説明

照明器具

【課題】光の配光態様を制御する配光制御部材を備える照明器具において、配光制御をより精密に行う。
【解決手段】光源から出射される光Lの進路上に中空ボックス4が配置され、その上面が半球状の凹部4aに形成される。中空ボックス4の内部空間4bに流体Rが注入されると、中空ボックス4の全体が実質的に凹レンズを構成し、光Lのビーム角が拡大される(図2(a))。中空ボックス4の内部空間4bから流体Rが排出されると、光Lはビーム角を変更されることなく中空ボックス4を貫いて進行する(図2(b))。中空ボックス4を構成する材質の屈折率と流体Rの屈折率とが略同等とされることによって内部空間4bを形成する壁面4cと、内部空間4bに注入された流体Rとの間に光学的境界部分が生じず、光源から出射された光Lが、流体Rと壁面4cとの間で不必要な屈折をすることがなくなり、光Lはビーム形状を維持したままビーム角が拡大される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射される光の配光態様を制御する配光制御部材を備える照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光源を覆うグローブを液体の注入できる有底形状として該グローブ内に液体が注入された状態と液体が注入されていない状態との間で切替えられるように構成し、光源から出射されてグローブの底面を通って下方へ広がる光の分布を変化させることができる照明器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この照明器具では、例えば、グローブの底面が下方向きに湾曲した形状である場合に、グローブ内に液体を注入したときは、グローブの底部に溜まった液体によって凸レンズと同様の光学的作用が得られ光源から出射された光がスポットライト状に収束される。また、グローブの底面が上方向きに湾曲した形状である場合には、グローブの底部に溜まった液体によって凹レンズと同様の光学的作用が得られるようになっている。
【特許文献1】特開昭55−98405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光源から出射された光を正確にスポットライト状に収束させるためには、グローブの底面に溜まった液体が正しく凸レンズ形状になるようにするだけでは不十分であり、光源から出射された光が液体を通過してグローブの底面から下方へ出射する過程において不必要な屈折をしないように図らなければならない。ところが、上記特許文献1に記載の照明器具では、グローブの底面と液体との間に材質の相違に伴う光学的境界が生じて、この光学的境界部分で光が不必要な屈折をし、光のビームが正しくスポットライト状に収束しない虞がある。グローブの底面が上方向きに湾曲され、グローブの底部に溜まった液体によって実質的な凹レンズを形成させる場合も同様に光のビームが正確に制御されない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであり、光の配光態様を制御する配光制御部材を備える照明器具において、配光制御をより精密に行うことができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、光源と、該光源から出射される光の配光態様を制御する配光制御部材と、を備える照明器具であって、前記配光制御部材は、流体を注入及び排出可能な内部空間を有する光透過性の中空ボックスを備え、前記中空ボックスの内部空間を形成する周壁の屈折率と、前記内部空間に注入される流体の屈折率とを略同等としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の照明器具において、前記流体に光拡散物が混入されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の照明器具において、前記配光制御部材は、前記光源からの光を拡散する光拡散面を有する光学部材をさらに備え、前記光学部材は、その光拡散面が前記中空ボックスに対向するように配置され、前記中空ボックスの内部空間に流体を注入することによって前記光拡散面の光拡散作用を消失させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、流体を注入可能な内部空間の周壁の屈折率と流体自体の屈折率とを略同等としたので、内部空間に流体を注入したときに、流体と中空ボックスとの間に光学的境界部分が生じず、光源から出射される光の配光制御をより精密に行うことができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、中空ボックスに注入する流体に光拡散物を混入するので、拡散光を簡単に得ることができる。