説明

無電解ニッケルめっき方法

【課題】 十分な選択めっき性が得られるとともに、耐食性に優れる無電解ニッケル/金めっきを施すことが可能な無電解ニッケルめっき方法を提供すること。
【解決手段】 基板上に形成された金属導体配線上に第1の無電解ニッケルめっき皮膜を、当該第1無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準としたリン含有量が6〜8質量%となるように形成する第1の無電解ニッケルめっき工程と、上記第1のニッケルめっき皮膜上に、上記第1のニッケルめっき皮膜よりもリン含有量が高い第2の無電解ニッケルめっき皮膜を形成する第2の無電解ニッケルめっき工程と、を有することを特徴とする無電解ニッケルめっき方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解ニッケルめっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板上に形成された例えば銀又は銅等からなる導体パターン上にのみ選択的にニッケルめっき皮膜を形成する方法として、電解めっき法と無電解めっき法が広く知られている。これらのうち、電解めっき法が、処理コスト及び浴安定性の観点で有利であることから、主として採用されている。
【0003】
一方、近年においては、半導体デバイス等の配線基板への電子回路の実装を、より高集積化及び/又は極微細化する必要性が生じてきている。しかし、上記電解めっき法は、電源リードに対する設計上の制約があり、また、孤立パターン上へのめっき皮膜の形成が比較的困難であるため、上記要求に対応できない場合が生じている。したがって、今後はこのような点で有利である無電解めっき法に対する必要性が高まるものと予想される。
【0004】
対象となるプリント配線板やパッケージ基板の金属導体配線には、一般的に銅が使用されている。無電解めっき法では、置換型のパラジウム触媒液で銅配線上のみにパラジウム触媒核を付与した後、順次、無電解ニッケルめっき及び置換金めっきを行い、厚付け金めっきが必要な場合は、更に無電解金めっきを行うことで、金めっき配線を形成し製品を得る。これらの製品の最外層に金めっきを行うのは、実装した部品や半導体チップにワイヤーボンディング接合や、はんだ接合が必要になるためである。また、銅配線上に直接金めっきを行わないのは、基板に熱が掛かると金皮膜中に下地の銅が拡散し、接続信頼性が低下するためである。そのため、拡散を防ぐバリヤめっきとして無電解ニッケルめっきを行う必要がある。
【0005】
無電解ニッケルめっき液は、ニッケル化合物、錯化剤、還元剤、pH緩衝剤、液安定剤等からなる。無電解ニッケルめっき液では、めっき液構成中の還元剤の種類によって析出するめっき皮膜が異なる。還元剤が次亜リン酸塩の場合は、ニッケル−リン合金皮膜になり、還元剤が水素化ホウ素塩やジメチルアミンボランの場合は、ニッケル−ホウ素合金皮膜になる。また、還元剤がヒドラジンの場合は、ニッケル−窒素合金皮膜になる。更に、ニッケル−リン合金皮膜は、液組成や作業条件等の違いによりリンの共析量が異なる。一般的に、無電解ニッケルめっき液中の固形分全量を基準としたリン含有量が5質量%以下を低リンタイプ、6〜8質量%を中リンタイプ、9質量%以上を高リンタイプという。
【0006】
プリント配線板やパッケージ基板の無電解ニッケルめっきでは、ほとんどの場合、中リンタイプの無電解ニッケルめっき液を使用する。これは、選択めっき性が良いこと、ニッケル析出速度が速いこと等の理由による。中リンタイプの無電解ニッケルめっき液としては、例えば、NIPS−100(日立化成工業株式会社製、商品名)がある。
【0007】
また、下記特許文献1では、リン含有量の異なる2層の無電解ニッケルめっき皮膜を形成する方法が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−354685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プリント配線板やパッケージ基板では、銅配線上にのみ選択的に無電解めっきを行う必要がある。中リンタイプの無電解ニッケルめっき液を使用した場合、配線間のスペースが40μm位の細線パターンでも、配線板上にのみ選択的に無電解ニッケルめっきを行うことができる。しかしながら、ニッケルめっき皮膜の耐食性を更に向上させるため、高リンタイプの無電解ニッケルめっき液を使用した場合には、銅配線からはみ出してニッケルめっきが析出する場合がある。ひどい場合には、銅配線間全体にニッケルめっきが析出してしまうこともあり、選択めっき性の向上が望まれている。
【0010】
