説明

照明光通信システム用の送信装置

【課題】照明としての性能が高く、かつ通信速度が速い新規な照明光通信システムおよびこの照明光通信用システムに好適に適用可能な送信装置。
【解決手段】送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、照明用光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子26を含んで構成され、送信装置は、光透過性基板本体110と、有機エレクトロルミネッセンス素子と、光透過性基板本体および有機エレクトロルミネッセンス素子間に介在して配置され、かつ有機エレクトロルミネッセンス素子の発光を制御する光透過性制御回路28とを含み、光透過性制御回路は、光透過性基板本体の厚み方向の一方から見て、有機エレクトロルミネッセンス素子に重ねて配置される、照明光通信システム用の送信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光を利用してデータを伝送する照明光通信システム用の送信装置および照明光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速通信技術の進展とともに、光を伝送媒体として用いた屋内無線通信技術が利用されるようになってきた。特に、伝送媒体として赤外線を用いたLAN(Local Area Network)が、オフィスや家庭に普及してきている。
【0003】
しかしながら、赤外線を用いた無線データ通信では、送信装置と受信装置との間に存在する遮蔽物によって通信に支障が生じるという問題がある。また、信号電力が小さいため、データ通信が不安定になり易いという問題がある。
【0004】
前述した無線データ通信にかかる問題を解決する通信方式として、照明光を用いた通信方式(照明光通信)が考えられている。照明光の光源としては、化合物半導体系の白色発光ダイオード(以下、白色LED(LED:Light Emitting Diode)という場合がある)が用いられている。
【0005】
白色LEDを用いた照明は、蛍光灯といった従来の照明と比較して、長寿命、小型、低消費電力といった優れた特長を有している。非特許文献1および特許文献1には、このような白色LEDの特長に着目した照明光通信システムが開示されている。
【0006】
【非特許文献1】「可視光通信に適した変調方式の実験的検討」(信学技報IEICE Technical Report OCS2005-19(2005-5)第43〜48頁 社団法人 電子情報通信学会)
【特許文献1】特開2003−318836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
照明光通信装置には、通信装置に求められる特性と照明装置に求められる特性とを両立させることが要求される。通信としては高い伝送速度が求められており、照明としては高い輝度が求められている。従って、その光源には、例えば高い応答速度と高い輝度とを兼ね備えるものが求められている。
前述したように、蛍光灯などの照明と比較すると白色LEDは照明として優れた特徴を有している。しかしながら、照明光通信装置に用いられる白色LEDは、例えば半導体レーザと比較するとその応答速度が低い。特に照明装置に利用される白色LEDには、蛍光体を使用するタイプのものが主に用いられているが、蛍光体を使用するタイプの白色LEDは、蛍光体を用いないものと比較すると応答速度が低い。従って白色LEDを用いた従来の照明光通信では、伝送速度が必ずしも十分とはいえない。
そこで輝度と応答速度との両方を勘案すると、照明光通信装置用の光源として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という場合がある)を用いることを本願出願人は考案し、これにさらに検討を加えた。例えばアクティブマトリクス型の装置では、有機EL素子を駆動するトランジスタ素子や配線により構成される制御回路(駆動回路)が予め形成されたTFT基板上に有機EL素子が設けられている。有機EL素子の光を基板側から取り出すボトムエミッション型の装置では、有機EL素子からの光が制御回路によって遮られるので、基板の厚み方向からみて制御回路と有機EL素子とが重ならないように配置されている。そうすると有機EL素子を配置することのできる面積が制御回路の分だけ小さくなり、ひいては有機EL素子の開口率が小さくなるので、結果として照明装置としての輝度が小さくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、伝送速度が速く、かつ輝度が高い新規な照明光通信システム用の送信装置および照明光通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するために、本発明では、下記の構成を採用した。
〔1〕 送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、照明用光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子を含んで構成され、送信装置は、光透過性基板本体と、有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記光透過性基板本体および前記有機エレクトロルミネッセンス素子間に介在して配置され、かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光を制御する光透過性制御回路とを含み、該光透過性制御回路は、前記光透過性基板本体の厚み方向の一方から見て、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に重ねて配置される、照明光通信システム用の送信装置。
〔2〕 前記照明用光源は、それぞれの発光面積が10−8cmから10−1cmである複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える、〔1〕に記載の照明光通信システム用の送信装置。
〔3〕 前記照明用光源が、前記送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子と、非変調光を出射する照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える、〔1〕または〔2〕に記載の送信装置。
〔4〕 通信用の前記有機エレクトロルミネッセンス素子の前記発光層が、蛍光を発光する発光材料を用いて形成され、かつ照明用の前記有機エレクトロルミネッセンス素子の前記発光層が、リン光を発光する発光材料を用いて形成されてなる〔3〕に記載の送信装置。
〔5〕 前記光透過性制御回路は、光透過性半導体層を含む光透過性トランジスタ素子と、光透過性配線層とを備え、前記光透過性配線層が、主配線部と、該主配線部から分岐して前記光透過性トランジスタ素子に接続する副配線部とを含む、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の送信装置。
〔6〕 前記光透過性配線層が、無機酸化物導電体材料よりなる、〔5〕に記載の送信装置。
〔7〕 前記光透過性半導体層が、無機酸化物半導体材料よりなる、〔5〕または〔6〕に記載の送信装置。
〔8〕 前記光透過性配線層が、亜鉛錫酸化物またはインジウム含有酸化物から構成される導電体材料よりなり、前記光透過性半導体層が、前記光透過性配線層よりもキャリア濃度が低く、亜鉛錫酸化物またはインジウム含有酸化物から構成される半導体材料よりなる、〔5〕から〔7〕のいずれかに記載の送信装置。
〔9〕 前記光透過性配線層の一部分が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子における電極に相当する、〔5〕から〔8〕のいずれかに記載の送信装置。
〔10〕 前記光透過性制御回路は、光透過性絶縁層をさらに備え、前記光透過性配線層の一部分が、前記光透過性トランジスタ素子におけるゲート電極、ソース電極およびドレイン電極に相当し、かつ前記光透過性絶縁層の一部分が前記光透過性トランジスタ素子におけるゲート絶縁膜に相当する、〔5〕から〔9〕のいずれかに記載の送信装置。
〔11〕 変調光を出射する照明用光源を備える〔1〕から〔10〕のいずれかに記載の送信装置と、前記照明用光源から出射された前記変調光を受光して電気信号に変換し、当該電気信号を復調して受信データを生成する受信装置とを具備する、照明光通信システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の照明光通信システムにおいては、照明光通信システムの照明用光源として、高速応答性を特長とする有機EL素子を用いる。よって、従来の白色LEDを用いる場合と比較して伝送速度を顕著に高めることができる。また光透過性制御回路を用いるとともに、厚み方向の一方から見て有機EL素子を光透過性制御回路に重ねて配置することにより、有機EL素子の開口率を高めることができ、高輝度の照明用光源を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図を参照して、本発明の実施形態につき説明する。なお、各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお、以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。また、有機EL素子を備える装置においては電極のリード線等の部材も存在するが、本発明の説明にあっては直接的に要しないため記載を省略している。層構造等の説明の便宜上、下記に示す例においては基板を下に配置した図と共に説明がなされるが、本発明の有機EL素子およびこれを搭載した装置は、必ずしもこの配置で、製造または使用等がなされるわけではない。なお以下の説明において基板の厚み方向の一方を上または上方といい、厚み方向の他方を下または下方という場合がある。
【0012】
〈照明光通信システムの構成例(1)〉
図1を参照して、本発明の照明光通信システムの構成例につき説明する。図1は、照明光通信システムの構成を概略的に説明するブロック図である。
【0013】
図1に示すように、照明通信システム10は、送信装置20と受信装置30とを備えている。送信装置20は、照明用光源22を備えている。照明用光源22は、送信されるべき送信データに基づいて変調された変調光を出射する。変調光とは、点滅制御された光または光量制御された光をいい、変調方式としては、アナログ変調方式(AM、FMなど)、デジタル変調方式、パルス変調方式、およびスペクトラム拡散方式などが用いられる。
【0014】
照明用光源22は、それぞれが有機EL素子26を備える1または複数の発光ユニット24を含んで構成される。本実施の形態では照明用光源22は、1つの発光ユニット24を備える。また発光ユニット24は、該有機EL素子26に接続され、かつ当該有機EL素子26の動作を制御する制御回路28をさらに備える。制御回路28と有機EL素子26とは電気的に接続されている。
【0015】
有機EL素子26は、照明光のみ、または照明光および信号光の双方を生成して出射する。制御回路28は、有機EL素子26の動作を制御する。有機EL素子26および制御回路28の具体的な構成については後述する。
【0016】
受信装置30は、受光部32と復調部34とを備える。受信装置30は、照明用光源22から出射された変調光を受光して、受信データを生成する。
【0017】
受光部32は、図示しない光電変換装置を内蔵しており、受光した変調光を電気信号に変換する。復調部34は、受光部32によって光電変換された電気信号から、元のデータ(送信データ)を復調して受信データを生成する。
【0018】
送信装置20が受信装置30に対してデータを送信しない状態においては、照明用光源22をそのまま照明装置として利用することができる。
【0019】
送信装置20がデータを送信する場合には、送信すべきデータ、すなわち送信データが制御回路28に供給される。送信データの供給を受けた制御回路28は、供給されたデータに基づいて有機EL素子26の動作を制御する。
【0020】
こうして、送信データに対応して変調された変調光が有機EL素子26、すなわち発光ユニット24から出射される。有機EL素子26を高速に点滅させたり、その光量を高速で変化させたりしても、視覚的には感知されないので、通信用に使用したとしても有機EL素子26はほぼ一定の光量で光っているように見える。したがって、有機EL素子26から出射された変調光は、人に違和感を与えることなく、そのまま照明光としても利用することができる。
【0021】
〈照明光通信システムの構成例(2)〉
図2および図3を参照して、本発明の照明光通信システムの他の構成例につき説明する。
【0022】
1Gbps程度以上の大容量の伝送を行なうためには、送信装置20において多数の発光ユニット24を二次元的に配列し、これらを互いに並列的に動作させればよい。このような並列システムを従来のLEDを用いて実現するためには、多数のLEDを二次元的に配列し、分割器との配線接続を行なう必要があり、システムとして大型にならざるを得なかった。
【0023】
白色LEDに代えて有機EL素子を用いると、完成した個々の発光ユニット24を配線ボード上に後付けして配列するのではなく、例えば制御回路28が形成されたTFT(TFT:Thin Film Transistor)基板上に複数の有機EL素子26を直接的に作りこむことができ、発光ユニット24を二次元的に配置された集積デバイスを基板上に最初から製造できる。したがって、分割器などの他の素子を加えても非常にコンパクトな送信装置20を実現できる。
【0024】
図2および図3は、本発明の照明通信システムの構成例を概略的に説明するブロック図である。
【0025】
図2に示すように、照明光通信システム10は、図1を参照して既に説明した構成を基本として、有機EL素子26および制御回路28からなる発光ユニット24並びに受光部32の組を複数組備えている。送信装置20の照明用光源22において、複数の発光ユニット24は、二次元的に配置されている。また、制御回路28は、直列/並列変換回路29をさらに含み、受信装置30は、レンズ36と並列/直列変換回路38とをさらに含んでいる。
【0026】
なお、図示例の送信装置20および受信装置30において、直列/並列変換回路29を制御回路28に組み込む構成としたが、直列/並列変換回路29を、制御回路28の外部に設ける構成とすることもできる。この場合、直列/並列変換回路29から生成されるパラレル信号に基づいて、制御回路28が各有機EL素子26を制御してもよい。
