説明

照明デバイス、および、該照明デバイスを備えた照明装置

【課題】簡易に配光特性を制御することができるコンパクトな照明デバイス、および、該照明デバイスを備えた照明装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る照明デバイス30は、光学レンズ1および光源2を備えている。光学レンズ1は、回転楕円体をその長軸に平行な面で切って得られる凸形状をしており、光出射面3aと、光入射面3bと、光出射面3aおよび光入射面3bを結ぶ底面4aとを有している。光源2から出射された光の光軸と、光出射面3aの凸形状の頂点と、光入射面3bの凹形状の頂点とは、切断した回転楕円体の切断面に直交する平面に含まれており、該平面において、光源2の光軸は、光出射面3aの凸形状の頂点と、光入射面3bの凹形状の頂点との間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路灯、防犯灯、街路灯、または、トンネル灯等に適用される照明デバイス、および、照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通安全および犯罪防止等のために、多数の照明装置が屋外に設置されている。例えば、道路灯あるいはトンネル灯等の道路照明においては、運転手が道路状態を確実に把握できること、また走行中に照明装置からの光によって視認性が妨げられるのを防ぐことを目的として、照明された道路の平均輝度、輝度の均斉度、および、グレア等に関する評価値が規定されている。
【0003】
一般に国内における道路灯は、設置高さおよそ7〜10m、設置間隔およそ30〜40mで使用される場合が多く、トンネル灯は、設置高さおよそ5m、設置間隔およそ12〜15mで使用される場合が多い。これらの照明装置に必要とされる配光の特徴としては、照明装置から±60°付近にピークを備え、かつ、±75°以上の光をカットするというような特性である。また、海外においても、各国の道路事情に応じた照明装置の特性が要求されている。このような配光特性を実現し、道路灯およびトンネル灯に要求される規定値のうち、より高い基準をクリアするためには、照明装置の配光を精密に制御する必要がある。
【0004】
照明装置の配光特性を制御するための技術として、特許文献1に記載の方法がある。特許文献1に記載の照明装置では、リフレクタと呼ばれる反射部材を使用して配光特性を制御し、水平方向の光度を大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−198205号公報
【特許文献2】特開2009−152169号公報
【特許文献3】特開2010−177028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の照明装置に関しては、以下のような課題がある。
【0007】
近年、省電力化および長寿命化の観点からLED光源を用いた照明装置が多数開発されている。LED光源を用いた照明装置においては、器具光束を確保するために多数のLED光源を並べて使用することが多く、光源面積が大きくなる。
【0008】
このような場合、特許文献1に記載された照明装置のように、リフレクタを用いて配光を制御しようとすると、光は様々な方向からリフレクタに入射するため、形状の設定が困難となるといった課題がある。また、この課題を避けるために、リフレクタおよびプリズムの面積を大きくして光源面積の比率を小さくした場合、照明装置が大型化してしまうという課題が生じる。
【0009】
ここで、上記のような照明装置の大型化を低減するための方法が特許文献2に記載されている。特許文献2に記載された照明装置は、光源と砲弾型のリフレクタとから構成される光源体を複数備えている。この照明装置では、リフレクタを光源ごとに設けることによって、照明装置の大型化を低減している。しかしながら、道路等に設置される照明装置では道路進行方向および幅方向における配光を制御することが重要となるため、特許文献2に記載された照明装置を道路灯あるいはトンネル灯等の道路照明として用いた場合、光源体の取り付け方法が複雑となる。また、1つの光源とリフレクタとを組み合わせた光源体は、全体の配光分布の一部にのみ寄与しており、LED光源のばらつきまたは故障等で配光分布が変化しやすいという問題がある。
【0010】
また、道路照明に用いる照明装置は、照明装置の取り付け角度が予め決まっている場合が多く、道路に対する照明装置の位置は一定ではない。これらの条件の下において、道路の明るさ、および、明るさの均一性を確保するには、なるべく理想配光に近い配光特性を実現することが必要であり、とりわけ道路の幅方向の配光を、照明装置の取り付け角度の調整以外の方法で制御することが重要となる。
【0011】
例えば、特許文献3には、広角配光を実現するための方法が記載されている。特許文献3に記載された照明装置は、扁平面および回転楕円体からなる光学レンズを備えており、1つの光源と光学レンズとの組み合わせによって広角配光を実現している。しかしながら、特許文献3に記載された照明装置を道路照明に用いた場合、道路の幅方向における配光の制御は十分ではなく、照明装置の取り付け角度ならびに設置位置が大きく制限されてしまう。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、簡易に配光特性を制御することができるコンパクトな照明デバイス、および、該照明デバイスを備えた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る照明デバイスは、上記の課題を解決するために、光源と、上記光源から出射された光が入射する入射面、および、上記入射面から入射した光を出射する出射面を有する光学レンズとを備え、上記出射面は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切断した際に得られる該回転楕円体の凸形状の表面であり、上記入射面は、上記出射面側に凹んでいる凹形状の面であり、上記切断した回転楕円体の切断面に直交する平面に、上記光源から出射された光の光軸と、上記出射面の凸形状の頂点と、上記入射面の凹形状の頂点とは含まれており、なおかつ、上記直交する平面において、上記光軸は、上記出射面の凸形状の頂点と、上記入射面の凹形状の頂点との間に位置することを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、本発明に係る照明デバイスを用いることによって、照明デバイスからの出射光を、光源の光軸方向よりも一方向側にシフトさせることができ、なおかつ、上記一方向に直交する他方向の広い領域を照明することができるようになる。特に、照明デバイスを道路灯あるいはトンネル灯等の道路照明に用いる照明装置に適用する場合は、照明デバイスの上記一方向が道路の幅方向となり、上記他方向が道路の進行方向(斜線軸方向)となるように設定することによって、道路の進行方向の照明範囲を広げることができる。そのため、照明装置を連結する灯具の設置間隔を広くすることができる。
【0015】
また、本来照明すべき道路の幅からはみ出す光についても、照明デバイスを用いることによって、道路を照明する有効な照明光に変換して利用することができるため、効率的な照明装置が実現できる。さらに、出射面および入射面の両面において、光度の強い光を偏向させることができるので、容易に大きな偏向角が得られる。これによって、道路の幅方向への照明光の制御の自由度が高まり、照明条件のよりきめ細かな調整が可能となる。この他、照明装置の設置角度が予め決まっている場合でも、光学レンズだけで道路の幅方向の照明度合いを変化させることができるため、所望の配光分布を得やすくなる。
