説明

照明式パネル及びその製造方法

【課題】光沢のある金属調装飾を備え、且つ製造容易な照明式パネルを提供する。
【解決手段】
金属調装飾部及び照明部5を含む意匠面4を、フィルムインサート射出成形によって樹脂基材9の表面に積層一体化された装飾用フィルム10によって形成し、該装飾用フィルム10を、光を部分的に透過可能な薄膜金属層11と、該薄膜金属層11の裏面側に設けられる厚さ100μm以上の、光を透過可能な断熱樹脂層12と、該薄膜金属層11の表面側に設けられる透明な表面樹脂層13と、該表面樹脂層13の表面側に印刷される表面印刷層14とを備える構成とし、さらに、金属調装飾部を形成する部分は、前記表面印刷層14を透明にするか、または表面印刷層14を形成しない構成とし、照明部5を形成する部分は、表面印刷層14を透光性を有するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエアコン操作部やシフトレバー操作部などに配設される照明式パネルであって、その意匠面に金属調の装飾部を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエアコン操作部やシフトレバー操作部などには、透光性を有する照明部を意匠面に備える照明式パネルが知られている。こうした、照明式パネルは、一般的に、装飾用フィルムを表面に積層一体化してなる樹脂成形品であり、照明部の部分が透光性を有しており、照明式パネルの裏側からの照明によって照明部が発光するようになっている(例えば、特許文献1,2)。また、こうした照明式パネルの意匠面には、照明部とは別の箇所に光沢を有する金属調の装飾が施された金属調装飾部が設けられることが多い。
【0003】
金属調装飾部を備える従来の照明式パネル1aを図7,8に示す。かかる照明式パネル1aは、自動車のシフトレバー操作部に配設されるものであって、シフトレバーLが貫通するレバー用開口部7aが中央に開口するパネル本体2aと、該パネル本体2aの外周部に設けられるネジ止め用の固定部3aとを備えてなる。パネル本体2aの上面には装飾用フィルム10aが積層一体化されており、当該装飾用フィルム10aによって意匠面4aが形成されている。かかる意匠面4aにおいて、レバー用開口部7aの左脇には、「P」,「R」,「N」,「D」の文字が記された矩形の表示領域8aが形成される。この表示領域8aは現在のギアを表示するものであり、現在のギアに対応した文字が発光するようになっている。すなわち、かかる照明式パネル1aにおいては、「P」,「R」,「N」,「D」の各文字が照明部5aを構成している。照明部5aの各文字の部分は、装飾用フィルム10a及び樹脂基材9aが透光性を有しており、裏面側から照らされると、照らされた文字が発光する。一方、金属調装飾部6aは、レバー用開口部7aの周縁部に設けられる。なお、図8において、21aは光透過性の樹脂で構成された光透過性樹脂部であり、22aは光を透過しない樹脂で構成された光不透過性樹脂部である。また、23aは裏面側の照明を透過させる照明用開口部である。
【0004】
【特許文献1】特開2007−112196号公報
【特許文献2】特開2007−331185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の照明式パネル1aは、装飾用フィルム11aをフィルムインサート射出成形によって樹脂基材9aの表面に積層一体化することにより製造される。しかしながら、図8に示されるように、金属調装飾部6aは、装飾用フィルム10aが積層一体化された部品24に形成されるのではなく、メッキ処理した別部品25によって構成されている。このため、金属調装飾部6aを備える従来の照明式パネル1aでは、少なくとも、装飾用フィルム10aを積層した部品24と、金属調装飾部6aを構成するメッキ部品25との2部品が必要となっており、金型コストや組立コストが高いものとなっていた。また、意匠面4aに表れる2つの部品24,25の隙間が、意匠性を低下させるという問題もあった。
【0006】