【0027】
送信装置20の直列/並列変換回路29は、送信データであるシリアルデータを複数のパラレルデータに分割し、分割されたパラレルデータを個々の有機EL素子26にそれぞれに供給する。この送信装置20の直列/並列変換回路29の動作を含めた制御回路28の制御によって、各有機EL素子26は、各々に与えられるパラレルデータに基づいて、変調された変調光を出射する。出射された変調光は、レンズ36によって空間的に分離され、対応する各受光部32の光電変換装置において光電変換され、さらに変換された電子信号は図示しないA/Dコンバータによってデジタル化され、受信装置30の並列/直列変換回路38によってシリアルデータに変換される。復調部34は、このシリアルデータを復調することにより受信データを生成して出力する。
【0028】
このように、複数の有機EL素子26を並列的に駆動することによって、大容量のデータを高速で伝送することができる。
【0029】
図2に示した送信装置20において、有機EL素子26の制御(変調制御を含む)は、外部駆動回路としてのドライバICを用いて行ってもよい。図2に示した送信装置20においては、複数の有機EL素子26を単一の制御回路28で動作制御している。
【0030】
図3に示すように、複数の有機EL素子26それぞれを個別に制御する複数の制御回路28を、各有機EL素子26に対応させて接続する構成とすることもできる。この場合には、照明用光源22は、1つの有機EL素子26および1つの制御回路28を1組として一体的に形成した発光ユニット24を複数組備える。なお、複数の有機EL素子26を1つの構成単位とする素子群に、各有機EL素子26をグループ分けしたときに、同じ素子群に含まれる複数の有機EL素子26と該有機EL素子26に接続される制御回路28とからなる発光ユニット24群を、サブ光源23という場合がある。後述するように、サブ光源23ごとに発光を制御することにより、各有機EL素子26を素子群ごとに駆動することができる。このように1つの素子群に含まれる複数の有機EL素子26を単位として駆動することにより、素子群単位としての光強度(信号強度)が大きくなるので、例えばノイズの多い環境で使用する場合や各有機EL素子26の光量が少ない場合であっても、正確に信号を伝送することができ、エラービットレートの小さい照明用光通信システムを実現することができる。
【0031】
有機EL素子26と一体的に作り込まれる制御回路28の構成要素の一例としていわゆる薄膜トランジスタを用いることができる。薄膜トランジスタとしては、ポリシリコントランジスタ、アモルファスシリコントランジスタ、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ等が知られている。こうした薄膜トランジスタから構成される制御回路28と有機EL素子26とを一体的に形成することで、送信装置20の一層の小型化が可能になる。
【0032】
次に、図4を参照して、前述した照明光通信システム10の送信装置20の構成例として、いわゆるアクティブマトリクス型として構成された照明用光源22について説明する。
【0033】
アクティブマトリクス型とは、有機EL素子26および制御回路28を一体的に構成した発光ユニット24をマトリクス状に配列し、複数の有機EL素子26それぞれの駆動制御を有機EL素子26の近傍にそれぞれ作り込まれた制御回路28によって行うタイプをいう。
【0034】
図4は、本発明のアクティブマトリクス型の照明用光源を用いた照明光通信システムの概略的な説明図である。
【0035】
送信装置20が備える照明用光源22は、前述したように例えばTFTを構成要素とする制御回路28により有機EL素子26を駆動する、いわゆるアクティブマトリクス型の装置である。
【0036】
この照明用光源22には、m×n(記号「m」、「n」はそれぞれ自然数を表す)個の発光ユニット24が平面上においてm行n列のマトリクス状に配列される。すなわち格子縞の交点上に各発光ユニット24がそれぞれ配置される。
【0037】
照明用光源22は、それぞれが図4において行方向に延在するとともに、互いに列方向に間隔をあけて配置されるn本の走査線Yからなる走査線群Y1〜Ynを有する。
【0038】
また、照明用光源22は、列方向に延在するとともに、互いに行方向に間隔をあけて配置されるm本のデータ線Xからなるデータ線群X1〜Xmを有する。走査線群Y1〜Ynとデータ線群X1〜Xmとは、基板の厚み方向の一方から見て、格子縞を形成している。
【0039】
基板の厚み方向からみて、走査線Yとデータ線Xとにより形成される複数の交点近傍には、画素領域51が設けられており、各画素領域51に1つの発光ユニット24が配置されている。換言すると、複数の発光ユニット24が、画素領域51ごとにマトリクス状に配置されている。
【0040】
なお、本実施形態では、1つの有機EL素子26を含む1つの発光ユニット24を最小発光単位としているが、1つの発光ユニット24の発光領域を分割して、R(赤)、G(緑)、B(青)色光をそれぞれ出射する3つのサブ素子を構成してもよい。また、図4においては、それぞれの発光ユニット24に対して所定の電圧VddまたはVssを供給する電源線等が省略されている。
【0041】
図5、図6、図7および図8を参照して、発光ユニット24が備える制御回路28の好適な構成例につき説明する。
【0042】
有機EL素子26を用いてアクティブマトリクス型の照明用光源22を構成した場合には、有機EL素子の駆動方法は、電流プログラム方式および電圧プログラム方式の二種類に大別される。「電流プログラム方式」とは、データ線に対するデータの供給を電流レベルで行う方式をいい、図6の回路構成によって実現することができる。また「電圧プログラム方式」とは、データ線に対するデータの供給を電圧レベルで行う方法をいい、図5または図7の回路構成によって実現することができる。
【0043】
〈回路構成例(1)〉
図5は、本発明の送信装置および照明光通信システムの発光ユニットに適用して好適な制御回路の回路構成の一例を示す回路図である。
【0044】
本例の制御回路28は、有機EL素子26を発光させる期間の駆動信号GPの電圧レベルを共通電圧の電圧レベルよりも高くし、それ以外の期間における駆動信号GPの電圧レベルを共通電圧と同じかそれよりも低くすることで、有機EL素子26の発光または非発光の制御を行う。
【0045】
図5に示すように、発光ユニット24の制御回路28は、走査信号SELを供給する走査線Yおよびデータ電圧(信号)Vdataを供給するデータ線Xの双方に電気的に接続されている。以下の説明において、走査線Yおよびデータ線Xを基板の厚み方向の一方から見たときに相互に格子縞を形成するように行列方向に延伸する主たる配線部分を主配線部と称する。また、主配線部から分岐して、トランジスタやキャパシタといった構成要素に接続される配線部分を副配線部部と称する。さらに、これら構成要素間を接続する配線についても副配線部と称する。
【0046】
有機EL素子26を除く制御回路28は、いわゆるスイッチングトランジスタであるトランジスタT1と、駆動トランジスタであるトランジスタT2と、データ保持手段であるキャパシタCとを含んでいる。
【0047】
トランジスタT1は、例えばn型のTFTである。トランジスタT1のソース電極は、データ線Xの主配線部から分岐する副配線に電気的に接続される。
【0048】
トランジスタT2は、例えばn型のTFTである。トランジスタT2のドレイン電極に電気的に接続されている副配線には駆動信号GPが入力される。トランジスタT2のソース電極は、副配線を経て有機EL素子26の陽極に電気的に接続される。
【0049】
トランジスタT1のドレイン電極は、副配線を経てトランジスタT2のゲート電極に電気的に接続される。また、トランジスタT1のゲート電極は、走査線Yの主配線部から分岐する副配線に電気的に接続される。
【0050】
キャパシタCの一方の端子には、トランジスタT1のドレイン電極およびトランジスタT2のゲート電極が副配線を経て電気的に共通接続される。キャパシタCの他方の電極および有機EL素子26の陰極には基準電圧(接地電圧Vss)が印加される。
【0051】
トランジスタT1は、走査信号SELの電圧レベル(走査制御電圧Vg)により、データ線XおよびトランジスタT2のゲート電極間、並びにデータ線XおよびキャパシタC間を導通または遮断する。
【0052】
〈回路構成例(1)における動作〉
図8を参照して、図5を参照して説明した発光ユニット24の動作につき説明する。図8は、発光ユニット24の動作タイミングチャートである。
【0053】
以下の動作説明において、走査線駆動回路42(図4)による走査線Y1から走査線Ynの線順次走査によって、所定の発光ユニット24の選択が開始されるタイミングをt0とする。また、発光ユニット24の選択が次に開始されるタイミングをt2とする。期間t0〜t2は、前半のプログラミング期間t0〜t1と、後半の駆動期間t1〜t2とに分けられる。
【0054】
まず、タイミングt0において、所定の走査線Yに、走査線信号SELが入力される。すると、走査線Yは、高レベル(以下、Hレベルという場合がある)に立ち上がり、トランジスタT1がオン状態となる。よって、データ線Xに供給されたデータ電圧Vdataが、トランジスタT1を介して、キャパシタCの一方の電極に印加される。
【0055】
これにより、データ電圧Vdata相当の電荷がキャパシタCに蓄積される(送信データが書き込まれる)。走査線Yの電圧レベルが低レベル(以下、Lレベルという場合がある)となってトランジスタT1が完全にオフ状態となった後から次に電圧レベルがHレベルになってトランジスタT1がオン状態となると共に次のデータ信号が入力されるまでの間、トランジスタT2のゲート電極に印加される電圧をキャパシタCは維持する働きをする。すなわち、キャパシタCは、所定の期間、データ線Xに入力されたデータを保持する。
【0056】
また、トランジスタT2がオン状態となり、駆動信号GP入力信号線および有機EL素子26間が導通する。なお、タイミングt0からタイミングt1までの期間において、駆動信号GPの入力信号線はLレベルに維持される。したがって、前半の期間t0〜t1において、有機EL素子26は発光しない。
【0057】
前半の期間t0〜t1に続く後半の期間t1〜t2では、キャパシタCに蓄積された電荷によりトランジスタT2がオン状態となる。期間t1〜t2では、入力される駆動信号GPに応じて有機EL素子26が発光する。
【0058】
タイミングt1では、走査信号SELがLレベルに立ち下がる。これにより、トランジスタT1がオフする。よって、キャパシタCの一方の電極に対するデータ電圧Vdataの印加が停止するが、キャパシタCの蓄積電荷によって、トランジスタT2のゲート電極にはゲート電圧Vg相当が印加される。
【0059】
タイミングt1における走査信号SELの立ち下がりと同期して、それ以前はLレベルだった駆動信号GPは、Hレベルに立ち上がる。
【0060】
これにより、駆動信号GPが入力される信号線は、次の選択が開始されるタイミングt2に至るまでHレベルが維持される。よって、駆動電流の電流経路が形成される。これにより、有機EL素子26は、キャパシタCに保持されていた送信データに基づいて発光する。
【0061】
〈回路構成例(2)〉
図6は、回路構成例(2)にかかる制御回路28を示す回路図である。いわゆる電流プログラム方式の回路構成例である。
【0062】
図6に示すように、制御回路28は、4つのトランジスタT1、T2、T3およびT4、送信データを保持するデータ保持手段であるキャパシタC、電源電圧(供給手段)Vdd、基準電圧(供給手段)Vss並びにこれらを互いに接続する信号線を含んでいる。
【0063】
図6に示す構成例では、トランジスタT1、T2およびT4をnチャネル型トランジスタとし、トランジスタT3をpチャネル型トランジスタとしてある。
【0064】
トランジスタT1のゲート電極は、走査信号SELが供給される所定の1本の走査線Yに電気的に接続されている。トランジスタT1のソース電極は、データ電流Idataが供給される所定の1本のデータ線Xに電気的に接続されている。トランジスタT1のドレイン電極は、トランジスタT2のソース電極に電気的に接続されている。
【0065】
トランジスタT1のドレイン電極およびトランジスタT2のソース電極は、プログラミングトランジスタであるトランジスタT3のドレイン電極およびトランジスタT4のドレイン電極に電気的に共通接続されている。
【0066】
トランジスタT2のゲート電極は、トランジスタT1のゲート電極と同じく、走査信号SELが供給される走査線Yに電気的に共通接続されている。トランジスタT2のドレイン電極は、キャパシタCの一方の電極と、トランジスタT3のゲート電極とに電気的に共通接続されている。
【0067】
キャパシタCの他方の電極には電源電圧Vddが印加されている。また、トランジスタT3のソース電極には、電源電圧Vddが印加されている。キャパシタCの他方の電極とトランジスタT3のソース電極とには、電源電圧Vddが印加されている。
【0068】
トランジスタT4のゲート電極には駆動信号GPが入力される。トランジスタT4のドレイン電極には有機EL素子26のアノード(陽極)が電気的に接続されている。また、有機EL素子26のカソード(陰極)には、電源電圧Vddよりも低電圧である基準電圧Vssが印加されている。
【0069】
〈回路構成例(2)の動作〉
図8を参照して、図6を参照して説明した発光ユニット24の動作につき説明する。
前半のプログラミング期間t0〜t1では、キャパシタCに対する送信データの書き込みが行われる。まず、タイミングt0において、走査信号SELが走査線Yに入力される。これにより、走査線YがHレベルに立ち上がる。スイッチング素子として機能するトランジスタT1およびT2が共にオン(導通)する。すると、データ線XとトランジスタT3のドレイン電極とが電気的に接続される。これにより、トランジスタT3は、自己のゲート電極と自己のドレイン電極とが電気的に接続されたダイオード接続となる。
【0070】
トランジスタT3は、データ線Xより供給されたデータ電流Idataを自己のチャネルに流す。これにより、データ電流Idataに応じた電圧がゲート電圧Vgとして発生する。トランジスタT3のゲート電極に接続されたキャパシタCには、発生したゲート電圧Vgに応じた電荷が蓄積される。これにより、キャパシタCには、蓄積された電荷量に相当するデータ(送信データ)が書き込まれる。
【0071】
