説明

焦点検出装置およびそれを有する撮像装置

【課題】 焦点検出エリアの境界領域において安定して焦点検出できる焦点検出装置を提供する。
【解決手段】 焦点検出装置は、複数の画素を有するセンサが複数で構成された電荷蓄積型の光電変換手段と、該光電変換手段の電荷蓄積の制御を行う蓄積制御手段と、光電変換手段の各該センサの電荷の蓄積開始から蓄積終了までの蓄積時間を計測する蓄積時間計測手段と、該光電変換手段の各該センサの光電変換信号の補正演算を行う補正演算手段と、該補正演算手段によって補正された光電変換信号を用いて焦点検出演算を行う焦点検出演算手段と、を備え、該蓄積制御手段は、前記センサの中の第1のセンサの蓄積完了の信号を検出した後、該第1のセンサ以外のセンサの電荷蓄積を強制的に終了させ、該補正演算手段は、該第1のセンサの蓄積時間である第1の蓄積時間と該第1の蓄積時間とは異なる第2の蓄積時間に基づいて、光電変換信号の補正演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焦点検出装置に関し、特に被写体の焦点検出装置およびそれを有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラやビデオカメラ等の撮像装置における焦点検出の技術として、様々な提案が成されている。例えば、結像光学系内の光路中に分岐手段を有し、分岐光束を用いて合焦状態を検出する所謂TTL(Through The Lens)による位相差方式が提案されている。また、結像光学系内の光束とは別の外光による光束を用いて合焦状態を検出する所謂非TTLによる外測方式も提案されている。さらに、撮像素子から出力される映像信号を用いて合焦状態を検出する方式がある。
【0003】
これらのうち、位相差方式および外測方式の焦点検出装置では、被写体からの光束を焦点検出装置内の光電変換素子で光電変換し、得られた電荷を蓄積して像信号として読み出す。そして、光電変換素子から読み出した像信号を用い相関演算を行うことによって像のずれ量すなわち位相差を求める。このとき、二像一致度を相関評価値として合焦点までの目標値を求める。一般的には、相関評価値が極値かつ最大となるような位相差を信頼性の高い目標値とする。そして、合焦点までのデフォーカス量や、被写体までの距離情報からフォーカスレンズの目標位置に該目標値を変換し、フォーカスレンズの駆動制御を行う。
【0004】
ところで、位相差方式や外測方式の焦点検出用センサにおける電荷の蓄積動作を制御するための様々な方法が提案されている。例えば、AGC(Auto Gain Control)制御により、所定の信号レベルに達した場合に蓄積動作を終了する制御方法がある。その他の例として、所定の信号レベルに達しない場合でも、所定の最大蓄積時間が経過した時点で蓄積動作を終了する制御方法がある。また、様々な撮影条件による被写体輝度の広範囲なダイナミックレンジに対応するために、これら2種類の蓄積制御方法が併用される場合もある。
【0005】
位相差方式や外測方式の焦点検出用のセンサには、1ラインで構成されたリニアセンサや、複数のラインセンサで構成されたエリアセンサが用いられる。エリアセンサの各エリアはAGC回路に接続されたものがあり、各エリアが独立して最適なコントラストで信号を出力できるような蓄積制御が行われているものがある。このように撮影画面内に複数のエリアを設けて焦点検出を行うことで、焦点検出エリアに最適なコントラストで焦点検出演算を行うことができる。
【0006】
しかし、このように複数のエリアに分けてしまうと、複数のエリアに跨って、像が結像される場合がある。例えば、位相差方式においては、大ボケ時に、結像される二像が1つのエリアに収まらない場合がある。また、外測方式においては、被写体の距離に応じて、被写体が結像される二像の位置が大きく離れてしまい、1つのエリアに収まらず、エリア間に二像が跨って結像する場合がある。
【0007】
各エリアに適切なAGCを設定し、エリア間のデータを連結してから相関演算を行うことにより、複数のエリアに対応した焦点検出が可能となるが、複数回の蓄積動作が必要となるため、焦点検出の処理時間が長くなってしまう。特に、低照度環境下では、蓄積時間が長くなるため、動画撮影等におけるリアルタイム処理に対応することは困難となる。そこで、複数のエリアに跨った2像を用いて焦点検出演算を行うための先行例が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1では、第mエリアで相関演算を行った場合に焦点検出が行えない場合は、隣接するエリアである第m−1エリア又は、第m+1エリアのデータを任意の蓄積時間に変換し、第mエリアのデータと連結する。そして、焦点検出が行えるようになるまで、相関演算領域を拡大していく手法が提案されている。このような構成とすることで、大デフォーカス時に異なるエリアに像が結像されたとしても対応することが可能となる。