また、流体に混入する光拡散物の混入割合を変化させることによって本照明器具から出射される光の配光態様を様々に変化させることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、中空ボックスが光学部材の光拡散面に対向して配置され、中空ボックスに流体を注入することによって光拡散面の光拡散作用が消失されるので、本照明器具から出射される光を拡散光と非拡散光との間で簡単に切替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る照明器具について図1及び図2(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態の照明器具1は、図1に示されるように、光源2と、光源2から出射される光Lの配光態様を制御する配光制御装置3(配光制御部材)と、を備える。光源2は、本実施形態では球形の蛍光灯であるが、ハロゲンランプ、白熱灯、LED等の他の種類のものであってもよい。また、光源2は、反射板(不図示)を有して出射光Lが略同一方向へ向かうビーム状になるように構成されている。本実施形態の場合は、光源2からの光Lが上方へ向かうビーム状になっている。
【0013】
配光制御装置3は、上面に半球状の凹部4aを有する光透過性の中空ボックス4と、該中空ボックス4の内部空間4bに透明の流体Rを注入及び排出するポンプ装置5と、を備える。中空ボックス4は、屈折率が1.49のアクリル樹脂を射出成型したものであり、図2(a)、(b)に示すように、周囲が薄い壁面4cに形成され、この壁面4cに囲まれた内部が流体Rを注入可能な閉じた空間4bに構成されている。なお、中空ボックス4の素材は、アクリル樹脂以外にも種々のものが可能であるが、それらの屈折率が流体Rの屈折率と同等であることが望ましい。屈折率に関する中空ボックス4と流体Rの関係は後に詳述する。
【0014】
ポンプ装置5は、中空ボックス4の内部空間4bに連通するパイプ6、7により接続されたバッファボックス8、9と、該バッファボックス8、9にパイプ11、12、及び開閉バルブ13、14を介して接続された空気加圧ポンプ15と、を備える。流体Rを注入するためのパイプ6は内部空間4bの下部に連結され、内部空間4bから空気を排出するためのパイプ7は内部空間4bの上部に連結されている。また、バッファボックス8内には予め流体Rが充填されている。
【0015】
中空ボックス4の内部空間4bへの流体Rの注入は、空気加圧ポンプ15が作動した状態で開閉バルブ14を閉じて開閉バルブ13を開けることによって、バッファボックス8内の流体Rをパイプ6を通じて中空ボックス4内へ押し出すことにより行われる。内部空間4bに流体Rが注入されるときに内部空間4bから排出される空気は、内部空間4bの上部に連結されたパイプ7を通じてバッファボックス9内へと排出される。流体Rがパイプ6を通じて中空ボックス4内に注入された状態を図2(a)に示す。この状態で中空ボックス4は実質的に1つの凹レンズを構成し、光源2から出射された光Lは、中空ボックス4を通過する間にビーム角を拡大される。
【0016】
中空ボックス4の内部空間4bからの流体Rの排出は、開閉バルブ13を閉じて開閉バルブ14を開けることによって、バッファボックス9内の空気をパイプ7を通じて中空ボックス4の内部空間4bへ流入させることにより行われる。内部空間4bの上方に空気が注入されることによって内部空間4bから排出される流体Rは、パイプ6を通じてバッファボックス8内へ戻される。流体Rが排出されて空になった中空ボックス4の状態を図2(b)に示す。この状態で光源2から出射された光Lは、ビーム角を変更されることなく中空ボックス4を貫いて直進する。
【0017】
以上のように、開閉バルブ13、14の開閉を制御することによって、中空ボックス4の内部空間4b内に流体Rが注入された状態と、内部空間4bから流体Rが排出された状態とを容易に切替えることができ、光源2から出射される光Lの配光態様を容易に切替えることができる。
【0018】
そして、本実施形態では、流体Rとして、中空ボックス4を構成するアクリル樹脂の屈折率1.49と略同等の屈折率1.48を有するパラフィン油が用いられる。これによって中空ボックス4の内部空間4bに流体Rが注入されたときに流体Rと中空ボックス4の壁面4cとの間に光学的境界部分が生じず、光源2から出射された光Lが、流体Rと壁面4cとの間で不必要な屈折をすることがなく、ビーム形状を維持したままビーム角が拡大される。
【0019】
なお、流体Rは、低揮発性であって高温における安定性があり、光による変色劣化性がない物質であればパラフィン油に限定されず種々のものを用いることができるが、中空ボックス4を構成する物質の屈折率と略同等の屈折率を有することが望ましい。例えば、上記のアクリル樹脂(屈折率:1.49)とパラフィン油(屈折率:1.48)の組合せ以外にも、中空ボックス4の材質として硬質ガラス(屈折率:1.51)を用い、流体Rとしてアルキルナフタレン(屈折率:1.48)を用いることができる。
【0020】