【0016】
また、本発明に係る照明デバイスにおいて、光源面積が大きいアレイ状のLED光源を用いた場合においても、各LED光源に対応するように光学レンズが形成されるため、照明デバイスは大型にならない。結果、照明デバイスを搭載する照明装置の大型化を招くことなく、配光特性に優れた照明装置を実現することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る照明デバイスは、上記入射面は、上記出射面側に凹んでいる複数の凹部を互いに接合してなる凹形状の面であり、上記光軸と、上記入射面の凹形状の頂点とを含む平面で上記入射面を切断した際に、上記接合した複数の凹部の輪郭線は、少なくとも1つの微分不可能な点を有していることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、光源の光軸方向よりも一方向側を集中的に照明することができ、なおかつ、上記一方向に直交する他方向の広い領域を照明することができるようになる。したがって、2方向の配光特性のさらなる制御と最適化とが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る照明デバイスは、上記出射面には、上記切断した回転楕円体の切断面における長手方向と直交する平面に対して対称な形状を持つ突起部がさらに形成されていることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、突起部を通る光線は、突起部の斜面部分において全反射し、上記一方向に直交する他方向に沿った光線となる。したがって、2方向の配光特性のさらなる制御と最適化とが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る照明デバイスは、上記切断した回転楕円体の切断面における長手方向と、上記入射面を該切断面と平行な平面で切断した際の切断面における長手方向とは、互いに直交していることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、切断した回転楕円体の切断面における長手方向の光の拡散性は、入射面を該切断面と平行な平面で切断した際の切断面における長手方向の光の拡散性よりも高い。すなわち、両方向における配光特性とを制御し、最適化することができる。
【0023】
また、本発明に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、上述したいずれかの照明デバイスを使用していることを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、容易に配光特性を制御することができるコンパクトな照明装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の照明デバイスによれば、1つの光学レンズのみによって、一方向およびそれに直交する他方向の2方向の配光特性を制御し、その配光特性を最適化することができる。したがって、本発明に係る照明デバイスを備えた照明装置を用いれば、リフレクタ等を使用せずとも、道路灯あるいはトンネル灯等の道路照明に用いる照明装置として適した配光分布および照度を有する照明装置を実現することができる。
【0026】
また、光源が複数になって光源面積が大きくなった場合においても、本発明に係る照明デバイスはコンパクトであるため、本発明に係る照明デバイスを搭載した照明装置においては、装置の大型化を招くことなく優れた配光特性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の一形態に係る照明デバイスの外観を示す図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る照明デバイスの断面を示す図であり、(a)は、照明デバイスをx−z平面で切断した際の断面図であり、(b)は、照明デバイスをy−z平面で切断した際の断面図であり、(c)は、照明デバイスをx−y平面で切断した際の断面図である。
【図3】本発明の実施の一形態に係る照明デバイスにおける配光特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の一形態に係る照明装置の概略構成を示す斜視図であり、(b)は、本発明の実施の一形態に係る照明装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】(a)は、本発明の実施の一形態に係る照明装置の設置状態を示す図であり、(b)は、本発明の実施の一形態に係る照明装置と観察者との関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る照明デバイスの外観を示す図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る照明デバイスの断面を示す図であり、(a)は、照明デバイスをx−z平面で切断した際の断面図であり、(b)は、照明デバイスをy−z平面で切断した際の断面図であり、(c)は、照明デバイスをx−y平面で切断した際に、該照明デバイスを−z軸方向に向かって見たときの断面図であり、(d)は、照明デバイスをx−y平面で切断した際に、該照明デバイスを+z軸方向に向かって見たときの断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態に係る照明デバイスの外観を示す図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態に係る照明デバイスの断面を示す図であり、(a)は、照明デバイスをy−z平面で切断した際の断面図であり、(b)は、照明デバイスをx−y平面で切断した際の断面図である。
【図10】(a)は、本発明の他の実施の形態に係る照明装置の概略構成を示す斜視図であり、(b)は、本発明の他の実施の形態に係る照明装置の概略構成を示す断面図であり、(c)は、本発明の他の実施の形態に係る照明装置の光出射面を示す図であり、(d)は、本発明の他の実施の形態に係る照明装置の光出射面の一部を拡大した図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る照明装置における配光特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】(a)は、本発明の他の実施の形態に係る照明装置の設置状態を示す図であり、(b)は、本発明の他の実施の形態に係る照明装置と観察者との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を以下の実施の形態により詳細に説明する。なお、以下の説明においては、同一の機能および作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0029】
〔第1の実施の形態〕
(照明デバイスの構成)
まず本実施の形態に係る照明デバイスの構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る照明デバイス30の外観を示す図である。