【0009】
また、特許文献2では、各エリアを独立に蓄積制御して独立に信号出力を読み出す第1のモードと、全エリアをまとめて蓄積制御して信号出力を読み出す第2のモードを切り替える手法が提案されている。特許文献2の構成では、第2のモードにおいて、複数のエリアを連結してあたかも1本のリニアセンサのように蓄積制御し、各操作回路を順次駆動させて信号を出力させている。そのため、大デフォーカス用の専用のセンサを設けることなく、複数のエリアに跨った焦点検出を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−184320号公報
【特許文献2】特開2008−009279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の特許文献に開示された従来技術では、異なるエリア間の蓄積制御におけるタイムラグやエリア間の蓄積感度の違いが考慮されていないため、厳密には取得されるデータがエリア間で異なってしまう。そのため、従来のエリア間データの連結方法では、同じ被写体を1エリア内で相関演算する場合と、エリア境界に跨った状態で相関演算する場合とで相関演算結果が異なり、正確な相関演算結果が得られないことがあった。
特に、高照度環境下では、エリア間のレベル差が顕著に影響を受けることとなり、照度条件によって、相関演算結果が本来の値と異なる場合もあり、結果としてオートフォーカス動作を実行した場合にボケた状態で合焦動作が終了してしまう可能性がある。
【0012】
位相差方式の場合は、合焦に近づくにつれて、二像が1エリア内に引き込まれる場合が多く、エリア間の相関演算精度は合焦点に近づくほど向上する。そのため、常にフィードバック制御によるフォーカス制御が可能である。しかし、外測方式の場合は、被写体までの距離データを示すため、合焦状態・非合焦状態に関わらず、一定の結果が得られることとなる。つまり、外測方式はオープンループ型のフォーカス制御方式となる。そのため、外測方式の場合は特にエリア境界における相関演算結果の誤差の影響を受けやすい。また、位相差方式の場合でも、最終的に合焦に引き込んだ時点でエリア境界に被写体の輝度レベルのピークが位置する場合は、本来の蓄積データと異なり、相関演算によって算出される位相差の精度が低下する。
【0013】
そこで、本発明の目的は、複数のエリアに跨った被写体の焦点検出を高精度にかつ短時間で行うことを可能にした焦点検出装置、また、該焦点検出装置を有することを特徴とする撮像装置、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の焦点検出装置は、複数の画素を有するセンサが複数で構成された電荷蓄積型の光電変換手段と、該光電変換手段の電荷蓄積の制御を行う蓄積制御手段と、光電変換手段の各該センサの電荷の蓄積開始から蓄積終了までの蓄積時間を計測する蓄積時間計測手段と、該光電変換手段の各該センサの光電変換信号の補正演算を行う補正演算手段と、該補正演算手段によって補正された光電変換信号を用いて焦点検出演算を行う焦点検出演算手段と、を備え、該蓄積制御手段は、前記センサの中の第1のセンサの蓄積完了の信号を検出した後、該第1のセンサ以外のセンサの電荷蓄積を強制的に終了させ、該補正演算手段は、該第1のセンサの蓄積時間である第1の蓄積時間と該第1の蓄積時間とは異なる第2の蓄積時間に基づいて、光電変換信号の補正演算を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対象のエリアの蓄積データを適切に補正させてから連結して相関演算を行うことにより、複数のエリアに跨った被写体を短時間でかつ高精度に焦点検出可能な焦点検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における構成図
【図2】実施例1におけるセンサの構成を示す図(その1)
【図3】実施例1におけるセンサの構成を示す図(その2)
【図4】実施例1における撮影画面とセンサの配置関係の例を示す図
【図5】実施例1における処理のフローチャート
【図6】実施例1におけるセンサの出力例を示す図
【図7】実施例1におけるセンサの蓄積時間の例を示す図
【図8】実施例1におけるセンサの蓄積の過程を示す図
【図9】実施例2における撮影画面とセンサの配置関係の例を示す図
【図10】実施例2におけるセンサの出力例を示す図
【図11】実施例2における構成図
【図12】実施例2における撮影画面とAF枠、センサの配置関係の例を示す図