また、中空ボックス4を構成する光透過性の素材としては、他にもポリカーボネート樹脂(屈折率:1.6)、ポリスチレン樹脂(屈折率:1.6)、ポリエチレン樹脂(屈折率:1.53)、ソーダガラス(屈折率:1.52)等を用いることができ、流体Rとしては、水(屈折率:1.334)、シリコン油(屈折率:1.46)、フッ素系不活性液体(屈折率:1.36)、アルキルナフタレン(屈折率:1.48)等を用いることができる。これらの中から屈折率の値が近い材質同士を中空ボックス4の素材及び流体Rとして選択することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、図3を参照して説明する。本実施形態の照明器具1は第1の実施形態と略同一の構成であり、異なる点は中空ボックス4が上方に湾曲した凸レンズ形状とされている点と、流体Rに酸化チタン粒子、ガラスビーズ、気泡等の光拡散物pを混入した点である。中空ボックス4を構成する材質の屈折率と流体Rの屈折率とは、第1の実施形態と同様に略同等とされる。
【0022】
内部空間4bから空気を排出するためのパイプ7は、中空ボックス4が凸レンズ形状とされることに伴って凸レンズ形状の頂部4dに連結される。また、第1の実施形態と同様に、開閉バルブ13、14を所定の順序で開閉することによって中空ボックス4の内部空間4b内に流体Rを注入及び排出する。内部空間4bに流体Rが注入された状態では、中空ボックス4全体が実質的に1つの凸レンズを構成し、光源2から出射された光Lのビームがスポットライト状に収束される。内部空間4bから流体Rが排出された状態では、光源2から出射された光Lは、空の中空ボックス4を貫いて直進しビーム角は変更されない。
【0023】
ここで、本実施形態では、流体Rに光拡散物pが混入されているので、光拡散物pの混入量に応じて中空ボックス4に流体Rが注入されたときの本照明器具から出射する光の配光態様を様々に変化させることができる。具体的には、流体Rに光拡散物pを少量混入することによって、光源2から出射された光が内部空間4b内の流体R中を通るときに僅かに拡散し、中空ボックス4を出た光のビームを輪郭のぼやけたスポットライト状にすることができる。この場合には凸レンズを構成する中空ボックス4による光の収束効果が若干低下し、被照射物又は被照射面の照度はやや低下するが、被照射物の周囲の空間の照度は増加する。
【0024】
また、流体Rに光拡散物pを多量に混入することによって、光源2から出射された光が内部空間4b内の流体R中を通るときに十分に拡散し、中空ボックス4を出た光を拡散光とすることができる。この場合には凸レンズを構成する中空ボックス4による光の収束効果が消失する。なお、流体Rに対する光拡散物pの混入割合は、流体Rが100重量部に対して光拡散物pが0.05〜3重量部の割合が標準である。また、光拡散物としては、酸化チタン粒子、ガラスビーズ、気泡以外にも、ポリシロキサン系重合体、もしくはその架橋物からなる微粒子、フッ素系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂架橋物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、タルク等を用いることができる。
【0025】
さらに、流体Rに着色材として染料又は顔料を含ませて光源2から出射された光に着色することができる。この場合の着色材としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系の有機顔料、有機染料や酸化物無機顔料、水酸化物無機顔料、金属顔料を用いることができる。
【0026】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について、図4(a)、(b)及び図5を参照して説明する。本実施形態の照明器具1は、第1の実施形態と同様に、光源2と、光源2から出射される光Lの配光態様を制御する配光制御装置33(配光制御部材)と、を備える。光源2は断面が楕円状の反射板2aを有し、光源2からの光Lが略平行になって前方へ出射される。
【0027】
配光制御装置33は、中空ボックス34と、該中空ボックス34の内部空間34bに透明の流体Rを注入及び排出するポンプ装置35と、を備え、さらに中空ボックス34の光源2側に光源2からの光Lをバットウイング状に拡散する三角錘プリズム板31(光学部材)を備える。
【0028】
三角錘プリズム板31は、光源2側の面が平面31aであり、他側の面が多数の小さな三角錘を有する光拡散面31bに構成されており、この光拡散面31bに対向するように中空ボックス34が配置されている。中空ボックス34の光が出射される側の面34aは滑らかな平面に形成されている。また、三角錘プリズム板31を構成する材質、中空ボックス34を構成する材質、及び流体Rは、略同等の屈折率を有するものに選択されている。例えば、三角錘プリズム板31と中空ボックス34とが硬質ガラス(屈折率:1.51)から構成され、流体Rがパラフィン油(屈折率:1.48)から構成される。