プログラミング期間t0〜t1において、トランジスタT3は、自己のチャネルを流れるデータ信号に基づいて、キャパシタCに対するデータの書き込みを行うプログラミングトランジスタとして機能する。また、この期間中、駆動信号GPが低レベルに維持されているため、トランジスタT4はオフ(非導通)のままである。したがって、有機EL素子26に対する駆動電流の経路はトランジスタT4により遮断される。よって、有機EL素子26は発光しない。
【0072】
続く駆動期間t1〜t2では、駆動電流が有機EL素子26を流れ、有機EL素子26の輝度の設定が行われる。まず、タイミングt1において、走査信号SELがLレベルに立ち下がり、トランジスタT1およびT2がいずれもオフする。これにより、データ電流Idataが供給されるデータ線XとトランジスタT3のドレイン電極とが電気的に分離され、トランジスタT3のゲート電極とドレイン電極との間も電気的に分離される。
【0073】
トランジスタT3のゲート電極には、キャパシタCの蓄積電荷に応じたゲート電圧Vgが印加され続ける。タイミングt1における走査信号SELの立ち下がりと同期(同一タイミングであるとは限らない)して、それ以前はLレベルだった駆動信号GPがHレベルに立ち上がる。
【0074】
これにより、電源電圧Vddから基準電圧Vssに向かって、トランジスタT3およびT4と有機EL素子26とに連なる駆動電流の経路が形成される。有機EL素子26を流れる駆動電流は、トランジスタT3のチャネル電流に相当し、その電流レベルは、キャパシタCの蓄積電荷に基づくゲート電圧Vgによって制御される。
【0075】
駆動期間t1〜t2において、トランジスタT3は、有機EL素子26に駆動電流を供給する駆動トランジスタとして機能する。結果として、有機EL素子26は、この駆動電流に基づいて、換言すれば、キャパシタCに保持されたデータに基づいて変調された発光強度で発光する。
【0076】
〈回路構成例(3)〉
図7は回路構成例(3)にかかる制御回路28を示す回路図である。いわゆる電圧プログラム方式の回路構成例である。
【0077】
電圧プログラム方式についても、送信装置の全体的な構成については既に説明した通りである。しかしながら、この場合には、データ電圧(信号)Vdataをデータ線Xにそのまま出力するため、データ線Xに電気的に接続されているデータ線駆動回路44(図4)の可変電流源が不要になる。ここでは、いわゆるCC(Conductance Control)法と称される構成例につき説明する。
【0078】
図7に示すように、発光ユニット24は、有機EL素子26、トランジスタT1、T4およびT5、データ保持手段であるキャパシタC、電源電圧(供給手段)Vdd、基準電圧(供給手段)Vss並びにこれらを互いに接続する信号線を含んでいる。図7にはトランジスタT1、T4およびT5を、すべてnチャネル型とした例を示してある。
【0079】
いわゆるスイッチングトランジスタであるトランジスタT1のゲート電極は、走査信号SELを供給する所定の走査線Yに電気的に接続されている。トランジスタT1のドレイン電極は、データ電圧(信号)Vdataを供給する所定のデータ線Xに電気的に接続されている。トランジスタT1のソース電極は、データ保持手段であるキャパシタCの一方の電極に電気的に接続されている。
【0080】
トランジスタT1のソース電極とキャパシタCの一方の電極とは、いわゆる駆動トランジスタであるトランジスタT4のゲート電極に、電気的に共通接続されている。
【0081】
キャパシタCの他方の電極には基準電圧Vssが印加されている。また、トランジスタT4のドレイン電極には電源電圧Vddが印加されている。トランジスタT4のソース電極は、いわゆる制御トランジスタであるトランジスタT5のドレイン電極に電気的に接続されている。
【0082】
トランジスタT5には、駆動信号GPが入力される。トランジスタT5は、駆動信号GPによって導通制御される。トランジスタT5のソース電極は、有機EL素子26のアノードに電気的に接続されている。この有機EL素子26のカソードには、基準電圧Vssが印加されている。
【0083】
前述した構成例では、データを保持する回路要素、すなわちデータ保持手段の好適例として、キャパシタを用いる例を説明したが、キャパシタの代わりに、多ビットのデータを記憶可能なメモリ装置(SRAM等)を用いることもできる。
【0084】
〈回路構成例(3)の動作〉
図8を参照して、図7を参照して説明した発光ユニット24の動作につき説明する。
【0085】
まず、タイミングt0において、所定の走査線Yに、走査線信号SELが入力される。すると、走査線Yは、Hレベルに立ち上がり、トランジスタT1がオンする。よって、データ線Xに供給されたデータ電圧Vdataが、トランジスタT1を介して、キャパシタCの一方の電極に印加される。
【0086】
これにより、データ電圧Vdata相当の電荷がキャパシタCに蓄積される(送信データが書き込まれる。)。なお、タイミングt0からタイミングt1までの期間において、駆動信号GPはLレベルに維持される。よって、制御トランジスタT5はオフのままである。したがって、有機EL素子26に対する駆動電流の電流経路が遮断されるため、前半の期間t0〜t1において、有機EL素子26は発光しない。
【0087】
前半の期間t0〜t1に続く後半の期間t1〜t2では、キャパシタCに蓄積された電荷に応じた駆動電流が有機EL素子26を流れる。これにより、有機EL素子26が発光する。タイミングt1では、走査信号SELがLレベルに立ち下がる。
【0088】
これにより、トランジスタT1がオフする。よって、キャパシタCの一方の電極に対するデータ電圧Vdataの印加が停止するが、キャパシタCの蓄積電荷によって、トランジスタT4のゲート電極にはゲート電圧Vg相当が印加される。タイミングt1における走査信号SELの立ち下がりと同期して、それ以前はLレベルだった駆動信号GPは、Hレベルに立ち上がる。
【0089】
これにより、発光ユニット24の次の選択が開始されるタイミングt2に至るまでHレベルが維持される。よって、駆動電流の電流経路が形成される。これにより、有機EL素子26は、キャパシタCに保持されたデータに基づいて変調された発光強度で発光する。
【0090】
図4を参照して既に説明したように、照明用光源22を駆動するための駆動回路は、走査線駆動回路42とデータ線駆動回路44とによって構成されており、両者は、図示しない上位装置による同期制御下、互いに協働して動作する。
【0091】
走査線駆動回路42は、シフトレジスタ、出力回路等を主体に構成されており、走査線Y1〜Ynに走査信号SELを出力することによって、走査線Y1〜Ynを所定の選択順序で順番に選択する線順次走査を行う。走査信号SELは、HレベルまたはLレベルの2値的な信号レベルをとり、データの書込対象となる行(走査線Yの1ラインに接続される複数の発光ユニット24群)に対応する走査線YはHレベルとされ、これ以外の走査線YそれぞれはLレベルとされる。
【0092】
そして、1垂直走査期間(1F)において、所定の選択順序で、それぞれの行が順番に選択されていく。なお、走査線駆動回路42は、走査信号SEL以外に、トランジスタを導通制御する駆動信号GP(またはそのベース信号)も出力する。この駆動信号GPによって、駆動期間、すなわち、発光ユニット24中に含まれる有機EL素子26の輝度設定を行う期間が設定される。
【0093】
データ線駆動回路44は、走査線駆動回路42による線順次走査と同期して、データ線X1〜Xmそれぞれに対するデータ信号の供給を電流ベースで行う。前述した電流プログラム方式の場合には、データ線駆動回路44は、発光ユニット24より出射される変調光の変調度合いを規定するデータ(データ電圧Vdata)をデータ電流Idataへと変換する可変電流源を含む。データ線駆動回路44は、1水平走査期間(1H)において、今回データを書き込む行に対するデータ電流Idataの一斉出力と、次の水平走査期間で書き込みを行う行に関するデータの点順次的なラッチとを同時に行う。
【0094】
ある水平走査期間において、データ線Xの本数に相当するm個のデータが順次ラッチされる。そして、次の水平走査期間において、ラッチされたm個のデータは、データ電流Idataに変換された上で、それぞれのデータ線X1〜Xmに対して一斉に出力される。
【0095】
図9を参照して、サブ光源23の構成につき説明する。図9は、サブ光源の構成例を説明する照明光通信システムの概略的な説明図である。
【0096】
送信装置20のサブ光源23は、照明用光源22に含まれる複数の発光ユニット24が複数のグループに区分けされることにより規定される。図示例では、複数の発光ユニット24が4つに区分けされて、第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23D(以下、それぞれサブ光源A、サブ光源B、サブ光源Cおよびサブ光源Dという場合がある)とされている。なお、iおよびjは1以上の任意の正数であり、かつmおよびnは2以上の任意の正数である。1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源24Dに含まれる発光ユニット24の数は、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、サブ光源23同士の発光ユニット24の数が同数である場合において、発光ユニット24の配置形態は、サブ光源23単位で同一であっても、異なっていてもよい。また離散的に離れて配置されている発光ユニット24を同一の発光ユニット24に属する発光ユニット24とするグループ分けをしてもよく、このようなグループ分けを行うことにより、たとえサブ光源23単位で明滅などしたとしても、局所的な光量の低下を抑制することができ、照明としての性能の低下を抑えることができる。
【0097】
第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源24Dに含まれる発光ユニット24の数を、ここではi=j=4かつm=n=8、すなわち互いに同数である16とした例を説明する。第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dそれぞれが含む発光ユニット24は、この例では4×4のマトリクス状に配置されている。
【0098】
第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの発光ユニット24は、走査線Y1〜Yj(Y4)(走査線群Yabという場合がある)に電気的に接続される。また、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの発光ユニット24は、走査線Yj+1〜Yn(Y5〜Y8)(走査線群Ycdという場合がある)に電気的に接続される。
【0099】
また、第1サブ光源23Aおよび第3サブ光源23Cの発光ユニット24は、データ線X1〜Xi(X4)(データ線群Xacという場合がある)に電気的に接続される。また、第2サブ光源23Bおよび第4サブ光源23Dの発光ユニット24は、データ線Xi+1〜Xm(X5〜X8)(データ線群Xbdという場合がある)に電気的に接続される。
【0100】
次に、図4、図9および図10を参照して、複数のサブ光源にグループ分けされた照明用光源を備える照明光通信システムの動作につき説明する。
【0101】
走査線駆動回路42およびデータ線駆動回路44(図4)は、照明用光源22に設定された第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dにおいて、各サブ光源23単位で、複数のサブ光源23を独立的に駆動する。
【0102】
同一のサブ光源23に属する複数の発光ユニット24は、本実施形態では、すべて同一の発光状態になるように制御される。異なるサブ光源23同士については互いに独立的に制御され得る。よって、この場合には、照明用光源22に、4つの独立した伝送チャネルが形成されることになる。
【0103】
走査線Y1〜Yj、すなわち走査線群Yabが選択されている状態でデータ線X1〜Xi、すなわちデータ線群Xacに供給されたデータ(すべて同一の電流レベルである)は、第1サブ光源23Aの各発光ユニット24に共通して供給される。
【0104】
これによって、第1サブ光源23Aの発光状態が制御される。また、この状態でデータ線Xi+1〜Xm、すなわちデータ線群Xbdに供給されたデータは、第2サブ光源23Bの各発光ユニット24に共通に供給される。これによって、第2サブ光源23Bの発光状態が制御される。
【0105】
走査線Yj+1〜Yn、すなわち走査線群Ycdが選択されている状態でデータ線X1〜Xi、すなわちデータ線群Xacに供給されたデータは、第3サブ光源23Cの各発光ユニット24に共通に供給される。
【0106】
これによって、第3サブ光源23Cの発光状態が制御される。また、この状態でデータ線Xi+1〜Xm、すなわちデータ線群Xbdに供給されたデータは、第4サブ光源23Dの各発光ユニット24に共通に供給される。これによって、第4サブ光源23Dの発光状態が制御される。
【0107】
図10は、照明光通信システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【0108】
図9に示す構成において、最上段に配置されている走査線Y1から最下段に配置されている走査線Ynに向かって、n本の走査線Yが順次選択されていくものとする。
【0109】
この場合には、照明用光源22全体に対して、送信データのデータ書き込みを行うのに要する1フレーム期間t0〜t2は、前半の第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの選択期間t0〜t1と、後半の第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの選択期間t1〜t2とに分けられる。
【0110】
第1サブ光源23Aおよび第2サブ光源23Bの選択期間t0〜t1は、走査線群Yabに属する走査線Y1の選択が開始されてから走査線Yjの選択が終了するまでの期間に相当する。
【0111】
この期間t0〜t1において、データ線群Xacには第1サブ光源23A用の送信データDaが共通して供給され、この送信データDaに応じたレベルにデータ線群Xacが維持される。
【0112】
データ線群Xacには、第1サブ光源23Aのみならず第3サブ光源23Cも接続されているが、走査線群Ycdが非選択のため、第3サブ光源23Cは電気的に分離されている。したがって、データ線群Xacに供給された送信データDaは、第1サブ光源23Aにのみ供給され、これに応じた書き込みが第1サブ光源23Aにおいて行われる。
【0113】
