説明

焼却装置

【課題】省電力の焼却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 一次バーナ10を備えた一次燃焼室3と、二次バーナ20を備えた二次燃焼室4と、排ガスを誘引する誘引手段6とからなり、前記一次バーナ10および前記二次バーナ20は、それぞれ燃料用のノズル36と、燃焼用空気を導入する空気ダクト40と、この空気ダクト40に設けた導入空気の量を調節するダンパ41とにより構成され、前記誘引手段6の吸引により、前記空気ダクト40から前記ダンパ41を介して燃焼用空気が供給される構成としたことを特徴とする焼却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業廃棄物等の被焼却物の焼却処理を行う焼却装置に関する。特に、比較的小型の焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や家庭ゴミ等の廃棄物(以下、「被焼却物」と云う。)の処理には、焼却処理が多用されている。これらの被焼却物の焼却処理に際し、従来の焼却装置は、特に比較的小型の焼却装置においては、前記被焼却物を燃焼室内で燃やしており、煙突から煤や煙が放出されている。また、前記被焼却物に含まれる水分が多いときは、燃え残りが発生し、この燃え残りを焼却するため、焼却処理時間が長くなった。そこで、前記燃え残りや煤と煙をなくすため、前記被焼却物のみによる燃焼ではなく、補助燃料を用いて、前記被焼却物の焼却を促進することがある(特許文献1)。この場合、補助燃料を燃焼させるバーナが必要であり、このバーナで消費する補助燃料が多かった。また、前記バーナには、送風機が装着されており、その消費する電力量が多かった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−263646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、省電力の焼却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、一次バーナを備えた一次燃焼室と、二次バーナを備えた二次燃焼室と、排ガスを誘引する誘引手段とからなり、前記一次バーナおよび前記二次バーナは、それぞれ燃料用のノズルと、燃焼用空気を導入する空気ダクトと、この空気ダクトに設けた導入空気の量を調節するダンパとにより構成され、前記誘引手段の吸引により、前記空気ダクトから前記ダンパを介して燃焼用空気が供給される構成としたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、前記一次バーナおよび二次バーナは、送風手段を装備していないので、省電力化を実現することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記二次バーナが、2つのバーナにより構成され、前記バーナの1つまたは2つを燃焼させて、燃焼量を調節することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、安定して燃焼できる前記二次バーナを2つ設けることにより、補助燃料の燃焼量を調節することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、この発明によれば、省電力の焼却装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、産業廃棄物等の被焼却物の焼却処理を行う焼却装置において好適に実施できる。まず、第一の実施の形態について説明する。この第一の実施の形態における前記焼却装置は、基本的には、前記被焼却物を乾留ガス化方式および二次燃焼方式により焼却処理する装置である。具体的に説明する
と、この焼却装置は、前記被焼却物を連続焼却するのではなく、つぎの手順でバッチ処理により焼却する。まず、前記被焼却物に着火し焼却を開始する。この焼却に際し、燃焼用空気の供給量を制限して供給することにより、前記被焼却物から乾留ガスを発生させながら焼却する。そして、この乾留ガスを二次燃焼させる。さらに、乾留ガスが発生しなくなった前記被焼却物の焼却を行う。
【0011】
まず、前記焼却装置の構成について説明する。前記焼却装置は、一次バーナを備えた一次燃焼室と、二次バーナを備えた二次燃焼室と、冷却用空気の導入量を調節する冷却用空気導入量調節手段を備えた冷却手段と、この冷却手段の下流側に設けた排ガスを誘引する誘引手段と、前記焼却装置を制御する制御器とにより構成されている。
【0012】
前記一次燃焼室は、前記被焼却物を収容して補助燃料を燃焼させることにより、前記被焼却物から乾留ガスを発生させ、この乾留ガスを貯留するものである。前記二次燃焼室は、前記一次燃焼室において前記被焼却物の焼却中に発生したダイオキシン類を熱分解するとともに、前記一次燃焼室で発生した乾留ガスを燃焼させるものである。前記冷却手段は、前記ダイオキシン類が前記二次燃焼室内で熱分解した後、煙道内で再合成するのを防止するものである。前記誘引手段は、前記両燃焼室内へ燃焼用空気を供給するとともに、前記冷却手段内へ冷却用空気を導入するものである。
【0013】
つぎに、これらの構成要素について詳細に説明する。前記一次燃焼室は、前記被焼却物を収容するように、たとえば角型形状に構成されており、さらに前記被焼却物を投入する第一入口と、この第一入口を密閉する扉と、補助燃料を燃焼させる一次バーナと、この一次バーナの燃焼排ガスとともに乾留ガスを排出する第一出口とを備えている。そして、前記一次燃焼室は、前記一次バーナで補助燃料を燃焼させる空間と、前記被焼却物から発生させた乾留ガスを貯留する空間を備えている。すなわち、前記一次燃焼室は、前記被焼却物を収容する容積および前記両空間からなる所定の容積を有する構成としている。そして、前記第一出口は、連通部を介して前記二次燃焼室と接続されている。ここにおいて、前記一次燃焼室の上部に前記二次燃焼室を配置するのが好ましいが、前記一次燃焼室の横に前記二次燃焼室を配置することも好適である。
【0014】
前記一次バーナは、補助燃料を噴霧する第一ノズルと、燃焼用空気を導入する第一空気ダクトと、この第一空気ダクトに設けた導入空気の量を調節する第一ダンパとにより構成されている。前記一次バーナは、送風手段を備えておらず、前記誘引手段の吸引により、前記第一空気ダクトから前記第一ダンパを介して燃焼用空気が供給される構成としている。
【0015】
前記二次燃焼室は、たとえば角型形状で所定の容積を有して構成されており、前記第一出口と前記連通部を介して連通する第二入口と、補助燃料を燃焼させる二次バーナと、燃焼排ガスを排出する第二出口とを備えている。そして、この第二出口は、燃焼排ガスを排出する第一ダクトを介して前記冷却手段と接続されている。
