説明

照明ディスプレイシステムおよびプロセス

【課題】繊維または織物の製品に照明ディスプレイを統合するためのプロセスを提供すること。
【解決手段】1つの局面では、エレクトロルミネセントパネル(102)の後部電極(106)は、以下のプロセスによって繊維部位基板(104)上に直接形成される。形成される画像は、ディスプレイのための領域を規定するために、繊維部位を覆って配置され、触媒がそのようなディスプレイ領域に付加される。触媒を有する繊維部位ディスプレイ領域は、無電解プレーティング槽内に浸され、続いて除去され、水溶性溶液内で化学的還元を発生させる。そのような繊維部位は、繊維部位に統合される電極層を形成するために電極槽に浸され、かつ、関連する画像にパターン化される。別の局面では、あるプロセスが、後部電極を有する繊維部位基板を封止するための絶縁性層を形成するために利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2001年3月22日に出願された「PROCESS FOR INTEGRATING AN ILLUMINATED DISPLAY WITH FABRIC」と称する、本明細書中で参照として援用する米国出願シリアルナンバー第60/277,829号に対する非仮出願である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般的に、照明ディスプレイを利用するため、より詳細には、繊維または織物の商品にエレクトロルミネセント発光パネルを統合するための用途に関する。
(問題)
エレクトロルミネセント(EL)パネルまたはランプは、時計、車両器具パネル、コンピュータモニタ等の幅広い対象に対する照明を提供する。これらのELパネルは、典型的には2つの電極間に、蛍光体等のエレクトロルミネセント材料を配置することによって形成される。この電極の一方は、本質的に透明である。電流を電極に流すことにより形成される電界により、エレクトロルミネセント材料の励起およびそこからの光の放射が発生し、光の放射は、透明な電極を通して観測される。材料科学における進歩は、多様な形状やサイズを有する積層材の薄く、細長く、柔軟なストリップ(strip)からのELパネルの形成を導いた。
【0003】
照明ディスプレイを繊維または織物へ統合することが望まれることにより、この結果、光源が、衣服、バックパック、テント、標識等に生成され得る。しかし、エレクトロルミネセントパネルを繊維に形成することは、特定の技術課題を生じさせ、これは、繊維の本来の柔軟性、および、衣服の商品のように着用される等の置かれた用途のためである。壁または窓にかけられたELパネルとは異なり、繊維に付属するエレクトロルミネセントパネルは、繊維の屈曲からの物理的圧力の繰り返しサイクルを受けなくてはならならず、人間による接触、または、本体に近接して着用されることの増加する危険性のために、適切に、電気的および熱的に絶縁されなくてはならない。さらに、繊維および織物は、一般的に、その上にELパネルのコンポーネント層を構築することが難しい基板であることが証明されている。一体の照明ディスプレイシステムを形成するために必要とされるのは、より良好に繊維部位にELパネルを統合するためのプロセスである。
【0004】
エレクトロルミネセントフィルムは、通常、液晶ディスプレイのためのバックライトとして、ディスプレイ産業界において利用されている。今日構築されているように、後部電極がカーボンまたは鉄なので、これらのフィルムは、透明ではなく、また、半透明でさえない。従って、半透明である広い面積の照明光源を有することも望まれ、すなわち、観測者が、対象が照らされている間にデバイスの後ろ側を通して対象を見ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(ソリューション)