【0030】
図1に示すように、照明デバイス30は、光学レンズ1および光源2を備えている。光学レンズ1は、光源2から出射された光を拡散させる部材である。この光学レンズ1は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切って得られる凸形状をしている。光学レンズ1においては、その切断面における長手方向を長軸とし、それに直交する方向を短軸とする。すなわち、光学レンズ1を互いに直交する2つの平面で切断したとき、光学レンズ1の輪郭線の曲率が大きい方の面に平行な軸が長軸であり、輪郭線の曲率が小さい方の面に平行な軸が短軸である。
【0031】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、図中に示すx軸、y軸、および、z軸を用いて各方向および各面を説明する。+x軸方向とは、図中に示すx軸の矢印方向であり、−x軸方向とは、図中に示すx軸の矢印方向とは反対の方向であり、いずれも光学レンズ1の長軸方向である。一方、+y軸方向とは、図中に示すy軸の矢印方向であり、−y軸方向とは、図中に示すy軸の矢印方向とは反対の方向であり、いずれも光学レンズ1の短軸方向である。また、+z軸方向とは、図中に示すz軸の矢印方向であり、−z軸方向とは、図中に示すz軸の矢印方向とは反対の方向であり、いずれも照明デバイスの光軸方向である。ここで言う光軸とは、光源2から出射される光の立体的な出射光束の中心軸である。
【0032】
そして、x−z平面とは、x軸およびz軸を含む平面であり、長軸を含み、なおかつ、短軸に垂直な平面である。一方、y−z平面とは、y軸およびz軸を含む平面であり、短軸を含み、なおかつ、長軸に垂直な平面である。また、x−y平面とは、x軸およびy軸を含む平面であり、長軸および短軸を含む平面である。
【0033】
照明デバイス30の断面図を図2に示す。図2の(a)は、照明デバイス30をx−z平面で切断した際の断面図であり、(b)は、照明デバイス30をy−z平面で切断した際の断面図であり、(c)は、照明デバイス30をx−y平面で切断した際の断面図である。
【0034】
図2(a)に示すように、光学レンズ1は、光出射面3aと、光入出射面3bと、底面4aとを有している。光入射面3bとは、光源2から出射された光が光学レンズ1へ入射する面を言う。また、光出射面3aとは、光源2から出射し、光入射面3bから入射した光が出射する面を言う。底面4aは、光出射面3aと光入射面3bとを結ぶ面である。
【0035】
上述したように、光学レンズ1は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切って得られる凸形状をしており、凸形状の表面が上記の光出射面3aである。また、光学レンズ1の底面4aには、光出射面3a側に凹んだ凹形状の凹部が形成されており、該凹部が上記の光入射面3bを形成している。この凹部は、x−y平面で切断した際の切断面における長手方向に伸びる軸(以下、長手軸と称す)が光学レンズ1の短軸と一致するように形成されている。すなわち、この凹部の長手軸と光学レンズ1の短軸とは、同じy−z平面内にある。一方、凹部の長手軸と直交する面あるいは軸は、光学レンズ1の長軸と平行となるように形成されているが、光学レンズ1の長軸よりも+y軸方向側あるいは−y軸方向側にずらして形成されている。すなわち、照明デバイス30をx−z平面から見た場合、光学レンズ1の頂点と、凹部の頂点とはいずれも図2(a)の点線A上に位置することになり、x軸上の位置が一致する。しかし、照明デバイス30をy−z平面から見た場合、光学レンズ1の頂点は図2(b)の点線B上に位置し、凹部の頂点は図2(b)の点線D上に位置することになり、y軸上の位置が一致しない。
【0036】
ここで、光源2は凹部のある領域、すなわち光入射面3bが囲む領域に配置されている。上述したように、光源2の光軸はz軸と平行しているが、y−z平面から見た場合に、光源2の光軸(図2(b)の点線C)が、光学レンズ1の頂点(図2(b)の点線B)と、凹部の頂点(図2(b)の点線D)との間に位置するように配置されている。すなわち、光源2の光軸と、光出射面3aの頂点と、光入射面3bの頂点とは、x−y平面(すなわち、回転楕円体の切断面、あるいは、底面4a)に直交する平面に含まれており、該平面において、光源2の光軸は、光出射面3aの頂点と、光入射面3bの頂点との間に位置する。
【0037】
(照明デバイスの各種部材)
光学レンズ1としては、例えば、アクリル樹脂の他、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、または、ガラス等を用いることが好ましい。しかし、特に限定はなく、可視光域において透明性がよく、透過率が大きい材料であれば好適である。また、本実施の形態に係る光学レンズ1のような形状であれば、射出成形等による方法で大量に製造することが可能である。
【0038】
一方、光源2としては、LEDを用いることができる他、半導体レーザー等の光源も適用可能であるが、特に限定はない。光源2の形状は、照明デバイス30と同様に、回転対称であってもよいし、回転対称ではなく直方体等の形状であってもよい。
【0039】
(光の入射および出射)
次に、光源2から光学レンズ1に入射される光の出射について説明する。
【0040】
図2(a)には、x−z平面における光線L1を示す。光源2から出射された光線L1は、光入射面3bから−x軸方向に入射し、光出射面3aから外部に出射される。光線L1は、光入射面3bの傾きによって光入射面3bにおいて−x軸方向に偏向され、さらに光出射面3aの傾きによって光出射面3aにおいても−x軸方向に偏向される。そのため、x−z平面から見た場合、光入射面3bから−x軸方向に入射した光は、光学レンズ1の作用により、全体的に−x軸方向に偏向された光となる。逆に、光入射面3bに+x軸方向に入射した光は、光学レンズ1の作用により、全体的に+x軸方向に偏向された光となる。したがって、x−z平面から見た場合、照明デバイス30の配光分布は、光学レンズ1がないときと比較して広角方向、より正確には±x軸方向の光度が強い配光分布となる。
【0041】
続いて、図2(b)には、y−z平面における光線L2を示す。光源2からそのまま+z軸方向に出射された光線L2は、光入射面3bから入射し、光出射面3aから出射される。光線L2は、光入射面3bの傾きによって光入射面3bにおいて+y軸方向に偏向され、さらに光出射面3aの傾きによって光出射面3aにおいても+y軸方向に偏向される。そのため、y−z平面から見た場合、光出射面3aからそのまま+z軸方向に出射された光は、光学レンズ1の作用により、全体的に+y軸方向に偏向された光となる。したがって、y−z平面から見た場合、照明デバイス30の配光分布は、光学レンズ1がないときと比較して広角方向、より正確には+y軸方向の光度が強い配光分布となる。
【0042】