【0016】
前記二次バーナは、前記一次バーナと同様な構成としており、補助燃料を噴霧する第二ノズルと、燃焼用空気を導入する第二空気ダクトと、この第二空気ダクトに設けた導入空気の量を調節する第二ダンパとにより構成されている。前記二次バーナは、前記一次バーナと同様、送風手段を備えておらず、前記誘引手段の吸引により、前記第二空気ダクトから前記第二ダンパを介して燃焼用空気が供給される構成としている。
【0017】
前記冷却手段は、前記第一ダクトと連通する第三入口と、冷却用空気を導入する冷却用空気ダクトと、この冷却用空気ダクト内に設けた冷却用空気の導入量を調節する冷却用空気導入量調節手段と、この冷却用空気導入量調節手段の下流側に設けた冷却用空気と燃焼
排ガスを混合する混合部と、この混合により冷却用の空気と混合された燃焼排ガス(以下、「冷排ガス」と云う。)を排出する第三出口とを備えている。この第三出口は、前記冷排ガスを排出する第二ダクトを介して前記誘引手段と接続されている。ここにおいて、前記冷却用空気ダクトおよび前記冷却用空気導入量調節手段は、前記第三入口の上流側において、前記第一ダクトに接続することも好適である。
【0018】
前記誘引手段は、前記第二ダクトと連通する前記冷排ガスの吸引口である第四入口と、誘引駆動源,たとえば誘引ファンと、この誘引ファンを回転させるモータと、前記冷排ガスを排出する第四出口とを備えている。ここにおいて、前記誘引手段の変形例としては、エジェクタ方式による前記冷排ガスの吸引も好適である。
【0019】
このような構成の前記第一の実施の形態における前記焼却装置の作用について説明する。まず、前記焼却装置の運転開始に際し、前記被焼却物を前記一次燃焼室内へ収容する。つぎに、前記制御器は、あらかじめ決められたプログラムにより、前記誘引手段を作動させる。これ以降、前記焼却装置の運転中は、基本的に前記誘引手段を連続して作動させる。
【0020】
ここで、前記誘引手段の作用について、誘引ファンを例として説明する。この誘引ファンを作動させることにより、前記両燃焼室内を大気圧以下の状態(以下、「負圧」と云う。)とする。これにより、前記両燃焼室内で必要となる燃焼用空気が、前記両燃焼室内を負圧とすることにより供給される。この場合、前記制御器は、前記誘引ファンの回転数を調節することにより、前記負圧の度合いを調節する。そして、この負圧の度合いは、前記両バーナが必要とする燃焼用空気を供給できるように調節する。よって、前記両バーナは、送風手段を装備する必要がない。
【0021】
また、前記制御器は、前記誘引ファンを作動させることにより、前記両燃焼室内を負圧とするとともに、前記冷却手段内も負圧とする。これにより、前記両燃焼室の燃焼用空気が、前記両燃焼室内を負圧とすることにより供給されるとともに、前記冷却手段の冷却用空気が、前記冷却用空気導入量調節手段を介して導入される。この場合、前記制御器は、前記誘引ファンの回転数および前記冷却用空気導入量調節手段の開度をそれぞれ調節して、前記負圧の度合いを調節する。
【0022】
すなわち、前記両バーナの燃焼用空気が、前記誘引ファンおよび前記冷却用空気導入量調節手段の作動に基づいて、前記両燃焼室内を負圧とすることにより供給される。それと同時に、前記冷却手段の冷却用空気が、前記誘引手段および前記冷却用空気導入量調節手段の作動に基づいて、前記冷却用手段内を負圧とすることにより供給される。この場合、前記冷却用空気導入量調節手段の調節は、前記両バーナの燃焼用空気の供給と、燃焼排ガスを冷却するのに十分な冷却用空気の導入ができるように調節する。
【0023】
つぎに、この焼却装置の基本的焼却作業を説明する。この基本的焼却作業は、バッチ処理であり、このバッチ処理は、準備工程,予熱工程,乾留工程,置火工程およびパージ工程とからなる。そして、前記誘引ファンおよび前記冷却手段は、前記基本的焼却作業中の前記各工程全部において、基本的に連続して作動する。
【0024】
前記準備工程は、前記誘引ファンを作動させ、この誘引ファンの作動により、前記両燃焼室内を所定の負圧の状態とするとともに、前記冷却手段の作動を開始する工程である。そして、前記両燃焼室内および前記冷却手段内が所定の負圧となると、前記予熱工程を開始する。
【0025】
前記予熱工程は、前記二次バーナを作動させ,すなわち補助燃料を燃焼させることによ
り、前記二次燃焼室内の温度を820℃以上とする工程である。すなわち、前記ダイオキシン類および乾留ガスを前記二次燃焼室内へ導入する前に、この二次燃焼室内の温度を前記ダイオキシン類を分解することができる温度以上に予熱する。
【0026】
つぎに、前記二次燃焼室内の温度が820℃以上となると、前記予熱工程を終了して前記乾留工程へ移行する。ここにおける乾留とは、前記一次燃焼室内で前記被焼却物を燃焼用空気の供給量を制限して燃焼させることにより、この被焼却物から燃焼成分,すなわち乾留ガスを発生させるものである。すなわち、前記被焼却物を蒸し焼き状態で焼却することである。具体的に説明すると、前記一次バーナにより補助燃料を燃焼させて前記被焼却物に着火し、着火が開始すると、前記一次バーナの作動を停止する。つぎに、前記一次燃焼室内への燃焼用空気量を制限して供給することにより、前記被焼却物を蒸し焼き状態とする。これ以降、前記一次バーナは、乾留ガスの発生を促す必要があるとき作動を再開する。そして、前記乾留工程は、前記一次燃焼室内で乾留ガスを発生させながら、この発生した乾留ガスを前記二次燃焼室内で燃焼させ、さらにこの燃焼排ガスを前記冷却手段で冷却する工程である。
【0027】
前記乾留工程の作用について詳細に説明する。この乾留工程は、前記被焼却物を前記ダイオキシン類の発生が少ない乾留ガス化方式にて焼却処理するとともに、前記一次燃焼室内で発生した前記ダイオキシン類を前記二次燃焼室内で熱分解する。同時に、前記二次燃焼室内の燃焼において発生する前記ダイオキシン類もこの二次燃焼室内を820℃以上とすることにより、この二次燃焼室内で熱分解される。そして、前記二次燃焼室で燃焼および熱分解処理された820℃以上の燃焼排ガスは、ともに前記冷却手段へ導入され、冷却用空気と混合されることにより、急激に冷却される(たとえば、温度が200℃以下となるように冷却される。)。これにより、320℃付近の温度帯で生じやすい前記ダイオキシン類の再合成を防止する。そして、前記誘引ファンから確実に処理された排ガスとして排出する。
【0028】
ここにおいて、前記乾留工程は、前記二次燃焼室内の温度に応じて、複数の段階に分割して行うことも好適である。たとえば、初期段階は、乾留ガスの発生が少ないので、前記二次燃焼室内の温度が低い。この初期段階のときは、前記二次バーナによる補助燃料の燃焼を多くする。また、後期段階は、乾留ガスの発生が多いので、前記二次燃焼室内の温度が高い。したがって、この後期段階のときは、前記二次バーナによる補助燃料の燃焼を少なくする。
