説明

照明装置および検査装置

【課題】 本発明は、発光ダイオードの取付角度を容易にそろえることができて容易に製造でき、高効率で均一性も良好な照明装置を提供する。
【解決手段】 光学素子34は、光の出射面36を含んで発光ダイオード33の光を検査領域に照射するための特性を持つシリンドリカルレンズを構成する。また出射面36と対向する光の入射面37は平面であって、複数の発光ダイオード33の発光部35の前面の断面形状に等しくなるような溝38が形成されている。複数の発光ダイオード33は、それぞれの発光部35を光学素子34の溝38に嵌め込んで位置決めしつつ取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置および検査装置に関し、さらに詳しくは、電子工業用のプリント基板や液晶ディスプレイ製造用ガラス基板や印刷物などの検査対象物の表面を検査する装置においてその表面を照明する用途などに用いられる照明装置であって、光源として発光ダイオードを使用するもの、および、その照明装置を用いた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子工業用のプリント基板や液晶ディスプレイ製造用ガラス基板などの表面を検査する外観検査装置として、例えば、検査対象物である基板を一方向に搬送しながら、その搬送方向と交差する方向に長い一次元の撮像素子を用いた撮像装置で基板の表面を撮影し、得られた画像を処理して不良箇所を検出するものがある。かかる検査装置においては、検査対象物の表面を撮影するために、その表面を照明する照明装置が用いられるが、撮像装置として一次元の撮影範囲を持つものを用いる場合、照明範囲も撮影範囲と同じ一次元の領域で均一に照明するものが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−132708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような照明装置において、光源として発光ダイオードを用いることが考えられる。一般照明分野においては、特許文献1に示されるように、基板上に多数の発光ダイオードを一列にライン状に並べて設け、発光部分をカバーで覆って散乱させて光量のムラを抑制することが考えられる。しかし、このようにカバーにより光を散乱させるとそれだけ光量に損失が生じて検査対象部分に照射される光量が少なくなり、効率が下がる。また、このようなカバーを用いず、多数の発光ダイオードを一列に並べたラインの前面にフレネルレンズなどの光学系を設けて検査対象部分に集光して照射することも考えられる。しかしこの場合、多数の発光ダイオードの向きをそろえて組み立てる必要があり組み立てが困難でコストが高くなり、発光ダイオードが傾いてしまうと、うまく集光できずに照明にムラが生じたり、フレネルレンズの段差による光の散乱などに起因する透過率の悪さにより効率が下がる問題点がある。
近年、検査対象物となる基板が大型化し、それに伴って撮影幅も大きくなる反面、撮像や検査に要求される分解能は小さくなるため、照明装置においてもライン方向には長く均一な明るい照度分布が必要であり、ラインと直交する方向には十分に集光して効率を上げることが求められる。それに伴い、例えば砲弾型の発光ダイオードの径が小さなものを多数実装する方法がとられるが、砲弾型発光ダイオードの径が小さいものは、指向性が高く、ライン上を均一に照明するためには、取付角度をより高精度に調整する必要があり、製造が難しくなっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、発光ダイオードの取付角度を容易にそろえることができて容易に製造でき、高効率で均一性も良好な照明装置と、その照明装置を用いた検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、透光性素材で形成された発光部を有する複数の発光ダイオードと、一面に、前記複数の発光ダイオードの前記発光部の形状に対応した溝が形成され、他面に光を出射する出射面が形成された光学素子とを備え、前記溝に前記複数の発光ダイオードの前記発光部を挿入して前記発光ダイオードを位置決めしたことを特徴とする照明装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、透光性素材で形成された発光部を有する複数の発光ダイオードと、一面に、前記複数の発光ダイオードの前記発光部の形状に対応した複数の挿入穴が並べて形成され、他面に光を出射する出射面が形成された光学素子とを備え、前記複数の挿入穴に前記複数の発光ダイオードの前記発光部を挿入して前記発光ダイオードを位置決めしたことを特徴とする照明装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の照明装置において、前記光学素子の前記出射面を、被照明位置にほぼ集光するシリンドリカルレンズとしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の照明装置において、前記シリンドリカルレンズの前記出射面を、被照明位置にほぼ集光する球面としたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の照明装置において、前記シリンドリカルレンズの前記出射面を、被照明位置にほぼ集光する非球面としたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、検査対象物を支持する支持装置と、前記支持装置により支持される検査対象物において、一方向に長い検査領域を撮像する撮像装置と、前記支持装置に支持される検査対象物と前記撮像装置とを、前記検査領域の長手方向と直交する方向に相対移動させる移動機構と、前記検査対象物の表面の前記一方向に長い前記検査領域を照明すべく配置された請求項1乃至5のいずれかに記載の照明装置と、を備えたことを特徴とする検査装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、LEDの取付角度を容易にそろえることができて製造が容易で、高効率で均一性も良好な照明装置と検査装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る検査装置を示す模式図である。
【図2】光源の第1の実施形態を示す光路図である。
【図3】光源の第1の実施形態の変形例を示す光路図である。
【図4】光源の第2の実施形態を示す図である。
【図5】光源の第2の実施形態を示す光路図である。
【図6】各実施形態による被照明位置における照度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る検査装置1を示す模式図であり、図1(A)は検査装置1全体を示し、図1(B)は照明装置32の構成を示す。検査装置1は、電子工業用のプリント基板や液晶ディスプレイ製造用ガラス基板や印刷物など検査対象物の表面を撮像してその表面の配線パターンや欠陥等を検査する外観検査装置であって、検査対象物である基板Wを支持するステージ2と、ステージ2によって支持されている基板Wの表面を撮像するための検査ヘッド3と、ステージ2を検査ヘッド3に対して移動させる移動機構4とからなっている。
【0015】
ステージ2は基板Wを図示しない吸着機構によって吸着して基板Wの平坦性を保った状態で支持する。検査ヘッド3は移動機構4をまたぐ門型の支持体(図示せず)によって移動機構4によるステージ2の移動経路上に設置される。検査ヘッド3には、基板Wの表面を撮影する撮像装置31と、その撮像装置31による撮像領域を照明するための照明装置32とが設けられる。撮像装置31はステージ2上に支持される基板Wの表面において、移動機構4によるステージ2の移動方向に直交する方向に長い検査領域を撮影するための一次元の撮像素子とそのための光学系(いずれも図示せず)が含まれる。移動機構4はボールネジ又はリニアモータよりなる。
【0016】
照明装置32は基板Wの表面における撮像装置31による撮像領域すなわち検査領域を照明すべくその検査領域に向けて配置される。図1(B)を参照して照明装置32の詳細を説明すると、光源としての複数の発光ダイオード33と、その複数の発光ダイオード33の光を検査領域に照射するための光学素子34とからなる。発光ダイオード33のそれぞれは、いわゆる砲弾型のものであって透光性の樹脂素材でモールドされて形成された発光部35を有している。発光部の前面は球面である。光学素子34は、照明すべき検査領域の長手方向に対応した長さを有し、光の出射面36を含んで発光ダイオード33の光を検査領域に照射するための特性を持つシリンドリカルレンズを構成する。また出射面36と対向する光の入射面37は平面であって、複数の発光ダイオード33の発光部35の前面の断面形状に等しくなるような溝38が形成されている。そして、複数の発光ダイオード33は、それぞれの発光部35を光学素子34の溝38に嵌め込んで位置決めしつつ取り付けられ、図示しない接着材等で固定される。なお、図1においては発光ダイオード33を5個使用した場合を示しているが、これに限らず、必要な検査領域に対応した任意の個数にすることができる。出射面36は球面の曲率を持つ。
【0017】
かかる構成によれば、複数の発光ダイオード33は、光学素子34の溝38に嵌め込むだけで所定の取付角度で位置決めができる。また、発光ダイオード33を正確な角度で取り付けできるので、取付角度のばらつきに起因する無駄な照射光がなくなり、高効率で均一性も良好な照明装置32を容易に組み立て製造することができる。またシリンドリカルレンズを用いているので、フレネルレンズのようなレンズの段差がなく、散乱光が生じないので効率低下がない。
【0018】
図2はこの第1の実施の形態に係る照明装置32の光路を示す。YZ面において、光学素子34の溝38により正確な取付角度で整列されている。ただし、この第1の実施形態では、出射面36による球面収差が発生し、集光効率が若干低下している。
【0019】
次にこの第1の実施の形態の変形例を説明する。変形例においては、光学素子34の出射面36を、被照明位置すなわち検査領域に集光させる非球面とする事で球面収差を改善した。それ以外の構成は上述した第1の実施形態と同一である。この変形例に係る照明装置32の光路を図3に示す。YZ面において、Y方向の光の拡散が図2と比べて少なくなっており、照明の集光効率がより向上している。