また、この期間t0〜t1において、データ線群Xbdには第2サブ光源23B用の送信データDbが共通して供給され、この送信データDbに応じたレベルにデータ線群Xbdが維持される。
【0114】
データ線群Xbdには、第2サブ光源23Bのみならず第4サブ光源23Dも接続されているが、走査線群Ycdが非選択のため、第4サブ光源23Dは電気的に分離されている。したがって、データ線群Xbdに供給された送信データDbは、第2サブ光源23Bにのみ供給され、これに応じた書き込みが第2サブ光源23Bにおいて行われる。
【0115】
第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの選択期間t1〜t2は、走査線群Ycdに属する走査線Yj+1の選択が開始されてから走査線Ynの選択が終了するまでの期間に相当する。この期間t1〜t2において、データ線群Xacには第3サブ光源23C用の送信データDcが共通して供給され、この送信データDcに応じたレベルにデータ線群Xacが維持される。
【0116】
ここで、データ線群Xacに接続された第1サブ光源23Aは、走査線群Yabが非選択のため電気的に分離されている。したがって、データ線群Xacに供給された送信データDcは、第3サブ光源23Cにのみ供給され、これに応じた書き込みが第3サブ光源23Cにおいて行われる。
【0117】
また、期間t1〜t2において、データ線群Xbdには第4サブ光源23D用の送信データDdが共通して供給され、この送信データDdに応じたレベルにデータ線群Xbdが維持される。このとき、データ線群Xbdに接続された第2サブ光源23Bは、走査線群Yabが非選択のため電気的に分離されている。したがって、データ線群Xbdに供給された送信データDdは、第4サブ光源23Dにのみ供給され、これに応じた書き込みが第4サブ光源23Dにおいて行われる。
【0118】
なお、図10においては、同一のサブ光源23に対応する走査線群を順次走査するケースを例示したが、駆動回路の駆動能力を十分に確保できることを条件として、サブ光源23ごとに対応する走査線群を同時に一括選択することもできる。
【0119】
ここで、前述した図5、図6および図7に示すように制御回路28を構成しておけば、いずれにおいても、第1サブ光源23A、第2サブ光源23B、第3サブ光源23Cおよび第4サブ光源23Dの独立的な駆動を実現することができる。
【0120】
〈発光ユニットの構成例〉
図11および図12を参照して、本発明の送信装置および照明通信システムに好適に適用できる発光ユニットの構成例につき説明する。
【0121】
本発明の照明通信システム10および送信装置20において、発光ユニット24は、複数がマトリクス状に配置されている。ここでは、マトリクス状に配置された複数の発光ユニットのうち、1つの有機EL素子を有する1つの発光ユニット24を含む領域を図示して説明する。
【0122】
図11は、図7の回路構成を実現する発光ユニット24の構成を説明するための概略的な平面図である。特に基板100の説明を容易にするために、基板100上に配置される構成要素の図示を省略し、かつ光透過性半導体層130を最上層として示してある。
【0123】
図12は、図11の切断面線XII−XIIに沿って切断した発光ユニット24の端面を連続的に示す端面図である。
【0124】
図11および図12に示すように、基板100は、光透過性基板本体110と、該光透過性基板本体110上に形成される光透過性制御回路28とを含んで構成され、いわゆるTFT基板を構成する。基板100は、第1主面100aと、この第1主面100aに対向する第2主面100bを有している。基板100はいわゆる平行平板型の板状体である。基板100の第1主面100a上には有機EL素子26が設けられる。有機EL素子26は、例えば、第2光透過性絶縁層144上に設けられる第1電極52と、第1電極52と対向配置されている第2電極58と、第1電極52および第2電極58に挟まれて設けられる発光層56とを含んでいる。(有機EL素子26の詳細については後述する)。このように光透過性制御回路28は光透過性基板本体110と、有機EL素子26との間に介在して配置される。
【0125】
マトリクス状に配置された複数の有機EL素子26は、隔壁60により互いに分離される。隔壁60は、格子状に設けられ、隔壁60により電気的に区分けされる各画素領域51に、各有機EL素子21がそれぞれ配置される。隔壁60は、第1電極52および発光層56の積層構造を有機EL素子26ごとに分離している。
【0126】
隔壁60は、例えば感光性樹脂よりなる単層構造の絶縁膜により構成することができる。ただし、隔壁60は、これに限定されず、例えばSOG(Spin ON Glass)や酸化シリコン(SiO)、や窒化シリコン(SiN)などのシリコン系絶縁物やアルミナ(Al)等のアルミニウム酸化物やハフニア(HfO)等のハフニウム酸化物やイットリア(Y)などのイットリウム酸化物やLa等のランタン酸化物など、あるいは、光透過性感光性樹脂などのような塗布プロセスによる成膜が可能な絶縁物よりなる光透過性絶縁性単層膜、または、これらを1つ以上含む光透過性絶縁性多層膜とすることができる。
【0127】
有機EL素子26上には封止層であるパッシベーション膜70が設けられる。パッシベーション膜70は、この例では第2電極58上に設けられていて、基板100および隔壁60と相俟って、有機EL素子26および基板100に作り込まれた構成要素を外部環境から保護する。パッシベーション膜70は、複数の有機EL素子26、すなわち複数の発光ユニット24を一体的に覆っている。パッシベーション膜70は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜された、SiO膜やSiNx膜等の多層膜とすることができる。
【0128】
基板100は、その厚み内にトランジスタ、キャパシタといった素子およびこれらを電気的に接続する配線が作り込まれたいわゆるアクティブマトリクス基板またはアレイ基板と称されるものである。したがって、有機EL素子26と光透過性制御回路28とが一体的に発光ユニット24を構成している。本実施形態の有機EL素子26、すなわち発光ユニット24からの出射光は、基板100の第2主面100b側から出射する。よって、この発光ユニット24は、発光方向が基板100側であるいわゆるボトムエミッション型である。しかしながら、これに限定されず、例えば基板100側のみならず、基板100とは反対側からも同時に出射光を取り出すいわゆる両面発光型とすることもできる。
【0129】
本明細書において、「光」とは、1nmから1mm程度の範囲の波長の電磁波を意味する。「光透過性」とは、前述の「光」から照明光および信号光として使用できることを条件として選択された範囲内に含まれる波長の光が吸収および散乱されることなく透過するか、または入射した照明光および信号光が許容される程度の割合で透過することをいう。照明光および信号光は、好ましくは「可視光」とするのがよい。「可視光」とはヒトの目で見ることができる範囲の波長を有する電磁波をいう。可視光は、一般に短波長側が360nmから400nm程度、長波長側が760nmから830nm程度の波長を有している。光透過性としては、光透過率が高い方が好ましく、例えば10%以上であり、好ましくは25%以上であり、50%以上が好ましい。
【0130】
基板100には、例えば、走査制御電圧Vgが印加される走査線X、データ電圧Vdataが印加されるデータ線Y、接地電圧Vssが印加される容量線および駆動電圧Vdd(Vp)が印加される駆動線が第1光透過性配線層122および第2光透過性配線層124(第1光透過性配線層122と第2光透過性配線層124とを、光透過性配線層という場合がある)の一部として含まれている。また、基板100は、光透過性半導体層130、層間絶縁膜として第1光透過性配線層122および第2光透過性配線層124を分離する第1光透過性絶縁層142および第2光透過性絶縁層144を含む光透過性絶縁層140を備えている。
【0131】
さらに、基板100は、図12中に破線により囲って示すように、これら第1光透過性配線層122、第2光透過性配線層124、光透過性半導体層130、第1光透過性絶縁層142および第2光透過性絶縁層144が相俟って、すなわちこれらにより構成される光透過性トランジスタ素子(以下、トランジスタという場合がある)T1、光透過性トランジスタ素子T2を含む光透過性トランジスタ素子150および光透過性キャパシタCを含む光透過性制御回路28と、該光透過性制御回路28が設けられる光透過性基板本体110とを備えている。基板100の構成要素は、いずれも光透過性であるため、基板100は、光透過性である(基板を光透過性基板という場合がある)。
【0132】
光透過性基板本体110は、例えばガラス基板とすることができる。ただし、これに限定されず、光透過性基板本体110として、例えば石英基板やプラスチック基板など、種々の光透過性である絶縁性基板を用いることができる。また、光透過性基板本体110として例えばフレキシブルな基板を用いることで、全体としてフレキシブルな装置を実現することもできる。
【0133】
光透過性基板本体110上には第1光透過性配線層122が設けられる。第1光透過性配線層122は、複数の第1光透過性配線部122aを含んでいる。第1光透過性配線層122には、複数の第1光透過性配線部122aの一部として、トランジスタT1のゲート電極152、トランジスタT2のゲート電極152、およびキャパシタCの一方の電極である下部電極が含まれている。
【0134】
第1光透過性配線層122上には、層間絶縁膜である第1光透過性絶縁層142が設けられる。また、第1光透過性絶縁層142は、トランジスタT1およびトランジスタT2のゲート絶縁膜158、並びにキャパシタCの容量絶縁膜としても機能する。また、第1光透過性絶縁層142には、その表面から第1光透過性配線層122の表面に至る複数のコンタクトホール142aが設けられる。コンタクトホール142aは、第1光透過性絶縁層142を貫通して第1光透過性配線部122aの表面の一部分を露出させている。
【0135】
第1光透過性絶縁層142上には、第2光透過性配線層124が設けられる。第2光透過性配線層124は、複数の第2光透過性配線部124aを含んでいる。第2光透過性配線層124には、第2光透過性配線部124aの一部として、トランジスタT1およびトランジスタT2のドレイン電極154およびソース電極156、およびキャパシタCの他方の電極である上部電極が含まれる。
【0136】
第1光透過性配線層122と第2光透過性配線層124とは、コンタクトホール142a内に設けられるコンタクト内配線部124bにより電気的に接続される。
【0137】
第2光透過性配線層124上および第2光透過性配線層124から露出する第1光透過性絶縁層142の一部分、すなわちトランジスタT1およびトランジスタT2を含む光透過性トランジスタ素子150の直上である複数の部分領域には、光透過性半導体層130が設けられる。光透過性半導体層130は、光透過性トランジスタ素子150のチャネル層として機能する。
【0138】
光透過性半導体層130上および光透過性半導体層130から露出する第1光透過性絶縁層142上には第2光透過性絶縁層144が設けられる。第1光透過性絶縁層142および第2光透過性絶縁層144には、第2光透過性絶縁層144の表面から第1光透過性配線層122の表面に至るヴィアホール160が設けられる。ヴィアホール160は、第1光透過性絶縁層142および第2光透過性絶縁層144を貫通して第1光透過性配線部122aの表面の一部分を露出させている。第2光透過性絶縁層144上には有機EL素子26の第1電極52が設けられる。ヴィアホール160内には、プラグ162が設けられる。プラグ162は、第1電極52と、第1光透過性配線層122とを電気的に接続している。したがって、有機EL素子26は、プラグ162およびコンタクト内配線部124bを経て、第1光透過性配線層122および第2光透過性配線層124に接続され、ひいては光透過性トランジスタ素子150およびキャパシタCに電気的に接続されている。
【0139】
走査線Yは、例えば、光透過性基板本体110上の第1光透過性配線層122から構成される。データ線X、容量線(接地線)および駆動線は、それぞれ例えば、光透過性基板本体110上の第1光透過性配線層122および第1光透過性絶縁層142上の第2光透過性配線層124と、第1光透過性絶縁層142に形成されたコンタクトホール142a内のコンタクト内配線部124bと、互いに隣接する発光ユニット24同士を電気的に接続する、第1光透過性配線層122、コンタクト内配線部124bおよび第2光透過性配線層124よりなる立体配線とから構成される。他の配線構造としては、光透過性基板本体110上の第1光透過性配線層122および第1光透過性絶縁層142上の第2光透過性配線層124と、第1光透過性絶縁層142に形成されたコンタクトホール142aに設けられたコンタクト内配線部142bとから構成される。また、配線構造には、例えば、トランジスタT2のソース電極156に電気的に接続された第1光透過性配線層122を有機EL素子26の第1電極52へ電気的に接続するためのプラグ162が含まれる。
【0140】
第1光透過性配線層122において、略行方向または略列方向に延在する第1光透過性配線部122aは、それぞれ走査線Y、データ線X、容量線または駆動線における主配線部に相当する。また、主配線部から分岐した第1光透過性配線部122aは、例えば主配線部と光透過性トランジスタ素子150およびキャパシタCとを接続するための副配線部分に相当する。
【0141】
コンタクト内配線部124bは立体配線を構成し、例えばデータ線X、容量線または駆動線を第1光透過性絶縁層142上に導く。第2光透過性配線層124の第2光透過性配線部124aは、第1光透過性配線層122の第1光透過性配線部122aと空間的に立体交差させることができる。第2光透過性配線層124に含まれるデータ線Xは、コンタクト内配線部124bを含む立体配線により第1光透過性配線層122に含まれる走査線Yを跨いで延在している。なお、本実施形態では、コンタクト内配線部124bおよび第2光透過性配線層124において、第1光透過性配線層122の第1光透過性配線部122aを第1光透過性絶縁層142上に導く部分は副配線部に含まれ、走査線Yを跨ぐための部分は主配線部に含まれる。
【0142】
このように複数の配線層を絶縁層で分離し、立体的に構成することで、配線部の多くの領域を単一の配線層に形成することができるため、基板100における層構造の簡略化や配線レイアウトの明確化などが可能になると共に、配線層よりも上層に形成される膜上面の平坦性を高めることができる。
【0143】