本発明者らは、高リンタイプの無電解ニッケルめっき液を使用した場合でも選択めっき性が得られるように、前処理の脱脂液やソフトエッチング液、置換パラジウム触媒液等の条件を振って試験を行ったが、若干良くなる程度で十分な改善には至らなかった。次に、上記特許文献1に記載の方法、すなわち、全ニッケルめっき皮膜の形成を高リンタイプの無電解ニッケルめっき液だけでは行わず、選択めっき性の良い中リンタイプの無電解ニッケルめっき液と組み合わせることを試みた。具体的には、最初に必要なニッケルめっき厚の半分を高リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いて形成し、残り半分を中リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いて形成したが、銅配線パターン外へのはみ出し析出は改善できなかった。この方法では、高リンタイプの無電解ニッケルめっき液での処理時間をゼロにしない限り、導体パターン外へのニッケルめっきのはみ出し析出を防ぐことは難しかった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な選択めっき性が得られるとともに、耐食性に優れる無電解ニッケル/金めっきを施すことが可能な無電解ニッケルめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、最初に必要なニッケルめっき厚の半分を中リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いて形成し、残りの半分を高リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いて形成したところ、銅配線パターン外のはみ出し析出は無く、選択性のあるニッケルめっき皮膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。更に、無電解ニッケルめっき皮膜を形成する際に、中リンタイプの無電解ニッケルめっき液での処理時間を短くしていったところ、わずか1分間程度の処理でも、中リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いた無電解ニッケルめっきを行うことで、十分な選択めっき性が得られることが判った。
【0013】
すなわち、本発明は、基板上に形成された金属導体配線上に第1の無電解ニッケルめっき皮膜を、当該第1無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準としたリン含有量が6〜8質量%となるように形成する第1の無電解ニッケルめっき工程と、上記第1の無電解ニッケルめっき皮膜上に、上記第1の無電解ニッケルめっき皮膜よりもリン含有量が高い第2の無電解ニッケルめっき皮膜を形成する第2の無電解ニッケルめっき工程と、を有することを特徴とする無電解ニッケルめっき方法を提供する。
【0014】
かかる無電解ニッケルめっき方法によれば、十分な選択めっき性を得ることができるとともに、耐食性に優れる無電解ニッケル/金めっきを施すことが可能となる。かかる効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、初めにリン含有量が6〜8質量%である第1の無電解ニッケル皮膜を金属導体配線上に形成することにより、十分な選択めっき性を得ることができ、この第1の無電解ニッケルめっき皮膜上に、当該第1の無電解ニッケル皮膜よりもリン含有量の高い第2の無電解ニッケル皮膜を形成することにより、得られる無電解ニッケルめっき皮膜の耐食性を向上させることができるためであると考えられる。そして、本発明の無電解ニッケルめっき方法によれば、選択めっき性及び耐食性の双方を、十分に高いレベルで達成することが可能となる。
【0015】
また、本発明の無電解ニッケルめっき方法は、上記第2の無電解ニッケルめっき工程において、上記第2の無電解ニッケルめっき皮膜を、当該第2の無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準としたリン含有量が9〜13質量%となるように形成することが好ましい。これにより、得られる無電解ニッケルめっき皮膜は耐食性にさらに優れるものとなる。
【0016】
更に、本発明の無電解ニッケルめっき方法において、上記金属導体配線は銅からなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、十分な選択めっき性が得られるとともに、耐食性に優れる無電解ニッケル/金めっきを施すことが可能な無電解ニッケルめっき方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