こうした問題に対して、装飾用フィルムに光輝インキによる印刷を施すことによって、メッキ処理による金属調装飾部を代替し、意匠面全体を一部品で構成し、隙間のないものとすることが提案される。しかしながら、光輝インキは金属粉を20%程度しか含んでいないため、光輝インキによる印刷では十分な金属光沢を得ることができない。
【0007】
また、装飾用フィルムに箔押しすることによって、メッキ処理による金属調装飾部を代替することも提案される。しかしながら、箔押しされた金属箔は、金属100%ではあるが、フィルムインサート射出成形の際に溶融樹脂の熱で白化してしまうため、かかる方法でも十分な金属光沢を得ることができない。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、光沢のある金属調装飾部を備え、且つ、製造容易な照明式パネル及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、裏面側からの照明により発光する照明部と、金属調の光沢を有する金属調装飾部とを意匠面に備える照明式パネルであって、照明部及び金属調装飾部を含む意匠面が、樹脂基材の表面に積層一体化された装飾用フィルムによって形成されており、該装飾用フィルムは、金属光沢を有し、且つ、光を部分的に透過可能な薄膜金属層と、光を透過可能な薄膜金属層と、該薄膜金属層の裏面側に設けられる厚さ100μm以上の、光を透過可能な断熱樹脂層と、該薄膜金属層の表面側に設けられる透明な表面樹脂層と、該表面樹脂層の表面側に印刷される表面印刷層とを備えてなり、 前記表面印刷層は、金属調装飾部を形成する部分が透明であるか又は欠落しており、金属調装飾部を形成しない部分は不透明なものであり、さらに、照明部を形成する部分が透光性を有していることを特徴とする照明式パネルである。
【0010】
ここで、本発明においては「透明」とは、光を透過し、且つ、物質を通してその向こう側が透けて見える性質を指し、色彩を有するものを含む。また、「透光性」とは、光を透過し、且つ、物質を通して向こう側の形状等を明確に認識できない性質を指し、色彩を有するものを含む。また、「不透明」とは「透明」でない性質を指す。また、「光を透過可能」とは、「透明」及び「透光性」を包含する性質である。
【0011】
本発明にあっては、図1に示すように、金属調装飾部6の光沢を形成することとなる薄膜金属層11は、装飾用フィルム10に層構造として組み込まれる。装飾用フィルム10の表面印刷層14は、金属調装飾部6を形成する部分が透明であるか又は欠落しているため、金属調装飾部6においては薄膜金属層11が表面から視認可能となり、金属調の光沢を有する装飾が得られる。ここで、薄膜金属層11は、その裏面側に断熱樹脂層12を備えており、フィルムインサート射出成形の際には溶融樹脂の熱から保護されるため、本発明に係る金属調装飾部6はメッキ処理同様の光沢に富んだものとなる。
【0012】
一方、意匠面4の金属調装飾部6以外の部分では、薄膜金属層11は不透明な表面印刷層14によって覆われるため、当該部分では薄膜金属層11の光沢に依存しない表面印刷層14に基づく装飾が得られる。また、本発明に係る装飾用フィルム10では薄膜金属層が層構造として組み込まれているが、該薄膜金属層11は光を透過可能であるため、照明部5において、装飾用フィルム10の全ての層を光が透過でき、パネル裏面からの照明光によって照明部5を適切に発光させることができる。
【0013】
このように、本発明の構成によれば、一枚の装飾用フィルム上に、照明部と光沢に富んだ金属調装飾部を形成でき、照明式パネルを一部品化することが可能となる。また、薄膜金属層は、局所的に金属薄膜を形成するメッキ処理や箔押しとは異なり、装飾用フィルムに層構造として組み込まれるものであるから、箔押しに比べて低廉且つ容易に製造できる。
【0014】
また、本発明の照明式パネルにおいては、前記薄膜金属層の膜厚が300〜800Åであることが提案される。かかる場合には、薄膜金属層が、金属調装飾部を形成するのに適した光沢と、照明部を形成するのに適した光透過性を併せ持つものとなる。
【0015】