なお、本実施形態では第1および第2光透過性配線層122、124からなる2層の配線層からなる配線構造を説明したが、本実施形態の基板100は、さらなる光透過性配線層およびさらなる光透過性絶縁層を設けたより多層の配線構造とすることもできる。
【0144】
また、基板100上において、前述した各種配線および各種素子が非形成とされる領域には、例えば第1光透過性配線層122に含まれる配線部の一部が冗長化された冗長配線部122bを設けることで、配線層上に形成される層上面の平坦性を向上させることができる。
【0145】
トランジスタT1は、例えば、光透過性基板本体110上の第1光透過性配線部122aの一部であるゲート電極152と、ゲート電極152を覆うゲート絶縁膜158と、ゲート絶縁膜158上のドレイン電極154およびソース電極156と、ソース電極156およびドレイン電極154間のゲート絶縁膜158上の光透過性半導体層130とにより構成されるいわゆるボトムゲート構造の薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0146】
同様に、トランジスタT2は、例えば、光透過性基板本体110上の第1光透過性配線部122aの一部であるゲート電極152と、ゲート電極152を覆うゲート絶縁膜158と、ゲート絶縁膜158上のドレイン電極154およびソース電極156と、ソース電極156およびドレイン電極154間のゲート絶縁膜158上の光透過性半導体層130とにより構成されるいわゆるボトムゲート構造の薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0147】
ゲート電極152には、例えば走査線Yを構成する第1光透過性配線層122の一部を使用することができる。ゲート絶縁膜158には、例えば第1光透過性絶縁層142の一部を使用することができる。ソース電極156には、例えばデータ線Xの一部を構成する第2光透過性配線層124の一部を使用することができる。ドレイン電極154には、例えば第2光透過性配線層124の一部を使用することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、トランジスタを例えば、ゲート電極152に第2光透過性配線層124の一部を使用し、ソース電極156およびドレイン電極154にそれぞれ第1光透過性配線層122の一部を使用した、いわゆるトップゲート構造の薄膜トランジスタ(TFT)としてもよい。
【0148】
キャパシタCは、例えば、容量線の一部を構成する第1光透過性配線部122aの一部である下部電極と、下部電極と対向配置されており、駆動線を構成する第2光透過性配線部124aの一部である上部電極と、下部電極および上部電極間に設けられ、第1光透過性絶縁層142の一部である容量絶縁膜とにより構成されている。
【0149】
なお、有機EL素子26の出射光を取り出す基板100側には、カラーフィルタや波長シフタなどの色変換膜といった機能層を配置してもよい。
【0150】
第1光透過性配線層122、第2光透過性配線層124およびコンタクト内配線部124b、ならびにプラグ162は、例えば亜鉛錫酸化物(Zinc Tin Oxide:ZTO)を主成分とした導電体材料により構成することができる。ただし、これに限定されず、インジウム含有酸化物(Indium Tin Oxide:ITO、Indium Zinc Oxide:IZOなど)やその他の無機酸化物導電体材料、あるいは、有機物材料などで、光透過性導電性膜を得ることのできる導電体材料を用いて構成することもできる。
【0151】
ZTO材料としては、例えば、Zn(モル)よりもSn(モル)の量を多くすることにより、導電体材料としての使用が可能である。Zn:Snのモル比は、例えば、1:2とするのが好ましい。
【0152】
また、導電体材料としてのITOは、通常In:Snのモル比が0.9:0.1程度、導電体材料としてのIZOは通常In:Znのモル比が0.9:0.1程度である。
【0153】
特に、ZTO導電性膜はアモルファスな膜とできるため、第1光透過性配線層122、第2光透過性配線層124、コンタクト内配線部124bおよびプラグ162をフレキシブルな構成とすることができるという利点がある。さらに、アモルファスなZTO導電性膜は、低温形成することができるため、プラスチック基板などの高温耐性の低い基板を光透過性基板本体110とできる。これらのことから、ZTO導電性膜は、本実施形態の第1光透過性配線層122、第2光透過性配線層124、コンタクト内配線部124bおよびプラグ162に適用して好適である。
【0154】
第1光透過性絶縁層142および第2光透過性絶縁層144には、SOGや酸化シリコンや窒化シリコンなどのシリコン系絶縁物やアルミナ等のアルミニウム酸化物やハフニア等のハフニウム酸化物やイットリアなどのイットリウム酸化物やLa等のランタン酸化物など、あるいは、光透過性である感光性樹脂などのような塗布プロセスによる成膜が可能な絶縁物よりなる光透過性絶縁性単層膜、または、これらを1つ以上含む光透過性絶縁性多層膜を用いることができる。
【0155】
本実施形態では、第1光透過性絶縁層142を例えばアルミナ膜とハフニア膜とを含む多層構造の絶縁膜とし、第2光透過性絶縁層144を例えば感光性樹脂よりなる単層構造の絶縁膜とすることができる。なお、本実施形態において、第1光透過性絶縁層142および第2光透過性絶縁層144は、配線層間を絶縁するための絶縁膜として機能するほか、各層の平坦性を確保するための平坦化膜としても機能する。
【0156】
光透過性半導体層130は、後述する製造工程における例えばエッチング工程時により下層に位置する第2光透過性配線層124やコンタクト内配線部124bなどが受けるプロセスダメージを低減するための保護膜として機能する。本実施形態では、光透過性半導体層130の例として、前述した導電体材料(ZTO導電体材料、インジウム含有酸化物導電体材料)よりなる配線よりも、キャリア濃度を低くすることのできる半導体材料であって、ZTOまたはインジウム含有酸化物から構成される半導体材料よりなる光透過性半導体層を用いることができる。
【0157】
なお、ZTO導電体材料は、例えば、SnよりもZnの量(モル量)を多くすることにより(例えば、Zn:Snのモル比が2:1など)、半導体材料としての使用が可能である。また、このZTO半導体層の成膜時には、雰囲気の酸素濃度を増やすなどして、半導体層のキャリア濃度を低くする調整を行うことができる。また、前述した第1光透過性配線層122等と同様に、ZTO光透過性半導体層も、アモルファスな膜として形成できることから、フレキシブルな光透過性半導体層130とすることができる。
【0158】
また、本発明はこのようなZTO半導体材料に限定されず、インジウム含有酸化物半導体材料(In:Znのモル比が4:6のIZOなど)などの光透過性無機酸化物半導体材料や、この他、ペンタセンやテトラベンゾポルフィリンの前躯体などを含む光透過性有機半導体材料など、種々の光透過性半導体材料を用いて形成することができる。
【0159】
なお、本実施形態では、光透過性半導体層130を形成する導電体材料の主成分と、光透過性素子150の電極部分を形成する導電体材料の主成分とに同種の材料を用いる。したがって、本実施形態では、光透過性トランジスタ素子(T1、T2)のドレイン電極154およびソース電極156ならびにドレイン電極154およびソース電極156を含む第2光透過性配線層124をZTOを主成分とするZTO導電性膜とし、光透過性半導体層130をZTOを主成分とする層とし、かつキャリア濃度が第2光透過性配線層124のそれよりも低いZTO半導体膜とする。このように、両者を同種の材料で構成することで、例えばトランジスタT1におけるドレイン電極154またはソース電極156と光透過性半導体層130とをオーミック接触させることができる。同様に、トランジスタT2におけるドレイン電極154またはソース電極156と光透過性半導体層130とをオーミック接触させることができる。これにより、各TFT素子における抵抗成分が低減されるため、各素子の駆動電力を低減することができる。結果として、装置の消費電力を低減することが可能となる。
【0160】
光透過性トランジスタ素子150、すなわちトランジスタT1およびトランジスタT2、並びにキャパシタCは、前述した第1光透過性配線層122、第2光透過性配線層124および光透過性絶縁層140の一部を使用して構成することが可能であるため、その材料も上述したものと同様とすることができる。ただし、各電極上に、より低抵抗化するためのさらなる光透過性の導電性膜を形成するなど、適宜変形することも可能である。
【0161】
図10および図11に示すように、光透過性制御回路28は、光透過性基板本体110と有機EL素子26との間に介在するとともに、透光性基板本体110の厚み方向の一方から見て光透過性制御回路28の少なくとも一部が有機EL素子26に重ねて配置される。有機EL素子は膜厚の均一性などにその特性が依存するため、平坦な面上に形成されることが好しい。制御回路が設けられる部位はその厚みによって凹凸が生じるので、制御回路上に有機EL素子を設けるためには、平坦化膜を形成するなどの所定の処理を行う必要があるが、制御回路が不透光性のものである場合、この制御回路によって有機EL素子からの光が遮られることになるので、制御回路上に有機EL素子を敢えて形成せずに、基板の厚み方向の一方から見て制御回路が形成される領域を避けた領域に有機EL素子を設けていた。そうすると、制御回路の分だけ有機EL素子の開口率が必然的に低下することになるが、有機EL素子26からの光を透過する光透過性制御回路28を用いるとともに、透光性基板本体110の厚み方向の一方から見て光透過性制御回路28を有機EL素子26に重ねて配置することにより、有機EL素子26の開口率を向上させることができる。また制御回路の一部を構成する走査線Y、データ線X、容量線および駆動線などの主配線と、この主配線から分岐する副配線とはその厚みによって凹凸が生じるので、これらの配線が不透明な場合には、前述と同様の理由により、基板の厚み方向の一方から見て配線と有機EL素子とが重ならないような配置を採っており、その結果として有機EL素子の開口率が低下するとともに、設計の自由度が低下していたが、透光性配線を用いることにより、該透光性配線上に有機EL素子を形成することができ、開口率を向上させることができ、さらには設計の自由度を向上させることができる。したがって本実施形態の発光ユニット24はきわめて高性能であり、照明用途に好適に適用することができる。
【0162】
〈有機EL素子の構成例〉
有機EL素子は、自由なサイズ設計が可能、超小型化が可能、高速応答が可能といった優れた特長を有する。有機EL素子を、照明光通信に利用する場合には、個々の素子面積はより小さいものが好適である。有機EL素子の静電容量は、面積が小さいほど小さくなる傾向にあるので、応答速度を規定する素子のRC時定数も同様に有機EL素子の面積が小さいほど小さくなり、有機EL素子の面積が小さくなるほど応答速度が速くなるからである。
【0163】
素子面積(発光面積)は、例えば10-8cm2以上1cm2以下であり、好ましくは10-8cm2以上10-1cm2以下であり、さらに好ましくは10-8cm2以上10-2cm2以下である。
【0164】
従来のLEDでは、半導体基板に発光ユニットを形成した後、半導体基板を分割して個々のチップとし、配線形成された回路基板にチップを取り付けて使用する。半導体基板を分割してチップ化するので、チップの小型化には自ずと限界がある。
【0165】
また、高価な半導体結晶を有効に利用するためには、個々のチップに占める発光ユニットの大きさを最大に、すなわちチップ全体の大きさに近いものにせざるを得ない。そのため、従来のLEDでは、チップを含む素子の小型化が困難であった。
【0166】
これに対して、有機EL素子の場合には、例えば素子の動作を制御する制御回路といった配線を形成した基板上に素子を直接的かつ配線と一体的に形成することができる。そして、基板に作り込まれた有機EL素子をそのまま動作させて利用できるので、設計上の自由度が高く、素子の小型化が比較的容易である。以上のような理由から、有機EL素子は、照明光通信用の発光ユニットとして極めて好適である。
【0167】
大容量データの高速通信を可能にするためには、複数の発光ユニットからデータを並列的に送信することが好ましく、そのためには、発光ユニットを複数配列する必要がある。
【0168】
従来のLEDでは、個々のLEDチップ、または、チップに台座と樹脂レンズとからなる素子を配列する必要があるために、実際に発光する部分よりも大きな面積が必要であった。
【0169】
これに対して、有機EL素子では、配線および制御回路などを形成した基板上に素子を直接形成し、素子をそのまま動作させて利用できるので、発光ユニットの高集積化が容易であり、全体として小さな通信向け照明用光源(送信装置)が実現できる。
【0170】
また、従来のLEDの場合には、送信装置における照明用光源の強度変調は、ドライバIC(IC:Integrated Circuit)といった外部制御回路を用いて行う必要があった。そのため、送信装置を構成するユニットの小型化が困難であった。
【0171】
これに対して、有機EL素子の場合には、発光層の近傍に薄膜トランジスタ等の変調素子からなる制御回路を一体的に形成することができる。制御回路と有機EL素子とを、例えば積層して一体化すれば、発光ユニットの小型化が容易である。
【0172】
このように、有機EL素子を用いることにより、発光ユニットのさらなる小型化や集積化が可能であり、有機EL素子と制御回路との積層構造も容易に製造できるので、高速大容量の照明光通信に対応した送信装置の小型化を実現することができる。
【0173】
有機EL素子としては、蛍光発光型(一重項遷移)とリン光発光型(三重項遷移)が知られているが、本実施形態では、どちらを使用してもよい。有機EL素子を小さくし、RC時定数を小さくして応答速度を上げても、発光の減衰時間で規定される速度以上に応答速度を上げることはできない。
【0174】
一般に、蛍光発光型はリン光発光型よりも発光の減衰時間が短く、室温(20℃程度)では蛍光発光型で約10ns程度、リン光発光型で約1μs程度である。したがって、どちらを用いても、素子単体で1Mbps程度の伝送速度までの信号通信に対応可能である。
【0175】
また、本発明の実施形態において、蛍光発光型の有機EL素子およびリン光発光型の有機EL素子の双方を混載した集積デバイスを照明用光源として用いてもよい。蛍光発光型は、リン光発光型よりも応答速度をより速くできるので、高速な通信用途に適しているといえる。リン光発光型は、蛍光発光型よりも発光効率をより高くできるので、照明用途により適している。
