説明

焼き菓子及びその製造方法

【課題】 ソフト感としっとり感を有し、長期保存後もかかる食感を維持することができる焼き菓子、及びその製造方法の提供。
【解決手段】焼き菓子の主原料として、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦、とうもろこし、全脂大豆粉末、脱脂大豆粉末、及び米粉等の穀物粉末から選ばれる1種又は2種以上、小麦グルテン、グリセリン、及び糖類を混合したものを捏ねてグルテンを形成した後、油脂成分を加え、さらに捏ねて得られた生地をねかせた後、成型後、焼成して焼き菓子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフト感としっとり感を有し、かつ、長期保存が可能な焼き菓子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、「栄養調整食品」「栄養補助食品」等の名称で各種食品が販売されている。
その中でも特に、長期保存が可能なクッキータイプのものが多く販売されており、消費者からは、通常のクッキーとは異なる食感、具体的には、ソフトでしっとりとした食感のものも求められるようになってきた。
ソフトな食感のパンであれば、実際に販売されてはいるが、水分や水分活性が高い為に保存中の衛生性及び保存後の澱粉の老化による食感の低下等の点から、長期保存ができるものではなかった。
そこで、冷水膨潤粒状でんぷんを用いることで長期保存を可能にしたソフトクッキー(特許文献1)や、油脂α化澱粉質を用いることでしっとりとしてもちもちとした良好な食感と食べ易さが長期間維持できる携帯用食事代替品(特許文献2)等が開発されてきた。
しかしながら、冷水膨潤粒状でんぷんや油脂α化澱粉質といった特殊な澱粉を必ず使用しなければならないという配合の制限があった。
【0003】
【特許文献1】特開平1−231842号公報
【特許文献2】特開2005−52096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、食べる際に菓子くずがこぼれず、また、通常の澱粉や特殊な澱粉を使用した場合であっても、使用しない場合であっても、通常の焼き菓子よりもソフト感としっとり感を有し、長期保存後においても、かかる食感を維持できる焼き菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、焼き菓子の製造工程において、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類、及び液状糖類を混合したものを捏ねてグルテンを形成させることで、食べる際に菓子くずがこぼれず、ソフト感としっとり感を有し、長期保存後もかかる食感を維持できる焼き菓子を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、糖類、及び油脂成分を原料として使用した焼き菓子である。
【0006】
本発明の第2の発明は、前記穀類粉末が、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦、とうもろこし、全脂大豆粉末、脱脂大豆粉末、及び米粉から選ばれる1種又は2種以上である第1の発明に記載の焼き菓子である。
【0007】
本発明の第3の発明は、前記糖類が、粉末状糖類及び/又は液状糖類であることを特徴とする第1又は2の発明に記載の焼き菓子である。
【0008】
本発明の第4の発明は、前記粉末状糖類が、粉末状単糖類、粉末状二糖類、及び粉末状糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、前記液状糖類が、液状糖アルコール、転化型液糖、及びしょ糖型液糖から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする第3の発明に記載の焼き菓子である。
【0009】
本発明の第5の発明は、前記油脂成分が、食用油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする第1〜4の発明のいずれか1つに記載の焼き菓子である。
【0010】
本発明の第6の発明は、前記食用油が、大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、太白ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、及び構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を有するトリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする第5の発明に記載の焼き菓子である。
【0011】
本発明の第7の発明は、前記ファットスプレッドが、構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を有するトリグリセリドを含有するものであることを特徴とする第5の発明に記載の焼き菓子である。
【0012】
本発明の第8の発明は、焼き菓子原料中の前記膨張剤の量が0.1〜10質量%、前記酵母の量が0.1〜5質量%、前記穀類粉末の量が10〜60質量%、前記小麦グルテンの量が5〜30質量%、前記グリセリンの量が1〜15質量%、前記糖類の量が5〜30質量%、及び前記油脂成分の量が3〜30質量%であることを特徴とする第1〜7の発明のいずれか1つに記載の焼き菓子である。