【0029】
つぎに、所定の前記乾留工程時間が経過した後、前記置火工程へ移行する。この置火工程は、乾留ガスが発生した残りの前記被焼却物,すなわち炭化した状態の前記被焼却物を置火の状態,いわゆる「おき」の状態で燃焼させる工程である。この置火工程において、前記一次バーナは、前記一次燃焼室内で「おき」の状態の前記被焼却物の焼却を促す必要があるとき補助燃料の燃焼を再開する。そして、前記二次バーナは、前記二次燃焼室内の温度を820℃から980℃に維持するように補助燃料を燃焼させる。
【0030】
そして、前記置火工程においても、前記乾留工程のときと同様、前記二次燃焼室からの820℃以上の燃焼排ガスは、前記冷却手段へ導入される。すなわち、冷却用空気と混合され、急激に冷却される。これにより、この置火工程においても、前記乾留工程のときと同様、前記ダイオキシン類の再合成を防止する。
【0031】
そして、前記置火工程が所定時間経過すると、前記一次バーナを停止して前記一次燃焼室内の温度が所定の温度,たとえば320℃以下になると、前記二次バーナも停止し、前記置火工程を終了し、前記パージ工程へ移行する。
【0032】
ここにおいて、前記置火工程における変形例として、所定時間にわたる前記置火工程が経過した時点で前記一次バーナを停止し、しばらく放置した後,すなわち前記置火工程の後半で、前記一次燃焼室内の温度が所定の温度,たとえば420℃以下となると、前記被焼却物を攪拌することも好適である。すなわち、前記置火工程中において、攪拌工程を割り込ませることも好適である。この攪拌を行うことにより、前記炭化した被焼却物の表面積をより一層空気と接触するように増加させ,いわゆる固まりをバラして燃焼し易くする。この攪拌工程を行うときは、灰の飛散を防止するため、前記両バーナおよび前記誘引ファンの作動を停止して攪拌を行う。
【0033】
そして、前記攪拌工程の後、直ちに前記置火工程を再開する。この再開した置火工程においては、前記二次バーナのみ作動を再開し(前記一次バーナの作動は停止する。)、前記被焼却物が燃え尽きるまでの間、徐々に前記一次燃焼室内の温度を低下させる。そして、前記攪拌工程の後に再開した置火工程の後、前記一次燃焼室内の温度が所定の温度,たとえば320℃以下になると、前記二次バーナも停止し、前記パージ工程へ移行する。
【0034】
前記パージ工程は、前記両燃焼室および前記冷却手段を冷却する工程である。このパージ工程においては、前記両バーナをともに停止させ、前記誘引ファンのみ作動させて空気を導入することにより、前記両燃焼室および前記冷却手段を冷却する。そして、前記一次燃焼室内の温度が280℃以下となるか,あるいは所定時間にわたる前記パージ工程が終了すると、前記一次燃焼室内に残った未燃物を取り出し、焼却処理を終了する。
【0035】
以上のように、この第一の実施の形態によれば、前記両バーナは、送風手段を装備していないので省電力であるとともに、前記被焼却物を乾留ガス化して焼却するので、従来の補助燃料を燃焼させるときの補助燃料の消費量と比較して、前記両バーナで消費する補助燃料も少なくなり、さらに短時間に焼却できるとともに、前記冷却手段により燃焼排ガスを冷却するので、前記ダイオキシン類の再合成を防止することができる。
【0036】
つぎに、前記第一の実施の形態における前記冷却用空気導入量調節手段について説明する。前記冷却用空気導入量調節手段は、前記冷却用空気ダクト内に設けられた1枚の板状の,いわゆるダンパである。すなわち、前記冷却用空気ダクトの横方向から貫通したダンパ軸の長手方向に沿うように、1枚の板部材を前記ダンパ軸に固定して前記ダンパ軸の回転角度を調節し、前記板部材を回動させることにより、前記冷却用空気ダクト内を流通する空気の導入量を調節する。
【0037】
ここで、前記冷却用空気導入量調節手段の変形例について説明する。この変形例における前記板部材は、冷却用空気の流入には抵抗となり、排ガスの排出には非抵抗となるように構成されている。すなわち、この変形例は、前記焼却装置内における乾留ガスおよび燃焼排ガスが流通する部位において、異常燃焼が発生したとき、この異常燃焼に伴なう背圧の逃がし機能を有する構成としている。具体的に説明すると、前記焼却装置内における乾留ガスおよび燃焼排ガスが流通する部位において、異常燃焼が発生したとき、前記異常燃焼に伴なう背圧により、前記板部材が回動する。したがって、前記背圧は、前記逃がし機能が働き、前記板部材が抵抗となることなく、前記前記冷却手段内から前記冷却用空気ダクト内を逆方向へ,すなわち前記調節ダンパの方向へ伝わり、前記空気取入れ口から大気中へ放出される。
【0038】
つぎに、前記二次バーナの変形例について説明する。前記乾留工程および前記置火工程において、前記二次燃焼室内の温度を多段階,たとえば2段階にするとき、前記二次バーナを2つで構成し、前記二次燃焼室内での補助燃料の燃焼量を調節させるものである。
【0039】
ここで、1つの二次バーナで補助燃料の燃焼量を調節するのではなく、2つの二次バー
ナとする理由について説明する。前記二次バーナは、送風手段を持たないバーナ形式であるので、前記誘引ファンによる吸引で生じる燃焼用空気の導入量(前記二次燃焼室内と前記第二ダンパとの圧力損失分に相当する導入量)で補助燃料を燃焼させる。この場合、前記圧力損失が小さいので,すなわち負圧の度合いが少ないので、1つの二次バーナで燃焼用空気量と燃料量とを切り替えるバーナ形式では燃焼が安定しない。そこで、この実施の形態では、前記圧力損失が小さくても燃焼用空気量と燃料量とが一定であり、安定して燃焼できる前記二次バーナを2つ設けることにより、補助燃料の燃焼量を調節する。これにより、焼却処理を短時間で行うとともに、省エネルギーとなる。
【0040】
つぎに、前記連通部の変形例について説明する。この連通部は、前記一次燃焼室で発生した乾留ガスを前記二次燃焼室へ導入するためのものであるが、前記連通部に前記二次燃焼室内で必要となる二次燃焼室用空気を導入する二次燃焼室用空気導入手段を設ける。この二次燃焼室用空気導入手段は、二次燃焼室用空気を導入する第三空気ダクトと、この第三空気ダクトに設けた導入空気の量を調節する第三ダンパとにより構成されている。そして、この変形例においては、前記乾留工程のとき、前記第三ダンパを開き、乾留ガスを燃焼させるのに必要な空気を前記二次燃焼室用空気導入手段から導入すると、焼却処理を早く行うことができる。さらに、この変形例においては、前記パージ工程のときも、前記第三ダンパを開き、冷却に必要な空気を前記二次燃焼室用空気導入手段から導入すると、前記二次燃焼室の冷却を早くすることができる。
【0041】