本発明は、エレクトロルミネセントパネルのコンポーネント層を繊維部位に確実に形成して、ELパネル組立品全体の構築を容易にするためのプロセスを含む。1つの局面では、エレクトロルミネセントパネルの層は、基板部位と一体で形成される。第1に、導電性ポリマーから作られる後部電極は、所望のパターンで基板部位上に形成される。次に、誘電体層は、後部電極層を覆って形成される。発光層、導電性ポリマーから作られた透明な導電性層、および、前部電極リードは、基板部位上に連続して形成される。すなわち、発光層は誘電体層の上であり、かつ、透明な導電性ポリマー層は発光層の上である。ELパネルのコンポーネント層の各々は、印刷プロセスによって基板部位上に形成され得る。選択的に、基板部位は、実質的に硬い支持に接着され得る一方で、ELパネルコンポーネント層は、その層の正確な配置のために支援される。この局面は、少なくとも後部電極が基板部位と十分に統合される構造を提供する。電流が前部および後部電極に流されると、電界が発生して、照らすための発光層を励起する。
【0006】
本発明の別の局面は、ELパネルの後部電極が、メタライゼーションプロセスを利用して繊維部位に直接形成されるプロセスを提供する。画像が、まず、照らされるべき特定のデザインを規定するように形成される。画像は、ディスプレイのための領域を規定するために繊維部位の上に配置され、かつ、触媒がそのようなディスプレイ領域へ付加される。次に、そこに付加された触媒を有する繊維部位の一部分は、無電解のプレーティング層に浸され、続いて除去され、このことは、化学的還元を水溶性の溶液内に発生させる。最後に、繊維部位ディスプレイ領域は、電極層に浸されて、繊維部位と共に統合され、かつ、関連する画像にパターン化された電極層を形成する。前部電極を含むELパネルの残りの層は、例えば、印刷プロセスによって、後部電極およびベースの繊維部位の上部に形成され得る。ELランプにエネルギーを与えるとすぐに、発光層は、画像のパターンで照らす。
【0007】
本発明の更なる別の局面では、絶縁性層およびそれを形成するためのプロセスが、後部電極を有する繊維部位を封止するために提供される。繊維部位は、まず、電気泳動溶液に浸される。電気的リードは、後部電極に接続され、対向極は、その溶液に浸され、かつ、反対の極性の電気的リードに接続される。この電気的リードに印加される電圧によって、絶縁保護コーティングが、電気泳動溶液に浸された繊維部位上に堆積される。このコーティングは、後部電極の統合性を維持し、かつ、そのような電極を電気的に絶縁し、それにより、繊維に触った人に対する感電の危険性を防止する。さらに、コーティングは、エレクトロルミネセントパネルの誘電体層として機能し得る。印刷プロセスまたは他の手段は、誘電体層の上部のELパネルの残りの層を形成するために利用され得る。
【0008】
これらのプロセスによって、より安全で、より耐久性のある照明ディスプレイシステムが、安全な衣服(ベスト、ジャケット、防止、手袋)、アウトドア用具(テント、バックパック等)、旗および標識、または、柔軟な照明ソリューションを必要とする任意の他の用途等の全てのタイプの繊維および織物の応用例のために製造され得る。さらに、照明ディスプレイシステムのELパネルコンポーネントが、例えば、印刷プロセスによって、薄い層として一緒に形成され得るので、衣服の商品の上に着用において、かさばりすぎもせず、扱いにくすぎることもない薄いELランプが、形成され得る。反射ストリップ(strip)とは反対に、これらのプロセスによって形成される照明ディスプレイシステムは、外部の光源からの、ELパネル表面から反射される光を要求しない。本発明の他の利点およびコンポーネントは、添付の図と連携した以下の説明から明らかになる。添付の図面は、本明細書の一部をなし、この中において本発明の様々な特徴を示すために本発明の例示的な実施形態が示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施形態に沿った照明ディスプレイシステムの図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に沿った照明ディスプレイシステムを形成するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施形態に沿った繊維基板部位のメタライゼーションを実行するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施形態に沿った繊維基板部位に絶縁性層を形成する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図5】図5は、基板とそこに形成されるエレクトロルミネセントパネルを示す本発明の実施形態に沿った照明ディスプレイシステムの上面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に沿った繊維基板部位システム上に形成される後部電極の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、照明ディスプレイシステムを生成するために、基板、好ましくは、織物および繊維上にエレクトロルミネセントパネルコンポーネントを形成するための一連のプロセスを提供する。