説明

照明光学装置及び投写型画像表示装置

【課題】スペックルノイズの影響による画像品位の低下を防ぐ
【解決手段】照明光学装置12Rは、レーザー光源51、第1及び第2集光レンズ52a,52b、レンズホルダ53a,53b、振動発生部54a,54b、オプティカルインテグレータ57、リレーレンズ59からなる。振動発生部54a,54bは、集光レンズ52a,52bを保持するレンズホルダ53a,53bをそれぞれX、Y方向に振動させる。レーザー光源51に設けられたレーザーダイオード60への通電によりレーザー光が照射されると、集光レンズ52a,52bの振動によって、レーザー光の照射位置は円の軌道を描いて常時変化する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学装置及び投写型画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりレーザーダイオードを光源として使用する照明光学装置が知られており、このような照明光学装置から照射されたレーザー光が液晶表示装置を透過させることにより画像をスクリーンに投写させる投写型画像表示装置が実用化されている。
【0003】
上述したようなレーザー光を使用する光学照明装置及びこれを用いた投写型画像表示装置では、レーザー光が原因となるスペックルノイズの発生が問題となっており、特に投写型画像表示装置では、スペックルノイズが発生時すると、スクリーンに透写される画像がチラついたり、画面に黒い斑点が表れた状態となり画像の品位が低下してしまう。そこで特許文献1及び2記載の表示装置では、照明光学装置を構成するレーザー光源、又は照明光学系を構成する光学部材を振動させることによって、照射されるレーザー光を振動させている。これによって、スペックルノイズを時間的に変化させて画像への影響を抑制している。
【特許文献1】特開2005−10772号公報
【特許文献2】特開2005−301164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の投影型表装置では、レーザー光源、又は導光手段の振動範囲の端部、すなわち、振動の上死点・下死点で移動方向を変えるときは、レーザー光源、又は導光手段は短時間停止しており、この短い停止時間中に照射されるレーザー光から生じるスペックルノイズの影響までは消し去ることができないので、画像品位が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、スペックルノイズの発生による画像への影響を防ぐことが可能な照明光学装置及び投写型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の照明光学装置は、レーザー光を発生するレーザー光源と、このレーザー光源からのレーザー光により被照射面を照明する照明光学系とからなる照明光学装置において、前記照明光学系は、光軸と略直交する方向に沿って移動自在に支持された第1及び第2の光学部材を少なくとも含み、前記第1及び第2の光学部材を互いに異なる第1および第2の方向に沿って振動させる振動発生手段を備えたことを特徴とする。なお、前記振動発生手段は、前記第1および第2の光学部材を、互いに異なる位相の振動波形で振動させることが好ましい。
【0007】
また、前記第1及び第2の方向は、互いに略直交する方向に設定されており、前記振動発生手段は、前記第1及び第2の光学部材を、同じ周期で且つ互いに90°位相が異なる振動波形で振動させることが好ましい。さらにまた、前記照明光学系は、前記第1及び第2の光学部材が振動したとき、前記レーザー光によって照明する位置を円の軌跡に沿って変化させることが好ましい。
【0008】
請求項5記載の投写型画像表示装置では、請求項1ないし4記載の前記照明光学装置と、前記照明光学装置からのレーザー光を入射させて画像光をスクリーンに照射させる画像生成手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の照明光学装置及び投写型画像表示装置によれば、光軸と略直交する方向に沿って移動自在に支持された第1及び第2の光学部材を少なくとも含む照明光学系と、第1及び第2の光学部材を互いに異なる第1および第2の方向に沿って振動させる振動発生手段とを備えているので、レーザー光の位置を常時変化させてスペックルノイズの発生による画像への影響を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、本発明を実施したリア方式の液晶プロジェクタ1は、筐体2の前面に、拡散透過型のスクリーン3が設けられ、その背面に投影された画像が前面側から観察される。筐体2の内部には、投射ユニット5が組み込まれ、その投射画像は、ミラー6、7で反射され、スクリーン3の背面に結像される。この液晶プロジェクタ1は、筐体2の内部にチューナー回路などのほか、ビデオ信号及び音声信号再生用の周知の回路ユニットが組み込まれ、投影ユニット5に画像生成手段として組み込まれた液晶表示素子にビデオ信号の再生画像を表示する。