【図13】実施例2における処理のフローチャート
【図14】実施例2におけるセンサの出力例を示す図
【図15】実施例2におけるセンサの蓄積時間の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかわる構成図である。
【実施例1】
【0018】
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施例による、焦点検出装置について説明する。100は焦点検出装置である。
【0019】
焦点検出装置100において、110はフォーカスレンズ群を含む撮像光学系である。
撮像光学系110の像面側には、ハーフミラー121が設けられている。ここでのハーフミラーは被写体からの光束を2つの光束に分割する光学部材(光束分割部材)であれば良く、例えば偏光ビームスプリッターでも構わないし、偏光には(ほぼ)無関係に光束を2つ(複数)に分割する光学部材でも良い。但し、ここでのハーフミラー(光束分割部材)は波長依存性が小さい方が望ましい。
【0020】
焦点検出装置100に入射した被写体からの光束は、撮像光学系110を通り、ハーフミラー121を透過した光束とハーフミラー121で反射された光束とに分割される。ハーフミラー121で反射された光束は、センサ122に入射する。
【0021】
光電変換手段であるセンサ122は、不図示の二対の二次結像レンズと、不図示の二組の位相差センサとしてのAFセンサとを含む。センサには複数の画素(光電変換素子)から成るラインセンサを1つのエリアセンサとした複数エリアセンサが設けられている。各エリアセンサには、ハーフミラー121で反射して各対の二次結像レンズによって二つに分割された光束により一対の被写体像(以下、二像という)が形成される。光電変換素子は電荷蓄積型のセンサであって、各エリアセンサは、該二像を光電変換し電荷として蓄積し二像信号を生成する。二像信号からは、焦点検出装置100の焦点状態に応じた位相差を得ることができる。上述したように、本実施例で記載しているエリアセンサは複数の画素を有するセンサ(複数の画素を持つ光電変換素子)であればそれで足りる。つまり、本実施例で記載しているエリアセンサは、複数の画素が一列に配置されたラインセンサも、複数の画素が二次元的に配置された2次元センサのいずれであっても構わない。
【0022】
焦点検出装置100が合焦状態にある場合は二像の間隔に相当する位相差は特定値を示す。所謂前ピンの場合は、位相差は該特定値よりも小さくなる。また、所謂後ピンの場合は、位相差は該特定値よりも大きくなる。このように、センサ122は、焦点検出装置100に入射した光により形成された被写体像間の位相差を得るための二像信号を生成する。
【0023】
焦点検出装置100はCPU130を有する。CPU130内には、蓄積制御部131、蓄積時間カウンタ132、読出し制御部133、補正演算部134、メモリ135、相関演算部136が構成されている。
【0024】
蓄積制御手段である蓄積制御部131は、センサ122に接続され、センサ122の各エリアセンサの電荷の蓄積開始の制御や、不図示のAGC回路による蓄積完了の検知とそのエリアセンサの記憶、および電荷の蓄積終了の制御を行う。蓄積時間計測手段である蓄積時間カウンタ132は、蓄積制御部131がセンサ122の蓄積動作を開始すると、各エリアセンサの蓄積時間のカウントを開始する。そして、蓄積制御部131がセンサ122の蓄積完了の信号を検出するか、蓄積動作を終了させると、カウントを停止する。センサ122のすべてのエリアセンサの蓄積動作が終了すると、読出し制御部133によって蓄積データの読出しが行われる。読み出された蓄積データは、補正演算部134によって補正データに変換され、メモリ135に記憶される。補正データへの変換の詳細は後述する。そして、焦点検出演算手段である相関演算部136は、メモリ135に記憶されている補正データを用いて相関演算を行い、位相差を算出することによって焦点検出装置100の焦点状態を検出する。
【0025】
ここで、図2に撮影画面内にセンサ122の焦点検出エリアセンサを重畳した一例を示す。図2の501から503はそれぞれ焦点検出エリアセンサである。図2の左側から順にエリアセンサ501,502、503とし、各エリアセンサは不図示のAGC(Auto Gain Control)回路に接続されている。また、各エリアセンサは図3に示すように複数の画素から成るラインセンサで構成されている。図4は、被写体を撮影している撮影映像の様子を示している。この被写体は黒色の背景に白色の1本のバーが配置されたものである。図4に示すように、被写体である白色のバーは、エリアセンサ501および502に跨っている。第1の実施例では、図4に示した撮影構図において、被写体の焦点を高精度に検出させる例を説明する。