本発明の無電解ニッケルめっき方法は、基板上に形成された金属導体配線上に第1の無電解ニッケルめっき皮膜を、当該第1無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準としたリン含有量が6〜8質量%となるように形成する第1の無電解ニッケルめっき工程と、上記第1の無電解ニッケルめっき皮膜上に、上記第1の無電解ニッケルめっき皮膜よりもリン含有量が高い第2の無電解ニッケルめっき皮膜を形成する第2の無電解ニッケルめっき工程と、を有することを特徴とする方法である。以下、各工程について詳細に説明する。
【0020】
第1の無電解ニッケルめっき工程を行うに際して、まず、ガラスエポキシ等の絶縁基板上に銅配線等の金属導体配線を形成した被めっき材を用意する。ここで、金属導体配線は、印刷法又はエッチング法等の公知の方法により形成することができる。次に、この被めっき材に対し、従来のめっき法と同様にして、前処理として脱脂、酸洗浄及び触媒付与を行う。より具体的には、被めっき材を、脱脂液、水洗、ソフトエッチング液、水洗、酸洗、水洗、置換パラジウム触媒液、水洗の順番に処理し、金属導体配線上にのみパラジウム触媒核を付与する。
【0021】
このようにして被めっき材の前処理を行った後、第1の無電解ニッケルめっき工程により、金属導体配線上に第1の無電解ニッケルめっき皮膜を形成する。
【0022】
ここで、第1の無電解ニッケルめっき工程により形成する第1の無電解ニッケルめっき皮膜のリン含有量は、当該第1の無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準として6〜8質量%であることが必要である。なお、このリン含有量が6質量%未満でも、8質量%を超えても、選択めっき性が不十分となる。
【0023】
第1の無電解ニッケルめっき皮膜は、例えば、当該第1の無電解ニッケルめっき皮膜を形成するための無電解ニッケルめっき液(第1の無電解ニッケルめっき液)に被めっき材を浸漬処理することにより形成することができる。
【0024】
ここで、第1の無電解ニッケルめっき液としては、当該無電解ニッケルめっき液中の固形分全量を基準としてリン含有量が6〜8質量%である中リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いることが好ましい。なお、第1の無電解ニッケルめっき皮膜中のリン含有量は、第1の無電解ニッケルめっき液中のリン含有量、すなわち、第1の無電解ニッケルめっき液中の塩化ニッケル又は硫酸ニッケル等のニッケルイオン源、及び、還元剤である次亜リン酸塩のそれぞれの含有量を変化させることで調節することができる。また第1の無電解ニッケルめっき液には、塩化ニッケル又は硫酸ニッケル等のニッケルイオン源及び還元剤である次亜リン酸塩に加えて、クエン酸、マロン酸及び酒石酸等の有機酸、又はその塩等の錯化剤、あるいはその他のpH調整剤等の通常用いる各種添加剤を適量加えてもよい。
【0025】
第1の無電解ニッケルめっき工程により形成する第1の無電解ニッケルめっき皮膜の厚さは、特に制限されないが、0.5μm以上とすることが好ましく、0.5〜3μmとすることがより好ましい。この厚さが0.5μm未満であると、選択めっき性が不十分になりやすい傾向がある。
【0026】
第1の無電解ニッケルめっき工程において、第1の無電解ニッケルめっき液への被めっき材の浸漬時間は特に制限されないが、上記範囲の厚さの第1の無電解ニッケルめっき皮膜が得られる浸漬時間とすることが好ましく、例えば、上述した中リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いる場合、1分以上とすることが好ましく、1〜10分とすることがより好ましい。この浸漬時間を1分以上とすることにより、第1の無電解ニッケルめっき皮膜の厚みを0.5μm程度以上とすることができる。浸漬時間が1分未満であると、第1の無電解ニッケルめっき皮膜の厚みが0.5μm未満となり、第2の無電解ニッケルめっき工程において形成する第2の無電解ニッケルめっき皮膜が金属導体配線パターン外にはみ出し析出しやすくなる傾向にある。また、過剰な時間浸漬処理すると、設定ニッケルめっき厚(第1の無電解ニッケルめっき皮膜及び第2の無電解ニッケルめっき皮膜を含む無電解ニッケルめっき皮膜全体の厚さ)に対して、第2の無電解ニッケルめっき皮膜である高リン含有ニッケル皮膜分が薄くなってしまい、耐食性の向上が不十分になりやすい傾向にある。
【0027】
次に、第1の無電解ニッケルめっき皮膜が形成された被めっき材を水洗した後、第2の無電解ニッケルめっき工程を行う。
【0028】
第2の無電解ニッケルめっき工程で形成する第2の無電解ニッケルめっき皮膜は、第1の無電解ニッケルめっき皮膜よりもリン含有量が高い皮膜であれば特に制限されないが、より十分な耐食性を有する無電解ニッケルめっき皮膜を得る観点から、リン含有量が第2の無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準として9〜13質量%であることが好ましく、9〜11質量%であることがより好ましい。このリン含有量が9質量%未満であると、耐食性の向上が不十分となる傾向にあり、13質量%を超える無電解ニッケルめっき液の組成ではニッケル析出速度が著しく遅く、生産性が低下する傾向にある。
