説明

無電解パラジウムめっき液

【課題】無電解ニッケルめっき皮膜上に直接かつ、置換パラジウムめっき処理等の処理をすることなく密着性良好で、めっき厚バラツキの少ない純パラジウムめっき皮膜が形成可能な無電解パラジウムめっき液を提供する。
【解決手段】第1錯化剤と、第2錯化剤と、リン酸又はリン酸塩と、硫酸又は硫酸塩と、ギ酸又はギ酸塩からなり、前記第1錯化剤は、エチレンジアミンを配位子とした有機パラジウム錯体であり、第2錯化剤は、カルボキシル基を有するキレート剤又はその塩及び/又は水溶性脂肪族有機酸又はその塩であることを特徴とする無電解パラジウムめっき液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解パラジウムめっき液に関し、更に、詳しくは微細配線を有する電子部品上の回路や電極上に形成した無電解ニッケルめっき上に直接純パラジウム皮膜の形成が可能で下地無電解ニッケルめっきを侵すことが無く、且つ、密着性が良好な純パラジウムめっき皮膜の形成が可能である。また、選択析出性に優れ、めっき厚のバラツキが少ない、更に、結晶が均一且つ、緻密であるために、特に熱処理後、ニッケルの熱拡散に対するバリア効果に優れ、良好なはんだ付け性を有し、更にワイヤーボンディング性を有する純パラジウムめっき皮膜を形成可能にする無電解パラジウムめっき液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高信頼性が求められる電子部品用途の表面処理では金めっき皮膜が中心を担ってきた。しかし、金は希少価値であるため相場市場において価格高騰が続く度に代替金属の技術開発が注目されてきた。パラジウムは金地金と比較し価格が安価であること、金属の密度が金のおよそ60%であるため金めっき皮膜の膜厚を薄くするための代替金属として脚光を浴びてきた。ところが、近年においては価格だけでなく配線の微細化が加速する高信頼性電子部品においてはパラジウム皮膜特性の安定性並びに、選択析出性、信頼性が要求されている。
【0003】
従来、工業的用途で使用されている無電解パラジウムめっき液としては、例えば、特許文献1に記載されているように、水溶性パラジウム塩、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン及び、次亜リン酸ナトリウムから構成されているものが知られている。
【0004】
また、パラジウム化合物、アンモニア及びアミン化合物の少なくとも1種、2価の硫黄を含有する有機化合物、並びに、次亜リン酸化合物及び、水素化ホウ素化合物の少なくとも1種を必須成分として含有する無電解パラジウムめっき液も知られている。(例えば、特許文献2参照)。これらの無電解パラジウムめっき液からは、パラジウムーリン合金めっき皮膜が得られる。
【0005】
次に、特許文献3には、例えば、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム及び酢酸パラジウム等のパラジウム塩、一乃至複数の窒素含有錯化剤及びギ酸乃至ギ酸誘導体を含有し、4以上のpH値の、金属表面上にパラジウム層を析出するためのホルムアルデヒドの存在しない化学的浴剤が記載されている。
【0006】
更に、特許文献4には、(a)パラジウム化合物0.0001〜0.5モル/L、(b)アンモニア及びアミン化合物の少なくとも1種0.0005〜8モル/L、(c)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸およびその水溶塩から選ばれた少なくとも1種0.005〜5モル/Lを含んでなる無電解パラジウムめっき液が記載されている。
【0007】
上記の特許文献1の無電解パラジウムめっき液は、貯蔵安定性が悪いだけでなく、工業的量産ラインにおいて短時間で分解し、めっき液の寿命が短いという欠陥を有していた。また、このめっき液から得られためっき皮膜は何れもクラックが多く、ワイヤーボンディング性やハンダ付性もよくないため、電子部品への適用には難点があった。
【0008】
また、特許文献2で開示された無電解パラジウムめっき液は、還元成分である次亜リン酸化合物やホウ素化合物に由来するリン、ホウ素がめっき皮膜中に混入するため耐熱試験の前後においてパラジウム皮膜特性が著しく変化するという欠陥があった。
【0009】
特許文献3に開示された化学的浴剤は、貯蔵安定性が悪いだけでなく、工業的量産ラインにおいて短時間で分解し、めっき液の寿命が短いという欠陥を有していた。
【0010】
一方、特許文献4によるパラジウムめっき液は量産ラインにおいてパラジウムめっきの析出速度が著しく速いため高信頼性微細配線の電子部品においては異常析出や回路、電極上以外での析出が発生し易いため不向きのめっき液であった。更に、めっき浴の連続使用に伴いパラジウムめっき速度が経時的に変化しめっき厚管理が困難な上めっき液のライフが短い技術的な問題を発生していた。
【特許文献1】特公昭46−26764号公報
【特許文献2】特開昭62−124280号公報
【特許文献3】特許第2918339号公報