次に、図2(c)には、x−y平面における光線L3を示す。光源2から出射された光線L3は、光入射面3bから+x軸方向に入射し、光出射面3aから出射される。光線L3は、光入射面3bの傾きによって光入射面3bにおいて+x軸方向に偏向され、さらに光出射面3aの傾きによって光出射面3aにおいても+x軸方向に偏向される。そのため、x−y平面から見た場合、光入射面3bから+x軸方向に入射した光は、光学レンズ1の作用により、全体的に+x軸方向に偏向された光となる。逆に、光入射面3bから−x軸方向に入射した光は、光学レンズ1の作用により、全体的に−x軸方向に偏向された光となる。したがって、x−y平面から見た場合、照明デバイス30の配光分布は、光学レンズ1がないときと比較して広角方向、より正確には±x軸方向の光度が強い配光分布となる。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係る照明デバイス30を用いることによって、照明デバイス30からの出射光を、光源2の光軸方向よりも+y軸方向側にシフトさせることができ、なおかつ、±x軸方向の広い領域を照明することができるようになる。特に、照明デバイス30を道路灯あるいはトンネル灯等の道路照明に用いる照明装置に適用する場合は、照明デバイス30の+y軸方向が道路の幅方向となり、±x軸方向が道路の進行方向(斜線軸方向)となるように設定することによって、道路の進行方向の照明範囲を広げることができる。そのため、照明装置を連結する灯具の設置間隔を広くすることができる。
【0044】
また、本来照明すべき道路の幅からはみ出す光についても、照明デバイス30を用いることによって、道路を照明する有効な照明光に変換して利用することができるため、効率的な照明装置が実現できる。さらに、光出射面3aおよび光入射面3bの両面において、光度の強い光を偏向させることができるので、容易に大きな偏向角が得られる。これによって、道路の幅方向への照明光の制御の自由度が高まり、照明条件のよりきめ細かな調整が可能となる。この他、照明装置の設置角度が予め決まっている場合でも、光学レンズ1だけで道路の幅方向の照明度合いを変化させることができるため、所望の配光分布を得やすくなる。
【0045】
なお、本実施の形態では、光出射面3aの長軸方向と、光入射面3bの長手軸方向とが互いに直交するように配置されているが、両方向が直交していなくとも十分に本発明の効果を奏することができる。しかし、両方向が直交していることによって、光学レンズ1の短軸方向に出射される光は、光軸から光学レンズ1の頂点側に傾いた方向に主に出射される。一方、光学レンズ1の長軸方向に出射される光は、左右対称に光が出射されることになり、短軸方向に出射される光よりも拡散性が高い。すなわち、光出射面3aの長軸方向における光の拡散性は、光入射面3bの長手軸方向における光の拡散性よりも高い。
【0046】
このように、本実施の形態に係る照明デバイス30によれば、1つの光学レンズ1のみによって、一方向およびそれに直交する他方向の2方向の配光特性を制御し、その配光特性を最適化することができる。したがって、本実施の形態に係る照明デバイス30を備えた照明装置を用いれば、リフレクタ等を使用せずとも、道路照明に用いる照明装置として適した配光分布および照度を有する照明装置を実現することができる。
【0047】
また、光源2が複数になって光源面積が大きくなった場合においても、本実施の形態に係る照明デバイス30はコンパクトであるため、照明デバイス30を搭載した照明装置においては、装置の大型化を招くことなく、優れた配光特性を実現することが可能となる。
【0048】
(照明デバイスの配光特性)
以下に、照明デバイス30における配光特性のシミュレーション結果を図3に示す。本図は、光学レンズ1の光出射面3aの±x軸方向(長軸方向)の幅を20mm、±y軸方向(短軸方向)の幅を13mmとし、±z軸方向(光軸方向)の高さを6.5mmとなるように設定した場合の結果である。なお、凹部の長軸方向の長さを7.7mm、短軸方向の長さを5.2mmとし、光軸方向の高さ(深さ)を3mmとしている。光学レンズ1の頂点と光軸との間隔、ならびに、凹部の頂点と光軸との間隔はそれぞれ1mmに設定した。
【0049】
図3では、光源2の配光特性として、ランバート分布を仮定した。図3は、光源2の光軸に対して垂直な平面(すなわち、x−y平面)上における配光特性を示しており、実線はx−z平面、破線はy−z平面の配光特性を示している。
【0050】
図3に示すように、照明デバイス30の配光特性は、x−z平面において、0°方向にピークを持つ配光特性となる。これは、光学レンズ1がない従来の照明装置においても同様である。しかし、照明デバイス30においては、光学レンズ1の作用によって光が±x軸方向に広げられるため、±55°付近にピークを持つような配光が実現されている。また、y−z平面においては、光学レンズ1の作用によって光が+y軸方向にシフトされるため、+20°付近にピーク位置がシフトしていることが分かる。
【0051】
(照明装置への適用例)
以下には、本実施の形態に係る照明デバイス30を照明装置に適用する場合の一具体例を示す。図4(a)は、照明デバイス30を備えた照明装置40の概略構成を示す斜視図である。図4(b)は、照明デバイス30を備えた照明装置40の概略構成を示す断面図である。
【0052】
図4(a)に示すように、照明装置40には、複数の照明デバイス30が搭載されている。複数の照明デバイス30は、基板14上にマトリクス状に配置されている。図4(a)には、一例として、照明デバイス30を1行(±x軸方向)当たり7個、1列(±y軸方向)当たり10個配置し、計70個の照明デバイス30を配置している例を示す。このときの合計光源光束は10000(lm)である。なお、図4(a)に示す照明装置40は一例であり、本実施の形態に係る照明装置40はこれに限定されるものではない。照明装置40に搭載する照明デバイス30の数、ならびに、光源光束については、照明装置40に要求される光束の大きさによって適宜変更することができる。
【0053】
照明装置40では、複数の照明デバイス30を備える基板14を筐体16内に格納しており、複数の照明デバイス30が筐体16の一面から露出するように配置されている。筐体16内には、複数の照明デバイス30と共に図示しない電源装置等も格納されている。ここで、図4(b)に示すように、照明装置40において、複数の照明デバイス30が露出している面には、カバーガラス13が貼り付けられている。このカバーガラス13は、照明装置40を屋外等で使用する場合に、雨およびほこり等から複数の照明デバイス30を保護することができる。筐体16もカバーガラス13と同様の役割を担っている。
【0054】
(照明装置の総合輝度均斉度、および、車線軸輝度均斉度)
上記の照明装置40を道路照明としてトンネル灯に適用した場合の総合輝度均斉度、および、車線軸輝度均斉度を測定した。測定条件は、図5に示す通りである。図5の(a)は、照明装置40の設置状態を示す図であり、(b)は、照明装置40と観察者23a,23bとの関係を示す図である。
【0055】
図5(a)に示すように、照明装置40をトンネル灯に適用する場合、照明装置40はトンネル42の内壁に配置され、道路22に対して平行ではなく、角度θだけ傾斜して配置される。今回は、照明装置40(正確には、照明デバイス30が搭載されている基板14)は、48°の角度(θ=48°)で配置した場合を想定する。
【0056】
なお、照明装置40は、図5(b)に示すように、±x軸方向が道路22の進行方向(車線軸方向)と平行になるようにした。また、照明装置40が連結される灯具の高さが5m、道路22の進行方向の間隔Dが15mとなるように、照明装置40を千鳥状に配置した。道路の幅Wは7mとした。本図では、照明装置40の配置が分かりやすいように、トンネル42を透過した状態で図示している。したがって、図中に示されている3つの照明装置40のうち、真ん中に位置する照明装置40は、観察者23aおよび観察者23bの間を隔てるようにトンネル42を半分に切断した際の観察者23b側の内壁に配置されている。それ以外の2つの照明装置40は、観察者23a側の内壁に配置されている。