【0011】
図2に投影ユニット5の構成を概略的に示す。この投影ユニット5には、透過型の三枚の液晶表示素子11R,11G,11Bが組み込まれ、フルカラーで画像投影を行うことができる。
【0012】
投影ユニット5の内部には、レーザーダイオードが組み込まれた照明光学装置12R,12G,12Bが設けられている。これらの光源12R,12G,12Bは、レーザーダイオードへの通電時にそれぞれ赤色光、緑色光、青色光を照射する。
【0013】
各々の液晶表示素子11R,11G,11Bは、例えばTFT液晶で構成され、その各々には、フルカラー画像を構成する赤色画像,緑色画像,青色画像が表示される。これらの液晶表示素子11R,11G,11Bから光学的に等距離となる位置に中心がくるように合成プリズム24が配置され、合成プリズム24の出射面に対面して投影レンズ25が設けられている。合成プリズム24は、その内部に2面のダイクロイック面24a,24bを有し、液晶表示素子11Rを透過してきた赤色光、液晶表示素子11Gを透過してきた緑色光、液晶表示素子11Bを透過してきた青色光を合成して投影レンズ25に入射させる。
【0014】
投影レンズ25は、その物体面位置が液晶表示素子11R,11G,11Bの出射面に一致し、像面位置がスクリーン3に一致するようにしてあるから、合成プリズム24で合成されたフルカラー画像はスクリーン3に結像されることになる。なお、図1に示すミラー6,7については、図面の煩雑化を避けるために省略した。
【0015】
以下では、本発明を実施した照明光学装置12Rについて説明する。なお、照明光学装置12G,12Bについても照明装置12Rと同様の構成としており、説明を省略する。照明光学装置12Rから照射された赤色光は、液晶表示素子11Rを背面側から照明する。
【0016】
図3に示すように、照明光学装置12Rは、レーザー光源51と、第1及び第2集光レンズ52a,52b(第1及び第2の光学部材)(照明光学系)と、レンズホルダ53a,53bと、振動発生部54a,54bと、オプティカルインテグレータ57、リレーレンズ59とからなる。第1及び第2の集光レンズ52a,52bは、レーザー光源51から発せられるレーザー光を所望の範囲にまんべんなく照射するための導光手段であるとともに、後述する振動発生部54a,54bから伝達される振動によってレーザー光を変化させる。集光レンズ52a,52bによって集光されたレーザー光は、オプティカルインテグレータ57の入射面から内部へ入射する。レンズホルダ53a,53bは、集光レンズ52a,52bをそれぞれ保持し、集光レンズ52a,52bの光軸と略直交する方向において移動自在に取り付けられている。オプティカルインテグレータ57は、内面に反射面が形成された角筒形状をしており、通過するレーザー光の出射面内の強度分布をそろえるとともに光束形状を被照射面形状、すなわちスクリーン3の形状と相似の長方形に成形する。リレーレンズ59は、入射したレーザー光を屈折させることによって被照射面を照明する。
【0017】
レーザー光源51は、レーザーダイオード60、ホルダ61、発光回路63とからなる。レーザーダイオード60は、半導体をレーザー媒体とした半導体レーザーであり、ホルダ61の内側に支持されている。レーザーダイオード60は、発光回路63と接続され、電源を供給されて赤色光を発光する。
【0018】
第1及び第2の振動発生部54a,54bは、それぞれ振動体65a,65bと、振動発生回路67a,67bとからなる。振動体65a,65bは、強誘電体の材料にて形成され、電圧を印可したときにこの材料に発生するひずみ(材料に発生する微少量の伸び縮み)により振動する。材料としては、例えば、チタン酸鉛(PbTiO3)とジルコン酸鉛(PbZrO3)を混合したセラミックスであるPZTが用いられる。振動体65a,65bは、レンズホルダ53a,53bに接するように設けられており、振動発生回路67a,67bと接続され、電圧を印可されることにより発生した振動をレンズホルダ53a,53bに伝達する。これによって、レーザーダイオード60から発生するレーザー光の位置が変化する。
【0019】
本実施形態では、第1及び第2の振動発生部54a,54bによって、第1及び第2の集光レンズ52a,52bを、互いに異なるX,Y方向に沿ってそれぞれ振動させる。X、Y方向は、集光レンズ52a,52bの光軸と略直交し、且つ互いに直交する方向に設定されている。
【0020】
さらに、第1の振動発生部54aによって第1の集光レンズ52aを振動させるときの時間と位置を示す関係は、図4に示すようになっており、第1の集光レンズ52aは、周期Tのsinカーブを描く振動波形で振動する。
【0021】
一方、第2の振動発生部54bによって第2の集光レンズ52bを振動させるときの時間と位置を示す関係は、図5に示すようになっており、第2の集光レンズ52bは、第1の集光レンズ52aと同じ周期Tで、且つ互いに90°位相の異なる振動波形、すなわち周期Tのcosカーブを描く振動波形で振動する。なお、第1及び第2の振動発生部54a,54bの振動周波数は、人間の目の視認速度(およそ30Hz以下といわれる)以上とすることが好ましく、数百〜数千Hzの振動周波数とすることがさらに好ましい。