【0029】
第2の無電解ニッケルめっき皮膜は、例えば、当該第2の無電解ニッケルめっき皮膜を形成するための無電解ニッケルめっき液(第2の無電解ニッケルめっき液)に第1の無電解ニッケルめっき皮膜が形成された被めっき材を浸漬処理することにより形成することができる。
【0030】
ここで、第2の無電解ニッケルめっき液としては、当該無電解ニッケルめっき液中の固形分全量を基準として、リン含有量が9〜13質量%(より好ましくは9〜11質量%)である高リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いていることが好ましい。なお、形成される第2の無電解ニッケルめっき皮膜中のリン含有量は、第1の無電解ニッケルめっき皮膜と同様に、第2の無電解ニッケルめっき液中のリン含有量を変化させることで調節することができる。また、第2の無電解ニッケルめっき液には、上述した第1の無電解ニッケルめっき液と同様の各種添加剤を適量加えてもよい。
【0031】
第2の無電解ニッケルめっき工程により形成する第2の無電解ニッケルめっき皮膜の厚さは、特に制限されないが、1μm以上とすることが好ましく、1〜5μmとすることがより好ましい。この厚さが1μm未満であると、耐食性の向上が不十分となりやすい傾向がある。
【0032】
第2の無電解ニッケルめっき工程において、第2の無電解ニッケルめっき液への被めっき材の浸漬時間は特に制限されないが、上記範囲の厚さの第2の無電解ニッケルめっき皮膜が得られる浸漬時間とすることが好ましく、例えば、上述した高リンタイプの無電解ニッケルめっき液を用いる場合、7分以上とすることが好ましく、7〜35分とすることがより好ましい。この浸漬時間を7分以上とすることにより、第2の無電解ニッケルめっき皮膜の厚みを1μm程度以上とすることができる。浸漬時間が7分未満であると、第2の無電解ニッケルめっき皮膜の厚みが1μm未満となり、耐食性が不十分になりやすい傾向がある。また、過剰な時間浸漬処理すると、設定ニッケルめっき厚(第1の無電解ニッケルめっき皮膜及び第2の無電解ニッケルめっき皮膜を含む無電解ニッケルめっき皮膜全体の厚さ)に対して、第1の無電解ニッケルめっき皮膜である中リン含有ニッケル皮膜分が薄くなってしまい、選択めっき性が不十分になりやすい傾向がある。
【0033】
本発明の無電解ニッケルめっき方法においては、上記第2の無電解ニッケルめっき工程の後、酸化防止、はんだ濡れ性向上等の目的で置換金めっき処理を行うことが好ましい。また、ワイヤーボンディング接合等があり、厚付け金めっき皮膜が必要な場合は、上記の置換金メッキ処理を行い、水洗した後、更に無電解金めっき処理を行うことが好ましい。以上の工程により、選択めっき性に優れた高耐食性を有する無電解ニッケル/金めっき皮膜を得ることができる。
【実施例1】
【0034】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
まず、銅張積層板にライン幅/スペース幅=40μm/40μmの銅配線(銅箔厚さ18μm)を形成した配線板(被めっき材)を作製した。
【0036】
次に、配線板の表面の油脂や汚れ等を除去するために、酸性脱脂液CLC−5000(日立化成工業株式会社製、商品名)を50℃に調整して、その液中に上記配線板を4分間浸漬した後、25℃で水洗処理を3分間行った。次に表面の形状を均一化するために、過硫酸アンモニウム水溶液(100g/L)に配線板を浸漬し、25℃で1分間浸漬処理するソフトエッチング処理を行った後、水洗処理を25℃で1分間行った。続いて、表面の酸化膜を除去するために硫酸(100mL/L)に配線板を浸漬し、25℃で1分間浸漬処理を行い、その後、水洗処理を25℃で1分間行った。次に、置換パラジウム触媒液SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に配線板を浸漬し、25℃で5分間浸漬処理を行った後、水洗処理を25℃で1分間行い、めっき処理前の配線板を得た。
【0037】
次に、上記配線板を85℃の中リンタイプの無電解ニッケルめっき液NIPS−100(リン含有量6質量%(固形分全量基準)、日立化成工業株式会社製、商品名)に配線板を3分間浸漬し、リン含有量6質量%、厚さ1μmのニッケル−リン合金めっき皮膜(第1の無電解ニッケルめっき皮膜)を形成した(第1の無電解ニッケルめっき工程)。
【0038】
そして、水洗処理を25℃で1分間行った後、上記配線板を90℃の高リンタイプの無電解ニッケルめっき液ICPニコロンSOF(リン含有量9質量%(固形分全量基準)、奥野製薬工業株式会社製、商品名)に20分間浸漬し、リン含有量9質量%、厚さ3μmのニッケル−リン合金めっき皮膜(第2の無電解ニッケルめっき皮膜)を形成した(第2の無電解ニッケルめっき工程)。
