説明

焼却処理装置

【課題】効率良く焼却炉内で処理対象物を均一に燃焼させる焼却処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る焼却処理装置1は、両端面中央部に開口部を有する円筒形の焼却炉11と、焼却炉の円筒中心軸を水平方向に向けて焼却炉を回転自在に支持する回転支持部と、焼却炉の円筒中心軸を中心に回転させるモータと、焼却炉の一方側端面を覆う焼却炉用蓋20と、焼却炉用蓋に設置されて焼却炉の内方に向けて火炎を放出する第1バーナー30と、焼却炉の内方に空気を送り込む第1ブロワー35と、焼却炉の他方側端面の開口部と連通する排気部とを備えている。この焼却処理装置において、焼却炉用蓋は、第1ブロワーからの空気を送り込む焼却炉の内方側で開口した複数の送風孔を有しており、焼却炉は、焼却炉内部壁面から焼却炉の内方に向けて立設した突起部14、15を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物等の処理対象物を焼却処理する焼却処理装置に関し、さらに詳しくは、焼却炉を回転させながら処理対象物を焼却する焼却処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固形物等の処理対象物を焼却処理する焼却処理装置において、焼却炉内の処理対象物を均一に完全燃焼させるために、円筒形の焼却炉を回転させることで、処理対象物を攪拌しながら焼却処理する焼却処理装置が従来より知られている。(例えば、特許文献1を参照)。また、このような焼却処理装置は、処理対象物を燃焼させるために、火炎を放出するバーナーを用いて構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−233926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、処理対象物の大きさおよび材質等によっては、焼却炉内で均一に完全燃焼させることが困難な場合もあり、処理対象物が完全燃焼されていないと処理対象物の焼却灰の処分にも支障をきたすこととなる。特に、処理対象物が燃焼しにくい材質で形成された大型の物であるとき、処理対象物を均一に完全燃焼させるためには、焼却炉内においてバーナーから火炎を長時間放出して燃焼させる必要があるために、処理効率が低下するという課題があった。
【0005】
以上のような課題に鑑みて、本発明では、効率良く焼却炉内で処理対象物を均一に燃焼させる焼却処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係る焼却処理装置は、両端面中央部にそれぞれ開口部を有する円筒形の焼却炉と、前記焼却炉の円筒中心軸を水平方向に向けて前記焼却炉を回転自在に支持する回転支持手段と、前記回転支持手段により支持された前記焼却炉を前記円筒中心軸を中心に回転させる回転手段と、前記焼却炉の一方側端面を覆うカバー部材と、前記焼却炉の内部に向けて火炎を放出する燃焼手段と、前記カバー部材に設置されて前記焼却炉の内部に外部空気を送り込む送風手段と、前記焼却炉の他方側端面の開口部と連通する排気部とを備えて構成されている。この焼却処理装置において、前記カバー部材は、前記送風手段からの空気を送り込む前記焼却炉の内方側に向かって開口した複数の送風孔を有し、前記焼却炉は、その内部壁面から内方に向けて立設した突起部を有している。
【0007】
上記構成の焼却処理装置おいて、前記焼却炉は、その外周部を枠部材で覆われており、前記送風手段は、前記枠部材に設置されているとともに、前記焼却炉と前記カバー部材との隙間、および前記焼却炉と前記排気部との隙間から、前記枠部材内部に漏出した未燃ガスを、外部空気とともに前記焼却炉の内部に送り込むように構成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記構成の焼却処理装置おいて、前記突起部は、軸方向に並んで配列されて前記焼却炉内部壁面から前記円筒中心軸に向けて立設した複数の棒状突起からなるレーキ状の破砕突起と、前記焼却炉内部壁面から径方向内方に延びて立設した板状の攪拌突起とを有していることが好ましい。
