説明

煙道ガス脱硫用の重炭酸ナトリウムの製造方法

一次硫酸ナトリウムを含有する水溶液が水酸化ナトリウム溶液と重硫酸ナトリウム溶液とを生成するために電気透析にかけられ、水酸化ナトリウム溶液が重炭酸ナトリウムを得るために炭酸化される、煙道ガスを精製するための重炭酸ナトリウムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重炭酸ナトリウムの製造に関する。より具体的には、それは硫黄酸化物を含有する煙道ガスを処理するための重炭酸ナトリウムの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の活動は、生態系に有害な、大量の硫黄含有残渣を生成する。このように、特に発電用の火力発電所での、化石燃料(石炭、石油誘導体)の燃焼は、大気への放出が一般に許容されない、大容量の硫黄酸化物の形成をもたらす。
硫黄酸化物から煙道ガスを精製するための公知のおよび推奨される一技術は、これらのガスを重炭酸ナトリウムで処理することである。処理されるガスの硫黄酸化物は、ガスから容易に分離できる硫酸ナトリウムに変換されるタイプのものである。
【0003】
煙道ガスの精製を意図した重炭酸ナトリウムを得るために様々な方法がある。
アンモニア法として一般に知られ、かつ、業界で一般に用いられる、第1の方法は、二酸化炭素を含有するガスでアンモニア性食塩水を処理することである。アンモニアの残りを含有する得られた重炭酸ナトリウムはカ焼され、得られた炭酸ナトリウムは水に溶解される。生じた溶液は、重炭酸ナトリウム結晶の水性懸濁液を生成するために再炭酸化される。懸濁液は結晶を分離するために最後に濾過され、結晶は所望の重炭酸ナトリウムを得るために乾燥される。
他の方法は、天然のセスキ炭酸ナトリウム(トロナ)から出発して得られる炭酸ナトリウム溶液の炭酸化をベースとしている。
【0004】
これらの公知の方法は大量のエネルギーを消費することが判明した。それから誘導される重炭酸ナトリウムは比較的高価である。さらに、これらの公知の方法は、競合するために、非常に大規模のプラントで実施されなければならない。現在の環境基準を満たす新プラントを新設するために必要な投資は極めて高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、これらの環境基準により、増え続ける量の工業煙道ガスからの硫黄酸化物の除去が要求される。それ故、安価であり、かつ、十分な品質のものである、煙道ガスを処理するための重炭酸ナトリウムが大いに必要とされている。
本発明は、この問題を解決することを目標としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、一次硫酸ナトリウムを含有する水溶液が水酸化ナトリウム溶液と重硫酸ナトリウム溶液とを生成するために電気透析にかけられ、水酸化ナトリウム溶液が重炭酸ナトリウムを得るために炭酸化される、煙道ガスを精製するための重炭酸ナトリウムの製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の特定の一実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
電気透析は、一式の隣接するコンパートメント内で、両極性イオン交換膜を陰イオンおよび/または陽イオンのイオン交換膜と組み合わせる技術である。陰イオン膜は、陰イオンを通しそして、理想的には、陽イオンを通さないイオン交換膜である。陽イオン膜はそれら自体、陽イオンを通し、陰イオンを通さない。両極性膜は、陽イオン面と陰イオン面とを含むイオン交換膜である。かかる膜は、陽イオン膜を陰イオン膜に接合することによって製造され得る。両極性膜は有利には、ソルベー(SOLVAY)名義での国際公開第01/79335号パンフレットに記載されている方法によって、特にその中で特許請求される方法で製造される。両極性膜内で、十分な局所電場の作用下に、その中に浸透した水のそのH+およびOH-イオンへの解離が起こり、それらのイオンは次にこの膜の両面上に移行する。それ故、両極性膜に隣接するコンパートメントの1つでは酸性化が、他の隣接コンパートメントではアルカリ化がある。一連の両極性膜は、陽イオンまたは陰イオン単極性膜によって分離されている。電気透析装置が両極性膜と1タイプの単極性膜(陽イオンまたは陰イオン)とを有するにすぎないとき、それらは2(タイプの)コンパートメントを有すると言われる。それらが3タイプの膜を含むとき、それらは3コンパートメントを有すると言われる。
【0009】
本発明による方法の有利な一変形では、電気透析装置は2−コンパートメント電気透析装置である。この変形では、電気透析装置は、両極性膜と陽イオン膜とを交互に含むにすぎない。塩基コンパートメントとして知られる、両極性膜の陰イオン面と陽イオン膜との間に置かれたコンパートメントは、典型的には水を供給される。これらのコンパートメントでは、両極性膜に由来するOH-イオンの供給および陽イオン膜を通過するNa+イオンの供給、それ故NaOHの形成がある。これらのコンパートメントはまた、コンパートメントの出口でさらに濃縮されている、希NaOH溶液を供給されてもよい。NaOH溶液の出口濃度は少なくとも15重量%、好ましくは20重量%、より好ましくは25重量%に等しいことが推奨される。酸コンパートメントとして知られる、両極性膜の陽イオン面と陽イオン膜との間に置かれたコンパートメントは、Na2SO4の溶液を供給される。これらのコンパートメントでは、H+の供給およびNa+の抜き出し、それ故重硫酸ナトリウム(NaHSO4)への硫酸ナトリウムの変換がある。