【0013】
本発明の第9の発明は、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類、及び液状糖類を混合したものを捏ねてグルテンを形成した後、油脂成分を加え、さらに捏ねて得られた生地をねかせた後、焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法である。
【0014】
本発明の第10の発明は、焼き菓子の製造工程において、油脂成分を添加する前に、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類、及び液状糖類を混合したものを捏ねてグルテンを形成させることを特徴とする、焼き菓子にソフト感を持たせる方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の焼き菓子は、食べる際に菓子くずがこぼれず、また、コーン澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉及び加工澱粉といった通常の澱粉や、冷水膨潤粒状でんぷん、油脂α化澱粉質といった特殊な澱粉を使用した場合であっても、使用しない場合であっても、通常の焼き菓子よりもソフト感としっとり感を有し、長期保存後もかかる食感を維持することができる。
そして、通常の焼き菓子と違って、食べる際に菓子くずがボロボロこぼれないことから、食べこぼしによる汚れを心配することなく、どこでも手軽に食することができる。また、しっとりとしているため、食べていても菓子が歯にくっつきにくい。
さらに、長期保存が可能であることから、栄養バランスを調整することで、長期保存のできる栄養調整食品を提供することもでき、食事代替食品としての利用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の焼き菓子の原料について説明をする。
本発明の焼き菓子は、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、糖類及び油脂成分を主原料とするものである。
膨張剤としては、ベーキングパウダー、及び重曹を挙げることができ、これらは市販品を使用することができる。また、酵母(イースト)としては、天然酵母、生イースト、及びドライイーストを挙げることができ、これらは市販品を使用することができる。
焼き菓子原料中の膨張剤の量は、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.3〜5質量%であり、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
焼き菓子原料中の酵母の含量は、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%であり、最も好ましくは0.3〜1質量%である。
膨張剤及び酵母は、どちらか一方だけを使用することもできるが、焼き菓子に、よりソフト感を持たせ、また、パン様の風味をより付与するために、膨張剤と酵母を併用して使用することがより好ましい。
【0017】
穀類粉末としては、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦、とうもろこし、全脂大豆粉末、脱脂大豆粉末及び米粉等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができるが、弾力あるソフト感をより持たせるために、強力粉を用いるのがより好ましい。これらは、市販品を使用することができる。
焼き菓子原料中の穀類粉末の量は、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは10〜50質量%であり、最も好ましくは20〜30質量%である。
【0018】
小麦グルテンは、市販品を使用することができる。焼き菓子原料中の小麦グルテンの量は、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%であり、最も好ましくは10〜20質量%である。
【0019】
グリセリンは、市販品を使用することができる。
焼き菓子原料中のグリセリンの含量は、好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは3〜15質量%であり、最も好ましくは4〜10質量%である。
【0020】
糖類としては、その性状から大別すると、粉末状糖類、及び液状糖類の2種類がある。そして、粉末状糖類としては、果糖、ブドウ糖等の粉末状単糖類、ショ糖、麦芽糖、乳糖等の粉末状二糖類、粉末トレハロース及び粉末状糖アルコール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。粉末状アルコールとしては、例えば、粉末状ソルビトール、粉末状マルチトール等が挙げられる。
また、液状糖類としては、液状ソルビトール(固形分約70質量%)、液状マルチトール(固形分約70質量%)、還元水あめ(還元澱粉糖化物)等の液状糖アルコールや、ブドウ糖液糖、果糖・ブドウ糖液糖、及びブドウ糖・果糖液糖等の転化型液糖、しょ糖型液糖、並びに液状トレハロース等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これら糖類は、市販品を使用することができる。
【0021】