【0026】
図5は、焦点検出装置100における焦点検出処理の流れを示したフローチャートである。CPU130は、これらの処理を、不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラムに従って制御する。
【0027】
レンズ装置100に電源が入ると、レンズCPU130は、ステップS101から処理を実行する。ステップS101において、蓄積制御部131は、センサ122の各エリアセンサ501〜503を初期化し、蓄積を開始する。
【0028】
次に、ステップS102において、蓄積時間カウンタ132は、各エリアセンサ501〜503の蓄積時間の計測を開始する。
【0029】
次に、ステップS103において、蓄積制御部131はセンサ122のいずれかのエリアセンサの蓄積が完了するまで待つ。センサ122の不図示のAGC回路は、各エリアセンサ501〜503の電荷蓄積レベルを監視し、電荷蓄積量が蓄積完了のAGC閾値を超えたエリアセンサ(第1のセンサ)が1つ以上存在する場合に、蓄積制御部131に対して蓄積完了の信号を出力する。蓄積制御部131が蓄積完了の信号を検出すると、CPU130はステップS103を抜け、ステップS104に進む。
【0030】
ステップS104において、蓄積制御部131は、ステップS103で蓄積が完了したエリアセンサを記憶し、ステップS105に進む。ステップS105では、蓄積時間カウンタ132が、ステップS103で蓄積が完了したエリアセンサの蓄積時間1を記憶する。次にステップS106へ進む。
【0031】
ステップS106において、蓄積制御部131は、ステップS104で記憶した蓄積完了エリアセンサ以外のエリアセンサをすべて蓄積終了させる。
【0032】
次に、ステップS107では、蓄積時間カウンタ132がステップS105で蓄積時間1を記憶したエリアセンサ以外のエリアセンサの蓄積時間2を記憶する。
【0033】
次に、ステップS108において、読出し制御部133は、センサ122から各エリアセンサの蓄積データの読出しを行う。そして、ステップS109において、補正演算部134は、ステップS104で記憶した蓄積完了エリアセンサ以外のエリアセンサの蓄積データを、蓄積時間1および蓄積時間2を用いて補正演算する。そして、メモリ135に補正された蓄積データを記憶する。
【0034】
次に、ステップS110において、相関演算部136は、メモリ135に記憶された蓄積データを用いてエリアセンサ501〜502の蓄積データを連結し、相関演算を行い、位相差を算出し、再びステップS101に戻る。CPU130は以上の処理を繰り返して実行する。
【0035】
ここで、具体的な例をあげて、図5のフローチャートの内容について説明する。
図6は、図4の撮影画面において、センサ122から読み出した二像信号のA像とB像を、それぞれ(a)〜(c)の3種類の出力波形で示した。図6を用いて、図5のフローチャートに沿って具体的に説明する。
ステップS101、S102、S103は前述の通りである。
【0036】
ステップS103にて、例えば、各エリアセンサそれぞれで蓄積が完了するまで待ち、信号を読み出した場合、各エリアセンサにおいてラインセンサの少なくとも一つの電荷蓄積量が所定のAGCレベルに達するまで電荷の蓄積を継続するので、図6(a)のような波形が得られる。また、各エリアセンサの蓄積時間の例を図7(a)に示す。最も早く蓄積が完了するのは、A像、B像ともに輝度レベルのピークを持つエリアセンサ502であり2.0[ms]である。続いてエリアセンサ501が3.0[ms]で蓄積が完了する。最後にエリアセンサ503が100.0[ms]で蓄積が完了する。このとき、A像の輝度レベルのピーク付近の波形はセンサ122のエリアセンサ501と502に跨いでいる。センサ122のエリアセンサ501はエリアセンサ502に比べ、蓄積時間の差である1.0[ms]分だけ長く蓄積するため、波形を連結させた場合に、エリアセンサ境界で不連続点が生じる。そのため、相関演算を行った場合、A像とB像のピーク形状が異なり、正確な相関演算結果を得ることは困難となる。
【0037】
そこで、1つ以上のエリアセンサの蓄積が完了した時点で、その他の全エリアセンサの蓄積を終了させる。この場合得られる波形は図6(b)となる。図6(b)を得るまでの過程を説明する。また、このときの各エリアセンサの蓄積時間が図7(b)とした場合を例に説明する。
【0038】