【0010】
本発明による方法では、水酸化ナトリウム溶液は、重炭酸ナトリウムを得るために炭酸化される。このために、二酸化炭素を含むガスを使用することが有利である。様々な二酸化炭素含有率のガスが可能である。水性水酸化ナトリウム溶液の炭酸化の終わりに、重炭酸ナトリウム結晶の水性懸濁液の外観を呈して、重炭酸ナトリウムが結晶化する。これらの結晶は、例えば遠心分離によって、懸濁液から最終的に分離され、次に乾燥されなければならない。
【0011】
本発明による方法の第1の推奨される変形では、水酸化ナトリウム溶液は、重硫酸ナトリウムと炭酸カルシウムとの反応によって得られた二酸化炭素を含むガスを用いて、二次硫酸ナトリウムおよび石膏を併産して、炭酸化される。
【0012】
本発明による方法の第2の推奨される変形では、水酸化ナトリウム溶液は2ステップで、先ず、50重量%未満、好ましくは30重量%未満、特に好ましくは20重量%未満のCO2を含有する、CO2に乏しいガスを用いて炭酸化される。この第1炭酸化の後に、炭酸ナトリウム溶液が得られ、その炭酸ナトリウム濃度は、水酸化ナトリウム溶液の濃度に依存して、有利には20重量%超、好ましくは25重量%超である。27〜32%の濃度を有する溶液が特に好ましい。次に、第2ステップでは、この第1炭酸化の後に得られた炭酸ナトリウム溶液は、50%超、有利には70%超、特に好ましくは90%超のCO2を含有する、CO2に富むガスを用いて(重)炭酸化される。この第2ステップでは、重硫酸ナトリウムと炭酸カルシウムとの反応によって得られた二酸化炭素が有利に使用される。
【0013】
本発明による方法のこの第2の推奨される変形では、水酸化ナトリウム溶液の炭酸化のための2つのステップについて異なる気−液接触器を使用することが特に推奨される。第1ステップについては、容器中にランダムに詰め込まれた、小さい空洞化充填材で充填された容器が有利には使用される。容器は、CO2に乏しいガスの上向き流れを好ましくは通される。水酸化ナトリウム溶液は、容器の最上部で有利に噴霧され、充填材一面を流れ落ちる。これは、CO2に乏しいガスとの反応に好都合である、気−液接触面積の増加をもたらす。さらに、この反応の発熱性にもかかわらず、使用されるガスの低いCO2濃度のために、容器を冷却することは一般に必要ではない。第2ステップについては、CO2に富むガスの上向き流れを通される、炭酸化されるべき溶液で満たされた容器が有利には使用される。この第2ステップでは、容器は、反応の発熱性を相殺するための冷却手段を一般に備えている。重炭酸ナトリウム結晶の懸濁液が容器中に形成される。懸濁液は抜き出され、重炭酸ナトリウム結晶を分離するために濾過され、それは次に乾燥される。炭酸化されるべき溶液の滞留時間は、所望の結晶サイズを得るために調節される。容器の最上部に達したCO2に富むガスは好ましくは回収され、そのベースに再注入される。
【0014】
重硫酸ナトリウムが炭酸カルシウムと反応するとき、硫酸ナトリウムが併産される。この硫酸ナトリウムは、本発明による方法に使用される一次源の硫酸ナトリウムからそれを区別するために本文書では二次硫酸ナトリウムとして知られている。この併産される二次硫酸ナトリウムはリサイクルされ、電気透析にかけられることが有利である。この場合、それは電気透析装置に供給される一次硫酸ナトリウムに加えられる。
【0015】
一次硫酸ナトリウムは様々な起源を有してもよい。実際に、硫酸ナトリウムは、廃棄物であると考えられる多くの工業の併産物である。本発明による方法はそれ故廃棄物を、煙道ガス処理に使用できる、高付加価値製品に変換することを可能にする。これは、重炭酸ナトリウムの製造コストの低減をもたらし、それを煙道ガス処理でのより広い使用に参入させる。
【0016】
本発明による方法の特に有利な一実施形態では、一次硫酸ナトリウムは、重炭酸ナトリウムを用いた硫黄酸化物の点での煙道ガス精製の残渣である。この実施形態では、重炭酸ナトリウムは本発明による方法に由来することが特に推奨される。このような方法で、煙道ガス処理反応剤が再生される。さらに、電気透析設備のサイズは小さく、必要な投資もあまり大きくないので、この実施形態では、再生を、煙道ガス精製の敷地内のその場で実施することが可能であり、輸送費が削減される。
【0017】
本発明はそれ故また、本発明による方法によって得られた、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%の重炭酸ナトリウムを含有する反応剤が、煙道ガスが流れる導管中へ注入される、硫黄酸化物を含有する煙道ガスの精製方法に関する。
【0018】
本発明による煙道ガスの精製方法において、反応剤が5〜50μmの平均粒径D50を有する粉末の形態にあることが推奨される。このために、本発明による方法によって得られた重炭酸ナトリウムは、必要ならば、粉砕されるおよび/または篩い分けされるであろう。この主題に関する追加の情報は、ソルベー(SOLVAY)名義の欧州特許第0740577B1号明細書に見いだすことができる。
【0019】
添付の図は、本発明の特定の一実施形態を例示するのに役立つ。
【0020】