【0009】
上記構成の焼却処理装置おいて、前記排気部が、下端側において前記焼却炉の他方側端面の開口部と連通して上方に延びる円筒形状の燃焼筒部と、前記燃焼筒部に設置されて前記燃焼筒部の内部に向けて火炎を放出する加熱手段と、前記加熱手段の上方において前記燃焼筒部の内部に空気を送り込む燃焼補助手段とを有した2次燃焼部を備えていることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の焼却処理装置おいて、前記燃焼筒部が、前記焼却炉の前記他方側端面の前記開口部との連通部分近傍内部において、排気に含まれるダストを、排気圧によって細かく破砕する破砕網を有していることが好ましい。さらに、上記構成の焼却処理装置おいて、前記燃焼筒部が、その側壁部で開口して設けられた点検口を有していることが好ましい。
【0011】
上記構成の焼却処理装置おいて、前記排気部がさらに、上端側部が前記2次燃焼部の上端開口部と連通し側面視において上下に延びる略逆三角形に形成され中空円錐状の分離部と、前記分離部の上方に繋がって設置された円筒状の排気筒と、前記排気筒の外周側から前記排気筒の内部上方に向けて送風する排気補助手段とを有した集塵部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に関する焼却処理装置によれば、送風手段が焼却炉内部に向けて、複数の送風孔から空気を送り込むことで、焼却炉内全体に処理対象物を燃焼させるための空気が均一に行きわたるので、処理対象物の全体を完全燃焼させやすくなり、よって、焼却処理の作業効率が向上する。さらに、焼却炉は、その内部壁面から内方に向けて立設した突起部を有することで、焼却炉内部の底に溜まった処理対象物を攪拌することが可能で、送風手段による空気および燃焼手段による火炎を処理対象物の全体に行きわたらすことができ、処理対象物全体を完全燃焼させやすくなり、よって、焼却処理の作業効率が向上する。
【0013】
また、送風手段が、枠部材内部に漏出した未燃ガスを、発送風手段が発生させた空気とともに焼却炉の内部に送り込むように構成することで、焼却炉で発生した未燃ガスは、そのままの状態で大気中に放出されることがなく、再度送風手段によって焼却炉内に送られて完全燃焼させられるので、よって、周辺環境に対する影響を小さく抑えることが可能となる。
【0014】
また、焼却炉内部に、軸方向に並んで配列されて、焼却炉内壁面から焼却炉の中心軸に向けて立設した棒状の破砕突起を有していることで、焼却炉の回転とともに破砕突起が回転して、焼却炉内部の処理対象物を細かく粉砕することができるので、送風手段による空気および燃焼手段による火炎を処理対象物の全体に行きわたらすことができ、処理対象物全体を完全燃焼させやすくなり、よって、焼却処理の作業効率が向上する。さらに、焼却炉内部に、焼却炉内部壁面から径方向内方に延びて立設した、板状の攪拌突起を有していることで、焼却炉の回転とともに攪拌突起が回転して、焼却炉内部の底に溜まった処理対象物を焼却炉内部の上方へ巻き上げることができ、送風手段による空気および燃焼手段による火炎を処理対象物の全体に行きわたらすことができるので、処理対象物全体を完全燃焼させやすくなり、よって、焼却処理の作業効率が向上する。
【0015】
焼却処理装置が、焼却炉内で発生した排気を加熱手段および燃焼補助手段によって高温で完全燃焼させる2次燃焼部を有していることで、排気に不完全燃焼ガスが含まれる場合であっても、2次燃焼部によって完全燃焼させることができ、また、排気に含まれるダストも完全燃焼させることができ、排気をより無害化することが可能となる。
【0016】
また、燃焼筒部が、焼却炉の他方側端面の開口部との連通部分近傍内部において、排気に含まれるダストを、排気圧によって細かく破砕する破砕網が、燃焼筒部内部を塞ぐように設置されている。よって、一定風圧を有して燃焼筒部に進行する排気に含まれたダストは、一定風圧で破砕網表面に当たり、破砕網の網目より細かく破砕することが可能となり、よって、ダストを2次燃焼部において完全燃焼させやすくなる。さらに、燃焼筒部が、その側壁部で開口して設けられた点検口を有していることで、例えば、2次燃焼部の燃焼状態等を外部から目視で確認可能であり、よって、焼却処理装置の稼動状態を簡易な方法で確認可能となる。