つぎに、前記一次燃焼室の炉床に一次燃焼室用空気を導入する一次燃焼室用空気導入手段を設ける変形例とすることも好適である。この一次燃焼室用空気導入手段は、一次燃焼室用空気を導入する第四空気ダクトと、この第四空気ダクトに設けた導入空気の量を調節する第四ダンパと、前記炉床に満遍なく一次燃焼室用空気を噴出する噴出手段とにより構成されている。そして、この変形例においては、前記乾留工程および前記置火工程のとき、前記一次燃焼室内の燃焼用空気の導入を調節する。ここにおいて、前記一次燃焼室用空気導入手段を複数設け、よりきめ細かく制御することも好適である。これにより、この変形例における前記乾留工程での乾留ガス化と前記置火工程での焼却をともに促進し、焼却処理を早く行うことができる。さらに、この変形例における前記パージ工程においても、前記第四ダンパを開き、冷却に必要な空気を前記一次燃焼室用空気導入手段から導入すると、前記一次燃焼室の冷却を早くすることができる。
【0042】
さらに、第二の実施の形態について説明する。この第二の実施の形態は、前記第一の実施の形態および前記各変形例のさらなる変形例である。すなわち、より確実に前記ダイオキシン類の排出を抑制するように構成したものである。具体的に説明すると、前記焼却装置の最終処理として、前記誘引ファンの下流側にダイオキシン類等を除去する有害物質除去手段を設ける。この有害物質除去手段は、たとえば前記ダイオキシン類を吸着する機能を有する吸着部材を備えている。前記誘引ファンが排出する前記冷排ガスを前記有害物質除去手段内へ押し込み、その内部に充填された前記吸着部材と接触させるものである。これにより、より一層前記ダイオキシン類の排出を抑制することができる。
【0043】
以上のように、この発明によれば、省エネルギーで焼却処理時間が短く、有害物質を排出しない焼却装置を提供することができる。
【実施例】
【0044】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明に係る焼却装置の概略構成を示す説明図である。図1において、乾留ガス化方式および二次燃焼方式により焼却処理する焼却装置1は、被焼却物2を収容する一次燃焼室3と、この一次燃焼室3内に収容した前記被焼却物2から発生させた乾留ガスを燃焼させるための二次燃焼室4と、この二次燃焼室4から排出する燃焼排ガスを冷却する冷却手段5と、この
冷却手段5の下流側に設けた燃焼排ガスを誘引する誘引手段6と、この誘引手段6の下流側に設けたダイオキシン類等を除去する有害物質除去手段7と、前記焼却装置1を制御する制御器(図示省略)とにより構成されている。
【0045】
前記一次燃焼室3は、前記被焼却物2を収容するように、たとえば角型形状の第一本体部8内に形成されている。この第一本体部8は、この第一本体部8の左側壁(図1の左側の壁)に設けられた前記被焼却物2を投入する第一入口9と、この第一入口9を密閉する扉(図示省略)と、前記第一本体部8の右側壁(図1の右側の壁)に配置された補助燃料を燃焼させる一次バーナ10と、前記第一本体部8の床面11(以下、「炉床11」と云う。)に接続された一次燃焼室用空気導入手段12と、前記一次バーナ10の燃焼排ガスと前記一次燃焼室3内で発生させた乾留ガスとを前記二次燃焼室4へ排出する第一出口13とを備えている。この実施例においては、前記一次燃焼室用空気導入手段12は、第一一次燃焼室用空気導入手段14と第二一次燃焼室用空気導入手段15とにより構成されている。
【0046】
前記第一本体部8は、所定容積の空間部を有するものとして構成されており、この空間部において、前記一次バーナ10で補助燃料を燃焼させるとともに、前記被焼却物2から発生する乾留ガスを貯留する。すなわち、前記一次燃焼室3は、前記被焼却物2を収容する容積および前記空間部からなる所定の容積を有する構成としている。
【0047】
そして、前記第一出口13は、燃焼排ガスおよび乾留ガスを排出するための連通部16を介して前記二次燃焼室4と連通している。前記連通部16には、前記二次燃焼室4内で乾留ガスを燃焼させるとき必要となる二次燃焼室用空気を導入する二次燃焼室用空気導入手段17を設けている。
【0048】
前記二次燃焼室4は、前記一次燃焼室3で発生した乾留ガスを燃焼させるように、たとえば角型形状で所定の容積を有する第二本体部18内に形成されている。前記第二本体部18は、前記連通部16と連通する乾留ガス入口である第二入口19と、補助燃料を燃焼させる二次バーナ20と、前記二次燃焼室4からの燃焼排ガスを排出する第二出口21とを備えている。この実施例においては、前記二次バーナ20は、第一二次バーナ22と第二二次バーナ23とにより構成されている。そして、前記第二出口21は、燃焼排ガスを導く第一ダクト24を介して前記冷却手段5と接続されている。
【0049】
前記冷却手段5は、縦型で筒状に形成されたケーシング25と、このケーシング25の左側面上部(図1の左側の上部)で前記第一ダクト24と連通する燃焼排ガスの入口である第三入口26と、前記ケーシング25の上方(図1の上部側)に配置された冷却用空気を導入する冷却用空気ダクト27と、この冷却用空気ダクト27内に設けた冷却用空気の導入量を調節する冷却用空気導入量調節手段である調節ダンパ28と、この調節ダンパ28の下流側に設けた冷却用空気と燃焼排ガスを混合する混合部29と、この混合により冷却用の空気と混合された燃焼排ガス(以下、「冷排ガス」と云う。)を排出する第三出口30とを備えている。この第三出口30は、前記ケーシング25の底部(図1の下部側)に設けられており、前記冷排ガスを排出する第二ダクト31を介して前記誘引手段6と接続されている。
【0050】
前記誘引手段6は、前記第二ダクト31と連通する前記冷排ガスの吸引口である第四入口32と、誘引駆動源,たとえば誘引ファン33と、この誘引ファン33を回転させるモータ(図示省略)と、前記冷排ガスを排出する第四出口34とを備えている。
【0051】
前記有害物質除去手段7は、前記ダイオキシン類を吸着する機能を有する吸着部材(図示省略)を備えている。すなわち、より確実に前記ダイオキシン類の排出を抑制するもの
である。具体的に説明すると、前記有害物質除去手段7は、前記焼却装置1の最終処理として、前記誘引ファン33の下流側において、前記第四出口34と接続されている。前記有害物質除去手段7は、前記誘引ファン33が排出する前記冷排ガスを前記吸着部材と接触させるものである。そして、処理後の前記冷排ガスを第五出口35から大気中へ排出する。
【0052】
前記制御器(図示省略)は、前記一次バーナ10,前記一次燃焼室用空気導入手段12,前記二次燃焼室用空気導入手段17,前記二次バーナ20,前記調節ダンパ28および前記モータとそれぞれ回線(図示省略)を介して接続されている。前記制御器には、前記焼却装置1の運転を行うプログラムが組み込まれている。
【0053】
ここにおいて、前記一次バーナ10,前記一次燃焼室用空気導入手段12,前記二次燃焼室用空気導入手段17,前記二次バーナ20,前記調節ダンパ28および前記誘引ファン33は、前記焼却装置1の規模に応じて、適宜複数設けることも好適である。