さらに、ディスプレイシステムの特定のコンポーネントは、Muraskoの米国特許シリアルナンバー第6,203,391号に開示されるように一緒に形成され得、この教示は、本明細書中で参照として援用される。第‘391号特許は、エレクトロルミネセントランプコンポーネントを標識基板に結合することによってエレクトロルミネセント標識を形成するためのプロセスを開示する。
(導電性ポリマー照明ディスプレイ)
図1は、導電性ポリマーが、エレクトロルミネセントパネルの導電性要素を形成するために利用される本発明の局面を表わす。この構造は、照明ディスプレイシステム100を形成するために、ELパネルを基板により良好に統合するために役立つ。ELパネル102と共に利用され得る導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリプロール、および、好ましくは、ポリエチレン−ジオキシチオフェンを含み、ポリエチレン−ジオキシチオフェンは、NJ Ridgefield ParkのAgfa Corp.で製造される商標名「Orgacon」の下で流通している。基板104は、ELパネルコンポーネント層が形成される基盤層を形成する。好ましくは、基板104は、繊維または織物部位であり、その結果、導電性ポリマー材料は、少なくとも部分的に繊維ファイバーに吸収され得、より統合的な構造を形成する。適切な繊維または織物材料は、綿、ナイロン、ポリエステル、高密度ポリエチレン(例えば、DE WilmingtonのDuPont CompanyからのTyvek商標)等を含む。これらの材料の全ては、これ以降で「fabric」として参照される。ELパネル102は、導電性ポリマー後部電極106、誘電体層108、発光層110、前部導電性ポリマー層112、および、前部電極リード114を含む。選択的に、導電性パッド116は、導電性リード114および導電性ポリマー後部電極106に電気的に接続されて、発光層110を照らさせるために電源からELパネル102に電気的エネルギーを供給する。また、前部電極リード114は、好ましくは、実質的に前部導電性ポリマー層112の周囲に配置される導電性ポリマー前部の中心から離れた電極リードである。
【0011】
誘電体層108は、バリウムチタネート等の高誘電定数材料から形成される。発光層110は、電界内に配置された際に照らす材料から形成される。そのような材料は、蛍光体等の非有機物、もしくは、2001年3月22日に出願された「Electroluminescent Multiple Segment Display Device」と称する米国特許出願シリアルナンバー第09/815,078号に教示されるような、発光ポリマー等の有機体を含み得、この教示は、本明細書中で参照として援用される。導電性パッド116は、好ましくは、銀から作られるが、信頼性のある電気的コネクタが形成され得る任意の導電性材料から製造されてもよい。
【0012】
図2は、図1に示される照明ディスプレイシステム100を形成するために、基板104上にエレクトロルミネセントパネル102を製造するための例示的なステップの順序を示すフローチャートである。ELパネル102の各コンポーネント層106〜116は、ステンシリング(stenciling)、フロートコーティング(flat coating)、ブラッシング(brushing)、ローリング(rolling)、および、スプレイ(spraying)を含む様々な手段によって基板104上に連続的に付加され得るが、好ましくは、スクリーンまたはインクジェット印刷によって基板上に印刷される。
【0013】