重炭酸ナトリウム粉末1は、煙道ガスの乾式スクラビングのための装置2を用いて、二酸化硫黄で汚染された煙道ガス3中へ注入される。二酸化硫黄は重炭酸ナトリウムと反応して硫酸ナトリウムを生成する。この装置は、一方では、スクラビングされた煙道ガス3’と、他方では、硫酸ナトリウム4とを供給することを意図されるフィルターを含有する。この硫酸ナトリウムは、水6が供給される溶解槽5で溶解される。生じた硫酸ナトリウム溶液7は、2−コンパートメント電気透析装置8の酸コンパートメント中へ導入される。一方では、重硫酸の溶液9、他方では、水酸化ナトリウムの溶液10がそれぞれ、電気透析装置の酸および塩基コンパートメントから抜き出される。重硫酸ナトリウム溶液は、反応器11で炭酸カルシウム12と反応する。この反応は、溶解槽5にリサイクルされる硫酸ナトリウム13と、価格設定される硫酸カルシウム14と二酸化炭素15とを生成する。水酸化ナトリウム溶液は、水の任意の添加後に、電気透析装置の塩基コンパートメントの入口にリサイクルされる。一部は抜き出され、CO2に乏しいガス16を供給される気−液接触器17中へ導入され、その中で炭酸化溶液が生成する。この溶液は次に、二酸化炭素ガス15を供給される第2気−液接触器中へ導入され、その中で重炭酸ナトリウム結晶が沈澱して懸濁液19を形成する。これらの結晶は水性懸濁液から分離され、重炭酸ナトリウム粉末21を与えるために遠心分離および乾燥装置20で乾燥される。この粉末は粉末1に加えられる。
【実施例】
【0021】
重炭酸ナトリウムを用いた煙道ガスの乾式脱硫から生じた、1000gのNa2SO4を取る。この量のNa2SO4を次に2500gの水に溶解させる。生じた水溶液を、2−コンパートメント電気透析装置の(両極性膜の陽イオン面と陽イオン膜との間に置かれた)酸コンパートメント中へ導入する。塩基コンパートメントに水を供給する。使用される両極性膜はアストム(ASTOM)によって製造され(ネオセプタ(Neosepta)BP−1Eモデル)、陽イオン膜は、デュポン(DuPont)によって製造される、ナフィオン(Nafion)(登録商標)324膜である。水性Na2SO4溶液の温度は40℃である。6.3ファラデーを電気透析装置に通す(1セル当たり1.4Vの電圧、1kA/m2の電流密度)。塩基コンパートメントから250gの水酸化ナトリウムを含む溶液、および酸コンパートメントから100gの未変換Na2SO4が残っている760gのNaHSO4を含む溶液を回収する。電流効率は0.9である。760gのNaHSO4を含有する溶液を次に316gのCaCO3と反応させる。電気透析装置に送り返される、450gのNa2SO4と、溶液から分離され、別々にアップグレードされる、430gの石膏(CaSO4)と、回収される、140gのCO2とを含有する溶液を得る。最後に、水酸化ナトリウム溶液を、675gの空気中に希釈された139gのCO2を含有するガス(化石燃焼ガスに由来するガス)を用いて先ず炭酸化する。炭酸化を次に、炭酸カルシウムとの反応中に回収された139gのCO2(100%)を用いて続行する。530gの重炭酸ナトリウムを最後に得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次硫酸ナトリウムを含有する水溶液が、水酸化ナトリウム溶液と重硫酸ナトリウム溶液とを生成するために電気透析にかけられ、水酸化ナトリウム溶液が重炭酸ナトリウムを得るために炭酸化される、煙道ガスを精製するための重炭酸ナトリウムの製造方法。
【請求項2】
電気透析装置が2−コンパートメント電気透析装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水酸化ナトリウムが、二次硫酸ナトリウムと石膏との併産で、重硫酸ナトリウムと炭酸カルシウムとの反応によって得られた二酸化炭素を含むガスを用いて炭酸化される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記併産される二次硫酸ナトリウムが、リサイクルされ、電気透析にかけられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一次硫酸ナトリウムが、重炭酸ナトリウムを用いた硫黄酸化物の点での煙道ガス精製の残渣である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重炭酸ナトリウムが、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に由来する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって得られた、少なくとも10%の重炭酸ナトリウムを含有する反応剤が、煙道ガスが流れる導管中へ注入される、硫黄酸化物を含有する煙道ガスの精製方法。
【請求項8】
前記反応剤が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られた、少なくとも50%の重炭酸ナトリウムを含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応剤が5〜50μmの平均粒径を有する粉末の形態にある、請求項7または8に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−509904(P2011−509904A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541769(P2010−541769)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050073
【国際公開番号】WO2009/087143
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】