図5のステップS103にて、最も早く蓄積が完了するのはエリアセンサ502となる。蓄積制御部131がエリアセンサ502の蓄積の完了を検出すると、ステップS103を抜けて、ステップS104に進む。ステップS104において、蓄積制御部131は、蓄積が完了したエリアセンサであるエリアセンサ502を記憶する。次にステップS105に進み、蓄積時間カウンタ132は、エリアセンサ502の蓄積時間を第1の蓄積時間として記憶する。ここでは、図7(b)より、第1の蓄積時間として2.0[ms]が記憶される。次にステップS106に進み、蓄積制御部131によって、蓄積中であるエリアセンサ501と503の蓄積を強制的に終了させる。そして、ステップS107に進み、蓄積時間カウンタ132は、エリアセンサ501と503の蓄積時間を第2の蓄積時間として記憶する。ここでは、図7(b)より、第2の蓄積時間として2.1[ms]が記憶される。
【0039】
ステップS108でセンサの蓄積データを読み出す。この時の波形は、前述した図6(b)を得る。ここで、図8にエリアセンサ501と502に蓄積されるデータの推移を示す。図8の横軸は蓄積時間カウンタ132によって計測される蓄積時間である。また、図8の縦軸は、センサ122の各エリアセンサに蓄積されるデータである。図8によれば、ステップS103におけるエリアセンサ502(第1のセンサ)の蓄積終了の検知から、ステップS106のエリアセンサ501、503の蓄積終了処理の完了までのタイムラグが、図7(b)に示したエリアセンサ502との差分時間である0.1[ms]となる。このタイムラグ分だけ、エリアセンサ501と503に光電変換信号が余分に蓄積されることとなる。図6(b)に示す通り、A像のエリアセンサ501と502の境界でわずかな不連続点が生じている。本来であれば、エリアセンサ502の蓄積完了と同時刻にエリアセンサ501の蓄積を終了させることが望ましい。よって、図8に示した通り、エリアセンサ501の本来のデータYrealが存在する。
【0040】
ステップS109において、エリアセンサ502以外のデータであるエリアセンサ501(第1のセンサ以外のセンサ)および503の蓄積データに対して補正演算を行う。本来のデータYrealは、図8より、上述のライムラグ分、つまり本実施例では0.1[ms]分だけの過剰な蓄積量を補正すれば良い。蓄積量は蓄積時間に対し比例関係にあるとみなすことができるので、第1の蓄積時間T1と、第1の蓄積時間とは異なる第2の蓄積時間T2との比を、前記第1のエリアセンサ以外のエリアセンサ(前記第1のセンサ以外のセンサ)の各画素の読み出された蓄積量Yreadに積算することによって、以下の式(1)のように第1の蓄積時間T1における蓄積量Yrealを算出することができる。
Yreal=Yread×T1/T2 (1)
【0041】
上述のタイムラグ時間分だけ余分に蓄積されるデータは、センサに入射する光量によって影響度が異なる。例えば、エリアセンサ502の蓄積時間2.0[ms]に対して、蓄積データのピークレベルが100とすると、タイムラグ0.1[ms]あたりに蓄積される最大蓄積データは5となり、最大5%の誤差量が発生することとなる。
【0042】
単位時間あたりにセンサに入射する光量は、照度によって異なる。そのため、上述のタイムラグが同じ0.1[ms]であったとしても、高照度であればあるほど、エリアセンサ間の誤差量が増大していくこととなる。
【0043】
したがって、高輝度となる被写体がエリアセンサ境界近傍に来るような被写体の場合で、かつ高照度下である撮影環境の場合、タイムラグ時間分に蓄積されるデータは大きくなり、エリアセンサ同士を連結した時に不連続点が発生する可能性が高くなる。
【0044】
図5のフローチャートの説明に戻る。ステップS109において、補正演算部134によって、式(1)がエリアセンサ501と503に適用されると、図6(c)の補正された蓄積データが得られる。図6(c)に示したデータは、エリアセンサ間の蓄積データを連結した場合に、エリアセンサ境界における蓄積データの連続性を得ることができる。そして、ステップS110に進み、エリアセンサ501から503の蓄積データを連結し、相関演算を行う。
【0045】
このように、あるエリアセンサの蓄積終了の検知からその他のエリアセンサの蓄積終了までのタイムラグの分だけ蓄積されるデータを間引くことで、本来の望ましい蓄積データを得ることができる。その結果、相関演算結果の精度を向上させることが可能となる。
【実施例2】
【0046】
第1の実施例では、エリアセンサ501から503のすべてのエリアセンサを用いて相関演算を行う例について述べた。第2の実施例では、図9に示す撮影環境においても安定して相関演算可能な構成例を示す。
【0047】