また、本発明は、裏面側からの照明により発光する照明部と、金属調の光沢を有する金属調装飾部とを意匠面に備える照明式パネルの製造方法であって、金属光沢を有し、且つ、光を部分的に透過可能な薄膜金属層と、該薄膜金属層の裏面側に設けられる厚さ100μm以上の、光を透過可能な断熱樹脂層と、該薄膜金属層の表面側に設けられる透明な表面樹脂層とを備えてなる多層フィルムを製造するフィルム製造工程と、前記多層フィルムの表面側に装飾用の印刷を行い装飾用フィルムを得る印刷工程と、該装飾用フィルムを裁断する裁断工程と、裁断された装飾用フィルムを成形型に配置してフィルムインサート射出成形を行い、樹脂基材の表面に装飾用フィルムを積層一体化する成形工程とを含むものであり、前記印刷工程にあっては、金属調装飾部を形成することとなる部分は、透明な印刷を行うか、又は印刷を行わず、金属調装飾部を形成しない部分は不透明な印刷を行い、更に、照明部を形成することとなる部分は透光性の印刷を行うことを特徴とする照明式パネルの製造方法である。
【0016】
かかる製造方法は、装飾用フィルムを構成することとなる多層フィルムに光沢を有し、且つ光を透過する薄膜金属層を設けておき、さらに、該薄膜金属層の表面側に不透明な印刷を施すことによって、金属調装飾部以外の部分に薄膜金属層に依存しない装飾を施すと同時に、金属調装飾部にのみ薄膜金属層による装飾を施すものである。かかる製造方法にあっては、装飾用フィルムに局所的に金属薄膜を形成することが不要であり、また、薄膜金属層を備える装飾用フィルムは長尺ものとして低廉に製造できるため、メッキ処理や箔押しによって金属調装飾部を形成する方法に比べて、照明式パネルを低廉且つ容易に製造できる。また、薄膜金属層は光を透過するものであるため、照明部の透光性を阻害しない。さらには、装飾用フィルムの薄膜金属層の裏面側に断熱樹脂層を設けておくことにより、成形工程において薄膜金属層の光沢が溶融樹脂の熱によって劣化するのを抑えることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の照明式パネルは、照明部及び金属調装飾部の両方を一枚の装飾用フィルムで形成できるため、金属調装飾部を別部品で形成している従来の照明式パネルに比べて低コストで製造できる。また、断熱樹脂層によって裏打ちされた薄膜金属層は白化しておらず、金属調装飾部はメッキ処理によって形成されたものと同等の光沢を有している。さらには、金属調装飾部とその他の装飾部を一枚の装飾用フィルムで形成できるため、意匠面をシームレスで、意匠性に富んだものにできる。したがって、本発明の照明式パネルによれば、光沢に富んだ金属調装飾部を有する照明式パネルを低コストで実現可能となる。また、本発明の照明式パネルの製造方法によれば、金属光沢に富んだ照明式パネルを容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の照明式パネルは、樹脂基材の表面に装飾用フィルムを積層一体化してなるものであり、自動車用のエアコン操作部やシフトレバー操作部、スマートキー、スカフプレート、メータベゼル、ハンドルベゼルなどに配設されるものである。
【0019】
本発明の照明式パネルは装飾用フィルムに特徴があり、樹脂基材の形状や材料は、既存の照明式パネルと同じものを採用できる。樹脂基材の材料としては、ABS樹脂、ポリカABS、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル樹脂などが挙げられる。樹脂基材は多色成形品であってもよい。
【0020】
装飾用フィルムは、フィルムインサート射出成形等によって、樹脂基材の表面に積層一体化されたものである。この装飾用フィルム10は、図1に示すように、光を部分的に透過可能な薄膜金属層11と、該薄膜金属層11の裏面側に設けられる厚さ100μm以上の、光を透過可能な断熱樹脂層12と、該薄膜金属層11の表面側に設けられる透明な表面樹脂層13と、該表面樹脂層13の表面側に印刷される表面印刷層14とを備えてなる多層構造を有する。かかる装飾用フィルム10にあって、表面樹脂層13、薄膜金属層11及び断熱樹脂層12は装飾用フィルム10の略全面にわたって形成されることが望ましい。
【0021】