【0176】
有機EL素子は発光層材料を素子ごとに選択的に分けて形成できる。よって、照明用光源において、例えば照明用の有機EL素子をリン光発光型とし、通信用の有機EL素子を蛍光発光型とするというように、照明用光源が、送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機EL素子と、非変調光を出射する照明用の有機EL素子とを含んで構成されてもよい。
【0177】
この場合には、蛍光発光型の有機EL素子には、例えば照明機能および通信機能の双方を担わせて、送信すべき送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機EL素子としてこれを用いることができる。また、リン光発光型の有機EL素子には、例えば照明機能のみを担わせて、一定の非変調光を出射する照明用の有機EL素子としてこれを用いることができる。
【0178】
これら照明用および通信用発光ユニットは、前述したサブ光源ごとにいずれかの有機EL素子を選択して設ける構成としてもよい。また、単一のサブ光源内に照明用の有機EL素子および通信用の有機EL素子を混在させてもよい。
【0179】
これにより、照明効率の向上と通信の高速化とを両立した照明システムが構築できる。ただし、このような構成では、照明からの全光量に対して、通信情報が重畳された光、すなわち信号光の割合が小さくなる。したがって、受信装置として、光の強度変化に敏感なシステムが必要になる。全光量に対する蛍光、すなわち信号光の割合としては、1%以上50%以下であることが望ましい。
【0180】
一般照明を用いて照明光通信を行う場合には、照明用光源の出射光は白色であることが望ましい。有機EL素子で白色光を得るためには、大きく2つの方法がある。
【0181】
一方は、赤色発光ユニット(R素子)、緑色発光ユニット(G素子)および青色発光ユニット(B素子)を同時に発光させて、光の3原色から白色を得る方法である。この方法は、(1)R素子、G素子およびB素子の各発光ユニットを基板面内にタイル状に配列させる方法と、(2)1つの素子内部にR素子、G素子、およびB素子の発光層を積層する方法とに分けられる。
【0182】
他方は、発光層自体が複数の波長ピークを有する白色発光材料からなるものを利用することにより白色発光を得る方法である。
【0183】
これらの白色光を発光する有機EL素子は、従来の蛍光体を用いた、いわゆる白色LEDのような電流注入による青色発光→蛍光体励起→黄色発光というプロセス非経由で、電流注入直接再結合により複数の波長の出射光を出射する。そのため、従来の蛍光体を用いた白色LEDよりも応答速度がより速いという特長があり、照明光通信システムに好適である。
【0184】
図12を参照して、本発明の送信装置および照明光通信システムに好適に適用できる有機EL素子26の構成例につき説明する。
【0185】
有機EL素子26は、画素領域51内に設けられる。画素領域51は、この例では基板の厚み方向の一方からみたときにデータ線Xおよび走査線Yが形成する格子縞の交点近傍に設けられる。
【0186】
なお、この画素領域51内には、光透過性制御回路28が、有機EL素子26の動作制御が可能となるように有機EL素子26作り込まれている。
【0187】
〈第1電極〉
有機EL素子26は、第1電極52を有する。この例では、第1電極52を陽極としてある(以下、第1電極52を陽極52という場合がある)。第1電極52は基板100の第1主面100a上に設けられる。第2電極58は、この第1電極52と離間して対向配置されている。第2電極58は、この例では陰極としてある(以下、第2電極58を陰極58という場合がある)。
【0188】
有機EL素子を基板に設ける場合には、通常、基板側、すなわち基板直上に陽極が設けられるが、基板側に陰極を設ける構成としてもよい。
【0189】
一般に、有機EL素子においては、陽極および陰極のいずれか一方または双方とも、光透過性または半光透過性とされる。有機EL素子26を例えばボトムエミッション型とする場合には、陽極52は、光透過性とされる。光透過性または半光透過性とする場合には、陽極52として、可視光の透過率がより高いものを用いるのが好適である。
【0190】
陽極52の材料としては、例えば導電性を有する金属酸化物膜、半光透過性の金属薄膜が用いられる。陽極52としては、例えば電気抵抗のより低いものを用いることができる。
【0191】
具体的には、陽極52は、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)およびインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)などからなる薄膜、あるいは金、白金、銀、銅などからなる薄膜が用いられる。陽極52は、これらの中でもITO、IZO、および酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。
【0192】
〈発光層〉
次に、有機EL素子26の発光層56の材料について説明する。発光層56の材料としては、いわゆる低分子系材料および高分子系材料のどちらも利用可能であり、特に高分子系材料が好ましい。
【0193】
なお、本明細書でいう高分子とは、ポリスチレン換算の数平均分子量が、10以上であり、通常、ポリスチレン換算の数平均分子量が10以下である。
【0194】
発光層56は、蛍光および/またはリン光を発光する有機物、若しくは該有機物と、ドーパントとを含んで構成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で付加される。発光層56を主に構成する発光材料としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0195】
〈色素系材料〉
色素系の発光材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびピラゾリンダイマーなどを高分子化したものを挙げることができる。
【0196】
〈金属錯体系材料〉
金属錯体系の発光材料としては、中心金属に、Al、Zn、Beなど、またはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体を高分子化したものを挙げることができる。
【0197】
金属錯体系の発光材料としては、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体などを高分子化したものを挙げることができる。
【0198】
高分子系の発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、およびポリビニルカルバゾール誘導体などを挙げることができる。
発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることが出来る。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0199】
〈ドーパント材料〉
発光層56を構成する発光材料としては、前述の発光材料の他に、例えば発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的でドーパント材料をさらに含んでいてもよい。このようなドーパント材料としては、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。
【0200】
〈陰極〉
陰極58の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易な材料が好ましい。また陰極58の材料としては、電気伝導度の高い材料がよい。
また、陽極52側から光を取り出す場合には、発光層56からの光を陽極52側に反射するために、陰極58の材料としては可視光反射率の高いものが好ましい。
【0201】
陰極58の材料としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表第13族金属などの金属を用いることができる。具体的には、陰極58の材料として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、または上記金属のうち2つ以上の合金、またはこれらのうち1つまたは2つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つまたは2つ以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。
【0202】
合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。
【0203】
また、陰極58としては、光透過性導電性電極を用いることができる。陰極58としては、例えば導電性金属酸化物や導電性有機物などを用いることができる。具体的には、陰極58としては、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機材料により形成される光透過性導電膜を用いてもよい。なお、陰極58を2層以上の多層の積層構造としてもよい。
本実施形態では、照明光を通信媒体として用いるため、有機EL素子26を全体として白色光を発光する構成とするのがよい。
しかしながら、発光層56の出射光が例えば白色光とは異なる波長の光となるものとしてもよい。
【0204】
本実施形態の有機EL素子26では、陽極52と陰極58との間には、少なくとも発光層56が設けられていればよく、発光層56のみが設けられていてもよい。
【0205】
また、発光層56と陽極52との間、および/または発光層56と陰極58との間には、1層または複数層の不図示の機能層を設けてもよい。
【0206】
以下に、陽極52と陰極58との間に設けられる機能層の例について説明する。なお、以下の説明において、既に説明した陽極52、陰極58および発光層56については、重複する説明を省略する場合がある。
【0207】
陰極58と発光層56との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極58と発光層56との間に、電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合には、陰極58に近い側に位置する(接する)層を電子注入層といい、発光層56に近い側に位置する(電子注入層を除く)層を電子輸送層という。
【0208】
陽極52と発光層56との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層等を挙げることができる。陽極52と発光層56との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方が設けられる場合には、陽極52に近い側に位置する(接する)層を正孔注入層といい、発光層56に近い側に位置する(正孔注入層を除く)層を正孔輸送層という。
【0209】
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層ということがある。また、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層ということがある。
【0210】
本実施形態の有機EL素子26のとりうる層構成の具体的な例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
i)陽極/発光層/電子注入層/陰極
j)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す)
本実施の形態の有機EL素子は、2層以上の発光層を有していてもよく、2層の発光層を有する有機EL素子としては、以下のk)に示す層構成を挙げることができる。
k)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
また、3層以上の発光層を有する有機EL素子としては、具体的には、(電荷発生層/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層)を一つの繰り返し単位として、以下のl)に示す前記繰り返し単位を2つ以上含む層構成を挙げることができる。
l) 陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/(該繰り返し単位)/(該繰り返し単位)/・・・/陰極
上記層構成k)およびl)において、陽極、陰極、発光層以外の層は、所望により、または設計に応じて非形成とすることができる。
【0211】
ここで、電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物、酸化モリブデンからなる薄膜を挙げることができる。
【0212】
有機EL素子26を、基板100側から光を取り出すいわゆるボトムエミッション型とする場合には、発光層56に対して、基板100側に配置される層を、全て光透過性、すなわち透明である層で構成する。また、有機EL素子26を、陰極58側から光を取り出す場合には、発光層56に対して、陰極58側に配置される層を、全て光透過性である層により構成する。
【0213】
本実施形態の有機EL素子26は、さらに電極との密着性向上や、電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して膜厚が最大でも2nm程度の絶縁層が設けられてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために、互いに隣接する前述した各層間、すなわち各層の界面に薄いバッファー層が挿入されてもよい。
【0214】
以下、各層の具体的な構成について説明する。
【0215】
〈正孔注入層〉
正孔注入層は、陽極52からの正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0216】
正孔注入層は、例えば前述の正孔注入材料を溶媒に溶解した塗布液を塗布する塗布法によって成膜することができる。溶媒としては、正孔注入層の形成材料が溶解することを条件として任意好適なものを用いることができる。
【0217】
溶媒としては、例えば、水、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒を用いることができる。
【0218】