図9の撮影例では、被写体とその背後に高照度な光源があるような撮影環境である。このとき、被写体よりも光源の方が高輝度であるため、エリアセンサ501から503のうち、最も早く蓄積が完了するのはエリアセンサ503となる。第1の実施例を適用させた場合、図5のステップS105にて、図10に示すセンサの蓄積データが読出し制御部133によって読み出されることとなる。なお、図10では、図6で示したようなA像、B像の表示を行わず、便宜上A像のみを示すこととする。図10のような波形の場合、目的とする被写体に対応するエリアセンサ501や502の蓄積データのコントラストが得られず、相関演算結果の精度が低下する恐れがある。したがって、目的とする被写体が存在するエリアセンサに関しては、適切なコントラストが得られるまで蓄積させてから読み出すことが望ましい。
【0048】
そこで、本実施例では、このような撮影条件に対しても、安定して焦点検出可能な焦点検出装置の適用例を示す。具体的には、被写体を選択する選択スイッチを設けることにより、対象エリアセンサを選択し、対象エリアセンサの蓄積完了を待つことによって、被写体に対応する蓄積データを良好なコントラストで取り出すことが可能となる。
【0049】
図11に本実施例の構成図を示す。実施例2の構成は、図1で示した実施例1と同様の構成に加え、任意の被写体を選択するための領域選択手段であるスイッチ201を構成する。スイッチ201による、被写体を合焦選択するためのAF枠を示した撮影図を図12に示す。図12に示すように、被写体は実施例1と同様に、エリアセンサ501および502に跨っている。本施例では、図12に示す撮影構図において、目的の被写体の焦点状態を高精度に検出させる例を説明する。
【0050】
図13は、焦点検出装置100における焦点検出処理の流れを示したフローチャートである。CPU130は、これらの処理を、不図示のメモリに格納されたコンピュータプログラムに従って制御する。
【0051】
レンズ装置100に電源が入ると、CPU130はステップS201に進み、スイッチ201が選択しているAF枠の領域に対応するセンサを識別する。図12に示した撮影図より、ここでは、エリアセンサ501と502が選択されることとなる。
【0052】
次に、ステップS101に進み、実施例1と同様に、蓄積制御部131がセンサ122の全エリアセンサの蓄積を開始する。そしてステップS102に進み、蓄積時間カウンタ132が蓄積時間の計測を開始する。
【0053】
次に、ステップS202に進む。ステップS202では、蓄積制御部131は、ステップS201で選択したAF枠に対応する対象エリアセンサが蓄積完了するまで待つ。まず、エリアセンサ503の蓄積が完了する。エリアセンサ503が最も早く蓄積完了するのは、被写体の背景に光源が存在するため、被写体の存在するエリアセンサ501や502よりも高輝度のためである。
【0054】
ここで、図13のステップS202において、対象エリアセンサが蓄積完了するまでの過程について、図10、図14、図15を用いて説明する。図14は、各過程におけるセンサ122の各エリアセンサの蓄積データを示した図である。図15は、センサ122の各エリアセンサの蓄積時間を示したものである。図10は、エリアセンサ503の蓄積が完了した時点での各エリアセンサの蓄積レベルを示している。この時のエリアセンサ503の蓄積時間は、図15に示すように0.4[ms]である。エリアセンサ503はステップS201で選択したエリアセンサの対象外であるため、この後ステップS202が繰り返し実行される。そして、図14(a)のエリアセンサ502の部分に示すように、対象エリアセンサであるエリアセンサ502がAGC閾値に達し、蓄積が完了すると、ステップS104へ進む。
【0055】
ステップS104からステップS108は実施例1と同様である。ステップS104では、蓄積が完了した対象エリアセンサとしてエリアセンサ502が蓄積制御部131に記憶される。次に、ステップS105において、蓄積時間カウンタ132は、蓄積時間1として図15に示すエリアセンサ502の蓄積時間2.0[ms]を記憶する。そして、ステップS106を実行し、蓄積制御部131によって、エリアセンサ501の蓄積が終了される。
【0056】
次に、ステップS107に進み、蓄積時間2として、エリアセンサ501の蓄積時間2.1[ms]が蓄積時間カウンタ132によって記憶される。このときの各エリアセンサの蓄積時間を示したものが図15となる。
【0057】
次に、ステップS108に進み、読出し制御部133によって読み出されるセンサ122の蓄積データは、図14(a)のようになる。図14(a)では、エリアセンサ502および503は、ステップS202においてAGCの閾値に達し、蓄積が完了したことを示している。そして、エリアセンサ501はステップS202からステップS106までの間、つまりエリアセンサ501と502の蓄積時間の差分値である0.1[ms]分だけ蓄積されている。そのため、エリアセンサ501と502の境界において、蓄積データに不連続点が生じていることがわかる。