薄膜金属層11は、一部の光を反射して一部の光を透過するものであり、樹脂フィルムに真空蒸着してなる真空蒸着膜や、樹脂フィルムにスパッタリングしてなるスパッタ膜が好適に用いられる。真空蒸着膜やスパッタ膜を用いる場合には、基材となる樹脂フィルムは表面樹脂層13又は断熱樹脂層12の一部又は全てを構成することとなる。薄膜金属層11の材料は特に限定されないが、好ましいものとしては、アルミニウム、インジウム、ニッケル、クロム、ステンレスなどが挙げられる。薄膜金属層11の膜厚は300〜800Åが好ましく、400〜700Åがより好ましい。厚さが300Å以上であれば薄膜金属層11はメッキ処理と同等の金属光沢を有するものとなり、400Å以上であれば、より好ましい金属光沢が得られる。また、厚さが800Å以下であれば、照明部5は裏面からの光を十分に透過することができ、700Å以下であれば、より十分な光量を透過できる。
【0022】
表面樹脂層13の材質は特に限定されるものではないが、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどが好適に用いられる。表面樹脂層13は、複数の樹脂層を多層化したものであってもかまわない。表面樹脂層13の厚さは特に限定されるものではないが、25〜200μm程度が好ましい。25μm以上であれば薄膜金属層11を十分に保護することができ、200μm以下であれば好ましい成形性が得られるためである。
【0023】
断熱樹脂層12の材質は特に限定されるものではないが、ABS樹脂やポリプロピレンなどが好適に用いられる。断熱樹脂層12は、複数の樹脂層を多層化したものであってもかまわない。断熱樹脂層12の厚さは100μm以上であることが必要であり、150μm以上が好ましい。100μm以上であれば、フィルムインサート射出成形時の熱から薄膜金属層11を保護し、薄膜金属層11の白化するのを十分に抑えることができ、厚さが150μm以上であれば、薄膜金属層11の光沢の劣化を確実に抑えることができる。また、成形性の観点では断熱樹脂層12の厚さは500μm以下とすることが好ましい。
【0024】
表面印刷層14は、表面樹脂層13の表面に印刷を施すことによって形成される。印刷方法は、グラビア印刷やフレキソ印刷、オフセット印刷等、既存の装飾用フィルム10と同様の印刷方法が好適に用いられる。
【0025】
金属調装飾部6を形成する部分では、表面印刷層14を透明にするか、又は表面印刷層14を欠落させる。これにより、当該金属調装飾部6では、薄膜金属層11が視認可能となり、光沢のある金属調の外観が得られる。なお、当該金属調装飾部6は、裏面側から光を透過しない樹脂やインキで裏打ちすることが提案される。かかる構成とすれば、照明式パネルの裏側からの照明が金属調装飾部6を透過することがなくなり、金属調の光沢が損なわれ難くなる。
【0026】
金属調装飾部6以外の部分は表面印刷層14を不透明にする。これにより、当該部分では薄膜金属層11が表面印刷層14によって遮られて視認されず、表面印刷層14に基づく装飾が得られる。また、少なくとも、照明部5を形成する部分は、白色、橙色、緑色等の光透過性のインキによって表面印刷層14を、透光性を有するものとする。かかる構成によれば、装飾用フィルム10の裏面側から照明部に光を当てれば、断熱樹脂層12、薄膜金属層11、表面樹脂層13、及び表面印刷層14を光が透過して、照明部5が発光することとなる。
【0027】
本発明の照明式パネルにおいて、装飾用フィルム10は、断熱樹脂層12、薄膜金属層11、表面樹脂層13、及び表面印刷層14以外の層構造を備えることができる。例えば、表面印刷層14の表面側にさらに樹脂層を設けることができるし、断熱樹脂層12の裏面側に印刷層を設けることも可能である。また、表面樹脂層や断熱樹脂層は、接着剤からなる接着層を含むことができる。
【0028】
本発明の照明式パネルにあっては、金属調装飾部6の他に、表面印刷層14の一部を光輝インキで構成することによって、金属調装飾部6以外の部分に光輝インキによる装飾部を設けることも可能である。なお、本発明に係る「金属調装飾部」とは、薄膜金属層11の金属調の光沢による装飾部分を指し、光輝インキの印刷による金属光沢の劣る装飾は本発明の「金属調装飾部」には含まれない。