【0054】
ここで、前記両バーナ10,20の構成について詳細に説明する。まず、前記一次バーナ10について、図2に基づいて詳細に説明する。図2は、前記一次バーナ10の断面説明図である。前記一次バーナ10は、前記一次燃焼室3内において、補助燃料を燃焼させることにより、前記被焼却物2に着火するとともに、この被焼却物2を加熱して乾留ガスを発生させる。
【0055】
図2において、前記一次バーナ10は、補助燃料を噴霧するノズル36と、着火ガイシ37と、保炎手段であるバッフル板38と、円筒状のエアレジスタ39と、このエアレジスタ39より大きく形成された円筒状の燃焼用空気を導入する第一空気ダクト40と、この第一空気ダクト40内で前記エアレジスタ39と反対側に設けた導入空気の量を調節する第一ダンパ41とにより構成されている。前記ノズル36,前記着火ガイシ37および前記バッフル板38は、前記エアレジスタ39内に配置されている。前記エアレジスタ39は、前記第一空気ダクト40内で同心となるように配置されている。前記エアレジスタ39の先端部(図2の右側の端部)は、前記一次燃焼室3内へ臨むように取り付けられる。前記第一ダンパ41より上流側の前記第一空気ダクト40は、大気中へ開口しており、第一開口部42としている。そして、前記ノズル36には、補助燃料を供給する燃料配管43が接続されている。
【0056】
また、前記第一ダンパ41は、前記第一空気ダクト40を横方向から貫通した第一ダンパ軸44に固定されており、前記第一ダンパ軸44を中心として回動する。前記第一ダンパ軸44を回動させる回動手段は、図示を省略している。前記第一空気ダクト40の第一内壁面45には、前記第一ダンパ41の外縁と当接する一対の半リング状の第一係止部材46,46が設けられている。前記両第一係止部材46は、前記第一ダンパ41の板厚分だけずらして、前記第一内壁面45にそれぞれ設けられている。
【0057】
前記第一ダンパ41の作動について説明する。まず、前記第一開口部42を閉鎖するとき、前記第一ダンパ41は、図2において、反時計方向へ回動する。すると、図2の上半分の前記第一ダンパ41の外縁は、図2の上側の前記第一係止部材46と当接し、また図2の下半分の前記第一ダンパ41の外縁は、図2の下側の前記第一係止部材46と当接する。これにより、前記第一ダンパ41の両面の外縁は、それぞれ前記両第一係止部材46と当接し、前記第一開口部42を閉鎖する。
【0058】
一方、前記ノズル36から噴霧される補助燃料を燃焼させる燃焼用空気を供給するとき、前記第一ダンパ41は、図2において、時計方向へ回動して(図2の状態)、前記両第一係止部材46との当接をそれぞれ解除して前記第一開口部42を開く。
【0059】
すなわち、前記一次バーナ10は、送風手段を備えておらず、前記誘引ファン33の吸引により、前記第一開口部42から前記第一ダンパ41を介して燃焼用空気を前記エアレジスタ39内へ供給する構成としている。そして、前記一次バーナ10は、前記エアレジスタ39内へ供給された燃焼用空気と前記ノズル36から噴霧された補助燃料とを混合し、前記着火ガイシ37で発生させたスパークにより点火して、前記一次燃焼室3内で補助燃料を燃焼させるように構成している。
【0060】
ここにおいて、前記第一ダンパ41の変形例として、回動する形式ではなく、往復移動して前記第一開口部42の開閉を行う形式とすることも、実施に応じ、好適である。
【0061】
つぎに、前記二次バーナ20について説明する。この実施例においては、前記二次バーナ20を構成する前記第一二次バーナ22および前記第二二次バーナ23は、前記一次バーナ10とそれぞれ同じように構成されており、図2の構成と同じであり、その詳細な説明は省略する。前記両二次バーナ22,23は、前記二次燃焼室4内において、乾留ガスに着火するとともに、前記二次燃焼室4内をほぼ820℃以上に加温する。
【0062】
ここで、1つのバーナで補助燃料の燃焼量を調節するのではなく、2つの二次バーナ22,23とする理由について説明する。前記二次バーナ20は、送風手段を持たないバーナ形式であるので、前記誘引ファン33による吸引で生じる燃焼用空気の導入量(前記二次燃焼室4内と前記第一ダンパ41との圧力損失分に相当する導入量)で補助燃料を燃焼させる。この場合、前記圧力損失が小さいので、1つのバーナで燃焼用空気量と燃料量とを切り替えるバーナ形式においては、燃焼量が小さいときにおける燃焼性が低下する。そこで、この実施例では、前記圧力損失が小さくても燃焼用空気量と燃料量とが一定であり、安定して燃焼できるバーナを2つ設けることにより、補助燃料の燃焼量を調節する。
【0063】
さて、前記焼却装置1において、焼却処理を促進する構成要素について詳細に説明する。まず、前記一次燃焼室用空気導入手段12について、図3に基づいて詳細に説明する。図3は、前記一次燃焼室用空気導入手段12のうちの前記第一一次燃焼室用空気導入手段14の断面説明図である。前記一次燃焼室用空気導入手段14は、前記一次燃焼室3内での前記被焼却物2の焼却を促進する。
【0064】
図3において、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14は、円筒状の燃焼用空気を導入する第二空気ダクト47と、この第二空気ダクト47内で導入空気の量を調節する第二ダンパ48とにより構成されている。そして、前記第二ダンパ48より上流側の前記第二空気ダクト47は、大気中に開口しており第二開口部49としている。すなわち、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14は、前記誘引ファン33の吸引により、前記第二開口部49から前記第二ダンパ48を介して燃焼用空気が供給される構成としている。
【0065】
前記第二ダンパ48は、前記第二空気ダクト47を横方向から貫通した第二ダンパ軸50に固定されており、前記第二ダンパ軸50を中心として回動する。この実施例においては、前記第二ダンパ48は、前記第一ダンパ41と同じように構成されており、その詳細な説明は省略する。
【0066】
前記第二ダンパ48の作動について説明する。まず、前記第二開口部49を閉鎖するとき、前記第二ダンパ48は、図3において、反時計方向へ回動する。すると、図3の上半分の前記第二ダンパ48の外縁は、図3の上側で前記第二空気ダクト47の第二内壁面51に設けられた第二係止部材52と当接し、また図3の下半分の前記第二ダンパ48の外縁は、図3の下側の第二係止部材52と当接する。これにより、前記第二ダンパ48の両面の外縁は、それぞれ前記両第二係止部材52と当接し、前記第二開口部49を閉鎖する

【0067】