【0020】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る検査装置1の照明装置32を示す模式図であり、光学素子34において、出射面36は被照明位置すなわち検査領域に集光させる非球面とした。この点は上述した第1の実施形態の変形例同一である。さらに、出射面36と対向する光の入射面37は平面であって、その入射面37に複数の発光ダイオード33の発光部35の前面形状に等しくなるような複数の孔39が形成されている。そして、複数の発光ダイオード33は、それぞれの発光部35を光学素子34の孔39に嵌め込んで位置決めしつつ取り付けられ、図示しない接着材等で固定される。この点以外の構成は上述した第1の実施形態と同一である。
【0021】
この第2の実施形態によれば、発光ダイオード33の位置決めを個々の発光ダイオード33に対応した孔39にはめ込んで行っているので、発光ダイオード33の列設方向すなわち光学素子34の長手方向にもずれることがなくなるため、発光ダイオード33をよりいっそう正確な取付角度で位置決めして取り付けることができ、取付角度のばらつきに起因する無駄な照射光がなくなり、高効率で均一性も良好な照明装置32を容易に組み立て製造することができる。図5はこの第2の実施の形態に係る照明装置32の光路を示す。X方向に広い範囲で均一に照明ができている。
【0022】
図6はこれらの実施形態の照明装置の照度分布を示す図であって、図6(A)は第1実施形態の、図6(B)は第1実施形態の変形例、図6(C)は第2実施形態の、それぞれの照度分布である。第2の実施形態の照度分布が、図6(C)では中央部が高い山形になっていて不均一であるが、実際には発光ダイオード33を多数用いるので、この山は長手方向(X方向)に平坦化され、実用上良好な均一照明として利用できる。
【0023】
なお、上記第2の実施形態では、光学素子34の出射面36は被照明位置に集光させる非球面としたが、この出射面36を球面とすることもできる。また、検査対象物が長尺物、例えばフレキシブルプリント基板や長尺紙への印刷物などの場合には、かかる検査対象物をローラ等により支持しながら、巻き出し、巻き取り装置によって移動させる構成をとることもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 検査装置
2 ステージ
3 検査ヘッド
4 移動機構
31 撮像装置
32 照明装置
33 発光ダイオード
34 光学素子
35 発光部
36 出射面
37 入射面
38 溝
39 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性素材で形成された発光部を有する複数の発光ダイオードと、
一面に、前記複数の発光ダイオードの前記発光部の形状に対応した溝が形成され、他面に光を出射する出射面が形成された光学素子とを備え、
前記長溝に前記複数の発光ダイオードの前記発光部を挿入して前記発光ダイオードを位置決めしたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
透光性素材で形成された発光部を有する複数の発光ダイオードと、
一面に、前記複数の発光ダイオードの前記発光部の形状に対応した複数の挿入穴が並べて形成され、他面に光を出射する出射面が形成された光学素子とを備え、
前記複数の挿入穴に前記複数の発光ダイオードの前記発光部を挿入して前記発光ダイオードを位置決めしたことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の照明装置において、
前記光学素子の前記出射面を、被照明位置にほぼ集光するシリンドリカルレンズとしたことを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載の照明装置において、
前記シリンドリカルレンズの前記出射面を、被照明位置にほぼ集光する球面としたことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項3に記載の照明装置において、
前記シリンドリカルレンズの前記出射面を、被照明位置にほぼ集光する非球面としたことを特徴とする照明装置。
【請求項6】
検査対象物を支持する支持装置と、
前記支持装置により支持される検査対象物において、一方向に長い検査領域を撮像する撮像装置と、
前記支持装置に支持される検査対象物と前記撮像装置とを、前記検査領域の長手方向と直交する方向に相対移動させる移動機構と、
前記検査対象物の表面の前記一方向に長い前記検査領域を照明すべく配置された請求項1乃至4のいずれかに記載の照明装置と、
を備えたことを特徴とする検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−222239(P2011−222239A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89091(P2010−89091)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】