本発明では、粉末状糖類、及び液状糖類のどちらか一方だけを使用することもできるが、焼き菓子に、よりしっとりした食感を持たせ、味むらやべったり感がないものを得るためには、粉末状糖類と液状糖類を併用して使用することが好ましい。
その中でも特に、粉末状ソルビトールと液状ソルビトールを併用して使用すると、焼き菓子に、よりしっとりした食感を持たせることができ、また、甘味を好みに合わせて調整することができるため好ましい。
また、ソルビトール独特の味を抑えた焼き菓子を得たい場合には、粉末状ソルビトールと還元水あめ(還元澱粉糖化物)を併用して使用すると良い。そして、粉末状ソルビトールと還元水あめ(還元澱粉糖化物)を併用した場合にも、焼き菓子に、よりしっとりした食感を持たせることができ、また、甘味を好みに合わせて調整することができる。
焼き菓子原料中の糖類の含量は、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜30質量%であり、最も好ましくは10〜20質量%である。
そして、粉末状糖類と液状糖類を併用して使用する場合には、より生地を安定化させるために、粉末状糖類と液状糖類との質量比が、30/70〜70/30であることが好ましく、40/60〜60/40であることがより好ましく、50/50〜60/40であることが最も好ましい。
【0022】
本発明の油脂成分とは、食用油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングのことをいい、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
食用油、バター、マーガリン、ショートニング、及びファットスプレッド等の油脂成分の焼き菓子原料中の量は、3〜30質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが最も好ましい。
【0023】
食用油としては、例えば大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、太白ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を有するトリグリセリド、並びにこれらの水素添加油脂、分別油脂、及びエステル交換油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
ここで、構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を有するトリグリセリド(トリアシルグリセロール)とは、中鎖脂肪酸のみを構成脂肪酸とする中鎖脂肪酸トリグリセリド、又は構成脂肪酸として中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸の両方を有するトリグリセリドのことをいう。
中鎖脂肪酸としては、炭素数が6〜12の飽和脂肪酸であるのが好ましい。中でも、炭素数が偶数の飽和脂肪酸であるn−へキサン酸、n−オクタン酸、n−デカン酸、ラウリン酸がより好ましく、n−オクタン酸、及びn−デカン酸が最も好ましい。n−オクタン酸、及びn−デカン酸を構成脂肪酸とする中鎖脂肪酸トリグリセリドとして、日清オイリオグループ(株)製の商品:ODOが挙げられる。
【0024】
また、エステル交換油としては、先に挙げた各種食用油脂1種類をエステル交換して得られたものでも、2種以上の食用油脂をエステル交換して得られたものでもよい。2種類の食用油脂をエステル交換したものとして、例えば、大豆油、コーン油、菜種油のような長鎖脂肪酸トリグリセリドと、中鎖脂肪酸トリグリセリドとをエステル交換して得られるトリグリセリド(構成脂肪酸として中鎖脂肪酸及び長鎖脂肪酸を有するトリグリセリド)が挙げられる。
【0025】
マーガリンは、通常のマーガリンであっても、調整マーガリンであってもよい。
ファットスプレッドとしては、油相成分として、水添植物油脂やエステル交換油脂がよく使用されているが、構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を有するトリグリセリド(トリアシルグリセロール)を含有させたものを使用することができる。
中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有させたファットスプレッドとして、日清オイリオグループ(株)製の商品:リセッタソフトが挙げられる。
【0026】
先に説明した主原料の他に、ココアパウダー、チョコレート、チョコチップ、キャラメル、チーズ、ナッツ類、及びはちみつ並びにこれらの加工品、コーン澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉及び各種加工澱粉等の澱粉、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド及び有機酸モノグリセリド等の乳化剤、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンE及びビタミンC等のビタミン類、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳パウダー、クリーミングパウダー、デキストリン、オリザノール、鉄分、カルシウム、レシチン、コエンザイムQ、酵母エキス、アミノ酸、卵殻パウダー、レモン砂糖洋酒漬け等の各種果実、乾燥果実、乾燥野菜、フライ果実、フライ野菜、食塩やシーズニング等の各種調味料、増粘多糖類、香料、水、牛乳、豆乳、果汁、及び野菜汁等を配合することができる。
