説明

照光式タクトスイッチ

【課題】 発光部から発せられる光を板状バネの中央部近辺に向けて最短距離で照射させることでスイッチ部の照光効率を高めると共に、前記発光部と板状バネとをコンパクトに組み込み形成することが可能な小型の照光式タクトスイッチを提供することである。
【解決手段】 接点24の上方を被覆する導電性の板状バネ25と、この板状バネ25の近傍に配置される発光部26とを備えた照光式タクトスイッチ21において、前記板状バネ25の側面に湾曲部32を形成し、この湾曲部32内に前記発光部26を深く入り込ませるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子による照光機能を備えた小型で薄型の照光式タクトスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の照光式タクトスイッチは、図6に示すように、固定電極となる接点4が中央部に形成された四角形状の基板2と、前記接点4の上方を覆うようにして前記基板2上に配置される導電性の板状バネ5と、前記基板2のコーナ部に配置される発光部6とを備えて形成されている。この照光式タクトスイッチ1は、小型化及び薄型化が進む携帯電話機をはじめとする各種の電子機器のタッチパネルに多く採用されている。
【0003】
このような小型化及び薄型化に対応するためには、前記板状バネ5や発光部6を小型の基板2にコンパクトに収容する必要がある。また、視認性や操作性を高めるために、照光効率の向上も要求されている。図6に示したような照光式タクトスイッチ1においては、基板2の中央部に接点4や円形状の板状バネ5からなるスイッチ部3を形成し、基板2のコーナ部に発光部6を配置形成することで、前記基板2の有効利用及び小型化を図っている。また、前記スイッチ部3に対する照光効率に関しては、前記発光部6を基板2の複数のコーナ部に設けると共に、各発光部6に配置する発光素子7の数を増やすことで向上効果を図っている。
【非特許文献1】LS6シリーズ、データシート、[online]、株式会社シチズン電子、「平成17年1月5日検索」、インターネット URL <http://www.c−e.co.jp/products/index1.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記図6に示したような照光式タクトスイッチ1にあっては、板状バネ5に近接させて発光部6が設けられているが、前記板状バネ5が円形であるため、基板2のサイズを最小限に抑えようとすると、前記発光部6を配置する位置が基板2のコーナ部に制限されてしまう。また、前記発光部6からスイッチ部3の中心部までの距離は短いほど照光効果が大きくなるが、配置する板状バネ5の大きさに応じて決まるために短縮することができない。このため、前記スイッチ部3を中心とした照光効率の大幅な向上効果が得られないといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、発光部から発せられる光を板状バネの中央部近辺に向けて最短距離で照射させることでスイッチ部の照光効率を高めると共に、前記発光部と板状バネとをコンパクトに組み込み形成することが可能な小型の照光式タクトスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の照光式タクトスイッチは、接点の上方を被覆する導電性の板状バネと、この板状バネの近傍に配置される発光部とを備えた照光式タクトスイッチにおいて、前記板状バネの少なくとも一側面に湾曲部が形成され、この湾曲部内に前記発光部が深く入り込むように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る照光式タクトスイッチによれば、前記板状バネの一側面に湾曲部を設け、この湾曲部に深く入り込むようにして発光部を配置したことによって、前記板状バネの中央部近辺に向けて照射させる距離を短く設定することができる。これによって、スイッチの押圧操作の中心となる前記板状バネ全体を高輝度且つ効率よく照光することができる。
【0008】
また、前記発光部が板状バネの湾曲部に深く入り込んだ状態で基板上に組み込めるので、基板のサイズを最小限に抑えることができ、高密度な実装やスペースの狭い部分への実装が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る照光式タクトスイッチの実施形態を詳細に説明する。
【0010】
図1乃至図3に示すように、本発明の照光式タクトスイッチ21は、四角形状の基板22と、この基板22上の中央部に形成されるスイッチ部23と、このスイッチ部23の一側面に配置される発光部26とを備えて構成されている。
【0011】
前記基板22は、ガラスエポキシ等の樹脂材からなり、上面に前記スイッチ部23を構成する図示しないスイッチ回路と、このスイッチ回路の上に固定電極となる接点24や前記発光部26における電極や配線パターンが形成されている。また、前記基板22の外周面には、マザーボードに実装するための外部接続電極30が設けられる。図1及び図2に示した基板22では、前記外部接続電極30がスルーホールによって形成されているが、リードフレームによって形成される場合もある。
【0012】
スイッチ部23は、前記接点24と、この接点24の上方を覆う略四角形状の導電性の板状バネ25とで構成されている。板状バネ25は、前記接点24と接触する可動電極であり、薄く弾力性を有したステンレス(SUS)や黄銅等の金属材料で形成されている。この板状バネ25は、中央部が前記接点24と接触する部分となっており、通常の状態で前記接点24に接触しないように上方に僅かに膨らんだ状態に成形され、四隅がモールド材によって前記基板22上に位置決めされる。そして、前記板状バネ25の中心部分をタッチあるいは押圧操作することによって、前記接点24との導通が図られる。
【0013】
また、前記板状バネ25は、4方向に面した側面を有しており、各側面には内側に向けて円弧状に切り欠いた湾曲部32が形成されている。この湾曲部32は、四隅を基点として内側に所定の幅で円弧状にカットして形成されたもので、前記接点24の真上に位置する板状バネ25の中心に向けて、一定の曲率を持たせて形成されている。なお、本実施形態では、前記板状バネ25の形状を対称形にするため、4方向の側面全てに湾曲部32を設けたが、後述する発光部26を近接して配置する目的においては、前記発光部26に対向する側面のみ湾曲部32を設けるだけでよい。