【0017】
さらに、焼却処理装置が、2次燃焼部で燃焼した後の排気中に含まれるダストを分離して集塵する集塵部を有して構成されることで、排気中に含まれるダストを除去できるので、排気をより無害化することが可能となる。また、大気中に排気を放出する排気筒において、排気筒の側方外部から排気筒の内部上方に向けて、排気補助手段によって送風を行うことで、排気が排気筒から排出されやすくなるので、焼却処理の作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る焼却処理装置1の好ましい実施の形態について図1から図9を参照して説明する。ここで、図1および図5に示す矢印の方向を左右、前後および上下とする。まず、焼却処理装置1は、図1に示すように、焼却部10、回転保持部40、2次燃焼部60、集塵部80とを主体に構成される。
【0019】
焼却部10は、焼却炉11、焼却炉用蓋20、第1バーナー30、第1ブロワー35とを主体に構成されている。このとき、焼焼却炉11はその外周を、後述する上枠42および架台41の上段によって囲まれており、この焼却炉11の外周部で形成された領域は、略密閉状態となった未燃ガス室11cとなっている。焼却炉11は、略円筒形で左右方向に延びるとともに、その左右両端面で開口しており、左開口部12は右開口部13よりも小さく開口している。また、焼却炉11の内壁面11bには、図3に示すように、左右方向に延びて構成された破砕突起14の先端部が、焼却炉11の中心部に向けて立設しており、この破砕突起14は、内壁面11b上に板状の突起台14bが設置されて、さらに突起台14bの上に、左右方向に一直線上に配置された複数の円柱状の突起円柱14aが、焼却炉11の中心部に向けて立設している。
【0020】
さらに、内壁面11b上において、破砕突起14と隣接して、内壁面11bから焼却炉11の中心部に向けて立設した攪拌突起15が設置されており、この攪拌突起15は、図3に示すように略コの字状に形成されている。ここで、攪拌突起15は、板状で左右方向に直線状に延びた中央突起15aと、その中央突起15aの左右両端部で連結した2つの板状の左右突起15bとが、内壁面11b上に立設して構成されている。さらに、左右突起15bは焼却炉11の回転方向B(反時計回り方向)に対して、左右外側に開いて傾斜した状態で、左右方向の中央側端部が中央突起15aの左右端部と連結することで攪拌領域15cが形成されている。また、破砕突起14と攪拌突起15とは、図4に示すように例えば、各突起14、15をそれぞれ4つずつ用いて、内壁面11b上で交互に45度回転した位置に配設されて構成されている。
【0021】
焼却炉11は、左右方向に延びた円筒部外周において、後述するローラ55L、55L、55R、55Rと上下方向に当接するリング状のレール18L、18Rが、左右両端部近傍に所定幅で設置されており、一方、左右方向の中心部付近には、円筒部外周壁から外方向に延びて、後述する2つのスラスト用ローラ56、56によって挟持されるスラスト支持板17が立設している。また、スラスト支持板17と隣接して、駆動チェーン52と噛合する第1スプロケット16が、焼却炉11の円筒部外周壁に設置されている。
【0022】
焼却炉用蓋20は、図5に示すように、略正方形に形成されており、上枠42の右側側面の中央付近に、2つのヒンジ25を介して開閉自在に設置されており、焼却炉用蓋20の前側端部に設置された開閉用ハンドル23によって、焼却炉11内部から焼却炉用蓋20に外力が加わっても、焼却炉用蓋20が開かないようにすることが可能である。なお、焼却炉用蓋20は、取っ手24を握って開閉を行う構造となっている。
【0023】