一方、前記第二ダンパ48は、前記一次燃焼室3へ燃焼用空気を供給するときは、図3において、時計方向へ回動して(図3の状態)、前記両第二係止部材52との当接をそれぞれ解除して前記第二開口部49を開き、前記第二空気ダクト47に接続された一次空気供給配管53を介して前記一次燃焼室3へ一次燃焼室用空気を供給する。具体的に説明すると、前記一次空気供給配管53は、前記炉床11を貫通して前記一次燃焼室3内と連通し、前記炉床11付近に満遍なく一次燃焼室用空気を噴出する噴出手段(図示省略)と接続されている。したがって、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14は、前記一次空気供給配管53を介して前記炉床11付近に満遍なく一次燃焼室用空気を噴出する。
【0068】
この実施例においては、前記第二一次燃焼室用空気導入手段15は、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14と同じように構成されており、図3の構成と同じであり、その詳細な説明は省略する。そして、前記一次燃焼室用空気導入手段12(前記第一一次燃焼室用空気導入手段14,前記第二一次燃焼室用空気導入手段15)は、前記炉床11付近に満遍なく一次燃焼室用空気を噴出する。
【0069】
つぎに、前記二次燃焼室用空気導入手段17について説明する。この実施例においては、前記二次燃焼室用空気導入手段17は、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14と同じように構成されており、図3の構成と同じであり、その詳細な説明は省略する。前記二次燃焼室用空気導入手段17は、前記二次燃焼室4内における乾留ガスの燃焼を促進させるための空気を前記連通部16を介して前記二次燃焼室4内へ供給する。
【0070】
さて、前記調節ダンパ28について、図4〜図6に基づいて詳細に説明する。前記調節ダンパ28は、冷却用空気の流入には抵抗となり、前記焼却装置1内における乾留ガスおよび燃焼排ガスが流通する部位において、異常燃焼が発生したときの排ガスの排出には非抵抗となるように構成されている。図4は、前記調節ダンパ28の通常の状態を示す断面説明図である。図4において、前記調節ダンパ28は、前記冷却用空気ダクト27内を横方向から貫通する第三ダンパ軸54の長手方向に沿うように取り付けられており、前記第三ダンパ軸54の回転角度を調節することにより、前記冷却用空気ダクト27内を流通する空気の導入量を調節するように構成されている。前記冷却用空気ダクト27の上部(図4において上部)には、空気取入れ口55が大気中へ開口するように設けられている。
【0071】
前記調節ダンパ28の構成を図5に基づいて、詳細に説明する。図5は、前記調節ダンパ28の平面説明図である。図5において、前記調節ダンパ28は、前記第三ダンパ軸54と、この第三ダンパ軸54が貫通する2つの回動部材56,56を備えた一対の板部材57,57と、この両板部材57の回動を制限する第三係止部材58と、前記第三ダンパ軸54を回動させる回動手段(図示省略)とにより構成されている。
【0072】
前記両板部材57は、基本的には、前記第三ダンパ軸54を中心として左右対称に構成されている。前記各板部材57は、前記両回動部材56を備えており、この両回動部材56は、前記各板部材57の前記第三ダンパ軸54側の端部にそれぞれ設けられている。そして、前記各回動部材56(すなわち、4つの前記回動部材56)は、交互にかつ一直線上に配置され、これらを前記第三ダンパ軸54が貫通している。
【0073】
前記第三係止部材58は、冷却用空気の流入に際し、この第三係止部材58と前記両板部材57とが当接し、一体として回動するように作用する。これにより、前記第三係止部材58は、前記板部材57の回動を一方向のみに回動するように制限する。また、前記第三係止部材58は、異常燃焼が発生したときの排ガスの排出に際し、前記両板部材57の回動を制限しない。すなわち、前記第三ダンパ軸54の回りを前記両板部材57が異常燃
焼に伴なう背圧により、前記各回動部材56を介してそれぞれ回動する。
【0074】
前記第三係止部材58は、前記各回動部材56が配置される部位で干渉しないように二ヶ所の切欠き部59,59を備えた板状に構成されており、2つの固定具60,60により前記第三ダンパ軸54に固定されている。前記第三係止部材58は、前記両板部材57,57の平面積より小さく(図5において、ほぼ40%の平面積)なるように形成されている。
【0075】
すなわち、前記調節ダンパ28は、前記焼却装置1内における乾留ガスおよび燃焼排ガスが流通する部位において、異常燃焼が発生したとき、この異常燃焼に伴なう背圧の逃がし機能を有する構成としている。この逃がし機能について、図6に基づいて説明する。図6は、前記調節ダンパ28の逃がし機能が作動した状態を示す断面説明図である。具体的に説明すると、異常燃焼が発生したとき、前記各板部材57がそれぞれ回動する。したがって、前記背圧は、前記冷却手段5内から前記冷却用空気ダクト27内を逆方向へ,すなわち前記調節ダンパ28の方向へ伝わり、前記空気取入れ口55から大気中へ放出される。
【0076】
このような構成の前記焼却装置1の作用について説明する。まず、前記焼却装置1の運転開始に際し、前記被焼却物2を前記一次燃焼室3内へ収容する。つぎに、前記制御器(図示省略)は、あらかじめ決められたプログラムにより、前記誘引ファン33を作動させる。これ以降、前記焼却装置1の運転中は、基本的に前記誘引ファン33を連続して作動させる。
【0077】
前記誘引ファン33を作動させることにより、前記両燃焼室3,4内を大気圧以下の状態(以下、「負圧」と云う。)とするとともに、前記冷却手段5内も負圧とする。これにより、前記両燃焼室3,4の燃焼用空気が、前記両燃焼室3,4内を負圧とすることにより供給されるとともに、前記冷却手段5の冷却用空気が、前記調節ダンパ28を介して導入される。この場合、前記制御器は、前記誘引ファン33の回転数および前記調節ダンパ28の開度をそれぞれ調節して、前記負圧の度合いを調節する。このとき、前記負圧度合いの調節とともに、燃焼排ガスの前記有害物質除去手段7への排出度合いも含めて調節されている。
【0078】
すなわち、前記両バーナ10,20の燃焼用空気が、前記誘引ファン33および前記調節ダンパ28の作動に基づいて、前記両燃焼室3,4内を負圧とすることにより供給される。それと同時に、前記冷却手段5の冷却用空気が、前記誘引ファン33および前記調節ダンパ28の作動に基づいて、前記冷却用手段5内を負圧とすることにより供給される。さらに、前記誘引ファン33により、前記冷排ガスは、前記有害物質除去手段7へ導入される。そして、前記誘引ファン33の回転数および前記調節ダンパ28の調節は、前記両バーナ10,20の燃焼用空気の供給と、燃焼排ガスを冷却するのに十分な冷却用空気の導入および前記有害物質除去手段7への排出ができるように調節される。