【0029】
本発明の製造方法は、装飾用フィルムに薄膜金属層を設けることが最大の特徴であり、フィルム製造工程、印刷工程、裁断工程、及び成形工程の各工程は、周知の方法によって行うことができる。例えば、フィルム製造工程においては、金属を真空蒸着又はスパッタリングした樹脂フィルムに、別の樹脂フィルムを接着又は圧着したり、樹脂コーティングを施すことによって多層フィルムを製造できる。また印刷工程では、グラビア印刷やフレキソ印刷、オフセット印刷等、既存の装飾用フィルムと同様の印刷方法が採用できる。そして、成形工程は、既存の照明式パネルと同様のフィルムインサート射出成形によって行うことができる。また、本発明の製造方法には、上記工程以外にも、種々の工程を組み合わせることができる。例えば、成形工程の前に、装飾用フィルムに賦形処理を施すことが提案される。賦形処理の方法は特に限定されないが、真空成形や圧空成形、真空圧空成形などが好適に用いられる。
【0030】
<実施例>
本実施例の照明式パネル1は、自動車のシフトレバー操作部に用いられる照明式パネルである。この照明式パネル1は、図2,3に示すように、図7に示した従来のシフトレバー操作部の照明式パネル1aと同様の外形をなしている。すなわち、かかる照明式パネル1は、パネル本体2の周縁部に固定部3を配設してなるものであって、パネル本体2の上面全体に意匠面4が形成されており、レバー用開口部7の左脇の表示領域8に記された「P」,「R」,「N」,「D」の各文字が照明部5を構成し、レバー用開口部7の畝状の周縁部に金属調装飾部6が設けられている。
【0031】
図4に示すように、照明式パネル1は、樹脂基材9の表面に装飾用フィルム10を一体的に積層してなるものである。樹脂基材9は、照明部5を裏打ちする光透過性樹脂からなる光透過性樹脂部21と、黒色樹脂からなる光不透過性樹脂部22とで構成されている。光不透過性樹脂部22の、照明部5の周辺部位には照明用開口部23が形成されており、裏面側からの照明が光不透過性樹脂部22に遮られることなく装飾用フィルム10に当たるようになっている。
【0032】
図4に示すように、装飾用フィルム10は、パネル本体2の上面全体に積層され、金属調装飾部6を含む意匠面4全体を形成している。この装飾用フィルム10は、図5,6に示すように、薄膜金属層11と、該薄膜金属層11の裏面に設けられる断熱樹脂層12と、該薄膜金属層11の表面側に設けられる表面樹脂層13と、該表面樹脂層13の表面側に設けられる表面印刷層14とで構成される。
【0033】
薄膜金属層11は、厚さ約500Åのアルミニウム薄膜からなるものであり、照射される一部の光を反射し、一部の光を透過させることにより、金属調の光沢を有するとともに、裏面側からの光を部分的に表面側に透過する。
【0034】
断熱樹脂層12は、厚さ約200〜250μmの透光性を有するABS樹脂製フィルムで構成される。
【0035】
表面樹脂層13は、薄膜金属層11の表面に接する厚さ約15〜30μmの透明なPET樹脂層15と、該PET樹脂層15の表面と接する透明なPMMA樹脂層16とで構成される。PET樹脂層15は薄膜金属層11形成時の基材を構成するものであり、PMMA樹脂層16は、薄膜金属層11を保護するとともに、表面印刷層14の印刷面を構成するものである。
【0036】
表面印刷層14は、厚さ3〜20μm程度の不透明なインキによって構成されるものであり、当該表面印刷層14によって意匠面4の装飾が形成される。表面印刷層14の照明部5を構成する部分は白色のインキで形成されて透光性を有しており、照明部5以外の表示領域8は黒色のインキで形成されて光を透過しないものとなっている。また、意匠面4の残りの部分は銀色のインキによる装飾が施されている。また、表面印刷層14は、金属調装飾部6を形成する部分においてのみ欠落しており、当該部分でのみ薄膜金属層11の金属光沢が視認される。
【0037】