さらに、図5に示すように、焼却炉用蓋20には、焼却炉用蓋20の前後方向の中心線20aおよび上下方向の中心線20bに対して、下方後側を中心として円形に開口し、第1バーナー30が挿入されるバーナー用開口部21、および中心線20a上に開口中心があり、中心線20bよりも下側で円形に開口して、下送風管35cの左先端部が挿入される送風管用開口部22が設けられている。また、図2に示すように、回転自在な焼却炉11と上枠42に固定された焼却炉用蓋20との間には、所要の隙間が設けられている。これによって、焼却炉11の内部から、未燃ガス11dがこの隙間を通過することで、未燃ガス室11cに漏出する構成となっている。
【0024】
第1バーナー30は、可燃性ガスを噴射するとともに、その噴射したガスに着火することで、火炎を放出させる構造となっており、第1バーナー30は、焼却炉用蓋20のバーナー用開口部21に、その先端が焼却炉11の内方に向けて挿入されて固定されており、第1バーナー30の先端から火炎を噴出することで、焼却炉11内の処理対象物(図示せず)を燃焼させる。
【0025】
第1ブロワー35は、図1および図9に示すように、上枠42の後側面の上方右端部に設置されており、この設置部分において、円筒状で前後方向から左右方向に折曲した、排出パイプ36が上枠42に貫通し、未燃ガス室11cと連通している。また、排出パイプ36の右先端部は、第1ブロワー35の下方と連通し、円筒で略L字状に形成された、ジョイント35aの左開口部に挿入されて連通している。さらに、ジョイント35aの他端開口部は、上下前後方向に延びて設置された、上下ホース35bの上端と連通している。また、上下ホース35bの下端は、円筒で略L字状に折曲した下送風管35cの一端と連通している。ここで、上下ホース35bは、外力に対して伸縮および変形自在となっており、焼却炉用蓋20の開閉時に支障となることはない。
【0026】
図9に示すように、第1ブロワー35で発生した外部空気35eが、ジョイント35aに高速高圧で流入して、上下ホース35bへと進行するとき、排出パイプ36の右先端部は負圧となる。よって、未燃ガス11dが、未燃ガス室11cからジョイント35a内部に流入し、さらに、外部空気35eと未燃ガス11dとが混合した混合空気35fが、上下ホース35bおよび下送風管35cを通過し、空気流路22aに流入する。
【0027】
さらに、焼却炉用蓋20は、図6および図7に示すように、焼却炉11の内部に向けて(左方向に)円形に突出した空気噴出部26を有しており、第1ブロワー用開口部22に挿入された下送風管35cから流入した混合空気35fが、リング状に形成された空気流路22aを通過して、焼却炉11の内方に向かって開口した複数の空気噴出孔22bから、焼却炉11の内方に送り込まれるように構成されている。
【0028】
回転保持部40は、架台41、上枠42およびモータ50を主体に構成される。架台41は、その上段において、上述のレール18L、18Rと当接可能な位置に、前後方向にそれぞれ2つのローラ55L、55L、55R、55Rが回転自在に配設されており、また、左右方向の中央付近には、スラスト支持板17を挟持する2つのスラスト用ローラ56が回転自在に配設されている。一方、架台41の下段には、モータ50が設置されており、モータ50の右側端部に連結された第2スプロケット51は、駆動チェーン52と噛合している。上枠42は、焼却炉11の外周部を囲むように形成されており、上枠42の右側側面には、図5に示すように、焼却炉用蓋20が開閉可能に取り付けられている。
【0029】
2次燃焼部60は、燃焼筒61、第2バーナー70、第2ブロワー75および空気噴射管76を主体に構成されている。燃焼筒61は、図1に示すように側面視において、略L字状に形成されるとともに、その内部が中空となっており、下方で左右に延びた左右燃焼筒61aと、左右燃焼筒61aの左側端部で連通して上下に延びた上下燃焼筒61bとから構成されている。左右燃焼筒61aの右側端部は右方向に向けて開口するとともに、焼却炉11の左開口部12と連通し、また、左右燃焼筒61aの右側端部近傍の内部には、
焼却炉11で発生する排気11aに含まれる、比較的大きなダストを破砕するための破砕網62が設置されている。一方、左右燃焼筒61aの左側端部には、燃焼筒61の内部および破砕網62の状況を点検するための点検口63が設置されている。また、上下燃焼筒61bは、図1に示すように、その上端側部において左方向に向けて開口するとともに、後述する集塵部80の側方通気通路81と連通している。