選択された基板104が繊維等の柔軟な材料から作られる場合、基板104は、好ましくは、ステップ201に示されるように、ELパネル102が構築される前に、接着剤を利用して硬い支持(示されない)に取り付けられる。支持は、アルミニウム、ポリカーボネート、厚紙等の材料でも良い。接着剤は、定位置に基板104を保つような十分なボンディングを提供しなくてはならないが、支持から基板をピーリングするために力を加えることによる基板の除去を阻むほどには強くない。このための適切な接着剤は、MN St.Paulの3M Corp.からの「Super77」等の密着接着剤(contact adhesive)である。
【0014】
ステップ202において、導電性ポリマー後部電極106は、好ましくは印刷によって、基板104の前部表面118上に付加される。電極106は、一般的に、基板104全体を覆うシート層として付加されてもよく、あるいは、照らされるべき所望の領域のみを覆うために(すなわち、発光層110によって覆われる表面領域)基板表面118上に特定の配列でパターン化されてもよい。好ましくは、電極106は、約0.1から50ミクロン(1ミクロン=1×10−6メートル)の範囲の厚みの層を形成するためにスクリーン印刷によって付加され得るポリエチレン−ジオキシチオフェンから作られる。
【0015】
次に、誘電体層108は、ステップ203において、好ましくは印刷によって、後部電極106の上の基板表面118上に付加される。例えば、誘電体層108は、スクリーン印刷可能なインクを形成するために重合体接合剤内に分散するバリウムチタネート等の、高誘電定数を有する材料を含む。1より多くの誘電体層が、エレクトロルミネセントパネル102の他のコンポーネントから後部電極106をより絶縁し、かつ、短絡の危険性を低減するために印加され得る。さらに、より良好な絶縁性特性が誘電体から必要とされる場合、絶縁性コーティングは、ELパネル102の導電性コンポーネントの間の接触の危険性をさらに低減するために、誘電体層108を覆って印加され得る。後部電極106と同様に、誘電体層108は、基板表面全体、または、照らされることが望まれる領域だけを覆ってもよい。好ましくは、別の一方と接触した状態になる導電体層106、112、114からELパネル102の短絡の危険性を低減するために、誘電体層108は、約1/16インチから1/8インチによる照明領域を超えて基板表面118に沿って外側に伸びるように構成される。例示的な実施形態では、誘電体層108は、約15から40ミクロンの厚みを有して、基板表面118上に付加されてもよい。代替の実施形態では、発光層110が、誘電体材料の特性を示す発光ポリマー等の有機物材料である場合は、誘電体層108は、ELパネル102から取り除かれ得る。
【0016】
ステップ204において、発光層110は、好ましくは印刷によって、誘電体層108の上に基板表面118上に付加される。層110の表面領域面積は、エレクトロルミネセントパネル102(例えば、文字「L」、ロゴまたはアイコン画像等)のための照明領域を規定する。発光層110は、有機体(すなわち、発光ポリマー)または非有機物材料のどちらかで形成されてもよく、好ましくは、重合体接合剤内に分散する銅またはマンガンでドーピングされた硫化物亜鉛等のエレクトロルミネセント粒子の蛍光体層(約0.1から100ミクロンの厚みを有する)である。しかし、発光ポリマーおよび他の有機物は、非有機体照明材料と同じ大きさの照明電圧を必要としないので、選択される材料は、所望される照明の用途および導体にエネルギーを与えるために利用可能な電源に依存する。
【0017】
前部導電性ポリマー層112のために選択される導電性ポリマーは、発光層110によって供給される照明が観測者によってエレクトロルミネセントパネル102上に観測され得るように、光透過性(すなわち、透明または半透明)のものである。好ましくは、層112を形成する材料は、ポリエチレン−ジオキシチオフェンである。ステップ205において、導電性ポリマー層112は、発光層110の上に覆って基板表面118の上に付加される。導電性ポリマー層112は、少なくとも発光層110を覆うために基板表面118に沿って外側へ伸びるが、好ましくは、誘電体層108の周囲を超えない。これにより、導電性ポリマー層112は、電極106と連携して作用することにより、発光層の表面全体にわたって一定な電界を提供し、ELパネル102の平らな照明を確実にする。導電性ポリマー層112は、好ましくは、約0.1から100ミクロンの厚みを有し、かつ、好ましくは、印刷層112によって付加される。誘電体層108が、後部電極の周囲を実質的に越えて伸びる場合は、導電性層112は、後部電極106の周辺よりも長い距離で、誘電体層108に沿って外側に延び得る。