【0022】
このように、第1の集光レンズ52aがX方向に沿って振動し、第2の集光レンズ52bがY方向に沿って振動することによって、これらの光学系によって照射されるレーザー光の位置は、図6に示すように、オプティカルインテグレータ57の入り口で円の軌跡(実線Rで示す位置)を描くように変化する。また、液晶プロジェクタ1を動作させるときには、照明光学装置12Rから照射される赤色のレーザー光と同様に、照明光学装置12G,12Bから照射される緑色、青色のレーザー光の位置も円の軌跡を描くように変化する。
【0023】
液晶プロジェクタ1では、レーザー光を照明に用いることにより、レーザー光のコヒーレンシーに起因してスクリーン3に表示される画像にはスペックルノイズが発生する。上述したように、レーザー光の位置が円の軌跡を描いて変化することから、スペックルノイズの位置も常時変化するので、スクリーン3上ではチラつきや斑点を視認しにくくなる。よって、スクリーン3に表示される画像は、スペックルノイズの影響を受けることがなく、高品位な画像を表示することができる。また、照明光学系を構成する集光レンズを振動させているので、振動発生部を小型に構成することが可能となり、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、第1及び第2の集光レンズ52a,52bを振動させることによって、レーザー光の位置を変化させているが、本発明はこれに限らず、レーザー光を液晶表示素子に照射させる照明光学系のいずれかを振動させればよく、例えば図7に示すように第1及び第2のリレーレンズ59a,59bを振動させるようにしてもよい。なお、この図7においては、上記実施形態と同様の部品を用いるものについては同符号を付して説明を省略する。そして、第1及び第2のリレーレンズ59a,59bを第1及び第2の振動発生部54a,54bから伝達される振動によってX,Y方向に沿ってそれぞれ振動させる。これによって、レーザー光の位置が円の軌跡を描いて変化するので、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】液晶プロジェクタを示す外観図である。
【図2】液晶プロジェクタの概略的な構成を示す説明図である。
【図3】照明光学装置を示す斜視図である。
【図4】第1の振動発生部による振動波形を示すグラフである。
【図5】第2の振動発生部による振動波形を示すグラフである。
【図6】オプティカルインテグレータ入り口のレーザー光が照射する位置の軌跡を示す説明図である。
【図7】照明光学装置の別の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 液晶プロジェクタ(投写型画像表示装置)
12R,12G,12B 照明光学装置
51 レーザー光源
52a 第1の集光レンズ
52b 第2の集光レンズ
54a 第1の振動発生部
54b 第2の振動発生部
60 レーザーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発生するレーザー光源と、このレーザー光源からのレーザー光により被照射面を照明する照明光学系とからなる照明光学装置において、
前記照明光学系は、光軸と略直交する方向に沿って移動自在に支持された第1及び第2の光学部材を少なくとも含み、前記第1及び第2の光学部材を互いに異なる第1および第2の方向に沿って振動させる振動発生手段を備えたことを特徴とする照明光学装置。
【請求項2】
前記振動発生手段は、前記第1および第2の光学部材を、互いに異なる位相の振動波形で振動させることを特徴とする制球項1記載の照明光学装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の方向は、互いに略直交する方向に設定されており、前記振動発生手段は、前記第1及び第2の光学部材を、同じ周期で且つ互いに90°位相が異なる振動波形で振動させることを特徴とする請求項1記載の照明光学装置。
【請求項4】
前記照明光学系は、前記第1及び第2の光学部材が振動したとき、前記レーザー光によって照明する位置を円の軌跡に沿って変化させることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の照明光学装置。
【請求項5】
請求項1ないし4記載の前記照明光学装置と、前記照明光学装置からのレーザー光を入射させて画像光をスクリーンに照射させる画像生成手段とを備えたことを特徴とする投写型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−3091(P2009−3091A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162576(P2007−162576)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】