【0030】
第2バーナー70は、第1バーナー30と同様の構造となっており、焼却炉11の内部で発生した後に、左右燃焼筒61aを通過して上下燃焼筒61bに流入した排気11aを燃焼させる装置であり、上下燃焼筒61bの下方外周部において、第2バーナー70の先端が上下燃焼筒61bの内方に向けて設置されている。第2ブロワー75は、燃焼筒61の外部に設置されており、第2ブロワー75を稼動させることで空気流を発生させることが可能である。空気噴射管76は、筒状で上下に延びて第2バーナー70よりも上方で、上下燃焼筒61bの内部に固定されており、第2ブロワー75と一端が連通した送風管75aの他端が、空気噴射管76の上端部と連通している。また、空気噴射管76の外周壁には、配列形成された多数の空気噴射孔(図示せず)を有しており、この空気噴射孔から第2ブロワー75で発生させた空気流を噴射するように構成されている。
【0031】
集塵部80は、図1および図8に示すように、側方通気通路81、上部円筒82、下部円筒83、ダストボックス84、排気筒90、第3ブロワー95および空気層95bを主体に構成される。側方通気通路81は、内部が中空で左右方向に延びており、その右側端部での開口部が上下燃焼筒61bの上端側部における開口部と連通している。上部円筒82は、内部に中空部を有した円筒状で上下に延びており、上部円筒82の上端外周部で側方通気通路81の左側端部と連通している。下部円筒83は、内部が中空で上下に延びるとともに、側面視において略逆三角形状に形成されており、その上端開口部が上部円筒82の下端開口部と連通している。ダストボックス84は、内部が中空に形成されており、下部円筒83の下端部と連通している。
【0032】
排気筒90は、両端部で開口して、内部が中空の円筒状で上下に延びて形成されており、排気筒90の下方部が、上部円筒82の上方から下方に向けて挿入されて固定されているとともに、排気筒90の上端部の排気開口部91で上方に向けて開口している。第3ブロワー95は、集塵部80の外部に設置されており、第3ブロワー95で発生させた空気流を、第3ブロワー95と一端が連通して、他端が空気層95bと連通している送風管95aを介して、空気層95bに流入させる構成となっている。空気層95bは、上部円筒82の上方で円柱状に形成されており、その内部に中空部を有するとともに、中心部に排気筒90が上下に貫通している。また、空気層95bの内部には、空気層95bの中空部と排気筒90内部の中空部分とに連通する、空気流入口96が複数形成されている。なお、排気開口部91の上方には、カバー92が設置されており、排気筒90の内部に雨等が入らないようになっている。
【0033】
ここまでは、焼却処理装置1の各構成部について説明したが、以下において、処理対象物を焼却処理するときの、各構成部の動作について説明する。
【0034】
まず、焼却炉用蓋20を開き、処理対象物を焼却炉11の内部に投入する。そして、モータ50を駆動させることによって、第2スプロケット51が回転するとともに、駆動チェーン52を介して、第1スプロケット16に回転駆動力が伝達されて、焼却炉11が左右方向に延びた中心軸を中心として、図3および図4に示す回転方向Bの方向に回転する。このとき、ローラ55L、55Lとレール18L、ローラ55R、55Rとレール18Rとがそれぞれ上下方向に当接しているとともに、ローラ55L、55L、55R、55Rは、回転方向Bとは反対の、時計回りの方向に回転することで、回転保持部40は焼却炉11を回転自在に支持している。さらに、焼却炉11とともに回転するスラスト支持板17が、2つのスラスト用ローラ56、56で挟持することで、焼却炉11が左右方向に移動することを規制可能である。
【0035】
次に、第1バーナー30および第1ブロワー35を稼動させて、焼却炉11内部の処理対象物を燃焼させる。このとき、第1バーナー30は、その先端部から焼却炉11の中心部に向けて、火炎を放出させる。一方、第1ブロワー35は、混合空気35fを空気流路22aに流入させて、複数の空気噴出孔22bから混合空気35fを、焼却炉11の内方に向けて送り込む。