【0018】
ステップ206において、前部電極リード114は、前部導電性ポリマー層112と電気的に接触するように配置され、その層にエネルギーを伝達するように構成される。好ましい配置では、前部電極リード114は、実質的にまたは完全に導電性ポリマー層112の周囲に伸びて、電気的エネルギーが本質的に一様に層112にわたって分配されることを確実にする。この構成は、前部の中心から離れた電極として前部電極リード114を提供する。選択的に、導電性層112は、後部電極106の周囲を越えて伸びる場合は、前部電極リード114は、内側に配置された後部電極106と実質的に重ならないように、配置され得る。前部電極リード114は、典型的には、1/16インチから1/8インチの幅のあるストリップでありかつ導電性ポリマー層112の幅の約2〜20パーセントであり、導電性層112、誘電体層108、または、基板前部表面118の1つ以上を直接横たえるように配置され得る。好ましくは、前部電極リード114は、ELパネル照明の表示を妨害することなしにリード114が導電性ポリマー層112および発光層110と重なり合うようにする、ポリエチレン−ジオキシチオフェン等の透明な導電性ポリマーから作られ得る。好ましくは、リード114は印刷される。
【0019】
ステップ207において、導電性パッド116は、電源(示されない)からELパネル102へ電気的エネルギーを供給するために、前部電極リード114および導電性ポリマー後部電極106に電気的接続される。図5に示されるように、導電性パッド116は、基板104の周囲に対して伸びるリードテール115として、基板104上に印刷され得るか、または、電源もしくはコントローラとの接続を容易にするために基板を超えて伸びる相互接続タブとして、製造され得る。好ましくは、導電性パッド116は、信頼性のある電気導体を提供するために銀から作られる。
【0020】
基板104が繊維部位である好ましい局面では、照明ディスプレイシステム100はステップ208においてオーブンに配置され、約華氏200度で2.5分間硬化する。この温度は、エレクトロルミネセントパネル102コンポーネントの適切な硬化を確実にする一方で、繊維のファイバーを歪ませることも損傷を与えることもない。システム100は、次に、オーブンから取り出される。
【0021】
ステップ209において、基板が硬い支持に取り付けられる局面において、次に、好ましくは基板104を支持からピーリングすることによって、基板104は支持から取り除かれて、照明ディスプレイシステム100として統合ELパネル102および基板104をさらけ出す。
【0022】
選択的に、特定の透明領域および場合には不透明領域を有する背景層または標識基板(図示されない)は、特定の照明デザインを形成するために、第‘391号特許に教示されるようなELパネルの上に配置され得る。背景層は、例えば、多くのカラー印刷可能なインクから形成され得る。さらに、紫外線コーティングまたはウタレン層等の絶縁性保護層は、ELパネル102の上かつ基板後部表面120の上に置かれ得、照明ディスプレイシステム100の導電性要素と接触する状態になる人への感電の危険性を低減する。
【0023】
別の実施形態によると、導電性ポリマー後部電極106、前部導電性ポリマー層112、および、前部電極リード114のいくつかは、後部電極106、導電性層112、および、リード114の少なくとも1つが導電性ポリマーで形成されている限り、導電性ポリマー以外のほかの材料から形成され得る。例として、後部電極106は、重合体インク内に分散する銀またはカーボンの粒子などの導電性材料から作られ得る。すなわち、導電性層112は、インジウム−スズ−酸化物等の透明な導電性材料から作られ得る。リード114が、導電層112の重要な部分を覆わず、それにより、発光層112を取って放射された光を遮らない限りにおいては、前部電極リード114は、後部電極106と同一の材料から作られ得る。
【0024】