【0057】
このときのトンネル灯の総合輝度均斉度、および、車線軸輝度均斉度の値を表1に示す。なお、表1に示す各値を得るために、道路22の反射率としてアスファルトの値を使用した。
【0058】
【表1】

【0059】
総合均斉度は、対象となる道路22から距離dだけ離れた観察者23aと観察者23bとのそれぞれの場所からみた場合の道路22の最小輝度/平均輝度を表している。また、車線軸輝度均斉度は、観察者23aの場合には、対象となる道路22において観察者23aからみた点線Eのライン上の輝度均一性、観察者23bの場合には、対象となる道路22において観察者23bからみた点線Fのライン上の輝度均一性をそれぞれ示す。なお、表1に示す値は、距離dが60mである場合を想定したときの値である。また、点線Eは照明装置40からW/4にあるラインであり、点線Fは照明装置40から3W/4にあるラインである。
【0060】
一般的に、トンネル灯においては、総合均斉度については0.4以上、また車線軸均斉度については0.6以上の値が要求されている。表1に示すように、照明装置40をトンネル灯に適用した場合、いずれの値も必要な値をクリアしていることが分かる。これは、本実施の形態に係る照明装置40においては、照明デバイス30が備える光学レンズ1によって、道路22の幅方向(+y軸方向)に光を偏向させることができるためであり、それによって基準値を大きく上回る均一性を得られるためである。
【0061】
したがって、以上で説明したように、本実施の形態に係る照明装置40においては、光学レンズ1によって、道路22の幅方向(±y軸方向)に異なる配光分布となるように配光特性を制御し、配光分布を最適化することができる。したがって、所望な配光分布を実現することができるため、道路照明において求められる仕様を高い水準でクリアすることができる高い性能を備えるトンネル灯を実現することができる。
【0062】
また、照明デバイス30において、光源面積が大きいアレイ状のLED光源を用いた場合においても、各LED光源に対応するように光学レンズ1が形成されるため、照明デバイス30は大型にならない。結果、照明デバイス30を搭載する照明装置40の大型化を招くことなく、配光特性に優れた照明装置40を実現することが可能となる。
【0063】
〔第2の実施の形態〕
(照明デバイスの構成)
まず本実施の形態に係る照明デバイスの構成について、図6を参照して説明する。図6は、本実施の形態に係る照明デバイス31の外観を示す図である。
【0064】
図6に示すように、照明デバイス31は、光学レンズ11および光源2を備えている。光学レンズ11は、光源2から出射された光を拡散させる部材である。この光学レンズ11は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切って得られる凸形状をしている。光学レンズ11においては、その切断面における長手方向を長軸とし、それに直交する方向を短軸とする。すなわち、光学レンズ11を互いに直交する2つの平面で切断したとき、光学レンズ11の輪郭線の曲率が大きい方の面に平行な軸が長軸であり、輪郭線の曲率が小さい方の面に平行な軸が短軸である。なお、以下の説明では、第1の実施の形態と同様に、説明の便宜上、図中に示すx軸、y軸、および、z軸を用いて各方向および各面を説明する。
【0065】
照明デバイス30の断面図を図7に示す。図7の(a)は、照明デバイス31をx−z平面で切断した際の断面図であり、(b)は、照明デバイス31をy−z平面で切断した際の断面図であり、(c)は、照明デバイス31をx−y平面で切断した際に、該照明デバイス31を−z軸方向に向かって見たときの断面図であり、(d)は、照明デバイス31をx−y平面で切断した際に、該照明デバイス31を+z軸方向に向かって見たときの断面図である。
【0066】
図7(a)および(b)に示すように、光学レンズ11は、光出射面3c,3dと、光入射面3d〜3fと、底面4bとを有している。光入射面3e,3fとは、光源2から出射された光が光学レンズ11へ入射する面を言う。また、光出射面3c,3bとは、光源2から出射し、光入射面3e,3fから入射した光が出射する面を言う。底面4bは、光出射面3c,3dと光入射面3e,3fとを結ぶ面である。
【0067】
上述したように、光学レンズ11は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切って得られる凸形状をしており、凸形状の表面が上記の光出射面3cである。また、光学レンズ11の凸形状の表面の一部に凸部が形成されており、該凸部の表面が上記の光出射面3dである。この凸部は、y−z平面に対して対称となるような形状をしている。
【0068】
また、光学レンズ11の底面4bには、光出射面3c側に凹んだ凹形状の2つの凹部が形成されており、該2つの凹部がそれぞれ上記の光入射面3e,3fを形成している。これらの凹部は接合しており、全体として2つで1つの凹部を形成している。この際、2つの凹部をy−z平面で切断した際、接合した2つの凹部の輪郭線は、少なくとも1つの微分不可能な点を有している。これらの凹部はその長手軸が光学レンズ11の短軸と一致するように形成されている。すなわち、これらの凹部の長手軸と光学レンズ11の短軸とは、同じy−z平面内にある。
【0069】
光入射面3eを形成する凹部は、+y軸方向に向かうにつれて、±x軸方向の幅が大きくなるような形状をしている。一方、光入射面3fを形成する凹部は、−y軸方向に向かうにつれて、+z軸方向の高さ(深さ)が大きくなり、その後再び+z軸方向の高さが小さくなるような形状をしている。ここで、上述したように、2つの凹部の対称面と光学レンズ11の短軸とは、同じy−z平面内にある。したがって、照明デバイス31をx−z平面から見た場合、光学レンズ11の頂点と、光入射面3fの頂点とはいずれも図7(a)の点線G上に位置することになり、x軸上の位置が一致する。しかし、照明デバイス31をy−z平面から見た場合に、光学レンズ11の頂点が図7(b)の点線H上に位置し、光入射面3fの頂点が図7(b)の点線J上に位置するように光入射面3fは形成されている。すなわち、光入射面3fの頂点は、光学レンズ11の頂点よりも−y軸方向側にずらして形成されており、該光学レンズ11の頂点とはy軸上の位置が一致しない。
【0070】
ここで、光源2は2つの凹部のある領域、すなわち光入射面3eおよび光入射面3fが囲む領域に配置されている。光源2の光軸はz軸と平行しているが、光入射面3eと光入射面3fとの境界面を通る。したがって、y−z平面から見た場合に、光源2の光軸(図7(b)の点線I)が、光学レンズ11の頂点(図7(b)の点線H)と、光入射面3fの頂点(図7(b)の点線J)との間に位置するように配置されている。
【0071】
ところで、照明デバイス31の光学レンズ11に適用可能な材料、ならびに、光源2に適用可能な光源は、第1の実施の形態と同様であるため、ここではそれらの説明を省略する。
【0072】
(光の入射および出射)
次に、光源2から光学レンズ11に入射される光の出射について説明する。