【特許文献4】特開平7−62549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、無電解ニッケルめっき皮膜上に直接 且つ、下地ニッケルめっきを侵すことなく、密着性の良い純パラジウムめっき皮膜が形成可能である。また、浴安定性に優れ浴寿命が長く安定した析出速度を有し、選択析出性に優れ、めっき厚バラツキの少ない純パラジウムめっき皮膜を得ることができる。更に、得られた析出皮膜は、結晶が緻密で優れた、はんだ付け性及び、ワイヤーボンディング性等の皮膜特性を有する無電解パラジウムめっき液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく研究を進めた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は、
(1)第1錯化剤と、第2錯化剤と、リン酸又はリン酸塩と、硫酸又は硫酸塩と、ギ酸又はギ酸塩とからなり、前記第1錯化剤は、エチレンジアミンを配位子とした有機パラジウム錯体であり、第2錯化剤は、カルボキシル基を有するキレート剤又はその塩及び/又は水溶性脂肪族有機酸又はその塩であることを特徴とする無電解パラジウムめっき液。
(2)エチレンジアミンを配位子とした有機パラジウム錯体がジクロロジエチレンジアミンパラジウムである請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
(3)エチレンジアミンを配位子とした有機パラジウム錯体がジナイトライトジエチレンジアミンパラジウム及びジアセテートジエチレンジアミンパラジウムから選ばれる請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
(4)カルボキシル基を有するキレート剤又はその塩がエチレンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩である請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
(5)水溶性脂肪族有機酸又はその塩がクエン酸、クエン酸二アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、マレイン酸、シュウ酸の群から選ばれた少なくとも1種以上である請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
(6)微細配線を有する電子部品上の回路や電極上に形成した無電解ニッケルめっき皮膜上にめっきを生起するための前処理をすることなく、直接に密着性良好なパラジウム皮膜形成を行うための請求項1乃至請求項5の何れかに記載の無電解パラジウムめっき液。
に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
無電解パラジウムめっき液として無電解ニッケルめっき皮膜上に直接かつ、置換パラジウムめっき処理等の前処理をすることなく密着性の良い純パラジウムめっき皮膜が形成可能であり、浴安定性に優れ浴寿命が長く、析出速度が高く且つ、安定した析出速度を有し、選択析出性に優れ、めっき厚バラツキの少ない純パラジウムめっき皮膜を得ることができる。得られた析出皮膜は結晶が均一且つ、緻密で、良好なはんだ付け性及び、ワイヤーボンディング性等の皮膜特性を有する無電解パラジウムめっき液を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態及び比較例を説明する。
【0015】
本発明の無電解パラジウムめっき液は、エチレンジアミン(第1錯化剤)を配位子とする有機パラジウム錯体を必須成分として含有する。
上記の有機パラジウム錯体(第1錯化剤)としては、例えば、ジクロロジエチレンジアミンパラジウム、ジナイトライトジエチレンジアミンパラジウム、ジニトロジエチレンジアミンパラジウム及びジアセテートジエチレンジアミンパラジウムが挙げられる。特に好ましい有機パラジウム錯体(第1錯化剤)は、ジクロロジエチレンジアミンパラジウムである。
【0016】
エチレンジアミン(第1錯化剤)を配位子とする有機パラジウム錯体の合成で使用される無機パラジウム塩は、パラジウムに結合している陰イオンとし1価のものが特に好ましい。即ち、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、亜硝酸パラジウム、酢酸パラジウムである。
【0017】
本発明において上記有機パラジウム錯体は、予め合成しておくことが重要であり、めっき液の建浴時に配位子エチレンジアミンと無機パラジウム塩を各々別に配合した場合には安定した有機パラジウム錯体を形成することは困難である。
そのため、本発明では、配位子エチレンジアミン(第1錯化剤)と無機パラジウム塩(パラジウムとして)を2:1のモル比で予め反応させて、有機パラジウム錯体を合成しておくことが重要である。
錯体の合成反応は高温の発熱反応を伴うため反応時に温度制御を必要とする。温度制御は45〜55℃に管理される。45℃以下ではパラジウムとエチレンジアミンの錯形成反応が促進せず、安定した有機パラジウム錯体が得ることができない。また、55℃以上になるとパラジウムとエチレンジアミンの結合比(モル比)が変わり安定した有機パラジウム錯体が得ることができない。温度制御を確実に行い安定した有機パラジウム錯体を形成させる。有機パラジウム錯体が不安定であると、めっき浴の安定性に問題を発生する原因となる。
【0018】
本発明の無電解パラジウムめっき液に添加されるエチレンジアミン(第1錯化剤)を配位子とする有機パラジウム錯体の濃度はパラジウムとして0.0001〜0.5mol/Lの範囲が好ましく。0.0001mol/L以下の濃度ではめっき皮膜の析出速度が遅くなるので好ましくなく、また、0.5mol/L以上では、析出速度がより向上することがないので実用的でない。