透明または半透明な導電性ポリマーから製造される全ての層を有する照明ディスプレイシステム100の上記の構造は、電気光学方向指示デバイスとして動作するデバイスを生み出すということが、さらに決定されている。図1に示される要素の配置を利用して、代替の実施形態では、半透明ディスプレイデバイス102は、まず導電性ポリマーフィルム層を基板104に付加して後部電極106を形成することによって、調整される。この実施形態では、基板は、ポリカーボネートフィルム等の非繊維材料、または、繊維のどちらかであり得る。誘電体層フィルム層108(例えば、ポリマーマトリクスに分散されるバリウムチタネート)は、その後、後部電極106の上面に配置され、前部導電性層112を形成する発光フィルム層110および導電性ポリマーフィルムの第2の層が続けられる。例示的な実施形態では、発光層110は、ポリマーマトリクス内に分散する銅またはマンガンでドーピングされた硫化亜鉛等のエレクトロルミネセント粒子の誘電体層を含む。後部電極106および前部導電性層112間に電圧(約400HZで約380ボルトp−pの方形波)を印加すると、デバイスは、図1の矢印130によって示される方向に最も発光する。
【0025】
ELパネルが照明のために電力が供給されている時、それにより透明または半透明の全ての層は少なくとも1つの方向で観測される。ディスプレイが、ハイコントラストで印刷された表面(例えば、ニュース印刷、地図等)上に前面を下して配置される場合に、印刷された画像は、誘電体を介してデバイスの背面から観ている観測者によって明らかに可視である。光は、観測者に向かって層の積み重なりを介して、対象の後部の表面から反射される。例えば、発光層110を照らさせるために、電源がエレクトロルミネセントパネル102に対して供給すると、前部導電性ポリマー層112がアイテム上で表面を下にして配置される場合に、システム100の下に位置するアイテムは、ELパネル102を介して照らされ、かつ、可視である。逆に、前部導電性ポリマー層112が、基板104の真下に配置されるアイテムに関連して表面を上にして配置される場合に、システム100は、光学的に不透明であり、ELパネル102を介したアイテムの観測を妨げる。本方法は、ポリカーボネートフィルム等の非繊維材料、および、繊維部位上にスクリーン印刷されるデバイスを製造するために適切である。このタイプの照明方法はまた、E−インク、または、ハイコントラストを有する他のエレクトロクロミックディスプレイデバイスのための光源として利用され得る。
【0026】
図3は、繊維基板部位のメタライゼーションを実行するプロセスステップを示す。一旦、メタライゼーションプロセスが完了すると、それにより、エレクトロルミネセントパネルの後部電極を形成し、残りのELパネルコンポーネントは、次いで、メタライズされた繊維部位上に構築され得、この結果、照明ディスプレイシステムを形成する。メタライゼーションプロセスにおいて利用するための適切な金属は、良好な電極としても機能し、かつ、標準的な無電解のプレーティングプロセスを利用して繊維上にコーティングされる能力をも有する金属である。このプロセスに適した金属の例は、銅、ニッケル、または、同様の特性を示す他の金属を含む。後部電極および他のELパネルコンポーネントが形成される基板として繊維を利用することにより、後部電極は、効果的に繊維ファイバーに効果的に結合することが可能になり、より統合された構造を形成する。適切な繊維または織物材料は、綿、ナイロン(例えば、リップ−ストップ(rip−stop))、ポリエステル、高密度ポリエチレン(例えば、DE WilmingtonのDuPont CompaneyのTyvek商標)等を含む。メタライゼーションプロセスは、無電極プレーティング槽および導体槽を利用して、繊維の部位と共に統合された所定の形状の薄く、柔軟な導電性の電極を形成する。
【0027】
1つの実施形態によると、言葉、ロゴ、アイコン等の画像は、ステップ301においてフィルム透明な物に生成される。この画像は、エレクトロルミネセントパネルによって照らされることが望まれる領域に対応する。選択される透明な物は、フォトグラフィックエマルジョンの中に画像を焼付けるために印刷デバイスにより利用され得るべきで、かつ、プラスチック、ポリカーボネート、および同様の材料から作られる透明な物を含み得る。例として、画像は、コンピュータグラフィックプログラムを利用して透明な物に形成され得る。
【0028】
ステップ302において、そこに画像を有するフィルム透明な物は、フォトグラフィックエマルジョンに焼き付けられ、その結果、画像は、スクリーンプリンタ等の印刷デバイスと共に利用され得る。
【0029】