【0073】
図7(a)には、x−z平面における光線L4を示す。光源2から+x軸方向に出射された光線L4は、光入射面3fから入射し、光出射面3cから外部に出射される。光線L1は、光入射面3fの傾きによって光入射面3fにおいて+x軸方向に偏向され、さらに光出射面3cの傾きによって光出射面3cにおいても+x軸方向に偏向される。そのため、x−z平面から見た場合、光入射面3fに+x軸方向に入射した光は、光学レンズ11の作用により、全体的に+x軸方向に偏向された光となる。逆に、光入射面3fに+x軸方向に入射した光は、光学レンズ11の作用により、全体的に+x軸方向に偏向された光となる。したがって、x−z平面から見た場合、照明デバイス31の配光分布は、光学レンズ11がないときと比較して広角方向、より正確には±x軸方向の光度が強い配光分布となる。
【0074】
ところで、光入射面3eを通る光線も同様に広角化されるが、光入射面3fと比較して光入射面3eは緩やかな凹面であるため、光入射面3fを通る光線よりも偏向角度の小さな光線として出射される。
【0075】
続いて、図7(b)には、y−z平面における光線L5および光線L6を示す。光源2から−y軸方向に出射された光線L5は、光入射面3fから入射し、光出射面3cから出射される。光線L5は、光入射面3fの傾きによって光入射面3fにおいて+y軸方向に偏向され、さらに光出射面3cの傾きによって光出射面3cにおいては+y軸方向に偏向される。そのため、y−z平面から見た場合、光源2から−y軸方向に出射され、光入射面3fを通る光は、光学レンズ11の作用により、全体的に+y軸方向に偏向された光となる。
【0076】
一方、光源2から+y軸方向に出射された光線L6は、光入射面3eから入射し、光出射面3cから出射される。光線L6は、光入射面3eの傾きによって光入射面3eにおいて−y軸方向に偏向され、その後光出射面3cにおいてはほとんど偏向されずに光出射面3cから出射される。そのため、y−z平面から見た場合、光源2から+y軸方向に出射され、光入射面3eを通る光は、全体的に集光され、広がりが抑えられた光となる。
【0077】
次に、図7(c)には、x−y平面における光線L7を示す。光源2から−x軸方向に出射された光線L7は、突起部を通って光出射面3dから出射される。光線L7は、光出射面3dの斜面部分において全反射し、−x軸方向に沿った光線となって光出射面3dから出射される。逆に、光源2から+x軸方向に出射され、突起部を通る光線は、光出射面3dの斜面部分において全反射し、+x軸方向に沿った光線となって光出射面3dから出射される。このように、x−y平面から見た場合、光入射面3fから±x軸方向に入射し、光出射面3dの斜面部分において反射する光の一部は、光線L7のように該斜面部分において全反射し、±x軸方向に沿った光線となる。
【0078】
続いて、図7(d)には、x−y平面における光線L8を示す。光源2から−x軸方向に出射された光線L8は、光入射面3eから入射し、光出射面3cから外部に出射される。光線L8は、光入射面3eの傾きによって光入射面3eにおいて−x軸方向に偏向され、さらに光出射面3cの傾きによって光出射面3cにおいても−x軸方向に偏向される。そのため、x−y平面から見た場合、光入射面3eに−x軸方向に入射した光は、光学レンズ11の作用により、全体的に−x軸方向に偏向された光となる。逆に、光入射面3fに+x軸方向に入射した光は、光学レンズ11の作用により、全体的に+x軸方向に偏向された光となる。したがって、x−y平面から見た場合、照明デバイス31の配光分布は、光学レンズ11がないときと比較して広角方向、より正確には±x軸方向の光度が強い配光分布となる。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係る照明デバイス31を用いることによって、照明デバイス31からの出射光を、光源2の光軸方向よりも+y軸方向側にシフトさせることができ、なおかつ、±x軸方向の広い領域を照明することができるようになる。特に、光源2から−y軸方向に出射された光は光入射面3fを通過し、+y軸方向に大きく偏向され、広角化される。一方、光源2から+y軸方向に出射され、光入射面3eを通過する光には集光作用が働く。そのため、照明デバイス31から出射される光は、+y軸方向の領域を集中的に照明する照明光となる。
【0080】
このような照明デバイス31を道路灯あるいはトンネル灯等の道路照明に用いる照明装置に適用する場合は、照明デバイス31の+y軸方向が道路の幅方向となり、±x軸方向が道路の進行方向(斜線軸方向)となるように設定することによって、道路の進行方向の照明範囲を広げることができる。そのため、照明装置を連結する灯具の設置間隔を広くすることができる。
【0081】
また、光源2から出射する光を照明すべき領域に集中させることができるため、照明効率の高い照明装置を実現することができる。さらに、道路の幅方向にも照明範囲を変化させることができるので、照明条件のよりきめ細かな調整が可能となる。この他、照明装置の設置角度が予め決まっている場合でも、光学レンズ11だけで道路の幅方向の照明度合いを変化させることができるため、所望の輝度分布を得やすくなる。
【0082】
(照明装置への適用例)
以下には、本実施の形態に係る照明デバイス31を照明装置に適用する場合の一具体例を示す。照明デバイス31を照明装置に適用する際、例えば、図8に示すような照明デバイス31とは異なる照明デバイスと組み合わせて照明装置に適用してもよい。図8は、本実施の形態に係る照明デバイス32の外観を示す図である。
【0083】
図8に示すように、照明デバイス32は、光学レンズ12および光源2を備えている。光学レンズ12は、光源2から出射された光を拡散させる部材である。この光学レンズ12は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切って得られる凸形状をしている。光学レンズ12においては、その切断面における長手方向を長軸とし、それに直交する方向を短軸とする。すなわち、光学レンズ12を互いに直交する2つの平面で切断したとき、光学レンズ12の輪郭線の曲率が大きい方の面に平行な軸が長軸であり、輪郭線の曲率が小さい方の面に平行な軸が短軸である。なお、以下の説明では、第1の実施の形態と同様に、説明の便宜上、図中に示すx軸、y軸、および、z軸を用いて各方向および各面を説明する。
【0084】
照明デバイス32の断面図を図9に示す。図9の(a)は、照明デバイス32をy−z平面で切断した際の断面図であり、(b)は、照明デバイス32をx−y平面で切断した際の断面図である。
【0085】
図9(a)および(b)に示すように、光学レンズ12は、光出射面3gと、光入射面3hと、底面4cとを有している。光入射面3hとは、光源2から出射された光が光学レンズ12へ入射する面を言う。また、光出射面3gとは、光源2から出射し、光入射面3hから入射した光が出射する面を言う。底面4cは、光出射面3gと光入射面3hとを結ぶ面である。
【0086】
上述したように、光学レンズ12は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切って得られる凸形状をしており、凸形状の表面が上記の光出射面3gである。また、光学レンズ12の底面4cには、光出射面3g側に凹んだ凹形状の凹部が形成されており、該凹部が上記の光入射面3hを形成している。この凹部は、その長手軸が光学レンズ12の短軸と一致するように形成されている。すなわち、この凹部の長手軸と光学レンズ12の短軸とは、同じy−z平面内にある。また、この凹部は、図9(a)に示すように、+z軸方向の高さ(深さ)が略一定であるが、図9(b)に示すように、x−y平面から見た場合に、緩やかに湾曲した弧状の輪郭線を持つような形状をしている。