また、本発明の焼き菓子には、コーン澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉及び加工澱粉といった通常の澱粉以外に、冷水膨潤粒状澱粉や油脂α化澱粉質といった特殊な澱粉も原料として使用することができるが、本発明によれば、通常の澱粉や特殊な澱粉を使用しなくても、ソフト感としっとり感を有する焼き菓子を得ることができる
【0027】
水、牛乳、豆乳、果汁、野菜汁等の水分含量に大きく影響を及ぼす成分の焼き菓子原料中の量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが最も好ましい。特に、食塩等の調味料を配合する場合、原料中でのその溶解性をより高め、味むらをなくすために、水を配合することが好ましい。
【0028】
次に、本発明の焼き菓子の製造方法について具体例を挙げて説明をする。
本発明の焼き菓子は、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、糖類、及び油脂成分、必要に応じて水、ココアパウダー、チョコレート、キャラメル、チーズ、はちみつ、ビタミン、ミネラル、香料及び食塩等の成分を混合し、1〜30分捏ねてグルテンを形成した後、食用油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニング等の油脂成分、必要に応じてチョコチップ、ナッツ類、レモン砂糖洋酒漬け等の各種果実、乾燥果実、乾燥野菜、フライ果実、フライ野菜等を加え、さらに1〜30分捏ねる。捏ねあがったときの生地の温度は、20〜30℃に保つのが好ましい。得られた生地を10〜30℃の温度下で、10〜120分ねかせた後、成型後、100〜200℃で5〜30分間焼成することにより製造することができる。
ここで、食用油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニング等の油脂成分を、グルテンを形成する前に配合すると、油感のあるこってりとした食感となり、ソフト感が若干少ないのものができる。特に、こってりした食感の焼き菓子が求められている場合には、グルテン形成前に油脂成分を添加して製造すればよいが、よりソフト感があり、また、一般的に好まれる傾向である油感の少ない焼き菓子を製造するためには、一度グルテンを形成させた後に、食用油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニング等の油脂成分を添加して製造することが好ましい。
なお、グルテンとは、小麦やライ麦等の穀物に水分を含有させたものを捏ねることで、グリアジンとグルテニンが絡み合って形成されるもので、粘着性と弾性を兼ね備えたものである。
【0029】
次に、本発明の焼き菓子にソフト感としっとり感を持たせる方法について説明をする。
先の製造方法でも説明をしたが、食用油、バター、マーガリンショートニング等の油脂成分は、グルテンを形成させる前から添加することもできるが、一度グルテンを形成させた後に添加する方が、得られる焼き菓子に、よりソフト感を持たせることができ、また、油感の少ないものができる。
すなわち、油脂成分を添加する前に、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類、及び液状糖類を混合したものを捏ねて、一度グルテン形成を行うことで、焼き菓子によりソフト感としっとり感を持たせることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例1〜6〔はちみつレモン味〕
表1の配合1に示す原料を用いて、以下の方法で焼き菓子を製造した。
食塩、水、グリセリン、液状糖アルコール(液状ソルビトール固形分約70%品)、はちみつ、香料、強力粉、小麦グルテン、ベーキングパウダー、全脂粉乳、粉末状糖アルコール(粉末状ソルビトール)、卵殻パウダー、ドライイースト、及びビタミン混合物(ビタミンB1、B2、B6、及びピロリン酸第ニ鉄混合物)を、約10分間ニーダーで捏ね、グルテンを形成した。
その後、ファットスプレッド(日清オイリオグループ(株)製、商品名:リセッタソフト)を加え、約3分間ニーダーで捏ねた後、レモン砂糖洋酒漬けを加え、さらに約3分間ニーダーで捏ねた。捏ね終わった時の生地温度は、25℃であった。
約1時間、室温でねかせた後成型をし、オーブンで焼き、焼き菓子を製造した。なお、オーブンでの焼き温度は130〜160℃で、焼き時間は15分であった。
また、配合1で粉末状糖アルコール、及び水を使用しない配合(表1の配合2)、及び配合1で液状糖アルコールを使用しない配合(表1の配合3)についても、同様に製造し焼き菓子の評価を行った。さらに、糖類として、ソルビトールの他にしょ糖を使用し、水を使用しない配合(表2の配合4)、及びソルビトールの他に果糖・ブドウ糖液糖を使用した配合(表2の配合5)、ベーキングパウダーを使用しない配合(表2の配合6)についても、同様に製造し焼き菓子の評価を行った。
【0032】
実施例7〔はちみつレモン味〕
配合1と同じ配合で、グルテン形成前にファッドスプレッドを添加する以下の方法で焼き菓子を製造した。