ステップ303において、印刷デバイスは、繊維部位の上に配置され、触媒溶液は、繊維の表面に付加される。このように、触媒溶液は、所望の画像の形状で繊維部位上に配置される。尚、印刷デバイスの側のデバイスは、画像の形状の繊維に触媒溶液を付加するために利用される場合は、ステップ301および302は省略される。
【0030】
そこに触媒を有する繊維部位は、次いで、ステップ304において、無電解プレーティング槽に浸される。このステップにより、化学的還元を槽内で発生せることができる。繊維部位全体が槽内に浸される必要はなく、触媒を有する繊維部位の一部分のみが浸される。繊維部位は、次に、続いて取り除かれ、かつ、乾燥が許可される。
【0031】
ステップ305において、繊維部位および付加された触媒は、電極槽、好ましくは、銅、ニッケル、または、同様の導電性特性を示す他の金属等の金属粒子を含む水溶性溶液に浸される。金属粒子は、その後、槽を介して触媒まで移動し、画像の形状で繊維表面上に堆積される。無電解プレーティング槽と同様に、触媒を有する繊維部位の一部分だけを電極槽の中へ浸す必要がある。その後、繊維部位は、続いて取り除かれ、かつ、乾燥が許可される。
【0032】
これらのステップの結果として、繊維部位は、画像のパターン(すなわち、所望の照明領域)で、導電性である後部電極によって形成される。このプロセスから形成される後部電極は、典型的には、約0.1と100ミクロンとの間の厚みを有する。誘電体層を含むエレクトロルミネセントパネルの残りの層(誘電体層、発光層、透明電極層および前部電極リードを含む)は、導電性ポリマー照明ディスプレイに関して、図2のステップ203〜207において説明された後部電極上に形成され得る。さらに、透明な導電性層および前部電極層は、導電性ポリマー、または、透明な導電性層に対するインジウム−スズ−酸化物および前部電極リードに対する重合体結合剤内に分散する銀またはカーボン粒子等の、無機物のどちらかから作られ得る。さらに、紫外線コーティングまたはウレタン層等の絶縁性保護層は、ELパネルコンポーネントの上、かつ、繊維基板後部表面120の上に配置され得、照明ディスプレイシステム100の導電性要素に接触する状態の人の感電の危険性を低減する。電位が後部電極および前部電極リード間に印加される時、発光層は、後部電極によって形成される画像のパターンを照らす。このプロセスによって生産される後部電極は、柔軟であり、かつ、典型的な銀またはカーボン電極よりも容易に繊維に付加され得る。従って、そのような後部電極デザインは、繊維の製品に取り付けられたELパネルシステムの寿命を延長する。
(絶縁性層形成)
繊維基板部位のメタライゼーションのためのプロセスの実行に続いて、絶縁性層が繊維を封止するめに繊維基板部位に付加され得、一様な絶縁性を提供し、かつ、繊維部位上に形成されるエレクトロルミネセントパネルの感電または短絡の危険性を低減する。しかし、理解されるべきことは、絶縁性層形成プロセスは、上述の繊維メタライゼーションプロセス以外のほかのプロセスによって、そこに形成される後部電極を有する繊維部位と共に利用され得ることである。一旦、絶縁性層が繊維部位上に形成されると、誘電体層として機能し、残りのELパネルコンポーネントが照明ディスプレイシステムを形成するためにそこに構築されることを可能にする。このプロセスのための適切な繊維材料は、綿、ナイロン(リップ−ストップ)、ポリエステル、高密度ポリエチレン(例えば、DE WilmingtonのDuPont CompanyからのTyvek商標)等を含む。絶縁性層を形成するためのプロセスステップは、図4に示される。
【0033】
ステップ401において、そこに形成される後部電極を有する繊維部位は、電気泳動溶液を含む容器内に浸される。所望の場合、繊維部位全体は、電気泳動溶液内に浸され得、後部電極が配置される部分にだけではなく、繊維部位全体の上に絶縁性層を形成する。しかし、図6に示されるように、後部電極106のリードテール115の狭い領域(好ましくは、長さおよび幅が約0.25インチ)が、電気泳動溶液に曝されることを避けるために覆われるべきであり、導電性パッド116が後部電極106に電気的エネルギーを導くためにそこに取り付けられることを可能にする。
【0034】
