして洗浄(前洗浄)して純水でリンスした。そして、この洗浄後(前洗浄後)の試料の配線の表面に、実施例3と同様にして保護膜を形成し、洗浄後乾燥させた。
【0123】
(比較例6)
実施例2と同様な試料を用意し、試料の表面を前述の比較例2と同様にして洗浄(前洗浄)して純水でリンスした。そして、この洗浄後(前洗浄後)の試料の配線の表面に、実施例3と同様にして保護膜を形成し、洗浄後乾燥させた。
【0124】
実施例3、比較例5及び6によって銅配線上に形成された保護膜(Co合金膜)の代表的な箇所における膜厚を光学式の薄膜測定器を測定した。この測定結果から得られた保護膜の膜厚の平均値および不均一性(3σ)を表4に示す。
【0125】
【表4】

表3から、実施例3にあっては、比較例5及び6に比較して、配線上に形成した保護膜の面内均一性が良いことが判る。
【0126】
次に、実施例3、比較例5及び6で処理した配線のリーク電流を測定した。その分布を図23に示す。この図は、基準となる処理していない試料の配線におけるリーク電流分布も併せて表示している。ここで、リーク電流が大きくなる方向にシフトしないことがデバイスの性能として要求される。図23に示すように、実施例3では、比較例5及び6に比較して、保護膜を形成した配線におけるリーク電流は、処理していない配線におけるリーク電流に最も近い。これにより、実施例3によれば、試料の表面に残留した不純物を有効に除去でき、めっき後の配線のリークに最も低い値が得られることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施の形態の無電解めっき装置を示す平面配置図である。
【図2】図1に示す無電解めっき装置の前洗浄ユニットの平面図である。
【図3】図1に示す無電解めっき装置の前洗浄ユニットの概略断面図である。
【図4】図1に示す無電解めっき装置の触媒付与ユニットの基板受渡し時における外槽を省略した正面図である。
【図5】図1に示す無電解めっき装置の触媒付与ユニットの第1処理液による処理時における外槽を省略した正面図である。
【図6】図1に示す無電解めっき装置の触媒付与ユニットの第2処理液による処理時における外槽を省略した正面図である。
【図7】図1に示す無電解めっき装置の触媒付与ユニットの基板受渡し時における処理ヘッドを示す断面図である。
【図8】図7のA部拡大図である。
【図9】図1に示す無電解めっき装置の触媒付与ユニットの基板固定時における図8相当図である。
【図10】図1に示す無電解めっき装置の触媒付与ユニットの系統図である。
【図11】図1に示す無電解めっき装置の無電解めっきユニットの基板受渡し時における基板ヘッドを示す断面図である。
【図12】図11のB部拡大図である。
【図13】図1に示す無電解めっき装置の無電解めっきユニットの基板固定時における基板ヘッドを示す図12相当図である。
【図14】図1に示す無電解めっき装置の無電解めっきユニットのめっき処理時における基板ヘッドを示す図12相当図である。
【図15】図1に示す無電解めっき装置の無電解めっきユニットのめっき槽カバーを閉じた時のめっき槽を示す一部切断の正面図である。
【図16】図1に示す無電解めっき装置の無電解めっきユニットの洗浄槽を示す断面図である。
【図17】図1に示す無電解めっき装置の無電解めっきユニットの系統図である。
【図18】図1に示す無電解めっき装置の乾燥ユニットを示す縦断正面図である。
【図19】図1に示す無電解めっき装置における処理を示すフロー図である。
【図20】本発明の他の実施の形態の無電解めっき装置を示す平面配置図である。
【図21】図20に示す無電解めっき装置における処理を示すフロー図である。
【図22】図20に示す無電解めっき装置における他の処理を示すフロー図である。
【図23】実施例3、比較例5及び6における配線のリーク電流分布を示すグラフである。
【図24】従来の銅ダマシン配線構造を示す図である。
【図25】無電解めっきで配線の表面に保護膜を選択的に形成する例を工程順に示す図である。
【図26】半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す図である。
【図27】従来の配線の表面に保護膜を選択的に形成する工程示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
8 配線
9 保護膜
11 ロード・アンロードユニット
12 装置フレーム
14 前洗浄ユニット
14a 洗浄ユニット
15 触媒付与ユニット
15a 前処理ユニット
16 無電解めっきユニット
18 後洗浄ユニット
20 乾燥ユニット
30 ローラ
32,36 洗浄液用ノズル
34,38 純水用ノズル
40 回転軸
40,44 回転軸
42,46 洗浄部材
48 スポンジ
58 基板ホルダ
60 処理ヘッド
84 シールリング
86 基板固定リング
92 蛇腹板
94 被覆板
100 処理槽
102 蓋体
200 めっき槽
202 洗浄槽
204 基板ヘッド
230 ハウジング部
232 ヘッド部
234 吸着ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に埋込み配線を形成した基板を用意し、
ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に前処理液を供給して前処理を行い、しかる後、
基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項2】
前記前処理後の基板の表面を純水でリンスし、基板の表面が完全に乾燥する前に基板の表面を無電解めっき液に接触させることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき方法。
【請求項3】
内部に埋込み配線を形成した基板を用意し、
ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に洗浄液を供給して基板の前洗浄を行い、
前洗浄後の基板の表面を触媒付与液に接触させて配線の表面に触媒を付与し、しかる後、
基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項4】
前記前洗浄後の基板の表面を純水でリンスし、基板の表面が完全に乾燥する前に基板の表面を触媒付与液に接触させることを特徴とする請求項3記載の無電解めっき方法。
【請求項5】
ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に前処理液を供給して前処理を行う前処理ユニットと、
基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきユニットを有することを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項6】
ウェット状態の基板の表面または両面に洗浄部材を接触させ、両者を相対的に移動させながら、基板の表面または両面に洗浄液を供給して基板の前洗浄を行う前洗浄ユニットと、
前洗浄後の基板の表面を触媒付与液に接触させて配線の表面に触媒を付与する触媒付与ユニットと、
基板の表面を無電解めっき液に接触させて配線の表面に保護膜を選択的に形成する無電解めっきユニットを有することを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項7】
基板を洗浄液中に浸漬させるか、または基板に向けて洗浄液を噴射して基板を洗浄する洗浄ユニットを更に有することを特徴とする請求項5または6記載の無電解めっき装置。
【請求項8】
前記洗浄部材は、多孔質連続気孔組織のポリビニルアルコールまたはフッ素樹脂材からなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の無電解めっき装置。
【請求項9】
前記洗浄部材は、中心に回転軸を有するロール状ブラシであることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の無電解めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−332445(P2007−332445A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167867(P2006−167867)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】