【0019】
本発明の無電解パラジウムめっき液は、カルボキシル基を有するキレート剤又はその塩及び/又は水溶性脂肪族有機酸又はその塩(第2錯化剤)を必須成分として含有する。上記の第2錯化剤は、分子中に二つ以上のカルボキシル基を有するものが好ましく、また、その分子中に窒素の含有の有無は問わない。第2錯化剤は、有機パラジウム錯体からパラジウムが還元剤の還元反応により析出する時の反応系に関与し、パラジウムが析出する際に、結晶性、析出速度、選択析出性、めっき厚バラツキに大きく影響を及ぼすことが確認されている。
【0020】
本発明の第2錯化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二カリウム、エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム、クエン酸、クエン酸二アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、マレイン酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0021】
本発明の無電解パラジウムめっき液に添加される第2錯化剤の濃度は0.001〜0.1mol/Lの範囲が好ましい。0.001mol/L以下では効果が充分に発揮されず、また、0.1mol/L以上では、めっき厚のバラツキが大きくなるので好ましくない。
【0022】
本発明の無電解パラジウムめっき液は、リン酸又はリン酸塩を必須成分として含有する。リン酸またはリン酸塩としては、例えば、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウム等が挙げられる。
さらに、本発明の無電解パラジウムめっき液は、硫酸又は硫酸塩を必須成分として含有する。
硫酸又は硫酸塩としては、例えば、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム及び硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0023】
上記のリン酸又はリン酸及び硫酸又は硫酸塩は、めっき液中で緩衝作用を有するため、めっき液のpHを4.5〜7.0に安定化させる効果を有する。pHはパラジウムの析出速度に影響を与えるため好ましくはpH 5.5〜6.5に調整する。
【0024】
本発明の無電解パラジウムめっき液に添加されるリン酸又はリン酸及び硫酸又は硫酸塩の濃度は、0.005〜10mol/Lの範囲が好ましい。0.005mol/L以下では、緩衝作用の効果が得られない。また、10mol/L以上になるとめっき皮膜上に残渣として残ることがあるので好ましくない。
【0025】
また、本発明の無電解パラジウムめっき液は、ギ酸又はギ酸塩を必須成分として含有する。ギ酸又はギ酸塩は還元剤としての効果を有する。
上記のギ酸塩の陽イオンについては特に限定するものではなく、ナトリウム、アンモニウム、カリウムの何れの陽イオンを含むものであっても良い。
【0026】
本発明の無電解パラジウムめっき液に添加されるギ酸又はギ酸塩の濃度は、0.005〜0.3mol/L、好ましくは0.01〜0.3mol/Lである。0.005mol/L以下の濃度では、めっき皮膜が十分に形成されず、実用的でない
本発明においては、めっき液のpHはpH3〜10、特に4.5〜7.0であることが好ましい。pHが低すぎるとめっき浴の安定性が低下し、pHが高すぎるとめっき皮膜にクラックが発生しやすくなるので好ましくない。
【0027】
本発明のめっき液は、20〜90℃という広い範囲の温度においてめっきが可能であり、特に40〜80℃の液温度のときに平滑で光沢のある良好なめっき皮膜が得られる。また、液温度が高いほどめっき皮膜の析出速度は速くなる傾向にあり、上記した温度範囲内で適宜温度を設定することにより任意の析出速度とすることができる。さらにまた、本発明のめっき液では、めっき皮膜の析出速度は、めっき液の温度のほかに、パラジウム濃度にも依存することから、パラジウム濃度を適宜設定することによってもめっき皮膜の析出速度を調整できるので、めっき皮膜の膜厚のコントロールが容易である
本発明のめっき液によりめっき皮膜を形成するには、上記した温度範囲内のめっき液中にパラジウム皮膜の還元析出に対して触媒性のある基質を浸漬すればよい。
【0028】
微細配線電子部品の回路や電極は、銅箔で形成されている。これら回路や電極銅箔上に一般的にはニッケル−リンの無電解ニッケルめっき皮膜が形成される。本発明の無電解パラジウム液を用いて無電解ニッケルめっき皮膜上にパラジウムめっきを施したところL/S20μmの微細パターンの電極上に均一な純パラジウム皮膜を形成することが可能であった。
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
無電解パラジウムめっき液(1)の組成
ジクロロジエチレンジアミンパラジウム 0.02モル/L
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.02モル/L
硫酸ナトリウム 0.05モル/L
リン酸 0.05モル/L
ギ酸ナトリウム 0.1モル/L