液状糖アルコール(液状ソルビトール固形分約70%品)、粉末状糖アルコール(粉末状ソルビトール)、及びファットスプレッド(日清オイリオグループ(株)製、商品名:リセッタソフト)を、約5分間ニーダーで捏ね、食塩、水、グリセリン、はちみつ、香料、強力粉、小麦グルテン、ベーキングパウダー、全脂粉乳、卵殻パウダー、ドライイースト、及びビタミン混合物(ビタミンB1、B2、B6、及びピロリン酸第ニ鉄混合物)を添加し、さらに約8分間ニーダーで捏ね、グルテンを形成した。
その後、レモン砂糖洋酒漬けを加え、さらに約3分間ニーダーで捏ねた。捏ね終わった時の生地温度は、25℃であった。
約1時間、室温でねかせた後成型をし、オーブンで焼き、焼き菓子を製造した。なお、オーブンでの焼き温度は130〜160℃で、焼き時間は15分であった。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
〔焼き菓子の評価方法〕
各焼き菓子について、美味しさ、食感(ソフト感、しっとり感、油感)、食べやすさ(ボロボロせずに食べやすいか、歯にくっつきにくいか)を評価項目として風味評価試験を行った。また、長期保存後の食感(ソフト感、しっとり感)についても調べた。
【0036】
〔焼き菓子の評価結果〕
風味試験を行った結果、実施例1〜7のすべての焼き菓子は、ソフト感としっとり感を有していたが、グルテン形成前にファッドスプレッドを添加して製造した実施例7の焼き菓子は、実施例1〜6の焼き菓子にくらべ、ややソフト感が少なかった。また、実施例1〜6の焼き菓子は、実施例7の焼き菓子に比べて、油感の少ないものであった。この結果から、特にこってりした食感の焼き菓子が求められている場合には、ファッドスプレッドをグルテン形成前に添加すればよいが、よりソフト感があり、油感も少ない焼き菓子が求められているときには、グルテン形成後にファッドスプレッドを添加すればよいことがわかった。
また、実施例1〜7のすべての焼き菓子は、食べるときに菓子くずがボロボロこぼれず、歯にもくっつかず食べやすいものであった。
得られた焼き菓子の水分活性は、すべて0.6以下であった。したがって、長期保存が可能であることがわかった。
また、粉末状糖アルコールと液状糖アルコールを併用した実施例1の焼き菓子は、味むらやべったり感もなかったが、粉末状糖アルコールと液状糖アルコールを併用せずに製造した焼き菓子、すなわち、実施例2の粉末状糖アルコールを使用していない焼き菓子は、若干味にむらがあるような食感となり、実施例3の液状糖アルコールを使用していない焼き菓子は、しっとりとはしているが、若干べったりした感じを有するものであった。
実施例1の焼き菓子について、室温で6ヶ月保管したもの、及び40℃で3ヶ月保管したものについてその食感を調べたところ、いずれも、製造直後と同等のソフト感及びしっとり感を有していた。
さらに、実施例1の焼き菓子について、室温で12ヶ月保管したものについてその食感を調べたところ、いずれも、製造直後と同等のソフト感及びしっとり感を有していた。
【0037】
実施例8〜11〔トマトチーズ味〕
表3の配合7に示す原料を用いて、以下の方法で焼き菓子を製造した。
食塩、水、グリセリン、液状糖アルコール(液状ソルビトール固形分約70%品)、果汁、香料、強力粉、小麦グルテン、ベーキングパウダー、チーズパウダー、シーズニング、酵母エキス、粉末状糖アルコール(粉末状ソルビトール)、卵殻パウダー、ドライイースト、及びビタミン混合物(ビタミンB1、B2、B6、及びピロリン酸第ニ鉄混合物)を、約10分間ニーダーで捏ね、グルテンを形成した。
その後、ファットスプレッド(日清オイリオグループ(株)製、商品名:リセッタソフト)を加え、約3分間ニーダーで捏ねた後、オニオンチップを加え、さらに約3分間ニーダーで捏ねた。捏ね終わった時の生地温度は、25℃であった。
約1時間、室温でねかせた後成型をし、オーブンで焼き、焼き菓子を製造した。なお、オーブンでの焼き温度は130〜160℃で、焼き時間は15分であった。
また、表3の配合8、9、及び10についても、同様の方法で焼き菓子を製造し、評価を行った。
【0038】
【表3】

【0039】
〔焼き菓子の評価方法〕
各焼き菓子について、美味しさ、食感(ソフト感、しっとり感)、食べやすさ(ボロボロせずに食べやすいか、歯にくっつきにくいか)を評価項目として風味評価試験を行った。また、長期保存後の食感(ソフト感、しっとり感)についても調べた。
【0040】
〔焼き菓子の評価結果〕
風味試験を行った結果、実施例8〜11のすべての焼き菓子は、ソフト感としっとり感を有していた。また、すべての焼き菓子は、食べるときに菓子くずがボロボロこぼれず、歯にもくっつかず食べやすいものであった。
得られた焼き菓子の水分活性は、すべて0.6以下であった。したがって、長期保存が可能であることがわかった。
実施例8の焼き菓子について、室温で6ヶ月保管したもの、及び40℃で3ヶ月保管したものについてその食感を調べたところ、いずれも、製造直後と同等のソフト感及びしっとり感を有していた。
さらに、実施例8の焼き菓子について、室温で12ヶ月保管したものについてその食感を調べたところ、いずれも、製造直後と同等のソフト感及びしっとり感を有していた。
【0041】
実施例12〔はちみつレモン味〕
粉末状糖アルコールとして粉末状ソルビトール、液状糖アルコールとして還元水あめを使用した表4の配合11に示す原料を用いて、以下の方法で焼き菓子を製造した。
食塩、水、グリセリン、液状糖アルコール(還元水あめ、固形分約70%品)、はちみつ、香料、強力粉、小麦グルテン、ベーキングパウダー、全脂粉乳、粉末状糖アルコール(粉末状ソルビトール)、卵殻パウダー、ドライイースト、及びビタミン混合物(ビタミンB1、B2、B6、及びピロリン酸第ニ鉄混合物)を、約10分間ニーダーで捏ね、グルテンを形成した。