【0087】
ところで、照明デバイス32の光学レンズ12に適用可能な材料、ならびに、光源2に適用可能な光源は、第1の実施の形態と同様であるため、ここではそれらの説明を省略する。
【0088】
照明デバイス32においては、y−z平面から見た場合、図9(a)に示すような光線L9は、光源2から光入射面3hに+y軸方向に入射し、光出射面3gから外部に出射される。光線L9は、光入射面3hの傾きによって光入射面3hにおいて−y軸方向に偏向され、その後光出射面3gにおいてはほとんど偏向されずに光出射面3gから出射される。逆に、光源2から光入射面3hに−y軸方向に入射した光は、その後光出射面3gにおいてはほとんど偏向されずに光出射面3gから出射される。そのため、y−z平面から見た場合、光源2から出射される光は、全体的に集光され、広がりが抑えられた光となる。
【0089】
一方、x−y平面から見た場合、図9(b)に示すような光線L10は、光源2から光入射面3hに−x軸方向に入射し、光出射面3gから外部に出射される。光線L10は、光入射面3hの傾きによって光入射面3hにおいて−x軸方向に偏向され、さらに光出射面3gの傾きによって光出射面3gにおいても−x軸方向に偏向される。そのため、x−y平面から見た場合、光入射面3hに−x軸方向に入射した光は、光学レンズ12の作用により、全体的に−x軸方向に偏向された光となる。逆に、光入射面3hから+x軸方向に入射した光は、光学レンズ12の作用により、全体的に+x軸方向に偏向された光となる。しかし、照明デバイス32の光入射面3hは緩やかな凹面であり、また照明デバイス32は照明デバイス31が備えているような凸部を備えていないため、x−y平面から見た場合、照明デバイス32の配光分布は、照明デバイス32と比較して狭角な配光分布となる。
【0090】
以上のことから、照明デバイス31は、自身から離れた広範囲を照明することができるのに対して、照明デバイス32は、照明デバイス31と比較して自身から近い範囲を照明する。このような照明デバイス31および照明デバイス32を備えた照明装置を図10に示す。図10(a)は、照明デバイス31を備えた照明装置41の概略構成を示す斜視図である。図10(b)は、照明装置41の概略構成を示す断面図である。図10(c)は、照明装置41の光出射面を示す図である。図10(d)は、照明装置40の光出射面の一部を拡大した図である。
【0091】
照明装置41では、図10(c)に示すように、複数の照明デバイス31および複数の照明デバイス32が搭載されている。複数の照明デバイス31,32を備える基板14は、図10(a)に示すような筐体17内に格納されており、複数の照明デバイス31,32が筐体17の一面から露出するように配置されている。筐体17内には、複数の照明デバイス31,32と共に図示しない電源装置等も格納されている。ここで、照明装置41において、複数の照明デバイス31,32が露出している面には、カバーガラス13が貼り付けられている。
【0092】
複数の照明デバイス31,32は、基板14上において並列配置されている。図10(c)には、一例として、照明デバイス31および照明デバイス32を合わせて1列(±y軸方向)当たり20個配置し、それを7列並列配置して計140個の照明デバイス31,32を配置している例を示す。照明デバイス31の光学レンズ11のサイズと、照明デバイス32の光学レンズ12のサイズとは略同等であり、複数の照明デバイス31,32は一定のピッチで配置されている。このときの合計光源光束は10000(lm)である。
【0093】
ここで、図10(c)に示す領域15を拡大した図を図10(d)に示す。図10(d)に示すように、複数の照明デバイス31および複数の照明デバイス32はそれぞれ1列ごとに配置されており、照明デバイス31を配置した列と照明デバイス32を配置した列とは、互いに交互になるように配置されている。また、照明デバイス31を配置した列と、照明デバイス32を配置した列とは、配列ピッチの半分だけ互いにずれて配置されている。このように照明デバイス31を配置した列と、照明デバイス32を配置した列とをずらして配置することによって、照明デバイス31,32の充填率が高い場合でも、1つの照明デバイス31,32から出射された広角配光の光が、他の照明デバイス31,32の光学レンズ11,12によって遮蔽されるのを防ぐことができる。なお、配置の方法はこれに限らず、照明デバイス31と照明デバイス32とを交互に配置した列を並列配置してもよい。また、十分な配置面積をとることができる場合には、複数の照明デバイス31,32をマトリクス状に配置してもよい。
【0094】
上述したように、照明デバイス31では、光源2からの出射光は、光源2の光軸方向よりも+y軸方向側にシフトさせることができ、なおかつ、±x軸方向の広い領域を照明することができる。一方、照明デバイス32では、光源2からの出射光は全体的に集光され、広がりが抑えられた光となり、照明デバイス32と比較して±x軸方向の照射領域は狭い。したがって、照明装置41においては、照明デバイス31によって、照明装置41から離れた場所を広範囲に照明すると共に、照明デバイス32によって、照明装置41に近い範囲を照明することができる。このように、2つの異なる照明デバイス31,32を用いることによって、理想的な配光に近い配光分布を実現しやすくなる。
【0095】
なお、図10に示す照明装置41は一例であり、本実施の形態に係る照明装置41はこれに限定されるものではない。照明装置41に搭載する照明デバイス31,32の数、ならびに、光源光束については、照明装置41に要求される光束の大きさによって適宜変更することができる。
【0096】
(照明装置の配光特性)
以下に、照明装置41における配光特性のシミュレーション結果を図11に示す。本図は、光学レンズ11および光学レンズ12共に、光出射面3c,3gの±x軸方向(長軸方向)の幅を20mm、±y軸方向(短軸方向)の幅を13mmとし、±z軸方向(光軸方向)の高さを6.5mmとなるように設定した場合の結果である。なお、光入射面3eの長軸方向の長さを8.3mm、短軸方向の長さの最長部分を10mm、最短部分を4mmとし、光入射面3eと光入射面3fとの境界面の光軸方向の高さ(深さ)を3mmとしている。光出射面3cの頂点と光軸との間隔、ならびに、光入射面3fの頂点と光軸との間隔はそれぞれ1mmに設定した。また、図10(b)に示すように、照明デバイス31,32が搭載されている基板14は、水平方向に対して平行ではなく、角度φだけ傾斜して配置されている。今回は、基板14は、5°の角度(φ=5°)で配置した場合を想定する。
【0097】
図11では、光源2の配光特性として、ランバート分布を仮定した。実際には、照明デバイス31,32の1組の配光分布でこの配光は実現されており、この組み合わせが多数あることで冗長性が確保される。図11は、光源2の光軸に対して垂直な平面(すなわち、x−y平面)上における配光特性を示しており、実線はx−z平面、破線はy−z平面の配光特性を示している。
【0098】