正孔注入層は、例えば塗布法により形成することができる。塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、およびインクジェットプリント法などを挙げることができる。これらの塗布法のうちの1つを用いて、陽極52が形成された基板100上に、前述した塗布液を塗布することによって、正孔注入層を形成することができる。
【0219】
正孔注入層の層厚は、用いる材料によって最適値が異なる。よって正孔注入層の層厚は、少なくともピンホールが非発生となり、駆動電圧と発光効率が適度な値となることを条件として任意好適な厚さとすることができる。
【0220】
正孔注入層の層厚は、厚すぎると素子の駆動電圧が高くなってしまう。よって、正孔注入層の膜厚は、例えば1nmから1μm、好ましくは2nmから500nm、さらに好ましくは5nmから200nmである。
【0221】
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、陽極または正孔注入層、若しくは陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する。正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0222】
これらのうち、正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等の高分子の正孔輸送材料を用いることができる。正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体などがさらに好ましい。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0223】
正孔輸送層の形成方法としては、低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法を挙げることができる。また、高分子の正孔輸送性材料を用いる場合には、溶液からの成膜による方法を挙げることができる。
【0224】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであればよく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒を挙げることができる。
【0225】
溶液からの成膜方法としては、正孔注入層を形成する方法として挙げた方法と同様の塗布法を挙げることができる。
【0226】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が弱いものが好適に用いられる。該高分子バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0227】
正孔輸送層の層厚は、用いる材料によって最適値が異なる。よって、少なくともピンホールが非発生となる厚さが必要であり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択される。正孔輸送層の層厚が厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなってしまうおそれがある。従って、正孔輸送層の層厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nmから500nmであり、さらに好ましくは5nmから200nmである。
【0228】
<電子輸送層>
電子輸送層は、陰極58、または電子注入層、若しくは陰極58により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。電子輸送層を構成する電子輸送性材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等を挙げることができる。
【0229】
これらのうち、電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0230】
電子輸送層の形成法として、低分子の電子輸送材料を用いる場合には、粉末からの真空蒸着法、若しくは溶液または溶融状態からの成膜による方法を挙げることができ、高分子の電子輸送材料を用いる場合には、溶液または溶融状態からの成膜による方法を挙げることができる。溶液または溶融状態からの成膜では、高分子バインダーをさらに併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔輸送層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができる。
【0231】
電子輸送層の層厚は、用いる材料によって最適値が異なる。よって、少なくともピンホールが非発生となる厚さが必要であり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよい。電子輸送層の層厚が厚すぎると素子の駆動電圧が高くなってしまうおそれがある。従って、電子輸送層の層厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nmから500nmであり、さらに好ましくは5nmから200nmである。
【0232】
<電子注入層>
電子注入層は、陰極58からの電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子注入層を構成する電子注入材料としては、発光層の種類に応じて、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または前記金属を1種類以上含む合金、または前記金属の酸化物、ハロゲン化物および炭酸化物、または前記物質の混合物などを挙げることができる。
【0233】
アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等を挙げることができる。
【0234】
また、アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0235】
電子注入層は、2層以上を積層した積層体であってもよい。積層体の具体例としては、LiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法等によって形成される。電子注入層の層厚としては、例えば1nmから1μm程度とすることができる。
【0236】
なお、本実施形態における発光層56は、発光層のみによって構成される例を説明した。しかしながら、他の実施形態として、発光層を複数層とし、発光層と発光層との間に、非発光の層が挿入されてもよい。このような発光層と発光層との間に挿入される層としては、例えば、電子ブロック層、正孔ブロック層などを挙げることができる。
【0237】
電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお、正孔注入層および/または正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製して、その電流値の減少により堰き止める効果を確認することができる。
【0238】
正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する層である。なお、電子注入層および/または電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねる場合がある。正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製して、その電流値の減少により堰き止める効果を確認することができる。
【0239】
〈発光ユニットの製造方法〉
前述した発光ユニット24の製造方法につき、図面を参照して詳細に説明する。図13−1から図13−10は、発光ユニット24の製造工程を示す概略図である。なお、図13−1から図13−10では、既に説明した図12と同じ位置で切断した切り口を示す。
まず、図13−1に示すように、光透過性基板本体110を準備する。光透過性基板本体110の厚み方向に対して垂直な面である2つの主面のうち一方の主面(以下、上面という場合がある)上に、例えばスパッタリング法、CVD法または真空蒸着法などを用いてZTOを堆積することで、光透過性であるアモルファス状のZTO導電性膜を形成する。
【0240】
次いで、例えばフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により、形成されたZTO導電性膜をパターニングする。これにより、光透過性基板本体110の上面上に、前述したトランジスタT1およびトランジスタT2を含む光透過性トランジスタ素子150のゲート電極152、キャパシタCの下部電極を含む複数の第1光透過性配線部122aからなる第1光透過性配線層122を形成する(第1配線形成工程)。ただし、これに限定されず、第1光透過性配線層122は、例えばゾル・ゲル法を使用した印刷技術やインクジェットプリンティング技術などのような塗布プロセス技術などにより形成することもできる。
【0241】
次に、図13−2に示すように、第1光透過性配線層122が形成された光透過性基板本体110上面上に、例えばスパッタリング法、CVD法または真空蒸着法などを用いてアルミナとハフニアとを順次堆積する。この工程により、光透過性絶縁性積層膜よりなる第1光透過性絶縁層142を形成する(第1光透過性絶縁層形成工程)。続いて、例えばフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により第1光透過性絶縁層142をパターニングして、第1光透過性配線層122の一部分を露出させる複数のコンタクトホール142aを形成する。ただし、コンタクトホール142aの形成は、これに限定されず、例えば上述のような塗布プロセス技術などを用いてコンタクトホール142aを備えた第1光透過性絶縁層142を形成してもよい。なお、本工程で形成された第1光透過性絶縁層142のうち、少なくともゲート電極152上の第1光透過性絶縁層142は、光透過性トランジスタ素子150のゲート絶縁膜158として機能し、少なくとも下部電極に対応する第1光透過性配線部122a上の第1光透過性絶縁層142は、キャパシタCの容量絶縁膜として機能する。詳細は後述するが、複数のコンタクトホール142aのうちの一部は、後の工程においてプラグ162用のヴィアホール160の一部分とされる。
【0242】
次いで、図13−3に示すように、コンタクトホール142aが形成された第1光透過性絶縁層142上に、例えばスパッタリング法、CVD法または真空蒸着法などを用いてZTOを堆積することで、光透過性のアモルファス状のZTO導電性膜を形成する。この際、プラグ162用のコンタクトホール142a内をZTO導電性膜で埋め込んでおいてもよい。続いて、例えばフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程によりZTO導電性膜をパターニングする。
【0243】
こうして、第1光透過性絶縁層142上に、光透過性トランジスタ素子150のドレイン電極154、ソース電極156、キャパシタCの上部電極を含む複数の第2光透過性配線部124aからなる第2光透過性配線層124を形成すると共に、第1光透過性絶縁層142のコンタクトホール142a内に第1光透過性配線層122と電気的に接続されたコンタクト内配線部124bを形成する(第2配線形成工程)。ただし、これに限定されず、例えば塗布プロセス技術などを用いて第2光透過性配線層124を形成してもよい。なお、この工程では、前述したプラグ162用のコンタクトホール142a内のZTO導電性膜を残存させてもよい。
【0244】
次に、図13−4に示すように、第2光透過性配線層124が形成された第1光透過性絶縁層142上に、例えば従来公知の常法に従うスパッタリング法、CVD法または真空蒸着法などを用いてZTOを堆積することで、キャリア濃度が、ZTO導電性膜のそれよりも低いZTO半導体膜を形成する(半導体層形成工程)。なお、上述したように、ZnとSnのモル比を調整することなどにより、ZTO半導体膜は、そのキャリア濃度が第1光透過性配線層122や第2光透過性配線層124を構成するZTO導電性膜よりも低い、光透過性半導体膜とすることができる。
【0245】
続いて、例えばフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程によりZTO半導体膜をパターニングすることで、第1光透過性絶縁層142上に、コンタクト内配線部124bを含む第2光透過性配線層124を覆う光透過性半導体層130を形成する。この工程において、プラグ162用のコンタクトホール142a内に形成されたZTO半導体膜が完全に除去される程度にオーバエッチングするのが好ましい。なお、形成された光透過性半導体層130のうち、ソース電極156およびドレイン電極154間の光透過性半導体層130は、光透過性トランジスタ素子150のチャネル層として機能する。
【0246】
本実施形態では、光透過性半導体層130と第2光透過性配線層124およびコンタクト内配線部124bとを同種の材料を用いて形成するため、光透過性半導体層130と第2光透過性配線層124とのエッチング工程における適切な選択比を得ることは困難である。そこで本実施形態のように、パターニング後の光透過性半導体層130が第2光透過性配線層124およびコンタクト内配線部124bを覆うように構成することで、エッチング工程時に第2光透過性配線層124およびコンタクト内配線部124bがエッチング雰囲気中に非暴露とされる。したがって、エッチング選択比を考慮することなく、光透過性半導体層130をパターニングすることが可能となる。ただし、これに限定されず、例えば上述のような塗布プロセス技術などを用いて光透過性半導体層130を形成してもよい。この場合には、形成した光透過性半導体層130をエッチング工程によりパターニングする必要がなくなるため、光透過性半導体層130は必ずしも第2光透過性配線層124およびコンタクト内配線部124bを覆っていなくともよい。
【0247】
次に、図13−5に示すように、光透過性半導体層130が形成された第1光透過性絶縁層142上に、例えば感光性レジスト液をスピン塗布し、これを露光および現像する。こうして、第1光透過性絶縁層142に形成されていたプラグ162用のコンタクトホール142aと連通するヴィアホール160を備え、光透過性な感光性樹脂よりなる第2光透過性絶縁層144を形成する(第2光透過性絶縁膜形成工程)。ただし、これに限定されず、例えば上述のような塗布プロセス技術などを用いてヴィアホール160を備えた第2光透過性絶縁層144を形成してもよい。