無電解パラジウムめっき液(2)組成
ジクロロジエチレンジアミンパラジウム 0.02モル/L
クエン酸 0.05モル/L
リンゴ酸 0.05モル/L
リン酸水素二ナトリウム 0.05モル/L
硫酸 0.05モル/L
ギ酸アンモニウム 0.1モル/L

無電解パラジウムめっき液(3)組成
ジクロロジエチレンジアミンパラジウム 0.02モル/L
クエン酸 0.05モル/L
クエン酸三カリウム 0.05モル/L
リン酸水素二カリウム 0.05モル/L
硫酸 0.05モル/L
ギ酸カリウム 0.1モル/L

無電解パラジウムめっき液(4)組成
ジナイトライトジエチレンジアミンパラジウム 0.02モル/L
マレイン酸 0.05モル/L
シュウ酸 0.05モル/L
ギ酸ナトリウム 0.1モル/L

無電解パラジウムめっき液(5)組成
ジアセテートジエチレンジアミンパラジウム 0.02モル/L
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.02モル/L
クエン酸 0.05モル/L
硫酸ナトリウム 0.05モル/L
リン酸 0.05モル/L
ギ酸ナトリウム 0.1モル/L

(比較例)
無電解パラジウムめっき液(6)組成
硫酸パラジウム 0.01モル/L
エチレンジアミン 0.2モル/L
ギ酸ナトリウム 0.3モル/L
リン酸二水素カリウム 0.2モル/L
ギ酸でpH5.8に調整
【0031】
評価方法
電子顕微鏡によるパラジウム皮膜の断面観察、はんだ広がり試験、ワイヤーボンディング接合強度、析出速度、めっき厚バラツキ、浴安定性(MTO毎の析出速度及び、めっき厚バラツキ)を評価した。
【0032】
電子顕微鏡によるパラジウム皮膜の表面及び、断面観察
ガラスエポキシプリント配線板に通常無電解めっき用前処理を行い無電解ニッケルめっき成膜後、本発明無電解パラジウム液により0.3μmのパラジウムめっきを施し、ケミカルポリッシング法によるクロスセクションを実施。走査型電子顕微鏡により無電解パラジウムめっき皮膜の表面観察及び、断面観察を行った。
【0033】
はんだ広がり試験
試験片30×30mmガラスエポキシ銅張り積層板に通常の方法で無電解めっき用前処理を行い、無電解ニッケルめっき製膜後、本発明の無電解パラジウムめっき液によりそれぞれ、めっき厚0.1μm、0.3μm、0.5μm施し、180℃、120分熱処理を実施。比較として電解純パラジウムめっき液(商品名:K−ピュアパラジウム 小島化学薬品株式会社製品)を用いた。ASTM−B−545に準じて評価を実施。はんだ付け条件 温度225℃ 加熱時間30秒。
【0034】
ワイヤーボンディング接合強度
ガラスエポキシプリント配線板に通常無電解めっき用前処理を行い無電解ニッケルめっき成膜後、本発明無電解パラジウム液により0.15μmのパラジウムめっきを施したものを試料とした。比較として電解純パラジウムめっき液(商品名:K−ピュアパラジウム小島化学薬品株式会社製品)を用いた。めっき後の試験片は耐熱試験180℃ 60分を実施。耐熱試験前後におけるワイヤーボンディングを施した。
金線φ25μm ボールボンディング装置Model UBB−5−1、プルテスターUJ−246−1Cによりプル強度を測定した。
【0035】
比較として電解純パラジウムめっき液(商品名:K−ピュアパラジウム 小島化学薬品株式会社製品)はワイヤーボンディングやはんだ付けを必要とする半導体部品にて使用実績のあるめっき薬品。
【0036】
析出速度、めっき厚バラツキ、浴安定性
0〜3MTO(メタルターンオーバーの略)負荷試験を行い、0、1、2、3MTO時の析出速度、めっき厚バラツキを蛍光X線微小膜厚計SFT3300 にて測定した。めっき操作条件は浴温70℃、めっき時間5分にて実施。
【0037】
電子顕微鏡による無電解パラジウム皮膜表面の結晶性とクロスセクション観察の結果
本発明の無電解パラジウムめっき液(1)乃至(3)により設けた無電解パラジウム皮膜は緻密な結晶を呈していた。また、クロスセクション観察においては無電解ニッケルめっき皮膜と無電解パラジウムめっき皮膜は各々明確な皮膜層を形成し、下地無電解ニッケルめっきを侵す箇所は観察されなかった。
【0038】
はんだ広がり試験による評価結果
試験片に無電解めっき用前処理を施し、無電解ニッケルめっき後、本発明の無電解パラジウムめっき液(1)乃至(3)を0.1μm、0.3μm、0.5μm成膜した。比較試料として電解純パラジウムめっきを0.1μm、0.3μm、0.5μm施した。下地無電解ニッケルめっきは市販浴を使用し、めっき厚は5μmとした。各試験片について耐熱試験180℃−120分を実施。
はんだ付け温度:225℃ はんだ付け時間:30秒で行った。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