【0014】
前記発光部26は、発光素子27と、この発光素子27を覆う透光性の封止体28とによって構成される。前記発光素子27は、一または二以上の発光ダイオード(LED)で構成され、前記基板22上の湾曲部32に近接したスペースに実装される。前記発光素子27は、白色あるいは赤,青,緑等の単色発光の中から照明用途に合わせて選択され、発光強度に合わせて複数配置することができる。また、カラー発光させる場合は、図4に示す照光式タクトスイッチ41のように、赤,青,緑の3つの発光素子27a,27b,27cを配置させ、それぞれの発光素子27a,27b,27cに供給する電流値を調整することによって様々な発光効果が得られる。
【0015】
前記封止体28は、図3及び図5に示されるように、前記発光素子27を収容するため、所定の厚みを有して形成されている。また、外周縁34は、前記湾曲部32に沿うように円弧状に張り出して形成されると共に、その厚みは前記封止部28の中心から外周縁34に向かって次第に減少するような扁平した楕円形状となっている。このため、前記発光素子27から発せられる光の指向性を平面方向及び厚み方向の両方から前記板状バネ25の中心に向けさせることができる。これによって、前記板状バネ25と接触する接点24近傍を最も明るく照射させることができる。
【0016】
また、前記発光素子27を前記湾曲部32に最も接近する外周縁34寄りに配置することによって、前記板状バネ25の中心部に照射させる光量をさらに強めることができると共に、封止体28を前記湾曲部32のスペースにコンパクトに収めることができる。
【0017】
また、前記封止体28内に蛍光剤や拡散剤等を混合した透光性の樹脂材を充填して形成することによって、前記発光部26における発光強度を高めることもできる。このような構成にすることで、消費電力を抑えた効率のよい照光効果が得られる。
【0018】
また、前記基板22の前記発光部26を除いた外周部には、前記板状バネ25の周囲を囲う枠部35が設けられる。この枠部35は前記板状バネ25を基板22上に位置決めすると共に、側面側を封止するために設けられる。前記枠部35は、前記板状バネ25の中心部と略同じ高さに形成され、さらに、この枠部35を介して透光性を有した防水シート29が装着される。
【0019】
上記構成の照光式タクトスイッチ21は、図示しないマザーボード上に直接表面実装され、リフロー処理によって半田接合される。
【0020】
前記発光部26は、押圧操作によって、可動電極である板状バネ25が基板22上の接点24(固定電極)に接触することによって発光し、前記押圧操作を解除すると消灯するようになっている。本実施形態の照光式タクトスイッチ21によれば、指等によって押圧操作した際に、板状バネ25の中心部に近い位置から発光素子27からの照射を受けるため、押圧した部分の輝度が高くなり、操作性が向上する。また、発光部26を構成する封止体28が前記板状バネ25の湾曲部32に沿うように、円弧状に張り出した外周縁34を有して形成されているため、前記発光素子27から発せられる光を漏れなく、且つ、効率よくスイッチ部23全体に照射させることが可能となる。
【0021】
また、前記発光部26を板状バネ25の湾曲部32のスペースに収容するように配置できると共に、前記湾曲部32内に配線パターンを形成することも可能となるため、前記基板22のサイズがスイッチ部26を構成するだけのスペースを備えるだけで済む。このため、従来の照光機能を備えたタクトスイッチに比べて、70〜80%程度の小型化が可能となった。
【0022】
なお、上記実施形態の照光式タクトスイッチ21は、スイッチ部23と発光部26とが1対1に対応した単体の構成となっているため、独立した単体のタクトスイッチに適したものであるが、前記スイッチ部23と発光部26によるセット構成を集合基板に複数配置するようにすれば、部品点数や基板間配線が削減され、まとまったキー配列を有する携帯電話機や端末機器等に効率よく組み込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る照光式タクトスイッチの斜視図である。
【図2】上記図1の照光式タクトスイッチの内部構造を示す斜視図である。
【図3】上記図1の照光式タクトスイッチの平面図である。
【図4】複数の発光素子による発光部を備えた照光式タクトスイッチの平面図である。
【図5】上記図1の照光式タクトスイッチの断面図である。
【図6】従来の照光式タクトスイッチの斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
21 照光式タクトスイッチ
22 基板
23 スイッチ部
24 接点
25 板状バネ
26 発光部
27 発光素子
28 封止体
29 防水シート
30 外部接続電極
32 湾曲部
34 外周縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点の上方を被覆する導電性の板状バネと、この板状バネの近傍に配置される発光部とを備えた照光式タクトスイッチにおいて、
前記板状バネの少なくとも一側面に湾曲部が形成され、この湾曲部内に前記発光部が深く入り込むように配置されていることを特徴とする照光式タクトスイッチ。
【請求項2】
前記発光部は、一または二以上の発光素子と、この発光素子を封止する透光性の封止体とを備え、前記封止体の外周縁が前記湾曲部に沿って形成されている請求項1記載の照光式タクトスイッチ。
【請求項3】
前記封止体は、その厚みが前記外周縁に向かって次第に減少するような断面形状に形成されている請求項2記載の照光式タクトスイッチ。
【請求項4】
回路基板と、この回路基板上に配置される接点と、少なくとも一側面に湾曲部が形成され、前記接点の上方を被覆する板状バネと、前記湾曲部内に深く入り込むように前記基板上に配置される発光部とを備えたことを特徴とする照光式タクトスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−310004(P2006−310004A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129118(P2005−129118)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】