このように、かかる構成にあっては、金属調装飾部6においては、装飾用フィルム10の薄膜金属層11が表面から視認され、金属調装飾部6は金属調の光沢を有するものとなる。一方、金属調装飾部6以外の部分では、薄膜金属層11が不透明な表面印刷層14によって覆われているため、当該部分では、薄膜金属層11の光沢は視認されず、表面印刷層14のみによる装飾が視認される。また、照明部5においては、断熱樹脂層12、薄膜金属層11、表面樹脂層13、及び表面印刷層14がいずれも光を透過可能であるため、裏面側からの照明によって照明部5の表面が発光することとなる。
【0038】
次に、本実施例の照明式パネル1の製造方法を説明する。本実施例の照明式パネル1は、以下に説明する各工程を順番に行うことによって製造される。
【0039】
<フィルム製造工程>
まず、装飾用フィルム10を構成する多層フィルムを製造する。多層フィルムは、表面側から、PMMA樹脂層16、PET樹脂層15、薄膜金属層11、断熱樹脂層12の順番に積層されたものであり、真空蒸着されたPET樹脂フィルムの表裏に、断熱樹脂層12を構成するABS樹脂フィルムと、PMMA樹脂層16を構成するPMMA樹脂フィルムとを接着することにより製造する。各フィルムの製造及び接着は、周知の方法によって可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
<印刷工程>
印刷工程では、前記フィルム製造工程で製造した多層フィルムに所要の装飾パターンを印刷し、PMMA樹脂層の表面に表面印刷層14を形成することによって装飾用フィルム10を得る。ここで、金属調装飾部6を形成することになる部分は印刷は行わず、また、照明部5を形成することとなる部分は白色のインキによって透光性の印刷を行う。かかる印刷工程は、従来の照明式パネルに係る装飾用フィルムと同様の印刷方法によって行うことができる。
【0041】
<賦形工程>
賦形工程では、圧空成形によって、装飾用フィルム10を成形型の形状に合うよう賦形する。かかる成形は従来の装飾用フィルムと同様の条件で行うことができ、真空成形や真空圧空成形でも行うことができる。
【0042】
<裁断工程>
裁断工程では、賦形工程で賦形した装飾用フィルム10を成形型の形状に合わせて裁断する。
【0043】
<成形工程>
成形工程では、裁断工程で裁断した装飾用フィルム10を、表面印刷層14が型面に接するように成形型にセットして、フィルムインサート射出成形を行い。装飾用フィルム10を樹脂基材9の表面に積層一体化した照明式パネル1を製造する。本実施例では、樹脂基材9が、光透過性樹脂部21を形成する透明樹脂と、光不透過性樹脂部22を形成する黒色樹脂とで構成されるため、二色射出成形によって製造される。かかる成形工程は、従来の照明式パネルと同様の成形型、成形条件により行うことができる。
【0044】
以上のように、本実施例の照明式パネル1によれば、一枚の装飾用フィルム10によって、照明部5及び金属調装飾部6を含む意匠面4全体を形成できる。したがって、照明式パネル1を一部品化できるとともに、意匠面4全体をシームレスにできる。特に、本実施例にあっては、装飾用フィルム10の全面に薄膜金属層11を層構造として組み込んでいるため、箔押しのように金属薄膜を局所的に形成する工程を行うことなく金属調装飾部6を容易に形成できるという利点がある。また、薄膜金属層11を全面に組み込んだ装飾用フィルム10は、汎用性に富み、周知の方法で製造できる大量生産可能なものであるため、箔押しによる場合と比べて製造工程を簡略化できる。また、薄膜金属層11は、金属調の光沢を有し、且つ、光を透過するハーフミラー仕様のものであるため、装飾用フィルム10の全面に形成されていても、照明部5の光透過性を阻害することがない。
【0045】
また、本実施例の照明式パネル1は、薄膜金属層11の裏面に断熱樹脂層12が形成されているため、フィルムインサート射出成形の際に、装飾用フィルム10の裏面に射出される溶融樹脂の熱が薄膜金属層11まで伝わり難く、溶融樹脂の熱によって薄膜金属層11が白化することがない。したがって、本実施例の照明式パネル1では、薄膜金属層11によって金属調の光沢に富んだ金属調装飾部6を実現できる。
【0046】