【0036】
このとき、焼却炉11の内部では、焼却炉11の回転に伴って、焼却炉11の底部を順次通過していく破砕突起14によって、焼却炉11の底部に堆積した処理対象物が、突起円柱14aと突起円柱14aの間を通過することで細かく破砕されていく。よって、空気噴出孔22bから送り込まれた空気および第1バーナー30から放出された火炎を処理対象物全体に行きわたらすことができて、短時間で処理対象物を焼却できるので、焼却処理装置1の作業効率を高めることが可能である。
【0037】
上記のように、破砕突起14が処理対象物が細かく破砕すると同時に、図3に示すように、攪拌突起15は、中央突起15aと2つの左右突起15bとから構成されて、焼却炉11の回転方向Bの方向に開いて延びた攪拌領域15cを有しているので、焼却炉11内の底部に堆積した処理対象物を、攪拌領域15cで保持するとともに焼却炉11が回転方向Bの方向に回転することで、攪拌領域15cで保持された処理対象物を、焼却炉11内部の上方まで掻きあげて、下方に落下させることが可能である。こうすることによって、処理対象物の攪拌効率が高まり、空気噴出孔22bから送り込まれた空気および第1バーナー30から放出された火炎を処理対象物全体に行きわたらすことができて、短時間で処理対象物を焼却できるので、焼却処理装置1の作業効率を高めることが可能である。
【0038】
また、焼却炉11の内部では、右方向(焼却炉用蓋20の方向)から左方向に向けて、混合空気35fおよび炎が放出される構成となっているため、処理対象物が燃焼した後に発生する排気11aは、左開口部12から排出されて、2次燃焼部60の左右燃焼筒61aに流入する。ここで、排気11aに含まれる比較的大きなダストは、一定風圧で破砕網62表面に当たることによって破砕されて、破砕網62の網目よりも細かなダストとなり、排気11aとともに左右燃焼筒61aに流入する。
【0039】
ここで、排気11aは、2次燃焼部60の左右燃焼筒61aから上下燃焼筒61bに進行し、上下燃焼筒61bにおいて、第2バーナー70が、上下燃焼筒61の中心部に向けて火炎を噴出することによって、排気11aは燃焼させられて火炎とともに上昇する。空気噴射官76の表面では、第2ブロワー75によって発生した空気が噴射されており、この噴射空気によって、上下燃焼筒61内の排気11aは、さらに勢いを増して上昇していく。
【0040】
次に、2次燃焼部60で燃焼するとともに、上下燃焼筒61の上端部まで上昇した排気11aは、上下燃焼筒61bの内部を上昇した比較的高い流速を保った状態で、進行方向を上方から左方向に変えて、側方通気通路81から集塵部80に送り込まれる。このとき、平面視において、上部円筒82の内部壁面の接線方向に流入するとともに、上部円筒82の内部壁面に沿って、螺旋軌道を描くように高速で回転しながら上方から下方へと進行する。一方で、破砕網62で捕集されずに側方通気通路81から流入してきたダストも、排気11aとともに比較的高い流速を保った状態で、上部円筒82の内部壁面の接線方向に流入することで、ダストに遠心力が働いて、ダストは上部円筒82の内部壁面に押し付けられるように、排気11aとともに螺旋軌道描きながら上部円筒82を上方から下方へと進行し、下部円筒83の内部壁面の上端部に到達する。
【0041】
次に、排気11aおよびダストは、下部円筒83の内部壁面において螺旋軌道を描きながら上方から下方へと進行する。このとき、下部円筒83の内部壁面は、頂点を下方に向けた三角錐状に形成されているため、下方に行くとともに半径が小さくなり、よって、ダストは上方から下方へと進行するにつれて、より大きな遠心力で下部円筒83の内部壁面に押し付けられる。この構成によって、確実に排気11a中からダストを分離することが可能となる。その後、下部円筒83の下端開口部に達したダストは、ダストボックス84に落下して捕集される。
【0042】