【0029】
本実施形態のポンプ装置35は、中空ボックス34の下部に連結された流体注入用のパイプ36と、該パイプ36に開閉バルブ38を介して連結されたシリンダ40と、中空ボックス34の上部に連結された開閉バルブ39を有する空気排出用のパイプ37と、を備える。シリンダ40の内部には予め流体Rが注入されており、開閉バルブ38、39を開いた上で、図示しない駆動源によってピストン40aが流体Rを吐出する方向(矢印A)へ移動されると、流体Rが中空ボックス34の内部空間34bへ注入される。流体Rの注入動作が終了すると、開閉バルブ38、39は閉じられる。図4(a)は中空ボックス34の内部空間34b内に流体Rが注入された状態を示す。
【0030】
また、開閉バルブ38、39を開いた上で、ピストン40aが流体Rを吸引する方向(矢印B)へ移動されると、流体Rが中空ボックス34の内部空間34bからシリンダ40へと戻される。流体Rの排出動作が終了すると、開閉バルブ38、39は閉じられる。図4(b)は中空ボックス34の内部空間34bから流体Rが排出された状態を示す。
【0031】
以上のようにして流体Rが中空ボックス34内に注入された状態と中空ボックス34から排出された状態とに切替えることができ、光の配光態様(曲線)を図4(a)に示したように、スポットライト状と、図4(b)に示したように、バットウイング状との間で簡単に切替えることができる。
【0032】
これについてさらに詳述する。流体Rが中空ボックス34の内部空間34bへ注入されると、三角錘プリズム板31の光拡散面31bが、対向する中空ボックス34内の流体Rによって全面的に覆われるので光拡散作用が消失され、光源2から出射された略平行な光Lがその直進性を維持したまま配光制御装置33を通過して本照明器具1の前方へ出射される。
【0033】
また、流体Rが中空ボックス34の内部空間34bから排出されると、三角錘プリズム板31の光拡散面31bが空気層に露出されるので、光拡散面31bが有する本来の光拡散作用が働き、光源2から出射された略平行な光Lがバットウイング状に拡散されて本照明器具1の前方へ出射される。
【0034】
なお、光拡散面を有する光学部材としては、三角錘プリズム板31に限られず表面に細かな凹凸を有するすりガラス状の光学部材等の種々のものを用いることができる。また、本実施形態において中空ボックス34に注入される流体R中に光拡散物を混入することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明器具の斜視図。
【図2】(a)は同照明器具の中空ボックスに流体が注入された状態の側断面図、(b)は同照明器具の中空ボックスから流体が排出された状態の側断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る照明器具における中空ボックスに流体が注入された状態の側断面図。
【図4】(a)は本発明の第3の実施形態に係る照明器具において中空ボックスに流体が注入された状態の側断面図、(b)は同照明器具において中空ボックスから流体が排出された状態の側断面図。
【図5】同照明器具における光拡散面を有する三角錘プリズム板の正面図。
【符号の説明】
【0036】
1 照明器具
2 光源
3 配光制御装置(配光制御部材)
4 中空ボックス
4b 内部空間
4c 壁面(周壁)
31 三角錘プリズム板(光学部材)
31b 光拡散面
33 配光制御装置(配光制御部材)
34 中空ボックス
34b 内部空間
L 光
R 流体
p 光拡散物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源から出射される光の配光態様を制御する配光制御部材と、を備える照明器具であって、
前記配光制御部材は、
流体を注入及び排出可能な内部空間を有する光透過性の中空ボックスを備え、
前記中空ボックスの内部空間を形成する周壁の屈折率と、前記内部空間に注入される流体の屈折率とを略同等としたことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記流体に光拡散物が混入されていることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記配光制御部材は、前記光源からの光を拡散する光拡散面を有する光学部材をさらに備え、
前記光学部材は、その光拡散面が前記中空ボックスに対向するように配置され、前記中空ボックスの内部空間に流体を注入することによって前記光拡散面の光拡散作用を消失させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−266521(P2009−266521A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113502(P2008−113502)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】