ワイヤーボンディング強度評価結果
IC用リードフレームを用いてワイヤーボンディング接合強度評価用試験片を作成した。銅リードフレーム材に無電解めっき用前処理を施し、無電解ニッケルめっき後、無電解パラジウムめっきを 0.15μm製膜した。比較試料として電解純パラジウムめっきを0.15μm施した。各試験片について耐熱試験180℃−60分を実施。各々の試験片にワイヤーボンディングを実施後、ワイヤープル強度を評価したその結果を表2に示す。試験繰り返し数100の平均値を示した。ボンディング装置:UBB−5−1 プルテスター:UJ−246−1C
【0040】
【表2】

析出速度、めっき厚バラツキ、浴安定性評価結果
メタルターンオーバー毎の析出速度、めっき厚バラツキを測定した。その結果を表3に示す。(単位:μm)
蛍光X線微小膜厚計:STF−3300 セイコーインスツルメンツ社製
【0041】
【表3】

表1より本発明の無電解パラジウムめっき液(1)乃至(3)は、耐熱試験前後においても良好なはんだ広がり率を示した。また、別法の電解パラジウムめっき液と同等のはんだ広がり率を示した。即ち、優れた、はんだ付け特性を有することが判った。
【0042】
表2より本発明の無電解パラジウムめっき液(1)乃至(3)は、耐熱試験前後においても良好なワイヤーボンディング性を示した。また、別法の電解パラジウムめっき液と同等のワイヤーボンディング性を示した。即ち、優れたワイヤーボンディング特性を有することが判った。
【0043】
表3より本発明の無電解パラジウムめっき液(1)乃至(3)は、3MTOにおいてもめっき厚バラツキが少なく、安定した析出速度を示した。また、比較例1のめっき液(4)は1MTO後に分解してしまったが、本発明の無電解パラジウムめっき液は3MTO後においてもめっき液が分解することはなかった。
【0044】
以上のことから本発明の無電解パラジウムめっき液は、めっき厚バラツキが極めて少なく、安定した析出速度を有し、浴安定性に優れたものであることが判った。























【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1錯化剤と、第2錯化剤と、リン酸又はリン酸塩と、硫酸又は硫酸塩と、ギ酸又はギ酸塩とからなり、前記第1錯化剤は、エチレンジアミンを配位子とした有機パラジウム錯体であり、第2錯化剤は、カルボキシル基を有するキレート剤又はその塩及び/又は水溶性脂肪族有機酸又はその塩であることを特徴とする無電解パラジウムめっき液。
【請求項2】
エチレンジアミンを配位子とした有機パラジウム錯体がジクロロジエチレンジアミンパラジウムである請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
【請求項3】
エチレンジアミンを配位子とした有機パラジウム錯体がジナイトライトジエチレンジアミンパラジウム及びジアセテートジエチレンジアミンパラジウムから選ばれる請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
【請求項4】
カルボキシル基を有するキレート剤又はその塩がエチレンジアミン四酢酸またはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩である請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
【請求項5】
水溶性脂肪族有機酸又はその塩がクエン酸、クエン酸二アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、マレイン酸、シュウ酸の群から選ばれた少なくとも1種以上である請求項1に記載の無電解パラジウムめっき液。
【請求項6】
微細配線を有する電子部品上の回路や電極上に形成した無電解ニッケルめっき皮膜上にめっきを生起するための前処理をすることなく、直接に密着性良好なパラジウム皮膜形成を行うための請求項1乃至請求項5の何れかに記載の無電解パラジウムめっき液。


【公開番号】特開2009−46709(P2009−46709A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211855(P2007−211855)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【特許番号】特許第4117016号(P4117016)
【特許公報発行日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(393017188)小島化学薬品株式会社 (13)
【Fターム(参考)】