【0058】
次に、ステップS203に進み、対象エリアセンサの補正演算を行う。ステップS201で設定した対象エリアセンサであるエリアセンサ501と502のうち、ステップS104で記憶した蓄積完了エリアセンサ502以外のエリアセンサであるエリアセンサ501に対して、補正演算を適用する。補正演算の式は、実施例1の式(1)で示した通りである。この補正演算を適用した結果、図14(b)を得る。
【0059】
そして、ステップS204に進み、スイッチ201で選択した領域に対応するデータをメモリ135から読出し、データを連結させて相関演算を行う。このときの蓄積データと相関演算領域は、図15(b)に示した通りである。
【0060】
CPU130は、ステップS204を実行すると、再びステップS201から処理を繰り返し実行する。
【0061】
このように、目的とする被写体を選択する手段を設けることによって、対象エリアセンサが適切なコントラストとなるように蓄積されるようにすることが可能となる。そして、エリアセンサ境界の補正手段によって、目的の被写体に対応する領域において、適切な蓄積データが取り出せることとなり、相関演算精度を向上させることが可能となる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0063】
例えば、実施例1および2に記載した処理を組み合わせて実施しても良い。さらには、複数の撮影シーンに対応するために、切替手段を設けて各処理を切り替えても良い。
【0064】
なお、実施例1および実施例2では、TTL位相差方式での構成例を示したが、ハーフミラー121を構成せず、センサ122を焦点検出装置100の外部に構成し、外光による光束を用いて焦点を検出する外測方式で構成しても同様の効果が得られる。
【0065】
また、本発明の実施例では、3つのエリアセンサからなるエリアセンサを用いた例を示したが、エリアセンサの数には限定されないことは言うまでもない。複数のエリアセンサを縦方向や横方向に配置した構成でも本発明を適用することが可能である。ただし、本発明の補正演算後に、データを連結して相関演算する場合は、連結するエリアセンサが隣接している方が望ましい。連結するエリアセンサ同士に間隔がある場合は、センサに結像するデータと焦点距離との関係から間隔を変換し、連結して相関演算を行っても良い。
【0066】
さらに、本発明では、図11に示したように、スイッチ201を除いて各構成要素を焦点検出装置100内部に構成したが、別々の装置に分散させても良い。また、蓄積制御部131、蓄積時間カウンタ132、読出し制御部133、補正演算部134、メモリ135、相関演算部136をひとつのCPU130内に構成したが、別々のCPUや演算装置に分散させても良いし、ハードウェアで構成しても良いし、焦点検出装置130外部に構成しても良い。
【0067】
また、実施例1において、図5のステップS101とS102間のタイムラグ、図5のステップS103からS105間のタイムラグ、ステップS106からステップS107間のタイムラグのうち、一部を無視できるとして説明した。また、実施例2の図13においては、ステップS101とS102間のタイムラグ、ステップS202からステップS105間のタイムラグ、ステップS106からステップS107間のタイムラグのうち、一部を無視できるとして説明した。しかし、厳密には、構成方法によってはタイムラグが生じてしまう部分があり、真に各エリアセンサの蓄積時間を計測することが困難である場合がある。そのため、これらのタイムラグがあらかじめわかっている場合には、補正演算の式(1)の蓄積時間1や蓄積時間2に対し、オフセットや係数を設けても良い。また、蓄積時間1や蓄積時間2を厳密に計測できない場合は、あらかじめ設計上の遅れ時間や、他の手段によって計測した蓄積時間のエリアセンサ間の差分時間を補正演算の式(1)に定数として組み込んでも良い。すなわち、蓄積時間1に所定の差分時間を加算した時間を蓄積時間2としてもよい。
【0068】
また、実施例2では、スイッチ201を用いて、対象エリアセンサを選択し、図13のステップS101ですべてのエリアセンサの蓄積を開始させたが、ステップS201で設定した対象エリアセンサのみを蓄積させても良い。また、図13のステップS204において、スイッチ201によって選択されている領域のみ相関演算を行ったが、スイッチ201によって選択されている領域が属するエリアセンサすべてを用いて相関演算を行っても良い。
【0069】