【0248】
次いで、図13−6に示すように、ヴィアホール160が形成された第2光透過性絶縁層144上に、例えば従来公知の常法に従うスパッタリング法、CVD法または真空蒸着法などを用いてZTOを堆積する。これにより、ヴィアホール160内を埋め込んで、第1光透過性配線層122と電気的に接続された光透過性なアモルファス状のプラグ162を形成する。なお、この際に形成される第2光透過性配線層124上の不要なZTO導電性膜は、例えばエッチバックなどの技術などを用いて除去する。ただし、これに限定されず、例えば上述のような塗布プロセス技術などを用いて第1光透過性絶縁層142および第2光透過性配線層124を貫通するプラグ162を形成してもよい。
【0249】
これまでに説明した工程を実施することで、いわゆるアレイ基板としてのアクティブマトリクス基板である基板100が製造される。
なお、以上の製造工程は、基板洗浄工程といった処理工程を適宜含むことができる。ここでは説明の簡略化のためにこれらの工程の詳細については説明を省略する。
【0250】
本実施形態による製造方法では、エッチング工程実施時に第2光透過性配線層124およびコンタクト内配線部124bが光透過性半導体層130で覆われているため、後のエッチング工程などにより既に形成された配線等の構成要素が受けるプロセスダメージを低減することができる。
【0251】
次に、図13−7に示すように、前述した材料を用いて、本実施形態では陽極である第1電極52を形成する。第1電極52は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等による成膜工程、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程によるパターニング工程といった工程により形成することができる。
【0252】
第1電極52は、例えば、ZTOとAgとZTOとを順次に積層することで、プラグ162と電気的に接続される光透過性であるZTO/Ag/ZTO積層構造とするのがよい。ただし、これに限定されず、好適な材料を選択して、例えば塗布法により形成してもよい。
【0253】
次いで、図13−8に示すように、第1電極52が形成された基板100上に、例えば感光性レジスト液をスピン塗布し、これを露光および現像することで、画素領域51を区画する領域に、光透過性である感光性樹脂よりなる隔壁60を形成する。ただし、これに限定されず、例えば塗布法により隔壁60を形成してもよい。
【0254】
次に、図13−9に示すように、第1電極52上に、発光層56を形成する。ただし、発光層56を形成する前に、前述した正孔注入層、正孔輸送層といった任意好適な発光層56以外の機能層を選択して成膜しておいてもよい。
【0255】
発光層56は、溶媒に、発光層56を構成する材料を溶解した塗布液を、例えば塗布法によって塗布することで形成することができる。発光材料を含む溶液を発光層を形成する領域の面上、もしくは転写用の膜を形成するための基体の上に塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成や多色の色分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。また、昇華性の低分子化合物の場合は、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザによる転写や熱転写により、所望の領域のみに発光層を形成してもよい。
【0256】
次いで、図13−10に示すように、発光層56上に、本実施形態では陰極である第2電極58を形成する。ただし、第2電極58を形成する前に、前述した電子輸送層、電子注入層といった任意好適な機能層を選択して成膜しておいてもよい。
【0257】
第2電極58は、例えば真空蒸着法などを用いてMgとAgとの合金材料を堆積することにより導電性を有する合金膜として形成するのがよい。この時、シャドウマスク法を用いて所望の領域以外に余分な合金膜が蒸着されることを防止することにより、少なくとも画素領域51全体に第2電極58を形成する。ただし、これに限定されず、例えば塗布法を用いて第2電極58を形成してもよい。
【0258】
次に、有機EL素子26が形成された基板100上全体に、例えばCVD法などを用いてSiOおよびSiNの多層膜を形成することにより、図12に示したパッシベーション膜70を形成して封止を行う。以上の工程を経ることで、本実施形態の発光ユニット24が製造される。
【0259】
本発明の照明光通信システムにおいては、照明用光源として、高速応答性を特長とする有機EL素子を用いる。これにより、従来の白色LEDと比較して、単位時間当たりのデータ送信量をより増加させることができるので、大容量のデータをより高速で伝送することができる。
【0260】
本発明の照明光通信システムにおいては、照明として高性能であり、かつ応答速度が速い有機EL素子を実現かつ適用することで、より高性能な照明光通信システムを提供することができる。
【0261】
本発明の送信装置においては、照明用光源を複数のサブ光源に分割し、複数のサブ光源を並列的に駆動させる。よって、送信データを並列的に伝送できるので、大容量のデータをより高速に伝送することができる。
【0262】
また、サブ光源を複数の発光ユニットで構成することにより、照明光通信を行うのに必要な光量を確保するのがより容易になる。さらに、照明用光源を構成するすべての発光ユニットに対する送信データの書き込みを、走査線の選択による部分的な書き込みを繰り返すことによって順次行う。
【0263】
こうすることで、駆動能力の高い駆動回路が要求されないため、走査線の選択やデータ線へのデータ出力をより高速化できる。結果として、発光ユニットに対する送信データの書き込みのさらなる高速化を図ることが可能になる。
【0264】
加えて、本発明の照明光通信システム、およびこの照明光通信システムに適用して好適な送信装置の発光ユニットは、有機EL素子を備えている。有機EL素子は、自由度の大きなサイズ設計が可能であり、サイズのさらなる小型化が可能であり、かつ応答速度のさらなる高速化が可能であるといった優れた特長を有している。
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】照明光通信システムの概略的説明図(1)である。
【図2】照明光通信システムの概略的説明図(2)である。
【図3】照明光通信システムの概略的説明図(3)である。
【図4】照明光通信システムの概略的説明図(4)である。
【図5】発光ユニットの回路図(1)である。
【図6】発光ユニットの回路図(2)である。
【図7】発光ユニットの回路図(3)である。
【図8】発光ユニットの動作説明図である。
【図9】照明光通信システムの概略的説明図(5)である。
【図10】照明用光源の動作説明図である。
【図11】発光ユニットの構成を説明するための概略的な平面図である。
【図12】発光ユニットの構成を説明するための切断面の切り口を連続的に示す概略図である。
【図13−1】発光ユニットの製造工程を示す概略図(1)である。
【図13−2】発光ユニットの製造工程を示す概略図(2)である。
【図13−3】発光ユニットの製造工程を示す概略図(3)である。
【図13−4】発光ユニットの製造工程を示す概略図(4)である。
【図13−5】発光ユニットの製造工程を示す概略図(5)である。
【図13−6】発光ユニットの製造工程を示す概略図(6)である。
【図13−7】発光ユニットの製造工程を示す概略図(7)である。
【図13−8】発光ユニットの製造工程を示す概略図(8)である。
【図13−9】発光ユニットの製造工程を示す概略図(9)である。
【図13−10】発光ユニットの製造工程を示す概略図(10)である。
【符号の説明】
【0266】
10:照明光通信システム
20:送信装置
22:照明用光源
23:サブ光源
23A:第1サブ光源
23B:第2サブ光源
23C:第3サブ光源
23D:第4サブ光源
24:発光ユニット
26:有機EL素子
28:(光透過性)制御回路
29:直列/並列変換回路
30:受信装置
32:受光部
34:復調部
36:レンズ
38:並列/直列変換回路
42:走査線駆動回路
44:データ線駆動回路
51:画素領域
52:第1電極(陽極)
56:発光層
58:第2電極(陰極)
60:隔壁
70:パッシベーション膜(封止層)
100:基板
100a:第1主面
100b:第2主面
110:光透過性基板本体
122:第1光透過性配線層
122a:第1光透過性配線部
122b:冗長配線部
124:第2光透過性配線層
124a:第2光透過性配線部
124b:コンタクト内配線部
130:光透過性半導体層
140:光透過性絶縁層
142:第1光透過性絶縁層
142a:コンタクトホール
144:第2光透過性絶縁層
150:光透過性トランジスタ素子
152:ゲート電極
154:ドレイン電極
156:ソース電極
158:ゲート絶縁膜
160:ヴィアホール
162:プラグ
X:データ線
Y:走査線
T1、T2、T3、T4、T5:トランジスタ
C:キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データに基づいて変調された変調光を出射する照明用光源を備える送信装置であって、
照明用光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子を含んで構成され、
送信装置は、
光透過性基板本体と、
有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記光透過性基板本体および前記有機エレクトロルミネッセンス素子間に介在して配置され、かつ前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光を制御する光透過性制御回路とを含み、
該光透過性制御回路は、前記光透過性基板本体の厚み方向の一方から見て、前記有機エレクトロルミネッセンス素子に重ねて配置される、照明光通信システム用の送信装置。
【請求項2】
前記照明用光源は、それぞれの発光面積が10−8cmから10−1cmである複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える、請求項1に記載の照明光通信システム用の送信装置。
【請求項3】
前記照明用光源が、前記送信データに基づいて変調された変調光を出射する通信用の有機エレクトロルミネッセンス素子と、非変調光を出射する照明用の有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える、請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
通信用の前記有機エレクトロルミネッセンス素子の前記発光層が、蛍光を発光する発光材料を用いて形成され、かつ照明用の前記有機エレクトロルミネッセンス素子の前記発光層が、リン光を発光する発光材料を用いて形成されてなる請求項3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記制御回路は、光透過性半導体層を含む光透過性トランジスタ素子と、光透過性配線層とを備え、
前記光透過性配線層が、主配線部と、該主配線部から分岐して前記光透過性トランジスタ素子に接続する副配線部とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項6】
前記光透過性配線層が、無機酸化物導電体材料よりなる、請求項5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記光透過性半導体層が、無機酸化物半導体材料よりなる、請求項5または6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記光透過性配線層が、亜鉛錫酸化物またはインジウム含有酸化物から構成される導電体材料よりなり、
前記光透過性半導体層が、前記光透過性配線層よりもキャリア濃度が低く、亜鉛錫酸化物またはインジウム含有酸化物から構成される半導体材料よりなる、請求項5から7のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項9】
前記光透過性配線層の一部分が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子における電極に相当する、請求項5から8のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項10】
前記光透過性制御回路は、光透過性絶縁層をさらに備え、
前記光透過性配線層の一部分が、前記光透過性トランジスタ素子におけるゲート電極、ソース電極およびドレイン電極に相当し、かつ前記光透過性絶縁層の一部分が前記光透過性トランジスタ素子におけるゲート絶縁膜に相当する、請求項5から9のいずれか一項に記載の送信装置。
【請求項11】
変調光を出射する照明用光源を備える請求項1から10のいずれか一項に記載の送信装置と、前記照明用光源から出射された前記変調光を受光して電気信号に変換し、該電気信号を復調して受信データを生成する受信装置とを具備する、照明光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図13−4】
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【図13−5】
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【図13−6】
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【図13−7】
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【図13−8】
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【図13−9】
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【図13−10】
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【公開番号】特開2010−103778(P2010−103778A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273622(P2008−273622)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】