一方、上記のように、排気11aが上部円筒82および下部円筒83の内部壁面に沿って、螺旋軌道を描くように回転するので、上部円筒82および下部円筒83の中心部に負圧が発生する。よって、下部円筒83の下方端部に進行した排気11aは、負圧となった上部円筒82および下部円筒83の内側中心部を進行し、下部円筒83の下端部から上部円筒82の上方に向けて進行するとともに、排気筒90に流入して、排気筒90の下端部から上端部へと進行し、排気筒90の上端部の排気開口部91から大気中に排出される。このとき、第3ブロワー95を稼動させることで、第3ブロワー95で発生した空気流は、
送風管95aによって空気漕95b内部の中空部に導かれ、さらに、空気漕95b内部の中空部から空気流入口96に流入する。このとき、空気流は、排気筒90の外部側面方向から、排気筒90の内側中心方向に向けて送り込まれた後、排気11aとともに排気開口部91から排出される。なお、焼却処理後に焼却炉11内に残った焼却灰は、焼却炉用蓋20を開けて取り出す。
【0043】
本発明による効果についてまとめると、第1に、焼却炉11が回転することで破砕突起14の突起円柱14aが処理対象物を細かく破砕するとともに、攪拌突起15が内壁面11bの底部に堆積した処理対象物を、内壁面11bの上方に掻きあげて攪拌して、処理対象物を燃焼させやすくなるので、処理対象物全体を短時間で完全燃焼させることが可能となる。第2に、焼却炉用蓋20において、円形に配置された複数の空気噴出孔22bから焼却炉11内部に空気を送り込むように構成することで、焼却炉11の内部全体に処理対象物を燃焼させるための空気を行きわたらせることができて、処理対象物を燃焼させやすくなるので、処理対象物全体を短時間で完全燃焼させることが可能となる。
【0044】
第3に、スラスト支持板17が、2つのスラスト用ローラ56に挟持されているので、焼却炉11が回転時に左右方向へ移動することを規制可能となり、よって、駆動チェーン52が第1スプロケット16から外れることなく、架台41上で焼却炉11を安定して連続回転することができ、焼却処理装置1の作業効率を高めることができる。第4に、第3ブロワー95で発生させた空気流を、空気流入口96を通過させて排気筒90の外部側面方向から内側中心方向に向けて送り込むことによって、排気筒90の下端部から上端部へと進行する排気11aを、排気開口部91から排出させやすくなり、焼却処理装置1の焼却効率を向上させることができる。
【0045】
第5に、焼却炉11内部で発生した未燃ガスを大気中に放出せず、第1ブロワー35で発生させた空気と混合して、再度焼却炉11内に送り込んで、燃焼させる構成とすることで、大気中に未燃ガスが放出されることがなく、周辺環境への影響を小さく抑えることが可能となる。
【0046】
上述の実施例において、空気噴出部26に複数の空気噴出孔22bが、焼却炉11の内方に向けて開口しているが、本実施例に示す個数に限定されず、空気噴出孔22bの大きさ等に支障がなければ、個数を変更しても良い。
【0047】
上述の実施例において、破砕突起14および攪拌突起15は、図4に示す配置および個数に限られるものではなく、破砕突起14および攪拌突起15の大きさ等に支障がなければ、他の配置および個数でも構わない。
【0048】
上述の実施例において、円柱状の突起円柱14aで処理対象物を破砕する構成となっているが、突起円柱14aは円柱状の形状に限定されるものではなく、処理対象物を破砕可能であれば、他の形状で構成しても良い。
【0049】
上述の実施例において、図3に示すように、攪拌突起15は略コの字状に形成されているが、攪拌領域15cを有して処理対象物を攪拌可能であれば、他の形状で構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る焼却処理装置を示す側面図である。
【図2】図1中のA部の拡大図である。
【図3】焼却炉の内部を示した斜視図である。
【図4】焼却炉とモータを示した右側面図である。
【図5】(a)は、回転保持部と焼却炉用蓋を示した右側面図で、(b)は焼却炉用蓋を示した上平面図である。
【図6】図5中のVI−VIで示した焼却炉用蓋の断面図である。
【図7】焼却炉側から焼却炉用蓋を示した左側面図である。
【図8】集塵部を模式的に示した斜視図である。