また、実施例2では、対象エリアを選択することによって、高輝度な光源等があったとしても、対象エリアの蓄積完了を待つ例を示したが、対象エリアを選択せずに同様の効果をえることも可能である。具体的には下記のような処理を行っても構わない。まず、蓄積時間に閾値を設ける。そして、この蓄積時間の閾値よりも短い時間で蓄積が完了した場合には、その短時間で蓄積が完了したセンサ(エリアセンサ)には高輝度な光源(物体)からの光が入射していると判定する。ここで高輝度な光源からの光が入射していると判定されたセンサの蓄積が完了したとしても、その他のセンサ(エリアセンサ)の蓄積を継続するようにしても構わない。ここで、高輝度な光源からの光が入射していると判定されるセンサは勿論1つではなく複数であっても構わない。また、蓄積時間の閾値は撮影者が任意に設定可能としても良いし、前述のエリアセンサに入射する光量(被写体像、もしくは撮像素子上の被写体像、撮像素子上の光量)から本発明の装置が自動的に導き出しても構わない。
【0070】
以上、説明した本発明の焦点検出装置によって、複数のエリアに跨った被写体の焦点検出を高精度にかつ短時間で行うことを可能にし、また、該焦点検出装置を撮像装置に備えることによって、本発明の効果を有する撮像装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 焦点検出装置
110 撮像光学系
122 センサ
130 CPU
131 蓄積制御部
132 蓄積時間カウンタ
133 読出し制御部
134 補正演算部
135 メモリ
136 相関演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有するセンサが複数で構成された電荷蓄積型の光電変換手段と、
該光電変換手段の電荷蓄積の制御を行う蓄積制御手段と、
光電変換手段の各該センサの電荷の蓄積開始から蓄積終了までの蓄積時間を計測する蓄積時間計測手段と、
該光電変換手段の各該センサの光電変換信号の補正演算を行う補正演算手段と、
該補正演算手段によって補正された光電変換信号を用いて焦点検出演算を行う焦点検出演算手段と、
を備えた焦点検出装置であって、
該蓄積制御手段は、前記センサの中の第1のセンサの蓄積完了の信号を検出した後、該第1のセンサ以外のセンサの電荷蓄積を強制的に終了させ、
該補正演算手段は、該第1のセンサの蓄積時間である第1の蓄積時間と該第1の蓄積時間とは異なる第2の蓄積時間に基づいて、光電変換信号の補正演算を行う、
焦点検出装置。
【請求項2】
該補正演算手段は、該第1の蓄積時間と該第2の蓄積時間との比を、該第1のセンサ以外のセンサの該光電変換信号に積算することによって補正演算を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項3】
前記光電変換手段の各該センサのうち、最も早く電荷蓄積が完了したセンサを第1のセンサとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の焦点検出装置。
【請求項4】
前記第2の蓄積時間は、前記蓄積制御手段によって強制的に蓄積終了されたセンサの蓄積時間であること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項5】
前記第2の蓄積時間は、前記第1の蓄積時間に所定の値を加算した値であること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項6】
前記光電変換手段の任意のセンサを選択する領域選択手段を備え、
前記領域選択手段によって選択されたセンサのうち、最も早く蓄積が完了したセンサを第1のセンサとする、
ことを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項7】
前記焦点検出演算手段は、位相差方式で焦点を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の焦点検出装置。
【請求項8】
前記焦点検出演算手段は、前記補正された光電変換信号のうち、前記領域選択手段によって選択されたエリアセンサを対象に焦点検出演算を行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の焦点検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の焦点検出装置を有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−63749(P2012−63749A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160057(P2011−160057)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】