【0079】
つぎに、この焼却装置1の基本的焼却作業を説明する。この基本的焼却作業は、バッチ処理であり、このバッチ処理は、準備工程,予熱工程,乾留工程,置火工程およびパージ工程とからなる。そして、前記誘引ファン33および前記冷却手段5は、前記基本的焼却作業中の前記各工程全部において、基本的に連続して作動する。
【0080】
前記準備工程は、前記誘引ファン33を作動させ、この誘引ファン33の作動により、前記両燃焼室3,4内を所定の負圧の状態とするとともに、前記冷却手段5の作動を開始する工程である。そして、前記両燃焼室3,4内および前記冷却手段5内がマイナス0.3KPaの負圧状態となる時間が経過すると、前記予熱工程を開始する。
【0081】
前記予熱工程は、前記二次バーナ20を作動させ,すなわち補助燃料を燃焼させることにより、前記二次燃焼室4内の温度をほぼ820℃以上とする工程である。すなわち、前記ダイオキシン類および乾留ガスを前記二次燃焼室4内へ導入する前に、この二次燃焼室4内の温度を前記ダイオキシン類を分解することができる温度以上に予熱する。
【0082】
つぎに、前記二次燃焼室内の温度が820℃以上となると、前記予熱工程を終了して前記乾留工程へ移行する。この乾留工程では、前記一次燃焼室3内において、前記一次バーナ10により補助燃料を燃焼させて前記被焼却物2に着火し、着火が開始すると、前記一次バーナ10の作動を停止する。つぎに、前記一次燃焼室3内への燃焼用空気の供給量を制限して供給することにより、前記被焼却物2を蒸し焼き状態とし、この被焼却物2から燃焼成分,すなわち乾留ガスを発生させる。これ以降、前記一次バーナ10は、乾留ガスの発生を促す必要があるとき作動を再開する。そして、前記乾留工程は、前記一次燃焼室3内で乾留ガスを発生させながら、この発生した乾留ガスを前記二次燃焼室4内で燃焼させ、つぎにこの燃焼排ガスを前記冷却手段5で冷却し、さらに前記有害物質除去手段7で前記ダイオキシン類を除去する工程である。
【0083】
この乾留工程において、前記一次バーナ10は、着火時に作動した後は停止しているが、乾留ガスの発生が少なくなり、前記二次燃焼室4内の温度が800℃以下になると、前記一次バーナ10は、適宜作動を再開して、前記被焼却物2を加熱することにより、乾留ガスの発生を促す。そして、前記二次燃焼室4内の温度が820℃になると停止する。また、前記二次バーナ20は、前記二次燃焼室4内が820℃以下となると作動を開始する。そして、前記二次燃焼室4内に導入された乾留ガス自体の燃焼が加わり、前記二次燃焼室4内の温度が、たとえば980℃を越えると、乾留ガスだけで燃焼を継続するので、前記二次バーナ20は、燃焼する必要がなくなり燃焼を停止する。
【0084】
ここで、この乾留工程の作用について詳細に説明する。この乾留工程は、前記被焼却物2を前記ダイオキシン類の発生が少ない乾留ガス化方式にて焼却処理するとともに、前記一次燃焼室3内で発生した前記ダイオキシン類を前記二次燃焼室4内で熱分解する。同時に前記二次燃焼室4内の燃焼において発生する前記ダイオキシン類もこの二次燃焼室4内をほぼ820℃以上とすることにより、この二次燃焼室4内で熱分解する。そして、前記二次燃焼室4で燃焼および分解処理した820℃以上の燃焼排ガスを前記冷却手段5へ導入し、前記混合部29において、冷却用空気と混合することにより、急激に冷却し、たとえば温度が200℃以下となるように冷却する。これにより、320℃付近の温度帯で生じやすい前記ダイオキシン類の再合成を防止する。そして、前記誘引ファン33から前記有害物質除去手段7を介して、より確実に処理された排ガスとして、前記第五出口35から大気中へ排出する。
【0085】
ここにおいて、前記乾留工程は、前記二次燃焼室4内の温度に応じて、複数の段階に分割して行うことも好適である。たとえば、初期段階において、乾留ガスの発生が少なくて前記二次燃焼室4内の温度が低いときは、前記二次バーナ20を2つとも,すなわち前記両二次バーナ22,23の両方を燃焼させる。また、後期段階において、乾留ガスの発生が多くて前記二次燃焼室4内の温度が高いときは、前記二次バーナ20を1つだけ,たとえば前記第一二次バーナ22だけ燃焼させる。これにより、焼却処理を短時間で行うとともに、省エネルギーとなる。
【0086】
さらに、前記後期段階においては、前記一次燃焼室3内における燃焼用空気量を前記第一一次燃焼室用空気導入手段14を作動させることにより増加させ、乾留ガス化を促進し、焼却処理を早める。この場合、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14を作動させる代わりに、前記一次バーナ10での燃焼を停止した状態で前記第一ダンパ41のみを開くこ
とにより、前記一次燃焼室3内へ空気を導入することも実施に応じて好適である。あるいは、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14および前記第一ダンパ41の両者から前記一次燃焼室3内へ空気を導入することも実施に応じて好適である。
【0087】
また、前記乾留工程の初期段階においては、前記二次燃焼室用空気導入手段17は、全開としているが、前記後期段階等の乾留ガスの発生量が低下したときは、前記二次燃焼室用空気導入手段17を絞るように調節することも好適である。
【0088】
つぎに、所定時間にわたる前記乾留工程が経過した後、前記置火工程へ移行する。この置火工程は、乾留ガスが発生した残りの前記被焼却物2,すなわち炭化した状態の前記被焼却物2を置火の状態,いわゆる「おき」の状態で燃焼させる工程である。この置火工程において、前記一次バーナ10は、前記一次燃焼室3内で「おき」の状態の前記被焼却物2の焼却を促す必要があるとき、補助燃料による燃焼を再開する。そして、前記二次バーナ20は、前記二次燃焼室4内の温度を820℃から980℃に維持するように補助燃料を燃焼させる。
【0089】
この置火工程においても、前記乾留工程のときと同様、前記二次燃焼室4からの820℃以上の燃焼排ガスは、前記冷却手段5へ導入される。すなわち、冷却用空気と混合され、急激に冷却され、たとえば200℃以下に冷却される。これにより、この置火工程においても、前記乾留工程のときと同様、前記ダイオキシン類の再合成を防止する。そして、前記誘引ファン33から前記有害物質除去手段7を介して、より確実に処理された排ガスとして前記第五出口35から大気中へ排出する。
【0090】
ここにおいて、所定時間にわたる前記置火工程が経過した時点で前記一次バーナ10を停止し、しばらく放置した後,すなわち前記置火工程の後半で、前記一次燃焼室3内の温度が所定の温度,たとえば420℃以下となると、前記被焼却物2を攪拌する。すなわち、前記両バーナ10,20および前記誘引ファン33の作動を停止し、前記置火工程中において、攪拌工程を割り込ませる。この攪拌は、前記一次燃焼室3に設けた小窓(図示省略)から、たとえば攪拌棒を用いて行う。この攪拌を行うことにより、前記炭化した被焼却物2の表面積をより一層空気と接触するように増加させ,いわゆる固まりをバラして燃焼し易くする。