【0039】
次に、水洗処理を25℃で1分間行った後、上記配線板を置換金めっき液HGS−500(日立化成工業株式会社製、商品名)に浸漬し、85℃で10分間浸漬処理して、厚さ0.03μmの置換金めっき皮膜を形成した。
【0040】
更に上記配線板の水洗処理を25℃で1分間行った後、上記配線板を無電解金めっき液HGS−5400(日立化成工業株式会社製、商品名)に浸漬し、60℃で20分間浸漬処理して、厚さ0.3μmの無電解金めっき皮膜を形成した。以上により、無電解ニッケル/金めっきを施した配線板を得た。なお、上記各工程での処理方法をまとめて表1に示した。また、表中の室温とは25℃である。
【表1】

【0041】
(比較例1)
第1の無電解ニッケルめっき工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、無電解ニッケル/金メッキを施した配線板を得た。なお、上記各工程での処理方法をまとめて表2に示した。また、表中の室温とは25℃である。
【表2】

【0042】
(比較例2)
第2の無電解ニッケルめっき工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、無電解ニッケル/金メッキを施した配線板を得た。なお、上記各工程での処理方法をまとめて表3に示した。また、表中の室温とは25℃である。
【表3】

【0043】
(比較例3)
第1の無電解ニッケルめっき工程と第2の無電解めっき工程の順序を逆にした以外は実施例1と同様にして、無電解ニッケル/金メッキを施した配線板を得た。なお、上記各工程での処理方法をまとめて表4に示した。また、表中の室温とは25℃である。
【表4】

【0044】
<選択めっき性評価>
実施例1及び比較例1〜3で得られた無電解ニッケル/金めっきを施した配線板について、選択めっき性を電子顕微鏡(倍率100倍)により観察した。その結果、実施例1及び比較例2で得られた配線板では、ライン幅/スペース幅=40μm/40μmの銅配線にニッケルめっきのはみ出し析出はみられず、選択めっき性の良好なニッケルめっき皮膜が得られていることが確認された。一方、比較例1及び3で得られた配線板では、ライン幅/スペース幅=40μm/40μmの銅配線の一部にニッケルめっきのはみ出し析出が見られ、選択めっき性が不十分であることが確認された。
【0045】
<耐食性の評価>
実施例1及び比較例1〜3で得られた無電解ニッケルめっきを施した配線板を、4%(40g/L)の塩化ナトリウム水溶液に室温(25℃)で24時間浸漬し、腐食(変色)の有無を観察した。その結果、実施例1及び比較例1で得られた配線板では、ニッケルめっきの色合いの変色はほとんど見られず、耐食性が良好(実用レベル)であることが確認された。一方、比較例2及び3で得られた配線板では、ニッケルめっきの色合いが変色(茶褐色、特にひどい部分は黒褐色に変色)し、耐食性が不十分(実用レベルより劣る)であることが確認された。
【0046】
以上より、本発明の無電解ニッケルめっき方法(実施例1)によれば、選択めっき性に優れた高耐食性の無電解ニッケル/金めっき皮膜を施すことが可能であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された金属導体配線上に、第1の無電解ニッケルめっき皮膜を、当該第1の無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準としたリン含有量が6〜8質量%となるように形成する第1の無電解ニッケルめっき工程と、
前記第1の無電解ニッケルめっき皮膜上に、前記第1の無電解ニッケルめっき皮膜よりもリン含有量が高い第2の無電解ニッケルめっき皮膜を形成する第2の無電解ニッケルめっき工程と、
を有することを特徴とする無電解ニッケルめっき方法。
【請求項2】
前記第2の無電解ニッケルめっき工程において、前記第2の無電解ニッケルめっき皮膜を、当該第2の無電解ニッケルめっき皮膜全量を基準としたリン含有量が9〜13質量%となるように形成することを特徴とする請求項1記載の無電解ニッケルめっき方法。
【請求項3】
前記金属導体配線が銅からなるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の無電解ニッケルめっき方法。

【公開番号】特開2007−119905(P2007−119905A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209918(P2006−209918)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】