なお、本発明における照明式パネルは、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、実施例にあっては、樹脂基材9が光透過性樹脂部21と光不透過性樹脂部22の二色の樹脂部で構成されていたが、樹脂基材は一種類の樹脂で構成されていてもよいし、装飾用フィルムの全面を樹脂基材で裏打ちする必要もない。また、実施例にあっては、装飾用フィルムの表面樹脂層が、PMMA樹脂層とPET樹脂層の二層で構成されていたが、表面樹脂層や断熱樹脂層は単層構造でも複層構造でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る装飾用フィルムの層構造を示す概念図である。
【図2】実施例の照明式パネル1の斜視図である。
【図3】実施例の照明式パネル1の平面図である。
【図4】図3中のA−A断面図である。
【図5】図4中のB部分の拡大図である。
【図6】図4中のC部分の拡大図である。
【図7】従来の照明式パネル1aの斜視図である。
【図8】図7中のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,1a 照明式パネル
2,2a パネル本体
3,3a 固定部
4,4a 意匠面
5,5a 照明部
6,6a 金属調装飾部
7,7a レバー用開口部
9,9a 樹脂基材
10,10a 装飾用フィルム
11 薄膜金属層
12 断熱樹脂層
13 表面樹脂層
13a PET樹脂層
13b PMMA樹脂層
14 表面印刷層
14a 透光性印刷部
14b 不透光性印刷部
21 光透過性樹脂部
22 光不透過性樹脂部
23 照明用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側からの照明により発光する照明部と、金属調の光沢を有する金属調装飾部とを意匠面に備える照明式パネルであって、
照明部及び金属調装飾部を含む意匠面が、樹脂基材の表面に積層一体化された装飾用フィルムによって形成されており、
該装飾用フィルムは、
金属光沢を有し、且つ、光を透過可能な薄膜金属層と、
該薄膜金属層の裏面側に設けられる厚さ100μm以上の、光を透過可能な断熱樹脂層と、該薄膜金属層の表面側に設けられる透明な表面樹脂層と、
該表面樹脂層の表面側に印刷される表面印刷層とを備えてなり、
前記表面印刷層は、金属調装飾部を形成する部分が透明であるか又は欠落しており、金属調装飾部を形成しない部分は不透明なものであり、さらに、照明部を形成する部分が透光性を有していることを特徴とする照明式パネル。
【請求項2】
前記薄膜金属層の膜厚が300〜800Åであることを特徴とする請求項1記載の照明式パネル。
【請求項3】
裏面側からの照明により発光する照明部と、金属調の光沢を有する金属調装飾部とを意匠面に備える照明式パネルの製造方法であって、
金属光沢を有し、且つ、光を部分的に透過可能な薄膜金属層と、該薄膜金属層の裏面側に設けられる厚さ100μm以上の、光を透過可能な断熱樹脂層と、該薄膜金属層の表面側に設けられる透明な表面樹脂層とを備えてなる多層フィルムを製造するフィルム製造工程と、
前記多層フィルムの表面側に装飾用の印刷を行い装飾用フィルムを得る印刷工程と、
該装飾用フィルムを裁断する裁断工程と、
裁断された装飾用フィルムを成形型に配置してフィルムインサート射出成形を行い、樹脂基材の表面に装飾用フィルムを積層一体化する成形工程と
を含むものであり、
前記印刷工程にあっては、金属調装飾部を形成することとなる部分は、透明な印刷を行うか、又は印刷を行わず、金属調装飾部を形成しない部分は不透明な印刷を行い、更に、照明部を形成することとなる部分は透光性の印刷を行うことを特徴とする照明式パネルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−20047(P2010−20047A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179871(P2008−179871)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(595067877)株式会社丸三金属 (6)
【Fターム(参考)】