【図9】図1中のC部の拡大図である。
【符号の説明】
【0051】
1 焼却処理装置 11 焼却炉
11d 未燃ガス 12 左開口部(開口部)
13 右開口部(開口部) 14 破砕突起
15 攪拌突起 20 焼却炉用蓋(カバー部材)
22b 空気噴出孔(送風孔) 30 第1バーナー(燃焼手段)
35 第1ブロワー(送風手段) 40 回転支持部(回転支持手段)
42 上枠(枠部材) 50 モータ(回転手段)
60 2次燃焼部 61 燃焼筒(燃焼筒部)
62 破砕網 63 点検口
70 第2バーナー(加熱手段) 75 第2ブロワー(燃焼補助手段)
80 集塵部 82 上部円筒(分離部)
83 下部円筒(分離部) 90 排気筒
95 第3ブロワー(排気補助手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面中央部にそれぞれ開口部を有する円筒形の焼却炉と、
前記焼却炉の円筒中心軸を水平方向に向けて前記焼却炉を回転自在に支持する回転支持手段と、
前記回転支持手段により支持された前記焼却炉を前記円筒中心軸を中心に回転させる回転手段と、
前記焼却炉の一方側端面を覆うカバー部材と、
前記カバー部材に設置されて前記焼却炉の内部に向けて火炎を放出する燃焼手段と、
前記焼却炉の内部に外部空気を送り込む送風手段と、
前記焼却炉の他方側端面の開口部と連通する排気部とからなる焼却処理装置において、
前記カバー部材は、前記送風手段からの空気を送り込む前記焼却炉の内方側に向かって開口した複数の送風孔を有し、
前記焼却炉は、その内部壁面から内方に向けて立設した突起部を有して構成された焼却処理装置。
【請求項2】
前記焼却炉は、その外周部を枠部材で覆われており、
前記送風手段は、前記枠部材に設置されて前記焼却炉と前記カバー部材との隙間および前記焼却炉と前記排気部との隙間から前記枠部材内部に漏出した未燃ガスを、外部空気とともに前記焼却炉の内部に送り込むように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の焼却処理装置。
【請求項3】
前記突起部は、軸方向に並んで配列されて前記焼却炉内部壁面から前記円筒中心軸に向けて立設した複数の棒状突起からなるレーキ状の破砕突起と、前記焼却炉内部壁面から径方向内方に延びて立設した板状の攪拌突起とを有して構成された請求項1または2に記載の焼却処理装置。
【請求項4】
前記排気部が、
下端側において前記焼却炉の他方側端面の開口部と連通して上方に延びる円筒形状の燃焼筒部と、前記燃焼筒部に設置されて前記燃焼筒部の内部に向けて火炎を放出する加熱手段と、前記加熱手段の上方において前記燃焼筒部の内部に外部空気を送り込む燃焼補助手段とを有した2次燃焼部を備える請求項1から3に記載の焼却処理装置。
【請求項5】
前記燃焼筒部が、前記焼却炉の前記他方側端面の前記開口部との連通部分近傍内部において、排気に含まれるダストを排気圧によって破砕する破砕網を有していることを特徴とする請求項4に記載の焼却処理装置。
【請求項6】
前記燃焼筒部が、その側壁部で開口して設けられた点検口を有していることを特徴とする請求項4または5に記載の焼却処理装置。
【請求項7】
前記排気部がさらに、
上端側部が前記2次燃焼部の上端開口部と連通し側面視において上下に延びる略逆三角形に形成され中空円錐状の分離部と、前記分離部の上方に繋がって設置された円筒状の排気筒と、前記排気筒の外周側から前記排気筒の内部上方に向けて送風する排気補助手段とを有した集塵部を備える請求項4に記載の焼却処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−267745(P2008−267745A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114190(P2007−114190)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(592219536)和光機械工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】