対向電極は、ステップ402において、繊維部位に隣接する電気泳動溶液内に配置される。対向電極は、例えば、銅またはニッケル等の金属である任意の導電性材料から作られ得る。このように、電気泳動溶液容器は、そこに配置される2つの電極を有する。すなわち、繊維部位の後部電極および対向電極である。
【0035】
ステップ403において、DC電力供給(または電池)等の電圧源は、繊維部位の後部電極および対向電極に取り付けられる。1つの極性(すなわち、正または負)の第1のリードは、電圧源を後部電極に電気的に接続し、第1のリードの反対の極性の第2のリードは、電圧源を対向電極に電気的に接続する。第1のリードは、好ましくは、電気泳動溶液に曝されることから覆われているリードテール115の領域に接続する。
【0036】
ステップ404において、電圧源は、繊維部位後部電極および対向電極間の電位差を生成し、電気泳動溶液を介して電気的エネルギーの流れを発生させる。このプロセスは、絶縁保護コーティングを、繊維部位の少なくとも後部電極上、好ましくは、電気泳動溶液内に浸される繊維部位全体の上に堆積させる。絶縁コーティングは、典型的には、約0.1と100ミクロンの間の厚みで、繊維部位上に形成される。
【0037】
ステップ405において、繊維部位は、電気泳動溶液から取り除かれ、そして洗浄され、かつ、乾燥が可能になる。選択的に、紫外線コーティングまたはウタレン層等の絶縁保護層は、金属コーティングを有する領域の上の繊維の両側面上、または、繊維に触る人を感電から保護する導体上に形成され得る。
【0038】
絶縁保護コーティングは、繊維部位上にエレクトロルミネセントパネルを形成する際に、多くの利点を提供する。第1に、コーティングは、後部電極の統合性を維持し、繊維部位の前部および後部表面上の両方の電極等を電気的に絶縁し、それにより、繊維に触る人に対する感電の危険性を緩和する。また、コーティングは、電気泳動溶液内に浸される繊維部位全体を封止し得、それにより、一様な絶縁性を提供して、繊維上に形成されるELパネルの他の導電性要素からの短絡を排除する。さらに、本プロセスは、絶縁バリアが誘電体層として機能し得るELパネルの製造工程を短くし、それによって、発光層、透明な導電性層、および、前部電極リードは、導電性ポリマー照明ディスプレイに関して、図2のステップ204〜207で説明されるように、そこに付加される。さらに、メタライズされた繊維プロセスと同様に、透明な導電性層および前部電極層は、導電性ポリマー、あるいは、透明な導体に対するインジウム−スズ−酸化物、および、前部電極リードに対する重合体接合剤内に分散する銀もしくはカーボン粒子等の無機物のどちらかで作られ得る。電位が後部電極および前部電極リード間に印加される時、発光層は、後部電極によって形成される画像のパターンを照らす。
【0039】
従って、本発明は、先の記載の明白な目的の中から、上記に説明された目的を達成する。本発明の範囲から逸脱することなく、上記のシステムおよび方法において特定の改変が実施され得るので、上述の記載に含まれる全ての事項は説明のためであり、限定の意味ではないことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基板と統合される照明ディスプレイであって、
該繊維基板の前部表面の一部分上に形成される後部電極と、
該後部電極を実質的に覆って該繊維表面上に形成される誘電体層と、
該誘電体層上に形成される発光層と、
該発光層上に形成される導電性ポリマーを含む透明な導電性層と、
該透明な導電性層と電気的に接続され、該透明な導電性層にエネルギーを伝達する前部電極リードと
を備える、照明ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−164143(P2009−164143A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105745(P2009−105745)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【分割の表示】特願2002−575978(P2002−575978)の分割
【原出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【出願人】(503343680)ルミムーブ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】