【0091】
この攪拌工程を行うときは、灰の飛散を防止するため、前記両バーナ10,20および前記誘引ファン33の作動を停止して行う。この場合、前記誘引ファン33の作動を停止しても、燃焼排ガスは高温であるので、前記冷却手段5から前記空気取入れ口55を介して大気中へ排出される。したがって、高温の燃焼排ガスが前記誘引ファン33へ導入されることはない。
【0092】
そして、前記攪拌工程の後、直ちに前記置火工程を再開する。この再開した置火工程においては、前記二次バーナ20のみ作動を再開し(前記一次バーナ10の作動は停止する。)、前記被焼却物2が燃え尽きるまでの間、徐々に前記一次燃焼室3内の温度を低下させる。そして、前記攪拌工程に続いて再開した置火工程の後、前記一次燃焼室3内の温度が所定の温度,たとえば320℃以下になると、前記二次バーナ20も停止し、前記パージ工程へ移行する。
【0093】
前記パージ工程は、前記両燃焼室3,4および前記冷却手段5を冷却する工程である。このパージ工程においては、前記両バーナ10,20をともに停止させ、前記誘引ファン33のみ作動させて空気を導入することにより、前記両燃焼室3,4および前記冷却手段5を冷却する。そして、前記一次燃焼室3内の温度がほぼ280℃以下となるか,あるいは所定時間にわたる前記パージ工程が終了すると、前記一次燃焼室3内に残った未燃物を
取り出し、焼却処理を終了する。
【0094】
つぎに、前記一次燃焼室用空気導入手段12の作用について説明する。この一次燃焼室用空気導入手段12は、前記乾留工程および前記置火工程において、前記一次燃焼室3内の前記炉床11付近への燃焼用空気の導入量を調節する。ここにおいて、前記一次燃焼室用空気導入手段12を2つ(前記第一一次燃焼室用空気導入手段14および前記第二一次燃焼室用空気導入手段15)設けているので、よりきめ細かく制御することができる。たとえば、前記第一一次燃焼室用空気導入手段14は、前記乾留工程で使用するときに最適な空気導入量を設定し、また前記第二一次燃焼室用空気導入手段15は、前記置火工程で使用するときに最適な空気導入量を設定することも好適である。これにより、乾留ガス化と前記置火工程での燃焼を促進し、焼却処理を早く行うことができる。さらに、前記パージ工程においても、前記一次燃焼室用空気導入手段12を全開として冷却に必要な空気を導入すると、前記一次燃焼室3の冷却を早くすることができる。
【0095】
つぎに、前記二次燃焼室用空気導入手段17の作用について説明する。この二次燃焼室用空気導入手段17は、前記乾留工程において、乾留ガスを燃焼させるのに必要な空気の導入量を調節する。前記二次燃焼室用空気導入手段17を開き、空気の導入量を多くすると、焼却処理を早く行うことができる。さらに、前記パージ工程において、前記二次燃焼室用空気導入手段17を開くことにより冷却に必要な空気を多く導入すると、前記二次燃焼室4の冷却を早くすることができる。
【0096】
つぎに、前記調節ダンパ28の作用について説明する。この調節ダンパ28は、冷却用空気の流入には抵抗となり、排ガスの排出には非抵抗となる。すなわち、前記焼却装置1内における乾留ガスおよび燃焼排ガスが流通する部位において、異常燃焼が発生したとき、この異常燃焼に伴なう背圧の逃がし機能を有する。具体的に説明すると、異常燃焼が発生したとき、この異常燃焼に伴なう背圧により、前記板部材57が回動する。したがって、前記背圧は、前記逃がし機能が働き、前記板部材57が抵抗となることなく、前記冷却手段5内から前記冷却用空気ダクト27内を逆方向へ,すなわち前記調節ダンパ28の方向へ伝わり、前記空気取入れ口55から大気中へ放出される。
【0097】
また、前記第一ダンパ41と前記第二ダンパ48は、前記両燃焼室3,4へ導入される燃焼用空気を確実に遮断することができるように構成されているので、前記異常燃焼の発生するおそれのあるような緊急な場合、直ちに空気の導入を遮断できる。これにより、前記焼却装置1を安全に運転することができる。
【0098】
さらに、前記有害物質除去手段7の作用について説明する。この有害物質除去手段7は、前記誘引ファン33が排出する前記冷排ガス中に含まれる前記ダイオキシン類を吸着する機能を有する吸着部材を内蔵しており、前記冷排ガスと前記吸着部材とを接触させるものである。これにより、より一層確実に前記ダイオキシン類の排出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】この発明に係る焼却装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】一次バーナの断面説明図である。
【図3】第一一次燃焼室用空気導入手段の断面説明図である。
【図4】調節ダンパの通常の状態を示す断面説明図である。
【図5】調節ダンパの平面説明図である。
【図6】調節ダンパの逃がし機能が作動した状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0100】
3 一次燃焼室
4 二次燃焼室
6 誘引手段
10 一次バーナ
20 二次バーナ
36 ノズル
40 空気ダクト
41 ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次バーナを備えた一次燃焼室と、二次バーナを備えた二次燃焼室と、排ガスを誘引する誘引手段とからなり、
前記一次バーナおよび前記二次バーナは、それぞれ燃料用のノズルと、燃焼用空気を導入する空気ダクトと、この空気ダクトに設けた導入空気の量を調節するダンパとにより構成され、前記誘引手段の吸引により、前記空気ダクトから前記ダンパを介して燃焼用空気が供給される構成としたことを特徴とする焼却装置。
【請求項2】
前記二次バーナが、2つのバーナにより構成され、前記バーナの1つまたは2つを燃焼させて、燃焼量を調節することを特徴とする請求項1に記載の焼却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−271261(P2007−271261A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144480(P2007−144480)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【分割の表示】特願2002−241263(P2002−241263)の分割
【原出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】