図11に示すように、照明装置41の配光特性は、x−z平面において、0°方向にピークを持つ配光特性となる。これは、光学レンズ1がない従来の照明装置においても同様である。しかし、照明デバイス30においては、光学レンズ1の作用によって光が±x軸方向に広げられるため、±60°付近にピークを持つような配光が実現されている。また、y−z平面においては、光学レンズ1の作用によって光が+y軸方向にシフトされるため、+30°付近にピーク位置がシフトしていることが分かる。したがって、照明装置41の出射面はほぼ水平にも関わらず、出射される光は大きく偏向している。故に、照明装置41を道路照明として用いた場合、照明装置41の出射面を道路に対して略水平にしたとしても出射光を偏向することができ、理想配光に近い分布を実現することができる。
【0099】
(照明装置の総合輝度均斉度、および、車線軸輝度均斉度)
上記の照明装置41を道路照明として道路灯に適用した場合の総合輝度均斉度、および、車線軸輝度均斉度を測定した。測定条件は、図12に示す通りである。図12の(a)は、照明装置41の設置状態を示す図であり、(b)は、照明装置41と観察者23a,23bとの関係を示す図である。
【0100】
図12(a)に示すように、照明装置41を道路灯に適用する場合、照明装置41(正確には、照明デバイス31,32が搭載されている基板14)は道路22に対して平行ではなく、角度θだけ傾斜して配置される。今回は、照明装置41は、5°の角度(θ=5°)で配置した場合を想定する。
【0101】
なお、照明装置41は、図12(b)に示すように、±x軸方向が道路22の進行方向(車線軸方向)と平行になるようにした。また、照明装置41が連結される灯具の高さが10m、道路22の進行方向の間隔Dが40mとなるように、照明装置41を千鳥状に配置した。道路の幅Wは7mとした。
【0102】
このときの道路灯の総合輝度均斉度、および、車線軸輝度均斉度の値を表2に示す。表2に示す値は、道路22と観察者23a,23bとの距離dが60mである場合を想定したときの値である。なお、表2に示す各値を得るために、道路22の反射率としてアスファルトの値を使用した。
【0103】
【表2】

【0104】
一般的に、道路灯においては、総合均斉度については0.4以上、また車線軸均斉度については0.5以上の値が要求されている。表2に示すように、照明装置41を道路灯に適用した場合、いずれの値も必要な値をクリアしていることが分かる。これは、本実施の形態に係る照明装置41においては、照明デバイス31が備える光学レンズ11によって、道路22の幅方向(+y軸方向)に光を偏向させることができるためであり、それによって道路灯として必要な輝度均一性を確保できているためである。また、照明装置41においては、異なる光学レンズ11,12を備えた照明デバイス31,32を組み合わせることによって、配光分布を理想的な分布に近づけることが可能となっている。
【0105】
したがって、以上で説明したように、本実施の形態に係る照明装置41においては、道路22の幅方向への偏向角が特に大きい照明デバイス31と、光の偏向角が小さい照明デバイス32とを組み合わせることによって、道路22の幅方向の照度を綿密に制御することができる。またそれと同時に、広角領域にも十分に光を偏向可能な配光特性を確保しつつ、全体の配光分布を最適化することができる。これによって、道路照明に求められる仕様を高い水準でクリアできる高い性能を備える道路灯を実現することができる。
【0106】
また、照明デバイス31,32において、光源面積が大きいアレイ状のLED光源を用いた場合においても、各LED光源に対応するように光学レンズ11,12が形成されるため、照明デバイス31,32は大型にならない。結果、照明デバイス31,32を搭載する照明装置41の大型化を招くことなく、配光特性に優れた照明装置41を実現することが可能となる。
【0107】
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0108】
例えば、以上では各実施の形態に係る照明デバイスを備えた照明装置を道路灯あるいはトンネル灯に適用する例を挙げているが、必ずしもこれに限定されるわけではない。各実施の形態に係る照明デバイスおよび該照明デバイスを備える照明装置は、防犯灯、街路灯、公園灯、または、看板照明等の屋外照明、あるいは、その他の照明に幅広く用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、防犯灯、街路灯、道路灯、トンネル灯、公園灯、または、看板照明等の屋外照明、あるいは、その他の照明で使用する照明デバイスおよび該照明デバイスを備える照明装置に幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1,11,12 光学レンズ
2 光源
3a,3c,3d,3g 光出射面
3b,3e,3f,3h 光入射面
4a,4b,4c 底面
13 カバーガラス
14 基板
16,17 筐体
22 道路
23a,23b 観察者
30,31,32 照明デバイス
40,41 照明装置
42 トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
上記光源から出射された光が入射する入射面、および、上記入射面から入射した光を出射する出射面を有する光学レンズとを備え、
上記出射面は、回転楕円体をその長軸に平行な平面で切断した際に得られる該回転楕円体の凸形状の表面であり、
上記入射面は、上記出射面側に凹んでいる凹形状の面であり、
上記切断した回転楕円体の切断面に直交する平面に、上記光源から出射された光の光軸と、上記出射面の凸形状の頂点と、上記入射面の凹形状の頂点とが含まれており、なおかつ、上記直交する平面において、上記光軸は、上記出射面の凸形状の頂点と、上記入射面の凹形状の頂点との間に位置することを特徴とする照明デバイス。
【請求項2】
上記入射面は、上記出射面側に凹んでいる複数の凹部を互いに接合してなる凹形状の面であり、
上記光軸と、上記入射面の凹形状の頂点とを含む平面で上記入射面を切断した際に、上記接合した複数の凹部の輪郭線は、少なくとも1つの微分不可能な点を有していることを特徴とする請求項1に記載の照明デバイス。
【請求項3】
上記出射面には、上記切断した回転楕円体の切断面における長手方向と直交する平面に対して対称な形状を持つ突起部がさらに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の照明デバイス。
【請求項4】
上記切断した回転楕円体の切断面における長手方向と、上記入射面を該切断面と平行な平面で切断した際の切断面における長手方向とは、互いに直交していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の照明デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の照明デバイスを備えた照明装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−186019(P2012−186019A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48336(P2011−48336)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】