その後、ファットスプレッド(日清オイリオグループ(株)製、商品名:リセッタソフト)を加え、約3分間ニーダーで捏ねた後、レモン砂糖洋酒漬けを加え、さらに約3分間ニーダーで捏ねた。捏ね終わった時の生地温度は、25℃であった。
約1時間、室温でねかせた後成型をし、オーブンで焼き、焼き菓子を製造した。なお、オーブンでの焼き温度は130〜160℃で、焼き時間は15分であった。
【0042】
【表4】

【0043】
〔焼き菓子の評価方法〕
焼き菓子について、美味しさ、食感(ソフト感、しっとり感、油感)、食べやすさ(ボロボロせずに食べやすいか、歯にくっつきにくいか)を評価項目として風味評価試験を行った。また、長期保存後の食感(ソフト感、しっとり感)についても調べた。
【0044】
〔焼き菓子の評価結果〕
風味試験を行った結果、実施例12の焼き菓子は、ソフト感としっとり感を有し、油感の少ないものであった。また、食べるときに菓子くずがボロボロこぼれず、歯にもくっつかず食べやすいもので、味むらやべったり感もなかった。また、ソルビトール独特の味が抑えられたものであった。
得られた焼き菓子の水分活性は、0.6以下であった。したがって、長期保存が可能であることがわかった。実施例12の焼き菓子について、室温で6ヶ月保管したもの、及び40℃で3ヶ月保管したものについてその食感を調べたところ、製造直後と同等のソフト感及びしっとり感を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の焼き菓子は、お菓子や栄養調整食品等の食品分野に使用することができ、特に、長期保存が可能であることから、長期保存食品として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、糖類、及び油脂成分を原料として使用した焼き菓子。
【請求項2】
前記穀類粉末が、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦、とうもろこし、全脂大豆粉末、脱脂大豆粉末、及び米粉から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の焼き菓子。
【請求項3】
前記糖類が、粉末状糖類及び/又は液状糖類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼き菓子。
【請求項4】
前記粉末状糖類が、粉末状単糖類、粉末状二糖類、及び粉末状糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、前記液状糖類が、液状糖アルコール、転化型液糖、及びしょ糖型液糖から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3に記載の焼き菓子。
【請求項5】
前記油脂成分が、食用油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼き菓子。
【請求項6】
前記食用油が、大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、太白ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、魚油、及び構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を有するトリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の焼き菓子。
【請求項7】
前記ファットスプレッドが、構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を有するトリグリセリドを含有するものであることを特徴とする請求項5に記載の焼き菓子。
【請求項8】
焼き菓子原料中の前記膨張剤の量が0.1〜10質量%、前記酵母の量が0.1〜5質量%、前記穀類粉末の量が10〜60質量%、前記小麦グルテンの量が5〜30質量%、前記グリセリンの量が1〜15質量%、前記糖類の量が5〜30質量%、及び前記油脂成分の量が3〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の焼き菓子。
【請求項9】
膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類、及び液状糖類を混合したものを捏ねてグルテンを形成した後、油脂成分を加え、さらに捏ねて得られた生地をねかせた後、焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法。
【請求項10】
焼き菓子の製造工程において、油脂成分を添加する前に、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類、及び液状糖類を混合したものを捏ねてグルテンを形成させることを特徴とする、焼き菓子にソフト感を持たせる方法。

【公開番号】特開2009−148253(P2009−148253A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302560(P2008−302560)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】